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法人の証券口座おすすめ6選を比較|手数料・取扱商品・選び方と開設の流れを解説

法人の証券口座 比較・選び方のサムネイル画像

低金利が続くなか、預金に置いたままの余剰資金を運用に回したいと考える法人が増えています。個人の口座で運用するか、法人名義で証券口座を開くか迷っている経営者や経理・財務の担当者も多いのではないでしょうか。

法人名義で株式や投資信託を売買するには、法人口座に対応した証券会社を選んで口座を開設します。ただし、取扱商品や手数料、口座開設の要件は証券会社によって差があり、どこで開けば自社に合うのかは一見して分かりにくいのが実情です。さらに、法人口座は税務・会計の扱いが個人と異なるため、仕組みを理解しないまま始めると思わぬ負担が生じることもあります。

本記事では、法人の証券口座を開ける主要な証券会社6社を比較し、手数料・取扱商品・取引ツール・開設のしやすさといった選び方の軸を整理します。あわせて、法人口座のメリット・デメリット、個人口座との違い、口座開設の必要書類と流れ、税務・会計の注意点まで解説します。自社に合う口座を選ぶための検討材料としてご活用ください。

また、自社の状況に合わせて最適なサービスを最短で見つけられるよう、「30秒で終わる選定診断ツール」をご用意しています。重視する点を選ぶだけで候補を絞り込めるので、ぜひこちらもご活用ください。

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法人の証券口座を比較

ここからは、法人の証券口座を開ける主要な証券会社を横並びで比較します。手数料・取扱商品・米国株対応・取引ツールとサポート・口座管理料・開設方法を、法人口座を選ぶときに見るべき項目として一覧にまとめました。

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サービス名SBI証券楽天証券松井証券三菱UFJ eスマート証券SBIネオトレード証券野村證券
取扱商品(主な対象)国内株・外国株(9か国・地域)
投信・債券・FX・先物OP
国内株・米国株・中国株
投信・外国債券・FX・先物OP
日本株・米国株・投信
FX・先物OP
国内株・米国株・投信
外国債券・先物OP・FX・CFD
国内株(現物・信用)中心
(投信等の法人可否は要確認)
国内株・外国株・債券(CB等)
投信・単元未満株
国内株式の手数料ゼロ革命で0円
(ネットコース・電子交付が条件)
ゼロコースで0円
(SOR同意が必須。法人適用は要確認)
1日50万円まで0円等の
ボックスレート(法人適用は要確認)
0円
(SOR注文が条件。地方市場主銘柄は対象外)
一律50円〜/1日定額は
100万円まで0円
20万円以下2,860円〜
最大料率1.43%(店舗口座)
米国株(法人口座)△外国株9か国・地域(法人可否は要確認)●現物・信用・積立に対応●現物・信用・ETF●米国関連の属性は取引不可の場合あり×取扱なし●外国株(店舗取引)
取引ツール・サポートPC・スマホの取引ツール
ネット中心
マーケットスピード/iSPEED
ネット中心
ネットストック等・アプリ
ネット中心・電話サポート
PC・スマホツール・API
ネット中心
NEOTRADE W・API
ネット中心
対面(店舗)・担当者相談
口座管理料無料
(法人への明記なし)
公式に記載なし原則無料
(特別課金法人は年33,000円)
無料公式に記載なし無料
(法人への明記なし)
開設方法オンライン申込+書類郵送
(約10日で案内)
オンライン申込+書類郵送
(審査1〜2週間)
オンライン申込+書類郵送
(1週間程度)
オンライン申込+書類郵送
(全体日数は公式記載なし)
オンライン申込+書類アップロード
(信用口座の審査は最短2営業日)
店舗(本・支店)で開設
(要件・日数は公式記載なし)
詳細情報公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト

※上記は2026年10月時点の各社公式情報にもとづく各社の法人口座の内容です。手数料・取扱商品・開設条件は変更される場合があり、「ゼロコースの法人適用」「1日定額の無料枠の法人適用」など法人口座への適用が公式に明示されていない項目もあります(本表・本文で「要確認」「公式に記載なし」と示した箇所)。最新の条件と自社への適用は各社公式サイトで確認してください。

米国株の列は、●が法人口座で取引できる、△が取扱はあるものの法人口座での可否は要確認、×が取扱なし、を表します。

重視する点から候補を絞ると選びやすくなります。コストを最優先するなら国内株の手数料が0円になるネット証券、米国株など外国株まで分散したいなら外国株の取扱が広い会社、担当者に相談しながら運用したいなら対面の会社が候補になります。自社の重視点から素早く絞り込むには、上の選定診断もあわせてご利用ください。

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法人の証券口座の選び方

ここからは、法人の証券口座を選ぶときに確認したい5つの軸を解説します。自社が何を重視するかによって、適した証券会社は変わります。

手数料で選ぶ(売買手数料・口座管理料)

運用のコストを抑えたい場合は、売買手数料と口座管理料を確認しておきましょう。ネット証券では、1注文ごとに手数料がかかるコースと、1日の約定代金の合計で決まる定額コースを選べることが多く、売買の頻度や1回あたりの金額によって有利なコースが変わります。少額の売買を頻繁に行うなら定額コースの無料枠が効き、まとまった金額を売買するなら1注文ごとのコースが向く場合もあります。

口座管理料は無料の証券会社が多い一方、法人の区分や取引状況によって年額の管理料がかかるケースもあります。手数料コースの条件は個人向けのみに明示され、法人口座への適用が公式に書かれていない証券会社もあるため、自社の口座に適用される体系を申込前に確認しておくと安心です。

取扱商品で選ぶ(国内株・米国株・投資信託・IPO・債券など)

何に投資したいかで選ぶ軸です。国内株式はどの証券会社でも扱えますが、米国株や中国株などの外国株は取扱国数や銘柄数に差があります。投資信託の取扱本数、外国債券や仕組債の有無、新規公開株(IPO)の取扱実績も証券会社ごとに異なります。

余剰資金を国内株中心に運用するのか、米国株や債券まで含めて分散したいのかを先に決めておくと、取扱商品の広さで候補を絞り込めます。外国株は口座開設時に別途の手続きや書類が必要な証券会社もあるため、取扱の有無だけでなく利用条件もあわせて確認しておきましょう。

開設実績・対応力・開設スピードで選ぶ

法人口座は個人口座より開設の手続きが煩雑で、登記書類の提出や審査に日数がかかります。法人口座の開設実績が豊富な証券会社は、必要書類の案内や問い合わせ窓口が整っていることが多く、はじめて法人名義で開設する場合でも手戻りが起きにくい傾向があります。

開設までの日数は証券会社によって異なり、申込から1週間程度を目安とするところが一般的です。運用を始めたい時期が決まっているなら、開設にかかる日数と、不備があった場合の再提出の手間まで見込んでおくと安心です。

取引ツール・管理画面の使いやすさで選ぶ

実際に発注・管理する担当者が使いやすいかどうかも、見落とせない軸です。パソコン向けの取引ツールとスマートフォンアプリの両方を提供する証券会社が多く、画面の見やすさや注文のしやすさ、保有資産の管理のしやすさはツールによって差があります。

複数人で取引状況を確認したい場合や、取得データを会計処理に使いたい場合は、取引履歴の出力やExcel連携などの機能があるかもあわせて見ておきましょう。発注を担当する人が日常的に無理なく使えるかを基準に選ぶと、運用開始後の負担が軽くなります。

法人向けサポート体制で選ぶ

運用の方針づくりから相談したい場合は、サポート体制で選ぶ軸もあります。ネット証券は手数料が低い一方で、銘柄選びや売買のタイミングは自社の判断に委ねられます。担当者による助言を受けながら運用したい場合は、対面での相談に対応する証券会社や、助言サービスを併用できる証券会社が候補になります。

自社で判断して売買できる体制があるならネット証券の低コストが活き、専門家の助言を重視するなら対面やサポートの手厚さが活きます。社内の運用体制と照らして、必要なサポートの水準を見極めましょう。

各証券会社の法人口座を個別紹介

ここからは、法人の証券口座を開ける主要な証券会社を1社ずつ紹介します。取扱商品や手数料、法人口座ならではの特徴を確認し、比較表とあわせて検討の材料にしてください。

1. SBI証券(株式会社SBI証券)

SBI証券のウェブサイト

株式会社SBI証券の法人口座は、国内株式を中心に、外国株式・投資信託・債券・FX・先物オプションまでを法人名義で取引できる証券総合口座です。外国株式は米国・中国・韓国など9か国・地域を取り扱います(各商品を法人口座で利用できるかは申込前の確認が必要です)。

国内株式の現物・信用取引は、売買手数料が0円になる「ゼロ革命」の対象に法人も含まれます。インターネットコースでの取引と、取引報告書など交付書面の電子交付が条件で、電話注文や対面コースは対象外です。

口座開設料・口座管理料は無料と案内されていますが、公式には個人・法人の区別が明記されていないため、自社への適用は申込前に確認しておくと安心です。口座開設はオンラインで申し込んだ後、必要書類を郵送し、約10日で手続きの案内が簡易書留で届く流れです。

2. 楽天証券(楽天証券株式会社)

楽天証券の法人口座のウェブサイト

楽天証券株式会社が運営する法人口座は、国内株式(現物・信用)に加え、米国株式・中国株式・投資信託・外国債券・FX・先物オプションなどを法人名義で取引できます。宗教法人・学校法人などの公益法人も対象に含まれます。

パソコン用ツールの「マーケットスピード」とスマートフォン用ツールの「iSPEED」は、法人口座でも利用できます。一方、ポイントプログラムやポイント投資は法人口座では対象外です。

国内株式(現物・信用)の手数料は「ゼロコース」で0円と案内されています。ただしゼロコースの選択にはSOR(Rクロスを含む。有利な価格で約定できるよう複数の市場へ注文を自動で振り分ける仕組み)の利用同意が必須で、公式には法人口座への適用条件が明示されていません。法人でのコース選択の可否や条件は、申込前に確認しておくと確実です。

3. 松井証券(松井証券株式会社)

松井証券の法人口座のウェブサイト

松井証券株式会社が提供する法人口座では、日本株(現物・信用)・米国株・投資信託・FX・先物オプションを法人名義で取引できます。信用取引・先物オプション・FXの各口座は、法人口座の開設と同時に申し込めるのも便利な点です。

口座開設料は無料で、口座基本料も原則無料です。ただし上場会社・資本金1億円超の未上場会社・宗教法人・学校法人などは「特別課金法人」として年間33,000円(税込)がかかる場合があります。特別課金法人でも、口座開設月から1年間は無料で、その後も株式・米国株式・先物オプションの取引があれば翌年は無料になります(投資信託・FXなどの取引は対象外)。

日本株の現物手数料は、1日の約定代金合計50万円まで無料になる料金体系(ボックスレート)です。ただし公式には法人への適用が明示されていないため、法人口座での料金体系は申込前の確認が必要です。また、NISA・iDeCo・特定口座は法人口座では利用できず、口座開設にかかる日数は1週間程度が目安です。

4. 三菱UFJ eスマート証券(三菱UFJ eスマート証券株式会社/旧auカブコム証券)

三菱UFJ eスマート証券の法人口座のウェブサイト

三菱UFJ eスマート証券株式会社は、2025年2月にauカブコム証券から商号を変更した証券会社で、同年1月に三菱UFJ銀行の完全子会社となりました。法人口座では、現物株式・米国株式・投資信託・先物オプション・FXなどを法人名義で取引でき、口座管理料は無料です。

手数料は個人口座に準じる体系です。国内株式の現物・信用取引は0円とされていますが、手数料無料にはSOR注文の選択が必要で、地方市場が主市場の銘柄は無料の対象外です。

法人向けにはAPIサービスがあり、発注や残高照会などに対応します。APIで接続するサードパーティ事業者として契約するには、法人口座の開設が前提条件です。株式会社などのほか、一般社団法人・公益法人といった非課税法人も対象ですが、外国法人は対象外とされています。

5. SBIネオトレード証券(株式会社SBIネオトレード証券)

SBIネオトレード証券の法人口座のウェブサイト

株式会社SBIネオトレード証券は、SBIグループが100%出資するネット証券で、法人名義で国内株式の現物取引・信用取引などができます。取引ツールは、ブラウザ版の「NEOTRADE W」やPC・スマホ向けの「NEOTRADER」、Excelで売買できる「ネオトレAPI for Excel」などを提供します。

現物取引の手数料は、1注文ごとの一律プランが約定代金5万円以下で50円(税込)から、1日の約定代金合計で決まる定額プランは100万円以下が0円です。信用取引の手数料は0円で、買方金利や貸株料などは別途かかります。

法人でも信用取引の口座を開設できますが、法人登記後1年以上が経過していることや、株式などの投資経験があることなどが要件とされています。審査は最短でも2営業日かかり、結果は取引ツールの画面で通知されます。

6. 野村證券(野村證券株式会社)

野村證券の法人口座のウェブサイト

野村證券株式会社の法人口座は、店舗(本・支店)の口座で有価証券を売買する形態です。オンライン専用支店の口座は法人では開設できず、法人の信用取引もオンラインでは利用できません。

国内株式・外国株式・転換社債・投資信託・単元未満株(まめ株)などを取り扱い、店頭・電話・オンラインの3つのチャネルに同じ法人向け手数料表が適用されます。国内株式の手数料は約定代金20万円以下で2,860円(税込)、表のなかで最も高い料率は1.43%です(オンラインの現物取引は20%割引)。

売買口座にとどまらず、保有資産のリスク・リターンを数値化する金融資産分析や、合同運用指定金銭信託・オペレーティングリースなどの法人向け運用商品も案内しています。一方で法人口座の開設要件や必要書類、所要日数は公式に明示されていないため、取引を希望する店舗への問い合わせが必要です。

法人口座と個人口座の違い(メリット・デメリット)

ここからは、法人名義で運用すると個人口座と何が変わるのかを整理します。まず両者の違いを概観したうえで、法人口座のメリット・デメリットと、法人口座が向いている企業の特徴を解説します。

個人口座と法人口座の違い

個人口座と法人口座では、課税の仕組み・損失の扱い・使える制度・会計処理が異なります。主な違いは次のとおりです。

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個人口座と法人口座の違い課税の仕組み損失の繰越損益通算特定口座・NISA会計・申告
個人口座上場株式等の譲渡益・配当は申告分離課税(税率は所得税・住民税あわせて一律20.315%)上場株式等の譲渡損失は最長3年上場株式等の範囲内で分離(本業の所得とは通算できない)利用できる確定申告(特定口座なら申告の手間を軽減できる)
法人口座所得区分がなく、運用損益も本業の損益と合算して法人税等が課される(実効税率は所得規模による)欠損金を最長10年繰越(青色申告法人の場合)本業の損益と合算される(受取配当等の益金不算入など別段の定めあり)利用できない決算・法人税申告に組み込む。売買目的有価証券は期末に時価評価する

※上記は一般的な制度の概要です。自社に適用される具体的な取り扱いは顧問税理士にご確認ください。

出典・参考資料(2件)

法人で証券口座を持つメリット

法人口座で運用する主なメリットは、経費計上・損益通算・損失の繰越の3点です。いずれも個人口座にはない、法人ならではの扱いです。

1つ目は、運用に直接関連する費用を損金に算入できる点です。投資情報の購読料やセミナー参加費など、運用のために支出した費用は、法人税法が定める損金(法人税法22条3項)として所得の計算上差し引ける場合があります。利益を圧縮して法人税の負担を抑えられる可能性がありますが、損金に算入できるのは運用に直接関連する費用に限られます。

2つ目は、運用の損益を本業の損益と合算できる点です。法人は所得金額を「益金から損金を差し引いた金額」として一本で計算するため、株式の譲渡損失が出た年でも本業の利益と相殺できます。個人の上場株式等が他の所得と分離して課税されるのとは対照的です。ただし、受取配当等は一部が益金不算入となる別段の定めがあるため、配当がそのまま全額通算されるわけではありません。

3つ目は、損失を長く繰り越せる点です。青色申告法人であれば、ある事業年度に生じた欠損金を最長10年にわたり繰り越し、その後の黒字と相殺できます(2018年(平成30年)4月1日前に開始した事業年度に生じた欠損金の繰越期間は9年)。

損金に算入できる限度は、中小法人等(資本金1億円以下の普通法人など)は所得の100%、それ以外の大法人は所得の50%までとされています。個人の上場株式等の譲渡損失の繰越が最長3年であるのと比べ、損益を長い期間でならせる点が法人口座の利点です。

出典・参考資料(2件)

法人口座のデメリットと注意点

一方で、法人口座には個人口座にはない注意点もあります。法人口座に固有の注意点は税負担・使える制度・含み益の扱いの3点で、これに加えて運用そのものの落とし穴にも触れます。

まず、利益が出ている局面では個人より税負担が重くなることがあります。個人の上場株式等は一律20.315%の申告分離課税ですが、法人は運用益が本業の所得と合算されるため、所得規模によっては実効税率がこれを上回ります。

次に、個人向けの税制優遇を使えません。特定口座やNISAは個人(居住者等)を対象とした制度のため、法人名義では利用できず、確定申告の簡便化や非課税のメリットは受けられません。

さらに、保有する有価証券が「売買目的有価証券」に区分される場合は、期末時点の含み益にも課税される可能性があります。実際に売却していなくても、期末の時価評価による評価益が所得に算入される点は、個人口座にはない注意点です(区分と課税の条件は後述します)。

運用そのものの落とし穴にも注意が必要です。余剰資金のつもりで株式や外国債券に投じた後、取引先への支払いなどで急に資金が必要になり、相場が下がった局面で売却せざるを得なくなる、といった資金繰りのミスマッチは起こりがちです。近い時期に使う予定のある資金は預金で確保し、長期で動かさずにおける資金だけを運用に回すのが安全です。

法人の証券口座が向いている企業

ここまでの違いを踏まえると、法人の証券口座が向いているのは、次のような企業です。

  • 当面使う予定のない余剰資金があり、長期で運用に回せる企業
  • 利益が安定しており、運用損益を本業の損益と合算するメリットを活かせる企業
  • 短期の値動きを狙うより、長い期間で損益をならして運用したい企業
  • 顧問税理士と連携し、会計・税務処理を適切に進められる体制がある企業

ネット証券の多くは法人口座に最低入金額の定めを設けておらず、少額からでも始められます。ただし口座管理料や売買手数料が運用益に対して割高にならない規模か、という観点で判断するとよいでしょう。反対に、本業が赤字で手元資金に余裕がない場合や、近いうちに使う予定の資金しかない場合は、運用に回すこと自体を慎重に検討したほうがよいでしょう。

ここまで見てきた証券口座での株式投資は、法人の余剰資金を運用する手段の一つです。ほかにも定期預金や債券、投資信託、プロに任せる一任運用など選択肢は幅広く、自社の運用方針や許容できるリスクによって向き不向きが変わります。証券口座で自分で売買すると決める前に運用手段全体を見比べたい場合は、次の記事が手段の種類ごとの特徴と選び方を整理しています。

法人で株式投資をするときの税務・会計の注意点

ここからは、法人で株式投資を行うときに押さえておきたい税務・会計のポイントを、根拠となる条文とあわせて解説します。制度の解釈に関わる部分は、実際の処理の前に顧問税理士へ確認することをおすすめします。

保有目的によって会計・税務の扱いが変わる

法人が保有する有価証券は、保有の目的によって期末の評価方法が分かれます。短期的な価格変動を利用して利益を得る目的で取得した「売買目的有価証券」は期末に時価で評価し、その評価益・評価損を所得の計算に反映します。一方、それ以外の「売買目的外有価証券」は原価で評価するため、含み益は課税されません。

売買目的有価証券に区分される場合、まだ売却していなくても期末時点の含み益(評価益)が益金に算入されます。法人税法は次のように定めています。

内国法人が事業年度終了の時において売買目的有価証券を有する場合には、当該売買目的有価証券に係る評価益(……)又は評価損(……)は、第二十五条第一項(資産の評価益の益金不算入)又は第三十三条第一項(資産の評価損の損金不算入)の規定にかかわらず、当該事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。

出典:法人税法 第61条の3第2項(売買目的有価証券の評価益又は評価損の益金又は損金算入等)|e-Gov 法令検索

どの有価証券が売買目的有価証券に区分されるかは、取得の目的や帳簿への記帳方法などに応じて政令で定められており、個別の判断が必要です。一般には、短期の値動きで利益を得る目的で取得し、短期売買目的の勘定科目で記帳したものが売買目的有価証券にあたります。

そのため、余剰資金を長期で保有する運用は、それ以外(原価法で評価し含み益は課税されない区分)に寄りやすいと考えられます。ただし区分は個別判断になるため、自社の保有目的が含み益課税の対象になるかは顧問税理士に相談するのが確実です。

特定口座・NISAは法人名義では使えない

個人の投資でよく使われる特定口座やNISAは、法人名義では利用できません。いずれも租税特別措置法が適用対象を「居住者又は恒久的施設を有する非居住者」と定めており、個人(所得税)の制度だからです。

居住者又は恒久的施設を有する非居住者が、上場株式等保管委託契約に基づき特定口座(……)に保管の委託がされている上場株式等(……)の譲渡をした場合には、……

出典:租税特別措置法 第37条の11の3第1項(特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例)・第37条の14(非課税口座内の少額上場株式等に係る譲渡所得等の非課税)|e-Gov 法令検索

そのため法人口座では、年間の損益計算や源泉徴収を証券会社が代行する特定口座の仕組みは使えず、売買の記録を自社で管理して決算・法人税申告に反映する必要があります。この点でも、会計・税務の体制を整えてから運用を始めることが大切です。

税務申告・顧問税理士への相談・社内決裁

法人の運用損益は、決算を通じて法人税の申告に組み込みます。売買のたびに記録を残し、期末には保有有価証券の区分と評価を行う必要があるため、運用の規模が大きくなるほど会計処理の負担は増します。

会計・税務の扱いは保有目的や取引内容によって変わるため、運用を始める前に顧問税理士へ方針を確認しておくと、処理の手戻りを防げます。あわせて、会社の資金を運用に回すことについては、社内の決裁ルールに沿って意思決定の記録を残しておくことも重要です。誰の判断でどの範囲まで運用するかを明確にしておくことで、後々のトラブルを避けられます。

法人の証券口座を開設する流れと必要書類

ここからは、法人の証券口座を開設する一般的な流れと必要書類を解説します。証券会社によって細部は異なりますが、おおむね共通する点を整理します。

開設の流れは、オンラインまたは書面で申込情報を入力・記入し、必要書類を提出して審査を受け、完了通知を受け取って取引を開始する、という順序が一般的です。申込から口座開設まではおおむね1週間程度が目安で、書類に不備があるとさらに日数がかかります。開設完了の案内は、取引責任者の自宅あてに転送不要の郵便で送られることが多く、受け取れる状態にしておく必要があります。

主な必要書類は次のとおりです。証券会社や申し込む取引の種類によって追加の書類を求められることもあります。

  • 登記事項証明書(履歴事項全部証明書など。発行後おおむね6か月以内の原本)
  • 法人の印鑑証明書(証券会社により必要)
  • 法人番号の確認書類
  • 取引責任者の本人確認書類
  • 実質的支配者に関する申告書
  • 法人名義の入出金用の銀行口座

法人口座の審査に落ちないためのポイント

法人口座は個人口座より審査が慎重で、申込内容と書類の不整合があると手戻りや不承諾の原因になります。スムーズに開設するために、次の点を確認しておきましょう。

  • 申込情報を登記簿の記載と一致させる。代表者の役職や所在地は登記事項証明書と同じ表記で入力する
  • 取引責任者と実質的支配者の情報を、本人確認書類の記載どおりに正確に届け出る
  • 登録する電話番号は固定電話や直通番号を用意する(証券会社により指定がある)
  • 本店所在地で郵便を受け取れる状態にしておく。転送不要の郵便が返送されると取引に制限がかかることがある
  • 外国の重要な公的地位にある者(外国PEPs)に該当する法人は受け付けていない証券会社がある
  • 信用取引や先物・オプションなど与信を伴う口座は別途審査がある。代表者個人に与信取引の口座があると、法人側の審査が厳しくなる場合がある

これらは証券会社の案内ページに個別に書かれていることが多く、申込前にまとめて確認しておくと、書類の再提出や審査の長期化を防げます。

まとめ

法人の証券口座を選ぶときは、手数料・取扱商品・開設のしやすさ・取引ツール・サポート体制の5つの軸で、自社が重視する点を整理するのが近道です。コストを抑えて自社で売買するならネット証券の低コストが活き、助言を受けながら運用したいなら対面やサポートの手厚さが活きます。

あわせて、法人口座は損益通算や損失の長期繰越といったメリットがある一方、特定口座やNISAが使えない、売買目的有価証券は含み益にも課税され得るといった個人口座との違いがあります。税務・会計の扱いは顧問税理士と相談しながら、会社の資金計画に合った範囲で運用を始めるとよいでしょう。各社の条件は比較表と診断ツールで確認し、気になる証券会社は公式サイトで最新の条件を確かめたうえで口座開設に進んでください。

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よくある質問(FAQ)

Q. 法人の証券口座とは何ですか?

A. 法人の証券口座は、会社名義で株式や投資信託などの有価証券を売買するための口座です。個人名義の口座とは別に法人格で開設・運用し、運用の損益は会社の決算・法人税申告に組み込みます。預金に置いたままの余剰資金を会社として運用したい法人が利用します。

Q. 法人の証券口座は、個人口座と法人口座のどちらで投資すべきですか?

A. どちらが有利かは会社の状況によりますが、当面使わない余剰資金を長期で運用でき、運用損益を本業と合算するメリットを活かせる法人なら法人口座が選択肢になります。一方で、利益が出ている局面では個人の一律20.315%より税負担が重くなることや、特定口座・NISAが使えないことも踏まえて判断します。税務上の損得は会社の所得規模によって変わるため、顧問税理士に相談して決めるのが確実です。

Q. 法人の証券口座で投資信託は買えますか?

A. 法人の証券口座でも、多くの証券会社で投資信託を購入できます。ただし取扱本数は証券会社によって差があり、非課税法人など一部の法人は購入対象外となる商品もあります。投資信託を中心に運用したい場合は、取扱本数と自社が対象になるかを申込前に確認しておきましょう。

Q. 法人の証券口座で米国株などの外国株は買えますか?

A. 法人の証券口座でも、外国株に対応した証券会社を選べば米国株などを購入できます。ただし取扱国数や銘柄数は証券会社ごとに差があり、法人は米国株が対象外となる場合や、開設時に別途の手続き・書類が必要な場合があります。外国株まで含めて分散したい場合は、取扱の有無と利用条件をあわせて確認しておきましょう。

Q. 法人の証券口座は複数の証券会社で開設できますか?

A. 法人の証券口座は、複数の証券会社で開設できます。1社に限定する決まりはなく、手数料の安い証券会社と取扱商品の豊富な証券会社を使い分けるなど、目的に応じて併用できます。ただし口座が増えるほど売買記録の管理や決算での集計の手間は増えるため、会計処理の体制とあわせて検討します。

Q. 法人の証券口座の開設にはどのくらい時間がかかりますか?

A. 法人の証券口座の開設は、申込から口座開設までおおむね1週間程度が目安です。ただし提出書類に不備があるとさらに日数がかかります。開設完了の通知は取引責任者の自宅あてに転送不要の郵便で送られることが多いため、運用を始めたい時期が決まっている場合は、書類準備と郵便の受け取りまで見込んでスケジュールを組みます。

Q. 法人の証券口座で損失が出たら会社にどう影響しますか?

A. 法人の証券口座で損失が出た場合、その損失は本業の損益と合算でき、青色申告法人なら欠損金を最長10年繰り越して以後の黒字と相殺できます。個人の上場株式等の譲渡損失が他の所得と通算できず繰越も最長3年であるのと比べ、損益を長い期間でならせる点が法人口座の利点です。ただし受取配当等には益金不算入の別段の定めがあるなど、扱いが一律でない項目もあるため、処理は顧問税理士に確認するのが確実です。

Q. 小規模企業やスタートアップでも法人の証券口座を開設できますか?

A. 小規模企業やスタートアップでも、商業登記された法人であれば法人の証券口座を開設できます。会社の規模や設立からの年数そのものが要件になるわけではありません。ただし、申込情報と登記簿の記載を一致させることや、取引責任者・実質的支配者を正しく届け出ることが審査では重視されます。信用取引など与信を伴う口座には、別途の審査があります。

Q. 法人の証券口座の維持費(口座管理料)はかかりますか?

A. 法人の証券口座の口座管理料は、無料としている証券会社が多いものの、法人の区分や取引状況によって年額の管理料がかかるケースもあります。手数料コースの条件が個人向けにしか明示されておらず、法人口座への適用が公式に書かれていない証券会社もあるため、自社の口座に適用される体系を申込前に確認しておくと安心です。

Q. 法人の証券口座では特定口座やNISAは使えますか?

A. 法人の証券口座では、特定口座やNISAは利用できません。いずれも個人(居住者等)を対象とした制度のためで、法人名義では年間損益の計算や源泉徴収を証券会社が代行する特定口座の仕組みは使えず、売買の記録を自社で管理して決算・法人税申告に反映する必要があります。この点でも、会計・税務の体制を整えてから運用を始めることが大切です。

Q. 資産管理会社(プライベートカンパニー)でも証券口座を開けますか?

A. 資産管理会社でも、商業登記された法人であれば証券口座を開設できます。開設の手続きや必要書類は他の法人と基本的に同じで、登記事項証明書・印鑑証明書・法人番号の確認書類・取引責任者の本人確認書類などを提出します。個人資産を法人化して運用する場合も、税務・会計の扱いは法人口座の仕組みに従うため、事前に顧問税理士へ方針を確認しておくと安心です。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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