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給与前払いサービスの注意点と法律を解説|労働基準法や貸金業などを紹介

近年、人手不足が深刻化する中で、求職者への強力なアピール材料として「給与前払いサービス」を導入する企業が急増しています。「働いた分の給料を、給料日を待たずに受け取れる」という柔軟性は、特にアルバイトやパートタイマー、若手社員にとって大きな魅力です。

しかし、人事・労務担当者の皆様にとって、導入には大きな「不安」がつきものではないでしょうか。

「労働基準法に違反しないのか?」、「貸金業法との線引きはどこにあるのか?」、「運用の手間が増えて、現場が疲弊しないか?」

これらの懸念はもっともです。仕組みを誤って理解したまま導入すれば、法的なトラブルに巻き込まれるリスクもゼロではありません。

本記事では、金融テクノロジー分野の専門的知見に基づき、給与前払いサービス導入における「法的な注意点」、「労働基準法・貸金業法との関係」、そして「安全なサービス選定のポイント」などを徹底解説します。

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給与前払いサービスとは? 仕組みと「前借り」との違い

法的リスクを理解するためには、まずサービスの仕組みを正確に把握する必要があります。

「社内貸付(前借り)」との違い

従来からある「前借り(社内貸付)」は、緊急時に会社が従業員に対して金銭を貸し付ける制度です。一方、近年の「給与前払いサービス」は、「既に行った労働に対する賃金」を、所定の給料日より前に受け取る仕組みを指します。あくまで「自分の稼いだお金」を受け取る点が、借金とは異なります。

主な2つの提供タイプ

給与前払いサービスには、主に以下の2つの種類があります。

  1. 預託型(デポジット型・プール型)
    • 企業があらかじめ専用口座に資金(給与原資)を入金(プール)しておき、従業員の申請に応じてそこから支払われる仕組み。
    • 特徴:企業自身の資金が動くため、法的な構成がシンプル。
  2. 立替型(提携型)
    • サービス提供会社が一時的に給与相当額を立て替えて従業員に支払い、後日企業がサービス会社に精算する仕組み。
    • 特徴:企業のキャッシュフローへの影響は少ないが、サービス会社が「貸金業」に該当しないような法的な建て付け(要件)が必要。

【最重要】給与前払いサービス導入における「法律」の壁

給与前払いサービスを検討する際、必ずクリアしなければならないのが「労働基準法」と「貸金業法」の2つの法律です。ここが曖昧なまま導入すると、コンプライアンス違反のリスクがあります。

ここでは、給与前払いサービスを導入する際に注意すべき法的リスクとその対策について解説していきます。

1. 労働基準法との兼ね合い

労働基準法第24条には「賃金支払いの5原則」が定められており、以下の2点が特に重要になります。

1.直接払いの原則

賃金は「直接労働者に支払わなければならない」とされています。

  • リスク:サービス会社を経由して支払うことが、第三者への支払いに該当しないか?
  • 対策:多くのサービスでは、サービス会社を「使者(会社の代わりに届ける人)」または「代理人」と位置づけることで、法的にクリアしています。導入時には、労使協定(労働者の過半数代表との書面による協定)を締結し、給与の一部を前払いサービス経由で支払うことへの同意を得るのが一般的です。

2.全額払いの原則

賃金は「全額を支払わなければならない」とされています。

  • リスク:前払い利用時に発生する「手数料」を給与から天引きすることは、この原則に反しないか?
  • 対策
    • 手数料を「企業が負担する」場合は問題ありません。
    • 従業員が負担する場合も、あくまで「サービス利用料」として扱い、給与そのものの減額ではないという整理が必要です。ただし、天引きを行う場合は、労使協定による「賃金控除」の定めが不可欠です。

2.貸金業法との境界線

近年、最も注意が必要なのが「貸金業法」との関係です。

「給与ファクタリング」との違い

過去に問題となった「給与ファクタリング」は、労働者が持つ「給与を受け取る権利(債権)」を業者が買い取り、手数料を引いて現金を渡す手法でした。これは実質的な「貸金(高金利の貸付)」とみなされ、金融庁や裁判所から違法と認定されています。

「立替払い」は貸金にあたるか?

正規の「給与前払いサービス」は、あくまで「既発生の労働賃金」の範囲内での支払いです。しかし、サービス会社が一時的に立て替える行為が「企業への貸付」や「従業員への貸付」とみなされるリスクがゼロではありません。

  • 安全なライン:経済産業省や金融庁のグレーゾーン解消制度などの回答に基づき、「福利厚生の一環として導入され、手数料が利息とみなされるほど高額でなく、強制性がない」などの条件を満たすサービスを選ぶ必要があります。

ワンポイント・アドバイス

「立替型」のサービスを選定する場合、その事業者が「貸金業登録」を行っているか、あるいは「規制のサンドボックス制度」や「グレーゾーン解消制度」を活用して適法性を確認しているかを確認することが、企業を守る最大の防衛策となります。

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各社の手数料体系・導入フロー・法対応の仕組み(提携型/預託型)・サポート体制など、稟議に必要な情報をすばやく比較検討可能です。

給与前払いサービス導入前に知っておくべき5つの注意点

法律面以外にも、実務運用上で注意すべきポイントがあります。導入後に「こんなはずではなかった」とならないよう、以下の5点を確認してください。

どのような内容なのか、順番に見ていきましょう。

1. 手数料負担は「企業」か「従業員」か

サービスの収益源となる手数料には、主に以下の2種類があります。

  • システム利用料(月額固定費など):企業が負担。
  • 前払い利用手数料:利用する従業員が負担(振込手数料+サービス料など)。

注意点:従業員負担の場合、利用回数が多いと実質的な手取り額が減り、不満につながる可能性があります。こうした事態を避けるには、「月○回までは会社負担」といったルール設計が有効です。

2. 勤怠管理システムとの連携工数

給与前払いは、「働いた実績」に基づいて可能額を算出します。

  • アナログ管理の場合:タイムカードの内容をExcelに打ち直し、サービス会社へCSVデータを送信する…といった作業が毎日発生するようでは、人事担当者の負担が激増します。
  • 対策:自社で利用している勤怠管理システムと、「API連携」または「CSV連携」がスムーズに行えるサービスを選ぶことが必須です。

3. キャッシュフローへの影響(特に預託型)

「預託型(デポジット型)」の場合、給料日前にまとまった資金を専用口座に入金しておく必要があります。

  • 注意点:資金繰りに余裕がない場合、前払い用の資金確保が経営の負担になる可能性があります。「立替型」であれば、精算は後日(通常の給料日サイクルなど)で済むため、キャッシュフローへの影響を抑えられます。

4. 運用ルールの設定と従業員教育

「いつでも全額引き出せる」状態にすると、金銭感覚が麻痺してしまう従業員が出るリスクがあります。

  • 対策
    • 前払い可能額の上限設定(例:既払い給与の70%まで)。
    • 利用可能回数の制限。

5. 退職・トラブル時の対応

従業員が前払いを受けた直後に「ばっくれ退職」をしてしまった場合、過払い分の回収が困難になるケースがあります。

  • 対策:多くのサービスでは、前払いは「実績の範囲内」で行われるため、過払いは発生しにくい仕組みになっています。しかし、勤怠データの反映ラグ(時間差)により、欠勤情報が反映される前に申請されてしまうリスクについては、どのような防止策があるかベンダーに確認すべきです。

失敗しない給与前払いサービスの選び方【チェックリスト】

数あるサービスの中から、自社に最適なものを選ぶためのチェックリストを作成しました。

コンプライアンス(E-E-A-T)

  • 労働基準法・貸金業法に対する法解釈が明確に示されているか?
  • 弁護士の監修や、行政機関(金融庁等)への確認を行っているか?
  • PマークやISMS(情報セキュリティ)を取得しているか?

コスト・手数料

  • 初期費用・月額費用は予算内か?(無料のサービスもあり)
  • 従業員が負担する手数料は高すぎないか?(数百円程度が相場)
  • 振込手数料はどの銀行を使っても一律か?

運用・ユーザビリティ

  • 自社の勤怠システム・給与計算ソフトと連携できるか?
  • 従業員用のアプリは使いやすいか?(スマホで完結するか)
  • サポートデスクは従業員からの問い合わせに直接対応してくれるか?(人事の手間削減のため重要)

給与前払いサービス導入までのステップ

給与前払いサービスは、以下の手順で導入するのが一般的です。

給与前払いサービスの導入手順
  1. 情報収集・比較
  2. 社内提案・稟議
  3. 労使協定の締結
  4. 就業規則(賃金規程)の改定
  5. 従業員への周知・説明会
  6. 運用開始

各内容について以下で解説します。

1.情報収集・比較

複数のサービス資料を取り寄せ、上記チェックリストで比較します。

2.社内提案・稟議

採用コスト削減効果や定着率向上などのメリットと、コスト・リスクを提示します。

3.労使協定の締結

賃金控除(手数料天引きの場合)や口座振込に関する労使協定を結びます。

4.就業規則(賃金規程)の改定

前払い制度の導入について規定に追加し、労働基準監督署へ届け出ます。

5.従業員への周知・説明会

利用方法や注意点、手数料などについて従業員に説明します。

6.運用開始

給与前払いサービスを初めて導入する場合は、一部の部署や雇用形態からテスト導入することでリスクを抑えることができます。

給与前払いサービスのFAQ

給与前払いサービスに関するよくある疑問を、Q&A形式でご紹介します。

Q. 給与前払いサービスは違法ではありませんか?

A. 適切なスキーム(仕組み)で運用されているサービスであれば違法ではありません。ただし、法外な手数料を取る業者や、貸金業法に抵触するような実質的な貸付を行う業者は避ける必要があります。本記事で紹介したチェックポイントに基づき、信頼できる事業者を選定してください。

Q. 導入にかかる期間はどれくらいですか?

A. サービスによりますが、申し込みから運用開始まで、早ければ2週間、通常は1〜2ヶ月程度が目安です。勤怠システムとの連携設定や、社内規定(労使協定など)の整備にかかる時間も含んで計画しましょう。

Q. 正社員も利用できますか?

A. はい、利用可能です。ただし、一般的にはパート・アルバイトの方がニーズが高い傾向にあります。正社員向けには、冠婚葬祭などの急な出費に備える福利厚生として導入するケースが見られます。

まとめ:正しい知識でリスクを管理し、選ばれる企業へ

給与前払いサービスは、法律や運用の注意点さえクリアできれば、「採用応募数の増加」「定着率の向上」「従業員満足度のアップ」という大きな成果をもたらす強力なツールです。

重要なのは、「なんとなく便利そう」で選ばず、法的な安全性と運用の持続可能性をしっかりと見極めることです。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋 真倫

大阪大学経済学部卒業。都市銀行退職後に暗号資産関連スタートアップの創業メンバーとして業界調査や相場分析に従事。2018年、マネックスグループ入社。マネックスクリプトバンクでは業界調査レポート「中国におけるブロックチェーン動向(2020)」や「Blockchain Data Book 2020」などを執筆し、現在はweb3ニュースレターや調査レポート「MCB RESEARCH」などを統括。国内メディアへの寄稿も多数。2021年3月より現職。

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