コンセンサスアルゴリズムとは?代表的な4種類を一覧でわかりやすく解説

コンセンサスアルゴリズムとは

コンセンサスアルゴリズムとは、ブロックチェーンネットワーク内で発生する取引を承認する際のルールやプロセスのことを指します。

コンセンサスアルゴリズムにはさまざまな種類があり、暗号資産によって採用しているものが異なります。そして、どのアルゴリズムを採用しているかを調べることで、トランザクションの承認者を決める方法や、通貨としての理念などを知ることができます。

この記事では、コンセンサスアルゴリズムの仕組みや代表的な種類について、初心者の方に向けてわかりやすく解説していきます。

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コンセンサスアルゴリズムとは

コンセンサスアルゴリズムとは、ブロックチェーンの分散型ネットワーク内において、不特定多数の参加者(ノード)が共通の合意(コンセンサス)に達するためのルールやプロセスのことを指します。

銀行のような特定の管理機関が存在しないブロックチェーンネットワークでは、ネットワークに参加する複数の参加者が、自身が所有するPCを使用して通貨の管理を行う仕組みを採用しています。この通信システムのことを、「P2P(ピアツーピア)」と呼びます。

P2P(ピアツーピア)のイラスト
出典元:Coincheck

そして、管理者がいないブロックチェーンでは、参加者の中からトランザクションを承認する人を決めて、その承認者に対して取引終了後に一定の報酬を与える仕組みを採用しています。

その際に、誰が・どのような基準に則って取引を処理し、処理した際にどの程度の報酬が受け取れるかといったルールを決め、参加者はそのルールに従う形でトランザクションの処理を行います。

このルールに該当するものが、コンセンサスアルゴリズムです。

ブロックチェーンネットワークでは、このように事前に参加者の合意をもとにルールを決めておくことで、取引処理の公平性と透明性を確保しています。なお、トランザクションの承認を行うことを英語で“採掘”を意味するマイニングと呼び、承認を行う人のことを「マイナー」といいます。

マイニングとは

ビットコインなどの暗号資産の取引履歴は、ブロックチェーンを構成するブロックの中にすべて記録されています。「いつ・誰が・どのくらいの量の通貨を取引したか」といった細かな情報が、各ブロックに格納されているのです。

そしてマイニングとは、暗号資産の取引内容を確認(暗号を解読)して新しいブロックを作成し、それをブロックチェーンに追加するための作業のことを指します。

マイニングのイラスト
出典元:Coincheck

より具体的に説明すると、マイニングではハッシュ関数という関数を用いて、「ナンス」と呼ばれる値を算出します。

ナンスを一番早く導き出したマイナーは、作成したブロックを他のノードに示します。そして内容が正しいと判断されると、そのブロックは新たにチェーンに追加されます。その際、ブロックを作成したマイナーには報酬として暗号資産やトランザクション手数料が与えられます。

マイニングとは、このようにして取引を承認する一連の作業のことを指します。例えるなら、参加者全員で暗号パズルをして、最初に解いた人が賞品を獲得できるようなものだと考えるとわかりやすいでしょう。

取引内容を検証し、データの真正性を証明するマイニングは、ネットワークのセキュリティを保持するために不可欠な作業です。

代表的なコンセンサスアルゴリズム

コンセンサスアルゴリズムには複数の種類があり、通貨によって採用しているものが異なります。

代表的なコンセンサスアルゴリズムとしては、以下の4つが挙げられます。

代表的なコンセンサスアルゴリズム
  • PoW(プルーフ・オブ・ワーク)
  • PoS(プルーフ・オブ・ステーク)
  • PoI(プルーフ・オブ・インポータンス)
  • PoC(プルーフ・オブ・キャパシティ)

各コンセンサスアルゴリズムの概要やブロック生成にかかる時間、採用している通貨などを一覧表にまとめてみました。

メカニズムPoWPoSPoIPoC
名称プルーフ・オブ・ワークプルーフ・オブ・ステークプルーフ・オブ・インポータンスプルーフ・オブ・キャパシティ
概要ブロックチェーンネットワークで新しいブロックを生成するために計算作業を行う方式です。マイナーが複雑な計算問題を解くことで、取引を承認し、ブロックを生成します。保有している暗号資産の量に応じてブロックを生成する方式です。ステーキングによってネットワークのセキュリティを確保し、次のブロックを生成するバリデーターを選出します。ネットワーク内での活動や貢献度に基づいてブロック生成の権利を与える方式です。単なる保有量だけでなく、取引の頻度や重要性も考慮されます。ハードディスクドライブ(HDD)などの大容量ストレージを持つノードが、その容量を担保としてネットワークに参加し、ブロック生成の権利を得る仕組みです。
特徴計算能力が重要で、より多くの計算リソースを持つノードが有利です。保有する通貨量が重要で、より多くのステークを持つノードが有利です。ネットワークへの貢献度が重要で、取引頻度や重要性が考慮されます。ストレージ容量が重要で、より多くの容量を持つノードほどブロック生成の確率が高くなります。51%攻撃などのリスクを軽減できます。
ブロック生成時間ビットコインの場合、平均して約10分ごとに新しいブロックが生成されます。通貨やネットワークによって異なりますが、一般的にPoWよりも速い傾向があります。通貨やネットワークによって異なりますが、PoSと同様に比較的速いとされています。実装によって異なります。
エネルギー効率非常に低い。大量の計算能力と電力を必要とし、環境への影響が懸念されています。高い。PoWに比べて計算作業が少なく、エネルギー消費が抑えられます。PoSと同様に高い。ネットワーク活動に基づくため、計算作業は少なくて済みます。比較的高い。PoWのように膨大な計算処理を必要としないため、エネルギー効率が良いです。
採用している通貨・ビットコイン(BTC)
・ビットコインキャッシュ(BCH)
・ライトコイン(LTC)
イーサリアム(ETH)
・カルダノ(ADA)
・ポルカドット(DOT)
・ネム(NEM)・Filecoin

続けて、各コンセンサスアルゴリズムについてさらに詳しく見ていきましょう。

コンセンサスアルゴリズムの種類1.「PoW(プルーフ・オブ・ワーク)」

Pow(Proof of Work)は、ブロックチェーンネットワークにおける最も初期のコンセンサスメカニズムの1つで、ビットコインなど多くの暗号通貨で採用されています。

PoWでは、前述したマイニングによってトランザクションの承認を行い、取引情報が格納されたブロックを生成します。承認作業を行うマイナーたちが高度な計算を必要とする競争を行い、最初に「ナンス」と呼ばれる数値を見つけたマイナーに暗号資産や取引手数料などの報酬が与えられます。

これまでPoWは、マイニングに必要となる膨大なエネルギー消費が問題視されてきました。実際に、2021年5月には米EV大手のテスラ社がPoWマイニングによる環境負荷を懸念して、ビットコインによる自社製品の決済停止を発表しました(※)。

また、PoWではマイニングの集中化(特定のマイナーやマイニングプールが大部分のハッシュパワーを掌握する状況)も問題視されています。

(※)参考:日本経済新聞「テスラ、ビットコイン決済を停止 「環境負荷を懸念」」

コンセンサスアルゴリズムの種類2.「PoS(プルーフ・オブ・ステーク)」

PoS(Proof of Stake)は、通貨の「ステーク(保有量)」によってトランザクションの承認者を決めるコンセンサスアルゴリズムです。PoSでは、通貨の保有量が多いほどブロックを生成できる確率が高まります。

PoSはPoWとは異なり、計算能力を使った競争が発生しません。ブロック生成に多くのリソースを必要とせず、エネルギー効率が高いPoSは、環境に与える影響が少ないというメリットがあります。

しかしその一方で、通貨の保有量が多いほど承認者になれる確率が高まるという仕組みは、資産が多い参加者にブロック生成の機会が集中しやすく、ネットワークの中央集権化を招きやすいという問題もあります。

このような問題を回避するために、PoSの中には通貨の保有量だけでなく「保有期間」も評価対象とするタイプも存在します。

DPoS(デリゲート・プルーフ・オブ・ステーク)

DPoS(Delegated Proof of Stake)は、通貨の保有量に応じてブロックの承認権が与えらえるPoSの改良版とも言えるコンセンサスアルゴリズムです。

DPoSでは、参加者が代表者(デリゲート)を選出して、その代表者が代理でブロック生成を行います。その際、参加者は保有する通貨量に応じて与えられた投票権を使って、信頼できるデリゲートを選びます。

選ばれたデリゲートは取引の検証やブロックの生成などを行い、その報酬としてトランザクション手数料や新たに生成された通貨を受け取ります。その後、投票に参加したユーザーに対して、暗号資産の保有量に応じてデリゲートから配分が支払われます。

DPoSのメリットは、高速なトランザクション処理が実現できる点です。代表者が限られているため、合意に至るまでのプロセスが簡略化され、大量のトランザクションを迅速に処理することができます。

なお、DPoSを採用している暗号資産には、イオス(EOS)やトロン(TRX)などがあります。

コンセンサスアルゴリズムの種類3.「PoI(プルーフ・オブ・インポータンス)」

PoI(Proof of Importance)もDPoSと同様に、PoSの発展形として誕生したコンセンサスアルゴリズムです。

通貨の保有量に応じてブロックの承認権が与えられるPoSは、資産が多いユーザーにブロックを生成する機会が集中しやすいという問題があります。

こうした不平等な仕組みを改善すべく、PoIでは通貨の保有量に加えて、取引回数や取引量などいくつかの指標を設けて保有者の「重要度」をスコアリングし、その得点をもとにブロック生成者を選定します。このような仕組みにすることで、PoIでは特定の個人や組織に権限が集中するのを回避しています。

なお、PoIはネム(NEM)のブロックチェーンプロジェクト用に開発された独自のコンセンサスアルゴリズムで、採用している通貨もネムのみです。

コンセンサスアルゴリズムの種類4.「PoC(プルーフ・オブ・キャパシティ)」

Proof of Capacity(PoC)は、ハードディスクドライブ(HDD)などの大容量ストレージを活用したコンセンサスメカニズムです。このメカニズムでは、ノードがストレージ容量を担保としてネットワークに参加し、その容量に応じてブロック生成の権利を獲得します。より多くのストレージ容量を持つノードほど、ブロック生成の確率が高くなるため、ネットワークへの参加にはHDDなどの大容量ストレージが必要となります。

これにより、51%攻撃などのリスクを軽減できる上、PoWのような膨大な計算処理を必要としないため、エネルギー効率も比較的良好です。分散型ストレージネットワークのFilecoinなどで採用されています。

メリットとしては、低い電力消費、比較的安価なハードウェア要件、そして高いセキュリティ性が挙げられます。

一方、デメリットとしては、大容量のストレージが必要となることによる初期投資コスト、ストレージの経年劣化による信頼性の問題、そして一部の大規模ストレージ保有者による中央集権化のリスクがあります。

まとめ

ここまで、コンセンサスアルゴリズムの仕組みや代表的な種類について解説してきました。

コンセンサスアルゴリズムにはさまざまな種類があり、トランザクションの承認者を決める方法や、エネルギー効率などの点でそれぞれ違いがあります。

コンセンサスアルゴリズムを選択する際には、技術的な優劣だけでなく、公平性や環境に与える影響なども考慮する必要があります。例えば、マイニングに大量の電力を要し、温室効果ガス排出の原因となるPoWは、地球温暖化につながる問題が懸念されています。

このように、暗号資産を購入したりマイニングに参加したりする際には、採用しているコンセンサスアルゴリズムを調べることで、トランザクションの承認者を決める方法や通貨としての理念などを知ることができます。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋 真倫

大阪大学経済学部卒業。都市銀行退職後に暗号資産関連スタートアップの創業メンバーとして業界調査や相場分析に従事。2018年、マネックスグループ入社。マネックスクリプトバンクでは業界調査レポート「中国におけるブロックチェーン動向(2020)」や「Blockchain Data Book 2020」などを執筆し、現在はweb3ニュースレターや調査レポート「MCB RESEARCH」などを統括。国内メディアへの寄稿も多数。2021年3月より現職。

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