インタビュイー:
株式会社電話放送局 営業部 営業推進課 課長 前田氏
「カード決済IVR」とは、どのようなサービスですか?
カード決済IVRは、電話でのクレジットカード決済をIVR(自動音声応答)によって自動化するサービスです。従来のコールセンターでは、オペレーターがお客様からカード番号を口頭で聞き取り、端末に入力して決済を行うのが一般的でした。しかし改正割賦販売法により、カード情報の「非保持化」、つまり自社のネットワーク内でカード情報を保存・処理・通過させない方式が義務化されました。
これを受けて、コールセンターでは対応端末の導入や運用の大幅な見直しが迫られたわけです。当社のサービスでは、物理的な端末を導入しなくても、電話操作だけで決済を完結できます。お客様が電話のプッシュボタンでカード番号を入力するため、オペレーターがカード情報に一切触れることなく決済処理が完了します。PCI DSS認証(クレジットカード業界の国際セキュリティ基準)を取得しており、改正割賦販売法の基準もクリアしています。
サービスが生まれた背景には、どのような課題があったのでしょうか?
法律改正の影響が大きいです。割賦販売法の改正によって、カード情報を処理するための資格や基準が必要になり、コールセンターは対応端末の導入や運用の大幅な見直しを迫られました。非保持化を実現するためには、大きく分けて3つの方法があります。1つ目は「外回り方式」で、決済代行会社から貸与された専用端末でカード情報を処理し、社内システムにはカード情報を表示しない方法。2つ目は「内回り方式」で、カード情報を暗号化してデータとして認識されない形に変換する方法。そして3つ目が当社のようにIVRを活用し、オペレーターを介さず顧客が自動音声応答システムで直接入力する方法です。
もう1つの背景として、現場でのセキュリティリスクがあります。実際に、テレマーケティング会社のスタッフが業務上知り得たクレジットカード情報を持ち出して不正利用するといった事件が起きています。法律の問題だけでなく、オペレーターにカード情報を触れさせたくないという現場のニーズが、このサービスの開発背景にはあります。
競合となる端末方式と比較して、どのような点が差別化ポイントですか?
端末方式の場合、まずオペレーターがカード番号を口頭で聞き取り、端末に入力する必要があります。聞き取った情報はデータとして保存できないため、起票用紙に書いて処理が終わったらシュレッダーにかけるといった運用が必要になります。当社のIVR方式では、確実に機械を通して処理するため、そういったリスクを根本から排除できます。オペレーターがカード番号を聞くこと自体がなくなるので、内部不正の余地そのものがなくなるわけです。
さらに大きな差別化ポイントが、決済代行会社への依存がないことです。競合の中には、特定の決済代行会社がIVRサービスを提供しているケースがあります。その場合、その決済代行会社のサービスしか使えない、という点があります。しかし、当社はIVRのベンダーとしてサービスを提供しているため、決済代行会社の縛りがありません。手数料の兼ね合いで決済代行会社を変更したい場合でも、当社のサービスはそのまま継続利用できます。
また、自社開発のIVRなので、お客様の要望に応じた音声変更や機能追加といったカスタマイズにも柔軟に対応できます。既存のコールセンター環境をそのまま活かして導入できるため、大きな設備投資も必要ありません。
「代理入力」と「直接入力」の2つの方式があるとのことですが、どのように使い分けるのですか?
PCI DSSの要件上、代理入力は禁止されているわけではないので、そこはセンターごとに判断が異なります。お客様に確認して、直接入力したいかどうかを聞いているところもありますし、高齢者の方やプッシュ入力がしにくい環境にある方には代理入力で対応するケースもあります。
企業の業態やお客様の層によって最適な入力方法は変わってきます。当社としては、導入時のヒアリングで顧客属性を確認したうえで、どちらの方式が適しているかをご提案しています。セキュリティの観点からは直接入力が理想ですが、現実の運用を考えると柔軟な対応が必要な場面もあります。
導入が特に進みやすいのは、どのような企業ですか?
やはり大規模なコールセンターを運用している企業や、電話業務を外部委託している企業は導入が進みやすいです。端末方式だと、大規模なセンターでは端末を大量に導入しなければならず、コストが非常に高くなります。外部委託先に端末を渡して運用するのも、セキュリティ上かなり大変です。社員教育の徹底や監視カメラの設置など、別の対策にもお金をかけなければいけません。
また、繁閑差がある企業にも向いています。端末方式では、繁忙期に合わせて台数を増やしたり、閑散期に減らしたりといった柔軟な対応が難しいです。平均的な台数で持っておくしかなく、繁忙期には処理が追いつかなかったり、メモ用紙がどんどん溜まっていくようなことも起こりかねません。当社のサービスは電話回線ベースなので、席数に関係なく月額費用は固定で、そうした制約がありません。
もう1つ大きなポイントとして、複数拠点で運用している企業には特にメリットがあります。端末方式ではそれぞれの拠点に設置が必要ですし、拠点変更や委託先変更のたびに端末を移設しなければなりません。当社のサービスは、当社が指定する電話番号に電話するだけでよいので、どの拠点からでも1契約で運用できます。コールセンターの環境に依存しないというのは、大きな強みです。
コールセンター以外での活用事例はありますか?
メインはコールセンターですが、ユニークな使い方もあります。たとえば、現地に販売員が赴いて決済が必要になるケースです。現地で費用が確定するサービスのように、現地で見積もりを出してその場で決済するような場合で、電話をかけてカード情報を入力し決済を完結させるという使い方ができます。最近は小型端末が普及してきたのでそういったニーズは減っていますが、端末が使えない環境での決済手段として活用いただけます。
導入のきっかけとして多い相談内容は何ですか?
やはり社会的背景が大きいです。オペレーターがカード番号を聞くということに対して、実は三者全員が不安を抱えています。オペレーター自身は、「万が一情報が流出したらどうしよう」、「間違えてメモしてしまったらどうしよう」、と心理的な負担を感じている。お客様側も、「この人に番号を伝えて大丈夫なのか」という不安がある。運営している企業側も、人がカード番号を聞くこと自体がリスクだと認識している。三者とも何も良いことがないのです。
身近な例で言うと、デパートなどでクレジットカードを渡したら、店員さんがカードを持って別の場所に行ってしまう場面がありますよね。自分のカードを持ってどこに行くんだろうと不安になる。あれと本質的には同じことが、電話の世界でも起きているわけです。機械を通じて処理することで、誰が電話に出てもお客様が安心してカード情報を入力できるという点は、今の時代に合ったソリューションだと考えています。
サポート体制で特に重視している点を教えてください
まず、お客様の現状の運用を詳細にヒアリングして、当社のサービスが本当に合っているかを見極めることを大切にしています。というのも、このサービスを導入するには、1顧客に対して2回線を使用する必要があるんです。通話中の回線を保持したまま、もう1回線で当社に外線発信する仕組みなので、そういった設備があるかどうかの事前確認が重要になります。
次に、どの決済代行会社を使っているかを確認します。すでにパッケージ化している会社であれば固定価格でご提供でき、過去に接続実績がある会社であれば中間的な価格帯でのご提案になります。そのうえで、外線転送の設定方法や、顧客属性に応じた入力方式の提案、導入後の運用をトータルでフォローしています。
料金体系はどのようになっていますか?
基本的には初期費用40万円、月額費用20万円からです。月額費用には月間4,000件の着信が含まれており、超過分は1件25円の従量課金が加算されます。ただし、この価格はすでにパッケージ化している決済代行会社の場合です。パッケージ化していない決済代行会社の場合は、都度開発・設定費用が発生するため変動します。過去に接続実績はあるがパッケージ化していないというケースもあり、その場合は中間ぐらいの価格になります。
初回のご相談時に、まずどの決済代行会社をお使いかをお聞きするので、その時点である程度の費用感はお伝えできます。
今後の展望や注力していきたい分野を教えてください
この分野に関しては、AIでまかないやすい領域ではないと考えてはいますが、柔軟性よりも確実性が求められる分野です。カード番号を確実に受け取って処理するということが最も重要なので、「先進的な技術を導入して今後は」、という話ではなく、社会背景や法改正に則って仕様変更や機能追加を着実に行っていくことが大切だと考えています。
音声入力(音声認識)による番号入力も技術的には考えられますが、当社としては現時点ではプッシュ入力(DTMF)の方が確実性は高いと判断しています。音声だと周囲の人に聞かれるリスクがありますし、通話録音装置などの音声ログの残り方も気になります。音声認識の精度も完璧ではなく、誤認識の問題もあります。決済という分野では「確実に処理できること」が何より重要です。
一方で、グローバル化や多様性が進む社会の中で、さまざまな利用者の方に安心感を提供していくことは今後も大切にしていきたいテーマです。プッシュ入力であれば言語の壁に関係なく誰でも操作できますので、多様な利用者に対して安心・確実な決済環境を提供し続けていきたいと考えています。
まとめ・編集部コメント
電話放送局のカード決済IVRは、コールセンターにおけるクレジットカード情報の非保持化という課題に対して、端末方式とは異なるアプローチで解決策を提供するサービスです。オペレーターがカード番号に一切触れないという仕組みは、セキュリティリスクの排除だけでなく、オペレーターの心理的負担の軽減、顧客の安心感向上にもつながります。
特に注目すべきは、決済代行会社に依存しない設計です。決済代行会社を変更しても、サービスを継続利用できない決済代行会社でなければ利用できるため、手数料交渉や乗り換えの際に制約を受けません。複数拠点を1契約で運用できる点や、席数に関係なく月額費用が固定という料金体系も、大規模なコールセンターを持つ企業にとっては大きなメリットです。
AIや先進技術への追随ではなく、「確実性」を最優先に据えるという姿勢は、決済というミッションクリティカルな分野において信頼感があります。改正割賦販売法への対応やカード情報の非保持化を検討している企業は、端末方式以外の選択肢として一度相談してみる価値があるのではないでしょうか。