インタビュイー:
Netsujo株式会社 代表取締役 飯田 氏
Netsujo株式会社とはどのような会社ですか?
私たちは2023年に京都で創業した、Web3・AI・ブロックチェーン領域の実装型BizDev企業です。企業や自治体の新規事業・DXを対象に、事業課題の整理から、Web3を使うべきかどうかの判断、構想整理、PoC(概念実証)設計、要件定義、システム・アプリ開発、本番導入、運用改善までを一貫して支援しています。
技術の導入自体を目的にするのではなく、通常のWebシステムやAIを含む複数の選択肢を比較し、事業成果につながる方法を設計することを重視しています。また、コンサルティングやシステム開発で得た収益を自社R&Dへ再投資し、現場で得た知見と新規事業の研究成果を循環させながら事業を成長させています。
Web3コンサルティング事業を始められた経緯を教えてください
起業のきっかけになったのは、実はブロックチェーンを使った献血支援サービスの構想でした。当時とあるハッカソンに応募した際、自分が一番課題に感じていることは何だろうと考えたときに、献血活動に着目しました。私自身、これまで7回ほど献血に行っているのですが、正直どれもたまたま近くを通りかかって時間があったから行った、という程度の動機でした。
一方で、献血事業には有名IPとのコラボレーションのような形でお金がかけられているのを見て、それよりも自分が本当に欲しかったのは、貢献した血液が実際にどう使われたのかという「リアクション」だったのではないかと思い至りました。自分の血液で誰かの命が救われたという事実が分かれば、それが次に献血へ行く内発的な動機づけになるはずだと考えたんです。そこで、ブロックチェーンの検証可能性や履歴管理の特性を生かし、貢献の実感を返す仕組みを構想しました。この構想は当時出場したハッカソンで実際に評価をいただき、社会課題の解決策として受け入れられる手応えも感じました。
ただ、実際の事業化には医療機関や関係機関との連携が不可欠で、当時の私たちには十分なノウハウやネットワークがありませんでした。そのため、まずはWeb3コンサルティングやブロックチェーン開発の実務を積み重ねることにしました。献血の課題を諦めたわけではなく、現在も「Cycle」というブロックチェーン献血プラットフォームのR&Dとして構想を継続しています。
Web3コンサルティングの強み・差別化ポイントを教えてください
大きく3つあります。1つ目は、Web3の導入を前提に提案しないことです。Web3コンサルティングを提供していますが、すべての課題にブロックチェーンが必要だとは考えていません。Web2やAIで十分な場合は「Web3を使わない」という選択肢も提示し、事業課題、顧客価値、費用対効果、運用体制から最適な方法を設計します。
2つ目は、事業性・技術・運用を分断せず、構想整理から実装後の改善まで一貫して支援できることです。事業開発とエンジニアリングを同じチームで扱い、必要に応じてAIエージェントも活用しながら、社内判断や開発発注に使える要件、技術構成、費用、体制、スケジュールへ落とし込みます。直近のRWA(現実資産)事業でも、構想整理からMVP要件定義までを一貫して支援しました。
3つ目は、構想段階や小規模な検証から柔軟に始められることです。大規模開発の前に、検証すべき仮説、KPI、成功条件、撤退基準を整理し、必要最小限の範囲でPoCを設計します。固定価格の「Web3 PoC設計パッケージ」も用意しており、予算と期間を明確にした上で次の投資判断につなげられます。
どのようなプロジェクトには関わらないようにしていますか?
判断基準は主に2つあります。1つ目は、解決したい課題や提供価値が明確で、私たちが責任を持って貢献できるプロジェクトかどうかです。2つ目は、事業の正当性や利用者への説明責任が担保されているかどうかです。Web3領域には、表面的な新規性や投機性だけが先行し、実態や社会的意義が伴わない企画もあります。そうした案件には関与せず、長期的な信頼を損なわないことを重視しています。
相談の窓口はどのような部署・役職の方が多いですか?
新規事業責任者、経営企画、DX推進、CTO・技術責任者、代表の方からご相談いただくことが多いです。「Web3で何かしたい」という段階だけでなく、まだ技術を決めていない構想段階で、事業と技術の両面を整理できる相談先を探しているケースが中心です。
Web3を活用した新規事業は、法務、セキュリティ、会計、既存システム、社内稟議など多くの論点が関係します。担当者だけで進めると後から前提が覆りやすいため、初期段階から事業責任者に加え、法務・経理・セキュリティ担当、必要に応じて経営層も巻き込む体制を提案しています。
相談が多い導入理由を教えてください
最も多いのは、「実現したいことはあるが、ブロックチェーンを使うべきか判断できない」「構想が曖昧で、PoCや開発を発注できる要件になっていない」という相談です。NFT、SBT、DID、RWAなどのキーワードは出ていても、顧客価値、収益モデル、運用主体、法規制まで整理できていないケースが少なくありません。
大手の開発会社へ相談するには要件が固まっておらず、かといって社内だけでは技術的な実現性を判断できない。この間を埋め、曖昧な構想を社内稟議やベンダー選定に使える形へ翻訳することが、Netsujoの役割だと考えています。最初から大きく作るのではなく、構想整理、PoC設計、実装という段階に分けて投資判断できる点も、相談いただく理由の一つです。
これまで携わってきたプロジェクトにはどのようなものがありますか?
医療、農業、金融、製造業、自治体関連など、幅広い領域に携わってきました。岩手県では、コミュニティナースの方々が運営する畑にDAO(自律分散型組織)の仕組みを活用するプロジェクトを支援しました。金融領域ではRWA事業の構想整理とMVP要件定義、製造業では機械の製造・出荷履歴をオンチェーンで管理するトレーサビリティ構想の相談を受けています。
また、NFT・SBTを活用した自治体向けスタンプラリー事業の企画・事業推進にも携わりました。技術領域を限定するのではなく、事業課題に応じて必要な専門性を組み合わせています。
金融領域のRWAプロジェクトではどのような支援をされましたか?
私がチームリーダーとして入り、ブロックチェーンエンジニア2名と共に論点を分解して意思決定の順序を整理しました。
RWAではどのブロックチェーンを選ぶかだけでなく、資産の権利関係、トークンの移転条件、既存取引との関係、運用主体、法務確認の範囲などを同時に整理する必要があります。技術的な実現性を検証し、最終的な法律判断は専門家に確認いただく前提で論点を整理した上で、MVP(実用最小限の製品)の要件定義、本番移行までのロードマップ、概算費用をまとめました。
構想段階の案件ですので、売上のような直接的な成果指標を示すフェーズではありませんでした。一方で、曖昧だった構想を「社内で検討できる」「開発会社へ相談できる」状態まで具体化し、後戻りの原因となる論点を先に可視化できました。事業と技術の両方を最初から同じテーブルで扱うことの価値を確認できた事例です。
どのような企業が向いていますか?成功パターンを教えてください
成功しやすいプロジェクトには3つの条件があります。1つ目は、技術ではなく解決したい事業課題から始まっていることです。通常のWebシステム、AI、Web3などを比較した上で、ブロックチェーンでなければ解きにくい課題があるかを判断します。2つ目は、代表、CTO、新規事業責任者など、投資と意思決定に責任を持つ方が関与していることです。3つ目は、法務・セキュリティ・運用担当を初期段階から巻き込んでいることです。
Web3プロジェクトは、開発後に法務やセキュリティの問題が判明すると、手戻りが大きくなります。社内にWeb3の専門人材がいなくても問題はありませんが、分からない論点を早期に明らかにし、必要な専門家へ確認できる体制を最初から設計しておくことが重要です。
サポート体制、特に力を入れているポイントを教えてください
最も重視しているのは、構想整理とPoC支援の設計段階です。開発を始める前に、何を検証するのか、どのKPIを測るのか、どの条件を満たせば本番へ進むのかを明確にします。PoCは「試作品を作ること」ではなく、次の投資判断に必要な材料を集めるプロセスだと考えています。
成功条件だけでなく、撤退基準も着手前に決めます。検証結果が不十分なまま「もう少し続けよう」と延長すると、費用と時間だけが積み上がります。何が分かれば終了するのか、どの条件なら本番移行しないのかを合意し、結果が期待通りでない場合も学びを残して止められる設計にします。
そうした撤退の話も含めてフラットに話し合えるお客様と、責任を持ってご一緒したいと考えています。
料金体系について教えてください
料金は、目的、対象範囲、必要な機能、法務・セキュリティ要件、運用体制に応じて個別に設計します。目安として、構想フェーズは50万円〜200万円、PoCフェーズは200万円〜800万円、本番導入は800万円〜です。要件定義から開発・運用まで一貫して対応でき、案件の特性に応じて、日本人PMとベトナムの開発体制を組み合わせることも可能です。
一方で、最初の一歩を踏み出しやすい固定価格パッケージも用意しています。「Web3 PoC設計」は80万円(税抜)・4週間、「スマートコントラクト発注前監査」は40万円(税抜)・2週間、「AI業務適用診断」は30万円(税抜)・10営業日です。いきなり開発を発注するのではなく、社内判断やベンダー選定に必要な成果物を先に整え、その後のカスタム支援へ進める設計です。
今後の展望を教えてください
今後、特に力を入れる領域は大きく2つあります。1つ目は、DePIN(分散型物理インフラネットワーク)です。コンサルティングや受託開発で得た知見を生かし、日本発で社会課題の解決に直結するWeb3プロダクトを生み出したいと考えています。
その一つが「YaseiGrid」です。地域に分散したAIカメラなどを活用し、クマ、イノシシ、シカといった鳥獣の出没を検知・通知するDePIN型の鳥獣リスクデータネットワークを構想しています。Web3そのものを前面に出すのではなく、地域安全や鳥獣被害という具体的な課題を起点に、データ提供者や設置者が参加できる仕組みを検証しています。また、創業の原点である「Cycle」も、献血活動を支えるブロックチェーン基盤として研究を続けています。
2つ目は、AIとWeb3の組み合わせです。AIエージェントが業務判断や取引を担う範囲が広がるほど、「誰が、どの情報を基に、どの処理を行ったか」を検証できる仕組みが重要になります。AIの自動化能力と、ブロックチェーンの検証可能性・証明性をどう組み合わせるかを自社でも研究し、コンサルティングとプロダクト開発の双方へ還元していきます。
まとめ・編集部コメント
Netsujo株式会社は、「Web3を導入する前提で提案しない」という姿勢を軸に、構想整理から要件定義、システム開発、本番導入、運用改善までを少人数体制ながら一貫して支援している点が大きな特徴です。医療・農業領域のDAO活用から、金融領域のRWA案件、行政向けのNFT・SBTを使ったスタンプラリーまで、業種業界を問わず幅広いプロジェクトに携わってきた実績があります。
特に印象的なのは、技術ドリブンではなくビジネス上の必要性からブロックチェーンの活用方法を柔軟に組み替えていく姿勢です。PoC実施時には撤退要件をあらかじめ設計するなど、「成功させたい思い」と「無駄な負債を抱えない冷静さ」を両立させている点も、Web3コンサルティングという不確実性の高い領域において信頼できるポイントだと言えます。料金面でも、Web3 PoC設計やスマートコントラクト監査といった入り口となる固定パッケージを用意しつつ、実態に応じたカスタム対応も可能にしている柔軟さがうかがえます。
「Web3を使って何かやりたいが、まだ構想が固まっていない」という初期段階の企業様や、事業課題の解決策としてブロックチェーンが本当に適切かどうかを客観的に相談したい企業様にとって、Netsujo株式会社は有力な選択肢となるサービスです。技術と事業の両面から伴走してくれるパートナーを探している場合は、一度相談してみる価値のある会社だと言えるでしょう。