インタビュイー:
株式会社マネーフォワード SMB本部 パートナービジネス部 部長 兼 パートナーアライアンス室 事業開発担当 栗本 氏
『マネーフォワード クラウド経費』(以下、『クラウド経費』)はどのようなサービスですか?
『クラウド経費』のコンセプトは、「経費精算は、自走する。」で、使った瞬間に経費精算されている未来を目指す、クラウド型経費精算システムです。
具体的には、領収書を自動的に読み取るAI-OCR機能や、クレジットカード・ICカード・各種金融機関・旅行系サイトとのデータ連携によって、これまで紙のやり取りが当たり前だった経費精算を自動化します。申請者である営業担当者だけでなく、承認する上司、そして経理担当者まで経費精算に関わる全ての方の業務を削減しながら、ガバナンスの強化も同時に実現するサービスです。
経費精算は全社の幅広い従業員が関わるため、誰が使っても使いやすいという点を大事にしています。
サービス立ち上げの経緯や開発の背景を教えてください
多くのビジネスパーソンが毎月月末に領収書を並べ、紙に貼り付け、経費の内容をExcelに入力する作業に毎月数時間とられていたます。この非生産的な時間をできるだけ減らして、皆さんがもっと本業に時間を使えるようにしたいという思いが開発のきっかけです。
当社はこの経費精算領域に参入する以前から、クラウド会計ソフト『マネーフォワード クラウド会計』や個人向け家計簿アプリ『マネーフォワード ME』の事業を展開していました。「お金の流れを見える化する」という、当社の強みとして培ってきた部分を、経費精算に展開することで、これまでの考え方をさらにバージョンアップしていけるという手応えがあり、開発しました。。
競合他社と比較した際の強みは何ですか?
あえて3つ選ぶとすれば、まず一つ目は「オートメーション」という入力の自動化です。AI-OCRを使ったデータ入力自体は、最近では他社のシステムにも一般的になってきましたが、当社の場合は創業から培ってきたデータ連携の基盤が強みになっています。旅行予約サイトや鉄道予約サイトといった外部サービスと連携するだけで、自動的にデータが流れ込み、各外部サービスが発行している公式の領収書も自動で取り込むことができます。これは、長年積み重ねてきた外部サービスとの連携基盤があってこそ実現できている強みです。
二つ目は、ペーパーレスやキャッシュレスを前提としてサービスを最初から設計している点です。他社サービスの中には、Excelで管理していたものをシステム化するという発想で設計されたものもあります。一方で当社は、最初からデータ連携やAI-OCRによる紙のない世界をどう作るかという発想でシステムを構築しているため、UX・UIの面でも使っていただいたお客様から高く評価いただいています。
三つ目は、周辺サービスとの連携性です。当社は経費精算だけでなく、会計ソフト・給与計算・法人カードといった隣接領域のサービスも展開しています。経費精算で承認が終わっても、その後に会計システムへデータを連携し、月次決算を締めるところまでが本来のゴールです。この一連の流れをシームレスに繋げられるのは、会計まで自社でカバーしているからこそです。
また近年、ユーザーが触るフロント側は、生成AIの登場によりUIが変化していますが、銀行や金融機関とのデータ連携APIはセキュリティ上の理由から簡単には構築できません。長年積み上げてきた外部サービスとの接続基盤は、当社のコアコンピタンスだと思っています。
どのような企業が導入していますか?
50名未満の中小企業から51名以上の中堅以上の企業まで、幅広く導入いただいています。。
50名未満の企業向けには、経費精算以外のバックオフィスに必要な主要サービスをまとめたプランを提供しています。経費だけでなく、請求書や給与といった他のサービスも利用し、業務フロー全体を効率化していただくことをお勧めしています。設定もシンプルなスタンダード構成からスタートできるので、導入のハードルが低い点も喜んでいただいています。
一方、51名以上の企業、特に大企業になってくると、すでに基幹システムが稼働しているケースがほとんどです。そのため、『クラウド経費』を単体で導入し、既存の会計システムと連携してハイブリッドで使っていただくケースが多くなります。また、大きな組織ではガバナンスをしっかり効かせる必要がありますので、承認フローを柔軟に設定できる機能など、大企業向けの要件にも対応した形でご利用いただいています。
導入のきっかけや効果について教えてください
ご相談の入り口としては、やはり経理部門・財務部門からのケースが最も多いです。ただ、最近の傾向として、社内のDX推進部署がシステム導入の候補として検討してくださるケースや、大企業では情報システム部門が現場のニーズを受けて調査を開始するケースも増えてきています。
導入の動機という点では、非生産的な時間の削減ももちろんですが、法令対応での電子帳簿保存法への対応が、依然として最も強い動機になっています。電子帳簿保存法の施行後、事務処理規定などを設けて電子データを原本として保存しているものの、業務フローは変更できておらず、結局紙ベースでの社内処理をおこなっている、というケースは多いです。紙と電子両方の保管を行っていて、二重運用で法令対応を乗り越えたもののそれを維持し続けるのがやはり大変だということで、しっかりシステム化しようという流れが続いています。
一つ、導入事例を紹介すると、。紙ベースの煩雑な経費精算フローが店舗と本社双方の業務時間を圧迫していて、毎月60店舗中50店舗で申請の差し戻しが発生している企業がいらっしゃいました。しかし、クラウドの導入後は、月初の作業時間が最大60時間から約6時間へ削減されたとのお声をいただいています。電子帳簿保存法への対応とセットで導入していただくことで、紙でのレシート・領収書管理自体が店舗で不要になり、現場と経理担当者の双方で迅速な効果を感じていただいています。
他社と比較検討される中で、選ばれる決め手は何ですか?
一番わかりやすいのは、トライアルで実際に触っていただいた時の「手入力削減の度合い」と「使い勝手」だと感じています。
また従業員の目線では、AI-OCRの読み取りやすさや、当社の『マネーフォワード ビジネスカード』を併用することで月末の申請作業自体が大幅に削減される点が高く評価されています。カードで決済すれば、リアルタイムでデータが連携され、ワンクリック・ツークリックで経費申請と上司の承認が完了するという体験は、実際に触れていただければ感じていただけると思います。
経理担当者の目線では、経費精算の後に会計システムへデータを持っていき、月次決算を締めるというところまでを見た時に、当社が経費精算から会計まで一気通貫でカバーできる点を評価していただいています。また、立替経費の従業員への振込も、当社の給与計算システムと連携することでシームレスに対応できます。経費精算という一点だけでなく、そこから派生するバックオフィス業務全体の効率化という観点で評価いただけると、当社の強みが最も発揮できると思っています。
サポート体制や料金体系について教えてください
全てのお客様にチャットとメールによるサポートを利用料に含まれる形でご提供しています。チャットサポートは入り口に自動応答が入ることもありますが、基本的にオペレーターが対応しており、応答の速さや回答の満足度をお客様から高く評価していただいています。
導入時については、大手のお客様向けに伴走型の導入支援サポートをご提供しています。規模や要件によって異なりますが、1ヶ月から複雑な場合は6ヶ月ほど、業務フローの整理からシステムの最適化まで担当者がフォローします。
料金体系については、機能差に応じた3つのプラン(チーム・コーポレート・エンタープライズ)をご用意しています。課金の考え方として「アクティブユーザー課金」を採用しており、1ヶ月の中で経費精算に関わった方の人数に対して課金されます。従業員数で課金する他社とは異なり、実際に使った人数分だけを請求するという考え方です。
例えば100名いる会社でも、実際に経費が発生する営業担当者と総務スタッフが計25名であれば、25名分のみのご請求となります。経費の発生が月によって変動する企業にとっては、無駄のないコスト管理ができると評価していただけるケースが多いですね。
今後の展望を教えてください
AI技術への注力という点では、昨年から一部ユーザーに対しAIエージェントを提供開始しています。AIが、申請の不備がないかをチェックし、領収書や請求書を自律的に収集します。
そして4月7日に、新しいAIプロダクト「マネーフォワード AI Cowork」を発表しました。これは、こういったエージェントたちを自然言語で業務の指示をするものです。7月からの正式リリースに向けて、現在先行受付を開始しました。
具体的には、「月次決算を進めて」と指示するだけで、バックグラウンドで経費精算のエージェントが動き出し、さらに会計側のエージェントも立ち上がって決算を締める作業を進めてくれます。人間が裏側の細かい挙動を理解しなくても、複数のエージェントが自動で作業を進めてくれる世界を実現しようとしています。
また、AI CoworkはChatGPTを使うような感覚で自然言語で操作できます。エンジニアリングのリテラシーが高くない経理担当者の方でも、AIをより身近に活用できるアプローチだと考えています。
まとめ・編集部コメント
「マネーフォワード クラウド経費」は、単なる経費精算ツールにとどまらず、家計簿・会計ソフトの提供によって積み上げてきたデータ連携の基盤を武器に、バックオフィス全体の効率化を一気通貫で実現するプラットフォームとして進化を続けています。「マネーフォワード クラウド」の法人課金顧客数は現在24万社以上に導入され、ITreview Grid Award 2026 Springでは29期連続「Leader」を獲得するなど、市場での高い評価がその実力を裏付けています。
今回のインタビューで特に注目したいのは、「アクティブユーザー課金」というコスト設計の合理性と、7月リリース予定の「AI Cowork」が示す未来像です。経費精算から月次決算まで、自然言語で完結する世界は、経理担当者の業務を根本から変えるポテンシャルを持っています。
電子帳簿保存法への対応が急務な企業、バックオフィスのDX化を検討している担当者の方は、まず1ヶ月の無料トライアルで「手入力の削減度合い」を実際に体験してみることをお勧めします。