インタビュイー:
株式会社Srush データ分析支援カンパニー DPO普及部部長 広瀬氏
「データ活用まるなげくん」とはどのようなサービスですか?
紙やバラバラのExcelなど、分析に使える状態になっていないデータを当社が代行して構造化し、分析からAI活用まで一気通貫でサポートするサービスです。発注書のような整ったフォーマットの紙であっても、データ分析に使うためには「どの会社から」「いつ」「いくらで」「何を」発注されたのかが1行のレコードとして整理されている必要があります。当社はこのレコード化の作業を人手と仕組みの両方を組み合わせて代行し、分析可能なデータへと変換しています。さらに、分析した結果を次のアクションにつなげるところまで踏み込んで支援している点が特徴です。過去の受発注データを分析して発注のタイミングを予測したり、社内稟議の申請手前まで作り込んだAIエージェントを構築したりと、データ活用の手前から後処理までを幅広く請け負っています。
データ活用まるなげくんを立ち上げた背景を教えてください
私自身がこの2年ほどの間に展示会へ50回以上出展する中で、データがまだ紙のままで分析以前の段階でつまずいている企業様に数多くお会いしたことがきっかけです。当時はそうした課題に対して他のツールをお使いくださいとお断りせざるを得ない場面が多く、データ活用を広めたいと言いながらそれを提供できていないというジレンマがありました。そこを自社で支援できるようにすれば、お客様にとっても、日本全体のデータ活用を広げるという観点でも意味があると考え、データ活用まるなげくんの提供を始めました。
根底にあるのは、代表の樋口が掲げる「データドリブンジャパン」という構想です。2030年までにすべての企業がデータを使いこなし、日本が再び世界に誇れる国になることを目指しています。ガートナージャパンが2025年1月に発表した調査では、データ活用で全社的に十分な成果を得ている日本企業は8%にとどまるとされています。トライアルも含めて約300社のお客様と向き合ってきた中で感じるのは、データを使えない原因は能力ではなく、人手がいない、専門人材が採用できない、時間がないという構造にあるということです。夜にExcelを手作業で打ち込むのが精一杯という会社も少なくありません。当社ではこの課題に応える領域を「DPO(データ・プロセス・アウトソーシング)」と呼んでいます。経理や給与計算を外部に任せるのと同じように、データの収集・整理・基盤構築・分析・レポート・社内共有までの工程をまとめて任せていただく考え方で、それを形にしたのがデータ活用まるなげくんです。
Srush AIとの違いや使い分けについて教えてください
大きく2つの使い分けがあります。1つ目は、分析ツール自体をまだお持ちでない企業様に、まずSrush AIやBIツールをご案内するパターンです。使いやすく、料金面でも他社と比べてお安く設定していると考えています。2つ目は、すでに可視化ツールを導入されているものの、それを活用する人材や工数が足りていない企業様に対して、データ活用まるなげくんの代行サービスのみをご提供するパターンです。ツールと人材代行はセットでなければならないものではなく、企業様の状況に合わせてどちらか一方、あるいは両方を組み合わせてご利用いただけます。
競合と比較した際の強みはどこにありますか?
AIを使ったデータ構築を行う会社はほかにもありますが、構築した後の運用まで手掛けている会社はまだ多くないと感じています。当社はデータ活用に特化して事業を続けてきた会社として、紙のデータをデジタル化してテキストを抜き出すだけで終わらせず、その先の分析に使えるレコード型に変換するところまでをセットで対応しています。このデータ活用する上で本当に必要なところまで踏み込む姿勢が、他社との違いだと考えています。
外部に任せると、社内でデータを見る力が育たないのではありませんか?
設計を誤れば、そうなる可能性はあると考えています。答えを外部に求め続けて自社で数字を見なくなってしまうのは、依存であって活用ではありません。そのため当社では、任せていただくものと任せていただかないものをはっきり分けています。任せていただくのは、データを集める、整える、届けるという工程です。一方で、数字を見て考え、決めて動くという意思決定は、経営者や現場の方々に残していただきます。分析の前には、散らばった数字を集め、表記を揃え、つながる形に整えるという長く地味な工程があり、多くの企業はその手前で止まってしまいます。その工程を外に出すことで、意思決定にこそ時間を使っていただきたいというのが当社の考えです。朝、整った数字が手元に届き、それを見て今日の一手を決める。そうした状態をつくることを目指しています。実際に、初期のダッシュボード構築を当社で代行した後、お客様自身で分析を内製化されたケースもあります。
どのような部署・企業から相談が多いですか?
データ活用まるなげくんに関しては、経営層や経営企画部門からのご相談が多い傾向にあります。データ活用を進めたいという意思はあるものの、それを担える人材が社内にいないため、社内で育成するか外部に任せるかを検討されている方が中心です。企業規模による違いもあり、大企業では部門ごとに予算を持って部分的に導入されるケースがある一方、中小企業では経営層が危機感を持って主導されるケースが多いという印象です。
よくある相談内容を教えてください
もっとも多いのは、Web解析やSFA、顧客管理、生産管理、会計などのデータがツールごとにバラバラで、一元管理ができていないというご相談です。データを見た方がよいと分かっていても実行できていない企業様は以前から一定数いらっしゃいます。加えて、Excelでの管理が属人化し、どれが最新のファイルか分からなくなっている情報システム部門からのご相談も多くいただきます。業種でいうと製造業からの引き合いが増えており、受発注の予測や在庫期間の最適化、製造ラインごとのパフォーマンス比較といったテーマが目立ちます。最近では、AIを正しく活用するには社内のノウハウや過去の情報を読み込ませた基盤が必要だと気づかれた企業様からのお問い合わせも増えています。
サポート体制について教えてください
データ人材の面では、協力会社の方々に当社が教育を行った上で現場に入っていただき、その上に当社の社員がマネジメントとして入る体制を敷いています。加えて、お客様向けの研修サービスも提供しており、直近では数百人規模の研修を全3回構成で実施した実績もあります。データ活用の基礎知識から、実際のツールを使った活用方法まで、お客様が使われているツールに合わせて柔軟に対応しています。
導入によってどのような効果が出ていますか?
ある企業様では、数千万件規模のレコードをExcelで3分割しながら集計し、月に100時間以上を要していました。当社のBIツールを導入した際、BIの利用経験者が社内にいなかったため、最初の研修に加えて初期のダッシュボード構築を当社で代行しました。その結果、データ活用の入り口に立てていなかった状態から、お客様自身でダッシュボードを拡張できる状態まで進み、その後の分析は内製化されています。紙で大量のデータを保有しながら分析ができていなかった企業様に対しては、OCRの仕組みも含めてデータ化を支援し、分析可能な状態まで整備した事例もあります。農業総合研究所様では、拠点ごとに散在していたBIやスプレッドシートを統合し、全社でリアルタイムにダッシュボードを閲覧できる状態を実現しています。
料金体系について教えてください
以前は目安となる金額を公開していましたが、現在はお客様ごとに支援内容が大きく異なるため、個別にご相談いただく形にしています。期間としてはおおむね3か月からのご支援を想定しています。
今後の展望について教えてください
この半年ほどでAIの精度が急速に上がり、大企業では自社でAIを活用できる会社が増えてきたと感じています。一方で、情報システム部門やIT人材の採用が難しい中小企業・中堅企業は、この流れに置いていかれかねないという危機感があります。そうした企業様に向けて、紙のデジタル化やAI活用のためのデータ基盤づくり、そしてデータ活用の先にあるAIエージェントを実務にどう落とし込むかという開発に、より一層力を入れていきたいと考えています。売上アップやコスト削減、利益率の改善という形で、企業様のお役に立てる取り組みを広げていきます。
データドリブンジャパンの主役は、東京の大企業ではなく地方の中小企業だと考えています。日本の企業の99.7%は中小企業であり(中小企業庁・2023年公表)、データ活用の格差は日本のほとんどの会社に関わる話です。小さな会社ほど意思決定が速く、データを持った瞬間に強くなれます。あわせて、攻めと守りの両面でデータ活用を支える人材「データガーディアン」を2030年までに100万人育てることも目標に掲げています。
まとめ・編集部コメント
データ活用まるなげくんは、紙やバラバラのExcelデータをレコード型に変換するところから、分析、さらにはAIエージェントを使った実務への組み込みまでを一気通貫で代行するサービスです。展示会で数多くの企業から寄せられた、データ活用の入り口に立てていないという声に応える形で提供が始まりました。背景には、2030年までにすべての企業がデータを使いこなせる状態を目指す「データドリブンジャパン」という構想があります。
「まるなげ」という名前ながら、任せるのはデータを集める・整える・届けるという工程に限り、意思決定は企業側に残すという線引きが明確な点も印象的です。
強みは、データを整える作業だけで終わらせず、分析に使えるレコード型への変換や、その先のアクションまで踏み込んで支援する体制にあります。協力会社の人材を教育・マネジメントする仕組みや、数百人規模の研修実績も、支援の厚みを裏付けています。数千万件規模のデータ集計に月100時間以上を要していた企業がダッシュボードを内製化できるようになった事例など、具体的な成果も出ています。
データ活用ツールを導入する予算はあっても、それを使いこなす人材が社内にいないという企業や、紙やExcelでのデータ管理から一歩踏み出したい中小企業にとって、実用的な選択肢となるサービスです。まずは個別相談を通じて、自社の状況に合った支援内容を確認してみることをおすすめします。