「資金繰りが厳しい」「急な支払いに対応できない」
そんな悩みを抱える中小企業の経営者や財務担当者の方へ。特に製造業や流通業にとって、キャッシュフローの安定は事業の生命線です。
本記事では、この課題を解決する「サプライチェーンファイナンス」について、その仕組みからメリット・デメリット、そしてファクタリングとの決定的な違いまで、徹底的にわかりやすく解説します。資金繰りを安定させ、事業をさらに成長させるヒントになると思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
ファクタリングについて詳しく知りたい方は『ファクタリングサービス比較10選|即日入金・低手数料・信頼性で選ぶならココ!』をご覧ください。
目次
サプライチェーンファイナンスは資金繰りを改善する新たな選択肢
サプライチェーンファイナンスは、近年注目を集めている資金調達および決済効率化の手法です。この仕組みを理解するためには、まず「サプライチェーン」そのものについて基本的な知識を押さえておくことが重要です。
理解しておくべき「サプライチェーン」の基本
製品やサービスがお客様の手に届くまでの「モノ・情報・お金」の一連の流れをサプライチェーンと呼びます。原材料の調達から製造、物流、販売まで、多くの企業や国が複雑に連携して成り立っています。
例えば、スマートフォン一つとっても、世界中のサプライヤーから多数の部品が調達され、加工・組み立てを経て完成品となり、消費者の手元に届きます。サプライチェーンファイナンスは、この複雑な流れの中で発生する企業間の資金の流れをスムーズにし、効率化する金融手法です。
サプライチェーンファイナンスの仕組み
サプライチェーンファイナンスは、一言で言えば「バイヤー(購入企業)の信用力を使って、サプライヤー(納入企業)が売掛債権を早期に、かつ低コストで現金化できる仕組み」です。
この仕組みには、主に以下の3者が関わります。
- サプライヤー(納入企業): 商品やサービスを提供し、売掛債権を持つ企業。
- バイヤー(購入企業): 商品やサービスを購入し、買掛債務を負う企業。
- 金融機関(またはプラットフォーマー): 両者の間に入り、資金を提供する主体。
具体的な流れは以下の通りです。
【取引の流れ】
- 商品・サービスの納入と請求:サプライヤーがバイヤーに商品やサービスを納入し、請求書を発行します。
- バイヤーによる請求承認と金融機関への通知:バイヤーが請求内容を承認し、その情報をサプライチェーンファイナンスを提供する金融機関のシステムに連携します。これにより、金融機関は支払いが確定した債権であることを確認します。
- サプライヤーによる早期資金化申請:サプライヤーは、必要に応じて支払期日を待たずに、金融機関のプラットフォームを通じて資金化を申請します。
- 金融機関からの資金受け取り:金融機関は、信用力の高いバイヤーを基に審査を行い、手数料を差し引いた金額をサプライヤーに支払います。サプライヤーは通常の融資より低金利で資金を調達できます。
- バイヤーから金融機関への支払い:バイヤーは、当初の支払期日に金融機関へ直接、買掛金(債務)を支払います。
この仕組みにより、サプライヤーはキャッシュフローを改善でき、バイヤーはサプライヤーを支援しつつ、支払いサイトの交渉余地も生まれるため、サプライチェーン全体の安定化に繋がります。
サプライチェーンファイナンスのメリット
サプライチェーンファイナンスは、サプライヤーとバイヤーの双方に大きなメリットをもたらします。
サプライヤー(納入企業)側のメリット
- 売掛金の早期現金化とキャッシュフローの改善:最大のメリットです。支払期日を待つことなく資金を確保できるため、運転資金の悩みが解消され、新たな投資や事業拡大に資金を回すことができます。
- 低金利での資金調達:バイヤーの高い信用力を背景とするため、ファクタリングや通常の融資に比べて低い手数料・金利で資金を調達できます。
- 貸し倒れリスクの回避:債権を金融機関に譲渡するため、万が一バイヤーが倒産しても、サプライヤーが代金を回収できないリスクを原則回避できます(ノンリコース)。
- オンラインで完結する手軽さ:多くのサプライチェーンファイナンスは、オンラインプラットフォーム上で手続きが完結するため、手間や時間を大幅に削減できます。
バイヤー(購入企業)側のメリット
- サプライヤーとの関係強化とサプライチェーンの安定化:サプライヤーの資金繰りを支援することで、安定的な部品や原材料の供給が期待でき、良好な取引関係を築くことができます。これは、自社の生産活動の安定化に直結します。
- 支払サイトの延長によるキャッシュフロー改善:サプライヤーが早期資金化できるという安心感があるため、支払サイトの延長交渉がしやすくなる場合があります。これにより、バイヤー自身のキャッシュフローも改善します。
- 業務効率化とコスト削減:請求書の承認や支払い管理を電子プラットフォーム上で行うことで、ペーパーレス化が進み、経理業務の効率化や印紙代などのコスト削減に繋がります。
デメリットと注意点
多くのメリットがある一方で、導入前に知っておくべきデメリットや注意点も存在します。
- 【サプライヤー側】手数料の発生:早期資金化を利用する際には、金融機関への手数料が発生します。満額を受け取れるわけではない点に注意が必要です。
- 【サプライヤー側】バイヤーの協力が不可欠:この仕組みはバイヤーが導入し、協力することが大前提です。取引先であるバイヤーが導入していなければ利用することはできません。
- 【バイヤー側】システム導入・運用コスト:新たなシステムを導入するための初期費用や、月々の利用料が発生する場合があります。
- 【両社共通】会計・税務処理の確認:債権の譲渡に伴う会計処理や税務処理について、専門家である会計士や税理士に事前に確認しましょう。
サプライチェーンファイナンスと「でんさいネット」
サプライチェーンファイナンスの多くのサービスで活用されているのが「でんさいネット(全銀電子債権ネットワーク)」です。日本の金融インフラの重要な一部である「でんさいネット」は、サプライチェーンファイナンスをより安全かつ効率的に実現するための基盤となっています。
でんさいネットとは?
「でんさいネット」とは、手形や振込に代わる新たな決済手段である「電子記録債権(でんさい)」を記録・管理するための、全国銀行協会が設立した公式なインフラです。紙の手形が持つ発行・保管の手間や紛失リスクをなくし、事業者の資金繰りを円滑にすることを目的としています。
サプライチェーンファイナンスにおける「でんさいネット」の役割
金融機関が提供するサプライチェーンファイナンスの中には、この「でんさいネット」の仕組みを利用するものがあります。その場合、以下のような特徴や注意点があります。
- 利用の前提条件:このタイプのサービスを利用するには、バイヤー(購入企業)とサプライヤー(納入企業)の双方が「でんさいネット」に加入している必要があります。加入には取引銀行を通じた申し込みと所定の審査が求められます。
- 導入のハードル:もし取引先(バイヤー)が未加入の場合、まず加入を依頼するところからスタートするため、関係者全員の足並みが揃うまでに時間がかかることがあります。これが導入のハードルとなる可能性がある点に留意しましょう。
ただし、全てのサプライチェーンファイナンスが「でんさいネット」を必須としているわけではありません。金融機関が独自に開発したオンラインプラットフォーム上でサービスを提供しているケースも多くあります。どちらのタイプが自社と取引先の状況に適しているか、金融機関に確認してみると良いでしょう。
サプライチェーンファイナンスとファクタリングの決定的な違いとは?
サプライチェーンファイナンスとよく比較される資金調達方法に「ファクタリング」があります。どちらも売掛債権を活用する点は同じですが、その性質は大きく異なります。
| 項目 | サプライチェーンファイナンス | ファクタリング |
|---|---|---|
| 目的 | サプライチェーン全体の効率化・安定化 | サプライヤー(自社)の緊急の資金調達 |
| 関与者 | サプライヤー、バイヤー、金融機関の3社間が基本 | 業者と自社の2社間、または取引先を含めた3社間 |
| 主導権 | バイヤー(購入企業)が主導して導入 | サプライヤー(納入企業)が主導して利用 |
| 手数料 | 低い(バイヤーの信用力に基づく) | 比較的高い(サプライヤーの信用力に基づく) |
| 取引先への通知 | 必須(バイヤーが仕組みに参加) | 2社間ファクタリングの場合は不要 |
| 貸し倒れリスク | 原則としてなし(ノンリコース) | 契約による(リコース契約の場合はリスクあり) |
最大の違いは、「誰の信用力を基にしているか」という点です。サプライチェーンファイナンスはバイヤーの信用力を利用するため低コストですが、ファクタリングはサプライヤー自身の信用力が審査対象となり、一般的に手数料は高くなる傾向があります。
緊急で、かつ取引先に知られずに資金調達したい場合は「2社間ファクタリング」、取引先の協力が得られ、継続的にキャッシュフローを安定させたい場合は「サプライチェーンファイナンス」が適していると言えるでしょう。
もっと詳しく知りたい方へ:ファクタリングの仕組み、メリット・デメリット、2社間・3社間の違い、手数料相場など、より詳細な情報は『ファクタリング審査は甘い?独自審査の仕組みと通過率を上げる秘訣、安全な業者選びまで徹底解説!』で解説しています。
サプライチェーンファイナンス導入の3ステップ
サプライチェーンファイナンスは、自社だけでなく取引先の協力があって初めて成り立つ仕組みです。導入を円滑に進めるために、特に重要な3つのポイントを解説します。
ポイント1:社内準備をしっかり行う
金融機関へ相談する前に、まず社内で目的と現状を整理しましょう。
- 導入の目的を明確に
- 「経理業務の効率化」「重要な取引先の資金繰り支援」など、なぜサプライチェーンファイナンスを導入したいのかをはっきりさせます。
- 現在の支払いコストを把握
- 手形発行の印紙代や振込手数料など、現在の支払いにかかる年間コストを洗い出しておくと、新しいサービスの手数料と比較しやすくなります。
ポイント2:取引先への伝え方を工夫する
ここが最も重要です。一方的に協力をお願いするのではなく、取引先の立場を尊重した丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。
- メリットを先に提示
- 「早期に現金化できる」「資金繰りが楽になる」など、取引先にとっての具体的なメリットを最初に伝えます。
- 選択肢があることを伝える
- 「従来の支払い方法も継続可能」など、サプライチェーンファイナンスの利用は強制ではないことを明確に伝え、相手に安心感を与えましょう。
ポイント3:手数料は「総額」で比較する
複数の金融機関やサービスを比較する際は、表面的な割引率だけでなく、全ての費用を含めた「総額」で判断することが大切です。
- 年間総コストで比較
- 初期費用や月額固定費など、見えにくいコストも含め、年間でどれくらいの費用がかかるのかを試算し、最も有利なサービスを選びましょう。
FAQ(よくある質問)
サプライチェーンファイナンスに関して、中小企業の経営者様や財務担当者様からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
Q1. サプライチェーンファイナンスの手数料相場はどれくらいですか?
A1. サプライチェーンファイナンスにおける早期資金化の手数料は、通常サプライヤー負担で、売掛金額の1~5%が目安です。この料率は、バイヤーの信用力が高いほど低くなる傾向があります。詳細は各サービス提供会社にご確認ください。
Q2. 銀行融資と比べて審査は通りやすいですか?
A2. サプライチェーンファイナンスは、バイヤーの信用力が重視されるため、サプライヤーが個別に銀行融資を受けるよりも審査のハードルが下がる傾向にあります。サプライヤーの財務状況が芳しくなくても、信用力の高いバイヤーとの取引があれば利用できる可能性が高まります。ただし、基本的な審査は行われます。
Q3. サプライチェーンファイナンス導入までにどれくらいの期間がかかりますか?
A3. サプライチェーンファイナンスの導入期間は、関わる金融機関、システム規模、そして何より関係企業(特に取引先)の準備と協力体制に大きく左右されます。契約やシステム設定、関係者への説明・研修などが必要なため、数週間から数ヶ月が一般的です。具体的なスケジュールは、早めにサービス提供会社へご相談ください。
Q4. 取引先(バイヤーやサプライヤー)に知られずに利用できますか?
A4. サプライチェーンファイナンスは、バイヤー、サプライヤー、金融機関の三者連携が基本です。特にバイヤー主導型では、バイヤーが導入を決め、サプライヤーに利用を促します。
そのため、ファクタリングの2社間取引のように、取引先に知られずに資金調達することは基本的にできません。むしろ、関係者間の透明性を高め、協力体制を築くことが円滑な運用につながります。
Q5. 個人事業主でもサプライチェーンファイナンスを利用できますか?
A5. サプライチェーンファイナンスは主に法人向けですが、個人事業主でも利用できるサービスもあります。「でんさいネット」も、個人事業主が登録可能です。
ただし、利用条件や審査基準は提供元によって異なるため、利用を検討する際は、事前に各金融機関やサービス提供会社に確認するようにしましょう。
Q6. サプライチェーンファイナンスの利用に「でんさいネット」は必須ですか?
A6. 全てのサプライチェーンファイナンスで「でんさいネット」が必須ではありません。独自のプラットフォームでサービスを提供する金融機関やFinTech企業もあります。
しかし、日本の多くの銀行が提供するサプライチェーンファイナンスのスキームでは、「でんさいネット」の活用が一般的です。これは、「でんさいネット」が手形に代わる安全で効率的な電子的決済インフラとして広く普及しており、債権の記録管理における信頼性が高いためです。でんさいネットを利用することで、支払業務の効率化やペーパーレス化、印紙税の削減といったメリットも得られます。
まとめ
サプライチェーンファイナンスは、バイヤー(発注企業)の信用力を活用し、サプライヤー(受注企業)が売掛金をより早く、低コストで現金化できる画期的な仕組みです。
この方法は、サプライヤーには資金繰りの安定を、バイヤーには安定したサプライチェーンと関係強化をもたらし、双方にメリットがあるのが最大の特徴です。
ただし、導入には取引先の協力が不可欠です。成功の鍵は、相手のメリットも考えた丁寧なコミュニケーションにあります。
単なる資金繰り改善策としてだけでなく、取引先との共存共栄を目指す有効な一手として、ぜひサプライチェーンファイナンスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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