「売上は順調なのに、手元の資金が足りない…」そんな経験はありませんか?
中小企業の経理担当者にとって、取引先からの入金遅れや未回収は頭の痛い問題です。掛取引が多いビジネスでは、債権(売掛金)の管理が甘いと黒字倒産に陥るリスクすらあります。このような悩みを抱える読者の皆さんに共感し、まずは問題点を整理しましょう。
本記事を読めば、「債権管理とは何か」が明確にわかります。 債権管理の基本的な意味から、その目的・重要性、具体的な管理方法や業務フローまで、一通り理解できる内容になっています。
売掛金を確実に回収して資金繰りを安定させるポイントや、効率化のノウハウについても具体的に解説します。記事の後半ではよくある質問(FAQ)形式で疑問に答え、債権管理の実践に役立つ知識を網羅しました。
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目次
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サービス掲載を相談する経理担当者がきついと頭を悩ませる債権管理とは?
債権管理とは、企業が持つ「債権」を計画的に把握・回収する管理業務のことです。 ここで言う債権とは主に売掛金(商品やサービスを提供し後日受け取る代金)のことを指します。
商品を先に渡し、代金を後払いにする取引(掛取引)では、請求書発行後から入金があるまでの間に債権が発生します。債権管理は、そうした売掛金や貸付金などの債権について、支払期限や回収状況を継続的に管理することです。
現金取引(その場で支払いが完了する商売)であれば債権管理は意識しなくても済みます。しかし掛取引が発生する企業では、債権管理は経営を安定させる上で不可欠な業務となります。債権管理には、取引先ごとに売掛金額や支払期日を記録・追跡し、期日どおりに入金されるよう督促や調整を行う一連のプロセスが含まれます。
要するに「売上をきちんと回収して会社のお金を確保するための管理」と言えるでしょう。
なお「債権管理」は自社が債権者としてお金を回収する立場の管理業務です。反対に、自社が支払う義務を負う側(買掛金など)の管理は債務管理と呼ばれ、債権管理とは区別されます。(※違いは後述のFAQで解説します)
まずは債権管理の目的と重要性を詳しく見てみましょう。
債権管理の目的と重要性をわかりやすく整理
債権管理には、企業経営上大きく3つの目的があります。それぞれの目的を達成することが、結果的に企業の財務健全性や信頼性向上につながります。
1.資金繰りの安定
売上代金をきちんと回収し現金化することで、自社のキャッシュフローを安定させることができます。債権管理ができていないと、売上は計上されていても現金が入らず、仕入代金や経費の支払いに支障をきたします。その結果、利益が出ているのに資金不足で倒産(黒字倒産)という最悪の事態になりかねません。適切な債権管理はこうした資金ショートを防ぎ、企業の継続性を高めます。
2.経営リスクの回避
取引先の倒産や支払い遅延による連鎖倒産のリスクを減らす目的もあります。多くのBtoB取引は信用に基づき後払いで行われますが、もし主要な得意先が支払不能に陥れば、自社も支払資金を失い連鎖的に倒産する恐れがあります。債権管理を徹底し早期に問題債権へ対応することで、貸倒れや債務不履行のリスクを最小限に抑えることが可能です。
3.回収漏れ・時効の防止
請求漏れや督促漏れを防ぎ、債権の取りっぱぐれをなくすことも大切です。債権管理を怠ると、請求書の発行忘れや入金チェック漏れで回収できるはずのお金を逃すケースがあります。
また、日本の法律では売掛金などの債権には消滅時効(一定期間を過ぎると法的に回収できなくなる期限)が定められており、2020年の民法改正後は原則5年と統一されました。
債権管理の中で各債権の時効期限を把握し、期限が迫る債権には内容証明の送付や訴訟提起などで時効を延長する対応も必要です。適切な管理により、債権の回収漏れや時効消滅を防ぐことができます。
以上のように、債権管理は「確実に売上代金を回収し、会社のお金を守る」ための重要な役割を果たします。適切に行えば資金繰りが健全化し、経理処理も正確になるため企業コンプライアンスの強化にもつながります。
では具体的に、債権管理の現場ではどのような業務を行うのでしょうか?次の章で基本的な流れ(フロー)を見てみましょう。
債権管理の具体的な方法・業務フロー
債権管理を効果的に行うには、売掛金回収までの一連の流れを把握し、手順に沿って管理することが大切です。ここでは中小企業で一般的な債権管理の基本ステップを紹介します(自社の実情に合わせて調整してください)。

1. 取引前の与信管理(信用チェック)
新規の取引先に後払いを認める際は、まずその企業の信用力を確認します。財務状況や支払い遅延の有無を調べ、取引額の上限や支払サイト(支払期限)を決定する作業です。
例えば、帝国データバンクや東京商工リサーチの企業信用レポートを活用したり、取引先から取引実績を聞き取るなどして支払い能力を見極めます。与信管理によって「この取引先には最大○万円まで掛け取引OK」「支払期限は納品後30日まで」など社内ルールを設定しておくことで、リスクの高い取引を未然に防げます。
万一支払い遅延が発生した場合も、取引先ごとに与信枠を設けていれば被害額の拡大を防止できます。
与信管理の方法については『与信管理の方法は?基礎から規程作りの手順・注意点まで徹底解説』にて解説しています。
2. 請求書の発行と債権リスト管理
商品やサービスの提供が完了したら速やかに請求書を発行します。意外なことに、少人数の企業では請求書の発行を失念して売掛金の回収機会を逃すケースもあります。
こうしたミスを防ぐため、取引先ごとの売掛金管理表(債権リスト)を作成しましょう。管理表には「取引先名」「請求日」「支払期限(弁済期)」「金額」「入金状況」などを一覧で記録します。
請求書発行時にこのリストへ登録し、売掛金の総額と回収予定日を常に把握できるようにします。入金があった際は即座にリスト上で消し込み(入金反映)を行い、未回収の債権額がひと目でわかる状態にしておきます。
こうした台帳管理により、「誰からいくら回収予定か」「未入金はいくつあるか」を漏れなく管理できます。
3. 入金確認と消込処理
支払期限が到来したら、取引先からの入金を確認します。
入金額が請求額と相違なく振り込まれているかチェックし、問題なければ債権リスト上で該当債権を回収済みとしてマークします。会計システム上でも売掛金から現金への仕訳(消込処理)を行い、帳簿を正しく更新します。万一、入金額が不足していたり振込が確認できない場合は、取引先や営業担当に速やかに問い合わせます。
「入金漏れがないか」を期日ごとにチェックする習慣をつけ、入金予定日に入金がなかった債権は次のステップに進みます。
4. 支払い遅延時の督促・回収対応
支払期限を過ぎても未入金の場合、間隔を空けずすぐに督促(とくそく)します。
まずは電話やメールで支払い忘れを確認し、速やかな支払いを依頼します。それでも応じない場合は、再度の督促状(内容証明郵便での請求書送り付け等)を検討します。必要に応じて弁護士への相談や法的手段(支払督促や訴訟)も視野に入れましょう。
ポイントは、「待ちすぎない」ことです。入金遅延が判明したら初動が肝心で、早期に動くほど回収確率が上がります。また、支払いが大幅に遅れた取引先については今後の与信条件を見直すことも検討します(たとえば、「次回から前払いに変更」「与信限度額を引き下げ」など)。
督促対応は経理担当だけでなく営業担当者とも連携し、社内で情報共有しながら組織的に進めることが大切です。
5. 社内規程の整備と見直し
日常業務とは少し異なりますが、債権管理を社内で定着させるために管理体制やルールを整備しておくことも重要です。
具体的には、債権管理を担当する部署・担当者を明確に決め、債権管理の手順や与信判断基準をまとめた社内規程を策定します。さらに、そのルールを関係部署へ教育・周知し、定期的に守られているかチェックしましょう。加えて、社内で債権リストを共有できる管理システムの導入も有効です。
債権管理のプロセス全体を見直しながら、より確実で効率的な運用体制を作り上げていくことが大切です。
以上が基本的な債権管理の流れです。企業によって取引形態や規模は様々ですが、「取引前に信用を確認し、請求と同時に記録し、期限を管理し、遅れたらすぐ対応」という原則は共通しています。債権管理を単なる経理作業と捉えず、営業・経営とも関わる重要プロセスとして組織横断で取り組むことがポイントです。
次章では、中小企業が債権管理を進める上で直面しがちな課題と効率化の方法について考えてみましょう。
債権管理の課題と効率化のポイント
債権管理を実践する中で、中小企業にはいくつか共通の課題が見られます。ここでは代表的な課題と、その解決につながる効率化のポイントを解説します。
課題1.手作業管理の煩雑さ
Excelや手書き台帳で債権を管理していると、作業が煩雑になりミスや漏れが生じやすいです。取引先や請求書の数が増えると人間の管理には限界があり、請求漏れ・入金チェック漏れ・時効管理漏れなどのリスクが高まります。実際、「請求書を出し忘れていた」「消し込みを失念し入金済みなのに督促してしまった」というミスもありがちです。
対策として、債権管理システムや会計ソフトを導入し、できる限り自動化・見える化を図りましょう。例えばクラウド債権管理サービスを使えば、請求書発行から入金消込まで一元管理でき、期限が近い債権のアラート通知なども可能です。機械処理に任せられる部分は任せ、人は戦略的な判断(与信判断や難航する債権の対応)に注力することでミス削減と効率アップが期待できます。
課題2.担当・情報の属人化
小規模企業では経理担当者が一人で債権管理を抱えていることが多く、担当者に業務が属人化しがちです。属人化すると担当者不在時に対応が滞ったり、ミスの発見が遅れるリスクがあります。また他部署との情報共有が不十分だと、営業は入金状況を把握していないまま追加受注をしてしまう、といった連携不全も起こりえます。
対策として、社内体制を整備し、情報を共有化しましょう。債権管理の担当者・責任者を正式に決めつつ、少人数でもダブルチェック体制を敷くのがおすすめです。定期的に債権リストを経営陣や営業部門と共有し、社内全体で債権状況を把握するようにします。また前述のクラウドシステムを導入すれば、リアルタイムで誰でも債権データを閲覧でき、属人化の解消につながります。
課題3.取引先との関係と回収の板挟み
中小企業では得意先との関係も重要なため、強い督促がしにくいという悩みもあります。「あまり催促すると取引関係が悪化しそう」「支払い猶予の相談を受けると断りづらい」といった板挟みで、結果として回収遅延を放置してしまうケースです。
対策として、まず社内ルールに沿って客観的に対応することが大切です。「〇日入金遅れたら内容証明郵便を送る」等のルールを決めておけば、担当者個人の裁量に頼らず行動できます。
また、どうしても回収が難しい場合は債権回収のプロに相談するのも一手です。弁護士や貸金業者のサービサー(債権回収会社)に委託すれば、法的措置も含め専門的に対応してもらえます。自社だけで抱え込まず、必要に応じて外部機関の力を借りることも検討しましょう。
課題4.貸倒れリスクへの備え
万全を期しても、取引先の倒産などでどうしても回収できない貸倒れが発生する可能性はゼロではありません。特に少数の大口取引先に売掛金が集中している場合、その1社の未払いが致命傷になりかねません。
以上のポイントを踏まえ、債権管理の課題に対処しつつ効率化を進めることができます。特にITツールの活用と社内ルール整備は今すぐ取り組みやすい改善策です。例えば、請求書発行から督促メール送信までサポートするクラウドサービスを導入すれば、債権管理業務の大半を自動化できます。
よくある質問(FAQ)
Q1.債権管理と債務管理の違いは何ですか?
A.債権管理は「自社が受け取るべきお金」を管理する業務であり、売掛金や貸付金など債権(貸したお金や代金の未収分)が対象です。
一方、債務管理は「自社が支払うべきお金」の管理で、買掛金や借入金など債務(借りたお金や支払い義務)が対象となります。
例えば、債権管理では取引先からの入金を追跡し、債務管理では仕入先や借入先への支払予定を管理します。どちらも資金繰りに直結する重要な管理業務ですが、債権管理は売上回収の安定化、債務管理は支払遅延防止による信用維持というように目的が異なります。両方バランスよく行うことで、自社のキャッシュフローを健全に保てます。
Q2.債権管理と与信管理の関係は何ですか?
A.与信管理は債権管理の前段階として行われる業務です。与信管理では、取引先に信用販売(後払い)をどこまで許せるかを評価・決定します。具体的には取引先の経営状況を調査し、「掛け取引を許可するか」「許可する場合、上限金額はいくらか」「支払期限(与信期間)は何日か」といった信用枠を設定するプロセスです。
この与信枠の設定に基づき、実際の売掛金を管理・回収していくのが債権管理になります。言わば与信管理は予防策、債権管理は事後の管理策と言えるでしょう。どちらも未回収リスクを減らすために重要であり、与信管理で取引リスクをコントロールし、債権管理で発生した売掛金を確実に回収するという関係にあります。
Q3.債権管理システムとは何ですか?
A.債権管理システムとは、売掛金の発生から回収までのプロセスを一元管理し、債権管理業務を効率化・自動化するためのソフトウェアやクラウドサービスです。
例えば、請求書発行機能、取引先ごとの債権リスト管理、入金消込の自動照合、支払遅延アラート、督促メール自動送信といった機能を備えています。これにより手作業によるミスや漏れを防ぎ、債権管理をスムーズに行えるのがメリットです。
代表的なクラウド債権管理サービスとして、マネーフォワードやfreeeの債権管理ソフト、あるいは請求管理ロボなどが挙げられます。自社の会計ソフトと連携できるシステムも多く、導入すればリアルタイムで売掛金の状況把握が可能になります。
こうしたシステムの詳細や導入事例は、MCB FinTechカタログなどで各社のサービス資料を比較検討できます。自社に合った債権管理システムを活用して、業務負荷を減らしつつ回収率向上を目指しましょう。
Q4.債権の消滅時効は何年ですか?
A.債権の消滅時効は、2020年4月の民法改正以降に発生した債権は原則5年と定められています(債権者が権利行使できると知った時から5年、または権利行使できる時から10年のいずれか早い方)。
改正前は商取引の売掛金は2年など職種によって短期の時効がありましたが、現在は5年に統一されました。ただし時効の進行をリセットしたり猶予する方法もあります。例えば、内容証明郵便で請求書を送れば6ヶ月時効完成を延長できますし、裁判を起こして判決を得れば判決確定時から新たに10年の時効期間が進行します。
債権管理では各債権の「最後に請求や督促を行った日」も記録し、時効完成前に適切な法的手段を講じることが重要です。「気付いたら時効で回収不能…」とならないよう、定期的な督促と法的措置で時効をリセットしつつ回収を諦めないことが大切です。
まとめ
債権管理とは一言でいえば「売上代金の確実な回収を通じて会社の資金繰りを守ること」です。中小企業にとって、適切な債権管理は黒字倒産や連鎖倒産を防ぎ、事業の安定成長を支える生命線と言えます。
重要なのは、債権管理を単発の作業ではなく継続的なプロセスとして位置付けることです。取引前の信用チェックから、請求・入金管理、遅延時の対処、そして内部体制の整備に至るまで、一連の流れを社内に定着させましょう。
債権管理を徹底することで、売上を「確実な現金」に変える力が飛躍的に高まります。その結果、資金繰りが安定し、新たな設備投資や事業拡大にも積極的に踏み出せるでしょう。
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松嶋 真倫



