会社の重要な支えである役員や従業員に万が一のことがあった際、事業保障やご遺族の生活保障のために加入する法人保険。その死亡保険金を受け取った時、税務や経理の対応に戸惑う経営者や経理担当者の方は少なくありません。
受け取った死亡保険金の税務・経理処理は複雑で、対応を誤ると追徴課税などの思わぬリスクを招きかねません。
この記事では、法人が死亡保険金を受け取った際の税金の種類、具体的な経理処理(仕訳)、そして死亡退職金や弔慰金を支払う場合の注意点まで、一連の流れを網羅的かつ分かりやすく解説します。
さらに、税務調査で指摘されやすいポイントや、事業承継資金としての活用といった、一歩踏み込んだ経営戦略的な視点まで提供します。
万が一の事態に慌てず、的確に対応できるよう、ぜひ最後までご一読ください。
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目次
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サービス掲載を相談する【結論】法人が受け取る死亡保険金には法人税がかかる
まず最も重要な結論からお伝えします。法人が受取人として死亡保険金を受け取った場合、その保険金は法人税の課税対象となります。
- 原則「雑収入」として益金に算入
- 受け取った保険金は、会計上「雑収入」として処理され、法人税法上は会社の利益である「益金」に算入されます。
- 個人受取とは税金の種類が違う
- 個人が保険金を受け取る場合は相続税や所得税の対象となりますが、法人の場合は法人税の対象となる、という点が大きな違いです。
- 消費税はかからない
- 保険金の受け取りは、商品やサービスの対価として受け取るものではないため、消費税の課税対象外(不課税取引)です。
なぜ法人税の対象になるのか?「益金」としての性質を理解する
法人税は、その事業年度の「所得(益金-損金)」に対して課税されます。死亡保険金は、役員や従業員の死亡という事由によって会社の資産が増加するものであるため、法人税法上は会社の利益、すなわち「益金」として扱われるのです。
ただし、過去に支払った保険料の経理処理方法によっては、受け取った保険金の全額が益金になるわけではありません。
【保険種類別】死亡保険金の経理処理と具体的な仕訳例
保険金を受け取った際の仕訳は、加入している保険の種類、すなわち「保険料を支払った際にどのように経理処理していたか」によって大きく異なります。ここでは代表的な3つのパターンに分けて解説します。
- ポイント
- 保険金受取時の益金額は、「受取保険金額」から、それまで資産として計上してきた「保険料積立金(または保険積立金)」を差し引いて計算します。
パターン1:保険料を全額損金算入していた場合(定期保険など)
解約返戻金がほとんどない掛け捨ての定期保険や医療保険などが該当します。支払保険料は全額「支払保険料」として費用(損金)処理します。
保険料支払時の仕訳例(年払保険料100万円)
| 勘定科目 | 借方 | 貸方 |
| 支払保険料 | 1,000,000円 | |
| 現金預金 | 1,000,000円 |
保険金受取時の仕訳例(死亡保険金3,000万円)
この場合、資産計上されている保険料積立金はゼロです。したがって、受取額の全額が雑収入となります。
| 勘定科目 | 借方 | 貸方 |
| 現金預金 | 30,000,000円 | |
| 雑収入 | 30,000,000円 |
→ この3,000万円が益金として法人税の課税対象になります。
パターン2:保険料を全額資産計上していた場合(養老保険など)
役員・従業員の福利厚生を目的とした養老保険(ハーフタックスプランを除く)や、貯蓄性の高い終身保険などが該当します。支払保険料は全額「保険料積立金」として資産計上します。
福利厚生としての生命保険の必要性については『福利厚生で生命保険は必要?「いらない」と言われる理由とメリット・デメリット』で詳しく解説しています。
保険料支払時の仕訳例(年払保険料100万円)
| 勘定科目 | 借方 | 貸方 |
| 保険料積立金 | 1,000,000円 | |
| 現金預金 | 1,000,000円 |
保険金受取時の仕訳例(死亡保険金3,000万円、保険料積立金800万円)
受取額と資産計上額の差額が雑収入となります。
| 勘定科目 | 借方 | 貸方 |
| 現金預金 | 30,000,000円 | |
| 保険料積立金 | 8,000,000円 | |
| 雑収入 | 22,000,000円 |
→ この2,200万円が益金として法人税の課税対象になります。
パターン3:保険料を一部損金・一部資産計上していた場合(逓増定期保険など)
かつて節税保険として活用された、解約返戻率が高い長期平準定期保険や逓増定期保険などが該当します。支払保険料を一定のルールに基づき、損金部分(支払保険料)と資産部分(保険料積立金)に分けて処理します。
保険料支払時の仕訳例(年払保険料100万円、うち40万円を資産計上)
| 勘定科目 | 借方 | 貸方 |
| 支払保険料 | 600,000円 | |
| 保険料積立金 | 400,000円 | |
| 現金預金 | 1,000,000円 |
保険金受取時の仕訳例(死亡保険金3,000万円、保険料積立金800万円)
パターン2と同様に、受取額と資産計上額の差額が雑収入となります。
| 勘定科目 | 借方 | 貸方 |
| 現金預金 | 30,000,000円 | |
| 保険料積立金 | 8,000,000円 | |
| 雑収入 | 22,000,000円 |
→ この2,200万円が益金として法人税の課税対象になります。
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死亡保険金を原資に「死亡退職金」「弔慰金」を支払う場合
受け取った死亡保険金は、会社の事業資金に充てるだけでなく、亡くなった役員や従業員の功績に報い、ご遺族の生活を支えるために「死亡退職金」や「弔慰金」として支払われることが一般的です。
- 損金算入による法人税の軽減
- 遺族に支払った死亡退職金や弔慰金は、一定の要件を満たせば会社の経費、すなわち「損金」として計上できます。
- 益金との相殺
- 死亡保険金という「益金」が発生した事業年度に、死亡退職金という「損金」を計上することで、結果的に法人税の課税所得を圧縮する効果があります。
- 事前の規程整備が必須
- 税務調査で否認されるリスクを避けるためにも、「役員退職慰労金規程」や「弔慰金規程」を事前に整備しておくことが極めて重要です。
死亡退職金と弔慰金の違いとは?
| 項目 | 死亡退職金 | 弔慰金 |
|---|---|---|
| 性質 | 給与の後払い(功績への対価) | 見舞金(遺族を慰める目的) |
| 法人側の処理 | 役員退職慰労金(損金) | 福利厚生費など(損金) |
| 遺族側の税金 | みなし相続財産(非課税枠あり) | 原則非課税(非課税枠あり) |
| 根拠規程 | 役員退職慰労金規程 | 弔慰金規程 |
死亡退職金の損金算入|適正額の計算と「役員退職慰労金規程」
死亡退職金を損金算入するには、その金額が「適正額」の範囲内である必要があります。
損金算入の適正額|功績倍率法による計算
実務上、退職金の適正額は功績倍率法で計算するのが一般的です。
- 功績倍率法の計算式
最終役員報酬月額 × 役員在任年数 × 功績倍率 - 功績倍率の目安
故人の役職や会社への貢献度に応じて設定されます。明確な法的基準はありませんが、一般的に以下の水準が目安とされています。- 代表取締役(社長):2.0~3.0倍
- 専務・常務:2.0~2.5倍
- 平取締役:1.5~2.0倍
- 監査役:1.0~1.5倍
【実務】役員退職慰労金規程を作成する際の必須項目
この功績倍率法の計算根拠を明確にし、恣意的な金額でないことを証明するために「役員退職慰労金規程」が不可欠です。
- なぜ規程が必要か?
- 損金算入の根拠
- 税務署に対して、支給額が客観的な基準に基づいて算出されたことを証明するため。
- 法的有効性の担保
- 役員退職金は株主総会の決議事項ですが、規程で算定基準を定めておけば、具体的な金額の決定を取締役会に一任できるため、手続きがスムーズになります。
- 遺族とのトラブル防止
- 支給基準を明確にすることで、後のトラブルを防ぎます。
- 損金算入の根拠
- 規程に盛り込むべき項目例
- 総則(目的):規程の目的を明記。
- 適用範囲:役員(取締役・監査役)を対象とすることを明記。
- 支給要件:退任した役員に支給することを明記(死亡退職を含む)。
- 支給額の算定方法:上記の功績倍率法を明記。役位ごとの功績倍率も具体的に記載する。
- 支給の時期および方法:退任後いつまでに、どのような方法(現金、振込など)で支払うかを明記。
- 株主総会の決議:本規程に基づき支給することを株主総会で決議する旨を記載。
弔慰金の損金算入と非課税枠の活用
弔慰金は、死亡退職金とは別に福利厚生の一環として支払われます。
遺族は原則非課税|相続税法上の非課税限度額
社会通念上相当な金額であれば、遺族側は非課税です。その目安は相続税法で定められています。
- 業務上の死亡の場合:死亡時の普通給与の3年分
- 業務外の死亡の場合:死亡時の普通給与の6ヶ月分
この金額を超えた部分は、死亡退職金と合算して相続税の課税対象となります。
法人が損金処理する際のポイント
法人が弔慰金を損金(福利厚生費)として処理する場合、全ての役員・従業員を対象とした「慶弔見舞金規程」などに基づき、社会通念上妥当な金額を支払う必要があります。
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【専門家の視点】税務調査で指摘されやすいポイント
死亡退職金を損金算入した申告は、税務調査で重点的にチェックされる項目のひとつです。以下の点に注意してください。
- 役員退職慰労金規程の不備・不存在
- 規程がない、または死亡の直前に駆け込みで作成したと疑われるケース。規程は、故人が元気なうちから整備し、株主総会で承認を得ておく必要があります。
- 功績倍率が不相当に高い
- 同業種・同規模の他社と比較して、功績倍率が著しく高い場合。なぜその倍率が妥当なのか、合理的な説明が求められます。
- 議事録の不存在
- 退職金の支給を決議した株主総会や取締役会の議事録が適切に作成・保管されていない場合。形式だけでなく、実質的な手続きの証明が重要です。
- 弔慰金が実質的な退職金とみなされるケース
- 弔慰金規程がなく、非課税枠ギリギリの高額な弔慰金を支払った場合、その一部が退職金(または役員賞与)とみなされ、損金算入を否認されるリスクがあります。
【発展】死亡保険金の戦略的活用|事業承継対策
法人が受け取る死亡保険金は、税務処理のためだけでなく、企業の存続に関わる重要な経営課題「事業承継」の原資としても活用できます。
1. 納税資金としての活用
経営者に相続が発生すると、後継者は多額の相続税(自社株や個人資産にかかる)の支払いに直面します。この時、会社が受け取った死亡保険金を原資に、後継者である遺族へ死亡退職金を支払うことで、後継者はその資金を相続税の支払いに充てることができます。
2. 自社株の買取資金(金庫株)としての活用
後継者以外の相続人が自社株を相続した場合、株式が社外に分散してしまうリスクがあります。
これを防ぐため、会社が受け取った死亡保険金を原資に、会社自身が相続人から自社株を買い取ることができます(金庫株の取得)。これにより、経営の安定化を図ることができます。
このように、法人保険は単なる保障だけでなく、円滑な事業承継を支える重要な財務ツールとしての側面も持っています。
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FAQ:法人の死亡保険金と税金・経理処理に関するよくある質問
Q1. 法人が受け取る死亡保険金には必ず法人税がかかるのですか?
A.はい。法人が保険金受取人となって死亡保険金を受け取った場合、原則として「雑収入」として益金に算入され、法人税の課税対象になります。なお、消費税は不課税です。
Q2. 死亡保険金はどの勘定科目で仕訳すれば良いですか?
A.会計上は原則 「雑収入」 で処理します。ただし、これまで資産計上してきた「保険料積立金」がある場合は、受取額から差し引き、残額を雑収入として計上します。
Q3. 過去の保険料処理で税金が変わるのはなぜですか?
A.保険料の「損金/資産」区分によって、受取時に益金に算入される金額が変わるためです。資産計上していた金額(保険料積立金)は、受取時に取り崩しとなり、課税対象から除外されます。
Q4. 養老保険・終身保険など貯蓄性の高い保険の場合は経理処理が異なりますか?
A.はい。これらは支払保険料を 資産計上(保険料積立金) していることが多く、死亡保険金受取時には資産取り崩し分を差し引いた「差額」が益金になります。
Q5. 弔慰金や死亡退職金を支払うと法人税を減らせますか?
A.はい。弔慰金・死亡退職金は一定の要件を満たせば 損金算入(経費計上) できます。
死亡保険金という“益金”が発生した年度に“損金”を計上するため、法人税の課税所得を圧縮できます。
Q6. 死亡退職金の金額はどのように決めればよいですか?
一般的には「功績倍率法」により計算します。最終役員報酬 × 在任年数 × 功績倍率 が基本式です。功績倍率が高すぎると税務調査で否認される可能性があるため、業界相場に沿う設定が必要です。
まとめ:適切な税務処理と戦略的活用で、万が一の事態に備えましょう
本記事では、法人が死亡保険金を受け取った際の税務と経理処理について、一歩踏み込んだ実務的なポイントまで解説しました。
- 法人受取の死亡保険金は「益金」として法人税の対象となる。
- 経理処理は加入している保険種類によって異なり、受取額と資産計上額の差額が益金となる。
- 「死亡退職金」「弔慰金」を支払うことで損金算入が可能だが、「規程の整備」と「適正額」が絶対条件。
- 税務調査を意識した証拠資料(規程、議事録)の保管が重要。
- 死亡保険金は、事業承継対策の貴重な原資としても活用できる。
突然の事態に直面すると、動揺の中で複雑な手続きを進めなければなりません。しかし、正しい知識と事前の準備があれば、慌てず、かつ会社とご遺族にとって最適な対応をとることが可能です。

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松嶋 真倫





