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Tetherが米国市場向けステーブルコイン「USAT」を発表、Circleとの競争本格化へ

2025年9月12日、ステーブルコインで最大のシェアを誇るUSDTを発行するTether社が、米国市場向けの新たなドル連動型ステーブルコイン「USAT」を発表しました。長年、米国の規制当局と緊張関係にあった同社が、米国市場へ本格的に参入します。

発行は米国の信託銀行ライセンスを持つAnchorage Digital Bankが担当し、裏付け資産の管理は大手金融機関であるCantor Fitzgeraldが行います。この動きは、米国のステーブルコイン市場の競争環境に大きな変化をもたらす可能性があります。今回は、この発表が持つ戦略的な意味について解説します。


※本記事の内容は、マネックスクリプトバンクが週次で配信しているニュースレター「MCB FinTechカタログ通信」の抜粋です。毎週月曜17時に配信しており、無料でご購読いただくと、FinTech・Web3の注目トピックスを解説するニュースレターに加え、注目の特集記事、ビットコイン最新動向や相場予想などもお読みいただけます。

規制当局との過去と戦略的転換

Tetherの米国市場への本格参入は、同社が過去に直面してきた規制上の課題を乗り越えるための、重要な一手と見ることができます。Tetherはこれまで、ステーブルコインの裏付け資産の透明性を巡り、米国の規制当局から繰り返し追及を受けてきました。

2021年には、ニューヨーク州司法長官(NYAG)および商品先物取引委員会(CFTC)と相次いで和解しています。USDTが常に100%米ドルで裏付けられているとする過去の主張が不正確であったとされ、ニューヨーク州に対して1,850万ドル、CFTCに4,100万ドル、合計で約6,000万ドルの罰金を支払いました。

この一連の出来事によって、USDTは規制に準拠できていないという印象を市場に与えることになりましたが、同時に、四半期ごとに裏付け資産の構成を報告する義務が課され、USDTの透明性向上の契機ともなりました。

しかし現在も、USDTの裏付け資産の構成は約2割がビットコインや貴金属、その他のアセットへの投資や融資となっています。これは米ドルまたは米ドルの短期国債での裏付けと比較すると高い収益性をもたらしますが、米国の新たなステーブルコイン規制である「GENIUS法」は米ドルまたは米ドルの短期国債での裏付けに限定しているため、このままでは要件を満たしません。

そこでTetherは、既存のUSDTの裏付け資産構成を変更するのではなく、米国市場用にGENIUS法に準拠した新たなステーブルコイン「USAT」を立ち上げる戦略を選択しました。

TetherはUSATの立ち上げにあたり、規制当局との関係強化を意識した人事を行っています。米国法人のCEOにはホワイトハウスの元高官であるBo Hines氏を起用しており、政策立案者との距離を縮め、規制当局との対話を円滑に進める狙いがあると考えられます。

また、裏付け資産を管理するCantor Fitzgeraldは、元CEOが現在トランプ政権の商務長官を務めるHoward W. Lutnick氏であり、こちらも政治的な繋がりを意識した選択といえるでしょう。

多角化する競争環境とUSDC

USATの登場は、これまで「規制に準拠した安全なステーブルコイン」として地位を確立してきたCircle社の「USDC」に対する直接的な挑戦といえます。USDCはすでにGENIUS法に準拠しており、裏付け資産のポートフォリオを変更する必要がないため、規制準拠のステーブルコインとしては先行しています。しかし、USDCは様々な競争圧力に直面しており、それはTetherからのものに限りません。

最近のクリプト市場では、保有者に利回りを提供するステーブルコインが急速に存在感を高めています。代表的な例がEthenaの「USDE」であり、高い利回りを背景に支持を集め、GENIUS法施行後には供給量を70%以上増加させて、ステーブルコインの時価総額で3位に浮上しています。GENIUS法が発行体による直接的な利回り提供を禁止している中、プロトコルを通じて利回りを提供するUSDEは、個人投資家にとって魅力的な選択肢となっています。

さらに、有力なDeFiプロジェクトが独自ステーブルコインの発行を計画していることも、USDCへの競争圧力となっています。直近1か月間の取引高でDeFi全体の4位に位置するDEX(分散型取引所)であるHyperliquidは、独自ステーブルコイン「USDH」を発行する予定となっています。USDCの総供給量のうち約7.5%がHyperliquidで担保として利用されているとの報道もあり、同プラットフォームがUSDHを導入したタイミングで、USDCの需要が大きく減少するリスクが指摘されています。

このようにUSDCは、米国市場ではTetherの「USAT」と、グローバルなクリプト市場ではEthenaの「USDE」やHyperliquidの「USDH」などのステーブルコインとの競争に直面している状況です。

考察

こうした複雑な市場環境を踏まえると、Tetherがすでにクリプト市場で圧倒的なシェアを誇り、かつ収益性の高いUSDTを維持しつつ、米国内では規制に準拠したUSATを展開するという戦略を取ることは合理的であるといえます。同社はUSDTで培ったステーブルコイン発行技術やノウハウ、そしてマーケットメイカーや取引所などの流通チャネルをすでに整備しているため、USATの立ち上げは比較的リスクの低い試みであると考えられます。その一方で、成功すれば米国市場という新たな市場を開拓することができ、USDTと合わせた流通量を大幅に増加させる可能性を秘めています。

この動きに対し、これまで米国市場で優位を築いてきたCircleがどのように対抗するかが注目されます。たとえば、Coinbaseとの連携をさらに強化したり、先日発表された独自レイヤー1ブロックチェーン「Arc」のエコシステムを成長させたりすることで、USDCの付加価値を高め、サービスの質で差別化を図るといった戦略が考えられます。

また、今回のUSATは、GENIUS法施行後に登場したステーブルコインとしては初の大規模事例です。USATの動向次第で、GENIUS法準拠のステーブルコインというモデル自体のポテンシャルが見えてくるかもしれません。

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