2025年に入り、ビットコインネットワーク上の取引活動に大きな変化が見られています。The Blockの報道によると、ビットコインの7日間移動平均トランザクション数は、2025年6月7日時点で一時的に約31万6,000件まで減少しました。
これは、2024年中頃に記録されたピーク時の約70万件超と比較して、半分以下にまで落ち込んだことになります。今回は、このニュースの背景と今後の展望について解説します。
※本記事の内容は、マネックスクリプトバンクが週次で配信しているニュースレター「MCB FinTechカタログ通信」の抜粋です。毎週月曜17時に配信しており、無料でご購読いただくと、FinTech・Web3の注目トピックスを解説するニュースレターに加え、注目の特集記事、ビットコイン最新動向や相場予想などもお読みいただけます。
目次
技術背景:OrdinalsとRunesがもたらした変化
今回のトランザクション数減少の主な要因は、投機的な関心の沈静化にあります。特に、「Ordinals」や「Runes」といったプロトコルを通じて発行された、ビットコイン上のNFTやトークン関連の取引が落ち着いたことが直接的な原因と考えられています。
まずはOrdinalsとRunesの概要と、これらがビットコインにもたらした影響について見ていきましょう。
Ordinalsは、2023年1月にローンチされた、ビットコインの最小単位であるsatoshi(サトシ)に画像などのデータを直接記録するプロトコルのことです。これにより、ビットコイン上でNFT(非代替性トークン)と似たデジタル資産の発行が可能になりました。
Runesは、2024年4月にローンチされた、ビットコイン上でトークン(FT)をより効率的に発行できるプロトコルです。ビットコイントランザクションの構成要素であるUTXO(Unspent Transaction Output)とOP_RETURNというデータ領域を活用しており、Ordinalsを利用したFTであるBRC-20よりもネットワークへの負荷が低くなっています。Ordinalsの開発者でもあるCasey Rodarmor氏によって開発されたことも特徴の1つです。
これらの登場によって、イーサリアムが得意としてきたアプリケーションの機能、すなわち「誰でも簡単にNFTやFTのようなトークンを発行できる」という仕組みがビットコインにもたらされました。特にOrdinalsを活用した「ビットコインNFT」は投機的な注目を集め、2023年前半からのトランザクション数と手数料の急騰を引き起こしました。
現状と今後の動向:投機熱の収束と新たな動き
こうしたOrdinalsやRunesの流行が一段落したことにより、トランザクション手数料は2025年に入ってからは1.50ドル前後で安定しています。OrdinalsやRunesへの投機熱が収束した要因としては、2024年を通じて大きな注目を浴びたミームコインブームが挙げられます。これらのミームコインは主にSolana上の「Pump.fun」というプラットフォームで発行されていたため、トレーダーの関心がSolanaなど他のブロックチェーンへと移行したと考えられます。
一方で、OrdinalsやRunesに関連する新たな技術的トピックも登場しています。2025年10月にリリースが予定されているBitcoin Core(ビットコインの標準ソフトウェア)の次期バージョンでは、Runesでも使用されているデータ領域であるOP_RETURNに含めることができるデータサイズの制限が撤廃される予定であることが公表されています。
OP_RETURNのサイズは現状80バイトですが、この制限が撤廃されることで、理論上はブロックサイズの上限である約4MBまでのデータをOP_RETURNに含めることが可能になります。
これまでは80バイトという制限があったため、OP_RETURNを利用したNFTの発行は困難でした。しかし、この変更により、OP_RETURNを利用した新たなNFT発行プロトコルが登場する可能性があります。
OrdinalsやRunesの投機熱はいったん落ち着いたものの、こうした新たなプロトコルが登場することによって、再びビットコインネットワーク上での取引活動が活発化する可能性があると考えられます。
将来展望:デジタルゴールドか、アプリケーションへの拡張か
先述したOP_RETURNの変更は、ビットコインコミュニティ内で大きな議論を呼んでいます。これは、ビットコインの本来の目的を「価値の保存」や、それに付随するP2P取引にあると捉えるユーザーが一定数存在するためです。こうしたユーザーにとっては、OrdinalsやRunesのようにブロックチェーンに任意のデータが保存されることに懸念があり、そうした行動を助長しかねないOP_RETURNの仕様変更には反対の立場をとっています。
一方で、この変更を支持する立場からは、Ordinalsなどによってすでに大容量のデータがブロックチェーンに記録されており、たとえ制限を設けたとしても、別の方法によって回避される可能性が高いという意見があります。
また、OP_RETURNのサイズ制限についても、すでに実質的にバイパス可能な手段が存在しています。たとえば、米国の大手マイニング企業であるMARA Holdingsが提供する「Slipstream」というサービスでは、OP_RETURNのサイズ上限を超過するような大規模トランザクションデータについて、同社がマイニングを請け負う仕組みとなっています。現状でもこうしたバイパス手段があるのであれば、公式に制限を撤廃することで、より取引の透明性を高めることができるといった意見も存在します。
結論として、Ordinalsの流行が去った現在のビットコインは、停滞期ではなく、その本質的な価値と進むべき方向性を再定義する重要な局面にあると言えます。価値保存の原点に立ち返るのか、仕様変更や新たなプロトコルを通じて、EthereumやSolanaのようにNFTやDeFiといったユースケースをより広範に提供するようになるのか。ビットコインエコシステムの次なる一歩が注目されます。
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