2025年8月14日、スコット・ベッセント米財務長官は、米国が保有する「戦略的ビットコイン準備金(SBR)」の規模が、現在の市場価格で150億ドルから200億ドルであることを明らかにしました。 今年3月にトランプ米大統領によって創設が指示されて以来、準備金の規模についてはこれまで公表されていませんでした。
今回は、この発表が持つ意味と、市場に与えた影響について深く掘り下げていきます。
※本記事の内容は、マネックスクリプトバンクが週次で配信しているニュースレター「MCB FinTechカタログ通信」の抜粋です。毎週月曜17時に配信しており、無料でご購読いただくと、FinTech・Web3の注目トピックスを解説するニュースレターに加え、注目の特集記事、ビットコイン最新動向や相場予想などもお読みいただけます。
目次
戦略的ビットコイン準備金(SBR)とは何か?
まず、今回の発表のテーマである「戦略的ビットコイン準備金(SBR: Strategic Bitcoin Reserve)」について確認しておきましょう。これは、トランプ大統領が2025年3月6日の大統領令によって創設を指示した、国家レベルのビットコイン保有計画です。
これまで米政府は、犯罪捜査などで押収したビットコインを市場で定期的に売却しており、これは市場にとって潜在的な売り圧力と見なされてきました。 しかし、この大統領令によって方針は180度転換され、米国は押収したビットコインを売却するのではなく、国家の戦略的資産として保有・備蓄する道を選んだのです。
明かされた準備金の規模
ベッセント財務長官の発表によると、準備金の規模は150億ドルから200億ドルとなっています。発表当日である8月14日のBTC価格(約11万7,000~12万4,000ドル)で換算すると、約12万~17万BTCに相当します。 これは、オンチェーン分析ツールを提供するArkhamが推定してきた米政府の保有量(約19万8,000BTC)とおおむね一致する水準であり、今回の発表によりこれらのデータについて一定の裏付けが取れた形となります。
ここで重要なのは、この準備金の原資です。ベッセント財務長官は「(準備金のために)ビットコインを追加購入はしないが、押収した資産を使って増やしていく、(押収した資産について)売却はしない」と明言し、準備金はあくまで米政府が押収した資産で構成されると説明しました。
その一方で、ベッセント財務長官はその後自身のXアカウントで、「財務省は準備金を拡大するため、予算中立的な道を模索することに尽力している」と補足しています。 税金を使った直接購入は行わないものの、何らかの形で備蓄を増やしていく可能性を示唆しており、その具体的な方法が今後の大きな焦点となるでしょう。
他国との比較と市場の反応
米国のこの動きは、他国の姿勢とは一線を画します。エルサルバドルは国家としてビットコインを保有していますが、IMF(国際通貨基金)からの融資条件として、その計画を一部縮小したと報じられています。 対照的に、ドイツや英国は押収したビットコインを売却する方針を示しており、米国がデジタル資産の戦略的価値をいかに重視しているかが際立ちます。
しかしながら、市場の反応は単純ではありませんでした。
準備金規模の公表と追加購入を行わないという発表があった8月14日、ビットコイン価格は一時的に4%以上下落しました。 下落した他の要因として、米政府が発表した7月の生産者物価指数(PPI)が大幅に上昇し、利下げ観測が後退したということも挙げられますが、ベッセント財務長官の発表についても、少なくともプラス材料としては見なされませんでした。
つまり市場は、「潜在的な売り圧力の解消」というプラス材料よりも、「政府による追加購入が見送られた」というマイナス材料を重視したと言えるでしょう。
考察
今回の発表によって、米国が押収したビットコインの規模が公式に明らかになりました。また、政府が今後押収したビットコインを売却しないと明言したことは、市場から巨大な売り圧力が一つ取り除かれたことを意味し、長期的にはポジティブな材料と捉えられます。
しかし、発表された規模の戦略的ビットコイン準備金を実現するには、なおいくつかの課題が残されています。
まず、法的な整理についてです。政府が押収した資産を「最終的に押収された」ものとして戦略的ビットコイン準備金に組み入れるには、裁判所の最終判決や連邦法の整備が必要になる可能性があります。
また、ベッセント財務長官がXで言及した「予算中立的な取得方法」の具体策は依然として不透明です。追加取得を示唆してはいるものの、それが実現しなければ市場の失望を招く可能性があります。
ビットコインの価格動向は、他の暗号資産にも波及する傾向にあります。戦略的ビットコイン準備金の行方は、今後も注目すべきテーマとなるでしょう。
解説コメントを毎週お届けする「MCB FinTechカタログ通信」
毎週月曜17時に配信。無料でご購読いただくと、FinTech・Web3の注目トピックスを解説するニュースレターに加え、注目の特集記事、ビットコイン最新動向や相場予想などもお読みいただけます。






