2025年6月27日、米スタートアップ企業のDinariが、米国においてトークン化された株式を提供するためのブローカー・ディーラー登録を取得したとする報道がありました。
今回は、このニュースの背景と今後の展望について解説します。
※本記事の内容は、マネックスクリプトバンクが週次で配信しているニュースレター「MCB FinTechカタログ通信」の抜粋です。毎週月曜17時に配信しており、無料でご購読いただくと、FinTech・Web3の注目トピックスを解説するニュースレターに加え、注目の特集記事、ビットコイン最新動向や相場予想などもお読みいただけます。
目次
トークン化株式とは
トークン化株式(Tokenized Stocks)は、特定の上場企業の株式と1:1で価値が連動する、ブロックチェーン上で発行されたトークンのことです。投資家となるユーザーは、証券会社などの口座管理機関や振替機関を通じて間接的に株式を保管する代わりに、株式に裏付けられたトークンを直接自身のウォレットを通じて管理することになります。
トークン化株式のメリットとしては、数日かかることもある決済プロセスの高速化(ほぼ即時決済)や、取引所が開いていない時間帯でも取引が可能になる、24時間市場の実現などが挙げられます。
さらに言えば、この動きはRWA(Real World Asset)という、より大きなトレンドの一部です。RWAとは、株式や債券、不動産といった現実世界の資産をブロックチェーン上でデジタルに表現し、流通させる試みの総称です。直近では、利回りの良いトークン化米国債やプライベートクレジットなどが人気を博しています。
発表の詳細
Dinariは今後、米証券取引委員会(SEC)との最終調整を経て、数ヶ月以内に米国内でのサービス提供を開始する計画です。同社が採用するビジネスモデルは、個人投資家へ直接サービスを提供するリテール型ではなく、他のFinTech企業やプラットフォームに自社の取引機能をAPIなどで提供する、いわゆるBtoBtoCのアプローチです。
Dinariのトークン化株式は「dShares」と名付けられており、規制の異なる米国外のユーザーには、既にCoinbaseが開発したL2ブロックチェーン「Base」などを通じて提供されています。dSharesのプラットフォームや取引APIにて、ユーザーからトークン化株式の注文があった際に、dSharesが提携する証券会社などに注文を取り次ぎ、注文が完了したタイミングで初めてトークンが発行(Mint)されるような仕組みとなっています。
今回の認可は、このサービスを世界最大の金融市場である米国で本格展開するための、法的な基盤が整ったことを意味します。同社は次の四半期にも、ブローカー・ディーラー事業体を本格的に稼働させるとしており、具体的な提携先についての発表も待たれるところです。
RWAの市場規模と直近の動向
トークン化株式の分野で事業機会を模索しているのは、Dinariだけではありません。大手暗号資産取引所であるCoinbaseやKrakenも、同様のサービス提供を目指し、規制当局との調整を進めています。特にKrakenは、2025年5月に「xStocks」という名称で、米国外の特定市場向けにトークン化株式の提供を開始しています。
RWA市場の潜在規模については、ボストンコンサルティンググループ(BCG)が、RWAを含むトークン化資産市場全体は 2030年までに16兆ドルに達する可能性があると試算しており、巨大な成長領域と目されています。
この期待を裏付けるように、RedStone, Gauntlet, およびRWA.xyzが6月26日に共同で発表した報告書によれば、RWA全体の市場規模は2025年6月までに240億ドルに達し、前年比で約85%、2022年からの3年間では約380%の成長を記録したことが示されています。
中でもトークン化米国債の市場規模は、2023年1月から2025年6月にかけて約1億ドルから約75億ドルへと約7,400%の成長を記録しており、その実用性と需要の高さを証明しています。こうした米国債での成功が、次の対象として株式市場へと関心を向かわせる大きな要因となっていると考えられます。
考察
Dinariの共同創業者兼CEOであるGabriel Otte氏は、Reuterのインタビューで「最終目標は金融システム全体の向上で、オンチェーンのブローカー・ディーラーではなく、取引所を目指している」といった旨を述べています。今回の認可は、一企業が事業機会を得たという以上に、米国市場における「法規制に準拠したトークン化株式」の確立に向けた重要な一歩と捉えることができます。
一方で、株式を含むトークン化資産については、普及に向けたいくつかの課題を抱えています。世界経済フォーラムが2025年5月に発表したレポート『Asset Tokenization in Financial Markets』では、トークン化された資産を取引するセカンダリーマーケットが未発達で、十分な流動性が確保されていないことや、業界全体で統一された技術標準やルールが不足しており、断片化していることなどが課題として指摘されています。
また、トークン化資産に関するシステムと既存の金融機関の記録システムとの調整が難しく、データの不一致を生む可能性があることも言及されています。
今回のDinariの認可によって、CoinbaseやKrakenなども追従することが想定されるため、トークン化株式の取引拡大が見込まれます。金融業界全体のデジタル化における重要な事例となる可能性があり、今後の動向に注目したいところです。
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