事業を成長させたい、新規プロジェクトを立ち上げたい、しかし自己資金だけでは足りない…多くの経営者が直面するこの課題に対し、デットファイナンスは有効な資金調達手段の一つです。
デットファイナンスとは、金融機関からの借入れや社債の発行など、負債(Debt)を伴う資金調達方法を指します。エクイティファイナンス(株式発行による資金調達)と並び、企業が事業資金を確保するための重要な選択肢となります。
この記事では、デットファイナンスの基本的な定義から、その多様な種類、メリット・デメリット、エクイティファイナンスとの明確な違い、そして特にスタートアップ企業がデットファイナンスをいかに戦略的に活用すべきかについて、徹底的に解説します。
目次
デットファイナンスとは?~基本からわかりやすく解説~
資金調達を検討する上で、まずデットファイナンスがどのようなものかを正確に理解することが不可欠です。ここでは、その定義、本質、そして会計上の扱いについて基本から解説します。
デットファイナンスの明確な定義
デットファイナンスとは、企業が銀行などの金融機関からの借入れや社債の発行といった手段を通じて、外部から資金を調達することです。英語では「Debt Finance」と表記され、「Debt(デット)」が負債を意味する通り、調達した資金には返済義務が生じる点が最大の特徴です。
この調達資金は、企業の貸借対照表(バランスシート)において「負債の部」に計上されます。
「借入金融」としての本質と特徴
デットファイナンスの本質は、「他人資本」、すなわち借り入れたお金であるという点に集約されます。これには3つの重要な特徴が伴います。
- 元本の返済義務:調達した資金(元本)は、定められた期限までに全額返済しなければなりません。
- 利息の支払義務:多くの場合、元本に加えて、資金提供者へのリターンとなる「利息」の支払いが必要です。
- 債務不履行のリスク:万が一、返済や利息の支払いが滞った場合(債務不履行)、遅延損害金が発生するほか、最悪の場合は資産の差し押さえといった強制執行の対象となるリスクを負います。
貸借対照表(バランスシート)上の扱いは?
前述の通り、デットファイナンスで調達した資金は、貸借対照表上、「負債」の部に計上されます。これは、企業が外部に対して返済義務を負っている資金であることを明確に示すものです。
具体的には、銀行からの借入金は返済期間に応じて「短期借入金」や「長期借入金」として、発行した社債は「社債」として負債の部に記載されます。負債が増加すると、自己資本比率(総資本に占める自己資本の割合)が低下し、企業の財務健全性を示す指標に影響を与えます。
デットファイナンスの主要な種類
デットファイナンスと一口に言っても、その手段は多岐にわたります。公的機関によるものから民間の金融機関、あるいは市場からの直接調達まで、それぞれに特徴やメリット・デメリットが存在します。ここでは、主要なデットファイナンスの種類を挙げ、それぞれの特徴を解説します。
公的融資(日本政策金融公庫など)
政府系金融機関による融資は、特に創業期や成長初期の企業にとって重要な資金調達手段の一つです。
日本政策金融公庫(JFC)や商工組合中央金庫(商工中金)などが代表的な提供機関です。これらの機関は、民間の金融機関では対応が難しい層への資金供給や、政策的な目的(例:新規開業支援、地域活性化)に沿った融資を行っています。
一般的に、民間金融機関の融資と比較して、金利が低めに設定されている、返済期間が長い、無担保・無保証人で利用できる制度があるなど、創業者や中小企業にとって有利な条件が提示されることが多いです。
新規事業や実績の少ない企業でも比較的利用しやすい点が最大のメリットです。特に日本政策金融公庫の「新規開業資金」(旧:新創業融資制度)は、多くの創業者に活用されています。
2024年度からは融資限度額が7,200万円に引き上げられ、自己資金要件も緩和されるなど、より利用しやすくなっています。また、イノベーションを担うスタートアップ向けには、融資限度額が最大20億円の「スタートアップ支援資金」も用意されています。
申込から融資実行までに時間がかかる傾向があります。また、各制度には対象者や資金使途に関する詳細な要件があり、それらを満たす必要があります。
民間金融機関からの融資(プロパー融資、信用保証付き融資、ビジネスローン)
銀行などの民間金融機関からの融資は、最も一般的なデットファイナンスの形態です。主に以下の種類があります。
プロパー融資
プロパー融資とは、金融機関が信用保証協会の保証を付けず、自らのリスクで直接行う融資のことを指します。この融資形態では、企業の信用力や財務状況、過去の取引実績などが厳しく審査されるのが特徴です。
そのため、信用力が高い企業にとっては、低金利でかつ大口の融資を受けられる可能性がある点がメリットです。一方で、審査基準が非常に厳しいため、創業間もない企業や財務基盤が十分でない企業にとっては、融資のハードルが高いというデメリットがあります。
信用保証付き融資
信用保証付き融資は、企業が金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会が保証人となって支援する制度です。企業が返済不能に陥った場合は、信用保証協会が金融機関に代わって返済(代位弁済)を行います。
この制度の特徴は、金融機関にとってリスクが軽減されるため、プロパー融資に比べて企業が融資を受けやすくなる点です。ただし、企業側は信用保証協会に対して所定の保証料を支払う必要があります。
信用力に不安がある企業やスタートアップでも資金調達がしやすくなるというメリットがあり、経営者保証が不要となる「スタートアップ創出促進保証制度」などの制度も整備されつつあります。
一方で、信用保証料の支払いによって実質的な金利負担が増すことや、金融機関と信用保証協会の両方の審査が必要になるケースがある点はデメリットです。
ビジネスローン
ビジネスローンは、事業資金に特化したローン商品であり、銀行だけでなく、信販会社や消費者金融といったノンバンク系の金融機関からも提供されています。審査がスピーディーで、無担保・無保証人でも利用できる商品が多いという点が特徴です。
そのため、急な資金ニーズに柔軟に対応できるというメリットがあり、オンラインで完結する商品も存在します。しかしその一方で、プロパー融資や公的融資に比べて金利が高めに設定されている傾向があり、資金コストが大きくなる可能性がある点はデメリットです。
社債発行(公募債・私募債)
社債の発行は、企業が投資家から直接資金を調達する方法です。企業が債券(社債)を発行し、それを投資家に購入してもらうことで資金を得ます。企業は投資家に対して定期的に利息を支払い、償還期限には元本を返済します。
公募債は、不特定多数の投資家を対象に募集される社債であり、発行にあたっては厳格な開示基準や財務要件が求められます。そのため、主に上場企業などの大企業が利用する手法です。
一方、私募債は特定の少数の投資家(例:少人数私募債の場合は50名未満)を対象に発行されるもので、公募債と比較して発行手続きが簡便であり、発行条件を柔軟に設定しやすい点が特徴です。そのため、スタートアップや中小企業でも活用しやすい資金調達手段とされています。
メリットとしては、無担保・無保証で発行できる場合があり、発行条件を企業側の状況に合わせて柔軟に設計できる点が挙げられます。一方で、返済期日の変更ができないことや、企業の信用力や業績によっては発行そのものが困難となるリスクもあります。
スタートアップとの関連性として、特に私募債は銀行融資以外の選択肢として有効であり、信頼関係のある特定投資家層から資金を調達する手段として活用が期待されます。
ベンチャーデット
スタートアップ向けの比較的新しい資金調達手法として注目されています。
エクイティファイナンス(株式発行による資金調達)とデットファイナンス(借入による資金調達)の性質を併せ持つ金融商品であり、一般的には金融機関がスタートアップ企業に対して融資を行う代わりに、新株予約権(ワラント)を取得する形態を取ります。
このスキームは、主にエクイティファイナンスを活用して成長中のスタートアップを対象としており、無担保または低担保での融資が行われることが多いという特徴があります。
メリットとしては、エクイティファイナンスに比べて株式の希薄化を抑えることができるほか、エクイティラウンド間のつなぎ資金や成長資金を確保する手段として有効です。また、従来の銀行融資と比較して、スタートアップの成長性などを評価した柔軟な審査が期待できる点も魅力です。
一方で、一般的な銀行融資よりも金利が高めに設定される傾向があることや、新株予約権が将来的に行使されることで一定の株式希薄化が避けられないといったデメリットも存在します。
日本国内でもこの分野の市場は拡大しており、みずほ銀行、りそな銀行、あおぞら銀行、静岡銀行といった大手銀行や地方銀行が、ベンチャーデットファンドの設立や専門チームの立ち上げを進めています。さらに、SDFキャピタル、Siiibo証券、Fivotといった専門プレイヤーの活動も活発になっています。
RBF(レベニュー・ベースド・ファイナンス)
企業が将来生み出すと予測される収益(レベニュー)の一部を早期に現金化する資金調達方法です。資金提供者は、契約に基づいて企業の将来収益の一定割合を、あらかじめ定められた総額に達するまで受け取ります。
この手法は、特にSaaS(Software as a Service)ビジネスやD2C(Direct to Consumer)ブランドなど、継続的な収益(リカーリングレベニュー)が見込めるビジネスモデルとの相性が良いとされています。
メリットとしては、株式の希薄化が起こらず、担保や個人保証も原則として不要な点が挙げられます。収益に応じて支払額が変動するため、売上が少ない時期の返済負担を軽減できる可能性があります。審査も比較的スピーディーであり、赤字企業でも利用できる場合がある点も利便性を高めています。
一方で、収益が急成長した場合には、実質的な資金コストが従来の融資よりも高くなる可能性があるほか、提供サービス自体が比較的新しいため、手数料体系や契約条件などを慎重に比較・検討する必要があります。
日本国内では、Yoii Fuel、Flex Capital、RBF by PAYTODAYといった企業がレベニュー・ベースド・ファイナンス(RBF)サービスを提供しています。
ABL(動産担保融資) / リースファイナンス
企業が保有する資産や、必要とする設備を資金調達や利用に結び付ける方法です。
ABL(アセットベーストレンディング/動産担保融資)
ABLは、売掛債権、在庫、機械設備といった動産、さらには場合によって知的財産権などを担保として資金を調達する方法です。不動産担保に依存しない点が特徴であり、特に不動産を保有していない企業にとって有効な手段となります。
この仕組みは、流動資産が豊富な企業にとって有利であり、スタートアップであっても売掛債権や将来性のある技術(知的財産)を持つ場合には活用できる可能性があります。
したがって、資産の種類や内容に応じて柔軟な資金調達が可能になる点がメリットです。
一方で、担保となる動産の評価や管理には専門的な知見と手間が必要となり、コストがかかることもあります。また、担保の価値は変動しやすく、リスクとして考慮しておく必要があります。
リースファイナンス
リースファイナンスは、企業が必要とする機械設備やIT機器(サーバーやPCなど)をリース会社から借り受け、一定期間利用することで設備を確保する資金調達手段です。企業はその対価として、契約期間中に定期的にリース料を支払います。
リースには、大きく分けて2種類があります。一つは実質的な購入に近い「ファイナンスリース」、もう一つは賃貸借に近い形で運用される「オペレーティングリース」です。どちらの形式も、初期費用を大きく抑えつつ、設備を確保できる点が特徴です。
この方式のメリットは、初期の大きな投資を避けられることに加え、月々の費用として平準化できることにあります。さらに、最新の設備を導入しやすいため、設備の陳腐化を防ぐ手段としても有効です。
ただし、購入する場合と比較して支払総額が割高になる傾向があり、中途解約が原則としてできない、または違約金が発生する可能性がある点には注意が必要です。
その他(ソーシャルレンディング、コマーシャルペーパー、シンジケートローンなど)
上記以外にも、特定の条件下で利用されるデットファイナンスの手法があります。
ソーシャルレンディング(融資型クラウドファンディング)
ソーシャルレンディングは、インターネットを通じて不特定多数の個人投資家から小口の資金を融資として集める資金調達方法です。銀行などの金融機関を通さずに資金を調達できる点が特徴で、比較的迅速に資金調達が可能です。
この仕組みは、金融機関の審査を通過しにくい企業やスタートアップでも利用できる場合があり、多様な資金ニーズに対応しやすいというメリットがあります。
一方で、投資家に対してリターンを保証するため、金利や手数料が比較的高めに設定される傾向があり、資金コストが上昇するリスクには注意が必要です。
コマーシャルペーパー(CP)
コマーシャルペーパーは、信用力の高い大企業が短期の運転資金を調達するために発行する無担保の約束手形です。通常、数日から数ヶ月の短期間で償還されるもので、資本市場を通じて機動的に資金を得ることができます。
そのため、迅速かつ柔軟に短期資金を調達できるというメリットがありますが、発行できるのは信用格付けの高い優良企業に限られており、スタートアップが直接利用するケースは極めて稀です。
シンジケートローン
シンジケートローンは、複数の金融機関が協調してシンジケート団を構成し、一つの契約条件のもとで企業に対して行う大規模な融資形態です。融資額が巨額になる場合に適しており、企業は複数の金融機関と個別に交渉する必要がなく、幹事金融機関との交渉に集約できる点が特徴です。
この仕組みにより、巨額の資金調達が可能であることが最大の利点ですが、契約手続きが複雑であり、アレンジメントフィーやシンジケーション費用といった各種手数料が発生する点には留意が必要です。主に大企業や中堅企業以上を対象とした手法であり、スタートアップにとっては現実的な選択肢とは言えません。
これらの多様なデットファイナンスの選択肢を理解し、自社の状況、必要な資金額、許容できるコストやリスクなどを総合的に勘案して、最適な手段を選択することが求められます。
デットファイナンスの一覧表
デットファイナンスには多様な選択肢があります。自社の状況に最適な手法を見つけるために、それぞれの特徴を理解しましょう。
| 種類 | 主な提供元 | 主な対象 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|---|
| 公的融資 | 日本政策金融公庫など | 新規創業者、中小企業 | 低金利、長期返済、無担保・無保証の制度が豊富 | 手続きに時間がかかる傾向 |
| プロパー融資 | 銀行、信用金庫 | 信用力の高い企業 | 低金利、大口融資の可能性 | 審査が非常に厳しい |
| 信用保証付き融資 | 銀行等+信用保証協会 | 中小企業、スタートアップ | 融資のハードルが下がる | 保証料が発生し、実質金利が上がる |
| ビジネスローン | 銀行、ノンバンク | 中小企業、個人事業主 | 審査が速く、手続きが簡便 | 金利が高めに設定されがち |
| 社債(私募債) | 証券会社、銀行 | 中小企業、スタートアップ | 柔軟な条件設定、無担保・無保証も可能 | 償還期日の変更が困難 |
| ベンチャーデット | 専門ファンド、一部銀行 | スタートアップ | 株式の希薄化を抑制しつつ成長資金を確保 | 金利が高め、新株予約権の付与が必要 |
| RBF | RBF専門事業者 | SaaS、D2Cなど | 将来収益を早期現金化、担保・保証不要 | 手数料が割高になる可能性 |
| ABL(動産担保融資) | 銀行、専門会社 | 在庫・売掛債権を持つ企業 | 不動産以外の資産(在庫等)を活用可能 | 担保の評価・管理が複雑 |
| リースファイナンス | リース会社 | 設備導入が必要な企業 | 初期投資を抑制し、費用を平準化 | 購入より総支払額が高くなる傾向 |
デットファイナンスのメリット・デメリット
デットファイナンスは「諸刃の剣」です。メリット・デメリットを深く理解し、賢く活用しましょう。
メリット5つ
- 経営の独立性を守れる
- 会社の所有権(株式)を渡さないため、経営権を維持したまま事業運営が可能です。
- 支払利息による節税効果
- 支払利息は経費として計上できるため、法人税の負担を軽減できます。
- 金融機関からの信用力向上
- 計画通りの返済実績を積むことで、将来の追加融資や好条件での借入に繋がります。
- 計画的な資金繰りが可能になる
- 返済額と期間が明確なため、将来のキャッシュフロー計画が立てやすくなります。
- 迅速に資金調達が可能
- ビジネスローンなど、一部の手法ではスピーディーに資金を確保できます。
デメリット4つ
- 業績に関わらない返済義務
- 赤字であっても返済は待ったなし。資金繰りを圧迫する最大の要因です。
- 財務指標の悪化
- 負債が増えることで自己資本比率が低下し、財務的に不安定と見なされる可能性があります。
- 担保・個人保証のリスク
- 返済不能に陥った場合、担保資産の喪失や経営者個人の返済義務といった深刻な事態を招きます。
- 審査の壁
- 必ずしも希望通りに借りられるとは限りません。事業計画や財務状況が厳しく評価されます。
デットファイナンスとエクイティファイナンスの違い
企業の資金調達には、デットファイナンスの他にエクイティファイナンスが存在します。両者は性質が全く異なるため、自社の目的や成長ステージに応じて最適な手段を選ぶことが極めて重要です。
| 比較項目 | デットファイナンス (負債) | エクイティファイナンス(資本) |
|---|---|---|
| 資金の性質 | 他人資本/負債 | 自己資本/純資産 |
| 返済義務 | あり | なし |
| 利息・配当 | 利息の支払い(義務) | 配当の支払い(業績による) |
| 経営への関与 | 原則なし(契約遵守が前提) | あり(持株比率に応じた議決権) |
| 資金調達コスト | 支払利息(損金算入可) | 資本コスト(株主の期待収益率、希薄化) |
| 担保・保証人 | 必要な場合が多い | 原則不要 |
| 信用力への影響 | 返済実績で向上 | 自己資本比率向上で向上 |
| 調達スピード | 比較的早い場合がある | 時間がかかる傾向 |
最大の違い:返済義務と利息の有無
- デットファイナンス
- 「借金」であるため、元本の返済と利息の支払いという二重の義務を負います。キャッシュフローへの影響を常に考慮した、確実な返済計画が不可欠です。
- エクイティファイナンス
- 新株発行により出資を募るため、調達資金は自己資本となります。したがって、返済や利息支払いの義務は原則ありません。出資者(株主)は、配当や株価上昇による利益(キャピタルゲイン)を期待します。
経営権への影響:自由度を保つか、共有するか
- デットファイナンス
- 資金の提供者は「債権者」であり、株主ではありません。そのため、契約条件を守る限り、経営に直接介入されることはなく、経営の自由度を維持できます。これは創業者にとって大きなメリットです。
- エクイティファイナンス
- 新たな株式を発行するため、既存株主の持株比率が低下(希薄化)します。これにより、新たな株主が経営の重要事項に対する議決権を持つことになり、経営方針に影響が及ぶ可能性があります。
コストの本質:明確な利息か、目に見えない資本コストか
- デットファイナンス
- 主なコストは支払利息です。この利息は税務上、損金として算入できるため、法人税の節税効果が期待できます。業績に関わらず返済義務はありますが、事業が順調であれば、トータルコストを抑えられる可能性があります。
- エクイティファイナンス
- 直接的な利息はありませんが、代わりに「資本コスト」が発生します。これは株主が投資に対して期待するリターンであり、企業はこの期待に応える収益を上げるプレッシャーを負います。一般的に、リスクを負う株主が要求するリターンは、債権者への利息よりも高くなる傾向があります。
財務諸表への影響と会計処理
資金調達方法は、企業の財務諸表にも異なる影響を与えます。
- デットファイナンス
- 調達した資金は貸借対照表の「負債の部」に計上されます 。これにより負債が増加し、自己資本比率などの財務指標が悪化する可能性があります。損益計算書では、支払利息が費用として計上されます。
- エクイティファイナンス
- 調達した資金は貸借対照表の「純資産の部(資本の部)」に計上されます。これにより自己資本が増強され、財務基盤の安定性が高まると評価されることがあります。損益計算書への直接的な費用計上(利息のようなもの)はありません。
【スタートアップ経営者向け】デットファイナンス徹底活用ガイド
エクイティファイナンスが注目されがちなスタートアップですが、デットファイナンスを戦略的に組み込むことで、成長を大きく加速させることが可能です。
スタートアップこそデットが効く!最適なタイミングと活用シーン
| 成長ステージ | 有効なデットファイナンス | 主な活用シーン |
|---|---|---|
| シード期 | 日本政策金融公庫(新規開業資金など) | ・事業アイデアの検証(MVP開発) ・創業初期の運転資金 |
| アーリー期 | RBF(SaaS等)、信用保証付き融資 | ・PMF達成後の初期的な顧客獲得 ・採用やマーケティングの強化 |
| グロース期(シリーズA以降) | ベンチャーデット、プロパー融資、ABL | ・エクイティラウンド間のつなぎ資金(ブリッジ) ・大規模な設備投資(CAPEX) ・株式の希薄化(ダイリューション)抑制 |
特に重要なのが、エクイティ調達の合間を埋める「ブリッジファイナンス」としての活用です。デットファイナンスで時間を稼ぐことにより、焦って不利な条件でエクイティ調達に応じる事態を避け、より有利な企業価値(バリュエーション)で交渉を進めることが可能になります。
融資審査を突破するための3つの鉄則
金融機関が知りたいのは、「この会社に貸したお金は、本当に返ってくるのか?」という一点に尽きます。その信頼を勝ち取るためのポイントは以下の3つです。
- 「返せる未来」を物語る事業計画書を創る 単なる数字の羅列ではなく、ロジックと情熱の通ったストーリーとして以下の要素を盛り込みましょう。
- 事業の魅力:あなたの事業は、なぜ社会に必要とされ、競合とどう違うのか?
- 資金の使途:借りたお金を「何に」「いくら」使い、それがどう成長に繋がるのか?
- 返済の根拠:「どのように」利益を生み出し、その利益から「確実に」返済できるのか?(収支計画)
- 「自分の言葉」で語り尽くす 面談では、事業計画書に書かれた内容を、経営者自身の言葉で、熱意を持って語ることが求められます。特に以下の点は、あなたの「本気度」を示す重要な指標です。
- 自己資金:どれだけのリスクを自分で負っているか?
- 事業経験:なぜ、あなたがこの事業を成功させられるのか?
- 信用情報:税金や公共料金の支払いを遅延していないか?
- 一度の失敗で諦めない もし審査に落ちても、それは「終わり」ではありません。むしろ、事業計画の弱点を客観的に指摘してもらえた好機と捉えましょう。
- 原因分析:なぜ否決されたのか?(担当者に可能な範囲で確認する)
- 計画の改善:指摘された点を改善し、事業計画をブラッシュアップする。
- 実績作り:半年~1年かけて事業を進捗させ、目に見える実績を作る。
デットファイナンスに関するQ&A
デットファイナンスに関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。資金調達を検討する際の参考にしてください。
Q1.赤字決算でもデットファイナンスは利用できますか?
A.はい、状況によっては可能です。特にスタートアップの場合、先行投資により赤字であることは珍しくありません。日本政策金融公庫の新規開業資金や一部のベンチャーデット、RBFなどは、単年度の赤字という事実だけでなく、事業計画の将来性、成長性、売上実績、経営者の資質などを総合的に評価するため、赤字決算でも利用できる可能性があります。ただし、継続的な赤字で返済能力に著しく疑問符が付く場合は難しくなります。
Q2.デットファイナンスの金利相場はどれくらいですか?
A.金利は融資の種類や企業の信用力によって大きく異なります。一般的な年利の目安は以下の通りです。
- 公的融資(日本政策金融公庫など): 年1.5% ~ 3.5%
- 銀行融資(プロパー): 年1.0% ~ 3.0%
- 銀行融資(信用保証付き): 年2.0% ~ 4.0% (※信用保証料込みの実質負担)
- ビジネスローン: 年3.0% ~ 18.0%
- ベンチャーデット: 年5.0% ~ 12.0% (※金利とは別に新株予約権が付くのが一般的)
Q3.個人事業主でもデットファイナンスを利用できますか?
A.はい、多くのデットファイナンスは個人事業主も対象としています。特に日本政策金融公庫の融資制度(新規開業資金など)は、法人だけでなく個人事業主の創業も積極的に支援しています。民間の金融機関の事業資金融資やビジネスローンも、個人事業主向けの商品が多く存在します。提供事業者によって対象が法人に限定されている場合もありますので、個別の確認が必要です。
Q4.デットファイナンスの審査で最も重視される点は何ですか?
A.最も重視されるのは、「返済能力」と「事業の将来性・継続性」です。具体的には、以下の要素が総合的に評価されます。
- 事業計画の妥当性: 市場分析、収益計画、資金計画などが現実的で、実現可能性が高いか。
- 収益見込み: 安定した収益を生み出し、借入金を返済していけるか。
- 自己資金の状況: 特に創業融資の場合、一定の自己資金準備は事業への本気度を示すものとして評価されます。
- 経営者の経験・能力・信用情報: 事業に関連する経験やスキル、過去の金融取引履歴(延滞の有無など)も重要な判断材料です。
- 担保・保証: 提供できる担保や保証人の有無も、特に高額な融資や信用力が低い場合に影響します。
Q5.複数のデットファイナンスを組み合わせることは可能ですか?
A.はい、可能ですし、戦略的に有効な場合も多くあります。例えば、創業初期に日本政策金融公庫から低利の融資を受け、事業拡大期には銀行の信用保証付き融資やベンチャーデットを追加で利用するといった組み合わせが考えられます。
また、エクイティファイナンスとデットファイナンス(特にベンチャーデット)を組み合わせることで、株式の希薄化を抑えつつ必要な資金を確保する「ハイブリッドな資金調達」もスタートアップでは一般的です。
まとめ
デットファイナンスは、経営の自由度を保ちながら事業を成長させる強力なエンジンです。しかし、返済義務という重い鎖を伴うため、「諸刃の剣」にもなり得ます。
成功の鍵は、自社の事業計画や成長ステージに合わせて、最適な融資を「戦略的」に選ぶことです。
最終決定の前に、必ず自問自答してください。
- その返済計画は、本当に現実的か?
- 金利や手数料を含めた総コストは、将来の利益に見合っているか?
- その借入れは、会社の「今」のステージに本当に合っているか?
これらの問いに明確な答えを持つことが、後悔のない資金調達、そして事業の持続的な成長へと繋がります。
無料会員登録でデットファイナンスサービスを比較+最新FinTechニュースを受け取る
MCB FinTechカタログは、FinTech・Web3領域の法人向けサービスを網羅的に検索・比較できる専門プラットフォームです。無料会員登録をすると、以下の機能をご利用いただけます。
- 主要サービスの公式資料一括ダウンロード
- 各社の料金プランや導入実績閲覧
- 最新動向メルマガ配信など
導入検討に必要な情報をワンストップで収集し、社内稟議のスピードも大幅アップ。今すぐ無料登録して、最適なFinTechソリューションと最新業界トレンドを手に入れましょう。
【月額基本料無し】MCB FinTechカタログに掲載しませんか?
MCB FinTechカタログでは、掲載企業様を募集しています。マネックスグループの金融実務ノウハウを活かした独自の評価軸と検索設計により、導入検討者が最適なサービスを効率的に発見できる法人向け比較プラットフォームです。掲載後は管理画面から料金表や導入事例を随時更新でき、常に最新の情報を訴求可能。まずは下記フォームより、お気軽にお問い合わせください。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修者は記事の内容について監修しています。



