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BaaSとは?銀行APIを通じたビジネスモデル・具体事例・メリットをわかりやすく解説

BaaSとは

近年フィンテック業界で注目を集めるのが「BaaS(Banking as a Service)」です。
「名前は聞いたけど仕組みはよく分からない」「自社にも関係があるのだろうか」と感じる方も多いでしょう。

例えばJR東日本の「JRE BANK」もBaaSによって実現したサービスの一つ。鉄道会社が自社ブランドで銀行口座を提供し、ポイントと連携した金融体験を生み出しています。(出典元:JR東日本

本記事では、BaaSの仕組みやメリットを分かりやすく解説し、国内事例や最新動向、市場の将来性までご紹介します。業界に詳しくない方でも、BaaS活用の全体像と導入のヒントを理解できる内容です。

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BaaS(Banking as a Service)とは

BaaS(バース)は「Banking as a Service」の略で、日本語では「サービスとしての銀行」と訳されます。銀行が持つ預金・送金・融資といった機能をAPIを通じて外部に提供し、銀行免許を持たない企業でも自社サービスに金融機能を組み込める仕組みです。

従来は銀行が直接ユーザーに提供していた振込やローンなども、BaaSでは銀行が裏方に回り、APIを介して他社に「金融機能をレンタル」します。例えばECサイトが後払い決済を導入する際、BaaSを利用すれば自社で免許やシステムを持たずとも、銀行の安全な決済基盤を活用できます。

また、関連する用語に「エンベデッド・ファイナンス(Embedded Finance)」があります。これは非金融企業が自社サービスに金融機能を組み込むことを指し、銀行側の提供モデルがBaaS、利用する事業会社側の形態がエンベデッド・ファイナンスと捉えると分かりやすいでしょう。両者は表裏一体の関係にあります。

BaaSが注目される背景

銀行業界のみならず様々な業界でBaaSが注目されるのには、いくつかの背景があります。その主要なポイントを整理します。

オープンバンキングの推進(規制面の追い風)

日本では2017年に銀行法が改正され、銀行に対してAPI公開に努めることが求められるようになりました。これに伴い、多くの銀行が外部のフィンテック企業等と連携するためのオープンAPIを整備しています。

実際、政府は「2020年までに80行以上がAPIを公開する」という目標を掲げ、国内銀行のAPI公開は加速しました(結果的に目標を上回るペースで公開が進んだと報告されています)。

このように、法律や制度の整備によって銀行機能の開放が促進されたことが、BaaS普及の土台となっています。

FinTechの台頭とデジタル化ニーズ

金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせたFinTechの波は、ここ数年で大きく広がりました。決済アプリ、個人間送金サービス、オンライン融資プラットフォームなど、次々と新しい金融サービスが登場しています。

こうしたITの急速な発展に伴うユーザーのデジタルニーズの変化が、金融業界にもオープン化を迫りました。銀行も自前主義に固執せず、フィンテック企業と協業してサービス展開する動きが不可欠となり、その手段としてBaaSが注目されているのです。

非金融企業の金融サービス参入(Embedded Financeの需要)

金融業以外の企業が、自社サービスに決済や融資機能を取り込むケースが増えています。例えばECサイトがその場でローンを組ませたり、ライドシェアアプリがドライバー向けに収入先払いサービスを提供したりと、金融サービスの組み込み(エンベデッド金融)へのニーズが高まっています。

こうした企業にとって、BaaSは銀行機能を手軽に利用するための鍵となります。銀行側も、自社のAPIを提供して提携すれば手数料収入などのメリットがあるため、双方の利害が一致しBaaSが進展しています。

ユーザー体験(UX)志向の高まり

現代のユーザーは、サービス利用における手間や時間のロスを極力減らしたいと考えています。従来、ECサイトで買い物後に決済のため別サイトに飛ぶ、銀行振込のためにATMに行く、といった動作が当たり前でしたが、それらはユーザーにとってストレスでした。

BaaSを活用したサービスでは、アプリから離脱することなく金融手続きを完了できるため、ユーザー体験が飛躍的に向上します。企業が競争力を保つには優れたUXが欠かせず、その実現手段としてBaaSが求められている面もあります。

市場規模の拡大予測

BaaS分野の経済的ポテンシャルも注目の理由です。例えば、Mordor Intelligenceによる調査では2025年の世界BaaS市場規模は約67億4,000万ドル、2030年には約219億ドルに達すると予想されています。

年平均成長率にして26.6%という非常に高い伸び率です。このような市場の将来性が示されることで、金融機関・企業ともに「BaaSに今投資すれば恩恵が大きい」と判断し、参入を加速させています。

以上のように、規制緩和(オープンAPI政策)や技術トレンド(FinTechの進展)、ビジネス上の利害一致(企業・銀行双方のメリット)、そしてユーザーからの要請(利便性向上期待)が相まって、BaaSは現在大きな注目を浴びています。

BaaSのメリット

ここではBaaSを導入・活用することで得られるメリットを、非金融企業金融機関エンドユーザーそれぞれの立場から整理します。

非金融企業がBaaSを利用するメリット

自社サービスに金融機能を組み込もうとする事業会社にとって、BaaSは多くの利点をもたらします。

1. 金融ライセンス不要で高度な機能を実装

本来銀行免許が必要な送金・預金・融資などを、BaaSなら合法的に提供可能。スタートアップでも大手銀行並みの決済機能を自社アプリに組み込め、新規参入のハードルを下げられます。

2. サービス価値向上と差別化

金融機能を加えることでユーザーはワンストップで利便性を享受。ECサイトの後払い決済やアプリ内ウォレットは体験向上と囲い込みにつながり、競合との差別化要素になります。

3. 新たな収益源の確保

銀行API利用で取引ごとのマージンを得られる場合もあり、ユーザーの利用度向上は本業の売上増にも直結。BaaSは収益多角化の手段となります。

4. 安全性と信頼性の担保

金融取引部分は銀行が担うため、セキュリティやリスク管理を高水準で確保。ユーザーにとっても「銀行が裏にいる」ことが信頼感につながります。

金融機関(銀行)がAPIを公開するメリット

銀行が自らのサービスをAPI公開するBaaSモデルには、従来の銀行業にはないメリットがあります。

1. 新規顧客チャネルの獲得

他社サービスに銀行機能を提供することで、従来接点のなかった顧客層にリーチ可能。例えば地方銀行が大手ECと連携すれば、全国の利用者に間接的に口座開設を促せます。

2. サービス差別化とブランド強化

自社の強みをAPIとして提供し評価を得られれば、ブランド価値向上に直結。「〇〇銀行API採用」といった形での露出も、新たな認知機会となります。

3. 収益モデルの拡大

BaaSではAPI利用料や接続料収入が基本。多数の提携先が増えれば積み上げ効果で大きな収益源となり、低金利時代の新たなビジネスモデルとなります。

4. ユーザー数・取引量の増加

提携先アプリ経由でも口座開設や送金が増えれば、銀行の預金残高や取引件数は拡大。ネットワーク効果でサービス価値全体が高まります。

エンドユーザー(利用者)にとってのメリット

BaaSは最終的にはサービスを使う消費者にも大きなメリットをもたらします。

1. 利便性の向上

従来のように決済で外部サイトへ飛んだりATMに振り込む必要がなく、アプリ内で決済や口座操作が完結。ワンクリックで利用できるため、サービス体験が中断されず快適になります。

2. 時間・場所の制約解消

スマホさえあれば24時間どこでも送金や融資申込が可能。深夜の送金や移動中のローン申請も実現し、生活スタイルに合わせて金融サービスを利用できます。

3. サービス選択肢の拡大

多様な企業が独自の金融サービスを提供するため、消費者は自分に合ったものを選べます。ポイント特化型口座や趣味専用電子マネー(例:pixiv支店)など、ニッチなニーズにも対応。

4. 安心感とお得さ

非金融企業と銀行の連携により、特典付きや信頼性の高いサービスが提供されます。例えば通信会社のデジタル銀行では「料金支払いでポイント増」などの特典があり、安心かつお得に利用可能です。

以上のように、BaaSは三者(三方良し)のメリットを持つ仕組みだと分かります。

BaaSのデメリット・課題

メリットが多いBaaSですが、導入・活用にあたって注意すべき課題もいくつかあります。

1. セキュリティ・法令遵守

送金や口座情報を扱う以上、暗号化や不正送金監視など厳重な対策が必須です。銀行側と事業会社側で責任範囲を明確にし、KYC(本人確認)や資金移動業登録など法的要件を満たす必要があります。

2. システム統合コストとROI

銀行APIは仕様が異なるため、複数行と接続するには開発・検証コストが発生します。さらにAPI利用料や運用コストも考慮し、投資効果が見合うか試算することが重要です。

3. 専門人材の不足

金融とIT双方に精通した人材は希少で、ノウハウ不足が課題となりがちです。短期的には外部支援、長期的には自社での人材育成・採用が必要です。

4. 銀行との調整・標準化

手数料やブランド表示、ユーザー対応の分担など調整事項が多く、大企業間では合意形成に時間がかかります。また日本ではAPI標準化が進んでおらず、相互運用性の確保も今後の課題です。

BaaSのビジネスモデル

BaaSは、銀行と非金融企業がAPIを通じて結びつき、新しい収益機会を創出するモデルです。単なる「機能提供」ではなく、銀行=金融インフラ提供者、事業会社=顧客接点の担い手という役割分担によって、従来にないビジネスモデルが成り立っています。ここでは、代表的な収益モデルのパターンを整理します。

銀行のビジネスモデル

銀行は、従来は自ら店舗やオンラインサービスを通じてエンドユーザーに直接サービスを提供していました。しかしBaaSの枠組みでは、金融機能を「API」という部品に切り分け、事業会社に卸売りするような形で収益を得ます。これは従来の「リテールモデル」とは大きく異なる新しい収益構造です。

1.API利用料モデル

銀行は、提供する送金や決済APIに対して、提携企業から月額利用料や接続料を徴収します。例えば「月額固定料金+従量課金」の形式を取ることで、利用件数に左右されない安定収入を確保しつつ、利用が増えるほど追加収益を得られる仕組みになっています。サブスクリプション型収益に近く、提携先が増えるほど固定収益が積み上がる点が特徴です。

2.従量課金モデル

決済や振込など、APIを経由して実際に発生した取引件数に応じて課金する仕組みです。利用件数が増えるほど銀行の収益も拡大する「スケール型モデル」であり、事業会社の成長と収益が連動する点が大きな魅力です。特に決済件数が膨大に発生するECや交通領域では、従量課金型のメリットが最大限に発揮されます。

3.顧客基盤拡大

BaaSを通じて銀行は、これまで直接リーチできなかった顧客層を取り込むことができます。例えば、JR東日本の「JRE BANK」では楽天銀行のAPIを活用し、鉄道利用者を対象に新しい口座開設を促進しました。銀行単体では開拓が難しい生活者層に効率的にアクセスできることは大きな利点で、結果的に預金残高やローン利用といった従来型収益の増加にもつながります。

4.ブランド価値の向上

提携サービス上で「〇〇銀行のAPI採用」と表記されることで、ユーザーは裏に大手銀行が存在する安心感を得ます。これは単なる技術提供にとどまらず、銀行ブランドの信頼性を高める広告効果にもなります。例えば「dスマートバンク」では三菱UFJ銀行が技術基盤を支えることで、利用者に安心感を与え、結果的に銀行のブランド力強化にも貢献しています。

このように銀行にとってBaaSは、「API課金による新しい収益源」「事業会社経由の顧客基盤拡大」「ブランド価値の強化」という三重のメリットをもたらします。低金利時代に利息収入が伸び悩む中で、BaaSは手数料ビジネスを中心とした“第二の収益の柱”として期待されているのです。

BaaS導入企業のビジネスモデル

非金融企業にとってBaaSは、単に「銀行サービスを自社ブランドで提供できる」だけではなく、新しい収益源の創出と既存ビジネスの強化という二重の価値をもたらします。以下では代表的な4つのビジネスモデルを解説します。

1.金融手数料収入

最も直接的な収益モデルは、金融サービスそのものから得られる手数料収益です。たとえばBNPL(Buy Now, Pay Later=後払い)や分割払い機能を自社ブランドで提供すれば、ユーザーから利息や手数料を得ることができます。EC事業者が自前の分割払いを導入することで、単なる「販売業者」から「金融サービス提供者」へと進化できるわけです。これにより、新規ユーザーの獲得や購入単価の引き上げが可能になります。

2.クロスセル効果

金融機能は、それ自体の収益だけでなく「既存事業の売上増」にも直結します。たとえばJR東日本の「JRE BANK」では、口座を開設すると鉄道利用やEC購入でJREポイントが優遇されます。ユーザーは「よりお得にポイントを貯めたい」と考えるため、鉄道やEC利用が自然に促進されます。つまり金融サービスは、本業(鉄道やEC)の売上拡大に寄与する「クロスセル装置」として機能するのです。

3.顧客データ活用

BaaSを通じて取得できる金融データは、従来の顧客行動データと組み合わせることで大きな価値を生みます。

  • 銀行取引データ(入出金履歴、残高情報など)
  • 自社サービス利用データ(購買履歴、利用頻度など)

これらを掛け合わせることで、CRMの高度化や新たなスコアリングサービスが可能になります。たとえばEC事業者であれば、ユーザーの支払い能力や購買傾向を精緻に把握し、パーソナライズされた商品提案や金融商品の販売につなげることができます。

4.ブランドの深化

金融機能の提供は、単なる売上拡大にとどまらず「ブランドの格上げ」にも貢献します。「〇〇社は金融サービスも提供している」という事実は、ユーザーに安心感と信頼を与えます。これにより顧客ロイヤルティが向上し、長期的な顧客維持につながります。たとえば通信業界では、ドコモが「dスマートバンク」を展開し、通信・決済・金融を一体化したブランド体験を提供することで、競合との差別化を強めています。

このようにBaaS導入企業のビジネスモデルは、「金融から直接収益を得る」+「本業の売上拡大」+「データ活用による新規事業」+「ブランド価値向上」という多層的な構造を持っています。金融は単なる付加機能ではなく、企業の成長戦略そのものを後押しする強力な武器になりつつあるのです。

BaaSの具体的な活用事例

続いて、実際にBaaSがどのように活用されているかを具体例で見てみましょう。

1.住信SBIネット銀行「NEOBANK」

国内でBaaSと言えばまず名前が挙がるのが住信SBIネット銀行の「NEOBANK」です。住信SBIネット銀行は2016年に邦銀で初めて銀行APIを公開し、NEOBANKというブランド名で他企業に金融機能を提供しています。

提携先は日本航空(JAL)、ヤマダデンキ、高島屋など多岐にわたり、各社が自社サービス内で住信SBIの銀行機能を活用しています。例えばJALとは提携して、多通貨対応のプリペイドカード「JAL Global WALLET」を発行しました。利用者はJALのマイルと連動した便利な決済ができ、住信SBIネット銀行は間接的に新規口座開設者を獲得しています。

NEOBANKは銀行API戦略の先駆けであり、その成功により他の銀行もBaaSに本腰を入れるきっかけとなりました。

参照:住信SBIネット銀行株式会社「住信SBIネット銀行が開発パートナーとして参画した「JALマイレージバンクアプリ」リリース」

2.SBI新生銀行グループ「BANKIT」

SBI新生銀行グループが提供するウォレットサービス「BANKIT」は、チャージ式のプリペイドカードを中心にQRコード決済、ATM入出金、後払い(BNPL)など多彩な機能をワンストップで提供しています。

特徴的なのは、提携する事業者が必要な機能だけを選んで組み込める点です。例えばポイントカード運営企業がBANKITと組めば、チャージ機能だけ自社アプリに載せるといった使い方も可能です。

また、提携企業が自前のスマホアプリを持っていなくても利用者にサービス提供できる仕組み(例えばブラウザベースで完結できるUI提供)も整えており、テクノロジーリソースが乏しい企業でも導入しやすいのが強みです。

将来的には資産運用や保険機能も追加予定で、銀行の機能を“選べるパーツ”として企業に提供するモデルを推進しています。

参照:株式会社SBI新生銀行「金融プラットフォーム「BANKIT®」に「ことら送金サービス」を実装 アプラスが資金移動業者として初めて加盟」

3.みんなの銀行「Minna no BaaS」


2021年に開業したデジタルバンクであるみんなの銀行(福岡FG)は、自社サービスと並行して法人向けのBaaS提供「Minna no BaaS」にも注力しています。

象徴的な例が、イラストSNS「pixiv(ピクシブ)」との提携です。pixivユーザー向けに「pixiv支店」という仮想支店を設け、そこで口座開設から決済・送金までみんなの銀行の機能を利用できるようにしました。クリエイターがイラスト販売代金をpixiv支店の口座で受け取り、そのまま振込や支払いに使えるなど、コミュニティ内経済圏を支える金融サービスを提供しています。

また、人材派遣のパーソルとも提携し「テンポラリー支店(仮称)」を開設、派遣スタッフが給与を受け取れる銀行機能を提供するなど、業種特化のBaaS展開を次々行っています。

みんなの銀行のBaaSは開業から2年足らずで複数社と提携を進めており、そのスピード感は業界内でも注目されています。

参照:株式会社みんなの銀行「【BaaS事業】ピクシブ株式会社との更新系API連携による 『ピクシブかんたん決済 powered by みんなの銀行』サービスを開発」

4.NTTドコモ「dスマートバンク」


通信大手のNTTドコモは2022年、「dスマートバンク」という名称で銀行サービスに参入しました。

これはドコモが三菱UFJ銀行のAPIを活用し、自社ブランドのデジタル口座を提供するものです。具体的には、「口座にお金を預けておくだけでdポイントが貯まる」「携帯料金引き落とし口座をdスマートバンクにするとポイント優遇」など、ドコモユーザー向けにポイントメリットを付与した銀行サービスとなっています。裏側では三菱UFJ銀行が勘定系などを支えていますが、ユーザーにはドコモのサービスとして映るようになっています。

参照:ニッキンONLINE「三菱UFJ銀、ドコモとデジタル口座提供 BaaSで提携」

dスマートバンクは通信×金融のエンベデッド金融の代表例であり、既存の巨大ユーザーベース(ドコモ契約者)に金融サービスをクロスセルすることで、新たな価値提供と顧客ロイヤリティ向上を狙っています。

以上、いくつかの事例を見てきましたが、共通しているのは「銀行と非金融企業が組んで新しい価値を生み出している」点です。

BaaSを導入する流れ

ここからは、自社でBaaSを活用してサービス提供する際の進め方について説明します。主なステップと、押さえておきたいポイントを順に見ていきましょう。

ステップ1:自社サービスで実現したい金融機能の明確化

まずは、「どのような金融サービスを自社のユーザーに提供したいか」をはっきりさせましょう。

例えば、「ECサイトで分割払い・後払いを提供したい」「自社アプリ内にプリペイド残高を持たせたい」「会員向けに簡易な投資サービスを追加したい」等、ビジネスモデルや顧客ニーズに基づき洗い出します。これにより必要な機能(決済なのか融資なのか預金口座なのか)が見えてきます。

また、社内で合意形成するためにも目的の明確化は重要です。BaaS導入の目的(顧客満足度向上なのか、新収益獲得なのか等)を整理し、関係部署と共有します。

ステップ2:パートナー候補(BaaS提供企業)の比較・選定

次に、その機能を提供できそうな銀行やフィンテック企業をリストアップし、比較検討します。銀行ごとにAPIで提供しているサービス範囲や条件が異なるため、自社のニーズにマッチするかを確認します。例えば、送金APIはA銀行が無料枠付きで提供しているが、B銀行は有料だけど24時間即時決済に対応している、など違いがあります。

比較にあたっては、MCB FinTechカタログのようなサービス比較プラットフォームを活用すると便利です。MCB FinTechカタログでは各社の提供機能や料金プラン、導入事例が一覧できるため、複数のBaaS提供企業を効率よく比較できます。

そうした情報を踏まえ、自社に合いそうなパートナーを絞り込みます。最後は直接コンタクトを取り、サービス詳細やサポート体制についてヒアリングして最終決定します。

ステップ3:システム統合とテスト運用

パートナー企業(銀行等)が決まったら、具体的なシステム連携のフェーズに入ります。

まずAPI利用のための開発を行います。銀行から提供されるAPI仕様書や開発者ポータルに従い、自社サービスとの接続処理を実装します。ここでポイントになるのが、段階的な導入です。いきなり全ユーザー向けにフル機能をリリースするのではなく、まずは社内テストや一部ユーザー向けのパイロット運用から始めると安全です。

開発段階では銀行側のテスト環境(Sandbox)で十分に検証し、想定通り動くか、不正送金やエラーが適切に処理されるかを確認します。並行して、社内オペレーションの準備(問い合わせ対応フローの策定やマニュアル整備など)も進めておきます。テスト結果が良好で、銀行側とも最終確認が取れたら、本番環境でサービス提供開始となります。

リリース直後はユーザーからのフィードバックやエラー発生に注意深く目を配り、必要に応じて微調整を行います。

BaaS導入時に確認すべきポイント

上記ステップを踏む中で、特に以下の点を事前に確認・検討しておくことをお勧めします。

費用対効果のシミュレーション

BaaS導入は投資であるため、想定リターンとコストを比較することが重要です。例えば「後払い決済で売上が〇%増加見込み、API利用料は月〇万円」といった試算を行い、黒字化ラインを把握します。

コストには初期開発費、人件費、API利用料(固定+従量)、運用保守費などが含まれます。特にAPI利用料は利用件数によって変動するため、「月1万件なら黒字、5千件以下なら赤字」といった複数シナリオでシミュレーションしておくと安心です。

パートナーのサポート体制

導入初期は不明点が多いため、提携先のサポート力が成否を左右します。技術ドキュメントの充実度、問い合わせ対応のスピード、障害時の連絡体制などを事前に確認しましょう。特に銀行系は社内調整に時間がかかる場合があるため、実務担当者と円滑にやり取りできるかが重要です。初めてのBaaS導入なら、実績豊富でノウハウを持つパートナーを選ぶと安心です。

セキュリティ・法令面の準備

サービス開始前には、セキュリティとコンプライアンスのチェックを徹底します。暗号化、権限管理、ログ監査、不正検知といった技術面の確認に加え、利用規約やプライバシーポリシーを更新し、資金決済法など関連法規を満たしているかを再点検しましょう。必要に応じて専門家の助言を得ることも有効です。常に「安全第一」の体制でローンチを目指してください。

スモールスタートと改善

一度に大規模展開せず、小規模テストから始めるのが現実的です。例えば社内限定の試用や一部顧客への招待制ベータテストでフィードバックを集め、UI改善や利用シナリオの把握に活かします。本格公開前に改善を反映すれば完成度が高まります。導入後もPDCAを回し、継続的に改善する姿勢が重要です。

以上がBaaS導入の基本的な進め方とポイントです。適切に計画・実行すれば、BaaSは自社サービスを一段階成長させる強力な武器となるでしょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. BaaSとエンベデッドファイナンスは同じもの?

A1. 密接に関係しますが、視点が異なります。BaaSは「銀行が機能を外部提供する仕組み」、エンベデッドファイナンスは「非金融企業がその機能を組み込むこと」を指します。両者は表裏一体で、実務上はほぼ同義で語られることもあります。

Q2. BaaSを使うのに銀行免許は必要?

A2. 不要です。銀行が自らのライセンスでAPIを提供するため、利用企業は免許なしで銀行機能を組み込めます。ただし、資金移動業など別の登録が必要なケースもあるため、提携銀行と確認することが重要です。

Q3. 国内での代表的なBaaSサービスは?

A3. 住信SBIネット銀行(NEOBANK)、GMOあおぞらネット銀行(GMO BaaS)、みんなの銀行(Minna no BaaS)などがあります。大手では、三菱UFJ銀行のAPIを活用した「dスマートバンク」などが事例です。新規参入も多いため、最新動向は業界情報源で随時チェックが必要です。

Q4. 導入時の課題は?

A4. 代表的なのは「セキュリティ・法令遵守」「コスト」「人材不足」「銀行との調整」です。銀行並みのセキュリティ意識、ROIを意識した費用管理、金融×IT人材の確保、そしてパートナー銀行との綿密な合意形成が成功の鍵です。

Q5. 今後の展望は?

A5. BaaSは世界的にも成長分野で、2030年頃まで拡大が続くと予測されています。国内でもNEOBANKやみんなの銀行が実績を上げており、他行の参入も進むでしょう。今後は金融サービスの基盤インフラとして定着していくと考えられます。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋 真倫

大阪大学経済学部卒業。都市銀行退職後に暗号資産関連スタートアップの創業メンバーとして業界調査や相場分析に従事。2018年、マネックスグループ入社。マネックスクリプトバンクでは業界調査レポート「中国におけるブロックチェーン動向(2020)」や「Blockchain Data Book 2020」などを執筆し、現在はweb3ニュースレターや調査レポート「MCB RESEARCH」などを統括。国内メディアへの寄稿も多数。2021年3月より現職。

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