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レバレッジドリースとは?オペレーティングリースとの違いと仕組み、節税・会計処理・リスクも解説

レバレッジドリースとは

企業の利益が大きく伸びた年度に課題となるのは、「利益の繰り延べ」と「キャッシュフロー最適化」です。

その手法として長年使われてきたのが、航空機・船舶・コンテナなど大型資産を利用するレバレッジドリースです。

一方で、税制改正による規制強化や、「JOL」「JOLCO」との混同から、本質やリスクが十分理解されていないケースもあります。

本記事では、レバレッジドリースの仕組み、資金フロー、会計処理、メリットと注意点を実務的な視点で整理し、節税目的にとどまらない財務戦略として検討するためのポイントを解説します。

レバレッジドリースとは:基本概念と定義

まず、「レバレッジドリース(Leveraged Lease)」という言葉の定義と、その構造的な特徴を整理します。

「レバレッジ」が意味するもの

レバレッジ(Leverage)とは「てこ」の作用を指します。金融用語としては、自己資金に借入金を加えて投資総額を膨らませ、投資効率を高めることを意味します。

レバレッジドリースにおいて、この「てこ」は以下の構造で現れます。

  • 投資家(レッサー): 物件購入代金の一部(通常20〜30%)のみを自己資金(出資)として拠出。
  • 金融機関:残りの代金(70〜80%)を融資(ノンリコースローン)で賄う。

このように、借入金を活用することで、自己資金の数倍の規模の資産(航空機や船舶など)を購入し、そこから生じる巨額の「減価償却費」という税務上のメリットを享受する仕組みがレバレッジドリースです。

オペレーティングリースとの関係

広義には、レバレッジドリースは「オペレーティングリース」の一種として扱われます。 しかし、実務上は以下の2つを明確に区別する必要があります。

1.古典的レバレッジドリース

かつて主流だった手法です。

2005年(平成17年度)の税制改正により、組合損失の取り込みに制限がかかり、事実上終焉しました。現在は新規の組成・販売は行われていません。

2.日本型オペレーティングリース(JOL/JOLCO)

2005年以降に主流となった手法です。

購入選択権付きのリース(JOLCO)など、現行の税制に対応した形式。本記事では、この「JOL/JOLCO」を中心に解説します。

レバレッジドリースの仕組みと登場人物

このスキームは、単なる貸し借りではなく、複数のプレイヤーが関与する複雑な金融取引です。

主要なプレイヤー(登場人物)

  1. 投資家(出資者)
    • 誰か:利益の繰り延べを行いたい法人企業(本記事の読者)。
    • 役割:匿名組合(Tokumei Kumiai: TK)等を通じて資金を出資し、損益の分配を受ける。
  2. レッサー(賃貸人/SPC)
    • 誰か:リース会社が設立した特別目的会社(SPC)。
    • 役割:投資家からの出資と銀行からの借入を元手に資産を購入し、レッシーへ貸し出す。
  3. レッシー(賃借人)
    • 誰か:航空会社、海運会社など。
    • 役割:資産を使用し、リース料を支払う。
  4. レンダー(貸付人)
    • 誰か:銀行などの金融機関。
    • 役割:物件購入資金の不足分を融資する。
  5. アレンジャー
    • 誰か:リース会社、証券会社、大手銀行。
    • 役割:スキーム全体の組成・販売を行う。

スキームの全体像(資金と資産の流れ)

  1. 組成:アレンジャーがSPCを設立。
  2. 資金調達:投資家が出資(約30%)、銀行が融資(約70%)。
  3. 資産購入:SPCが航空機・船舶などをメーカーから購入。
  4. リース契約:SPCがレッシー(航空会社等)に資産を貸し出し。
  5. 運用期間:レッシーからのリース料で銀行ローンを返済。投資家には「会計上の損失(減価償却費>リース料収入)」が分配される。
  6. 出口(Exit):リース期間終了後、レッシーが資産を買い取るか、市場で売却。売却益(キャピタルゲイン)が投資家に分配される。

ノンリコースローンの重要性

ここで重要なのが、銀行からの融資が「ノンリコースローン(非遡及型融資)」である点です。

返済原資はあくまで「リース料収入」と「物件売却代金」に限定され、万が一返済が滞っても、投資家(出資企業)に追加の返済義務は生じません。 これにより、投資家のリスクは「出資額」の範囲内に限定されます。

なぜ節税(利益の繰り延べ)になるのか?

「なぜ航空機を買うと税金が減るのか?」
このメカニズムの核心は、「会計上の損失」と「キャッシュフロー」のズレにあります。

減価償却費のレバレッジ効果

航空機や船舶は、定率法などの償却方法を用いることで、初年度から数年間に巨額の減価償却費を計上できます。

  • 収入:リース料(定額で入ってくることが多い)。
  • 費用:減価償却費(初期に巨額)+ 借入金利息。

リース開始初期は、「費用(減価償却費) > 収入(リース料)」 となり、SPC上で大きな赤字が発生します。

投資家は匿名組合を通じてこの赤字を取り込み、自社の本業の黒字と相殺(損益通算)することで、法人税等の支払いを減少させます。

「レバレッジ」がかかっているため、例えば3億円の出資で10億円の航空機持分を取得したのと同等の減価償却効果を得られるのが最大の特徴です。

「節税」ではなく「課税の繰り延べ」

注意すべきは、これが永久的な免税ではない点です。リース期間終了時(出口)には、資産の売却益や清算金が一度に入ってきます。ここで大きな利益(雑収入)が計上され、課税されます。

つまり、「今払うべき税金を将来に回し、その間に資金を運用する」 というのが正確な理解であり、出口戦略(退職金の支払い、新規事業投資、設備投資など)とセットでなければ意味を成しません。

JOLとJOLCOの違い:現代の主流

現在、金融機関から提案される商品の多くは「JOL」または「JOLCO」と表記されています。この違いを明確にしておきましょう。

JOL(Japanese Operating Lease)

  • 特徴:リース期間満了時、レッシーに購入義務や購入選択権がない、または市場価格での購入となる一般的なオペレーティングリース。
  • 投資家のリターン:リース期間終了後の中古市場での売却価格に依存します。市場価格が高騰すれば大きなキャピタルゲインが得られますが、暴落すれば元本割れのリスクがあります。

JOLCO(Japanese Operating Lease with Call Option)

  • 特徴:JOLに「購入選択権(Call Option)」が付いたもの。
  • 仕組み:リース期間の途中で、レッシーが「あらかじめ決められた価格」で資産を買い取る権利を持ちます。
  • メリット:レッシーにとって有利な価格設定にしておくことで、実質的に買い取りを促します。これにより、投資家にとっては「償還の確実性が高い」「予定通りの利回りが計算しやすい」という特徴があります。
  • 現状:投資家の多くは、出口の計算が立ちやすいJOLCOを好む傾向にあります。

レバレッジドリースの会計処理と仕訳

ここでは、投資家(出資企業)の視点での具体的な会計処理について解説します。
※実際の処理は、監査法人や税理士の判断、および適用される会計基準(中小企業会計、IFRS等)により異なる場合があります。

導入時(出資時)

匿名組合(TK)への出資金は、「投資有価証券」や「出資金」として資産計上します。

借方金額貸方金額
投資有価証券(または出資金)100,000,000現預金100,000,000

運用期間中(損失の取り込み)

SPCから送られてくる「計算書」に基づき、分配された損失を計上します。これが利益圧縮の効果となります。

借方金額貸方金額
投資有価証券評価損(または匿名組合損益)50,000,000投資有価証券50,000,000

※PL(損益計算書)上は営業外費用として計上されることが一般的です。BS(貸借対照表)上の投資有価証券の簿価を直接減額します。

終了時(利益の計上)

リース期間が終了し、資産売却やレッシーによる買取が行われ、出資金以上の現金が戻ってきた際の処理です。

借方金額貸方金額
現預金110,000,000投資有価証券0 *
投資有価証券評価益(または雑収入)110,000,000

*運用期間中に損失を取り込み続け、簿価がゼロ(あるいは備忘価額)になっている前提です。戻ってきた現金がそのまま利益となり、課税対象となります。

「長期未払金」に関する注意点

レバレッジドリースに関連して「長期未払金」というキーワードが出てくる場合、以下の2つのケースが考えられますが、一般的な投資家(JOLCO出資者)にはあまり関係がありません。

  1. レッシー側の処理:リース資産をオンバランスする場合の負債勘定。
  2. 出資の分割払い:稀に、投資家が出資金を一度に払わず、分割で支払う契約の場合、未払い分を長期未払金とすることがありますが、現在の主流商品では一括払いが基本です。
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リスクとデメリット:投資前に確認すべき5つの落とし穴

金融商品に「絶対」はありません。レバレッジドリースには特有のリスクが存在します。証券会社や銀行の担当者が強調しにくいデメリットこそ、熟知しておく必要があります。

1. 中途解約が困難(流動性リスク)

原則として、リース期間中(通常7年〜10年以上)は解約ができません。出資した資金は長期間拘束されます。「急に現金が必要になったから売りたい」ということは基本的にできないため、余剰資金で行うことが鉄則です。

2. レッシーの信用リスク(デフォルトリスク)

航空会社や海運会社が経営破綻し、リース料が支払われなくなるリスクです。

  • 影響:リース料が入らなければ、銀行への返済が滞り、最悪の場合、航空機が差し押さえられます。投資家への分配金もなくなります。
  • 対策:レッシーの格付けや財務状況を厳しくチェックする必要があります。

3. 為替リスク

多くの航空機リース案件は「米ドル建て」で組成されます。

  • 出資時:円をドルに換えて出資(円安だとコスト増)。
  • 償還時:ドルで戻ってきた資金を円に戻す(円高だと受取額減少)。為替相場の変動により、想定していた利回りが大きく目減りする、あるいは元本割れする可能性があります。

4. 資産価値変動リスク(JOLの場合)

購入選択権のないJOLの場合、終了時の市場価格で資産を売却します。新型コロナウイルスの流行時など、航空機需要が蒸発したタイミングで売却時期が重なると、資産価値が暴落し、投資元本を回収できない恐れがあります。

5. 税制改正リスク

過去、2005年の税制改正などにより、レバレッジドリースの節税効果が制限された歴史があります。

今後も、「過度な節税」とみなされた場合、新たな規制が適用され、当初予定していた税務メリットが享受できなくなる可能性はゼロではありません。

他のリース手法との比較:最適な選択肢は?

自社の状況に合わせて、どのリース手法を選ぶべきか比較表で整理します。

項目ファイナンスリースオペレーティングリースレバレッジドリース (JOL/JOLCO)
主な目的設備の導入・使用設備の導入・オフバランス化投資・利益の繰り延べ
会計処理(借手)売買処理(オンバランス)賃貸借処理(オフバランス可※)賃貸借処理(オフバランス可※)
中途解約不可(フルペイアウト)可能(条件による)原則不可
資産の所有権借手に移転する場合あり貸手(リース会社)SPC(投資家持分)
対象資産コピー機、PC、車両など重機、工作機械など航空機、船舶、コンテナ
リスク陳腐化リスクは借手負担貸手が負担投資家が負担

※新リース会計基準の適用により、オペレーティングリースもオンバランス処理が求められるケースが増えています(特に上場企業やIFRS適用企業)。しかし、投資家側の「利益の繰り延べ」という目的においては、JOL/JOLCOの仕組み自体は依然として有効です。

ファイナンスリースとオペレーティングリースの違いは『【図解付】ファイナンスリースとオペレーティングリースの違いを解説!会計処理から選び方も紹介』でも詳しく解説しています。

レバレッジドリースの活用が向いている企業

ここまでの内容を踏まえ、レバレッジドリース(JOL/JOLCO)の活用が推奨されるのは以下のような企業です。

  1. 突発的に大きな利益が出た企業
    • 本業が好調で、数億円単位の利益が出ている。
    • 翌期以降の業績見通しが不透明で、税負担を平準化したい。
  2. 数年後にまとまった資金需要がある企業
    • 7〜10年後に工場の大規模修繕、本社移転、役員の退職金支払いなどが控えている。
    • 出口(償還時)の雑収入を、これらの損金(費用)で相殺する計画が立てられる。
  3. 現預金に余裕がある企業
    • 1口数千万円〜数億円の資金を数年間ロックされても、資金繰りに影響がない。
  4. 事業承継対策を検討中のオーナー企業
    • 自社株評価を引き下げる目的で活用されるケースもあります(※高度な税務判断が必要)。

よくある質問(FAQ)

Q1. 最低出資金額はいくらからですか?

案件によりますが、一般的には1口1,000万円〜5,000万円程度から設定されていることが多いです。大型の航空機案件では、最低1億円からの場合もあります。

Q2. 償還期限が来たら、必ず現金で戻ってきますか?

JOLCO(購入選択権付き)の場合、レッシーが権利を行使すれば予定通り現金で償還されます。しかし、レッシーが破綻した場合や、権利を行使しなかった場合は、資産を売却して回収するため、元本割れや償還時期の遅れが発生する可能性があります。

Q3. 中小企業でも利用できますか?

はい、利用可能です。ただし、決算書の内容(黒字であること、現預金残高など)について、アレンジャー(リース会社)による審査があります。また、金融商品取引法上の「特定投資家」への移行手続きが必要になるケースもあります。

Q4. リース会計基準の変更は影響しますか?

2027年度より強制適用が予定されている新リース会計基準は、主に「借り手(レッシー)」側の会計処理に関する変更(全リース取引のオンバランス化)です。投資家(貸し手側)としての税務メリット(減価償却費の取り込み)の仕組み自体には、現時点で直接的な変更はありませんが、レッシー側の需要動向には注視が必要です。

まとめ:財務戦略としてのレバレッジドリース

レバレッジドリースは、単なる「節税商品」ではなく、キャッシュフローと税務コストをコントロールするための高度な財務ソリューションです。

本記事の要点

  • 仕組み:投資家出資+銀行借入で大型資産を購入し、減価償却費で利益を圧縮する。
  • 主流:現在は購入選択権付きの「JOLCO」が主流で、出口の確実性が重視されている。
  • リスク:中途解約不可、為替リスク、レッシーの信用リスクを十分に理解する必要がある。
  • 出口戦略:課税の先送りに過ぎないため、償還時の利益をどう処理するか(退職金、設備投資等)の計画が必須。

成功の鍵は、信頼できるアレンジャー(リース会社・金融機関)を選定し、自社の財務状況に合った案件(航空機か船舶か、期間は適切か)を慎重に見極めることです。

また、こうした高度な財務判断を行うためには、日頃から最新の金融トレンドや他社の動向を把握しておくことが不可欠です。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

大阪大学経済学部卒業。都市銀行退職後に暗号資産関連スタートアップの創業メンバーとして業界調査や相場分析に従事。2018年、マネックスグループ入社。マネックスクリプトバンクでは業界調査レポート「中国におけるブロックチェーン動向(2020)」や「Blockchain Data Book 2020」などを執筆し、現在はweb3ニュースレターや調査レポート「MCB RESEARCH」などを統括。国内メディアへの寄稿も多数。2021年3月より現職。
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