法人口座からの海外送金は「手数料が数千円」「着金まで1週間」も珍しくありません。もっと安く早く送金する方法があれば知りたいと思いませんか?
実は、銀行以外にも便利な手段が増えており、選び方次第でコストを大幅に削減できます。
本記事では、企業の海外送金方法と仕組みを基礎から解説し、手数料比較やサービス選定のポイントを解説。例えば1,000ドル送金では、銀行と新興サービスで数千円の差が出ることもあります。
どの方法が自社に合うか迷う方も、最適解が見つかるはずです。
目次
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サービス掲載を相談する法人の海外送金とは?まず押さえておきたい基礎知識
法人の海外送金とは、企業が自社名義で行う国際送金のことです。用途は取引先への代金支払いや海外子会社への資金送金、売上の受取など多岐にわたります。仕組みは個人送金と同じですが、法人は取引額が大きく、承認プロセスが必要になる点が特徴です。
国際送金の仕組み
一般的に、銀行を通じて送金します。送金銀行から受取銀行へはSWIFTネットワークを利用し、多くの場合中継銀行を経由します。法人送金は金額が大きいため、中継銀行が増えたり追加報告が必要になる場合もあります。
日本は主要国の中でも送金コストが高いとされ、銀行送金は「安全だが高コスト・時間がかかる」と言われます。背景には為替手数料や固定手数料(1件4,000~6,500円程度)があり、総額が読みにくいのが実情です。
法人が直面する典型的な課題
- 手数料が高い:送金手数料、為替レート上乗せ、中継銀行手数料が加わり、トータルで高額に。
- 着金が遅い:数日~1週間かかり、ビジネスに支障をきたす場合も。
- 手続きが煩雑:書類提出や入力項目の多さ、承認フローにより負担が大きい。
近年はこうした課題を解決するフィンテック企業や新サービスも登場しています。次章では具体的な方法やサービスの種類を紹介します。
法人向け海外送金の主な方法と選択肢
海外送金には複数の手段があります。ここでは代表的な4つ(銀行、オンライン送金サービス、専門業者、暗号資産)を紹介します。
1.銀行による海外送金
銀行送金は最も伝統的な方法で、自社口座から相手の海外銀行口座へ直接送金します。最大の利点は信頼性と安全性の高さ。大手銀行を通す安心感があり、万一のトラブルも銀行が調査対応してくれます。さらに大口送金にも対応可能です(数千万円規模まで対応する銀行もあり)。
手続きは窓口またはインターネットバンキングで行い、初回は「海外送金利用登録」が必要な場合があります。送金時にはSWIFTコードや受取人情報などを入力し、手数料を支払って完了です。中継銀行を経由するため「途中で手数料が差し引かれる」「着金に日数がかかる」といった特徴もあります。
銀行送金は安心感がある一方、コストが高くスピードが遅いのが難点です。「確実に銀行経由でやり取りしたい」場合に向きますが、少額・頻繁な送金には不向きでしょう。
2.オンライン海外送金サービス(フィンテックの活用)
近年はWise、PayPal、Revolutといったオンライン送金サービスが普及し、インターネットで手続きが完結する手軽さから注目されています。
最大の利点は手数料の安さです。例えばWiseでは送金額の0.7%前後+数百円と、1,000円前後に収まる場合があります。さらに銀行のような上乗せはなく、リアルタイムの市場レート(ミッドマーケットレート)が適用されるため、余計なコストがかかりません。
送金スピードも魅力で、国や通貨によっては数分から数時間で着金します。銀行では数日かかることを考えると、ビジネスの効率を大きく高める手段といえるでしょう。
操作もシンプルで、スマホやPCから24時間利用できます。法人アカウントなら一括送金や受取人情報の保存機能もあり、日常業務を効率化できます。
注意点は安全性と信頼性です。新興サービスには実績不足のものもあるため、企業の信用度やセキュリティ対策(二段階認証など)を確認することが欠かせません。信頼できる大手サービスを選べば、安心して利用できるでしょう。
3.専門業者・送金代行の活用
貿易決済に強い商社系サービスや、Western Union・MoneyGramといった国際送金専業会社を利用する方法もあります。これらは世界中に拠点を持ち、銀行口座がなくても現金の受け渡しに対応できます。
法人では、新興国の取引先に送金する場合や、緊急で現金を届けたい場面で役立ちます。送金人は国内の取扱店やオンラインで手続きし、受取人は現地窓口で現金を受け取る仕組みです。手数料は国や金額によって変わり、銀行より高い場合もあります。
輸入代行会社やFX業者も送金代行を提供しています。たとえば輸入代行会社では、日本円を受け取って人民元に換え、中国の仕入先へ送金するサービスがあります。言語や手続きの壁を業者が代行してくれる安心感がある一方で、追加の手数料やマージンが発生します。
専門業者のメリットは、ニーズに特化したサービスを受けられる点にあります。高額取引や特殊通貨の送金は専門知識を持つ業者に任せたほうが迅速かつ正確に進められます。ただし業者の数は多いため、信頼性や実績をよく確認して選ぶことが欠かせません。
4.新たな選択肢: 暗号資産(仮想通貨)・ステーブルコイン送金
最後に、暗号資産(仮想通貨)やステーブルコインを使った送金も注目されています。ビットコインやUSDT(テザー)を使えば銀行を介さずブロックチェーン上で直接送金でき、中継コストがほぼ不要で手数料も小額です。24時間利用でき、数分で着金することもあります。
一方で、法人利用には課題があります。ビットコインのような通貨は価格変動が大きく、送金中に受取額が変わるリスクがあります。USDTのようなステーブルコインを使えばこのリスクは抑えられますが、日本円とステーブルコインを相互にやり取りする正規の窓口(入金・出金や換金の経路)が限られており、資金の出し入れや換金の手順が複雑になりがちです。
あわせて、社内規程の整備や会計・税務処理、AML/CFT対応、カストディ管理にも配慮が必要です。
現状では一部のIT企業や送金事業者が実験的に導入している段階で、一般企業の主要手段にはなっていません。ただし、将来的にブロックチェーン送金が普及すれば、国際送金の手数料が劇的に下がる可能性があります。今は「選択肢のひとつ」として把握しておくと良いでしょう。
以上4つが主な選択肢です。
自社の状況(送金額の大小・頻度・相手国)によって、適した方法は変わります。次章では特に皆さんが気になる手数料やコストの違いにフォーカスして比較しましょう。
海外送金にかかる手数料・コストの比較【重要】
法人であれ個人であれ、海外送金には様々な種類の手数料が発生します。その総額を抑えるには、各コストの内訳を理解することが第一歩です。ここでは手数料の種類と相場、そして具体的なコスト比較を解説します。
送金手数料(基本手数料)
送金時に必ずかかる手数料で、銀行では法人1件あたり4,000~6,500円程度と高額です(三菱UFJ銀行は約4,000円~、みずほ銀行は6,500円など)。オンラインサービスは数百円~数%と安く、PayPalは一律499円(+為替手数料)、Wiseは約0.7%で1回1,000円台になることもあります。初回無料や上限額まで無料といったキャンペーンを実施する場合もあります。
為替手数料(為替レートの上乗せ)
円をドルなどに両替する際、銀行やサービス独自の上乗せが発生します。直接請求されないため見落とされがちですが、1ドル数十銭でも1万ドル送れば数万円に相当します。銀行は仲値に数十銭を加算するレートを提示し、大口になるほど負担が増えます。フィンテック系は実勢レート(ミッドマーケットレート)を適用し、「為替手数料無料」として透明性を打ち出すケースが多いです。
中継銀行手数料(コルレス手数料)
国際送金の経路に入る中継銀行が差し引く手数料で、2,000~4,000円程度かかります。送金人が全額負担する「Pay All Fee」を選べば追加4,000円前後で受取額を確保できますが、指定しないと受取人の着金額が減ります。オンラインサービスは自社ネットワークで処理するため、この手数料が基本発生せず、送金額がそのまま届く仕組みになっています。
受取手数料(被仕向送金手数料)
受取銀行が課す手数料で、日本の銀行では法人1件1,500~2,500円程度が一般的です。楽天銀行法人口座では1件2,000円が差し引かれます。依頼時に調整できず相手に伝えにくいコストですが、一部ネット銀行では無料化キャンペーンを行うこともあります。
以上のように、海外送金には様々なコストが積み重なります。どこで送金するか決める際は、表向きの手数料だけでなく「最終的にいくら円を支払えば、相手に●●通貨で希望額が届くのか」を計算しましょう。
多くのサービスが公式サイトでシミュレーションを提供していますので、事前に確認するのがおすすめです。
法人向け主要海外送金サービスの特徴比較
次に、具体的なサービスごとの特徴を押さえておきましょう。銀行系とフィンテック系、それぞれ法人利用に適した主要サービスをいくつか紹介し、選定のヒントを提供します。
銀行系サービスの例
メガバンク(例: 三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行)
日本の三大メガバンクはいずれも法人向けに海外送金サービスを提供しています。基本的には手数料は高めですが、一度に送金できる金額が大きい、全国に支店網があり対面サポートが受けられる、といった安心感があります。
例えば三井住友銀行(SMBC)の場合、法人インターネットバンキング(Web21)経由なら1件6,000円(当日扱いの場合)で送金可能。1回あたりの送金可能額は3,000万円相当(SMBCの例)など銀行によって設定がありますが、都度相談すればそれ以上も対応してくれる場合があります。
メガバンクは為替相場提供やヘッジなど総合的なサービスもあるので、海外取引が本格化している企業にはトータルサポートを期待できます。ただし「速さ」「安さ」では後述の新興サービスに劣るため、用途に応じて使い分けるのが賢明です。
ネット銀行(例: 楽天銀行・住信SBIネット銀行・GMOあおぞら銀行)
ネット専業銀行も海外送金に力を入れています。楽天銀行は法人向けでも送金手数料1件1,000円という低廉さが魅力です(他行宛国内振込より少し高い程度)。為替レートには多少の手数料含みますが、それでも大手銀行より割安な総額で送金できます。
また、住信SBIネット銀行も法人で利用可能、手数料3,000~5,000円程度で中堅銀行並みですが、為替コストが比較的抑えめなどの特徴があります。
ネット銀行はオンラインで手続き完結しやすく、店舗に行かずとも24時間申請できる点が忙しい担当者にはメリットでしょう。
ただし上限金額が低め(例えば楽天銀行は1日あたり500万円まで等)で、大口送金には向かない場合があります。ネット銀行各社で特徴が異なるので、自社のメインバンクとして既に使っているなら、そのネット銀行の海外送金サービス詳細を確認してみるとよいでしょう。
参照元:楽天銀行、住信SBIネット銀行、GMOあおぞら銀行
ゆうちょ銀行
厳密には銀行ではありませんが、日本郵便のゆうちょ銀行も全国ネットで海外送金を提供しています。窓口送金は1件7,500円ですが、オンライン(ゆうちょダイレクト)なら3,000円に抑えられます。
上限額は窓口で500万円未満、オンラインで100万円まで。法人でも利用可能ですが、ゆうちょの場合受取は自分宛のみ(取引先への商業送金は基本的に不可)のため、会社が海外駐在員に生活費送る等の用途に限られるでしょう。
参照元:ゆうちょ銀行
地方銀行・その他
地方銀行や信託銀行も法人の外国送金に対応しています。手数料水準はメガバンクと同等かそれ以上の場合もあります。地方銀行同士で提携があり手数料割引をしているケースもあります。信託銀行系(例: SMBC信託プレスティア)は外貨に強いですが、手数料は6,000円台と高めです。
参照元:SMBC信託プレスティア
フィンテック系サービスの例
Wise【英国発】
今や法人・個人問わず代表的な海外送金サービスです。隠れコストのない透明な料金と宣伝しており、実際の為替レート+低率の手数料で送金できます。法人向けアカウントではマルチカレンシー口座(世界各国の銀行口座を持っているように現地受取用口座を開設可能)も利用でき、海外の取引先から各国口座で受け取ってまとめて円転、という使い方も可能です。
送金スピードも速く、当日中に完了するケースもあります。Wise for BusinessではAPI連携による一括送金や自動支払いにも対応しており、IT企業を中心に採用が広がっています。
デメリットとしては、1回あたりの送金上限が100万円程度と設定されていること、日本円から直接送れないマイナー通貨もあること、そしてサービス自体が外資系なので日本語サポートがやや簡素な点でしょう。
それでも総合的なコストメリットが大きく、海外送金頻度が高い中小企業にはまず検討して損のない選択肢です。
参照元:Wise(ワイズ)
PayPal【米国発】
オンライン決済大手のPayPalも個人・法人向けに国際送金を提供しています。手数料は一律499円と分かりやすいですが、受取通貨への両替時に為替手数料(レートに3-4%上乗せ)がかかります。
つまり小額送金では割安ですが、金額が大きくなると為替コスト分で割高になりがちです。また一度に送金できるのは100万円相当までと上限があります。
PayPalは世界4億人以上が利用するプラットフォームで、特にEC決済やフリーランスへの支払いなどに強みを持ちます。法人が海外の個人に少額支払いする際(報酬や謝礼など)は便利です。
ただ、相手にもPayPalアカウントを作成してもらう必要があり、ビジネス取引で銀行送金を好む相手には不向きです。スピードは即時に近く、相手のPayPal口座に送ればすぐ反映されるため、緊急小口送金には有用でしょう。
参照元:PayPal
SBIレミット【日本発】
SBIグループの提供する国際送金サービスで、クラウド型の送金プラットフォームです。個人・法人問わず利用でき、世界200以上の国・地域へ送金可能とされています。
特徴は、銀行振込だけでなく提携ATMやコンビニからも送金できる柔軟性や、受取も現金/口座好きな方を選べる点。法人での利用シーンとしては、中小企業が銀行以外の選択肢として使うケースが想定されています。
手数料は送金額に応じ460~5,980円と、額が大きいほど高くなります(約5万円以上は一律2,000円超と上がっていき、最高で5,980円)。為替手数料もかかるため、小〜中額送金向きと言えます。1回の上限は100万円までなので大口取引には適しませんが、オンラインで完結できる点は便利です。
参照元:SBIレミット
海外ラクヤス振込(RemitAid)【日本発】
RemitAidは、日本発のBtoBクロスボーダー決済プラットフォームです。なかでも中心的なサービスが「海外ラクヤス振込」です。
この仕組みを利用すると、日本企業は現地法人を設立せずに、アジアを中心とした14の国・地域で現地口座を開設できます。取引先は通常の国内振込と同じ手順で支払いができ、日本側は国際送金を介さずに着金できるため、従来の銀行送金に比べて手数料を最大80〜85%削減可能です。
従来の国際送金は、中継銀行が複数介在するため手数料や為替スプレッドが積み重なり、最終的な受取額が目減りする課題がありました。海外ラクヤス振込では、現地送金インフラを直接活用することで中継コストを排除できるため、コスト面はもちろん、送金スピードや透明性の点でも大きなメリットがあります。
主要サービスを挙げましたが、それぞれ得意分野や費用体系が異なることが分かります。自社の用途にマッチするサービスを選ぶには、手数料だけでなく以下もチェックしましょう。
- 対応通貨・国(自社の送金相手国が含まれているか)
- 1回・月間あたりの送金限度額
- 送金スピード(相手国・通貨への平均着金日数)
- 日本語サポートの有無、サポート体制(トラブル時の対応)
- 法人アカウント独自の機能(複数ユーザー権限、会計ソフト連携 等)
比較検討のポイントは、金融庁登録の送金事業者かどうか(日本の法律で資金移動業者として登録されていれば一定の信頼基準クリア)、実績は十分か、なども重要です。これだけ多くのサービスがあると迷いますが、後述するMCB FinTechカタログなどで資料を取り寄せ、詳細を比較するのも賢い方法です。
法人が海外送金を利用する際の手順と必要書類
具体的に海外送金を行う際の手続きフローと必要な準備について整理します。初めての送金でも戸惑わないよう、事前に把握しておきましょう。
事前準備と利用登録
銀行で初回送金する場合
多くの銀行では、法人が海外送金を利用するには事前の契約・登録が必要です。例えば「外国送金利用申込書」を提出し、法人の確認書類(登記簿謄本や印鑑証明など)と代表者の本人確認書類(運転免許証等)を提示します。
これはマネーロンダリング防止の観点から義務付けられています。登録が完了すると、以後はインターネットバンキングや窓口で海外送金ができるようになります。窓口を利用する場合も、初回は担当者から手順説明を受けると安心です。
オンライン送金サービスの場合
WiseやSBIレミットなど、新規にサービスを利用する際はアカウント作成と本人確認(KYC)が必須です。法人アカウントでは、社名・住所・事業内容等を登録し、必要に応じて法人番号の入力や会社書類のアップロードを行います。
加えて、担当者や代表者の本人確認(本人確認書類提出とセルフィー提出など)も求められることが多いです。これらはオンラインで完結しますが、審査に1日~数日かかることがあります。一度承認されれば、その後は都度の送金手続きがスムーズになります。
送金時に必要な情報・書類
いざ送金する段階で、以下の情報が必要です。事前に取引先などから確認しておきましょう。
- 受取人の銀行名・支店名・住所
- 送金先の銀行正式名称(英語)と支店の所在。例:「MIZUHO BANK, LTD. Shinjuku Branch, Tokyo Japan」のように記載。住所は支店所在地を英語で。
- SWIFTコード(BICコード)
- 相手銀行の国際識別コード(8~11桁)。例えば三菱UFJ銀行なら「BOTKJPJT」。欧米の銀行は支店ごとにコードがある場合もあります。相手に聞けば教えてもらえますし、多くの銀行は公式サイトにSWIFTコードを掲載しています。
- 受取人口座番号
- 相手の口座番号です。欧州ならIBANと呼ばれる国際標準の口座番号体系を使っている場合もあります(相手に確認すればIBANを教えてもらえます)。日本や米国は通常の口座番号でOK。
- 受取人名(会社名)・住所(英語表記)
- 相手法人の正式名称と住所をローマ字/英語で正確に。日本の「株式会社○○」なら「○○ CO., LTD.」など、相手国に伝わる表記にします。住所も番地・都市名・国名まで英語で記載。
ポイント: 受取銀行に登録された英文名称と完全一致しないと入金拒否される恐れがあります。相手に英文表記を確認しましょう。
- 相手法人の正式名称と住所をローマ字/英語で正確に。日本の「株式会社○○」なら「○○ CO., LTD.」など、相手国に伝わる表記にします。住所も番地・都市名・国名まで英語で記載。
- 送金目的(Reference/Purpose)
- 送金フォームには用途を記入する欄があります。例えば「Invoice 12345 Payment for goods」といった形で具体的に書きます。法人送金の場合、この情報は非常に重要で、曖昧だと受取国で止められることも。何のための資金か明確に書きましょう。日本からの送金では日本語ではなく必ず英語で記入します。
- 送金額と通貨
- 何円(もしくは何ドル等)を送り、相手にいくら届くようにするかを決めます。よくある混乱として、「相手に○○通貨でピッタリこの額を届けたい」というケースです。その場合は、銀行でOUR(手数料送金人負担)かつ「円建て○○通貨払で××通貨 ○○○○額着金希望」と指定します。オンラインサービスではシミュレーション画面で「受取額」を指定できるものもあります。
上記情報が揃ったら、実際の送金申請に移ります。ネットバンキングや送金アプリ上でフォームに沿って入力します。ミスがないか何度も確認しましょう。特に数字とアルファベットの誤りは致命的です。
よくある間違いとして、口座番号の桁抜け、SWIFTコードのタイプミス、受取人名の表記ゆれ(Co.,Ltdのコンマやピリオド漏れなど)があります。慎重にコピペや再確認して、正しい情報を送信することが肝心です。
送金の実行と流れ
入力内容に問題がなければ、送金金額+手数料の合計が表示されます。ここで為替レートも確認しておきましょう。銀行の場合は提供レート、オンラインサービスの場合はリアルタイムレートです。問題なければ確定し、送金を実行します。
銀行の場合
送金資金と手数料はあなたの会社の口座から即時引き落とされます。その後銀行が処理を行い、SWIFT電文を発信します。指定した通りの方法(手数料負担区分など)で中継銀行を経由し、受取銀行に電文と資金が届きます。あなたの側には通常「受付番号」や「為替予約番号」が発行され、控えが出ます。これを保存しておきます。
オンラインサービスの場合
クレジットカード払い対応の場合はカードから引き落とし、銀行振込指定なら指定口座に送金資金を振り込みます(あらかじめチャージする方式も)。Wiseなどではあなたの円を一旦Wise国内口座で受け取り、Wise側が現地でドルを振り出す、といった独自ネットワーク処理を行います。トラッキング機能があれば、相手に届くまでの進捗状況を画面で確認できます。
送金後は取引明細や送金控えを必ず保管しましょう。これは社内経理だけでなく、万一相手に届かない場合の問い合わせや、税務調査時の証拠ともなります。
海外からの送金を受け取る場合の手順
海外取引では、受け取り(被仕向送金)も発生します。お客様や子会社などから外貨を受け取る際のポイントも押さえておきましょう。
受取の事前準備
送金してくれる海外の相手には、こちらの銀行情報を正確に伝えます。具体的には先ほどの必要情報を逆の立場で提供します。
- あなたの会社の銀行名(英語)・支店名・住所
- あなたの銀行のSWIFTコード
- あなたの口座番号(店番号+口座番号など)
- あなたの会社名・住所(英語表記)
例えば「株式会社○○」なら、「○○ CO., LTD.」のようにその銀行に届け出ている英文名称を伝えます。住所もビル名含めローマ字化。日本ではIBAN等は不要なのでSWIFTと口座番号で足ります。
受取手続き
相手が送金すると数日以内に口座へ着金します。基本は自動処理ですが、高額送金や初回取引では銀行から「資金の用途」「送金元」などの確認が入る場合があります。契約書や請求書の提出を求められることもありますが、マネロンや制裁関連のチェックなので速やかに対応しましょう。問題なければ円建てで入金されます(外貨預金で受け取る設定も可能です)。
受取時には手数料が差し引かれるため、入金額を確認し、差額が大きければ銀行に内訳を確認すると安心です。外貨で受け取った場合は円転のタイミングで為替レートが適用され、即時円転される銀行もあれば、自分で売却を指示できる場合もあります。円高・円安の影響を受けるため、適切な管理が必要です。
また、正確な情報提供も重要です。銀行コードや住所の細部が誤っていると、資金が返金されたり誤送金につながる恐れがあります。正確な情報を送金相手に伝え、スムーズな着金を確保しましょう。
法人海外送金の注意点・リスクと対策
海外送金にはメリットも多い一方、注意すべきポイントや潜在的なリスクも存在します。最後に、トラブルを防ぎ安全・確実に送金するための留意点をまとめます。
為替レート変動リスクへの対処
送金額が大きくなればなるほど、為替相場の変動が無視できない影響を与えます。例えば1ドル=145円のとき100万ドル送金する場合と、143円のときでは、2円の差でも200万円もの円額差が出ます。送金手続きをしてから着金するまで数日の間にレートが動くと、予定と受取額が変わってしまう可能性もあります。
対策
銀行には「為替予約」サービスがあります。これは、あらかじめ指定したレートで両替する予約を入れ、送金時にその予約レートを適用してもらうものです。送金額と通貨が確定しているなら、為替予約でレート変動リスクを回避できます。
また、フィンテック系でもWiseが常にリアルタイムレートを適用しているように、送金時点で確定レートを使うサービスを選ぶのも手です。送金額自体が相場に左右される暗号資産などは扱いに注意し、必要以上のリスクを取らないようにしましょう。
送金スピードと緊急時の対応
前述した通り、銀行送金は数日~1週間、オンラインサービスなら数時間~数日と差があります。支払い期限が迫っているなど緊急のケースでは、のんびり待っていられません。
対策
急ぎの場合は、まず速いサービスを選ぶことです。例えば国内銀行間で外貨を持っているなら、国内即時で外貨送金できるシステム(円ではなくドルを国内で振込むようなケース)もあります。
また、Wiseのように即時決済ネットワークを活用しているサービスは着金も早い傾向です。
さらに、送金依頼時間にも注意。銀行は午後3時以降の指示だと翌営業日扱いになりますが、ネット系は24時間動いています。午前中早めに手続きを完了すれば、その日の海外営業時に処理が進むことも。必要書類は事前に準備し、社内の決裁も早めに仰ぐなど、段取りも重要です。
送金限度額と規制
法人だと時に非常に大きな金額を海外に動かす場合があります。しかし多くのサービスは一回あたり上限額を設けています。知らずに手続きを進めると「上限超過で送金できない」となりかねません。
対策
あらかじめ利用する銀行・サービスの上限を確認し、超える場合は分割して送金する計画を立てましょう。例えば1,000万円送るなら、Wiseで10回送るか、Wise+銀行併用する等。
また、登録内容によって上限が変わる場合(追加の審査で引き上げ可など)もあるので、事前に相談すると良いです。
さらに、法律上の報告義務についても認識しておきます。日本では1回あたり200万円相当を超える送金は日本銀行経由で統計報告が義務付けられていますし、1億円超の財務省報告などケースにより様々です。通常は銀行が代行報告しますが、送金目的を正確に申告し、必要なら税理士等に相談してコンプライアンス対応を行いましょう。
コンプライアンス・税務上の注意
関連して、税務署への報告やマネーロンダリング規制について補足します。FAQにも挙げましたが、100万円超の海外送金は金融機関から税務当局に届出されます。また、法人送金が頻繁かつ多額だと、銀行内で「疑わしい取引では?」とモニタリング対象になることもあります。これは犯罪収益移転防止のためで、正常な取引でも一定のパターンに合致すればチェックが入ります。
対策
常に正々堂々とした取引であることを説明できるようにしておくことです。具体的には、契約書・請求書・納品書など取引を証明する書類を完備し、送金目的も「Loan to subsidiary」「Payment for invoice #1234」など具体的に記録・申告します。もし銀行や税務署から照会が来ても迅速に応じましょう。
やましい所がなければ問題になりませんし、むしろ協力的な方が信頼度が上がります。逆に不審な依頼(例えば理由不明のお金を海外に送れと言われた等)には安易に応じず、社内コンプライアンス担当や専門家に相談してください。
手数料負担区分(OUR/BEN/SHA)の確認
繰り返しになりますが、誰が手数料を負担するかは取引の重要ポイントです。ビジネスでは契約で「銀行手数料は送り手持ち(OUR)」など取り決めることもあります。これを誤ると「届いた額が足りない」と信用問題になるかもしれません。
対策
送金時のフォームでOUR/BEN/SHAの選択肢があれば、契約通りに選びます。OUR(送金人負担)なら自分側で全手数料を払い、相手には予定額満額が届きます。
ただし中継銀行手数料が不明な場合、例えばWiseでは「Pay All」相当の追加料金4,200円と見積もって請求することがあります。
BEN(Beneficiary負担)は逆に相手負担、SHAは送金手数料は送り手・中継は按分となります。特に指定がなければSHAがデフォルトのことが多いです。相手との事前確認を怠らず、適切に設定しましょう。
詐欺・不正送金への警戒
海外送金は、一度送ると取り戻しが難しいです。この特性を悪用した詐欺(ビジネスメール詐欺等)も報告されています。例えば取引先を装った偽メールで「振込先口座が変わった」と案内され、本物とそっくりな偽の請求書に従って送金してしまうケースです。
対策
送金指示の確認フローを社内外に設けましょう。取引先から口座変更などの連絡が来た場合、必ず別の経路(電話等)で真偽確認するのが鉄則です。
また、社内で送金承認プロセスを2名以上にし、振込先情報に変更がないかチェックする体制を築きます。
さらに、オンラインサービスのアカウント管理にも注意。ID/パスワードの社内管理を厳重にし、不審なログイン通知には即対応を。万一送金先を間違えた場合、銀行送金なら銀行経由で照会・組戻し手続きが可能ですが時間と手数料がかかります。迅速に動けば取り戻せることもあるので、異常に気付いたらすぐ金融機関に相談してください。
記録と為替差損益の管理
最後に実務的な点ですが、海外送金の記録を正確に残すことが大切です。送金依頼書控え、オンラインサービスの明細PDFなどはすべて保存し、社内の経理処理と突合します。特に外貨建取引の場合、為替差損益の発生にも注意です。
送金時と決済時のレート差で利益や損失が出ることがあります(例えば仕入代金100ドルを計上時は110円、実際送金時は115円だった場合、差額5円×100ドル=500円の為替差損発生)。これを適切に会計処理することで、会社のお金の動きを正しく反映できます。
社内規程としても、海外送金の取り扱い(承認者、限度額、書類保存期間など)を定めておくと安心です。内部統制上も不正送金を防ぐ効果があります。
以上、長くなりましたがリスクと対策を述べました。適切な注意を払えば、海外送金は決して怖くありません。むしろ円滑なグローバルビジネスの血流として活用していきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1.法人の海外送金では送金手数料以外にどんなコストがかかりますか?
A1.代表的な追加コストは為替手数料・中継銀行手数料・受取手数料です。銀行送金では提示レートに数銭~数円/1ドルの為替手数料が上乗せされ、気づかないうちに負担が増えます。さらにSWIFT送金では中継銀行が数千円を差し引くことがあり、送金人が負担しない場合は受取額が減ります。加えて、受取銀行でも被仕向送金手数料(例:1件2,000円)が差し引かれるのが一般的です。
一方、新しい送金サービスでは中継銀行を介さないためこの手数料が発生せず、為替も実勢レートを適用する場合が多く、総コストを抑えやすくなっています。
Q2.法人の海外送金を利用する際に必要な書類や手続きは?
A2.初回利用時は利用申込と本人確認が必要です。銀行では登記簿謄本や印鑑証明など法人書類、代表者の本人確認書類を提出し、海外送金利用登録を行います。オンライン送金サービスも同様に、会社情報と代表者確認をウェブで登録します。
送金時には請求書や契約書など、送金目的を示す資料を求められることがあります。特に銀行窓口では「何の支払いか」を確認され、証憑提示を指示される場合があります。これは不正送金防止のための手続きです。
実際の送金では、口座番号やSWIFTコードなど相手先情報を正確に入力する必要があります。まとめると、(1)初回登録用の法人・本人確認書類、(2)送金ごとの取引証憑 を準備しておくとスムーズに進められます。
Q3.海外送金はどのくらい時間がかかりますか?急ぎの場合はどうすれば良いですか?
A3.銀行経由では通常3~5営業日、遅い場合は1週間ほどかかります。Wiseなどのオンライン送金サービスなら数時間~1日程度で届くケースもあり、欧米宛なら午前中の手続きで当日中に着金する例もあります。
急ぎの際は、(1) 即日着金実績のあるサービスを選ぶ、(2) 送金情報を事前に揃えて手続きを効率化する、(3) 相手に送金連絡を行い確認を早めてもらう、といった工夫が有効です。さらに銀行送金では手数料が割高でも「緊急扱い(電信扱い)」を指定できます。いずれの場合も、支払期限から逆算して余裕を持って準備することが最大の急ぎ対策になります。
Q4.法人が海外送金できる金額に上限はありますか?
A4.上限額は銀行やサービスごとに異なります。例えばWiseは1回100万円・1日最大250万円、三井住友銀行の法人インターネット送金は1日3,000万円までといった制限があります。さらに大口を送る場合は、銀行窓口で相談すれば対応できることもありますが、場合によっては複数回に分けて送る必要があります。
また、日本では外為法により1件200万円超で「支払等通知書」、1億円超で「資本取引報告」の提出義務があります。通常は金融機関が案内してくれますが、高額送金は事前に銀行と調整しておくとスムーズです。さらに受取国にも独自規制があるため、相手先に確認してから手続きすることが大切です。
Q5.海外送金をすると税務署に把握されますか?
A5.はい、把握されると考えるべきです。日本には「国外送金等調書制度」があり、金融機関は非居住者との取引や海外送金を100万円超行った場合、内容を国税庁へ報告する義務があります。そのため法人が100万円を超える送金や受取をすれば、基本的に税務当局に情報が伝わります。
この制度は租税回避やマネロン防止が目的で、正当な取引であれば問題視されません。ただし内容に不明点があれば、後日問い合わせや調査を受ける可能性があります。適切に会計処理・申告を行っていれば心配は不要です。
反対に「税務署に知られるのでは」と不安になるような不透明な送金は避け、常に透明性のある資金移動を心掛けることが会社の信用を守る近道です。
以上、法人向け海外送金について包括的に解説しました。
海外送金は最初は難しく感じるかもしれませんが、慣れればスムーズにこなせる業務です。特に近年はフィンテックの発展により、コストも手間も大幅に削減できる時代になっています。ぜひ本記事の情報を参考に、貴社に最適な海外送金の方法を見つけてください。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋 真倫


