DX推進の一環で電子契約の導入を検討し始めたものの、『立会人型』と『当事者型』の違いがよく分からず、上司への説明に困っていませんか?特に、手軽に導入できそうな『立会人型』。本当に法的な効力は十分なのか、自社の取引で使って問題ないのか、疑問や不安を感じる方もいるでしょう。
この記事は、そのようなお悩みを持つ中小企業の総務・法務担当者様に向けて書かれています。
この記事を読み終える頃には、立会人型と当事者型のメリット・デメリットを明確に理解し、どちらが自社のニーズやコスト感に合っているのかを判断できるようになります。
さらに、上司や関係部署への説明にそのまま使える比較表や論点整理も手に入り、自信を持って導入提案を進めることが可能です。
目次
【結論】立会人型と当事者型の違い早わかり比較表
詳細な解説に入る前に、まずは結論として「立会人型」と「当事者型」の主な違いを一覧で比較します。社内での説明資料としても、ぜひご活用ください。
【社内説明にそのまま使える】比較一覧表
| 比較項目 | 立会人型(事業者署名型) | 当事者型 |
|---|---|---|
| イメージ | 認印・契約印 | 実印 |
| 署名の主体 | 電子契約サービス事業者 | 契約当事者本人 |
| 本人確認方法 | メール認証、SMS認証など | 第三者認証局が発行する電子証明書 |
| 法的効力 | 十分な証拠能力あり(電子署名法に準拠) | より厳格で高い証拠能力を持つ |
| 導入の手軽さ | 非常に手軽。メールアドレスがあれば即日利用可能。 | 手間がかかる。電子証明書の事前取得が必要。 |
| コスト | 安価。月額数千円~、送信料も比較的安い。 | 高価。電子証明書の発行・更新に費用がかかる。 |
| 相手方の負担 | 少ない。相手方はサービス登録不要な場合が多い。 | 大きい。相手方にも電子証明書の取得を依頼する必要がある。 |
| おすすめの契約 | 業務委託契約、秘密保持契約(NDA)、発注書など、日常的な契約 | M&A契約、高額な取引の基本契約、不動産関連の一部契約など、極めて重要な契約 |
「立会人型」がおすすめの企業、「当事者型」がおすすめの企業
- 立会人型がおすすめの企業
- コストとスピードを重視する中小企業
- 取引先が多く、相手に負担をかけたくない企業
- まずは手軽に電子契約を始めたい企業
- 当事者型がおすすめの企業
- 法的により厳格な証拠能力を求める企業
- 官公庁や金融機関など、セキュリティ要件の厳しい相手との取引が多い企業
- 高額な取引やM&Aなど、極めて重要な契約を締結する企業
多くの企業、特に中小企業では、日常的な契約業務の大半をカバーできる「立会人型」から導入を始めるのが現実的かつ効果的な選択肢と言えるでしょう。
「立会人型」とは?
まずは、本記事の主役である「立会人型」について、その仕組みから見ていきましょう。
立会人型(契約印タイプ)の仕組み
立会人型は「事業者署名型」とも呼ばれ、契約の当事者ではなく、利用している電子契約サービスの事業者が「立会人」として電子署名を付与する仕組みです。
【立会人型の流れ(イメージ)】
- 送信者が契約書(PDFなど)を電子契約サービスにアップロードし、相手方のメールアドレスを指定して送信します。
- 受信者は、届いたメールに記載されたリンクをクリックし、契約内容を確認します。
- 受信者が内容に同意すると、その意思表示に基づき、電子契約サービス事業者が契約書に電子署名とタイムスタンプを付与します。
- これにより、「いつ」「誰が」「何に」合意したかが電子的に記録され、契約が締結されます。
本人確認は、主にメールアドレスの保有をもって行われます。この手軽さが、立会人型の最大の特徴です。
なぜ多くの企業で「立会人型」が選ばれるのか?
現在、市場に流通している電子契約サービスの多くは、この立会人型を採用しています。その理由は、特に中小企業にとって大きなメリットがあるからです。
- 導入の手軽さ:複雑な手続きは不要で、メールアドレスさえあればすぐに利用を開始できます。
- 取引先に負担をかけない:相手方は高価な電子証明書を用意したり、同じサービスに登録したりする必要がない場合がほとんどです。これにより、電子契約への移行がスムーズに進みます。
- 優れたコストパフォーマンス:当事者型に比べて、初期費用や月額料金、送信料などが安価に設定されていることが多く、コストを抑えて導入できます。
「当事者型」とは?
比較対象である「当事者型」についても理解を深めておきましょう。
当事者型(実印タイプ)の仕組み
当事者型は、契約する当事者本人が、それぞれの電子署名を付与する方式です。
【当事者型の流れ(イメージ)】
- 契約当事者(自社と相手方)は、あらかじめ第三者認証局から「電子証明書」を発行してもらいます。これは、オンライン上の身分証明書のようなものです。
- 送信者は、電子証明書を使って契約書に電子署名を行います。
- 受信者も同様に、自身の電子証明書を使って電子署名を行います。
- 双方の電子署名が揃った時点で、契約が締結されます。
マイナンバーカードに格納されている「署名用電子証明書」も、この当事者型の一種です。
立会人型と当事者型の7つの違い
両者の基本的な仕組みを理解したところで、より具体的に7つのポイントで違いを徹底比較します。
1.本人確認の厳格さ(実印 vs 契約印)
- 立会人型:メール認証やSMS認証など、サービス事業者が提供する方法で本人性を確認します。「誰でも使える認印・契約印」のイメージです。
- 当事者型:政府が認めた第三者認証局が厳格な本人確認の上で発行する「電子証明書」を使用します。まさに「印鑑証明付きの実印」に相当する高い信頼性があります。
2.法的効力(電子署名法との関連)
ここが最も気になるポイントでしょう。結論から言うと、適切に運用されている立会人型サービスでも、契約の証拠能力は十分に認められます。
電子契約の法的効力を支えるのが「電子署名法」です。特に重要なのが第3条で、「本人による電子署名がある場合、その電子文書は真正に成立したものと推定する」と定めています。これを「推定効」と呼び、紙の契約書における押印と同様の効力を電子署名に与えるものです。
立会人型は電子署名法第2条に該当しない?→いいえ、問題ありません
「立会人型はサービス事業者が署名するから、電子署名法が定める『本人による署名』ではないのでは?」という疑問が生じます。
この点について、政府(総務省・法務省・経済産業省)は「サービス提供事業者の意思が介在する余地がなく、利用者の意思のみに基づいて電子署名が行われる仕組みであれば、それは利用者本人による署名と評価できる」という見解を示しています。
現在の主要な立会人型サービスは、この要件を満たすように設計されているため、法的に有効な電子署名と認められています。
参考:法務省資料
立会人型でも証拠力が認められた裁判例
実際に、立会人型の電子契約サービスで締結された契約の有効性が裁判で認められた事例も出てきています。裁判所は、電子署名だけでなく、メールの送受信履歴やアクセスログなど、契約締結プロセス全体の記録を総合的に判断して、契約の成立を認めています。
3.導入・運用の手間
- 立会人型:圧倒的に手軽です。Webサイトから申し込み、アカウントを発行すればすぐに使えます。
- 当事者型:手間がかかります。自社だけでなく、契約相手にも認証局で電子証明書を取得してもらう必要があります。
4.コスト(初期費用・月額料金・送信料)
- 立会人型:比較的安価です。多くのサービスで、月額無料から始められるプランや、送信件数に応じたリーズナブルな料金プランが用意されています。
- 当事者型:高価になる傾向があります。電子証明書の発行に数千円、年間更新にも費用がかかるのが一般的です。
5.相手方(取引先)の負担
- 立会人型:負担はほぼありません。相手方はメールを受け取り、内容を確認してクリックするだけです。
- 当事者型:大きな負担を強いる可能性があります。相手方にも電子証明書の取得と費用負担、さらには自社と同じ電子契約サービスの利用を求める必要があります。
6.セキュリティ・内部統制
- 立会人型:メールアカウントの乗っ取りなどによる「なりすまし」のリスクはゼロではありません。そのため、多くのサービスでは二要素認証などのセキュリティ強化機能を提供しています。
- 当事者型:厳格な本人確認を経た電子証明書を使うため、なりすましリスクは極めて低く、セキュリティレベルは非常に高いと言えます。
7.利用シーン・向いている契約書
- 立会人型:幅広い契約に対応できます。
- 業務委託契約書
- 秘密保持契約書(NDA)
- 発注書・請書
- 検収書
- 雇用契約書
- 当事者型:極めて重要性が高く、厳格な本人性が求められる契約に向いています。
- M&A関連の契約書
- 高額な不動産取引や金銭消費貸借契約
- 事業用定期借地権設定契約など、法令で公正証書が求められるものは電子化できません。
電子契約システムを選ぶ際の3つのステップ
では、自社にとって最適なタイプをどう選べばよいのでしょうか。以下の3ステップで考えてみましょう。
Step1:利用したい契約書の種類を洗い出す
まずは、社内でどのような契約書を電子化したいかリストアップします。秘密保持契約や業務委託契約など、日常的に発生する契約が中心であれば、ほとんどの場合「立会人型」で十分対応可能です。
Step2:取引先のITリテラシーや導入状況を考慮する
電子契約は相手があってこそ成り立ちます。取引先にITに不慣れな企業や個人事業主が多い場合、電子証明書の取得を求める当事者型は敬遠され、かえって業務が滞る可能性があります。相手に負担をかけない立会人型の方が、スムーズに導入を進めやすいでしょう。
Step3:コストとセキュリティのバランスを判断する
月々の運用コストはどのくらい許容できるか、そして、どのレベルのセキュリティを求めるかを検討します。多くの契約では立会人型のセキュリティで十分ですが、万が一の紛争リスクが極めて高い重要な契約を扱う場合は、コストをかけてでも当事者型を検討する価値があります。
また、両方のタイプを使い分けられるハイブリッド型のサービスも存在し、契約の重要度に応じて柔軟に対応することも可能です。
【FAQ】立会人型の法的効力に関するよくある質問
当事者が抱える最大の懸念点である「法的効力」について、よくある疑問にQ&A形式でさらに詳しくお答えします。
Q1. メール認証だけで、なりすましのリスクはない?
A1. ゼロではありませんが、リスクは低減できます。
確かに、メールアカウントが第三者に不正利用されるリスクは存在します。しかし、現在の電子契約サービスでは、以下のような多角的な記録によって本人性を担保しています。
- メールアドレスの保有
- メールサーバーのIPアドレス
- 契約書を閲覧・同意した際のタイムスタンプ
- 二要素認証(SMS認証や認証アプリなど)の併用
これらの情報を組み合わせることで、単なるメール認証以上の証拠能力を確保しています。
Q2. 裁判になった場合、証拠として認められる?
A2. はい、十分な証拠能力があります。
そもそも契約は、当事者双方の「意思の合致」があれば口頭でも成立します。書面や電子データは、その合意があったことを証明するための「証拠」です。立会人型の電子契約は、前述の通り「いつ」「誰が」「どの文書に」合意したかを客観的な電子記録として残すため、裁判においても有力な証拠として認められます。
Q3. 電子署名法第3条の「推定効」がないと、なぜ大丈夫なの?
A3. 「推定効」は必須ではありません。
第3条の推定効は、いわば「証拠として強力に『推定』される」というもので、裁判での立証負担を軽減する効果があります。しかし、この推定効が働かないからといって、証拠としての価値がなくなるわけではありません。
推定効がなくても、メールの送受信履歴やアクセスログ、サービス事業者が保管する監査証跡レポートなど、他の証拠を積み重ねることで、契約の成立を十分に立証することが可能です。
結論として、信頼できる事業者の電子契約サービスを適切に利用すれば、立会人型でも法的なリスクは極めて低いと言えます。
まとめ:自社に最適な電子契約を選び、DXを一歩先へ
今回は、電子契約の「立会人型」と「当事者型」について、その違いから法的効力、選び方までを詳しく解説しました。
- 立会人型は、書面の「認印・契約印」に相当し、手軽さ・コスト・相手への配慮に優れています。中小企業の日常的な契約業務のほとんどをカバーでき、DXの第一歩として最適です。
- 当事者型は、書面の「実印」に相当し、法的により厳格な証拠能力と高い信頼性が求められる極めて重要な契約に向いています。
- どちらを選ぶべきか迷ったら、①電子化したい契約書の種類、②取引先の状況、③コストとセキュリティのバランスという3つのステップで検討することが重要です。
電子契約は、単に紙と印鑑をなくすだけのツールではありません。契約締結のスピードアップ、コスト削減、コンプライアンス強化、そして多様な働き方への対応など、企業の競争力を高めるための重要な経営基盤となります。
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