2025年10月23日、CoinbaseやGalaxy Digital、a16z、Uniswap、Circleなど10社以上の主要暗号資産企業の幹部が、米上院の民主・共和両党の議員グループと相次いで会合を行ったとする報道がありました。これは、暗号資産市場の包括的な規制枠組みを定める「市場構造法案」の上院通過に向けた協議を本格化させるものです。
このニュースの背景には、暗号資産規制の明確化に向けた米議会の動きがあります。下院はすでに2025年7月、「CLARITY法」と呼ばれる市場構造法案を可決しています。この法案は、暗号資産の法的分類(証券やコモディティなど)を明確化し、監督省庁を定めることを目指す法律で、現在は上院での審議中となっています。
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目次
最大の争点となる「DeFi規制」の枠組み
上院での議論において最大の争点となっているのが、「DeFi(分散型金融)」の規制方法です。DeFiは、ブロックチェーン上でプログラム(スマートコントラクト)によって自動的に実行される金融サービスを指します。従来の金融機関のような明確な仲介者が存在しないため、既存の規制をどう適用するかが課題となっています。
特に問題となるのが、DeFiプロトコルやその開発者が「Money Transmitter(資金移動業者)」とみなされるかどうかです。もし該当すると判断されれば、FinCEN(Financial Crimes Enforcement Network)への登録や、銀行秘密法(BSA)に基づく厳格なKYC/AML義務を負う可能性があります。業界側は、これは技術的に実行不可能であり、イノベーションを阻害すると強く反発しています。
これに対し、共和党側は「Blockchain Regulatory Certainty Act(BRCA)」と呼ばれる条項を法案に盛り込むことを主張しています。これは、ブロックチェーンやDeFiなどのオープンソースのソフトウェアを開発・公開する開発者については、Money TransmitterやBSAにおける金融機関に該当しないとする内容です。
協議の背景と両党のタイムライン
今回の会合は、2週間ほど前にリークされた民主党のDeFi規制に関する政策文書に対し、業界から強い反発が出たことを受けて開催されました。この文書では、開発者の免責を限定的なものとし、DeFiアプリケーションに対する監督や登録要件を強化する内容や、規制の具体的内容の決定権を議会ではなく米国財務省に大きく委ねる内容が含まれていたと報じられています。
民主党議員との会合では、業界の反発に対する不満も示されました。Politicoの報道によれば、民主党のRuben Gallego氏が、業界が共和党の主張に同調しすぎているとして懸念を表明したとされています。その一方で、同議員は協議継続の意向も示しています。
タイムラインについては、上院銀行委員長である共和党のTim Scott氏が11月下旬までの委員会通過を目指す意向を示しているのに対し、民主党側は期限の設定に反発し、共同での超党派による立案プロセスを求めています。
法案成立の可能性は上昇か?
今回の会合を受け、法案成立の可能性は上昇したとみる分析もあります。たとえば、今回の会合にも参加したGalaxy Digitalは、法案が2026年の中間選挙前に成立する可能性を、7月時点に示していた35%から60%へと引き上げています。その根拠として、上院民主党議員が12名も業界との会合に参加したことや、議員側のDeFiに関する技術的な理解が以前より深まっている点を挙げています。
また、両党が合意できる可能性のあるラインとして、少数の個人が1つの秘密鍵やマルチシグ(少数の秘密鍵による署名)を通じて継続的に管理・支配しているような、実質的に分散化されていないDeFiアプリケーションについては何らかのコンプライアンス要件を課す、といった点で合意できるのではないかとGalaxy Digitalは分析しています。
残る課題と「分散化」の定義
今後の交渉で最も重要となるのは、「何をもって十分に分散化されているとみなし、規制対象外とするか」という点です。また、オープンソース開発者の保護についても、共和党が推進するBRCAに近い形で合意できるかが焦点となります。
今回の協議本格化は、米国における暗号資産規制の方向性を定める上で重要な出来事になります。「分散化」の定義や開発者の法的責任の範囲について、両党が実効性のある落とし所を見つけられるかどうかは、今後のDeFi・ブロックチェーン開発が米国内で活発化するか、あるいは国外へ流出するかを左右する分岐点となりそうです。今後の動向についても注目したいところです。
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