インタビュイー:
日本オラクル株式会社 理事 NetSuite事業統括 営業統括本部長 福宮 氏
Oracle NetSuite GRCとはどのようなサービスですか?
Oracle NetSuiteは、財務会計や販売・購買・在庫管理、営業支援(SFA)、CRMまでを一つにまとめた統合型のクラウドERPです。25年以上にわたって世界中で提供してきて、現在は200か国以上、43,000社を超えるお客様にご利用いただいています。27以上の言語と190以上の通貨に対応していますので、海外拠点を含めて一つの基盤で扱える点も特徴です。その中でGRC、つまりガバナンス・リスク・コンプライアンスという領域は、経営の土台になる部分だと考えています。
具体的には、職務分掌や多要素認証、IPアドレスの制限といったアクセス管理から、誰がいつどのデータをどう変更したのかを残す監査証跡、SOC1/2やISO27001、PCI DSSといった第三者監査報告書への対応まで、内部統制に必要な仕組みを業務システムそのものの中に組み込んでいます。会計や受発注といった日々の業務データと、それを守るための統制が同じ基盤の上で動いている、という点がNetSuite GRCの一番の特徴です。
NetSuiteが生まれた背景を教えてください
もともとは、創業者のEvan Goldberg(エバン・ゴールドバーグ)が自身の経営経験の中で感じた課題が出発点になっています。会計は会計のシステム、在庫は在庫のシステム、というように業務ごとにシステムが分かれていると、データが分断されてしまって、経営者が全体を見ようとしてもなかなか正確な数字がつかめません。実際に彼自身がその苦労をしていました。
そこで、あらゆる業務を一つの基盤で一元管理して、経営者がどこからでもリアルタイムにデータを確認できるようにしたい、という発想からクラウドERPという形にたどり着きました。「全部つながっていること」を前提に作られているので、後から統制や監査の仕組みを足すのではなく、最初から一気通貫で見られる設計になっています。
会計や受発注のデータと内部統制を同じ基盤で扱える点は、現場の運用にどのような違いを生みますか?
これは単体のGRC製品と比べたときに、現場で一番効いてくる部分だと思っています。統制のためのツールを別で持っていると、業務システム側のデータをエクスポートして、突き合わせて、チェックして、という作業がどうしても発生します。ここがかなり労働集約的で、ミスも起きやすいんです。
NetSuiteの場合は、取引が発生したその瞬間のデータがそのまま統制の対象になります。ワークフローによる承認や、不正につながりかねない操作の検知も、業務の流れの中で自動的に回っていきます。あとから人手で照合する作業そのものを減らせるので、内部監査や経理の方の負担を大きく軽くできるという声をよくいただきます。
SAPなどの他製品と比較した際の強みはどこにありますか?
会計・販売・在庫・CRMなどを一つのクラウド基盤で統合管理でき、業務と経営データをリアルタイムに活用しやすい点です。AIによる業務効率化や分析支援も進んでおり、標準機能を活用しながら短期間で導入しやすいことも特徴です。SAPなどの大規模ERPと比べ、導入・運用負荷を抑えつつ、成長に合わせて段階的に拡張できる点が強みだと思います。
導入を主導されるのは、どのような部門の方が多いですか?
ご相談をいただくのは、IT部門や経営企画の方が多いです。システム全体をどう作っていくかという視点で検討されるケースです。一方で、IPOを準備しているスタートアップの場合は、CFOやCEOといった経営トップから直接お問い合わせをいただくことも珍しくありません。
上場に向けて内部統制をきちんと整えなければならない、というタイミングで、業務と統制を一体で見られる基盤を探していらっしゃる、という背景が多いように思います。
導入の主なきっかけや決め手は何ですか?
大きく三つのパターンがあります。一つ目は、古くなったオンプレミスのシステムを刷新したいというケース。二つ目は、事業が成長してきて、バラバラだったシステムや業務のやり方を標準化したいというケース。三つ目は、M&Aのあとにグループ全体のシステムを統合して、データを可視化したいというケースです。
決め手という意味では、やはり経営者の方が「今見たい数字が、今すぐ見られるかどうか」を重視されます。現場の担当者にとっての使いやすさももちろん大事なのですが、最終的な意思決定の場面では、リアルタイムに正確な数字が出てくることが何より効いてきます。そこに応えられる点が、選んでいただける一番の理由になっていると考えています。
導入後はどのような効果が出ていますか?
業種を問わず、物の動きやお金の流れを管理するビジネスであれば、統合基盤としてしっかり機能しています。たとえば、リアルタイムで財務状況を把握できるようになったお客様や、IPOの準備をスムーズに進められたお客様、海外拠点を含めたグループ全体の連結決算を効率化できたお客様など、さまざまな事例があります。
数字で見ていただける例もあります。物流業の企業様では、年間およそ1,200時間の作業工数を削減いただいています。また、共通しているのは、それまで人手と時間をかけて集計・照合していた作業が大きく減り、その分のリソースを本来やるべき分析や判断に回せるようになった、という点です。バックオフィスの作業を減らしながら、同時に統制の精度を上げられるところに価値を感じていただいています。
近年セキュリティへの関心が高まっていますが、NetSuiteの優位性について教えてください
正直なところ、ここ最近は営業の現場でもセキュリティの話題が本当に増えています。直近の数か月だけでも、同じような懸念を複数のお客様から伺っています。
背景にあるのは、クラウド移行に伴う責任分界点の問題です。オンプレミスの仕組みをそのままクラウドへ載せ替えただけでは、ランサムウェアなど外部攻撃への対策責任は、基本的に利用企業側に残ります。たとえ基盤が大手クラウドであっても、設定・運用・監視・バックアップなどの責任はユーザー側にあるためです。
そのため、企業規模を問わず、「システムインテグレーター任せで本当に十分な対策ができるのか」という不安が高まっています。実際に近隣企業が多額の身代金を要求される被害に遭ったという話もあり、経営者のサイバーリスクに対する危機意識は一段と強まっています。
その中で、NetSuiteは、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)上で提供されるクラウドERPです。Oracleは、官公庁、金融機関、大手製造業、ITサービス企業など、高い信頼性やセキュリティが求められる領域で長年利用されてきた実績があります。AI活用やサイバーリスクへの意識が高まる中、信頼性の高い基盤で業務システムを運用できる点は重要な選定基準になり得ると考えています。
AIの活用による今後の業務効率化について教えてください
NetSuiteでは、AIの活用により業務効率化がさらに進んでいくと考えています。経営者が自然言語で「この数字はどうなっている?」「なぜこうなったのか?」と問いかけるだけで、必要な情報にすぐたどり着けます。現在はMCP連携によりAIエージェントとつなぐことも可能です。データが一つの基盤に統合されているためAIを活かしやすく、将来的にはNetSuite上でAIが自律的に業務を進めることで、業務スピードは飛躍的に上がっていくはずです。
サポート体制やエコシステムについて教えてください
導入して終わり、ではなく、既存のお客様には専属の営業チームがつく体制を大事にしています。年に2回のユーザー会に加えて、青山のオフィスでは月に一度「Loft(ロフト)」という勉強会を開いていますし、オンラインのコミュニティも用意しています。お客様同士でナレッジを共有したり、ご自身で学んでいただいたりできる場をしっかり整えているところです。
日本の法制度や商習慣に強い国産SaaSベンダーとつなぐことで、各領域の強みを活かせる柔軟なエコシステムを広げています。
料金体系はどのようになっていますか?
料金は、会社の規模に応じたベースのライセンスに、ご利用になるユーザー数と、使用するデータストレージの量を組み合わせて決まる仕組みになっています。年間のライセンス料と、導入時の初期費用という形が基本です。
企業様ごとに必要な機能の範囲や規模が異なりますので、実際の金額はご状況を伺いながらご提案する形になります。スタートアップから上場企業まで幅広く対応していますので、まずは現状の課題をお聞かせいただければと思います。
今後の展望を教えてください
今後はAIへのフルフォーカスを掲げています。お客様の業務を効率化して、人がより創造的な仕事に時間を割けるようにしていくことが、私たちの目指す方向です。
内部統制や監査対応の領域も含めて、これまで手作業に頼っていた部分をどんどん自動化し、経営者がいつでも正確な数字を見ながら判断できる状態を当たり前にしていきたいと考えています。お客様と一緒に、ビジネスそのものを成長させていける存在でありたいです。
まとめ・編集部コメント
Oracle NetSuiteは、財務会計から販売・在庫管理、SFA、CRMまでを一つにまとめた統合型のクラウドERPです。今回のインタビューで特に印象的だったのは、内部統制やコンプライアンスへの対応が、別のツールとしてではなく、日々の業務データと同じ基盤の中に組み込まれている点でした。取引が発生したその瞬間のデータがそのまま統制の対象になるため、後から人手で照合する作業を減らしながら、統制の精度を高められる設計になっています。
強みは、多言語・多通貨に対応したオールインワン、そしてOracleの基盤に支えられた高いセキュリティ実績です。クラウド移行に伴う責任の所在やランサムウェアへの不安が高まる中で、堅牢な基盤の上で内部統制まで一気通貫に扱える点は、検討の大きな材料になりそうです。経営者が自然言語で数字を問い合わせられるAIの活用も、今後さらに広がっていく領域だと感じました。
オンプレミスからの刷新、成長に伴うシステムの標準化、M&A後のグループ統合、そしてIPOに向けた内部統制の整備──こうした局面にある成長企業にとって、業務と統制を一体で見られるNetSuite GRCは、有力な選択肢となるサービスです。ガバナンスやリスク管理の強化を検討されている企業は、一度相談してみることをおすすめします。