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建設業向けERPおすすめ31選を比較|工事原価・JV管理・建設業会計で選ぶポイントを解説

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工事ごとの実行予算と実績原価が現場のExcelと経理の会計ソフトに分かれていて、赤字工事に気づくのが完成後になっていませんか。手持ち工事が増えるほど工事台帳の転記と集計に時間が取られ、月次の締めも決算も後ろ倒しになります。

令和6年(2024年)4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、事務作業そのものを減らす必要にも迫られました。こうした事情が重なり、基幹システムの導入・刷新を検討する建設会社が増えています。

ただし、建設業で使うERPには「建設業向け」を掲げる専用パッケージと、プロジェクト単位の原価管理を持つ汎用ERPを建設業の業務に合わせて構成する方法の両方があります。自社の規模と業態にはどちらが向いていて、何を基準に絞り込めばよいのでしょうか。

本記事では、建設業向けERP31サービスをタイプ別に比較します。工事原価管理・JV(共同企業体)管理・建設業会計という建設業固有の機能に加えて、公式に公開されている初期費用・月額の実額と、稼働までに社内で決めておくべきことまで整理しました。自社に合う基幹システムを絞り込むための判断材料としてご活用ください。

また、貴社の状況に合わせて最適なサービスを最短で見つけられるよう、「30秒で終わる選定診断ツールをご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。

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本記事で紹介する31サービスに共通する条件

本記事では、次の3つをすべて満たす31サービスを取り上げます。

  • 工事(プロジェクト)単位で実行予算を組み、実績原価と対比できること。本体機能で備える製品のほか、提供元が公式に示す連携製品との組み合わせで実現する構成も含みます(実行予算の名称・粒度まで公式に確認できない製品は、原価と売上の対比で代替できるものを含め、比較表で個別に注記しています)
  • その数字が決算実務につながること。会計機能を自社で持つ製品のほか、提供元が公式に示している会計システムとの連携や、外部の会計基盤へ原価・仕訳データを渡す運用を前提に設計されている製品も含みます
  • 日本の建設業向けの機能・対象業種・導入実績のいずれかを、提供元の公式情報で確認できること

写真・図面・工程の共有を主目的とする施工管理アプリや、積算・見積だけを担うソフトは、工事の進捗は見えても原価が集まらないため、ここで扱う基幹システムとは役割が異なります。一方、施工管理から出発しながら実行予算と原価の管理まで機能を広げた製品は、上の条件を満たします。

ここでの条件は建設業という業種で絞り込んだものです。工事単位の原価管理を必須としない場合や、建設以外の事業も含めて全社の基幹システムを選び直したい場合は、業種を限定しないERP全体の比較記事をご参照ください。提供形態・対象規模・費用の考え方を業種横断で整理しています。

建設業向けERP(基幹システム)とは?

建設業向けERPは、受注から実行予算の作成、原価の集計、出来高請求、完成・入金までを工事単位でつなぎ、その数字をそのまま会計に流し込む基幹システムです。工事台帳を軸に据えている点が、部門・製品単位で損益を見る一般的なERPと分かれる点です。

建設業では、1件の工事が数か月から数年にわたり、原価が材料費・労務費・外注費・経費に分かれて発生します。この原価を工事ごとに積み上げられないと、個々の工事が黒字なのか赤字なのかが完成するまで判明しません。工事単位の採算をリアルタイムで見えるようにすることが、建設業向けERPの中心的な役割です。

建設業向けERPが対象とする業務の範囲

建設業向けERPが扱う業務は、工事の流れに沿って次のように並びます。

建設業向けERPが対象とする業務の範囲を示した図。受注・工事登録、実行予算の作成、発注・原価の集計、出来高請求・入金、完成・決算処理の5ステップが工事の流れに沿って並び、1〜4を担って会計は外部の会計ソフトに連携する製品と、5の決算処理と財務会計まで自社で完結する製品があることを補足している。
  1. 受注・工事登録:見積や積算の結果を工事台帳に取り込み、工事番号・工期・請負金額を確定させる
  2. 実行予算の作成:見積内訳を工種別・要素別に組み替え、原価の目標値を置く
  3. 発注・原価の集計:協力会社への注文、材料の仕入、労務費の配賦を工事に紐づけて積み上げる
  4. 出来高請求・入金:出来高に応じて請求し、入金と工事の進捗を突き合わせる
  5. 完成・決算処理:未成工事支出金を完成工事原価へ振り替え、完成工事高を計上する

製品によって、この流れのどこまでを自社機能でカバーするかが異なります。1〜4を担って会計は外部の会計ソフトに連携する製品もあれば、5の決算処理と財務会計まで自社で完結する製品もあります。自社にすでに会計ソフトがある場合は、この線引きが導入範囲を決める最初の分岐点になります。

一般的なERPとの違い(建設業向けが標準で持つもの)

一般的なERPも、プロジェクト原価管理の仕組みを備えていれば工事単位の損益を追えます。それでも「建設業向け」を掲げる製品が存在するのは、次の3点が標準機能として組み込まれているかどうかに差があるためです。

  • 建設業会計の勘定科目:完成工事高・完成工事原価・未成工事支出金・未成工事受入金といった建設業固有の科目と、それに沿った決算書類の出力
  • 実行予算と原価の対比:工種別・要素別に予算を組み、発注段階から予算超過を検知する仕組み
  • JV(共同企業体)管理:複数社で1つの工事を施工する際の、出資比率に応じた会計処理

汎用ERPでもこれらを実装することは可能ですが、その場合はアドオン開発やパートナーのテンプレート適用が前提になり、費用と保守負担がその分ふくらみます。逆にいえば、JVを組まず建設業会計の様式にこだわる必要のない事業構成であれば、汎用ERPで足りる余地があります。この判断を後回しにしたまま特化型だけを見比べると、使わない機能に費用を払うことになりかねません。

建設業の「基幹システム」とERPは何が違うのか

建設業界では、ERPと基幹システムがほぼ同じ意味で使われています。製品名でも「建設業向けERP」「建設業基幹システム」「工事管理システム」が混在しており、呼び方の違いが機能の違いを表しているとは限りません。

実務上の違いとして意味があるのは、呼称ではなくカバー範囲です。工事管理と原価管理に絞った製品なのか、会計まで含むのか、さらに人事給与・購買・ワークフローまで一本化するのか。製品名から判断せず、後述する4つのタイプのどこに位置するかで見比べるほうが確実です。

施工管理システムとの役割分担と連携

すでに現場へ施工管理アプリを導入している場合、ERPと役割が重複しないかが気になるところです。両者の守備範囲は次のように分かれます。

施工管理システムと建設業向けERPの役割分担を示した図。施工管理システムは現場の写真・図面・工程・検査記録・職人の稼働を扱い、建設業向けERPは実行予算・発注・原価・請求・入金・決算を扱う。両者の境界にある発注と出来高は施工管理側で発生しながら原価と請求に直結するため、入力の起点を決めないと二重入力になることを示している。
  • 施工管理システム:現場の写真・図面・工程・検査記録・職人の稼働など、施工そのものを進めるための情報を扱う
  • 建設業向けERP:実行予算・発注・原価・請求・入金・決算など、工事をお金の面から管理する情報を扱う

境界にあるのが発注と出来高です。現場で決めた協力会社への発注や出来高の査定は、施工管理側で発生しながら原価と請求に直結します。どちらで入力してどちらへ流すかを決めておかないと、同じ数字を二度入力することになり、現場の負担が増えて定着しません。

近年は、施工管理を出発点に実行予算・原価・粗利の管理まで機能を広げた製品も登場しています。現場側のツールを入れ替えたくない場合は、ERP側が既存の施工管理システムとデータ連携できるかを確認し、連携できないなら入力の起点をどちらかに寄せる設計が必要です。

建設業でERPの導入が検討されている背景

導入検討が広がっている直接の要因のひとつが、労働時間規制への対応です。厚生労働省は、建設業への時間外労働の上限規制について次のように示しています。

令和6年4月から、建設業にも、時間外労働の上限規制の適用が開始されました。

時間外労働は原則として、月45時間、年360時間(限度時間)までとされています。

出典:建設業にも時間外労働の上限規制が適用されています|厚生労働省

働ける時間に上限がある以上、現場の施工時間を削らずに総労働時間を抑えるには、間接業務を減らすほかありません。工事台帳への転記、原価の集計、請求書の作成といった作業が手作業のまま残っていると、規制対応と工期の両立が難しくなります。

もうひとつの背景が、業務データの分散です。実行予算はExcel、原価は会計ソフト、発注書は紙、というように保管場所が分かれていると、工事ごとの採算を知るために各所から数字を集める作業が発生します。工事件数が増えるほどこの集計が追いつかなくなり、判断に使える時点では手を打てる時期を過ぎている、という状態になりがちです。

建設業向けERPの主な機能

ここからは、建設業向けERPが備える主な機能を6つの領域に分けて解説します。機能名を並べるだけでは自社に必要かどうかを判断できないため、それぞれ「その機能がないと実務で何が起きるか」まで踏み込みます。

工事原価管理・実行予算管理

見積の内訳を工種別・要素別(材料費・労務費・外注費・経費)に組み替えて実行予算を作り、発注・仕入・労務の実績をその予算に突き合わせる機能です。多くの製品では、注文書を起こした時点で予算残に反映され、発注の段階で超過が見えます。

この機能がないと、原価が判明するのは請求書が回ってきた後になります。実際に支払う金額が確定してから予算超過に気づくため、設計変更の交渉や工法の見直しといった手を打つ機会を逃します。工事別の採算を早く知るという目的からすると、ここが中核の機能です。

工事管理(受注・工事台帳・出来高・請求)

工事番号を軸に、受注情報・工期・請負金額・変更契約・出来高・請求・入金を1つの台帳へ集約する機能です。出来高請求では、査定した出来高に応じて請求額を計算し、入金予定と実績を管理します。

台帳が分散していると、追加変更の請負金額が反映されないまま古い契約金額で採算を見てしまう、といったずれが生じます。工期が年度をまたぐ工事や、変更契約が頻繁に発生する工事が多い会社ほど、影響が大きくなる領域です。

建設業会計(完成工事高・未成工事支出金などへの対応)

建設業では、完成していない工事に投じた原価を未成工事支出金として資産に計上し、完成時に完成工事原価へ振り替えます。前受金は未成工事受入金として処理します。これらの科目への対応と、完成工事原価報告書をはじめとする建設業固有の決算書類の出力を担うのがこの領域です。

科目対応がない製品を使うと、決算のたびに未成・完成の振替を手作業で調整することになります。経営事項審査(経審)を受ける会社では、申請に用いる財務諸表の作成負担にも直結します。詳しくは建設業会計と収益認識基準への対応で扱います。

JV(共同企業体)管理

公共工事や大規模工事を複数社で施工する場合、JVとしての収支と自社持分の収支を並行して管理する必要があります。スポンサー(幹事会社)として企業体全体の会計を担うのか、サブ(構成員)として出資金のやり取りを管理するのかで、必要な処理が変わります。

汎用ERPとの差が最も出るのがこの領域です。出資比率に応じた原価・収益の按分、企業体の独立会計、構成員への配分といった処理は、標準機能として持つ製品が限られます。JV案件を受注する会社では、対応の有無と、スポンサー・サブのどちらの立場に対応するのかを個別に確認する必要があります。逆に、JVを組まない元請・下請であれば、この機能の有無で製品を絞る必要はありません。

購買・発注/下請・協力会社管理

協力会社への注文書発行、出来高査定、請求突合、支払管理までを扱う機能です。発注データがそのまま原価に計上されるため、実行予算との対比の精度はこの領域の作り込みに左右されます。

下請取引では、支払サイトや相殺(材料支給・立替金)の処理が煩雑になりがちです。協力会社の数が多い会社では、支払明細の自動作成やインボイス制度への対応まで含めて確認しておくと、経理の手戻りを減らせます。

発注まわりの書類を電子化する場合は、印紙税の扱いもあわせて確認しておくと判断材料が揃います。注文請書や変更契約書は請負に関する契約書として印紙税の対象になりますが、電子データだけで取り交わした場合は課税文書の作成に当たらないとされています。契約金額ごとの税額や軽減措置、電子化したときの扱いは次の記事で整理しています。

人事・給与・ワークフロー

全社統合まで範囲を広げる場合に加わる領域です。給与計算と労務費の工事への配賦が連動していると、自社施工の人件費を工事原価へ自動で振り分けられます。稟議・承認のワークフローを載せれば、発注や支払の決裁記録が電子的に残ります。

一方で、給与システムをすでに運用している会社にとっては、置き換えの必要性が低い領域でもあります。導入範囲を広げるほど費用と移行負担が増えるため、既存資産を残す選択肢とあわせて検討する価値があります。

建設業向けERPを導入するメリット

ここからは、導入によって何が変わるのかを、投資判断の材料になる形で整理します。

最も大きいのは、工事別の採算を工事の途中で把握できるようになることです。実行予算と実績原価が同じ台帳の上で対比されるため、予算超過が発生した工事をその時点で特定できます。赤字工事の発見が完成後から施工中に移ることで、追加交渉・工法変更・要員配置の見直しといった打ち手を検討する時間が生まれます。

次に、決算・月次の締めが早まることが挙げられます。未成工事支出金から完成工事原価への振替や共通費の配賦が自動化されると、決算のたびに発生していた集計と検算の作業が減ります。

実際に、決算処理にかかる時間が約50%短縮された事例(大日本土木)や、決算準備が7日から4日に短縮された事例(日曹エンジニアリング)が提供元から公表されています。社内で投資対効果を説明する際は、こうした同業他社の公表値が根拠になります。

3つ目が、二重入力の解消です。見積から実行予算、発注から原価、原価から会計へとデータが引き継がれるため、同じ数字を部署ごとに入力し直す作業がなくなります。転記が減れば入力ミスの混入も減り、集計結果を確認する手間まで含めて負担が軽くなります。

4つ目として、内部統制と監査対応の材料が残ることがあります。発注・支払の承認履歴、実行予算の改訂履歴、原価の計上根拠がシステムに蓄積されるため、経営事項審査や金融機関への説明に使える形で数字の裏づけを示せます。属人的な管理から抜け出したい会社にとっては、この点が導入判断を通す論拠になります。

ただし、これらは導入すれば自動的に得られるものではありません。現場が発注や出来高を入力しなければ原価は集まらず、採算はリアルタイムになりません。効果の大きさは、後述の導入で失敗しないための進め方で扱う定着の設計に左右されます。

建設業向けERPの4つのタイプ

建設業向けERPは、対象とする企業規模と、カバーする業務範囲によって4つのタイプに分かれます。まず自社がどのタイプを検討すべきかを見極めると、比較する製品を大きく絞り込めます。

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特徴向いている会社公式に示されている対象規模の例詳細
中堅・大手の全社統合工事管理・会計に加えて人事給与・購買・ワークフローまで一本化する。オンプレミスとクラウドの選択肢を持つ製品が多い全社の基幹業務をまとめて刷新したい中堅〜大手。JV案件を受注する会社売上高50億〜1,000億円(PROACTIVE)/完工高20〜100億円中心。大手〜中堅ゼネコンを対象に挙げる製品が中心比較表を見る
工事管理・原価管理に特化工事原価と会計の領域から段階的に導入できる。既存の人事給与システムを残したまま入れられる会計ソフトや給与システムは残し、工事原価の管理から改善したい会社完工高20〜100億円中心(e2-movE)。中小〜中堅を主対象とする会計パッケージも含む比較表を見る
中小・工務店向け月額制のクラウド提供が中心。少人数で運用できる範囲に機能を絞っている少人数で経理と工事管理を兼務している工務店・リフォーム会社・専門工事会社1人〜50人以上の建築業者(アイピア)など、従業員数で対象を示す製品が多い比較表を見る
汎用ERPを構成して使う業種特化パッケージではなく、プロジェクト原価管理を持つ汎用ERPを建設業の業務に合わせて構成する海外拠点や建設以外の事業を持ち、全社で同じ基盤に揃えたい会社対象規模を建設業向けに限定して示している製品はない。ユーザー数課金のため人数で費用が決まる比較表を見る

※上記は各タイプにおける一般的な機能の傾向です。個別のサービスにおける実際の機能搭載の有無や提供形態(標準・オプション等)については各社情報をご確認ください。

1. 中堅・大手の全社統合に対応する建設業向けERP

工事管理・工事原価管理・建設業会計に加えて、人事給与・購買・ワークフローまでを1つの基盤に載せるタイプです。JV管理を標準機能として持つ製品が多く、公共工事や大規模工事を手がける会社の要件を満たします。

提供形態はオンプレミス、プライベートクラウド、SaaSと幅があり、自社の要件に合わせて選べる製品が中心です。導入規模が大きいぶん費用は個別見積となることが多く、公式サイトで金額を公開している製品はほとんどありません。検討期間には社内決裁の時間も見込む必要があります。

2. 工事管理・原価管理に絞って導入できる建設業向けERP

工事原価と建設業会計の領域に範囲を絞り、そこから段階的に広げられるタイプです。人事給与や購買を既存システムのまま残せるため、全社刷新に踏み切らずに工事の採算管理だけを改善したい会社に向きます。

このタイプには、会計機能を自社で持ち工事原価管理まで備えた建設業特化の会計パッケージと、工事原価管理に専念して会計は外部連携に委ねる製品の両方が含まれます。前者は決算まで1つの製品で完結し、後者は既存の会計基盤を活かせます。どちらを選ぶかは、いま使っている会計ソフトを残したいかどうかで分かれます。

3. 中小建設会社・工務店向けの低コストなERP

月額制のクラウド提供を中心に、少人数の会社でも運用できる範囲に機能を絞ったタイプです。顧客管理・見積・実行予算・発注・請求・工事台帳を一通り備え、経理と工事管理を兼務する担当者が1人でも回せる操作性を重視しています。

公式サイトで料金を実額公開している製品は、このタイプのほか、工事管理・原価管理に絞るタイプと汎用ERPを構成するタイプにもあります。このタイプでは9製品のうち3製品が実額を公開しており、月額1万円前後から始められる製品もあるため、予算の見通しを立てやすい候補が見つかります。

一方で、会計機能は自社で持たず外部の会計ソフトへ連携する構成が主流で、JV管理に対応する製品も限られます。住宅・リフォームなど対象業態を明確に定めている製品も多いため、自社の工事内容と合うかの確認が欠かせません。

4. 汎用ERPを建設業向けに構成して使う選択肢

業種特化パッケージではなく、プロジェクト単位の原価管理を持つ汎用ERPを建設業の業務に合わせて構成する方法です。建設以外の事業や海外拠点を持つ会社では、業種特化パッケージより有力な候補になることがあります。

この選択肢が向くのは、建設以外の事業や海外拠点を持ち、全社で同じ基盤に揃えたい会社です。プロジェクト予算と実績の対比、進捗に応じた収益計上といった機能は汎用ERP側にも備わっており、工事原価管理の骨格はそのまま使えます。

注意点は、建設業固有の部分をどう埋めるかです。建設業会計の科目・様式やJV管理は、標準機能ではなくパートナーの業種テンプレートやオプション製品、あるいは別ベンダーの工事原価管理システムとの連携で補う構成になります。どこまでが標準で、どこからが追加実装なのかを提案の段階で明確にしておかないと、費用と保守範囲の見積もりが崩れます。

しかし、自社がどのタイプに適しているか、といった判断が難しいケースも存在します。そのような場合でも貴社の状況に合わせて最適なサービスを最短で見つけられるように、「30秒で終わる選定診断ツール」を以下にご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。

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建設業向けERPの選び方

ここからは、製品を絞り込むときに確認すべき観点を解説します。いずれもベンダーの説明を自社の実務に当てはめて評価するための基準です。

自社の業態・工事形態(元請/下請、建築/土木/設備、リフォーム)に合うか

ひとくちに建設業といっても、必要な機能は業態によって変わります。元請として複数の協力会社を束ねる会社では発注・出来高査定の作りが効き、下請中心の会社では受注側の出来高請求と入金管理が中心になります。土木では工種別の原価管理と公共工事の書類、設備工事では機器の仕入と据付の原価、住宅・リフォームでは1棟あたりの粗利管理と施主対応が主題になります。

製品の公式サイトには、対象業種や導入企業の業態が示されていることがほとんどです。自社と同じ業態の導入実績があるかを確認し、無い場合は要件がどこまで標準機能で満たせるのかを提案段階で詰めておくと、稼働後の追加開発を避けられます。

工事原価管理・JV管理が標準機能か、カスタマイズ前提か

「対応可能」という説明には、標準機能として搭載されている場合と、オプション追加やカスタマイズで実現する場合の両方が含まれます。この違いは初期費用だけでなく、バージョンアップのたびに発生する保守作業の量にも影響します。

確認したいのは次の3点です。第1に、その機能が標準・オプション・個別開発のどれに当たるか。第2に、オプションや個別開発の場合の費用と、標準機能のバージョンアップ時に追随して改修が必要になるか。第3に、JV管理であればスポンサー(幹事会社)とサブ(構成員)のどちらの立場に対応するか。JVは対応範囲が製品によって大きく異なるため、自社が担う立場を伝えたうえで確認するのが確実です。

クラウド型かオンプレミス型か

クラウド型は初期費用を抑えやすく、サーバーの運用と法改正への対応をベンダー側が担います。現場や出張先からの利用も前提に設計されているため、拠点が分散している会社では利点が大きくなります。

オンプレミス型は、自社の業務に合わせた作り込みの自由度が高く、社内ネットワーク内で完結させたい要件にも応えられます。反面、サーバーの調達・更新とセキュリティ運用を自社で担う必要があります。

判断の分かれ目は、業務をシステムに合わせられるかどうかです。既存の業務手順を変えたくない要件が多いほどオンプレミス型やカスタマイズ前提の構成に傾き、標準機能に業務を合わせられるならクラウド型のほうが総費用と保守負担を抑えられます。中堅・大手向けの製品では、同じ製品がオンプレミスとクラウドの両方で提供されていることも多いため、製品選定と提供形態の選定は分けて考えられます。

もうひとつ、クラウドへ移した後にセキュリティの責任がどこまで自社に残るかという論点があります。クラウドERPを提供するベンダーからは、検討中の企業から寄せられる懸念について次のような指摘が出ています。

福宮氏
日本オラクル株式会社 理事 NetSuite事業統括 営業統括本部長
福宮氏
独自インタビューより

正直なところ、ここ最近は営業の現場でもセキュリティの話題が本当に増えています。背景にあるのは、クラウド移行に伴う責任分界点の問題です。オンプレミスの仕組みをそのままクラウドへ載せ替えただけでは、ランサムウェアなど外部攻撃への対策責任は、基本的に利用企業側に残ります。たとえ基盤が大手クラウドであっても、設定・運用・監視・バックアップなどの責任はユーザー側にあるためです。そのため、企業規模を問わず、「システムインテグレーター任せで本当に十分な対策ができるのか」という不安が高まっています。

建設業では、この責任分界点が現場側にも及びます。工事現場のタブレットやスマートフォンから原価・発注のデータに触れる運用にする場合や、協力会社に発注画面の一部を開放する場合は、社外の端末・社外の担当者からのアクセスをどう制御するかを自社で設計することになります。提供形態を決める際は、拠点や協力会社まで含めた利用範囲を先に洗い出しておくと、必要な権限設計の重さが見積もれます。

既存システムとの連携範囲

会計ソフト・給与システム・施工管理アプリのうち、どれを残してどれを置き換えるのかによって、必要な連携が決まります。とくに会計は、ERP側が自社で会計機能を持つのか、既存の会計ソフトへ仕訳を渡すのかで構成が変わります。

連携の可否だけでなく、方式まで確認しておくと稼働後の運用が読めます。API連携なのか、CSVファイルの受け渡しなのか。CSVの場合は誰がいつ出力して取り込むのか。連携先の製品名が公式に明示されているか、個別対応になるのか。これらが曖昧なまま契約すると、運用開始後に手作業の受け渡しが残ることになります。

いまの会計ソフトを残すか、この機会に会計側も入れ替えるかで、比較する製品の組み合わせは変わります。クラウド会計ソフトのなかには、未成工事支出金などの建設業会計の科目や工事別原価管理に標準対応した業種特化のエディションもあり、工事管理に絞ったERPと組み合わせる構成も選べます。会計側の選択肢を先に把握しておきたい場合は、次の記事で規模・タイプ別に整理しています。

建設業の実務に精通したサポート体制があるか

建設業向けERPの導入では、製品の操作方法よりも「自社の実行予算の組み方をこの製品でどう表現するか」といった業務側の相談が多くなります。工種の体系、共通費の配賦ルール、JVの処理方針は会社ごとに異なるため、建設業の会計実務を理解した担当者が付くかどうかで導入の進み方が変わります。

確認しておきたいのは、導入支援を担当するのがベンダー本体か販売パートナーか、建設業の導入経験がどの程度あるか、稼働後の問い合わせ窓口と対応時間、そして法改正や会計基準の変更に伴う製品改訂がどう提供されるかです。とくに自社に情報システム部門がない場合は、この体制が実質的な運用能力を左右します。

建設業向けERPの費用相場と導入期間の目安

ここからは、費用と期間の見通しを整理します。建設業向けERPは料金を公開していない製品が多く、比較できるのは公開されている実額に限られます。

公式に公開されている初期費用・月額の実額

本記事の31製品のうち、公式サイトで初期費用または月額を実額で公開しているのは8製品です。残る24製品は個別見積で、公式に金額の記載がありません。まず公開されている実額をそのまま並べます。

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サービス名勘定奉行クラウド 建設業編PCA建設業会計WorksproアイピアAnymore施工管理コンクルーAIクラウドERP ZACDynamics 365 Business Central
タイプ工事管理・原価管理に絞る型工事管理・原価管理に絞る型工事管理・原価管理に絞る型中小・工務店向け中小・工務店向け中小・工務店向け汎用ERPを構成して使う型汎用ERPを構成して使う型
初期費用50,000円(税抜)0円10ユーザーライセンス 3,000,000円〜(税別)120,000円(税抜、ライトプラン)0円(税区分は公式に明示なし)公開情報なし100,000円(初期設定費用)+導入支援費用(0円〜個別見積)公開情報なし(導入費・パートナー実装費は別途)
月額・ライセンス費用27,500円〜40,500円(税抜、プランにより異なる)サブスクリプション版 8,500円〜/クラウド版 19,200円〜(いずれも税抜)公開情報なし(買い切りライセンス型)10,000円〜30,000円(税抜、5ユーザーまで。1名追加ごとに月額2,000円)15,000円〜(税区分は公式に明示なし)9,900円〜(税込10,890円、1名利用。利用人数に応じて変動)月額保守 60,000円〜+ライセンス費用(単価は非公開。税区分は公式に明示なし)1ユーザーあたり 11,994円〜(年払い換算。税区分は公式に明示なし)
補足会計本体に工事原価管理を備える建設業特化の会計パッケージ収益の認識基準を複数方式から選択できる財務会計は連携先の会計システムが担う。会計を外部に委ねる構成で実額を公開しているのは本製品のみ顧客・見積・原価・発注・請求・工事台帳を一元管理施工管理起点で実行予算・原価の管理まで広げた構成14日間の無料期間あり建設コンサルタント業・設備工事業が公式の対象業種建設業向けの科目・様式はパートナーのローカライズ前提

※2026年8月時点で各社公式サイトに掲載されている金額です。製品名との対応はタイプ別比較表をご確認ください。

中堅・大手の全社統合に対応するタイプは8製品すべてが個別見積で、公式に実額を掲示している製品がありません。この規模帯を検討する場合は、複数社から見積を取って比べる前提でスケジュールを組むことになります。

上記をタイプ別のレンジに均すと、次のようになります。

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中小建設会社・工務店向け工事管理・原価管理に絞るタイプのうち会計まで持つ製品汎用ERPを建設業向けに構成するタイプのクラウド版工事管理・原価管理に絞るタイプのうち会計を外部に委ねる製品中堅・大手の全社統合に対応するタイプ
初期費用0円〜120,000円(税抜、下位プラン基準)0円〜50,000円(税抜)100,000円〜(個別見積の製品もあり)3,000,000円〜(10ユーザーライセンス、税別)公開情報なし(個別見積)
月額費用9,900円〜30,000円(利用人数・プランにより変動。税区分は製品により異なる)8,500円〜40,500円(税抜。プランにより幅がある)1ユーザーあたり11,994円〜、または月額保守60,000円〜公開情報なし公開情報なし(個別見積)
備考顧客・見積・実行予算・原価・請求を一通り備える範囲。会計は外部連携が主流会計本体に工事原価管理を備える。サブスクリプション版とクラウド版で価格帯が分かれる建設業固有の機能はパートナー実装やオプションで補う前提会計は既存の会計システムと連携する構成。この構成で実額を公開しているのは1製品のみで、相場ではなくその1製品の公開値モジュール構成・ユーザー数・提供形態により見積。公式に料金を掲示している製品はほぼない

※2026年8月時点で各社公式サイトに掲載されている料金です。製品ごとの内訳は比較表およびサービス個別紹介をご確認ください。

この分布から読み取れるのは、料金の公開状況が製品の対象規模とほぼ対応していることです。少人数向けで機能範囲が定まっている製品ほど定価を出しやすく、全社統合を担う製品ほど構成が会社ごとに変わるため個別見積になります。

費用の内訳(ライセンス/カスタマイズ/データ移行/保守)

提示される金額を比べる際は、内訳が揃っているかの確認が欠かせません。建設業向けERPの費用は、おおむね次の4つで構成されます。

  • ライセンス費用:利用するモジュールとユーザー数で決まる部分。クラウド型では月額、オンプレミス型では買い切りが中心
  • 導入・カスタマイズ費用:初期設定、帳票の調整、自社要件に合わせた開発。見積の差が最も出る部分
  • データ移行費用:既存の工事台帳・取引先マスタ・会計残高の移行。過去何年分を移すかで金額が変わる
  • 保守・サポート費用:年額または月額。法改正対応やバージョンアップの提供範囲がここに含まれる

比較でつまずきやすいのは、クラウド型の月額に何が含まれるかです。サーバー利用料と保守が月額に含まれる製品もあれば、ライセンスとは別に保守費用が発生する製品もあります。オンプレミス型では、初期費用が安く見えても年間保守が別途かかるため、5年程度の総額に引き直すと順位が入れ替わることがあります。

稼働までに社内で必要になる作業と、期間を左右する要素

導入期間は範囲と規模で大きく変わり、本記事の31製品では公式に標準期間を示している製品がありませんでした。手がかりになるのは公表されている稼働実績です。

公表されているのは稼働時期のみで、着手から稼働までの期間は示されていません(総合建設会社の全社導入で2024年11月本稼働、汎用ERPの導入で2020年6月本稼働)。期間の目安はベンダーに個別に確認する前提で、次に挙げる社内準備の量から逆算するのが実務的です。

期間を左右するのは製品よりも社内の準備です。稼働までに必要になるのは、工種体系と原価要素の整理、共通費の配賦ルールの決定、取引先マスタの名寄せ、過去工事データの移行範囲の確定、そして現場への操作教育です。とくに工種体系と配賦ルールは会社ごとの決めごとで、ベンダーが代行できません。この整理に着手する時期が遅れると、契約後もプロジェクトが進まなくなります。

スケジュールを引く際は、稼働開始を決算期や大型工事の着工とどう重ねるかも検討材料になります。詳しくは導入で失敗しないための進め方と注意点で扱います。

建設業会計と収益認識基準への対応をどう確認するか

製品の説明でよく見かけるのが「建設業会計に対応」「工事進行基準に対応」という表記です。この説明が自社の決算実務で何を意味するのかがわからないと、対応の可否を評価できません。ここでは、建設業会計として何が求められているのかを整理したうえで、ERPの何を見ればよいかを解説します。

建設業会計の勘定科目と決算書類での扱い

建設業の決算書類の様式は、建設業法施行規則の別記様式として定められています。貸借対照表の様式(別記様式第十五号)には、流動資産として次の科目が掲げられています。

Ⅰ 流動資産
現金預金
受取手形
完成工事未収入金
有価証券
未成工事支出金
材料貯蔵品
短期貸付金
前払費用
その他
貸倒引当金

出典:建設業法施行規則 別記様式第十五号(第四条、第十条、第十九条の四関係)貸借対照表|e-Gov法令検索

一般的な会計ソフトが持つ「売掛金」「仕掛品」ではなく、完成工事未収入金・未成工事支出金という建設業固有の科目が様式に置かれています。負債側にも工事未払金・未成工事受入金が掲げられています。同じ様式に「契約資産」「契約負債」の科目は掲げられていません。

損益計算書の様式(別記様式第十六号)では売上高が完成工事高と兼業事業売上高に分かれ、あわせて完成工事原価報告書の様式が定められています。

完 成 工 事 原 価 報 告 書
Ⅰ 材 料 費
Ⅱ 労 務 費
 (うち労務外注費  )
Ⅲ 外 注 費
Ⅳ 経 費
 (うち人件費  )
  完成工事原価

出典:建設業法施行規則 別記様式第十六号(第四条、第十条、第十九条の四関係)損益計算書・完成工事原価報告書|e-Gov法令検索

原価を材料費・労務費・外注費・経費の4区分で集計し、労務外注費と人件費を内書きできる必要があることが、様式から読み取れます。工事原価をこの区分で積み上げられない仕組みだと、決算のたびに集計をやり直すことになります。

これらの様式は社内向けの整理ではなく、行政庁への提出書類として求められるものです。建設業法施行規則は、許可の申請時(第四条第八号)と毎事業年度終了後の変更届出(第十条第一号)で、別記様式第十五号から第十七号の二までによる貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・注記表の提出を定めています。

経営事項審査の入口となる経営状況分析の申請では、同じ様式で直前三年の各事業年度分が必要です(第十九条の四)。毎期この様式で作り直す作業が発生するということです。

経営事項審査を受ける会社にとっては、完成工事高が評点に直結する点も見逃せません。建設業法施行規則第二十一条の三が定める総合評定値の算式には、完成工事高に係る数値が構成要素として組み込まれています。

各科目に何を含めるかの分類は、様式の記載要領で「勘定科目の分類は、国土交通大臣が定めるところによること。」とされ、国土交通大臣の告示に委ねられています。製品を評価する際は、科目名の対応だけでなく、この分類に沿った集計と決算書類の出力までできるかを確認しておくと確実です。

「工事進行基準」は現在どう位置づけられているか

製品説明で使われる「工事進行基準」という言葉は、かつて企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」で定められていたものです。この基準は、企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」の適用に伴って廃止されました。

第 81 項の適用により、次の企業会計基準、企業会計基準適用指針及び実務対応報告は廃止する。
(1) 企業会計基準第 15 号「工事契約に関する会計基準」(以下「工事契約会計基準」という。)
(2) 企業会計基準適用指針第 18 号「工事契約に関する会計基準の適用指針」(以下「工事契約適用指針」という。)

出典:企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」第90項|企業会計基準委員会(ASBJ)

ここで廃止されたのは企業会計基準第15号と適用指針第18号であり、工事の進捗に応じて収益を認識するという考え方そのものが否定されたわけではありません。企業会計基準第29号では、一定の要件を満たす場合に「一定の期間にわたり充足される履行義務」として収益を認識する枠組みが定められ、工事契約もその中で扱われます。

同基準は、2021年(令和3年)4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用するものとされています(第81項。早期適用の定めもあります)。

ただし、この整理がすべての建設会社に等しく当てはまるわけではありません。国土交通省は、改正後の注記表様式(別記様式第十七号の二)の記載についての質疑に答えるかたちで、次のように述べています。

収益認識会計基準を適用しない建設企業にあっては従来からの取扱いから変更はございません。

出典:建設業法施行規則等の一部を改正する省令案等に関する意見募集の結果について(令和4年3月31日)|国土交通省 不動産・建設経済局建設業課

国税庁も、法人税の通達改正の説明のなかで次のように述べています。

なお、中小企業の会計処理については、従来どおり企業会計原則等による会計処理が認められることとされていますので、今般の通達改正により従来の取扱いが変更されるものではありません。

出典:「収益認識に関する会計基準」への対応について|国税庁

ここで確認すべきなのは「工事進行基準はもう使えないのか」ではなく、自社が収益認識会計基準を適用する立場なのかどうかです。

適用する会社では履行義務の充足に応じた収益認識に、適用しない会社では従来の取扱いに沿って処理することになります。自社がどちらに当たるかは、顧問税理士や監査人に確認したうえで製品の選定に進むのが確実です。

製品の説明で「工事進行基準に対応」と書かれていても、それだけでは自社の処理方法に合うかは判断できません。収益の認識基準を複数の方式から選択できるのか、自社が採る方式に対応しているのかを、個別に確認する必要があります。

ERPの機能として何を確認すればよいか

確認すべき機能を具体化する手がかりが、建設業法施行規則の注記表の様式(別記様式第十七号の二)にあります。記載要領は、注記事項として次の内容を求めています。

(4) 完成工事高及び完成工事原価の認識基準、決算日における工事進捗度を見積もるために用いた方法その他の収益及び費用の計上基準について記載する。なお、会社が顧客との契約に基づく義務の履行の状況に応じて当該契約から生ずる収益を認識するときは、次に掲げる事項を記載する。

出典:建設業法施行規則 別記様式第十七号の二 注記表 記載要領|e-Gov法令検索

注記表の様式が「決算日における工事進捗度を見積もるために用いた方法」の記載を求めているということは、決算日時点の進捗度と、その根拠になる数字を示せる状態が前提になっているということです。会計基準の側でも、進捗度は各決算日に見直すこと、進捗度を合理的に見積ることができる場合にのみ収益を認識することが定められています(企業会計基準第29号 第43項・第44項)。

ここから、ERPに求める要件を具体的に引き出せます。会計基準や法令がERPの機能を定めているわけではありませんが、これらの記載義務を満たす作業をシステムで賄うなら、次の3点が確認の対象になります。

  • 決算日時点の工事別の発生原価と見積総原価を取り出せるか:進捗度を原価の割合で測る場合、決算日で締めた実績原価と、その時点の総原価の見積りが工事ごとに必要になります
  • 進捗度の見積りを期ごとに見直し、変更の履歴を残せるか:見直しの根拠を後から説明できる状態にしておくと、注記の作成と監査対応が進めやすくなります
  • 工事台帳と会計の数字が突き合わせられるか:完成工事高・完成工事原価・未成工事支出金の残高が工事台帳の明細から追える状態になっていれば、決算時の検証の手間が減ります

もうひとつ、製品説明に登場する「原価回収基準」も現行の会計基準の用語です。企業会計基準第29号は「『原価回収基準』とは、履行義務を充足する際に発生する費用のうち、回収することが見込まれる費用の金額で収益を認識する方法をいう。」(第15項)と定義しています。

進捗度を合理的に見積ることができないが費用の回収が見込まれる場合に、見積ることができる時までこの方法で処理すると定められています(第45項)。この方法を採る場合も、発生原価を工事単位で正確に集計できることが前提になります。

あわせて、注記表の様式には工事損失引当金に関する記載事項も含まれています。赤字が見込まれる工事を抱える可能性がある場合は、工事損失引当金の計上と、対応する未成工事支出金の金額を扱えるかも確認しておくと安心です。

出典・参考資料(4件)

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【比較表】建設業向けERP31サービスをタイプ別に比較

ここからは、自社の課題や要件に合わせた客観的な比較・選定ができるよう、主要な建設業向けERP31製品を4つの目的別(タイプ別)に分類してご紹介します。対象規模・提供形態・工事原価管理・JV管理・建設業会計・費用・導入実績を軸に並べているため、自社に必要な条件から絞り込めます。

各表の記号は次の意味で使っています。

  • :標準機能として公式情報で確認できるもの
  • :オプション・テンプレート・パートナー実装・連携製品など、追加の手当てを前提に対応するもの(セルの注釈に内訳を記載)
  • ×:本体機能としては備えていないことが確認できたもの
  • 公開情報なし:提供元の公式情報では確認できなかったもの(非対応という意味ではありません)

JV案件を受注する会社は、JV管理の列を先に見ると候補を早く絞れます。JV管理を標準機能として公式に確認できる製品は中堅・大手の全社統合に対応するタイプに集中しており、工事管理・原価管理に絞るタイプと中小・工務店向けのタイプにも各1〜2製品あります。

汎用ERPを建設業向けに構成するタイプは、本体機能としてJV管理を公式に確認できる製品がなく、1製品が連携製品側で対応する構成です。●が付いていても、スポンサー(幹事会社)とサブ(構成員)のどちらに対応するか、独立会計方式と取込会計方式のどちらかは製品ごとに異なるため、注釈まで確認してください。

【タイプ別比較表】中堅・大手の全社統合に対応する建設業向けERP

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サービス名PROACTIVE ConstructionPROCES.SHUE C2EXPLANNER/CNEC 建設クラウド建設WAOGRANDITimforce Arch
対象規模売上高50億〜1,000億円規模の建設事業者が中心公開情報なし大手ゼネコン中心
(公式発表の導入企業から)
中堅の建設・設備会社が中心
(導入事例から)
大手〜中堅の総合建設会社
(導入事例から)
大手建設業向け
(中堅向けは別製品のクラウド型)
公開情報なし中堅〜準大手の建設会社
提供形態公開情報なし
中堅向けの別製品「建設WAO Bae クラウド」はクラウド型
クラウド/オンプレミスクラウド
(オンプレミスは公開情報なし)
公開情報なし
(ブラウザで動作)
クラウドクラウド/オンプレミスクラウド/オンプレミス公開情報なし
工事原価・実行予算管理見積・契約から実行予算・出来高・収益認識まで一元管理積算データを取り込み、実行予算から注文書を自動生成発注見込を含む最終原価の着地見込みを随時確認引合から完成までの原価情報を現場と各部門から集約実行予算・発注・出来高を標準業務プロセスで管理本社と現場の双方で予算・原価・注文・支払・利益を確認標準機能ではなくプロジェクト原価管理テンプレート・工事管理アドオンで対応見積原価による工種別の損益シミュレーションを標準搭載
JV管理2026年5月に追加。共同企業体運用準則に準拠した会計処理独立会計方式・取込会計方式の両方に対応スポンサー・サブの双方、完全プール/通常分配/余剰分配に対応JVプロジェクト会計。共通費と自社費用を工種コードで区別(提供元公式ページは直接確認できず、公開情報の要約に基づく)総合工事管理に含む。出資按分など詳細仕様は公開情報なし案件の按分処理に標準対応。会計方式は公開情報なし公開情報なし標準実装の記載はパートナー情報のみ。公式ページでは確認できず
建設業会計(様式・経審)工事進行基準・未成工事支出金に標準対応。様式・経審は公開情報なし完成工事高・未成工事支出金に対応。様式・経審は公開情報なし建設業特有の勘定科目に対応。様式・経審は公開情報なし工事進行基準・完成基準に対応。様式・経審は公開情報なし(同上、公開情報の要約に基づく)公開情報なし完成工事高・未成工事支出金に対応。様式・経審は公開情報なし進捗率に応じた売上計上に標準対応。様式・経審は公開情報なし完成原価振替の記載はパートナー情報のみ。様式・経審は公開情報なし
会計機能(自社/外部連携)自社保有
(PROACTIVE本体の会計)
自社保有
(財務・債務管理)
自社保有
(会計・工事管理・調達を同一基盤)
自社保有
(工事の会計処理)
自社保有
(会計・総合工事管理・現場原価管理)
自社保有
(2025年3月提供開始の会計WAO)
自社保有
(基幹11モジュールに会計を標準搭載)
自社保有
(経営・会計モジュール)
初期費用公開情報なし公開情報なし公開情報なし公開情報なし公開情報なし公開情報なし公開情報なし公開情報なし
月額・ライセンス費用公開情報なし
(利用機能・ユーザー数による個別見積)
公開情報なし
(モジュール構成・ライセンス数による個別見積)
公開情報なし公開情報なし公開情報なし公開情報なし公開情報なし公開情報なし
導入実績公開情報なし
(PROACTIVE単体の社数)
370社以上鹿島建設・熊谷組・西松建設・鴻池組(公式発表)船場・新日本建設・日本環境アメニティなど東急建設・大日本土木・矢作建設工業など公開情報なし公開情報なし
(建設業向けの社数)
公開情報なし
詳細情報サービス詳細を見る公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト

※2026年8月時点で各社公式サイトに公開されている情報にもとづきます。公式に確認できない項目は「公開情報なし」と記載しています。最新の料金・機能は各社にご確認ください。

【タイプ別比較表】工事管理・原価管理に絞って導入できる建設業向けERP

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サービス名勘定奉行クラウド 建設業編どっと原価シリーズe2-movEPCA建設業会計Galileopt DX 工事大将WorksproANDPAD引合粗利管理
対象規模中小企業が主対象小規模〜中堅企業完工高20〜100億円の建設・建材業が中心中小〜中堅の建設業中堅企業公開情報なし公開情報なし
提供形態クラウドクラウド/オンプレミス
(製品により異なる)
クラウド/オンプレミスクラウド/オンプレミスクラウド/オンプレミス公開情報なしクラウド
工事原価・実行予算管理工事別の原価計算と間接費・労務費の配賦を自動化。実行予算の登録・予算対比は予算実績対比表で対応し、粒度は公開情報なし見積・実行予算・原価集計・発注・支払を一元管理工種別の実行予算に対する原価実績を多様な帳票で確認工種別・要素別・勘定科目別の実行予算と原価台帳発生種別ごとの入力画面で実行予算と原価実績を都度対比管理レベル別・工種別・品目別・年月別に実行予算を設定引合から実行予算・受発注・請求までの粗利と原価を追跡
JV管理公開情報なし製品・グレードにより対応(どっと原価3は非対応)オプション機能公開情報なし公開情報なしスポンサー(親)・サブ(子)の双方に対応公開情報なし
建設業会計(様式・経審)経営事項審査への対応は最上位のiSシステムに搭載公開情報なし未成工事支出金・完成工事原価の自動仕訳に対応。様式・経審は公開情報なし完成工事原価報告書の作成と経営事項審査の自動集計に対応工事進行基準・原価回収基準に対応。様式・経審は公開情報なし進行基準・完成基準の請求処理に対応。決算処理は連携先の会計側公開情報なし
会計機能(自社/外部連携)自社保有
(勘定奉行iクラウドの会計基盤)
外部連携
(会計・給与ソフトと連携)
自社保有
(建設会計)
自社保有
(PCA会計シリーズ)
自社保有
(同シリーズの財務大将等と組み合わせ)
外部連携
(財務会計は持たず、SuperStream-NX等と仕訳連携)
外部連携
(外部の会計サービスと連携)
初期費用50,000円〜70,000円(税抜、プラン別)公開情報なし公開情報なし0円公開情報なし公開情報なし公開情報なし
月額・ライセンス費用27,500円〜40,500円(税抜、プラン別)公開情報なし公開情報なし8,500円〜(税抜、サブスク版)/19,200円〜(税抜、クラウド版)公開情報なし
(買取とサブスクリプションの2方式)
3,000,000円〜(税別、10ユーザーライセンス)公開情報なし
(プランにより変動)
導入実績公開情報なし
(建設業編単独の社数)
約6,500社400社以上公開情報なし公開情報なし公開情報なし
(公式の実名事例は2社)
公開情報なし
(引合粗利管理単体の社数)
詳細情報サービス詳細を見る公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト

※2026年8月時点で各社公式サイトに公開されている情報にもとづきます。公式に確認できない項目は「公開情報なし」と記載しています。最新の料金・機能は各社にご確認ください。

【タイプ別比較表】中小建設会社・工務店向けの低コストなERP

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サービス名AnyONEアイピアガリバーX・匠注文分譲クラウドDXHOUSING COREプロワンAnymore施工管理CAREECON PlusコンクルーAI
対象規模個人工務店〜中・大規模の工務店1人〜50人以上の建築業者小規模の建設・工事業公開情報なし
(対象は注文住宅・分譲住宅の事業者)
公開情報なし
(対象は注文住宅・分譲住宅の事業者)
公開情報なし
(対象は設備工事・リフォーム等の現場サービス業)
中小規模の建設会社中小建設事業者中小建設会社
提供形態クラウドクラウドクラウドクラウドクラウドクラウドクラウドクラウドクラウド
工事原価・実行予算管理見積の原価情報を取り込み、実行予算から発注まで連動見積・発注・請求のデータから原価を自動集計案件の発生から工事完成までを原価管理と合わせて一元管理実行予算と工事原価台帳を工種別・業者別に対比実行予算から引渡しまでを邸別・事業別の収支で管理見積から発注へ引き継ぎ、進捗とコストを原価管理へ自動連携見積から実行予算を自動生成し、発注金額を実績へ反映案件ごとの原価・売上・粗利益を自動計算。実行予算は公開情報なし見積・原価管理と売上・粗利管理を1つのシステムで扱う
JV管理公開情報なし公開情報なし標準機能として明記公開情報なし公開情報なし公開情報なし公開情報なし公開情報なし公開情報なし
建設業会計(様式・経審)未成工事一覧表・完工利益実績表を出力。様式・経審は公開情報なし公開情報なし財務管理を標準機能に記載。工事進行基準への言及は別製品ガリバーXのページ。科目・様式・経審は公開情報なし工事完成・仕掛・未払金・未収入金の月報を出力。様式・経審は公開情報なし公開情報なし公開情報なし公開情報なし公開情報なし公開情報なし
会計機能(自社/外部連携)外部連携
(連携先の会計ソフト名は公開情報なし)
外部連携
(連携先の会計ソフト名は公開情報なし)
自社保有
(財務管理・給与管理を標準機能)
外部連携
(連携先の会計ソフト名は公開情報なし)
外部連携
(SuperStream-NX・マネーフォワード クラウド会計Plus・勘定奉行・GLOVIAへ仕訳連携)
外部連携
(連携先の会計ソフト名は公開情報なし)
公開情報なし
(電子帳簿保存法・インボイス制度への対応は明記)
公開情報なし公開情報なし
初期費用公開情報なし
(事業規模に応じた個別見積)
120,000円(税抜、ライトプラン)公開情報なし公開情報なし公開情報なし公開情報なし0円公開情報なし公開情報なし
月額・ライセンス費用公開情報なし
(事業規模に応じた個別見積)
10,000円〜30,000円(税抜、5ユーザーまで)公開情報なし公開情報なし
(利用人数などによる個別見積)
公開情報なし公開情報なし15,000円〜公開情報なし9,900円〜(税込10,890円、1名利用)
導入実績4,300社超(ユーザー数16,000超)全国1,000事業所超(累計ユーザー10,000人)約1,000社以上(ガリバーシリーズ全体)公開情報なし
(本サービス単独の社数)
公開情報なし公開情報なし2,000社以上(継続率99%)3,000社以上累計3,000社
詳細情報公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト

※2026年8月時点で各社公式サイトに公開されている情報にもとづきます。公式に確認できない項目は「公開情報なし」と記載しています。最新の料金・機能は各社にご確認ください。

【タイプ別比較表】汎用ERPを建設業向けに構成して使う選択肢

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サービス名Oracle NetSuite GRCOBIC7SuperStream-NXクラウドERP ZACSAP S/4HANA CloudDynamics 365 Business CentralSMILE V 2nd Edition
対象規模公開情報なし中堅・大企業(OBIC7シリーズ全体)中堅〜大企業・上場企業公開情報なし
(事例は従業員92〜1,141名)
中堅〜大企業小中規模企業公開情報なし
提供形態クラウドクラウド/オンプレミスクラウド/オンプレミスクラウドクラウド
(Public Edition/Private Edition)
クラウドクラウド/オンプレミス
工事原価・実行予算管理建設業向けの標準ではなくプロジェクト会計モジュール(SuiteProjects)で対応建設工事業向けソリューションで対応。標準かオプションかは公開情報なし×本体機能ではなく、連携製品のWorkspro等が担う構成案件・プロジェクト単位で対応。工種別・要素別の粒度は公開情報なしプロジェクト管理は標準。建設業向けはパートナーの業種テンプレート前提標準のプロジェクト(Jobs)で対応。工種・実行予算の画面や帳票ではない本体には含まれず、業種特化オプション(コストマネージャー)で対応
JV管理公開情報なし公開情報なし本体は公開情報なし。連携製品のWorksproがスポンサー・サブ双方に対応公開情報なし公開情報なし
(JVAモジュールの国内建設業での適用実績は確認できず)
公開情報なし公開情報なし
建設業会計(様式・経審)公開情報なし
(収益認識・仕掛工事報告への対応は明記)
公開情報なし公開情報なし公開情報なし
(工事進行基準・原価比例法への対応は明記)
公開情報なし公開情報なし
(認定パートナーのローカライズ前提)
未成原価から完成原価への振替伝票を自動作成。様式・経審は公開情報なし
会計機能(自社/外部連携)自社保有
(NetSuiteの統合会計)
自社保有
(OBIC7会計情報システム)
自社保有
(統合会計が本体機能)
外部連携
(連携範囲は公開情報なし)
自社保有
(S/4HANAの財務会計)
自社保有
(財務会計を標準搭載)
自社保有
(会計モジュール)
初期費用公開情報なし公開情報なし公開情報なし100,000円(初期設定費用)公開情報なし公開情報なし
(導入・カスタマイズ費は認定パートナーとの契約)
公開情報なし
月額・ライセンス費用公開情報なし
(年間ライセンス制。プラットフォーム+ユーザー数+保存量で決定)
公開情報なし
(個別構築型のため個別見積)
公開情報なし
(連携製品のWorksproは10ユーザー3,000,000円〜(税別))
60,000円〜(月額保守)+ライセンス費用(単価は公開情報なし)公開情報なし
(本体ライセンスとパートナー実装費が別建て)
11,994円/ユーザー(Essentials、年払い)、16,491円/ユーザー(Premium、年払い)公開情報なし
(本体・オプションとも)
導入実績公開情報なし
(国内建設業の事例)
公開情報なし
(建設工事業向けの事例)
11,000社以上(製品全体。建設業の公式事例は1件)1,100社超(ZAC全体)日本国土開発(2020年6月本稼働)50,000社(公式サイト記載、全業種)公開情報なし
詳細情報公式資料を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見る公式サイト公式サイト

※2026年8月時点で各社公式サイトに公開されている情報にもとづきます。汎用ERPは建設業固有の機能をオプションやパートナーの業種テンプレートで補う構成が中心のため、どこまでが標準機能かを提案の段階でご確認ください。公式に確認できない項目は「公開情報なし」と記載しています。

建設業向けERP31サービスの個別紹介

ここからは、31サービスの概要・特徴・建設業への対応状況・費用・導入実績をタイプ別に紹介します。比較表で気になった製品の詳細を確認する際にご活用ください。

中堅・大手の全社統合に対応する建設業向けERP

工事管理・会計に加えて人事給与や購買までを一本化したい中堅〜大手の建設会社、およびJV案件を受注する会社に向くタイプです。

1. PROACTIVE Construction(SCSK株式会社)

SCSKのクラウドERP「PROACTIVE」の公式サイト

SCSK株式会社のクラウドERP「PROACTIVE」を基盤とした建設業向けのオファリングで、同社が従来提供していた「PImacsシリーズ」を刷新したものです。見積・契約・実行予算・発注・出来高・請求・入金・収益認識までを一元管理し、専門工事・住宅・リフォーム・企業内工事といった事業領域に対応します。

JV管理については、2026年5月にJVプロジェクト管理機能が追加されました。案件ごとの構成企業と出資比率の登録、出資金の入出金管理、工事原価・売上の配賦、JV立替金と預り金の相殺を含む精算処理までを扱います。国土交通省の「共同企業体運用準則」に準拠した会計処理に対応すると公式に示されています。

工事進行基準・実行予算・未成工事支出金といった建設業特有の商習慣と勘定科目には標準で対応します。ただし完成工事高など他の科目や、建設業法施行規則に基づく財務諸表様式への対応は公開情報では確認できません。対象は売上高50億円〜1,000億円規模の建設事業者が中心で、料金は公開されておらず利用機能とユーザー数に応じた個別見積です。

2. PROCES.S(株式会社内田洋行ITソリューションズ)

建設業向けERP「PROCES.S」の公式サイト

財務・債務管理、原価・発注管理、請求入金管理、JV管理、給与・労賃管理までを1つのパッケージにまとめた建設業向けERPです。株式会社内田洋行ITソリューションズが提供し、公式サイトでは370社以上の導入実績と、総合建設業・土木・建築・設備工事など幅広い業種への対応を掲げています。

実行予算は積算データを取り込んで作成でき、項目名だけを取り込むか数量・単価まで含めるかを選べます。自社の歩掛からの代価表作成や細目積み上げ方式にも対応し、組んだ実行予算からそのまま注文書を自動生成できます。現場の出来高データは会計仕訳へ自動連動し、経理が入力した経費も現場側に反映されます。

JV管理では、JVを本体から分離する独立会計方式と、JV会計をスポンサー企業の会計に取り込む取込会計方式の両方に対応します。出資金は構成員比率から自動計算し、出資金請求書の発行、原価の自動振替、協定給与管理、JV決算処理まで扱えます。料金は公開されておらず、モジュール構成やライセンス数に応じた個別見積です。

3. HUE C2(株式会社ワークスアプリケーションズ・フロンティア)

建設業向けERP「HUE C2」を紹介するワークスアプリケーションズ・フロンティアの公式サイト

開発元の株式会社ワークスアプリケーションズ・フロンティアは、2022年12月に株式会社ワークスアプリケーションズから経営陣による買収で独立した会社です。HUE C2はその建設業向けERPパッケージで、会計・工事管理・調達・工事請負契約までを1つの基盤で扱います。

原価管理では、発生済みの原価をもとに今後の発注見込と最終的な原価の着地見込みを随時確認でき、工事ごとの損益を一元管理します。実行予算の策定から日々の見積発注、月次締め、四半期決算までの一連の業務が対象範囲です。

JV管理は、資金運営の完全プール・通常分配・余剰分配のすべての形式に対応します。スポンサー側とサブ側のどちらの立場でも、JV全体と自社単体の業績を分けて確認できます。導入企業としては鹿島建設・熊谷組・西松建設・鴻池組が公式に発表されており、料金は公開されていません。

4. EXPLANNER/C(NECソリューションイノベータ株式会社)

NECソリューションイノベータの建設業向けERP「EXPLANNER/C」の公式サイト

NECソリューションイノベータ株式会社が提供する、業種別ERPパッケージ「EXPLANNER」シリーズの建設業向け製品です。同社は建設基幹業務システムを40年以上手がけてきたとしており、工事の引き合いから完成までの情報を現場と各部門から集約します。

会計面では工事進行基準と工事完成基準の双方の処理に対応し、工事損失引当金や内部統制への対応にも言及があります。JVプロジェクト会計では、スポンサーの共通費と自社独自の費用を1つのプロジェクト番号のなかで工種コードにより区別して管理する方式が示されています。

同じNECグループでは日本電気株式会社が別製品の建設クラウドを提供していますが、EXPLANNER/Cは提供元が子会社であり、パッケージに個社ごとのカスタマイズを加えられる設計である点が異なります。導入事例には株式会社船場や新日本建設株式会社など中堅規模の建設・設備会社が並び、料金は公開されていません。

5. NEC 建設クラウド(日本電気株式会社)

NECの建設業向けSaaS型ERP「建設クラウド」の公式サイト

出発点は、2009年に日本電気株式会社と東急建設・竹中土木・日本国土開発・TSUCHIYAの4社が立ち上げた共同研究会です。ここで整理した業界共通の標準業務プロセスをもとに、2013年からSaaS型ERPとして提供されています。会計・総合工事管理・現場原価管理の3領域を扱い、業務を標準に合わせるノンカスタマイズ導入を前提とします。

NECソリューションイノベータ株式会社のEXPLANNER/Cとは別の製品で、提供元も、標準に業務を合わせるか個社に合わせて作り込むかという導入の考え方も異なります。総合工事管理には工事契約管理・支払管理・JV管理が、原価管理には実行予算管理・発注管理・出来高管理が含まれます。公式サイトは業務適合率を「平均90%以上」と記載していますが、算出方法や調査対象は公開されていません。

導入事例は総合建設会社が中心です。大日本土木株式会社は2024年11月の本稼働を経て2026年1月時点で決算処理時間を約50%短縮、矢作建設工業株式会社は原価管理の作業工数を3割削減したと公表しています。一方で料金、収益認識方式や財務諸表様式への対応、JV管理の詳細仕様、サポート体制は公開情報では確認できません

6. 建設WAO(株式会社チェプロ)

チェプロの建設業向け統合型ERP「建設WAO」の公式サイト

株式会社チェプロが2008年から大手建設業向けに展開している統合型ERPです。営業管理・見積・原価管理・工事管理・会計・債権債務管理などを単一のデータベースで扱い、電子取引や勤怠日報管理まで範囲に含めています。

原価管理では、本社と現場の双方でリアルタイムに予算・原価・注文・支払・利益を確認でき、物件別・用途別の集計や一式処理後の内部案分にも対応します。JV案件の按分処理にも標準で対応しますが、独立会計方式と取込会計方式のどちらを扱えるかは公開情報では確認できません。

建設業会計では完成工事高・未成工事支出金などの勘定科目に対応し、2025年3月には仕訳から決算処理までを担うサブシステム「会計WAO」の提供が始まりました。売上高100億円未満の中堅企業には、カスタマイズ不要のクラウド型として別製品の「建設WAO Bae クラウド」が用意されています。料金はいずれも公開されていません。

7. GRANDIT(インフォコム株式会社)

国産ERP「GRANDIT」の建設業向けソリューションページの画面。

特定の1社ではなく、インフォコム株式会社を推進母体とする次世代ERPコンソーシアムが開発する完全Web型の国産ERPです。販売・会計などの基幹11モジュールにワークフローやBIを標準搭載し、導入とカスタマイズは70社を超えるパートナー企業が担います。

建設業で使う場合、工事原価管理は標準機能ではなく「プロジェクト原価管理テンプレート」や工事管理アドオンモジュールとして提供されます。見積・受注・実行予算・調達・出来高・売上・原価を一体で扱い、実行予算と実績の対比を可視化する構成です。

収益認識では、総予定原価に対する実績原価の進捗率に応じて進捗売上を計上する機能が標準機能として説明されており、計上のタイミングを月次・四半期・半期・通期から選べます。一方、JV管理について建設業向けの公式ページに記載はなく、料金も公開されていません。

8. imforce Arch(株式会社NTTデータビジネスシステムズ)

NTTデータビジネスシステムズの建設業向け統合基幹システム「imforce Arch」の公式サイト

株式会社NTTデータビジネスシステムズが、統合業務パッケージ「Biz∫」を土台に建設業向けとして構成した統合基幹システムです。旧称の「imforce建設業統合基幹モデル」から、2025年に現在の名称へ刷新されました。

経営・会計、営業管理、工事管理、経費精算に加え、建物の工事履歴と不具合を追跡するBLCM、オプションの人事管理までを同一基盤で扱います。公式サイトは対象を中堅〜準大手の建設会社と明記しており、引合から工事管理、請求・入金までを一気通貫で管理する設計です。

工事管理では見積原価を用いた工種別の損益シミュレーションを備え、月次の見込み原価を工事の完成前に追跡できます。JV管理と完成原価振替を標準実装しているという記述はパートナー企業のソリューション紹介ページにあるもので、提供元の公式ページでは同じ記載を確認できません。料金と提供形態はいずれも非公開です。

工事管理・原価管理に絞って導入できる建設業向けERP

既存の会計ソフトや給与システムを残しつつ、工事原価の管理から改善したい会社に向くタイプです。会計まで自社で持つ製品と、会計は外部連携に委ねる製品の両方が含まれます。

9. 勘定奉行クラウド 建設業編(株式会社オービックビジネスコンサルタント)

勘定奉行クラウド 建設業編の公式サイト

汎用の会計クラウド「勘定奉行iクラウド」に、工事ごとの原価計算と配賦の機能を加えた業種特化エディションです。決算・消費税申告や電子帳簿保存法・インボイス制度への対応は奉行シリーズの会計基盤をそのまま使います。奉行クラウドシリーズ全体の累計導入数は82万(2025年8月末時点)です。

料金は3段階に分かれます。基本のiAシステムが月額27,500円(税抜、年額330,000円)〜・初期費用50,000円、多角的分析を加えたiBが月額31,250円〜、管理会計まで含むiSが月額40,500円〜。経営事項審査に対応する機能は最上位のiSシステムに含まれます。30日間の無料体験も用意されています。

工事別の原価管理では、間接費・労務費の配賦を複数パターンで一括処理でき、給与・勤怠システムから取り込んだ日報データをもとに労務費を自動配賦できます。JV管理については公開情報では確認できないため、共同企業体の案件を扱う会社は事前に確認しておく必要があります。

10. どっと原価シリーズ(株式会社建設ドットウェブ)

どっと原価シリーズの公式サイト

石川県金沢市の建設ドットウェブが開発する、建設業向けの原価管理システムです。見積の作成から実行予算、原価集計、発注、支払までを一元管理し、会計と給与は自社では持たず外部のソフトと連携する構成をとります。公式サイトでは導入実績を約6,500社と記載しています。

製品はクラウドの「どっと原価3」と、社内LANでの利用が中心の「どっと原価NEO」シリーズに分かれます。JV管理はどっと原価3では機能比較表で全グレード非対応と明記され、NEO LTではオプション扱いです。共同企業体の案件がある場合は、どのモデルを選ぶかで対応可否が変わります。

公式FAQでは、JV管理の処理として出資割合に応じた原価の按分や構成員向け精算書類の作成に触れています。使い慣れたExcelでオリジナル帳票を作成できる機能も備えます。初期費用・月額とも公開情報はなく、料金は問い合わせで確認することになります。

11. e2-movE(三谷商事株式会社)

e2-movEの公式サイト

三谷商事が建設業・工事業と建材販売業に向けて提供するパッケージで、工事原価管理・販売管理・建設会計の3つを軸に、支払管理・手形管理・出面管理(作業日報)を束ねています。完工高20〜100億円の建設・建材業を中心に、400社以上が利用しています。

工種別に実行予算を登録し、予算に対する原価実績を確認できます。工事原価一覧表・工事原価元帳・工事台帳・工種別原価管理表など原価帳票の種類が多く、協力業者の納品書・請求書から入力した原価が支払査定まで一連で流れる作りです。

会計面では、未成工事支出金への自動仕訳、完成工事原価への振替、出来高から工事売上への仕訳に対応します。JV管理はオプション機能という位置づけです。オンプレミス版とクラウド版(e2Cloud)の両方があり、料金はいずれも公開されていません。

12. PCA建設業会計/PCAクラウド建設業会計dx(ピー・シー・エー株式会社)

PCA建設業会計の公式サイト

会計ソフト「PCA会計」シリーズを手がけるピー・シー・エーの建設業版です。工事・工種マスターを軸に原価台帳や工事収支管理表を備え、実行予算は工種別・要素別に加えて勘定科目別の積上げでも設定できます。未成・完成の振替と共通費配賦の自動化にも対応します。

収益の認識基準は進行基準・完成基準・原価回収基準から選択でき、経営事項審査では財務・工事データから審査項目を自動集計します。完成工事原価報告書・兼業事業売上原価報告書を決算書とは別ファイルで作成できる点も、建設業の決算実務に直結します。

自社サーバーで動かすサブスク版が月額8,500円(税抜)〜、クラウド版が月額19,200円(税抜)〜で、いずれも初期費用は0円です。サブスク版には2ヶ月の無料体験があります。JV管理は公開情報では確認できないため、該当する会社は問い合わせが必要です。

13. Galileopt DX 工事大将(株式会社ミロク情報サービス)

Galileopt DX 工事大将の公式サイト

ミロク情報サービスの中堅企業向けERP「Galileopt DX」のうち、工事管理を担うモジュールが工事大将です。財務大将・給与大将・人事大将・販売大将などと組み合わせれば、会計や人事給与まで同じ基盤に載せられます。

工事原価は発生種別に応じた入力画面が用意され、工事別に登録した実行予算との対比を都度確認できます。収支管理は工事進行基準・原価回収基準に対応します。ただし工事大将だけでどこまで完結し、どこから他モジュールが必要になるかは公開情報で示されていないため、導入範囲は提案の段階で切り分けておく必要があります。

提供形態はオンプレミスと、Microsoft Azure基盤のクラウドサービス「MJS DX Cloud」の両方から選べます。料金は買取(5年ライセンス)とサブスクリプションの2方式が用意されているものの、実額は公開されていません。JV管理も公開情報では確認できません。

14. Workspro(株式会社日立システムズ)

Worksproの公式サイト

設備工事などの建設業を対象に、日立システムズが提供する工事原価管理システムです。受注契約から実行予算、発注・仕入、売上・請求・入金、支払、原価までを扱う一方、財務会計は自社では持たず、連携先の会計システムが担う構成です。統合会計パッケージのSuperStream-NXとはアライアンス関係にあり、仕訳連携・支払連携で接続します。

JV管理を独立した機能として持ち、立場ごとの違いにまで踏み込んでいます。スポンサー(親)では企業体としての管理と自社の管理を同時に行え、サブ(子)では企業体との出資金のやり取りを管理できます。実行予算は管理レベル別・工種別・品目別・年月別に設定できます。

価格は10ユーザーライセンスで3,000,000円(税別)〜と公表されています。導入支援には建設業経理士1級の資格を持つコンサルタントが付き、公式の導入事例では決算準備が7日間から4日間に短縮された例が示されています。提供形態は公開情報では明示されていません。

15. ANDPAD引合粗利管理(株式会社アンドパッド)

ANDPAD引合粗利管理の公式サイト

アンドパッドが、現場の工程や写真を扱う施工管理とは別の領域を担う製品として提供する基幹システムです。引合(見込み案件)の段階から契約・実行予算・入金・経理までを横断し、粗利と原価をダッシュボードで追えます。施工管理をすでに使っている会社でも役割が重なりません

実行予算では見積データや外部の積算結果を取り込み、受発注から請求・支払までを一貫して管理します。土地原価と建物原価をプロジェクト単位で紐づけられるため、戸建てや分譲を手がける会社では土地を含めた収支を見られます。

一方で、会計は外部の会計サービスとの連携が前提で、完成工事高や未成工事支出金といった建設業固有の勘定科目への対応は公開情報では明記されていません。JV管理も同様に確認できず、料金は初期費用・月額とも非公開です。

中小建設会社・工務店向けの低コストなERP

少人数で経理と工事管理を兼務している工務店・リフォーム会社・専門工事会社に向くタイプです。9製品のうち3製品が料金を実額公開しており、残りは個別見積となります。

16. AnyONE(エニワン株式会社)

AnyONEの公式サイト

建材流通商社「ナカザワ建販」の建設業取引の経験をもとに開発された、工務店・建築会社・リフォーム会社向けの建築業務管理クラウドです。顧客情報から見積、工事スケジュール、実行予算、受発注、入金、引渡後のメンテナンス情報までを一元管理します。対応する工事は新築工事とリフォーム工事が公式に明記されています。

操作画面はExcelに近い設計で、コピー&ペーストや書式設定をそのまま使えます。見積に含まれる原価情報を取り込んで発注までワンクリックで進める機能を備え、未成工事一覧表・完工利益実績表といった建設業会計に沿った帳票も出力できます。導入企業は4,300社超、ユーザー数は16,000超(2025年度時点、公式サイト記載)。

初期費用・月額とも公開されておらず、事業規模に応じた個別見積もりです。一方で導入支援は料金が示されており、オンライン講習(2時間)5万円、訪問講習(5時間)20万円、オンライン打ち合わせ2万円/時間となっています。

17. アイピア(株式会社アイピア)

アイピアの公式サイト

対象を「1人〜50人以上の建築業者」と公式に明示している、リフォーム会社・工務店向けのクラウド型業務管理システムです。顧客管理・見積作成・原価/発注管理・請求/入金管理・工程管理・工事台帳作成を1つのシステムに集約し、原価管理は見積・発注・請求のデータを自動集計する標準機能として提供されます。

料金は3プランが実額で公開されています。ライトプランが初期費用120,000円・月額10,000円、ベーシックが月額20,000円、プロフェッショナルが月額30,000円(いずれも税抜、5ユーザーまで)。ユーザー追加は1名につき月額2,000円(税抜)で、リモート研修は回数の制限なく無料です。

導入実績は全国1,000事業所超、累計利用ユーザー数10,000人(2026年1月の公式発表時点)。ただし会計ソフト連携は公式サイトに言及があるものの連携先のソフト名までは公開されていないため、既存の会計基盤へ数字を渡す運用を想定するなら、事前に確認する必要があります。

18. ガリバーX・匠(あさかわシステムズ株式会社)

ガリバーX・匠の公式サイト

1984年創業のあさかわシステムズが展開する建設業向け「ガリバーシリーズ」のうち、小規模の建設・工事業向けと公式に位置づけられているのがガリバーX・匠です。2024年10月にローンチした完全Web版ERPのガリバーXとは、別製品として案内されています。

ガリバーX・匠の製品ページでは、原価管理・財務管理・給与管理・JV管理を標準機能として挙げています。会計と給与まで自社機能として持つ構成で、案件の発生から工事完成までを一元管理する設計です。電子帳簿保存法への対応、承認機能、部門管理、AIエージェント機能も同ページに記載があります。

シリーズ累計の導入社数は約1,000社以上(ガリバーX・匠単体ではなくシリーズ全体の数値)。料金は両製品とも公開されておらず、問い合わせが必要です。ガリバーXとガリバーX・匠の機能・対象規模の境界は公式ページ上で明確に示されていないため、どちらが自社に該当するかは提案段階で確認しておく必要があります。

19. 注文分譲クラウドDX(株式会社ダイテック)

注文分譲クラウドDXの公式サイト

注文住宅・分譲住宅の事業者に対象を絞った基幹業務システムで、株式会社ダイテックのクラウド事業部が提供しています。注文住宅向けと分譲住宅向けで別々の機能ページが用意されており、リフォーム・専門工事への対応は公式に明記されていません。

実行予算は標準テンプレートや見積書データから作成でき、業者への発注金額の検討も同じ画面で行えます。工事原価は工事原価台帳へ自動転記されて工種別・業者別に集計され、実行予算との比較が可能です。分譲住宅向けでは土地台帳に仕入れ区画数・販売価格・予算・目標粗利を設定し、区画・棟ごとの粗利益と純利益を試算できます。

月報として工事完成月報・工事仕掛月報・工事未払金月報・工事未収入金月報を出力できます。受発注・電子承認・販売管理・アフターフォローも同じ基盤に載っており、電子契約サービス「電子印鑑GMOサイン」との連携も発表されています。料金は初期費用・月額とも公開されておらず、利用人数などに応じた個別見積もりです。

20. HOUSING CORE(株式会社DTS)

HOUSING COREの公式サイト

東証プライム上場の株式会社DTSが2022年10月に販売を開始した、住宅建設業界(注文住宅・分譲住宅)向けの基幹システムです。営業管理・工事管理・経理管理・アフター対応・分析の5領域で構成され、引渡し後の顧客管理やリフォーム部門の機能まで同じ基盤で扱います。

2025年5月のVer.4で会計システム連携が拡張されました。現在はSuperStream-NX、マネーフォワード クラウド会計Plus、勘定奉行、GLOVIAへの仕訳連携を公式に明示しており、工事の原価データを既存の会計システムへ渡す経路が示されています。実行予算の作成から引渡しまでの申請・承認はワークフローで管理され、邸別・事業別の収支を把握できます。

自社開発の施工管理モバイルアプリと連動し、現場の工事進捗をオフィス側とリアルタイムで共有できる点も特徴です。一方、住宅に特化した製品のためJV管理への言及は公式情報になく、土木・大型建築・公共工事への対応も確認できません。料金も公開されていないため、問い合わせが必要です。

21. プロワン(株式会社ミツモア)

プロワンの公式サイト

プロワンが対象として公式に挙げているのは、設備工事・リフォーム・ビルメンテナンス・ガス・給排水工事などです。建設業専用ではなく現場サービス業全般を守備範囲としており、新築住宅(注文住宅・分譲住宅)への対応を明記したページは確認できません。見積書比較サービス「ミツモア」を運営する株式会社ミツモアが開発しました。

見積から発注へデータを引き継ぎ、発注の進捗・コスト・対応状況が原価管理へ自動連携する設計です。請求では合算・分割・出来高といったパターンに対応し、見積・原価と連動した請求書をワンクリックで発行できます。

会計ソフトとの連携は公式サイトに記載がありますが、連携先のソフト名や連携方式は公開されていません。建設業会計の勘定科目への対応も公式には示されておらず、料金も初期費用・月額とも非公開です。決算処理まで含めた運用を想定する場合は、この範囲を個別に確認する必要があります。

22. Anymore施工管理(Anymore株式会社)

Anymore施工管理の公式サイト

2024年11月に提供が始まった、中小規模の建設会社・住宅会社向けのクラウドサービスです。出発点は現場の施工管理ですが、見積管理・発注管理・請求管理・実行予算管理まで機能が広がっており、工程や写真の共有だけを担うツールとは対象範囲が異なります。

実行予算管理では、見積管理の機能から実行予算を自動生成し、発注管理で登録した発注金額が自動的に実績へ反映されます。案件ごとに予算と実績を比較して、工種別・業者別に赤字案件の原因を分析できる設計です。現場の作業員はLINE公式アカウントから工程情報の確認・写真登録・勤怠打刻を行えるため、新たなアプリを入れずに運用できます。

料金は初期費用0円・月額15,000円〜で、17の機能をすべて使える構成です。無料トライアルは1ヶ月あり、導入企業2,000社以上・継続率99%と公式サイトに記載があります(2025年11月時点)。ただし外部の会計システムへ仕訳を渡す機能は公式に示されておらず、記載があるのは電子帳簿保存法とインボイス制度への対応までです。

23. CAREECON Plus(BRANU株式会社)

CAREECON Plusの公式サイト

マーケティング・採用管理・施工管理・業者間マッチング・経営管理の5領域を1つのクラウドにまとめた、建設業向けの統合型ツールです。提供元のBRANU株式会社は2025年12月に東証グロース市場へ上場しています。施工管理機能の対応業種としては、設備工事、外装・塗装・屋根、新築住宅、内装リフォームの4つが公式に挙げられています。

原価と採算を扱うのは、2025年3月に正式リリースされた経営管理機能です。AI-OCRで請求書・領収書・レシートを自動でデータ化し、材料費・労務費・外注費を集計したうえで、案件ごとの原価・売上・粗利益を自動計算します。利益率の異常を検知するアラート通知やキャッシュフロー管理、案件別・期間別の収益レポートも含まれます。

労務費のもとになる出面(人工)の管理は施工管理機能側にあり、その数字が請求・原価管理の基礎データとして使われます。導入社数は3,000社以上(公式サービスページ記載)。料金は公開されておらず、会計ソフトとの連携先や建設業会計の勘定科目への対応も公式には示されていません。

24. コンクルーAI(株式会社コンクルー)

コンクルーAIの公式サイト

2024年8月に「コンクルーCloud」として提供が始まり、その後のAI機能搭載にあわせて「コンクルーAI」へ名称を変えた、中小建設会社向けのオールインワン業務管理クラウドです。顧客・案件管理、見積・原価管理、受発注管理、施工管理、売上・粗利管理の5領域を1つのシステムで扱います。

月額は最小構成の1名利用で9,900円(税込10,890円)からで、利用人数に応じてプランが変わります。無料トライアルは14日間です。協力業者が使うスマートフォンアプリ「コンクルーWork」は無料で提供され、受発注・現場情報・写真の共有に利用できます。

累計導入は3,000社、導入企業の合計売上高は1,700億円超と公式サイトに記載があります。扱う範囲は工事の業務管理までで、人事給与や全社の財務会計は対象外です。建設業会計の勘定科目や会計ソフト連携についても公式の記載がないため、決算処理は既存の会計基盤で担う前提になります。

汎用ERPを建設業向けに構成して使う選択肢

建設以外の事業や海外拠点を持ち、全社で同じ基盤に揃えたい会社に向くタイプです。建設業固有の機能をどこまで標準で賄えるかは製品ごとに異なるため、その線引きにも触れながら紹介します。

25. Oracle NetSuite GRC(日本オラクル株式会社)

Oracle NetSuite GRCの公式サイト

会計・販売・在庫・CRMを1つのクラウド基盤に統合したERP「Oracle NetSuite」に、アクセス権限の設定や監査証跡といった内部統制の機能を組み込んだものです。GRCの機能はプラットフォームのライセンスに含まれ、単独では提供されません。

工事単位の原価管理を担うのは、GRCではなくプロジェクト会計のモジュール「SuiteProjects」です。プロジェクトごとに購買発注を集計し、直接費・間接費を配賦したうえで、予算と実績をレポートで対比できます。建設業向けの業種ページでは、収益認識や仕掛工事報告、時間・材料契約や固定価格契約といった要件への対応が挙げられています。

一方で、JV管理と、完成工事高・未成工事支出金といった建設業会計の様式への対応は公式情報では確認できず、日本国内の建設業での導入事例も公開されていません(2026年8月時点)。料金は年間ライセンス制で、コアプラットフォームとユーザー数、データ保存量の組み合わせで決まりますが、実額は公開されていません。

どのような状況の会社から相談が寄せられるのかについて、日本オラクルは導入のきっかけを3つのパターンで説明しています。

福宮氏
日本オラクル株式会社 理事 NetSuite事業統括 営業統括本部長
福宮氏
独自インタビューより

大きく三つのパターンがあります。一つ目は、古くなったオンプレミスのシステムを刷新したいというケース。二つ目は、事業が成長してきて、バラバラだったシステムや業務のやり方を標準化したいというケース。三つ目は、M&Aのあとにグループ全体のシステムを統合して、データを可視化したいというケースです。決め手という意味では、やはり経営者の方が「今見たい数字が、今すぐ見られるかどうか」を重視されます。

26. OBIC7(株式会社オービック)

OBIC7の公式サイト

会計・販売管理・人事給与・生産管理などを揃えた中堅・大企業向けの統合業務ソフトウェアです。業種別ソリューションの一つとして建設工事業向けの構成を用意し、総合建設・建築・土木・設備工事業を対象業種に挙げています。

建設工事業向けのソリューションでは、積算情報をもとに手配予定と実行予算の作成を効率化し、材料費・外注の購買業務・社内労務費の日報管理や給与実績配賦・経費・損料計算を通じて工事原価を早期に集められるとしています。提供形態はクラウドとオンプレミスの両方から選べます。

ただし、これらが標準機能かオプションかの区分は公式ページに記載がなく、JV管理と建設業会計の様式への対応も公式情報では確認できません。料金も公開されていないため、必要な機能の範囲と費用は個別の見積もりで確認することになります。

27. SuperStream-NX(キヤノンITソリューションズ株式会社)

SuperStream-NXの公式サイト

統合会計・債権債務・固定資産・グループ経営管理・人事給与をモジュール群として提供し、モジュール間を仕訳データで連携させる国産の統合バックオフィス基盤です。中堅〜大企業・上場企業を主な対象とし、オンプレミスとクラウドの双方から提供形態を選べます。

建設業で使う際に確認しておきたいのが機能の担い手です。工事単位の原価管理は本体の機能ではなく、別ベンダーが提供する連携製品で実現する構成になっています。株式会社日立システムズの工事原価管理システム「Workspro」は、案件別・工種別・要素別に実行予算と原価を管理し、JVのスポンサー方式・サブ方式の双方に対応します。価格は10ユーザーライセンスで3,000,000円〜(税別)です。

WBS単位で予算を管理する「ActualProⅡ」も連携先に挙げられています。なお本体側の建設仮勘定管理オプションは、自社の設備投資に伴う建設中の資産を扱う機能で、完成工事高や未成工事支出金といった施工者側の会計処理とは別のものです。公式に掲載されている建設業の事例は株式会社中部プラントサービスの1件で、本体の料金は公開されていません。

28. クラウドERP ZAC(株式会社オロ)

クラウドERP ZACの公式サイト

案件・プロジェクト単位で販売・購買・勤怠工数・経費を一元管理するクラウドERPです。公式の業種一覧で対象に挙げられているのは建設コンサルタント業と設備工事・メンテナンス業で、総合工事業の全社基幹としての対応は公式には示されていません。

建設コンサルタント業向けのページでは、新収益認識基準に引き継がれた工事進行基準に対応し、原価比例法による売上額の自動計算ができるとしています。導入事例では、株式会社INA新建築研究所がプロジェクト原価の把握に1ヶ月半以上かかっていた状態から、月末の締め処理後に原価を取得できる状態になったと紹介されています。

料金は初期設定費用が10万円、データセンター利用料にあたる月額保守費用が6万円〜で、これに機能とライセンス数に応じた従量制のライセンス費用が加わります(単価は非公開)。工種別・要素別の実行予算管理の粒度、JV管理、建設業会計の様式への対応は、いずれも公式情報では確認できません。

29. SAP S/4HANA Cloud(SAPジャパン株式会社)

SAP S/4HANA Cloudの公式サイト

財務・調達・在庫・生産・販売・人事までを単一のデータ基盤で統合するERPのクラウド版です。マルチテナントで提供するPublic Edition(GROW with SAP)と、専用環境で独自開発ができるPrivate Edition(RISE with SAP)があり、中堅企業から大企業までを対象としています。

建設業では、日本国土開発株式会社が2020年6月にSAP S/4HANAを本番稼働させた事例が公表されています。工事の受注から原価管理までをプロジェクト管理の機能でつなぎ、建設業界標準EDI「CIWEB」と基幹システムを連携して見積・注文・出来高・請求の業務を効率化し、収益認識基準の変更にも対応したとされています。

建設業向けの機能はSAP本体の標準ではなく、パートナーが構築する業種テンプレートを前提とする構成です。プラントエンジニアリング業向けの「HI-KORT for Eng.」(コベルコシステム)、設備工事業向けの「Speed-I for Engineering」(NHS)などがあります。JV会計と建設業会計の様式への対応は公式情報では確認できず、本体・テンプレートとも料金は公開されていません。

30. Dynamics 365 Business Central(日本マイクロソフト株式会社)

Dynamics 365 Business Centralの公式サイト

日本ではMicrosoft認定パートナーが販売と導入を担う、小中規模企業向けのクラウドERPです。財務会計・販売・仕入・在庫・プロジェクト・サービス管理を備え、Excel・Outlook・Teamsと同じ環境で扱えます。公式サイトでは導入企業数を50,000社としています。

建設業専用のエディションはなく、工事の管理には標準の「プロジェクト(Jobs)」モジュールを使います。プロジェクト単位の個別原価計算、予算と実績の対比、進行基準・完成基準による収益認識に対応しますが、工種や実行予算といった建設業の用語に沿った画面・帳票として用意されているわけではありません。

月額費用は年払いで、Essentialsが1ユーザーあたり11,994円、Premiumが16,491円と公開されています。30日間の無料試用もあります。一方、建設業会計の科目・様式やJV管理は認定パートナーによるローカライズやカスタマイズが前提で、標準での対応は公式情報では確認できません。導入・カスタマイズの費用はパートナーとの契約で別途かかります。

31. SMILE V 2nd Edition(株式会社OSK)

SMILE V 2nd Editionの公式サイト

販売管理・会計・人事給与に、CRMやノーコード開発ツールを組み合わせた統合基幹業務システムです。開発は株式会社OSK、販売と導入支援は株式会社大塚商会が担い、クラウド(SMILE V Air)とオンプレミスの双方を提供しています。

工事別の原価集計と実行予算の管理は本体には含まれず、業種特化のオプションを追加する構成です。原価管理の「SMILE V コストマネージャー」は発注・予算・支払・請求・原価管理をまとめて扱い、工事の完成時には未成原価(棚卸資産)科目のデータをもとに完成原価科目への振替伝票を自動作成します。

会計側にはプロジェクト原価管理業務のオプションも用意されています。JV管理と、完成工事高・未成工事受入金といった建設業会計の様式への対応は公式情報では確認できません。料金は本体・オプションとも公開されておらず、販売・会計・人事給与では30日間の無料試用が用意されています。

導入で失敗しないための進め方と注意点

建設業向けERPは、金額の大きさに加えて数年にわたって使い続ける投資です。ここからは、導入後に「現場が使わない」「費用が想定を超えた」という結果を避けるための判断軸を整理します。

どこから入れて、どこを残すか

最初に決めるのは導入範囲です。入り口は大きく2つに分かれます。会計を軸に据えて建設業会計の決算処理から整える方法と、工事管理・原価管理を軸に据えて現場のデータ収集から整える方法です。

決算の締めが遅い、経営事項審査に使う財務諸表の作成に時間がかかる、といった課題が先に立つなら会計側から着手します。工事別の採算が見えない、実行予算が管理されていない、という課題が先なら工事管理側からが自然です。両方を同時に入れ替えると、経理と現場の双方が同時期に新しい運用を覚えることになり、負荷が重なります。

既存システムを残す場合は、残す範囲を決めるだけでは足りません。残した会計ソフトへ仕訳をどの単位で渡すのか、給与システムの労務費をどう工事へ配賦するのか、施工管理アプリの出来高をどちらで入力するのか。この受け渡しの設計を契約前に詰めておかないと、稼働後にCSVの手作業が残り、二重入力を解消するという当初の目的が達成できません。

カスタマイズを広げすぎない

要件定義の場では、現行の帳票や手順をそのまま再現してほしいという要望が各部署から挙がります。これを積み上げると初期費用が膨らみ、さらにバージョンアップのたびに改修が必要になって保守費用も上がります。

有効なのは、要望を「制度上必要なもの」「実務上どうしても必要なもの」「慣習で続けているもの」に仕分けることです。建設業法や税務で求められる帳票は変えられませんが、慣習で続けている様式は標準機能に合わせられる余地があります。標準機能に業務を合わせる前提の製品を選ぶ場合は、この仕分けを社内で先に済ませておくと導入がスムーズに進みます。

現場に定着させる

工事別の採算をリアルタイムで見るには、現場が発注や出来高を入力する必要があります。ところが現場担当者にとって、この入力は施工そのものを進める作業ではありません。入力の手間が増えるだけだと受け止められると、月末にまとめて入力される運用に戻り、原価はリアルタイムでなくなります。

定着させるには、現場側の入力が現場自身の利益になる形にすることです。注文書の作成や出来高の申請がシステム上で完結すれば、紙とExcelでの作業がその分なくなります。スマートフォンやタブレットから入力できるか、現場で使える操作画面かどうかは、機能一覧よりも定着を左右する要素です。導入前のデモでは、経理担当者だけでなく現場担当者にも操作してもらうことをおすすめします。

データ移行と稼働時期

移行対象は、取引先マスタ、工種・原価要素の体系、進行中の工事の工事台帳と原価実績、会計の期首残高です。過去の完成工事をどこまで遡って移すかは費用と期間に直結するため、参照できれば足りるものは旧システムの閲覧環境を残すという選択もあります。

稼働時期は期首に合わせるのが基本です。期の途中で会計システムを切り替えると、同一期の会計データが新旧に分かれ、決算の集計が煩雑になります。工事管理から先に入れる場合も、進行中の工事を途中から新システムへ移すと実行予算と実績が分断されるため、大型工事の着工時期と重ねられるかを確認しておくと移行の負担を抑えられます。

まとめ

建設業向けERPを選ぶ出発点は、自社がどのタイプを検討すべきかを見極めることです。全社の基幹業務をまとめて刷新するのか、工事原価の管理から段階的に入れるのか、少人数で運用できる範囲に絞るのか、それとも建設以外の事業も含めて汎用ERPで揃えるのか。この分岐が決まると、比較すべき製品は大きく絞り込めます。

そのうえで確認したいのが、工事原価管理とJV管理が標準機能か追加実装か建設業会計の科目と決算書類にどこまで対応するか既存の会計・給与・施工管理システムとどう連携するか、という3点です。いずれも「対応可能」という説明の中身を自社の実務に当てはめて確かめる必要があり、ここを詰めておくと稼働後の手戻りを防げます。

費用は、少人数向けのクラウド製品なら月額1万円前後から、全社統合を担う製品では個別見積が中心です。金額の幅が大きいぶん、複数の製品から資料を取り寄せて要件と費用を並べて比べることが、判断の精度を上げる近道になります。まずは自社のタイプに当てはまる製品の資料を確認し、社内での検討を進めてください。

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よくある質問(FAQ)

Q. 建設業向けERPとは何ですか?

A. 建設業向けERPとは、受注から実行予算の作成、原価の集計、出来高請求、完成・入金までを工事単位でつなぎ、その数字をそのまま建設業会計の決算処理へ引き継ぐ基幹システムです。

部門別・製品別に損益を見る一般的なERPと違い、工事台帳を軸に据えている点が特徴です。完成工事高・未成工事支出金といった建設業固有の勘定科目や、JV(共同企業体)の出資比率に応じた会計処理を標準で持つかどうかが、汎用の製品との分かれ目になります。なお製品名では「建設業基幹システム」「工事管理システム」といった呼称も使われますが、呼び方の違いが機能の違いを表しているとは限りません。

Q. 汎用ERPでも建設業の工事原価管理やJV管理はできますか?

A. 汎用ERPでも、プロジェクト単位の原価管理を持つ製品であれば工事原価管理の骨格はそのまま使えます。ただし建設業会計の科目・様式とJV管理は標準機能ではなく、パートナーの業種テンプレートやオプション製品、別システムとの連携で補う構成になります

したがって判断材料は、JV案件を受注するか、建設業法の様式に沿った決算書類を自社で作成する必要があるかの2点です。どちらも該当しない事業構成であれば、汎用ERPで足りる余地があります。逆に該当する場合は、どこまでが標準機能で、どこからが追加実装になるのかを提案の段階で線引きしておかないと、費用と保守範囲の見積もりが後から崩れます。

Q. 建設業向けERPは従業員10名程度の小規模な工務店でも導入できますか?

A. 建設業向けERPには、少人数の会社でも運用できる範囲に機能を絞った月額制のクラウド製品があり、月額1万円前後から導入できます

このタイプは顧客管理・見積・実行予算・発注・請求・工事台帳を一通り備え、経理と工事管理を兼務する担当者が1人でも回せる操作性を重視しています。一方で会計機能は自社で持たず外部の会計ソフトへ連携する構成が主流で、JV管理に対応する製品も限られます。住宅・リフォームなど対象業態を明確に定めている製品が多いため、自社の工事内容と合うかを先に確認してください。

Q. 無料で使える建設業向けERPはありますか?

A. 無料で使い続けられるプランを公式に示している製品は、本記事で取り上げた31サービスでは確認できませんでした。一方で、14日間から2か月程度の無料トライアル・無料体験を用意している製品は複数あります

トライアルは機能一覧を眺めるだけで終わらせず、自社の実際の工事を1件登録して、実行予算の作成から発注・原価の計上、請求までを通してみることをおすすめします。工種体系を自社の呼び方で登録できるか、現場担当者がスマートフォンから入力できるかは、この段階で判断できる要素です。

Q. 建設業向けERPは既存の会計ソフトや施工管理アプリと連携できますか?

A. 本記事で取り上げた31サービスの多くは、会計機能を自社で持つか、会計システムとの連携を公式に示しています。ただし連携先の製品名や方式を公開していない製品、会計連携そのものを公式に示していない製品もあります。施工管理アプリとの連携も製品ごとに差が大きいため、いずれも比較表の「会計機能」列で確認したうえで、個別に問い合わせるのが確実です。

確認したいのは、API連携なのかCSVファイルの受け渡しなのか、連携先の製品名が公式に明示されているのか個別対応になるのか、という点です。とくに施工管理アプリとの境界にあるのが発注と出来高で、どちらで入力してどちらへ流すかを決めておかないと、同じ数字を二度入力することになります。現場側のツールを入れ替えたくない場合は、連携できない前提で入力の起点をどちらかに寄せる設計も選択肢になります。

Q. 建設業向けERPのデータを顧問税理士や会計事務所に渡せますか?

A. 建設業向けERPから顧問税理士へデータを渡す方法は、製品が会計機能を自社で持つ構成か、外部の会計ソフトへ仕訳を渡す構成かによって変わります。前者では建設業会計の決算書類まで自社で作成して共有でき、後者では仕訳データを会計事務所側の会計ソフトへ取り込んでもらう形になります。

確実なのは、顧問税理士が使っている会計ソフトの製品名を伝えたうえで、連携の可否と方式(API連携かCSVか)をベンダーに確認することです。CSVでのやり取りになる場合は、誰がいつ出力して誰が取り込むのかという運用まで決めておくと、月次の締めが滞りません。会計事務所に工事別の原価を見てもらいたい場合は、閲覧用アカウントを付与できるかも確認材料になります。

Q. 建設業向けERPで決算変更届や経営事項審査に使う財務諸表は作成できますか?

A. 建設業法施行規則の別記様式(貸借対照表・損益計算書・完成工事原価報告書・注記表)に沿った出力に対応するかは製品によって異なり、経営事項審査向けの機能を上位プランに限定している製品もあります

これらの様式は、建設業許可の申請時、毎事業年度終了後の変更届出、そして経営状況分析の申請で提出が求められるものです。製品を評価する際は、完成工事未収入金・未成工事支出金といった科目名に対応しているかだけでなく、材料費・労務費・外注費・経費の4区分での集計と、様式どおりの帳票出力までできるかを確認してください。詳しくは建設業会計と収益認識基準への対応をどう確認するかで解説しています。

Q. 社内にITに詳しい担当者がいなくても建設業向けERPを運用できますか?

A. 建設業向けERPを情報システム部門のない体制で運用できるかは、導入時の設定と稼働後の問い合わせをベンダーがどこまで担うか、そして建設業の会計実務を理解した担当者が付くかで決まります

ただし、工種体系と原価要素の整理、共通費の配賦ルールの決定、取引先マスタの名寄せは会社ごとの決めごとで、ベンダーが代行できません。ITに詳しい人材の有無にかかわらず、この整理を担当する人を社内で決めておく必要があります。

稼働後の負担を左右するのは、操作教育の提供形態と問い合わせ窓口です。リモート研修を回数の制限なく無料で提供する製品もあれば、研修が別料金の製品もあるため、見積の段階で研修の回数・形式・費用と、稼働後の問い合わせ窓口の対応時間まで確認しておくと想定外の出費を防げます。クラウド型であれば、サーバーの運用と法改正への対応はベンダー側が担います。

Q. クラウド型の建設業向けERPはセキュリティ面で問題ありませんか?

A. クラウド型の建設業向けERPを検討する際は、製品一般の安全性より、工事ごと・部署ごとにどこまで閲覧と操作を制限できるかを先に確認するほうが実務的です

建設業では、実行予算と原価は社内でも閲覧範囲を絞りたい情報である一方、協力会社に発注や出来高申請の画面を開放する運用も想定されます。そのため、権限設定をどの粒度まで細かく設定できるか、誰がいつ何を変更したかの操作ログが残るか、現場異動や退職に伴うアカウント管理をどう運用するか、データのバックアップと復旧の仕組みはどうなっているかが確認の対象になります。

社内ネットワーク内で完結させたい要件があるならオンプレミス型という選択肢もありますが、その場合はサーバーの調達・更新とセキュリティ運用を自社で担うことになります。どちらが安全かではなく、自社が運用を担えるかで判断してください。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。
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