「自社で円建てのステーブルコインを発行したい」「決済や送金にステーブルコインを活用したい」。改正資金決済法の施行や、JPYC・大手金融機関の相次ぐ参入を受けて、こうした検討を始める企業が増えています。
ただし、ステーブルコインの発行は誰でも自由に行えるわけではありません。発行できる主体や裏付け資産の管理方法が法律で定められており、技術・法規制・運用のそれぞれで専門性が求められます。自社単独で発行を完結させるのは、決して容易ではありません。
そこで本記事では、ステーブルコインの基礎や種類から、日本の発行状況と規制、発行の流れ、そして発行を支える「発行支援サービス」の比較・選び方までを一気通貫で解説します。発行体・発行基盤・受託発行や規制対応コンサルといったタイプごとに、おすすめのサービスを横並びで比較し、自社に合う相談先を見極められるよう整理しました。
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目次
ステーブルコインとは?発行を検討する企業が押さえる基礎
ステーブルコイン(stablecoin)とは、法定通貨や国債などの資産を裏付けとして、価格を一定の水準に安定させるよう設計されたデジタル通貨です。日本円や米ドルといった通貨に1対1で価値を連動させることで、ビットコインなどの暗号資産にみられる激しい価格変動を抑えている点が特徴です。
ブロックチェーン上で発行・移転されるため、24時間365日の送金や、プログラムによる自動決済が可能になります。企業にとっては、国際送金コストの削減や企業間決済の効率化、新たなデジタル金融サービスの基盤として活用が期待されています。
日本では2023年6月に施行された改正資金決済法により、法定通貨と価値が連動するステーブルコインが「電子決済手段」として法的に位置づけられました。発行・流通の枠組みが整備されたことで、事業会社や金融機関による発行・活用の検討が現実的な選択肢になっています。
ステーブルコインの種類と仕組み
ここからは、ステーブルコインがどのような仕組みで価値の安定を実現しているのか、裏付けの方式による分類を見ていきます。発行を検討する際は、自社がどの方式に該当するのか、日本の法制度ではどの方式が認められるのかを理解しておくことが出発点になります。
裏付け方式による4つの分類
ステーブルコインは、価値を安定させるための裏付け方式によって、主に次の4つに分類されます。
- 法定通貨担保型:日本円や米ドルなどの法定通貨や預金・国債を裏付けとする方式。最も普及しており、JPYCやUSDC、USDT、EURC(ユーロ連動)などが該当します。
- 暗号資産担保型:ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産を担保にする方式。価格変動に備えて担保を多めに預け入れるのが一般的です。
- 無担保型(アルゴリズム型):担保を持たず、供給量をアルゴリズムで調整して価格を安定させる方式。過去には大規模な価格崩壊(ディペッグ)を起こした例もあります。
- コモディティ型:金(ゴールド)などの実物資産を裏付けとする方式で、XAUT(金連動)などが該当します。
このうち、日本の改正資金決済法が定める「電子決済手段」に該当するのは、法定通貨に価値を連動させる法定通貨担保型です。暗号資産担保型や無担保型は電子決済手段の枠組みの外にあり、暗号資産などとして別の規制に整理されます。自社で円建てステーブルコインの発行を検討する場合は、法定通貨担保型が前提になります。
日本のステーブルコイン発行状況と主要銘柄・発行体
ここからは、日本国内で誰がどのようにステーブルコインを発行しているのか、最新の発行状況と主要な銘柄・発行体を整理します。自社の発行を構想するうえで、先行事例がどのスキームを採っているかは重要な参考材料になります。
JPYCは、2025年10月27日に発行が始まった国内初の円建てステーブルコインです。発行元のJPYC株式会社は2025年8月18日付で資金決済法上の資金移動業者(関東財務局長第00099号)として登録され、JPYCを同法第2条第5項に定める電子決済手段として発行しています。発行価値は日本円の預貯金および国債によって、発行残高の100%以上が保全されています。
出典:日本円ステーブルコイン「JPYC」および発行・償還プラットフォーム「JPYC EX」を正式リリース|JPYC株式会社
2026年6月24日には、SBIグループが国内初の信託型の円建てステーブルコイン「JPYSC」の提供を開始しました。発行体はSBI新生信託銀行で、取扱いは電子決済手段等取引業者であるSBI VCトレードが担います。発行体と取扱業者が分かれる、信託を用いたスキームの代表例です。
このほか、三菱UFJ・三井住友・みずほの3メガバンクが信託型のステーブルコインの共同発行に向けて取り組むなど、銀行や信託会社による発行の動きも広がっています。報道や各社の公表をもとにすると、円建てステーブルコインの発行は「資金移動業者が発行するタイプ」と「信託銀行が発行する信託型」という2つの形が中心になりつつあります。
日本のステーブルコイン規制と発行スキーム
自社でステーブルコインを発行するには、改正資金決済法の枠組みを正しく理解する必要があります。ここでは、電子決済手段の法的な位置づけ、発行できる主体、発行スキームの違いを、条文と公的資料に基づいて整理します。
改正資金決済法と「電子決済手段」の位置づけ
2023年6月1日に施行された改正資金決済法により、法定通貨と価値が連動するステーブルコインは「電子決済手段」として定義されました。国内で電子決済手段の仲介などを業として行うには、資金決済法に基づく登録が必要です。
出典:電子決済手段等取引業・電子決済等取扱業を行うみなさまへ|金融庁
電子決済手段の定義は、資金決済法第2条第5項に号を分けて定められています。条文では次のように規定されています。
5 この法律において「電子決済手段」とは、次に掲げるものをいう。
出典:資金決済に関する法律 第2条第5項|e-Gov法令検索
一 物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(…前払式支払手段その他これらに類するものとして内閣府令で定めるもの(…)を除く。…)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(第三号に掲げるものに該当するものを除く。)
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(次号に掲げるものに該当するものを除く。)
三 特定信託受益権
四 前三号に掲げるものに準ずるものとして内閣府令で定めるもの
実務上は、第1号・第2号に該当する資金移動業型・銀行型と、第3号の特定信託受益権にあたる信託型に整理して語られることが多くあります。なお、コンビニなどで使う前払式支払手段は条文上、電子決済手段から除外されている点に注意が必要です。
発行できる主体と発行スキームの違い
電子決済手段の発行・償還は為替取引に該当するため、発行できる主体は限られています。金融庁の説明資料では、発行者を次のように整理しています。
【デジタルマネー類似型】(=電子決済手段)等 … 発行者 銀行・資金移動業者 信託会社
出典:資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料|金融庁
つまり、自社が金融機関でない事業会社の場合、自前で発行体になるのは難しく、資金移動業の登録を取得するか、銀行・信託会社などの発行体と組む形が現実的です。発行スキームは、大きく次の2つに分かれます。
- 資金移動業型・銀行型:資金移動業者や銀行が発行する方式です。JPYCがこの形に該当し、裏付け資産を預貯金・国債で保全します。第二種資金移動業を用いる場合、1回あたりの取扱額に上限が設けられるなど、為替取引の規制が及びます。
- 信託型(特定信託受益権):信託銀行が発行体となり、利用者から預かった金銭を信託する方式です。JPYSCがこの形にあたります。資金決済法では、預かった金銭の一定割合以上を預貯金で管理し、残りを国債などで運用することが求められています。送金・保有額の上限が設けられない設計も可能で、大口の利用に向くとされています。
信託型の裏付け資産については、資金決済法第2条第9項が運用要件を定めています。
受託者が信託契約により受け入れた金銭の総額のうち預貯金により管理する額の当該金銭の総額に占める割合が内閣府令で定める割合以上であること、当該金銭の総額のうち当該預貯金により管理する額以外の額を内閣府令で定める国債証券その他の内閣府令で定める債券(…)の保有により運用するものであること
出典:資金決済に関する法律 第2条第9項|e-Gov法令検索
どちらのスキームを選ぶかは、想定する取扱規模や利用シーン、自社が発行体になるか外部に委ねるかによって変わります。次の選択肢の整理が、発行支援サービスを選ぶ際の土台になります。
発行スキームと支援先のマッピング(誰がどこを担うか)
ステーブルコインの発行は、ひとつの会社がすべてを担うとは限りません。発行体・発行基盤・規制対応・取扱業者といった役割が分かれており、自社がどこを担い、どこを外部に委ねるかを設計する必要があります。役割と担い手の対応を整理すると、次のようになります。
| 役割 | 担うのは誰か | 外部に委ねられる発行支援 |
|---|---|---|
| 発行体(償還義務を負う主体) | 資金移動業者・銀行・信託会社 | 受託発行・信託スキームの組成支援 |
| 発行・管理の基盤(ブロックチェーン) | 発行基盤ベンダー | 発行・償還システム、裏付資産管理、帳票 |
| 規制対応・登録支援 | 自社+専門コンサル | 登録支援、AML/CFT態勢構築、制度設計 |
| 取扱・流通(仲介) | 電子決済手段等取引業者 | 取扱業者との連携、ウォレット連携 |
たとえばJPYSCでは、SBI新生信託銀行が発行体、SBI VCトレードが取扱業者という形で役割が分担されています。自社が事業会社であれば、発行体機能や基盤、規制対応の多くを発行支援サービスに委ねることになります。この後のタイプ分類は、この役割分担に対応しています。
企業がステーブルコインを発行・活用するメリット
ここからは、企業が自社でステーブルコインを発行・活用することで得られる便益を、具体的な活用シーンとあわせて見ていきます。発行には相応のコストと体制が必要なため、何を実現したいのかを明確にすることが、発行を検討する出発点になります。
主なメリット
- 送金・決済コストの削減:仲介機関を介さずブロックチェーン上で価値を移転できるため、特に国際送金や少額・高頻度の決済でコストを抑えられます。
- 24時間365日・即時の資金移動:銀行の営業時間や決済システムの稼働時間に縛られず、リアルタイムでの送金・受取が可能になります。
- プログラムによる自動化:スマートコントラクトと組み合わせることで、条件を満たした時点で自動的に支払うといった決済の自動化を実現できます。
- 新たなデジタル事業の基盤:自社経済圏でのポイント・通貨や、RWA(実物資産のトークン化)との連携など、新規ビジネスの土台として活用できます。
活用シーン・ユースケース
具体的な活用シーンとしては、海外拠点・取引先との国際送金のコストとスピードの改善が代表的です。グループ会社間やサプライチェーン上の企業間決済を効率化する用途や、自社サービス内での決済・ポイント基盤としての活用も進みつつあります。
さらに、不動産や債権をトークン化するRWAや、分散型金融(DeFi)との連携を見据え、その決済通貨としてステーブルコインを位置づける構想も広がっています。自社のどの業務・事業に効くのかを見極めることが、発行スキームや支援先の選定につながります。
RWA(実物資産のトークン化)は、不動産や債券などの現実資産をブロックチェーン上で扱えるようにする仕組みで、その取引・決済の通貨としてステーブルコインが想定されています。RWAの仕組みやトークン化の流れ、金融商品としての事例は、以下の記事で詳しく解説しています。
ステーブルコイン発行の注意点・リスクと対応
メリットの一方で、発行には固有のリスクと法規制上の義務が伴います。検討段階で押さえておきたい主な注意点を整理します。
- 価格乖離(ディペッグ)リスク:裏付け資産の管理や償還の仕組みが不十分だと、額面との乖離が生じる恐れがあります。法定通貨担保型では、裏付け資産の確実な保全と即時償還の設計が要となります。
- 規制・コンプライアンス対応:発行・取扱には登録や、マネーロンダリング・テロ資金供与対策(AML/CFT)の態勢構築が求められます。対応を誤ると行政処分のリスクがあります。
- 裏付け資産の管理義務:スキームに応じて、預貯金・国債による保全や分別管理が法律で義務づけられています。継続的な管理・報告の体制が必要です。
- 技術・セキュリティリスク:スマートコントラクトの不具合や秘密鍵の管理不備は、資産の流出に直結します。発行基盤の堅牢性と運用設計が問われます。
これらのリスクは、法規制・技術・運用の各面を外部の専門サービスで補うことで、相当程度まで抑えられます。自社単独で抱え込まず、どこを委ねるかを設計することが、発行を現実的に進める鍵となります。
自社でステーブルコインを発行する流れと必要な体制
ここからは、企業が実際にステーブルコインの発行に至るまでの流れと、各段階で必要になる体制を整理します。どの工程を自社で担い、どこを発行支援サービスに委ねるかをイメージしながら読み進めてください。
- 構想・ユースケース設計:どの業務・事業で使うのか、想定する取扱規模や利用者を定めます。ここで採るべきスキーム(資金移動業型か信託型か)の方向性が固まります。
- スキーム・規制対応の検討:自社が発行体になるのか、外部の発行体と組むのかを決め、必要な登録やAML/CFT態勢を設計します。専門コンサルの支援が効く工程です。
- 発行・管理基盤の構築:発行・償還システム、裏付資産管理、対応ブロックチェーンの選定を行います。発行基盤ベンダーの利用が一般的です。
- 取扱・流通の連携:取扱業者やウォレット、決済システムとの連携を整え、利用者が使える状態にします。
- 発行・運用開始:発行後も、裏付資産の管理・報告やリスクモニタリングを継続します。
これらの工程のうち、規制対応・基盤構築・運用は専門性が高く、自社単独でそろえるのは負担が大きい領域です。次章では、こうした工程を支える発行支援サービスのタイプと選び方を解説します。
発行支援サービスのタイプと選び方
ここからは、ステーブルコインの発行を支える「発行支援サービス」を、担う役割によってタイプ分けし、選び方の比較ポイントを整理します。自社がどのタイプを必要としているのかを見極めることが、相談先を絞り込む近道になります。
発行支援サービスの3つのタイプ
発行支援サービスは、発行のどの役割を担うかによって、大きく3つのタイプに分けられます。
- 発行体型:自らステーブルコインを発行し、その活用・導入も支援するタイプです。すでに流通している銘柄を自社サービスに取り込みたい場合の相談先になります。
- 発行基盤・プラットフォーム型:発行・償還システムや裏付資産管理など、ステーブルコインを発行・運用するための基盤を提供するタイプです。自社ブランドや金融機関向けの発行を技術面から支えます。
- 受託・規制対応コンサル型:登録支援・規制対応・AML/CFT態勢構築・システム構築などを伴走して支援するタイプです。発行体になるための制度設計から相談したい場合に向きます。
選び方の比較ポイント
自社に合う発行支援サービスを選ぶ際は、次のポイントを比較すると判断しやすくなります。いずれも、自社が担う範囲と委ねたい範囲を明確にしたうえで照らし合わせることが重要です。
- 対応する発行スキーム:資金移動業型・信託型のどちらに対応しているか。自社が想定する取扱規模や上限の要否と合っているかを確認します。
- 伴走範囲(どこまで担うか):規制対応・基盤構築・運用のどこを担うか。自社で不足する工程をカバーできるかが選定の軸になります。
- 対応ブロックチェーン:想定する活用先のチェーンに対応しているか、複数チェーンに展開できるかを確認します。
- 規制対応・コンプライアンスの知見:改正資金決済法やAML/CFTへの対応実績があるか。金融機関・当局とのやり取りを見据えた知見の有無が、特に重要になります。
- 実績・導入事例:国内のステーブルコインや金融機関向けの実績があるか。新興領域だからこそ、具体的な実績の有無が信頼の判断材料になります。
とはいえ、これらの観点を自社だけで漏れなく整理するのは負担が大きいものです。次の診断ツールでは、いくつかの質問に答えるだけで、自社に合う発行支援のタイプの当たりをつけられます。
【比較表】おすすめの発行支援サービスを横並びで比較
ここからは、ステーブルコインの発行支援サービスを横並びで比較します。発行体・発行基盤・受託/規制対応コンサルの各タイプから、おすすめのサービスを取り上げ、対応スキームや伴走範囲、実績などを一覧にしました。気になるサービスは、表のサービス名から個別の紹介へ移動できます。
| サービス名 | JPYC(JPYC EX) | Progmat Coin | G.U. Coin Studio | Digital Platformer(LITA/KAN) | Simplex Stablecoin | Datachain | finoject | ソラミツ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 支援タイプ | 発行体型 | 発行基盤・プラットフォーム型 | 発行基盤・プラットフォーム型 | 発行基盤・プラットフォーム型 | 発行基盤・プラットフォーム型 | 発行基盤・プラットフォーム型 | 受託・規制対応コンサル型 | 受託・規制対応コンサル型 |
| 対応スキーム | 資金移動業型 (1号電子決済手段) | 信託型 (特定信託受益権/3号電子決済手段) | 預金請求権型/特定信託受益権型/前払式支払手段型 | 預金型ステーブルコイン デジタル地域通貨・商品券 | 資金移動業型(対応済) 預金型・信託型(対応予定) | 発行は担わず、発行後の相互運用・送金を支援 | 発行スキーム設計を伴走支援 (特定の基盤は持たない) | 発行・償還・資金管理スキーム策定を支援 |
| 対応ブロックチェーン | Ethereum / Polygon / Avalanche | Ethereum優先 複数パブリックチェーン | Japan Open Chain (Ethereum/EVM互換) | Hyperledger Iroha (パーミッション型) | マルチチェーン (具体名は非公開) | 複数チェーンを相互接続 (IBC / LCP / TOKI) | 特定基盤に依存しない (コンサル) | Hyperledger Iroha (自社原開発) |
| 伴走範囲 | 自社銘柄の発行・償還+他社サービスへの活用・導入支援 | 信託型SCの発行・管理基盤を提供(発行体は信託銀行) | 金融機関向けの発行・管理システム。既存勘定系・会計システムと連携 | 地域金融機関・自治体向けの発行SaaS基盤を提供 | 発行体・流通業者向けの業務システムを受託構築(発行・償還・裏付資産管理) | 発行後の相互運用・送金に特化。発行されたSCの複数チェーン間移転・クロスボーダー送金を技術面で支援 | ライセンス登録・規制対応・AML/CFT態勢・システム構築をワンストップ支援 | 規制要件整理・スキーム策定からPoC・実装・運用まで一気通貫で支援 |
| 規制対応の強み | 資金移動業者として国内初の発行実績 | 信託型・全額信託保全に対応 | 預金請求権型・信託型・前払式の複数スキームに対応 | 地域金融機関・自治体向けの預金型に特化 | KYC/AML・制裁リスト対応を業務フローに内蔵 | 相互運用・送金が領域(発行の規制対応は対象外) | 登録支援・AML/CFT態勢構築に強い | 資金決済法の要件整理・AML/CFT設計に対応 |
| 実績 | 国内初の電子決済手段としての円建てSC発行(2025年10月発行開始) | 三菱UFJ信託銀行ほかが出資する中立基盤。JPYC(信託型)等を共同検討 | あおぞら銀行と信託型aJPYをPoCで実証(全額償還済)/きらぼし・みんなの銀行・四国銀行と実証 | 北國銀行「トチカ」(国内初の預金型SC、2024年4月)への技術提供 | JPYCの取引システム構築。金融IT事業者(シンプレクス)が母体 | Project Pax(Progmatと共同、Swift連携クロスボーダーSC送金) | 金融庁「FinTech実証実験ハブ」支援案件に決定(2026年2月) | カンボジアCBDC「バコン」(2020年〜、2024年末3,000万口座) |
| 料金 | 発行・償還手数料は無料(1JPYC=1円) | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式資料を見る | 公式サイト |
※上記は一般的な傾向です。最新の対応範囲・料金については各社の情報をご確認ください。
おすすめの発行支援サービスの個別紹介
ここからは、比較表で取り上げた発行支援サービスを、タイプ別に個別紹介します。それぞれの強みや対応範囲を確認し、自社の発行構想に合う相談先を見つけてください。
発行体型
自らステーブルコインを発行し、その活用・導入も支援するタイプです。すでに流通している円建てステーブルコインを、自社のサービスや決済に取り込みたい企業に向いています。
1. JPYC(JPYC株式会社)

JPYC株式会社が発行する、日本円と1対1で価値が連動する円建てステーブルコインです。同社は2025年8月18日に資金移動業者(関東財務局長第00099号)として登録し、2025年10月27日から改正資金決済法上の「電子決済手段」に該当するJPYCの発行・償還を開始しました。発行・償還の窓口となるプラットフォーム「JPYC EX」も同社が運営しています。
JPYCは、自社で銘柄を発行する「発行体」であると同時に、その銘柄を他社のサービスへ取り込む活用・導入の相談先にもなります。すでに流通しているJPYCを自社の決済・送金やサービスに組み込みたい企業にとっては、ゼロから発行体を目指すのではなく、既存銘柄を取り込む形での導入が選択肢になります。
裏付け資産は、発行残高の100%以上を日本円の預貯金・国債で保全し、1JPYC=1円での発行・償還を制度面で担保しています。対応チェーンはEthereum・Polygon・Avalancheで、順次拡大予定です。法人口座の開設にも対応し、TISとの協業のように、サービス提供企業が自前で決済基盤を構築せずにJPYC決済を導入できる枠組みづくりも進めています。
2026年1月末時点でホルダー(ウォレットアドレス)数は8万アドレス超に達し、累計発行額は同年2月に13億円を突破しました。発行スキームやチェーン、法人向けの導入手順といった詳細は、資料で確認できます。
発行基盤・プラットフォーム型
発行・償還システムや裏付資産管理などの基盤を提供するタイプです。自社ブランドのステーブルコインや、金融機関としての発行を技術面から実現したい企業に向いています。
2. Progmat Coin(株式会社Progmat)

Progmat Coinは、信託型(特定信託受益権)のステーブルコインを、信託銀行を発行体としてパブリックチェーン上に発行・管理するための基盤です。提供元の株式会社Progmatは、三菱UFJ信託銀行が筆頭株主となり、NTTデータグループや三井住友信託銀行、JPX総研などが出資する合弁会社で、特定の発行体に閉じない共通基盤としての位置づけを訴求しています。
基盤自体がステーブルコインを発行するのではなく、発行を依頼する企業が「JPYC(信託型)」やXJPY/XUSDといった独自銘柄を発行できる仕組みです。裏付けとなる法定通貨を全額信託財産として保全し、利用者が常に全額の償還を請求できる利用者保護設計を採る点が特徴です。自社ブランドの円建てステーブルコインを、信託型スキームで発行したい企業の相談先になります。
対応チェーンはEthereumを優先し、複数のパブリックチェーンに展開する方針です。料金は金融機関・事業者向けの個別対応のため公開されておらず、導入条件は問い合わせが前提となります。
3. G.U. Coin Studio(G.U.テクノロジーズ株式会社)

金融機関がステーブルコインを発行することを想定した、発行・管理システムです。G.U.テクノロジーズ株式会社(親会社はG.U.Group株式会社)が開発し、トークンの発行・流通を一元管理しながら、既存の勘定系システムや会計システムと連携できる点を訴求しています。
発行・流通の基盤には、同社グループが運用するEthereum(EVM)互換の国産パブリックチェーン「Japan Open Chain」を用います。預金請求権型・特定信託受益権型・前払式支払手段型の3つのスキームに対応し、MetaMaskなど汎用のEthereumウォレットでそのまま利用できる設計です。
あおぞら銀行とは、特定信託受益権型ステーブルコイン「aJPY(仮称)」の実証実験を2025年2月に完了しています(実験後に全額償還済み)。きらぼし・みんなの銀行・四国銀行とも実証を行っており、銀行による円建てステーブルコイン発行を技術面から支える立ち位置です。料金は金融機関向けの個別導入のため、要お問い合わせとなります。
4. Digital Platformer(Digital Platformer株式会社)

地域金融機関や自治体を主な対象に、デジタル地域通貨・デジタル商品券・預金型ステーブルコインを発行できるSaaS基盤を提供するのが、Digital Platformer株式会社です。基盤には、日本発祥でカンボジア中央銀行のデジタル通貨にも採用されたパーミッション型ブロックチェーン「Hyperledger Iroha」を採用しています。
代表的な実績は、株式会社北國銀行が2024年4月に開始した国内初の預金型ステーブルコイン「トチカ」への技術提供です。利用者が銀行預金口座からチャージするとトチカが発行され、加盟店での支払いに使える仕組みで、発行主体は北國銀行、Digital Platformerが技術を担う役割分担となっています。
大規模なシステム投資なしで発行できる点を訴求しており、地域金融機関や自治体のデジタル通貨・預金型ステーブルコインの発行に用途を絞っているのが特徴です。料金は個別見積もりのため、要お問い合わせとなります。
5. Simplex Stablecoin(シンプレクス株式会社)

Simplex Stablecoinは、ステーブルコインを扱う発行体・流通業者に向けた、発行・償還の業務システムです。提供元のシンプレクス株式会社は、メガバンクや大手証券のシステム構築を手がけてきた金融IT事業者で、KYC/AML・制裁リスク対応といった規制要件を業務フローに組み込んだ設計を強みとしています。
機能は、ステーブルコインの発行・償還、裏付資産管理、リスクモニタリングに加え、eKYCや反社チェックといった外部サービスと連携する口座管理、ウォレット管理で構成されます。発行体(1号電子決済手段)と流通業者の双方に対応し、両ライセンスを同時に扱う構成も可能です。
対応スキームは資金移動業型を現状対応とし、預金型・信託型は対応予定とされています。グループのコンサルティングファーム「クロスピア」と組み、事業企画から構築・運用まで一体で支援する体制です。受託構築の形態のため、料金は要お問い合わせとなります。
6. Datachain(株式会社Datachain)

株式会社Datachainは、異なるブロックチェーン間の相互運用(インターオペラビリティ)を実現するクロスチェーン技術の専門企業です。東証スタンダード上場の株式会社Speeeを親会社とし、IBC・LCP・クロスチェーンブリッジ「TOKI」などの技術を開発しています。
ステーブルコインの文脈では、発行そのものを担うのではなく、発行されたステーブルコインを複数チェーン間で移転し、国際送金を成立させる「発行後」のレイヤーを技術面で支える立ち位置です。発行・発行管理は、組む相手であるProgmatなどが担います。
代表案件は、Progmatと共同で進めるクロスボーダー送金基盤「Project Pax」で、Swiftの既存フレームワークを用いたステーブルコイン送金を技術検証しています。発行ライセンスや発行体機能を自社で提供する事業者ではないため、発行を相互運用・送金の面から補完したい場合の相談先となります。料金はB2Bの個別見積もりで、要お問い合わせです。
受託・規制対応コンサル型
登録支援・規制対応・システム構築などを伴走して支援するタイプです。発行体になるための制度設計や、AML/CFT態勢の構築から相談したい企業に向いています。
7. finoject(株式会社finoject)

finojectは、暗号資産・ステーブルコイン・デジタル証券(セキュリティトークン)といったWeb3金融領域に特化したコンサルティングファームです。ライセンスの登録支援から、コンプライアンス態勢・AML/CFT態勢の構築、システム構築までを伴走でワンストップ支援する点を特徴としています。
代表は日本興業銀行出身で、bitFlyerホールディングスの代表取締役社長や日本暗号資産取引業協会の会長を歴任した三根公博氏が務めます。規制当局対応と業界ネットワークに通じた実務経験を背景に、発行体になるための制度設計から実装までを一貫して相談できるのが強みです。
2026年2月には、暗号資産・ステーブルコイン取引におけるAML高度化の取り組みが金融庁「FinTech実証実験ハブ」の支援案件に決定しています。料金は個別見積もり方式で、初期費用・月額費用とも要お問い合わせとなります。
受託・規制対応コンサルを選ぶうえでは、ライセンス取得そのものと、取得後に実務が回る態勢づくりとを切り分けて捉える視点が役立ちます。MCB FinTechカタログの取材に対し、同社の三根氏は支援で重視している点を次のように語っています。

ライセンス取得はあくまでスタートラインであり、取得後に実際の業務が滞りなく回ることがゴールです。そのために、態勢構築の段階から実務を想定した設計を行い、マニュアルやフローを作って終わりではなく、実際に運用してみた際に起こりうる課題まで想定した仕組みづくりを心がけています。
8. ソラミツ(ソラミツ株式会社)

ソラミツ株式会社は、2025年10月に国内事業者向けのステーブルコイン発行コンサルティング事業を開始しました。資金決済法等の要件整理やAML/CFT設計、発行・償還・資金管理スキームの策定といった規制対応から、トークンモデルや決済フローの設計、Hyperledger Iroha上でのPoC・実装、運用・監視までを一気通貫で支援します。
中核となるブロックチェーン基盤「Hyperledger Iroha」は同社が原開発したもので、1取引あたり2秒以下のファイナリティと数千TPSの処理能力を公式LPで掲げています。自社が原開発した基盤の上で、設計から運用までを開発支援込みで相談できるのが特徴です。
同グループはカンボジア国立銀行との中央銀行デジタル通貨(CBDC)「バコン」の共同開発実績を持ちます。ただしバコンはグループの基盤技術・CBDCの実績であり、本コンサルティング事業の導入実績ではない点には留意が必要です。料金は公式に掲載がなく、要お問い合わせとなります。
まとめ
ステーブルコインの発行は、改正資金決済法のもとで「電子決済手段」として枠組みが整い、事業会社や金融機関にとって現実的な選択肢になりました。発行できる主体は限られ、資金移動業型・信託型といったスキームごとに要件や制約が異なります。
自社単独で発行を完結させるのは容易ではないため、発行体型・発行基盤型・受託/規制対応コンサル型といった発行支援サービスを、自社が担う範囲と委ねたい範囲に応じて使い分けることが現実的です。まずは想定するユースケースとスキームを定め、そのうえで対応範囲・実績の合うサービスを比較するとよいでしょう。
発行スキームや体制がまだ固まっていない場合は、制度設計から伴走する受託・規制対応コンサル型に相談して構想を固めるのが入口になります。発行体になるのか既存の発行体と組むのかが見えてきたら、発行基盤型や発行体型のサービスと具体的な実装を詰めていく流れが取り組みやすいでしょう。
各サービスの詳しい対応範囲や料金は、資料を取り寄せて比較するのが確実です。気になるサービスの資料を入手し、自社の発行構想の具体化に役立ててください。
よくある質問(FAQ)
Q. ステーブルコインとは何ですか?
A. ステーブルコインとは、法定通貨や国債などの資産を裏付けに、価格を一定水準に安定させるよう設計されたデジタル通貨です。日本円や米ドルに1対1で価値を連動させることで、ビットコインなどの暗号資産にみられる激しい価格変動を抑えています。
日本では2023年6月1日に施行された改正資金決済法により、法定通貨と価値が連動するステーブルコインが「電子決済手段」として法的に位置づけられ、事業会社や金融機関による発行・活用の検討が現実的な選択肢になりました。
Q. ステーブルコインは誰が発行できますか?
A. 電子決済手段としてのステーブルコインを発行できるのは、銀行・資金移動業者・信託会社に限られます。電子決済手段の発行・償還は為替取引に該当するため、金融庁の説明資料でも発行者はこの3者に整理されています。
そのため、金融機関でない事業会社が自前で発行体になるには、資金移動業の登録を取得するか、銀行・信託会社などの発行体と組む形が現実的です。
出典:資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料|金融庁
Q. 事業会社が発行体にならずにステーブルコインを発行・活用する方法はありますか?
A. 銀行・信託会社などの発行体と組む受託発行スキームを用いるか、すでに流通している円建てステーブルコインを自社サービスに取り込む方法があります。自社で資金移動業の登録や発行体機能を整える負担を抑えながら、発行・活用に踏み出せます。
たとえば信託型では、信託会社が発行体となり、事業会社は基盤や規制対応の多くを発行支援サービスに委ねる形が一般的です。すでに発行されている銘柄を決済・送金に組み込む場合は、発行体型のサービスへ導入を相談する選択肢もあります。
Q. ステーブルコインの資金移動業型と信託型の違いは何ですか?
A. ステーブルコインの発行スキームは、資金移動業者や銀行が発行し預貯金・国債で裏付けを保全する「資金移動業型・銀行型」と、信託銀行が発行体となり預かった金銭を信託する「信託型(特定信託受益権)」に大きく分かれます。前者はJPYC、後者はJPYSCが代表例です。
資金移動業型は、第二種資金移動業を用いる場合に1回あたりの取扱額に上限が設けられるなど、為替取引の規制が及びます。信託型は送金・保有額の上限を設けない設計も可能で、大口の利用に向くとされます。どちらが適するかは、想定する取扱規模や利用シーン、自社が発行体になるか外部に委ねるかによって変わります。
Q. ステーブルコインを発行・仲介するには登録が必要ですか?
A. 国内で電子決済手段の仲介などを業として行うには、資金決済法に基づく登録(電子決済手段等取引業など)が必要です。2023年6月1日の制度開始により、ステーブルコインの仲介等を業として行うには資金決済法・銀行法に基づく登録が求められるようになりました。
発行体になる場合も、資金移動業の登録や、銀行・信託会社としての業務範囲のなかで発行する枠組みが前提になります。登録には相応の準備期間と態勢整備が必要なため、規制対応に知見のある支援サービスの活用が現実的です。
出典:電子決済手段等取引業・電子決済等取扱業を行うみなさまへ|金融庁
Q. ステーブルコインの送金額に上限はありますか?
A. ステーブルコインの送金上限は採用する発行スキームによって異なり、第二種資金移動業を用いる資金移動業型では1回あたりの取扱額に上限が及ぶ一方、信託型では送金・保有額の上限を設けない設計も可能です。上限の要否は、自社の想定するユースケースに直結する論点です。
資金移動業型の上限は、第二種資金移動業に係る規制(資金決済法施行令の取扱額基準)に由来するもので、各サービスの発行受付ルールとして運用されます。大口の企業間決済や送金を想定する場合は、上限の扱いを支援サービスに確認することが重要です。
Q. ステーブルコインの裏付け資産はどのように保全されますか?
A. ステーブルコインの裏付け資産は、スキームに応じて預貯金・国債による保全や分別管理が法律で義務づけられています。これにより、発行体に万一のことがあっても、額面での償還を制度面で担保する設計になっています。
資金移動業型では、発行残高に対する裏付け資産を預貯金・国債で保全します。信託型(特定信託受益権)では、資金決済法第2条第9項により、受け入れた金銭の一定割合以上を預貯金で管理し、残りを内閣府令で定める国債証券等で運用することが求められます。継続的な管理・報告の体制づくりも、発行体・支援サービスに求められる要件です。
出典:資金決済に関する法律 第2条第9項|e-Gov法令検索
Q. ステーブルコインの発行支援サービスにはどんなタイプがありますか?
A. ステーブルコインの発行支援サービスは、担う役割によって「発行体型」「発行基盤・プラットフォーム型」「受託・規制対応コンサル型」の3タイプに大きく分かれます。自社がどの工程を委ねたいかによって、選ぶべきタイプが変わります。
すでに流通している銘柄を自社サービスに取り込みたい場合は発行体型、自社ブランドや金融機関向けの発行を技術面から支えてほしい場合は発行基盤型、登録支援や制度設計から相談したい場合は受託・規制対応コンサル型が相談先の目安になります。本記事の比較表と診断ツールで、自社に合うタイプを見極められます。
Q. ステーブルコインの発行にかかる費用や期間の目安はどのくらいですか?
A. ステーブルコインの発行にかかる費用・期間は、自社が発行体になるか外部の発行体と組むか、どの工程を支援サービスに委ねるかによって大きく変わるため、一律の相場はありません。多くの発行支援サービスは料金を公開しておらず、対応範囲に応じた個別見積もりとなります。
費用と期間を左右する主な要素は、採用する発行スキーム(資金移動業の登録取得を伴うか、信託会社や既存の発行体と組むか)、規制対応やAML/CFT態勢構築の範囲、発行基盤を新規構築するか既存基盤を利用するか、といった点です。見積もりを比較しやすくするには、想定するユースケースと取扱規模、自社で担う工程と外部に委ねる工程をあらかじめ整理したうえで、複数のサービスへ同じ条件で問い合わせるとよいでしょう。
特に資金移動業の登録取得や態勢整備は相応の準備期間を要するため、構想段階で発行支援サービスに相談し、スキームと対応範囲をすり合わせたうえで費用・期間の見積もりを取ることが現実的です。各サービスの具体的な対応範囲は、資料を取り寄せて比較するのが確実です。
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