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不動産の反社チェックのやり方|対象者・手順・ツールと契約書の暴排条項を解説

不動産の反社チェックのやり方|対象者・手順・ツールと暴排条項のサムネイル画像

不動産の売買や賃貸の契約前に、相手が反社会的勢力でないかを確かめる反社チェック。契約書に暴力団排除条項(暴排条項)を入れていても、実際の確認はインターネット検索と担当者の勘に頼りがちで、「これで確認したと言えるのか」と不安を抱えたまま契約に臨む担当者は少なくありません。

不動産取引は動く金額が大きく、反社会的勢力の資金獲得や活動拠点の確保に狙われやすい分野です。売主・買主だけでなく、借主や連帯保証人、仲介先まで確認の対象は広く、宅地建物取引業や暴力団排除条例との関係も踏まえて対応する必要があります。

本記事では、不動産取引の反社チェックを「誰を・いつ・何を使って・どこまで」という実務の手順から整理します。チェック手法の比較、業界で使えるツールの機能と料金、契約書の暴排条項、疑いやヒットが判明したときの対応、そして仲介業者としてどこまでやれば調査義務を果たしたと言えるのかまでを、法令・条例の根拠とともに解説します。自社の契約フローに反社チェックを組み込むための材料としてご活用ください。

不動産取引の反社チェックのやり方|契約フローに沿った手順

まず、実務で迷いやすい「誰を・いつ・何を使って・どこまで確認するか」を、契約フローに沿った手順で整理します。売買・賃貸・媒介のいずれでも、基本の流れは共通です。

不動産取引の反社チェックの手順を5ステップで示した図。STEP1 誰を確認するか(売主・買主・借主・連帯保証人・仲介先、法人は代表者・実質的支配者)、STEP2 いつ確認するか(契約締結前が原則、売買契約・入居審査・媒介契約を結ぶ前)、STEP3 何を使って確認するか(本人確認書類で特定し氏名・法人名を新聞記事DB・公知情報・専用ツールと照合)、STEP4 どこまで調べるか(基礎的な照合と契約書の暴排条項、疑わしければ深掘り調査)、STEP5 記録を残す(誰を・いつ・何で確認しどう判断したかを証跡として保管)。

1. 誰を確認するか(対象者を決める)

反社チェックの対象は、取引の当事者と、その取引に関わる関係者です。売買であれば売主・買主、賃貸であれば貸主・借主に加えて連帯保証人、法人が当事者であればその代表者や実質的に事業を支配する者まで含めて考えます。片方の当事者だけを確認して、保証人や仲介先の確認が抜ける、というのが典型的な漏れです。具体的な対象者の範囲は後述の対象者一覧で整理します。

2. いつ確認するか(契約締結前が原則)

確認は、契約を結ぶ前に行うのが原則です。契約後に相手が反社会的勢力だと判明しても、すでに物件が引き渡されていたり入居が始まっていたりすると、関係の解消は格段に難しくなります。売買では売買契約の締結前、賃貸では入居審査の段階、媒介では媒介契約を結ぶ前に確認を済ませておくのが基本です。政府の指針も、相手方が反社会的勢力かどうかについて「常に、通常必要と思われる注意を払う」ことを求めています。

相手方が反社会的勢力であるかどうかについて、常に、通常必要と思われる注意を払うとともに……反社会的勢力であると判明した時点や……疑いが生じた時点で、速やかに関係を解消する。

出典:企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針|犯罪対策閣僚会議幹事会(法務省掲載版)

3. 何を使って確認するか(本人特定+公知情報の照合)

確認の土台になるのは、運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類の原本による本人特定です。宅地・建物の売買やその媒介・代理を行う宅地建物取引業者は、犯罪収益移転防止法(犯収法)上の特定事業者にあたり、本人特定事項・取引を行う目的・職業や事業の内容などを確認する取引時確認が義務づけられています。

ただし、この取引時確認はマネー・ローンダリング対策としての本人確認であり、相手が反社会的勢力かどうかを照合する反社チェックそのものとは目的が異なる点に注意が必要です。また、賃貸の媒介はこの取引時確認の対象外ですが、本人特定も反社チェックも賃貸で不要になるわけではありません。

本人を特定したうえで、その氏名・法人名を新聞記事データベースやインターネットの公知情報、反社会的勢力の情報を集めたデータベース、反社チェック専用ツールなどと照合し、反社会的勢力との関係や事件・不祥事の有無を調べます。加えて、物件周辺の外観や人の出入りといった現地の確認を組み合わせることもあります。それぞれの手法の使いどころは、次章の比較で整理します。

4. どこまで調べれば「確認した」と言えるか

「どこまで」の線引きは、担当者が最も悩む部分です。宅建業者の場合、後述のとおり取引相手の反社該当性を積極的に調査せよと明文で定めた法律はありません。

実務では、本人確認と公知情報による照合という基礎的な確認を行い、契約書に暴排条項を備え、確認した内容を記録として残すところまでを一つの目安とし、疑わしい兆候があればさらに踏み込んだ調査に進みます。どこまでやれば善管注意義務(善良な管理者としての注意義務)を果たしたと言えるかは、後述の調査義務の章で詳しく整理します。

5. 確認した記録を残す

誰を・いつ・何を使って確認し、どう判断したのかを記録に残します。後日、取引の相手方が反社会的勢力だと判明したり、対応の適否が問われたりした場合に、「相応の注意を払って確認した」ことを示す証跡になります。反社会的勢力でないことの表明・確約を書面で受け取る運用や、照合の結果を回答書・チェック台帳として保管する運用が一般的です。

反社チェックの手法を比較

反社チェックの手法にはいくつかの選択肢があり、カバーできる範囲・手間・費用感・向いている場面が異なります。1つの手法だけで完結させるより、基礎的な照合を軸に、疑いがあれば深度の高い手法を重ねるのが実務的です。主な手法を横並びで整理します。

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手法自社での公知情報チェック(新聞記事DB・インターネット検索)反社チェック専用ツール業界団体・保証会社等のデータベース照会興信所・調査会社への依頼暴追センター・警察への相談現地・実地確認(外観・人の出入り)
カバー範囲報道・ネット上の公開情報に限られる広い(新聞・公知情報・独自DB・制裁リスト等をまとめて照合)加盟・契約先が保有する情報の範囲深い(聞き取り・現地調査を含む個別調査)相談・助言(個別属性の可否回答を保証するものではない)物件・所在地に関する目視の範囲
手間件数が増えると担当者の負担が大きい一括検索・自動化で軽い照会の手続きが必要依頼すれば自社の作業は少ない相談の手続きが必要現地に出向く必要がある
費用感無料〜(新聞記事DBは有料)月額数千円〜数万円+従量(サービスにより異なる)会費・利用条件による1件あたりの調査費用が高め相談は基本無料(講習等は別)交通費程度
主な使いどころまず自社で行う一次的な照合件数が多い・定期的に確認する場合加盟団体・提携先の枠組みがある場合疑いが濃い・高額取引で深く調べたい場合対応方針に迷う・不当要求を受けた場合事務所利用など物件側のリスクを見る場合

※上記は各手法の一般的な傾向を整理したものです。費用・カバー範囲は提供元やプランにより異なります。

自社での公知情報チェックは最初の一次照合として欠かせませんが、報道されていない事実は拾えず、件数が増えるほど担当者の負担が重くなります。取引が多い、または定期的な再チェックが必要な場合は、専用ツールで照合を自動化し、深い確証が必要な案件だけ調査会社に依頼する、といった組み合わせが現実的です。

暴追センターや警察は、対応方針に迷ったときや不当要求を受けたときの相談先として位置づけられ、政府の指針でも外部の専門機関として連携が推奨されています。

不動産取引で使える反社チェックツール・サービス

手作業での公知情報チェックには限界があるため、照合を効率化する反社チェックツールの活用が広がっています。ここでは、不動産取引の反社チェックに活用できるサービスを、料金・データソース・機能の観点で整理します。まず比較表で全体像をつかみ、続いて各サービスを個別に紹介します。

選ぶ際は、照合に使うデータソース(新聞記事・独自の反社データベース・インターネット公知情報)の広さ、一括検索や定期的な再照合の自動化に対応するか、調査の証跡を記録として残せるか、といった観点が判断材料になります。

不動産取引に専用のツールは多くありません。取引先や採用などの反社チェックにも使われる汎用のツールを、不動産の対象者確認に活用するのが実情です。

本記事では不動産取引で使いやすい代表的な3サービスを取り上げますが、反社チェックツールは提供各社でデータソースや料金体系が大きく異なります。以下の記事では、カテゴリ全体を横断して主要ツールを料金・データソース・精度で比較し、失敗しない選び方まで整理しています。より多くの選択肢を見比べて検討したい場合の参考にしてください。

サービスを一覧で比較

以下は、ご紹介する反社チェックツールの比較表です。データソースの範囲、一括検索・モニタリング、記録の保存、料金体系を整理しています。

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サービス名RiskAnalyze(リスクアナライズ)RISK EYES(リスクアイズ)RoboRoboコンプライアンスチェック
提供会社KYCコンサルティング株式会社ソーシャルワイヤー株式会社(東証グロース上場)オープン株式会社
データソース国内約1,000媒体を1時間おきに自動収集(新聞・雑誌・TV・行政処分・訴訟情報など)+海外240以上の国・地域(PEPs・制裁リスト対応)多数のWEBニュース記事+新聞記事(35年以上前まで遡及)+ブログ・掲示板+日米の制裁リスト+独自のアンチソーシャルDB(2015年以降の反社報道を収集)インターネット検索(Google検索APIと連携)+新聞記事DB+海外情報DB(約190ヵ国・約540万件)。SPネットワーク社の反社DB・LSEG社ワールドチェック・官報DBと連携
一括検索・モニタリングCSV一括検索に対応(1,000件を約1分で処理)。国内外PEPsに対応リストアップロードによる一括検索・差分検索に対応。リスクアラートで懸念レベル5段階の自動通知(モニタリング)Excelのドラッグ&ドロップで一括登録し1クリックで一括検索。AIが記事を高・中・低の3段階で自動判定
記録の保存検索履歴・調査結果をクラウドに7年間自動保存法人番号ベースで検索結果を一元管理(保存期間は公式に記載なし)取引判断・証跡を一元管理し、PDF/CSV/Excelでまとめてダウンロード可
料金体系月額プラン制(年間検索数に応じた包括料金)。初期費用無料、ライトプラン月額27,500円〜(年間600検索)従量課金制。初期費用無料、最低月額15,000円(税別)+検索300円/検索(1媒体ごと)〜従量・ミニマム・定額の3プラン。初期費用無料、1件250円〜(インターネット検索)。従量プランは月額最低利用料0円
詳細情報公式資料を見る公式資料を見る詳細を見る

※ 料金・機能は各社の公開情報(RiskAnalyze・RISK EYESは2026年6月30日時点、RoboRoboは公式料金が画像掲載のため第三者記事経由の同時点値)に基づく参考情報です。最新かつ正確な料金・適用条件は各社の公式資料でご確認ください。

※ RISK EYESの検索費用はデータソースごとに課金され、新聞記事検索は別途閲覧料が必要です。RoboRoboの定額プラン単価は出典により表記に幅があります。

各サービスの詳細

ここからは、前掲の比較表で取り上げたサービスを個別に紹介します。自社の取引量や運用に合うかを照らし合わせながら、候補を絞り込む参考にしてください。

1. RiskAnalyze(リスクアナライズ)(KYCコンサルティング株式会社)

RiskAnalyze(リスクアナライズ)のウェブサイト

RiskAnalyzeは、KYC/AMLを専業とするレグテック企業のKYCコンサルティング株式会社が提供するWEBサービス型の反社チェックツールです。個人名・法人名を入力すると、反社会的勢力とのつながり・逮捕歴・行政処分・訴訟歴・風評を調べ、判定済みの調査レポートを1件あたり最短0.4秒で表示します。

不動産取引では、売主・買主・借主・保証人といった複数の対象者をまとめて確認する場面が多くなります。CSVによる一括検索は1,000件を約1分で処理でき、取引先リストを使ったまとめてのチェックに向いています。調査の証跡はクラウド上に7年間自動保存されるため、確認した記録を残す運用にも活用しやすい設計です。

データソースは、国内約1,000媒体を1時間おきに自動収集し、海外は240以上の国・地域のリスク情報を収録します。API利用料は無料で、CRM・基幹システムとの連携(API/OEM)に対応します。情報セキュリティ管理体制はISO/IEC 27001:2022を取得済みです(2025年7月16日登録)。

料金は初期費用が無料で、ライトプランが月額27,500円(年間600検索)、スタンダードプランが月額50,000円(年間1,200検索)、それ以上はプロフェッショナルプランの個別見積もりです。無料トライアルも用意されています(税区分は公式料金ページに記載がありません。2026年6月時点)。

2. RISK EYES(リスクアイズ)(ソーシャルワイヤー株式会社)

RISK EYES(リスクアイズ)のウェブサイト

東証グロース市場に上場するソーシャルワイヤー株式会社が運営するRISK EYESは、WEBニュースや新聞記事などの公知情報を使って取引先・関係者をスクリーニングする反社チェック専用ツールです。法人名・人名と「逮捕などのネガティブワード」を組み合わせて検索し、反社会的勢力との関係の疑い・犯罪関与・不祥事の有無を確認します。

検索対象はWEB記事・新聞記事・ブログ/掲示板・制裁リスト・独自のアンチソーシャルDBの5系統です。取引先リストをアップロードして複数をまとめて確認する一括検索に対応し、不動産取引で当事者・関係者を一度に照合する場面で使えます。

継続的な確認の面では、登録した対象に関するリスク報道を懸念レベル5段階で自動通知するリスクアラート(モニタリング)を備えます。定期チェックでは、前回ヒットしなかった新規記事だけを調べる差分検索により、全件の再調査の手間を減らせます。既存システムと連携するAPIも用意されています。

料金は初期費用が無料で、月間の最低利用料金が15,000円(税別)、検索費用は1媒体あたり300円/検索です(リスクアラートは300円/社)。無料トライアルも利用できます。

3. RoboRoboコンプライアンスチェック(オープン株式会社)

RoboRoboコンプライアンスチェックのウェブサイト

オープン株式会社が提供するRoboRoboコンプライアンスチェックは、取引先や採用候補者の法令遵守・反社チェックを自動化するクラウド型サービスです。Excelデータのドラッグ&ドロップで対象を一括登録し、1クリックでまとめて検索できます。

インターネット記事検索・新聞記事DB検索・海外情報DB検索を組み合わせ、生成AI/LLMによる記事の要約・解析と、AIによる注目度の3段階自動判別を備えます。検索結果を高・中・低で自動的に振り分けるため、確認作業の負担を抑えやすいのが特徴です。照合結果や取引判断の証跡は一元管理でき、PDF/CSV/Excel形式で出力できます。

累計導入社数は10,000社を突破しています(2026年2月時点)。セキュリティは公式表現どおり「ISMSに準拠」で、認証取得の断定はできません。

料金は初期費用が無料で、従量プランが月額0円から、ミニマムプランがインターネット検索で月額最低5,000円から、1件あたりはインターネット検索250円・新聞併用350円が目安です(公式が料金を画像で掲示しているため、金額は2026年6月時点の値です。すべて税抜)。

不動産取引では、反社会的勢力と言い切れないグレーな案件をどう扱うかが実務上の悩みどころになります。こうしたグレーゾーンの捉え方について、同サービスを提供するオープン株式会社の関根氏は次のように語っています。

関根氏
オープン株式会社 RoboRobo事業部 マーケティング部 部長
関根氏
独自インタビューより

単体の反社チェックのスピードだけを比較すると、データベース検索に特化した他社ツールの方が速い場合もあります。ただし当社はリアルタイムのネット検索も行うため、白黒だけでなくグレーゾーンの情報まで取得できます。会社によってはグレーゾーンでも取引を進める判断もあれば、取引しないという判断もある。

不動産取引で反社チェックが必要な理由と法的根拠

ここからは、なぜ不動産取引で反社チェックが求められるのか、その根拠を整理します。実は、不動産取引の反社チェックを直接的に義務づける単独の法律はありません。求められる根拠は複数の枠組みの重ね合わせで成り立っており、この点を正しく理解しておくことが、過不足のない対応につながります。

なぜ不動産取引が反社会的勢力に狙われやすいか

不動産取引は1件あたりの金額が大きく、資産の保有や資金の移動、活動拠点の確保に利用されやすい分野です。政府の指針も、暴力団が不動産取引などの経済活動を通じて資金獲得活動を巧妙化させていると指摘しています。

暴力団は……証券取引や不動産取引等の経済活動を通じて、資金獲得活動を巧妙化させている。

出典:企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針|犯罪対策閣僚会議幹事会(法務省掲載版)

物件が反社会的勢力の事務所や活動拠点に使われれば、近隣トラブルや会社の信用低下を招き、いったん関係ができると解消は容易ではありません。契約前の確認が、こうした被害を未然に防ぐ入口になります。

政府指針・暴力団排除条例という根拠

反社チェックの実務上の出発点になるのが、2007年に犯罪対策閣僚会議幹事会が申し合わせた「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」です。相手方が反社会的勢力かどうかについて通常必要と思われる注意を払い、契約書に暴排条項を導入することを求めています。ただし、この指針はあらゆる企業に向けた理念・対応指針であり、法的な拘束力を持つものではありません。

より直接的な根拠になるのが、各都道府県の暴力団排除条例です。全都道府県で暴排条例が施行されていますが、内容は条例によって異なります。多くが利益供与の禁止や、不動産を暴力団事務所の用に供させないための措置を定めており、東京都のように、事業に係る契約で相手方などが暴力団関係者でないことを確認するよう努める義務(努力義務)を一般的に定める条例もあります。

事業者は、その行う事業に係る契約が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる疑いがあると認める場合には、当該事業に係る契約の相手方、代理又は媒介をする者その他の関係者が暴力団関係者でないことを確認するよう努めるものとする。

出典:東京都暴力団排除条例 第18条第1項|東京都例規集

一方、大阪府の暴力団排除条例のように、こうした一般的な契約時確認の規定を置かず、不動産に関しては暴力団事務所の用に供させない措置を中心に定める条例もあります。自社の営業エリアの条例で、どこまでが求められているのかを確認しておくことが大切です。

宅地建物取引業法との関係(よくある誤解)

「宅建業法で反社チェックが義務づけられている」と説明されることがありますが、これは正確ではありません。宅地建物取引業法に「反社会的勢力」という語は一度も登場せず、暴力団に関する規定は、免許を受ける宅建業者自身が暴力団員等でないこと・暴力団に事業を支配されていないことを免許の欠格事由として定めるものです(第5条)。

取引の相手方である売主・買主・借主などを宅建業者が反社チェックする義務を、宅建業法が課しているわけではありません。

このように、不動産取引の反社チェックを直接義務づける単独の法令はなく、実際には、政府指針が示す「通常必要と思われる注意」、都道府県の暴排条例、契約書の暴排条項、そして後述する善管注意義務・信義則が重なり合って、事業者に相応の対応を求めている、という構図になります。

反社チェックの対象者一覧(取引類型別)

反社チェックの抜けは、対象者の見落としから生まれます。売買・賃貸・媒介の取引類型ごとに、誰を確認すべきかを一覧で整理します。取引の当事者だけでなく、保証人や仲介先まで含めて考えることが漏れを防ぐポイントです。

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対象者売買賃貸媒介
主な確認対象売主/買主(法人ならその代表者・実質的支配者)貸主/借主(法人ならその代表者・実質的支配者)媒介契約の依頼者
あわせて確認したい関係者媒介・代理をする相手方の宅建業者連帯保証人/同居予定者/転貸先(サブリース時)取引の相手方となる当事者

※確認対象は取引の実態に応じて判断します。法人が当事者の場合は代表者・実質的支配者まで確認するのが基本です。

法人が売主・買主となる取引では、どこまでの役員や株主を確認対象に含めるかで迷いやすくなります。取引先・役員・株主それぞれのリスクの優先度と、どこまで確認範囲を広げるかの考え方は、以下の記事で整理しています。

賃貸取引特有の対象(借主・連帯保証人・家賃保証会社)

賃貸取引は、売買と当事者の構成が異なります。入居する借主本人に加えて、連帯保証人や同居予定者、法人契約であれば実際に利用する社員まで、確認の視野に入れる必要があります。近年は家賃債務保証会社を利用する契約が増えており、保証会社の入居審査で反社チェックが行われることもありますが、保証会社の審査に通ったからといって貸主・仲介側の確認が不要になるわけではありません。

また、賃貸は入居後に物件が事務所利用されたり、反社会的勢力を出入りさせたりするリスクがあります。国土交通省のサイトに掲載された賃貸住宅契約向けのモデル暴排条項でも、物件を反社会的勢力の活動拠点に供することや、反社会的勢力を居住・出入りさせることを禁止行為として定めています。契約前の確認と、契約書での禁止・解除の枠組みの両方を備えておくことが重要です。

契約書の暴力団排除条項(売買・賃貸・媒介の違い)

反社チェックと対になるのが、契約書に定める暴力団排除条項(暴排条項)です。相手が反社会的勢力だと判明したときに、契約を解除して関係を断つための根拠になります。国土交通省のサイトには、不動産流通の関係団体が策定した売買・賃貸・媒介それぞれのモデル暴排条項が掲載されており、契約類型によって作りが異なります。

売買契約の暴排条項(違約金・違約罰)

売買のモデル条項では、売主・買主が互いに自らが反社会的勢力でないことを確約し、違反した場合に無催告で契約を解除できると定めます。解除の際の違約金と、物件を反社会的勢力の活動拠点に供した場合の違約罰について、次のような設定例が示されています。

第2項又は前項の規定によりこの契約が解除された場合には、解除された者は、その相手方に対し、違約金(損害賠償額の予定)として金○○○○円(売買代金の20%相当額)を支払うものとする。……買主が第3項の規定に違反し、本物件を反社会的勢力の事務所その他の活動の拠点に供したと認められる場合において、……買主は、売主に対し、……金○○○○円(売買代金の80%相当額)の違約罰を制裁金として支払うものとする。

出典:反社会的勢力排除のためのモデル条項(売買契約編)|国土交通省掲載

違約金20%と違約罰80%を合わせると売買代金相当額になることから、「最大100%のペナルティ」と紹介されることがあります。ただし、これはモデル条項が示す設定例であって法律で定まった金額ではなく、宅建業者が自ら売主となり、宅建業者でない者が買主となる場合には違約罰を適用しないという但し書きも置かれています。自社の契約書に取り入れる際は、こうした条件まで含めて確認することが必要です。

賃貸契約・媒介契約の暴排条項

賃貸住宅契約のモデル条項は、売買のような違約金○%という定型を置かず、反社会的勢力でないことの確約に反した場合や、物件を反社会的勢力の活動拠点に供するなどの禁止行為があった場合に、無催告で契約を解除できる枠組みを中心に構成されています。

媒介契約のモデル条項は、売買・賃貸が取引の当事者どうしの確約であるのに対し、依頼者と宅建業者の間で互いに反社会的勢力でないことを確約する点が異なります。仲介業者が依頼者側の反社性を理由に媒介契約を解除した場合には、約定報酬額に相当する違約金を請求できるといった内容が示されています。契約類型ごとに、誰と誰の間の確約なのかを押さえておくと、自社の契約書を点検しやすくなります。

モデル条項はあくまで設定例のため、自社の契約書や誓約書に落とし込む際は、必須の要素を押さえた条文の書き方が判断材料になります。反社会的勢力排除条項の例文とひな形、盛り込むべき要素は、以下の記事で具体的に解説しています。

反社の疑い・ヒットが判明したときの対応と調査義務

チェックの結果、反社会的勢力の疑いやヒットが出たとき、どう動くかをあらかじめ決めておくことが大切です。あわせて、仲介業者としてどこまで調べれば「義務を果たした」と言えるのかの線引きも整理します。

グレー・ヒット時の対応(取引中止・契約解除・記録)

照合で反社会的勢力に該当する疑いが濃い場合は、契約を締結する前であれば取引を見送るのが基本です。判断に迷うグレーな案件では、興信所・調査会社による深度の高い調査や、暴追センター・警察への相談を重ねて確証を得る手順に進みます。

すでに契約している場合は、契約書に定めた暴排条項にもとづき、無催告での解除や違約金・違約罰の請求を検討します。政府の指針も、反社会的勢力だと判明した時点や疑いが生じた時点で、速やかに関係を解消するよう求めています。

賃貸借契約で入居後にヒットが判明した場合は、暴排条項による無催告解除の条項があっても、実務では信頼関係が破壊されたと言えるかが争点になり得ます。物件が事務所利用されるなど禁止行為が確認できるケースでは解除が認められやすい一方、判断が難しい場面もあるため、確認できた事実と対応の経緯を記録に残しておくことが、その後の対応を支えます。

照合でヒットが出ても、それが本当に取引相手を指すのか、同姓同名の別人ではないかの見極めが欠かせません。ヒットが意味することの読み解き方と同姓同名の切り分け方は、以下の記事で詳しく解説しています。

仲介業者の調査義務はどこまでか(善管注意義務・証跡)

前述のとおり、取引相手の反社該当性を積極的に調査せよと明文で定めた法律はありません。もっとも、宅建業者による媒介は民法上の準委任にあたり、受任者として善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務(善管注意義務)を負います。どこまで調べれば義務を果たしたと言えるかは、この善管注意義務と信義則の下で、取引の性質や状況に応じて判断されます。

受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。

出典:民法 第644条|e-Gov法令検索

実務的には、本人確認と公知情報による基礎的な照合を行い、契約書に暴排条項を備え、疑わしい兆候があればさらに踏み込んだ調査に進む、という一連の対応を、記録とともに残しておくことが目安になります。完璧に反社会的勢力を見抜くことまでは求められないとしても、相応の注意を払って確認した事実を証跡として残しておくことが、後で対応の適否を問われたときの支えになります。

まとめ

不動産取引の反社チェックは、「誰を・いつ・何を使って・どこまで」を契約フローに組み込むことが出発点です。売主・買主だけでなく、借主・連帯保証人・仲介先まで対象に含め、契約締結前に本人確認と公知情報の照合を行い、契約書に暴排条項を備え、確認した内容を記録に残すという一連の流れを、自社の運用として固めておくことが大切です。

反社チェックを直接義務づける単独の法令はないものの、政府指針・都道府県の暴排条例・契約書の暴排条項・善管注意義務が重なり合って、事業者に相応の対応を求めています。手作業での照合には限界があるため、取引量や運用に合わせて反社チェックツールの活用を検討し、自社の契約フローの抜けを点検してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 不動産取引における反社チェックとは何ですか?

A. 不動産取引における反社チェックとは、契約前に売主・買主・借主などの取引相手が暴力団をはじめとする反社会的勢力に該当しないかを確認する手続きです。運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類による本人特定を土台に、その氏名・法人名を新聞記事データベースやインターネットの公知情報、専用ツールなどと照合し、反社会的勢力との関係や事件・不祥事の有無を調べます。

不動産取引は動く金額が大きく、資金獲得や活動拠点の確保に狙われやすい分野のため、契約前の確認が被害を未然に防ぐ入口になります。

Q. 不動産の反社チェックは宅建業法で義務づけられているのですか?

A. 不動産の反社チェックを直接義務づける単一の法律はなく、宅地建物取引業法にも、取引相手を反社チェックする義務を課した規定はありません。宅建業法の暴力団関連規定は、免許を受ける宅建業者自身が暴力団員等でないこと・暴力団に事業を支配されていないことを免許の欠格事由として定めるもので(第5条)、「反社会的勢力」という語は法律に一度も登場しません。

実務で反社チェックが求められる根拠は、政府指針が示す「通常必要と思われる注意」、各都道府県の暴力団排除条例、契約書に定める暴排条項、そして民法上の善管注意義務・信義則が重なり合ったものです。単一の法令ではなく、これらの重ね合わせで相応の対応が求められている、と理解しておくことが過不足のない対応につながります。

Q. 賃貸借契約でも不動産の反社チェックは必要ですか?

A. 賃貸借契約でも反社チェックは必要です。 また、賃貸の媒介は犯罪収益移転防止法の取引時確認(本人確認)の対象外ですが、この取引時確認はマネー・ローンダリング対策としての本人確認であって反社チェックそのものではなく、反社チェックの要否とは別の問題です。

賃貸では借主本人だけでなく、連帯保証人や同居予定者まで視野に入れ、入居審査の段階で確認するのが実務です。契約書には、物件を反社会的勢力の活動拠点に供することや反社会的勢力を居住・出入りさせることを禁じるモデル暴排条項を備えておくと、判明時に無催告解除で対応しやすくなります。

Q. 不動産の反社チェックは連帯保証人や家賃保証会社を利用する場合も必要ですか?

A. 連帯保証人は反社チェックの対象に含め、家賃保証会社の審査に通った場合でも、貸主・仲介側の確認は省略しないのが基本です。 保証会社の入居審査で反社チェックが行われることはありますが、それによって自社の確認が不要になるわけではありません。

反社チェックの抜けは、対象者の見落としから生まれます。売買・賃貸・媒介のいずれでも、取引の当事者だけでなく、連帯保証人・同居予定者・仲介先の宅建業者、そして法人が当事者の場合は代表者や実質的に事業を支配する者まで対象に含めることが、漏れを防ぐポイントです。

Q. 不動産仲介業者の反社チェックの調査義務はどこまで求められますか?

A. 取引相手の反社該当性を積極的に調査せよと明文で定めた法律はなく、調査義務の範囲は善管注意義務と信義則の下で、取引の性質や状況に応じて判断されます。 宅建業者による媒介は民法上の準委任にあたり、受任者として善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務(善管注意義務)を負います(民法第644条・第656条)。

実務では、基礎的な調査を行い当事者に確認を取れば、一定の調査努力を果たしたと解される、というのが一つの考え方です。ただし、委任を受けて管理する物件などでは求められる注意の水準が上がることもあります。完璧に見抜くことまでは求められない一方、払った注意と判断の経緯を記録に残しておくことが、後の説明を支えます。

Q. 契約後に取引相手が反社会的勢力だと判明した場合はどう対応すればよいですか?

A. 契約書に定めた暴力団排除条項にもとづき、無催告での契約解除や、違約金・違約罰の請求を検討します。 政府の指針も、相手方が反社会的勢力だと判明した時点や疑いが生じた時点で、速やかに関係を解消するよう求めています。

解除に踏み切る前に、相手が反社会的勢力だと判断した根拠をそろえ、必要に応じて暴追センターや弁護士など外部の専門機関に相談しておくと、その後のトラブルに備えられます。賃貸で入居後に判明したケースでは、無催告解除の条項があっても信頼関係の破壊が争点になり得るため、確認できた事実と経緯の記録が対応を支えます。

Q. 反社チェックを怠った場合、不動産会社はどのような責任を問われますか?

A. 直ちに罰則が科されるわけではありませんが、善管注意義務違反や信義則上の責任として損害賠償を問われるリスクがあります。 反社会的勢力との取引に巻き込まれれば、契約解除や違約金回収の困難、物件が活動拠点に使われることによる近隣トラブル、会社の信用低下といった実務上の不利益も生じます。

また、都道府県の暴力団排除条例は、反社会的勢力と知りながら事業に関して利益を供与する行為を禁止しています。相応の注意を払って確認し、その記録を残しておくことが、こうしたリスクを抑える備えになります。

Q. 不動産の反社チェックにかかる費用の相場はどれくらいですか?

A. 手法によって幅があり、自社での公知情報チェックは新聞記事データベースの利用料程度、専用ツールは月額数千円〜数万円に検索件数に応じた従量課金が加わるのが一般的です。 興信所・調査会社に個別調査を依頼する場合は1件あたりの費用が高めになり、暴追センターや警察への相談は基本的に無料です。

取引件数が多い場合や定期的な再チェックが必要な場合は、専用ツールで照合を自動化し、深い確証が必要な案件だけ調査会社に依頼する、といった組み合わせがコストを抑えやすい方法です。具体的な料金は提供元やプランによって異なるため、複数サービスの資料で比較して検討するのが確実です。

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