ファクタリングで売掛金を早期に資金化したものの、手数料が差し引かれて入金された明細を前に「この取引はどう仕訳すればいいのか」と手が止まっていませんか。差額をどの勘定科目で処理するのか、2社間と3社間で記帳が変わるのか、消費税はかかるのか——月次を締める前に確定させたい論点は意外と多いものです。
この記事では、ファクタリング利用時の仕訳を、譲渡(契約)時・入金時・同日完結といった場面別に、そして2社間・3社間・保証型といったタイプ別に、金額を入れた仕訳例で示します。手数料に使う勘定科目(売上債権売却損)の考え方や名称のゆらぎ、消費税の税区分、会計ソフトに専用科目がない場合の代替まで整理します。
それぞれの処理には、消費税法や企業会計基準といった根拠があります。仕訳例だけでなく、その根拠となる条文・会計基準も原文で示すので、稟議や監査、税務調査で問われても説明できる状態を目指せます。まずは自社のケースに当てはまる仕訳例から確認していきましょう。
目次
結論:ファクタリングの仕訳と手数料の勘定科目
先に結論からお伝えします。買取型ファクタリングの仕訳は、売掛金をファクタリング会社へ譲渡した時点で「未収入金」に振り替え、手数料を差し引いた金額が入金された時点で、差額を費用として計上します。このとき、差額(手数料相当分)に使う勘定科目は、原則として「売上債権売却損」です。
売掛金という資産(債権)を額面より低い金額で売却したことで生じた差額なので、性質は売却による損失にあたります。会計ソフトに「売上債権売却損」の科目が用意されていない場合は、「支払手数料」「雑損失」「割引料」などで代用する実務も一般的です。名称のゆらぎや代替科目の使い分けは、後半で詳しく整理します。
もう一つの要点は消費税です。ファクタリングは売掛債権という金銭債権の譲渡(売買)にあたり、この譲渡は消費税の非課税取引です。その帰結として、手数料相当分にも消費税は課されません。会計ソフトの税区分は「非課税」を選びます。以下では、この結論を場面別の仕訳例で具体的に確認していきます。
【場面別・タイプ別】金額入りの仕訳例一覧
ここからは、実際の仕訳例を場面ごと・タイプごとに掲載します。金額は、売掛金1,000,000円をファクタリングで資金化するケースで統一しました。自社の金額に置き換えて、そのまま会計ソフトへ転記できます。仕訳例で使う手数料率は計算をわかりやすくするための仮の設定で、実際の手数料の相場は記事後半のサービス比較で確認できます。
買取型と保証型で会計処理はどう変わるか
仕訳を確認する前に、ファクタリングの種類を押さえておきます。ファクタリングには、売掛債権そのものを売却して資金化する「買取型」と、売掛先の倒産に備えて保証を受ける「保証型」があり、会計処理が異なります。買取型では債権の譲渡と手数料(売却損)が中心になり、保証型では保証料を「支払手数料」として処理します。資金調達を目的として一般に利用されるのは買取型です。
買取型はさらに、自社とファクタリング会社の2者だけで契約する「2社間」と、売掛先も加えた3者で契約する「3社間」に分かれ、入金や回収の流れが違うため仕訳も変わります。以下、買取型2社間・買取型3社間・保証型の順に見ていきます。

買取型・2社間ファクタリングの仕訳(譲渡時/入金時/同日完結)
2社間では、売掛先に知られずに契約するため、入金は自社を経由します。まず、売掛金1,000,000円をファクタリング会社へ譲渡する契約を結んだ時点の仕訳です。売掛金を「未収入金」に振り替えます。
| 借方科目 | 未収入金 |
|---|---|
| 借方金額 | 1,000,000円 |
| 貸方科目 | 売掛金 |
| 貸方金額 | 1,000,000円 |
次に、手数料10%(100,000円)が差し引かれ、900,000円が入金された時点の仕訳です。差額の100,000円を「売上債権売却損」で処理します。
| 借方科目 | 普通預金 | 売上債権売却損 |
|---|---|---|
| 借方金額 | 900,000円 | 100,000円 |
| 貸方科目 | 未収入金 | |
| 貸方金額 | 1,000,000円 |
契約と入金が同じ日に完了する場合は、未収入金を経由せず1本の仕訳にまとめることもできます。2社間ではオンライン完結で即日資金化するケースが多いため、この同日完結の形が実務ではよく使われます。
| 借方科目 | 普通預金 | 売上債権売却損 |
|---|---|---|
| 借方金額 | 900,000円 | 100,000円 |
| 貸方科目 | 売掛金 | |
| 貸方金額 | 1,000,000円 |
2社間では、この後で売掛先から自社に売掛金が入金され、それをファクタリング会社へ送金する流れが加わります。この「預り金」を挟む処理は取り違えやすいため、2社間の「預り金」処理を段階仕訳で理解するのセクションで段階を追って解説します。
買取型・3社間ファクタリングの仕訳(契約時/入金時)
3社間では、売掛先の承諾を得たうえで契約し、ファクタリング会社が売掛先から直接債権を回収します。そのため自社が売掛金を預かる工程がなく、仕訳は2社間より単純です。手数料は2社間より低い水準が一般的で、ここでは3%(30,000円)とします。まず契約時に売掛金を「未収入金」へ振り替えます。
| 借方科目 | 未収入金 |
|---|---|
| 借方金額 | 1,000,000円 |
| 貸方科目 | 売掛金 |
| 貸方金額 | 1,000,000円 |
手数料30,000円を差し引いた970,000円が入金された時点で、差額を「売上債権売却損」として計上します。3社間では以降、自社が売掛金を回収する処理は発生しません。
| 借方科目 | 普通預金 | 売上債権売却損 |
|---|---|---|
| 借方金額 | 970,000円 | 30,000円 |
| 貸方科目 | 未収入金 | |
| 貸方金額 | 1,000,000円 |
保証型ファクタリングの仕訳(保証料の支払時/回収不能時)
保証型は資金調達ではなく、売掛先の倒産リスクに備える仕組みです。契約時に支払う保証料は、資産の売却ではなくサービスの対価なので「支払手数料」で処理します。保証料が50,000円だった場合の仕訳は以下のとおりです。
| 借方科目 | 支払手数料 |
|---|---|
| 借方金額 | 50,000円 |
| 貸方科目 | 普通預金 |
| 貸方金額 | 50,000円 |
売掛先が倒産し、売掛金1,000,000円が回収不能になった場合は、まず回収不能分を「貸倒損失」で計上します。
| 借方科目 | 貸倒損失 |
|---|---|
| 借方金額 | 1,000,000円 |
| 貸方科目 | 売掛金 |
| 貸方金額 | 1,000,000円 |
続いて、保証契約にもとづき保証金1,000,000円を受け取った時点で、その保証金を「雑収入」で計上します。
| 借方科目 | 普通預金 |
|---|---|
| 借方金額 | 1,000,000円 |
| 貸方科目 | 雑収入 |
| 貸方金額 | 1,000,000円 |
保証金が売掛金の全額をカバーしない契約(保証率が設定されている場合など)では、受け取る保証金が売掛金より少なくなります。その場合も貸倒損失は回収不能額(売掛金の全額)で計上し、雑収入は実際に受け取った保証金の額で計上するため、差額が最終的な自社の損失として残ります。
ファクタリングで使う勘定科目一覧(未収入金と売掛金の使い分け)
仕訳に登場する勘定科目を一覧で整理します。それぞれがどの場面で使われるかを押さえておくと、自社のケースに合わせて仕訳を組み立てやすくなります。
| 勘定科目 | 売掛金 | 未収入金 | 売上債権売却損 | 支払手数料 | 預り金 | 貸倒損失 | 雑収入 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 区分 | 資産 | 資産 | 費用(営業外費用) | 費用 | 負債 | 費用 | 収益 |
| 使う場面 | ファクタリングで譲渡する前の売掛債権を計上している科目。譲渡契約時に減らす | 売掛金を譲渡した後、ファクタリング会社からの入金を受け取る権利を表す。入金時に消す | 買取型で、譲渡額と入金額の差額(手数料相当分)を計上する。原則の科目 | 保証型の保証料。買取型でも代替科目として使う実務がある | 2社間で、売掛先から回収した売掛金をファクタリング会社へ送金するまで一時的に預かる | 保証型などで、回収不能が確定した売掛金を損失として処理する | 保証型で、契約にもとづき受け取った保証金を計上する |
迷いやすいのが、譲渡した売掛金を「売掛金」のままにするか「未収入金」に振り替えるかです。ファクタリング契約を結んだ時点で、その債権はもう通常の営業取引による売掛金ではなく、ファクタリング会社からの入金を待つ債権に変わります。そのため契約時に「未収入金」へ振り替え、入金時に「未収入金」を消し込むのが整理された処理です。
ただし「売掛金」のまま入金時に消し込んでも会計処理として誤りではなく、税務上も問題はありません。すでに売掛金のまま記帳している場合、無理に振り替え直す必要はありません。同日完結の場合は、この振り替えを省いて売掛金から直接消す形もよく使われます。
手数料の勘定科目は「売上債権売却損」で処理する
買取型ファクタリングの手数料に使う勘定科目は、原則として「売上債権売却損」です。この差額を売却損として扱う考え方には、会計基準上の裏づけがあります。企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」は、債権などの金融資産が消滅の認識要件を満たしたとき、次のように定めています。
金融資産又は金融負債がその消滅の認識要件を充たした場合には、当該金融資産又は金融負債の消滅を認識するとともに、帳簿価額とその対価としての受払額との差額を当期の損益として処理する。
出典:企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第11項|企業会計基準委員会(https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/rev_f_instr2.pdf)
売掛金という金融資産を譲渡してその消滅を認識し、帳簿価額(1,000,000円)と受取額(900,000円)の差額(100,000円)を当期の損益(=売却損)として処理する、というのがこの定めに沿った処理です。
「売上債権売却損」「売掛債権売却損」「売掛債権譲渡損」の違いと使い分け
実務では、この差額を表す科目名にいくつかの表記が使われます。いずれも同じ取引を指しており、意味に違いはありません。どれを使っても会計処理として誤りではなく、社内で一つの表記に統一しておくことが実務上のポイントになります。
| 科目名 | 売上債権売却損 | 売掛債権売却損 | 売掛債権譲渡損/売上債権譲渡損 |
|---|---|---|---|
| 扱い | 最も一般的な表記。会計ソフトの初期科目にも採用されることが多い | 「売上」を「売掛」とする表記。指す内容は同じ | 「売却」を「譲渡」とする表記。営業外費用として扱う点も同じ |
会計ソフトに専用科目が無い場合の代替科目(freee・マネーフォワード・弥生の対応)
会計ソフトによっては、「売上債権売却損」という科目が初期状態で用意されていないことがあります。その場合の対応は、専用科目を追加する方法と、既存の科目で代用する方法に分かれます。代用には、性質が近い「支払手数料」「雑損失」「割引料」などが使われます。下表に整理します。
| 対応方法 | 専用科目を追加する | 支払手数料で代用する | 雑損失・割引料で代用する |
|---|---|---|---|
| 内容 | 勘定科目の設定から「売上債権売却損」を営業外費用として追加する。科目名を統一でき、決算書での区分表示も明確になる | 手数料としての性質に着目した代用。件数が少なく管理上問題なければ実務上使われる | 損失・割引の性質に着目した代用。いずれも費用科目で、損金算入の扱いは変わらない |
税区分については、後述のとおりファクタリングの手数料相当分には消費税が生じないため、代替科目を使う場合も課税対象にはしません。会計ソフトにより「非課税」または「対象外(不課税)」を選びますが、どの科目・区分を使っても税額が変わることはありません。
ファクタリング手数料の消費税は非課税(税区分と根拠)
会計ソフトに入力する際、税区分の選択で手が止まりやすいのが消費税です。結論として、ファクタリングの手数料相当分に消費税はかかりません。税区分は「非課税」を選びます。会計ソフトによっては「対象外(不課税)」と表示されることもありますが、どちらもファクタリングに消費税が生じないことを表し、選ぶ区分で税額は変わりません。
理由は、ファクタリングが「売掛債権という金銭債権の譲渡(売買)」だからです。金銭債権の譲渡は消費税の非課税取引と定められており、その取引で生じる手数料相当分にも消費税は課されません。この点は、多くの解説が国税庁のタックスアンサーを根拠に挙げますが、より正確には消費税法の条文までたどれます。
消費税法は、別表第二第二号で「有価証券等」の譲渡を非課税と定め、その「有価証券等」に含まれるものの範囲を政令(消費税法施行令)に委ねています。そして施行令第9条第1項第4号が、次のように金銭債権の範囲を定めています。
法別表第二第二号に規定する有価証券に類するものとして政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
四 貸付金、預金、売掛金その他の金銭債権(電子決済手段に該当するものを除く。)
出典:消費税法施行令(昭和63年政令第360号)第9条第1項第4号|e-Gov 法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/363CO0000000360)
「売掛金」が明文で列挙されています。ファクタリングで譲渡する売掛債権はこの「売掛金その他の金銭債権」にあたり、その譲渡は別表第二第二号の非課税取引に含まれます。だからこそ、手数料相当分にも消費税が課されないという結論になります。国税庁のタックスアンサーも「金銭債権などの譲渡」を非課税取引に挙げ、根拠法令として消費税法別表第二を示しています。
ただし、債権譲渡登記を行う場合の登記費用や、司法書士へ支払う報酬は、ファクタリング手数料とは別の役務の対価なので消費税の課税対象です。入金明細に手数料と登記費用・振込手数料などが並ぶ場合、資金調達の対価である手数料相当分は「売上債権売却損」(非課税)で計上します。一方、登記費用・司法書士報酬・振込手数料などの付随費用は「支払手数料」など(課税対象)で、科目と税区分を分けて処理します。
2社間ファクタリングの「預り金」処理を段階仕訳で理解する
2社間ファクタリングでは、売掛先に債権譲渡を知らせないため、売掛先はこれまでどおり自社に売掛金を支払います。自社はその入金を受け取り、ファクタリング会社へ送金します。このとき、受け取った売掛金は自社の売上ではなくファクタリング会社に渡すべきお金なので、いったん「預り金」として計上するのが整理された処理です。

先ほどの同日完結の仕訳(普通預金900,000円・売上債権売却損100,000円/売掛金1,000,000円)を切った後、実際に売掛先から回収し、ファクタリング会社へ送金するまでの流れを段階で見ていきます。まず、売掛先から売掛金1,000,000円が入金された時点の仕訳です。
| 借方科目 | 普通預金 |
|---|---|
| 借方金額 | 1,000,000円 |
| 貸方科目 | 預り金 |
| 貸方金額 | 1,000,000円 |
この入金は自社の収益ではないため、売上には計上しません。ファクタリング会社に渡すまで一時的に預かっている状態を「預り金」で表します。次に、預かった1,000,000円をファクタリング会社へ送金した時点の仕訳です。
| 借方科目 | 預り金 |
|---|---|
| 借方金額 | 1,000,000円 |
| 貸方科目 | 普通預金 |
| 貸方金額 | 1,000,000円 |
送金によって預り金が消え、一連の取引が完了します。譲渡・入金の仕訳ですでに手数料(売上債権売却損)を計上しているため、この回収・送金の段階では損益は発生せず、資金の受け渡しだけを記録します。回収と送金を「預り金」で挟むことで、自社の売上と預かり金が混ざらず、帳簿が整理されます。
決算をまたぐ場合・法人税(損金算入・オフバランス)の実務
仕訳そのものに加えて、決算や法人税への影響も押さえておくと、稟議や監査で説明できる状態になります。ここでは、決算をまたぐ場合の注意点、売却損の損金算入、オフバランスの3点を整理します。
資金入金が決算期末をまたぐ場合の注意点
売掛金は、その元となる売上を計上した事業年度の収益です。ファクタリングによる資金化のタイミングが決算期末をまたいでも、売上を計上した事業年度の収益であることは変わらず、その事業年度の課税対象になります。ファクタリングで早期に現金化したからといって、売上の計上時期が前後することはありません。期末時点で譲渡済み・入金前の債権があれば、「未収入金」として資産に残る点も確認しておきます。
売上債権売却損は全額が損金に算入される
買取型ファクタリングの手数料(売上債権売却損)は、法人税の計算上、全額が損金に算入されます。法人税法第22条第3項第3号は、資本等取引以外の取引に係る損失の額を損金に算入すると定めており、売上債権売却損はこの損失にあたります。さらに同条第4項が、その損失額を会計処理の基準に従って計算すると定めています。
そのため、手数料の分だけ利益が圧縮され、その事業年度の課税所得が減ります。借入金の利息と同じく、資金調達に伴うコストとして費用処理できると理解しておくとよいでしょう。個人事業主の場合も、売上債権売却損は事業所得の必要経費として計上でき、消費税が非課税である点は法人と同じです。
ファクタリングでオフバランス化できる理由
ファクタリングは借入ではなく債権の売却なので、負債が増えません。売掛金という資産が現金に変わり、貸借対照表から売掛債権が外れることを「オフバランス化」と呼びます。これが認められるのは、企業会計基準第10号が定める債権の消滅の認識要件を満たすためです。同基準は、金融資産の消滅を「財務構成要素アプローチ」で判断し、次の要件をすべて満たしたときに支配が移転したとしています。
金融資産の契約上の権利に対する支配が他に移転するのは、次の要件がすべて充たされた場合とする。
(1) 譲渡された金融資産に対する譲受人の契約上の権利が譲渡人及びその債権者から法的に保全されていること
出典:企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」第9項|企業会計基準委員会(https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/rev_f_instr2.pdf)
(2) 譲受人が譲渡された金融資産の契約上の権利を直接又は間接に通常の方法で享受できること
(3) 譲渡人が譲渡した金融資産を当該金融資産の満期日前に買戻す権利及び義務を実質的に有していないこと
ポイントは(3)で、譲渡した債権を後から買い戻す義務がない売切りの譲渡であれば、債権の消滅を認識してオフバランス化できます。買戻し義務がある取引は、実質的に借入と同じ経済実態とみなされることがあり、金融庁も、経済的に貸付けと同様の機能を持つものは貸金業に該当するおそれがあると注意を促しています。契約が売切り(償還請求権なし)かどうかは、会計処理と法的な位置づけの両面で確認しておきたい点です。
でんさい(電子記録債権)の仕訳との違い
売掛債権に近いものに、でんさい(電子記録債権)があります。でんさいは、でんさいネット(全国銀行協会が設立した電子債権記録機関)に電子的に記録される金銭債権で、手形や売掛金に代わる決済・資金調達の手段として使われます。ファクタリングの仕訳を調べる過程で目にすることが多いため、違いを簡単に整理しておきます。
でんさいを受け取ったときは、売掛金を「電子記録債権」に振り替えます。そして、支払期日前に資金化する「でんさい割引」を利用した場合は、割引料を支払って早期に現金を受け取ります。割引料は「電子記録債権売却損」などで処理し、考え方は買取型ファクタリングの売却損と共通します。たとえば、電子記録債権1,000,000円を割引料20,000円で資金化した場合の仕訳は次のとおりです。
| 借方科目 | 普通預金 | 電子記録債権売却損 |
|---|---|---|
| 借方金額 | 980,000円 | 20,000円 |
| 貸方科目 | 電子記録債権 | |
| 貸方金額 | 1,000,000円 |
売掛債権を対象とするファクタリングと、電子記録債権を対象とするでんさい割引は、扱う債権の種類が違うだけで、差額を売却損で処理する会計の考え方は共通しています。自社が使っているのがどちらの債権かを確認して、対応する科目を選びます。
記帳の手間を減らす会計連携・手数料が透明なファクタリングサービス
仕訳が確定したら、次に気になるのが「今回の手数料は妥当だったか」「毎回の記帳や申請の手間をもっと減らせないか」という点ではないでしょうか。ここでは、その2つの観点でサービスを紹介します。1つは、手数料の水準を公式に開示していて、記帳後にコストを見直しやすいサービス。もう1つは、会計ソフトや請求書システムと連携し、資金化の申請から入金管理までの手間を減らせるサービスです。
以下は、ご紹介するファクタリングサービスの比較表です。
| サービス名 | ビートレーディング | PAYTODAY | Mentor Capital | 入金前払いシステム(JTC) | マネーフォワード早期入金 | 入金QUICK | 電子請求書早払い |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 手数料率 | 2社間4%〜/3社間2%〜 | 1%〜9.5% | 2%〜 | 1.2%〜10% | 0.5%〜 | 0.5%〜 | 1.0%〜6.0% |
| 会計・請求システム連携 | × | × | × | × | ◎クラウド会計と連携 | ●請求QUICKと一体 | ●BtoBプラットフォーム請求書と統合 |
| オンライン完結 | △300万円未満が対象 | ● | △ヒアリング重視の審査 | △LINE提出・初回は対面推奨 | ● | ● | ● |
| 最短入金 | 最短即日 (審査最短2時間) | 最短即日 (審査最短30分) | 最短即日 (審査最短60秒) | 最短即日 | 最短即日 (初回は5〜10営業日) | 最短2営業日 | 最短2営業日 (初回は最短5営業日) |
| 買取可能額 | 1万円〜7億円 (買取実績) | 10万円〜上限なし | 数十万円〜1億円 (超過は要相談) | 100万円〜上限なし | 数万円〜数億円 | 30万円〜 (利用枠内で反復) | 10万円〜1億円 |
| 対象 | 法人・個人事業主 | 法人・個人事業主 | 法人・個人事業主 | 法人のみ | 法人のみ | 法人のみ (業歴1年・年商1億円〜) | 法人のみ |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※上記は各社公式サイトの情報にもとづく一般的な傾向です。手数料率や条件の詳細は各社情報をご確認ください。
ここで取り上げたのは、会計連携や手数料開示に対応したサービスです。手数料の水準・入金スピード・買取可能額を軸に、より多くのファクタリング会社を横並びで見比べたい場合や、今回差し引かれた手数料が妥当だったかを見直したい場合は、以下の比較記事が選び方まで含めて参考になります。
ファクタリングおすすめ26選を比較|手数料・入金スピード・買取可能額で選ぶ
「取引先への請求は済んでいるのに、入金は翌々月末。仕入れや外注費、人件費の支払いだけが先に来て、手元資金が薄くなる」——売掛取引が中心の事業では、珍しくない場面です。銀行融資は審査に時間がかかり、急な資金需要には間に合わないこともあります。…
ビートレーディング(株式会社ビートレーディング)

2012年創業のファクタリング専業会社で、2社間・3社間に加え、注文書を対象とした資金化にも対応しています。手数料は公式サイトで2社間4%〜、3社間2%〜という水準を公表しています。累計買取額などの取引実績が豊富で、審査・入金のスピードを重視する事業者に向いています。
必要書類は入出金明細と売掛金関連書類の2種類に絞られ、審査は最短2時間、資金化は最短即日に対応します。売掛先が倒産しても返還義務を負わないノンリコース契約のため、会計上もオフバランス化の要件を満たしやすい形で利用できます。
PAYTODAY(Dual Life Partners株式会社)

独自のAI審査により、面談なしでオンラインのみで申し込みから資金化まで完結できるサービスです。手数料は1%〜9.5%と、下限だけでなく上限まで公式に明示している点が、費用の見通しを立てやすくします。法人に加えて個人事業主・フリーランスも対象です。
書類提出はオンラインで完結し、最短30分での審査回答にも対応します。手続きがWeb上で完結するため、資金化のたびに発生する事務作業を抑えたい事業者にとって有力な選択肢となります。
Mentor Capital(株式会社Mentor Capital)

売掛金の早期現金化を支援するファクタリング会社で、2社間・3社間の両方式に対応します。手数料は2%〜で、売掛先の信用力や取引履歴などの事業実態を確認できるほど条件を良くしやすいとしており、担当者によるヒアリングを重視した審査体制を取っています。
赤字や創業まもない事業者からの相談にも対応しており、少数精鋭の体制を活かして一社ごとに時間をかける点を強みとしています。繰り返し利用する場合の手数料負担にも配慮した提案を行うとしており、資金繰りを継続的に相談したい事業者に向いています。
仕訳で売上債権売却損として計上するこの手数料や買取条件が、具体的に何をもとに決まるのかについて、同社は次のように述べています。

主に、売掛先様の信用力、売掛先様とお客様の取引履歴や実績、そして売掛債権そのものの金額や支払いサイトをもとに判断しています。特に重要になるのが、事業の実態の透明性です。誰が、いつ、どこで、どのような仕事をして、どこから売掛金を得ているのか、というエビデンスが取れるかどうかで、審査がスムーズに進むかどうかが大きく変わってきます。
入金前払いシステム(株式会社JTC)

株式会社JTCが提供するサービスで、取引先に知られずに売掛金を早期資金化する2社間方式を「入金前払いシステム」と呼称しています。手数料は非通知契約で1.2%〜10%とレンジを公式に明示しており、取引先の承諾が得られる契約ではより低い水準になります。
買取金額は100万円からで、必要書類が揃っていれば最短即日の資金化に対応します。書類のやり取りにも対応しているため、まとまった額を取引先に知られずに調達したい事業者に適しています。
売上債権売却損として計上する手数料が、契約方式や金額によってどう変わるのかについて、同社は次のように説明しています。
大きくは契約形態で変わります。取引先からの承諾が貰える契約であれば1.2%から、承諾がもらえない契約ですと目安として5%からとなっています。但し売掛金の内容によっては手数料や買取率が下回る事や上回る事もございます。さらに、お客様の状態として税金滞納の有無なども影響するので、結果として手数料に差が出ます。同じ条件なら、100万円より1,000万円の方が手数料は安くしやすい、というのはあります。
マネーフォワード早期入金(マネーフォワードケッサイ株式会社)

マネーフォワードケッサイ株式会社が提供する法人向けオンラインファクタリングです。マネーフォワード クラウド会計との連携により、会計データを活用して審査を効率化できる点が、記帳の手間を減らしたい事業者にとっての特徴です。手数料は0.5%〜で、AI仮審査により調達可能額を早期に把握できます。
原則オンラインで完結し、対面での面談は不要です。会計ソフトをすでに利用している事業者であれば、資金化と会計データの管理を同じ環境で進めやすくなります。
入金QUICK(SBIビジネス・ソリューションズ株式会社)

SBIビジネス・ソリューションズ株式会社が、クラウド請求書発行システム「請求QUICK」の機能として提供する請求書ファクタリングです。請求書の発行から買取申請までを同じシステム上でWeb完結できるため、請求業務と資金化を分けて管理する手間を減らせます。手数料は0.5%〜です。
対象は業歴1年以上・年商1億円以上の法人が目安とされています。すでに請求書の発行をクラウドで行っている事業者であれば、既存のフローに沿って資金化まで進められます。
電子請求書早払い(株式会社インフォマート/GMOペイメントゲートウェイ株式会社)

電子請求書システム「BtoBプラットフォーム 請求書」の利用企業向けに、GMOペイメントゲートウェイが売掛債権を買い取る資金化オプションです。既存の請求書電子化フローの中で資金化を申請できるため、請求書の管理と早期入金を一体で進められます。手数料は1.0%〜6.0%と、上限を含めたレンジが開示されています。
審査・契約・利用のすべてがオンラインで完結し、最短2営業日での入金に対応します。東証プライム上場企業2社による共同運営で、すでに同プラットフォームで請求書を扱っている事業者に向いています。
まとめ
ファクタリングの仕訳は、譲渡時に売掛金を「未収入金」へ振り替え、入金時に差額(手数料相当分)を「売上債権売却損」で処理するのが基本です。2社間では回収・送金を「預り金」で挟み、3社間では自社の回収工程がないぶん仕訳が単純になります。手数料相当分は消費税の非課税で、売却損は全額が損金に算入されます。
これらの処理には、消費税法や企業会計基準第10号といった根拠があります。仕訳例に加えて根拠まで押さえておけば、稟議や監査でも自信を持って説明できます。まずは自社のケースに当てはまる仕訳例で月次を締め、そのうえで手数料や記帳の手間を見直したい場合は、会計連携や手数料開示に対応したサービスの資料もあわせて確認してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 売上債権売却損とは何ですか?
A. 売上債権売却損とは、売掛金などの売上債権を額面より低い金額で売却したときに生じる差額(損失)を計上する勘定科目です。ファクタリングでは、譲渡した売掛金の帳簿価額と、手数料を差し引いて実際に入金された金額との差額がこれにあたります。営業外費用に区分され、「売掛債権売却損」「売掛債権譲渡損」と表記されることもありますが、指す内容は同じです。
Q. ファクタリングの手数料は「売上債権売却損」と「支払手数料」のどちらで仕訳しますか?
A. 買取型ファクタリングの手数料は、原則として「売上債権売却損」で仕訳します。額面より低い金額で債権を売却した差額であり、性質が売却損だからです。会計ソフトに専用科目が無い場合は「支払手数料」「雑損失」「割引料」で代用しても問題ありません。一方、保証型の保証料は、資産の売却ではなくサービスの対価なので「支払手数料」で処理します。
Q. ファクタリングの手数料に消費税はかかりますか?
A. ファクタリングの手数料相当分に、消費税はかかりません(非課税)。ファクタリングは売掛債権(金銭債権)の譲渡にあたり、金銭債権の譲渡が非課税取引と定められているためです。税区分は「非課税」を選びます。根拠は、有価証券等の譲渡を非課税とする消費税法別表第二第二号と、その範囲に「売掛金その他の金銭債権」を含める施行令第9条第1項第4号です。ただし債権譲渡登記の費用や司法書士報酬は課税対象です。
Q. ファクタリングの利用は法人税に影響しますか?
A. ファクタリングの手数料(売上債権売却損)は、法人税の計算上、全額が損金に算入されます。法人税法第22条第3項第3号が資本等取引以外の取引に係る損失を損金に算入すると定めており、売上債権売却損はこの損失にあたるためです。手数料の分だけ課税所得が圧縮されるので、ファクタリングの利用によって法人税が増えることはありません。
Q. ファクタリングは負債(借入金)として計上されますか?
A. ファクタリングは借入ではなく債権の売却なので、負債には計上されません(オフバランス化できます)。売掛金という資産が現金に変わるだけで負債が増えず、金融機関からの評価にも影響しにくくなります。ただしオフバランス化が認められるのは、譲渡した債権を後から買い戻す義務がない売切り(償還請求権なし)の契約の場合です。買戻し義務がある取引は、実質的に借入と同じとみなされることがあります。
Q. ファクタリングで譲渡した売掛金は「売掛金」と「未収入金」のどちらで処理しますか?
A. ファクタリング契約を結んだ時点で、その債権は「未収入金」へ振り替えます。契約後の債権は、通常の営業取引による売掛金ではなく、ファクタリング会社からの入金を待つ債権に性質が変わるためです。入金時には、この「未収入金」を消し込みます。ただし、契約と入金が同じ日に完了する場合は、振り替えを省いて売掛金から直接消す形も使われます。
Q. 2社間ファクタリングと3社間ファクタリングで仕訳はどう変わりますか?
A. 大きな違いは、2社間では売掛先から回収した売掛金をファクタリング会社へ送金する「預り金」の仕訳が加わる点です。2社間は売掛先に知らせず契約するため、売掛先からの入金をいったん「預り金」として計上し、送金時に取り崩します。一方、3社間ではファクタリング会社が売掛先から直接回収するため、自社に回収・送金の工程がなく仕訳が単純になります。手数料を「売上債権売却損」で計上する点は、どちらも共通です。
Q. 会計ソフトに「売上債権売却損」の科目が無い場合はどうすればよいですか?
A. 対応は2つあり、勘定科目の設定画面で「売上債権売却損」を営業外費用として新規に追加するか、既存の「支払手数料」「雑損失」「割引料」で代用します。freee・マネーフォワード・弥生などでも、専用科目が初期状態で無ければ同様に追加または代用できます。いずれも費用科目で損金算入の扱いは変わらず、税区分も「非課税(対象外)」を選ぶため、どの科目を使っても税額は変わりません。
Q. ファクタリングの入金が決算期末をまたぐ場合、売上はいつ計上しますか?
A. 売上は、その元となる取引を計上した事業年度の収益であり、ファクタリングで資金化するタイミングでは前後しません。売掛金はもともとの売上を計上した事業年度に帰属するため、資金化が決算期末をまたいでも、その事業年度の課税対象です。期末時点で譲渡済み・入金前の債権があれば、「未収入金」として資産に残る点もあわせて確認しておきます。
Q. でんさい(電子記録債権)の割引とファクタリングで仕訳は違いますか?
A. でんさい割引とファクタリングは、扱う債権の種類が違うだけで、差額を売却損で処理する会計の考え方は共通しています。でんさい割引では、支払期日前に資金化した際の割引料を「電子記録債権売却損」などで処理し、これは買取型ファクタリングの「売上債権売却損」と同じ性質です。自社が保有しているのが売掛債権か電子記録債権かを確認して、対応する科目を選びます。
Q. 給与ファクタリングも同じように仕訳できますか?
A. いわゆる「給与ファクタリング」は事業者向けのファクタリングとは別物で、金融庁が貸金業に該当すると明示しており、事業者の売掛債権の売却と同じ会計処理はできません。給与ファクタリングは個人(労働者)の賃金債権を買い取る取引で、法的には貸付けと同様に扱われます。本記事で示した仕訳は、事業者が保有する売掛債権を売買(債権譲渡)する通常のファクタリングを前提としています。
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