2021年8月に公表されたFATF(金融活動作業部会)の第4次対日相互審査で、日本は「重点フォローアップ国」と位置付けられました。それ以降、金融機関はもとより、金融庁の「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」が対象とする特定事業者全般において、海外制裁リストのスクリーニング体制の整備が加速しています。
外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく資産凍結義務や、OFAC・EU・国連の各制裁リストへの対応が不十分な場合、取引の無効や行政処分のリスクが生じます。暗号資産交換業者や送金事業者では、送付人・受取人の情報を通知するトラベルルールと制裁リスト照合を一体で運用する必要も生じています。
本記事では、日本企業が押さえるべき主要な海外制裁リストの種類と法的背景を整理し、実務での照合手順と、海外制裁リスト対応に強い反社チェックツールを比較・解説します。国内の反社チェックと国際的な制裁リストスクリーニングを一体で運用できる体制の構築は、コンプライアンス管理の重要な課題になっています。
目次
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海外制裁リストとは?
海外制裁リストとは、各国政府や国際機関が外交・安全保障・人権侵害への対抗措置として指定した個人・団体・国のリストです。リストに登録された対象との取引・資産移動・サービス提供は禁止または制限されます。ここからは、日本企業が実務上関わる主要なリストを整理します。
主要な海外制裁リストの種類
- OFAC SDNリスト(米国)
- 米国財務省外国資産管理局(OFAC)が管理する「特別指定国民リスト(Specially Designated Nationals and Blocked Persons List)」。米ドル決済や米国金融機関との取引が絡む場合、日本企業も実質的に遵守が求められます。OFAC SDNリストに掲載された個人・団体との取引は、米国人または米国の管轄内での取引において直接禁止されます。
- EU制裁統合リスト(EU)
- EUが管理する制裁対象の個人・団体・国のリスト。EU域内での事業や、EU企業との取引において遵守義務が生じます。地域別・テーマ別に多数の制裁体制が存在し、ロシア・ベラルーシ・イランなどを対象にした制裁も含まれます。
- 国連安全保障理事会制裁リスト(UN SC)
- 国連安保理が各制裁委員会を通じて管理するリスト。日本は外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づき、国連制裁決議を国内で実施する義務を負います。
- 英国HMT制裁リスト(UK)
- Brexit後、英国は独自の金融制裁体制(OFSI管理)を整備しています。英国関連取引がある企業は対応が必要です。
- 日本の資産凍結等対象者リスト(財務省)
- 日本政府が外為法に基づき指定する個人・団体のリスト。国連制裁決議に基づく指定のほか、日本独自の指定(核・ミサイル開発関連等)も含まれます。金融機関は対象者との取引を凍結する義務を負います。
- BIS Entity List・METI外国ユーザーリスト(輸出管理)
- 安全保障貿易管理の観点から、輸出・技術移転先として注意が必要な個人・団体のリスト。資産凍結を目的とする経済制裁リストとは制度の枠組みが異なりますが、実務上はあわせて照合されます。製造業・IT企業など輸出取引がある企業で参照されます。
出典・参考資料(2件)
日本企業が海外制裁リスト照合を求められる背景
日本企業が海外制裁リストへの対応を迫られている背景には、大きく2つの法的・政策的な要因があります。
第一に、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく義務です。外為法は財務省令に基づき、国連安保理決議や日本政府の閣議決定により指定された個人・団体に対する資産凍結・取引禁止を定めており、国内の金融機関および事業者は対象者リストとの照合が実質的に求められます。
第二に、FATF勧告および金融庁ガイドラインに基づくAML/CFT体制整備です。FATFは勧告6・7において、制裁対象者に対する「ターゲット型金融制裁(TFS)」の実施を加盟国に求めています。
2021年のFATF第4次対日相互審査で日本が「重点フォローアップ国」に指定されたことを受け、金融庁のAML/CFTガイドラインに沿った制裁リストスクリーニングの厳格な実施が金融機関に求められるようになりました。
出典・参考資料(3件)
AML/CFT対応と海外制裁リスト照合の関係
AML/CFT(Anti-Money Laundering / Countering the Financing of Terrorism:マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策)と制裁リスト照合は、コンプライアンス上の目的が異なりながらも、実務では密接に連動します。ここからは、誰がどの法律で義務を負うかを整理します。
AML/CFT対応が義務付けられる業種とは
犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)第2条第2項に基づく「特定事業者」には、銀行・証券会社・保険会社・暗号資産交換業者・クレジットカード事業者・宅地建物取引業者などが含まれます。これらの事業者は、取引時確認(本人確認)と制裁リストスクリーニングを含むリスクベース・アプローチの実施が義務付けられています。
金融庁ガイドラインの態勢整備方針を経た現在、特定事業者には「形式的な整備」から「実効性のある運用」への移行が求められています。制裁リストスクリーニングの自動化と継続モニタリングの整備が、実務上の課題になっています。
出典・参考資料(1件)
特定事業者のなかでも、銀行・証券会社・保険会社・暗号資産交換業者といった金融機関には、犯収法の取引時確認や当局検査を前提としたAML実務など、一般企業にはない固有の要件が課されます。
外為法・安全保障貿易管理における制裁スクリーニング
非金融事業者であっても、海外への輸出・技術移転を行う製造業・IT企業は、外為法の安全保障貿易管理の観点から取引先のスクリーニングが求められます。経済産業省が管理する「外国ユーザーリスト」(懸念ある最終需要者のリスト)や、米国商務省の「BIS Entity List」との照合が、輸出前スクリーニングの実務として定着しています。
また、2022年以降のロシア制裁強化を契機に、製造業・商社・物流企業においても、取引先の制裁対象該当性を確認する体制整備が加速しています。
出典・参考資料(1件)
暗号資産交換業者に求められる制裁スクリーニングとトラベルルール対応
暗号資産交換業者は、犯収法第2条の特定事業者として、取引時確認と制裁リストスクリーニングの義務を負います。加えて、暗号資産特有の義務として「トラベルルール」への対応が求められる点が、他業種と大きく異なります。
トラベルルール(移転時情報通知義務)は、令和4年(2022年)の犯収法改正で新設され、2023年6月1日に施行されました。暗号資産交換業者・電子決済手段等取引業者に対し、暗号資産などの移転時に、送付人・受取人の氏名や住所といった情報を移転先の事業者へ通知することを義務付けるものです。FATF勧告16に対応した国際基準で、犯罪者や制裁対象者による資金移転の追跡を可能にすることを目的としています。
トラベルルールで得た送付人・受取人の情報は、制裁リストスクリーニングと一体で運用してはじめて意味を持ちます。通知された相手方の氏名を、OFAC・EU・国連などの制裁リストやPEPsリストと照合し、制裁対象への資金移転を未然に防ぐ流れです。暗号資産交換業者・送金事業者では、トラベルルール対応と国際的な制裁スクリーニングを同じ体制で回せるかが、ツール選定の判断軸になります。
出典・参考資料(2件)
暗号資産アドレス(ウォレット)スクリーニングとOFACの暗号資産アドレス指定
暗号資産の制裁スクリーニングでは、名前の照合に加えて「ウォレットアドレス(暗号資産アドレス)」の照合という、暗号資産に固有の論点が加わります。
OFACは、制裁対象の個人・団体をSDNリストに掲載する際、その対象が使用する暗号資産アドレス(Digital Currency Address)を識別情報として併記することがあります。この場合、掲載されたアドレスとの取引は、名前が判明していなくても制裁対象取引に該当し得ます。
OFACは、掲載する暗号資産アドレスが網羅的ではない旨を示しており、対象に関連する未掲載のアドレスについても取引を避ける責任は利用者側にあるとされています。
このため暗号資産交換業者では、取引相手の氏名・法人名の制裁リスト照合に加えて、入出金先のウォレットアドレスがSDNリスト掲載アドレスや、それに関連するアドレスに該当しないかを確認する仕組みが求められます。名前ベースのスクリーニングだけでは、暗号資産特有のリスクを捕捉しきれない点に注意が必要です。
出典・参考資料(1件)
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海外制裁リスト照合の実務手順
海外制裁リストのスクリーニングは、国内の反社チェックと同様の「名前・法人名の照合」を基本としながらも、対応すべきリストの多さと多言語対応の必要性から、運用上の難度が高い業務です。ここからは、実務フローの主要ステップを整理します。
スクリーニング対象の設定
まず、自社がどの制裁リストへの対応義務を負うかを特定することが出発点になります。米国との取引(ドル決済・米国企業との取引)がある場合はOFAC SDNリスト、EU取引がある場合はEU制裁統合リスト、日本国内では財務省の資産凍結等対象者リストへの照合が実務上の起点になります。
次に、スクリーニング対象の範囲を決める工程に入ります。新規取引先・既存取引先の法人名・代表者名・実質的支配者名が基本対象です。PEPs(政治的公開人物)については、本人だけでなくその家族・密接関係者も対象とするリストが多く、対象者の範囲設定が重要になります。
取引先の名称や代表者名の照合だけでは背後の支配者を捉えきれないという課題は、国内の反社チェックでも共通します。名前ベースの検索がなぜ限界を抱えるのか、そしてどこまで審査を踏み込ませる必要があるのかは、次の指摘に端的に表れています。

インターネット検索や新聞記事のデータベースなどを利用して、相手方の会社名や代表者名を検索しても、背後にいる反社会的勢力の存在は判明しません。相手方の実質的支配者まで遡って徹底的に反社チェックを行い、少しでも疑わしい要素があれば取引中止を検討するといった厳密な取り組みが求められます。
ヒット・同姓同名への対処と証跡管理
制裁リストスクリーニングで最も運用負荷が高いのが、ヒット時の「同一性判定」です。特に外国語の人名・法人名は表記ゆれが多く、制裁対象者と同名の無関係な別人がヒットする「誤検知(False Positive)」が大量に発生することがあります。
同一性判定のプロセスでは、生年月日・住所・国籍・関連法人名などの補足情報を照合し、同一人物かどうかを合理的に判断します。判断の根拠と対応結果は、監査・当局対応のために記録・保管が必要です。金融庁ガイドラインでは、制裁対応の証跡を保管し、社内外の監査に耐えられる体制を整備することが求められています。
継続的なモニタリングも欠かせません。制裁リストは随時更新されるため、一度照合した取引先であっても、新規指定を検知するための継続的なスクリーニング体制が必要になります。
出典・参考資料(1件)
照合と同一性判定を尽くしてもなお該当の疑いが晴れないとき、最終的に取引を続けるかどうかの判断が残ります。この局面での対応の考え方は、国内の反社チェックの実務でも次のように整理されています。

反社会的勢力に該当する疑いが晴れないときは、契約締結前であれば締結を断念し、取引期間中であれば暴排条項に基づいて契約を解除すべきです。取引停止にはコストがかかるとしても、反社会的勢力との関係を断ち切って企業としての信頼を維持することを優先しましょう。
海外制裁リスト対応ツールを選ぶポイント
海外制裁リスト対応のためにツールを選ぶ際には、国内反社チェックとは異なる観点での評価が必要です。前提として、海外リスクへのアプローチはサービスごとに異なります。制裁・公的リストを機械的に自動照合したいのか、収録リストの網羅性を最大化したいのか、現地に踏み込んだ人物・企業調査まで求めるのか——自社の取引実態に照らして、どの型が必要かを見極めることが出発点になります。
そのうえで、以下の4つのポイントを確認すると、自社の運用実態に適したツールを選びやすくなります。
対応国・対応リスト数のカバレッジ
自社の取引先が所在する国・地域への対応状況が、最初の評価軸です。対応国数は製品によって大きく異なり、数十ヶ国から240ヶ国以上まで幅があります。また、対応する制裁リストの総数も製品差が大きく、OFAC・EU・国連の主要3リストだけを収録するものから、1,400以上の制裁・公的リストをカバーするものまで存在します。
自社の業種・取引先所在地を踏まえ、対応が必要なリストが網羅されているかの確認が求められます。
PEPs(政治的公開人物)およびOFAC 50%ルールへの対応
PEPs(Politically Exposed Persons:政治的公開人物)とは、外国の国家元首・政府高官・軍高官・司法関係者・公的企業の幹部などの役職にある個人と、その親族・密接関係者を指します。FATF勧告では、PEPsとの取引に対して強化されたデューデリジェンス(EDD)の実施が求められます。
ツールによってPEPsのカバー範囲(職種分類数・対象国数・親族カバーの有無)が異なるため、自社のリスク評価方針に合わせた確認が必要です。
OFAC 50%ルールとは、制裁指定された個人・団体が50%以上の持分を持つ法人も制裁対象とみなすOFACの運用ルールです。法人を取引先とする場合、その株主構成を遡って照合する機能の有無は、OFAC規制への準拠レベルに直結します。
リアルタイム更新と継続モニタリング
制裁リストは随時更新されます。OFAC SDNリストは頻繁に更新されることが知られており、新規指定を見逃さないための体制整備が必要です。ツールによって更新頻度(24時間365日・日次・週次など)と、既存取引先の変動を検知する継続モニタリング・アラート機能の有無が異なります。新規取引時のスクリーニングだけでなく、既存取引先の継続的な監視機能があるかの確認が重要になります。
こうした継続モニタリングは、犯収法・金融庁ガイドラインが特定事業者に求める「継続的顧客管理(ODD)」の一部でもあります。実施頻度やリスク評価の基準など、制度としての位置づけは次の記事で確認できます。
証跡管理と監査対応
金融庁ガイドラインや外為法に基づく規制当局への説明責任を果たすため、スクリーニング実施日時・対象者・結果・判断根拠の記録・保管機能が必要です。「誰が・いつ・何を・どのように判断したか」を証明できる調査履歴の管理機能と、監査担当者や外部監査が参照できる形式でのデータエクスポート機能を確認することが望まれます。
海外制裁リスト対応に強い反社チェックツールの比較
反社チェックツールの中でも、海外制裁リストのスクリーニングや海外リスク調査に対応した機能を持つサービスは限られています。ここでは、国際的な制裁リスト照合や海外リスク調査の機能を備えた代表的なサービスを取り上げ、機能・対応範囲・料金の観点から比較します。
海外への対応アプローチは、大きく3つの「型」に分かれます。自社の取引実態に照らして、どの型が必要かを起点に候補を絞ると選びやすくなります。
- 即時DB照合型:自社データベースやAIで名前を即時に照合するタイプ。国内反社チェックと海外リスク情報を同じツールで回したい場合に向きます(RiskAnalyze/RISK EYES/RoboRoboコンプライアンスチェック/Riskdog)。
- 網羅ウォッチリスト型:グローバルウォッチリストや提携データベースで、制裁リスト・PEPsを幅広く照合するタイプ。対応リストの網羅性を最優先したい場合に向きます(日経リスク&コンプライアンス/JCIS WEB DB Ver.3/SP RISK SEARCH/Sansan リスクチェック)。
- 現地調査型:専門調査員が現地メディア・関係者まで踏み込んで調べるタイプ。データベース照合では拾えない深度の調査が必要な場合に向きます(DQ反社チェック)。
| サービス名 | RiskAnalyze | RISK EYES | 日経リスク&コンプライアンス | JCIS WEB DB Ver.3 | SP RISK SEARCH | Sansan リスクチェック | RoboRoboコンプライアンスチェック | DQ反社チェック | Riskdog |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 海外対応国・地域数 | 240以上の国・地域 | 非公表 (日米の制裁リストに対応) | 200以上の国・地域 | 非公表 (国籍指定で照会) | 非公表 (海外コンプライアンスチェック機能) | 非公表 (World-Check等を照合) | 約190ヵ国 | 非公表 (海外調査に対応) | 非公表 (制裁・PEPs約30万件を収録) |
| 主要制裁リスト | Sanction情報に対応 (対象リスト名は非公表) | OFAC・日本財務省の 資産凍結等対象者リスト | OFAC・EU・国連ほか 1,400以上の制裁・公的リスト | 要問い合わせ (海外リスク情報約500万件を照会) | 海外制裁リストに対応 (リスト名は非公表) | 各国の制裁リストに対応 (World-Check経由) | 海外情報DBに対応 (約540万件/リスト名は非公表) | 制裁リストに対応 (海外調査/リスト名は非公表) | 制裁リストを収録 (約30万件/リスト名は非公表) |
| PEPs対応 | ●海外・国内PEPsに対応 | △公開情報なし | ◎200超の国・地域/22職種/親族含む | ●PEPsデータ140万件超 | ●PEPsリストに対応 | △公開情報なし | △公開情報なし | ●PEPsリストに対応(海外調査) | ●PEPs・制裁データ約30万件 |
| OFAC 50%ルール | △公開情報なし | △公開情報なし | ◎対象企業5.4万社超を収録 | △公開情報なし | △公開情報なし | △公開情報なし | △公開情報なし | △公開情報なし | △公開情報なし |
| 継続モニタリング | △公開情報なし | ●リスクアラート機能 | ●自動再スクリーニング(24時間365日更新) | △再検索1年以内無料 | △公開情報なし | △一括再チェックに対応 | △公開情報なし | ●リスクアラート(riskey本体) | ●リスクモニタリング(即時アラート) |
| 月額費用 | 27,500円〜 (ライトプラン/年間600検索) | 最低15,000円/月(税別) +300円/検索 | 要問い合わせ (ID利用料+検索単価×件数) | 要問い合わせ (年間ID利用料+検索従量) | 要問い合わせ (会員制・個別見積もり) | 要問い合わせ (Sansanのオプション) | 従量プラン0円〜/ミニマム5,000円〜 (税抜・1件250円〜) | 従量プランは無料 ツール型10,000円〜(税別) | 要問い合わせ (最低契約期間12ヶ月) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 詳細を見る | 詳細を見る | 詳細を見る | 詳細を見る | 公式資料を見る | 詳細を見る | 詳細を見る |
※上記は一般的な傾向です。実際の機能搭載の有無については各社情報をご確認ください。◎=手厚く対応/●=対応/△=公開情報なし(非対応という意味ではなく、資料請求や問い合わせで確認できる場合があります)。「非公表」「要問い合わせ」の項目も同様に、資料請求で具体的な対応リストや料金を確認できます。
※ 各情報は2026年6〜7月時点の公式情報に基づきます。料金・機能の詳細は各社に直接お問い合わせください。
ここで紹介するツールはいずれも、取引先の氏名・法人名を制裁リストやPEPsリストと照合する「名前ベース」のスクリーニングを担うものです。暗号資産交換業者の場合、トラベルルールで通知された送付人・受取人の氏名をこうしたツールで制裁リスト照合できます。
一方で、前述したウォレットアドレス(暗号資産アドレス)そのものの照合は、名前照合とは仕組みが異なり、一般にブロックチェーン分析ツールなど別カテゴリのソリューションが担います。暗号資産交換業者は、名前ベースの制裁リスト照合(本記事のツール)とアドレスベースの照合(ブロックチェーン分析ツール)を組み合わせて備えるのが実務的です。
1. RiskAnalyze(KYCコンサルティング株式会社)

AIを活用したWEBサービス型のコンプライアンス・反社チェックツールです。国内約1,000媒体のメディア・行政処分・訴訟情報を1時間おきに自動収集する独自リスクデータベースを軸に、240以上の国・地域の海外リスク情報を収録し、PEPs・Sanction情報を含むAML/CFT対応のスクリーニングに対応しています。
料金は初期費用無料・月額27,500円(ライトプラン・年間600検索)からで、スタンダードプランは月額50,000円(年間1,200検索)、それ以上は別途見積もりです。API利用料は無料で、Salesforce・kintoneとの連携にも対応します。1件あたり最短0.4秒での判定と、CSVによる一括検索(1,000件を約1分)に対応し、調査の証跡はクラウドに7年間保存されます。
累計導入企業数は1,300社(2025年6月時点)です。国内反社チェックと海外リスク情報を1つのツールで一体運用したい企業に適しています。
2. RISK EYES(ソーシャルワイヤー株式会社)

WEBニュース・新聞記事・ブログ/掲示板・制裁リスト・独自の反社データベースの5系統を検索対象とする、クラウド型の反社チェック専用ツールです。海外対応としては日米が公表する制裁リスト(OFAC・日本財務省の資産凍結等対象者リスト)の検索機能を備え、海外取引先のチェックに対応します。
料金は初期費用無料・月間最低利用料金15,000円(税別)で、1検索あたり300円の従量課金です(検索する媒体ごとに課金)。前回検索時に出てこなかった新規記事のみを検索する差分検索や、登録対象のリスク報道を懸念レベル5段階で自動通知するリスクアラート機能を備え、定期チェックとモニタリングを効率化できます。無料トライアルも用意されています。
主要3リストのような網羅性より、国内反社チェックに日米制裁リスト照合を加えたい企業に向く選択肢です。
3. 日経リスク&コンプライアンス(株式会社日本経済新聞社)

日経テレコンの国内メディアデータベースと、米ダウ・ジョーンズが収集するグローバルウォッチリスト(400万件以上)を組み合わせたコンプライアンススクリーニングソリューションです。OFAC・EU・国連・英国・日本などの制裁機関が指定するリストを含む、1,400以上の制裁・公的リストに対応しています。
ダウ・ジョーンズのデータは200以上の国・地域、60以上の言語に対応し、PEPs(200以上の国・地域、22職種分類、親族を含む)、OFAC 50%ルール対象企業54,000社以上、国有企業297,000社超を収録します。ウォッチリストは24時間365日更新され、自動再スクリーニングによる継続モニタリングにも対応します。
料金はID利用料(月額)と検索件数に応じた従量課金の組み合わせで、1年単位の年契約(要見積もり)です。無料トライアルが用意されています(所定の審査あり)。制裁・公的リストの網羅性を最優先する組織に適したサービスです。
4. JCIS WEB DB Ver.3(日本信用情報サービス株式会社)

自社で構築した反社・リスク情報データベースに照合するDB照合型の反社チェックシステムです。全国紙・地方新聞・行政処分情報を収録した国内DBに加え、シンガポールのAcuris Risk Intelligence(ARI)社との提携(2022年5月)により、約500万件の海外リスク情報と140万件超のPEPsデータの照会に対応しています。
海外リスク情報検索は、個人名・法人名と国籍を入力して照会する仕組みで、基本料金500円(税込)・詳細1,500円(税込)の従量課金です。国内反社チェックと海外スクリーニングを同一システムで実施できます。料金体系は初期費用不要で、年間ID利用料(前払い・要見積もり)と検索件数に応じた従量課金の組み合わせです。
一度検索した対象は1年以内であれば再検索が無料で、継続モニタリング用途のコストを抑えやすい設計です。CSVによる一括検索(最大5,000件)や登記情報PDFの自動解析照会も備えます。
5. SP RISK SEARCH(株式会社エス・ピー・ネットワーク)

企業危機管理の専門会社である株式会社エス・ピー・ネットワークが提供する、会員制の反社チェックシステムです。1回の入力で、独自データベース(QSS)・新聞記事検索・インターネット風評検索の3つの結果を同時に取得できます。
海外取引向けには、海外制裁リスト・PEPsリストに対応した「海外コンプライアンスチェック」機能(2021年9月追加、スイスのinfo4c AG等と連携)を備え、AML/CFT・贈賄リスク対策に対応します。
独自データベース(QSS)は氏名の表記ゆれ(斉藤/斎藤/齋藤など)や年齢レンジ指定に対応し、個人・法人の一括検索は最大20,000件まで可能です。新聞記事検索は1960年以降の全国紙・地方紙を対象とします。会員制サービスのため、初期費用・月額費用ともに個別見積もりで、料金は要問い合わせです。危機管理コンサルティングの実務ノウハウを背景にしたデータベースと検索機能を求める企業に向いています。
6. Sansan リスクチェック(Sansan株式会社)

営業DXサービス「Sansan」のオプション機能として提供される、取引先リスクの自動照合機能です。Sansanに蓄積された名刺・取引先の企業情報を、外部のリスク情報データベースと自動照合し、反社会的勢力との関係・マネーロンダリング・テロ資金供与のリスクを検知します。
連携するデータベースにはLSEG(旧Refinitiv)のWorld-Checkが含まれ、各国の制裁リストを照合対象に加えています(2022年の機能拡充)。
制裁・反社系のLSEG(旧Refinitiv)と、新聞記事・公知情報系のKYCC(KYCコンサルティング)の2系統のデータベースを併用し、検知の網羅性を補完します。メール署名の取り込みやキーワード検索により、名刺交換前や取引のない企業も照合できる点が特徴です。料金はSansan本体の料金体系に含まれるオプション費用として別途かかり、具体額は要問い合わせです。
すでにSansanを名刺・取引先管理で利用している企業が、その延長でリスク検知を組み込みたい場合に適しています。
7. RoboRoboコンプライアンスチェック(オープン株式会社)

インターネット記事検索・新聞記事DB検索・海外情報DB検索を組み合わせた、クラウド型の反社・コンプライアンスチェックサービスです。海外対応としては約190ヵ国・約540万件の海外情報データベースを用いた海外情報の同時検索を備え、海外法人・個人のチェックに対応します。SBI証券が上場企業に求められるコンプライアンスチェックの要件の観点で監修しています。
この海外情報データベースを構成する連携先について、提供元は次のように説明しています。

データベースに関しては、ネット検索やSNS、新聞記事に加えて、SPネットワーク様の反社データベースやLSEG社が提供するワールドチェック、官報データベースなど、多種多様な情報ソースと連携しています。
Excelのドラッグ&ドロップで取引先を一括登録し、1クリックでまとめて検索できます。検索結果を高・中・低の3段階で自動分類するAI注目度判定や、生成AIによる記事要約で確認作業を効率化します。料金は初期費用無料で、1件あたり250円〜(インターネット検索・従量プラン、税抜)から利用でき、実際の取引先を10件まで無料で試せます。
料金区分は出典により表記に差があるため、正確な料金は公式の最新資料で確認することをおすすめします。低単価の従量課金で海外情報も含めてチェックしたい企業に向いています。
8. DQ反社チェック(株式会社ディークエストホールディングス)

Webセルフチェックツールと、専門調査員による調査代行を組み合わせたハイブリッド型のサービスです。海外対応としては制裁リスト・PEPsリスト・現地メディア・判例を対象とした海外調査(riskey Global)を提供し、世界調査業協会(WAD)のネットワークを活用した現地調査を強みとしています。
20年超の調査実績とACFE JAPAN(日本公認不正検査士協会)の運営という調査ノウハウの蓄積を背景に持ちます。
料金は、月額固定のセルフチェックツール(月額10,000円・税別〜)と、1件あたり従量の調査代行(一括調査500円/件〜、リスク検索2,500円・税別〜、海外調査10,000円〜)の二系統に分かれ、いずれも初期費用は無料です(海外調査の単価は公式サイト内で表記に差があるため要確認)。
データベース照合による即時の制裁リストチェックというより、現地に踏み込んだ人物・企業調査を必要とするケースに適しています。
9. Riskdog(Baseconnect株式会社)

法人営業支援データベース「Musubu」で知られるBaseconnect株式会社が2025年1月にリリースした、与信管理・コンプライアンスチェック(反社チェック)・法人確認を1つに統合したサービスです。企業レポートの構成要素にPEPs・制裁リストを含み、制裁対象・PEPsに関する約30万件のデータを基盤に、企業・役員に紐づくリスク情報をAIが自動収集・解析します。
リスクスコアリングAIや名寄せAIにより、同姓同名・類似企業の情報を整理しながらリスクを判定します。取引先だけでなく役員・親会社・子会社も自動追跡の対象とします。公式に確定している料金情報は最低契約期間12ヶ月という条件のみで、月額・従量の具体額は要問い合わせです。
2025年1月リリースの新しいサービスであり、データ件数の基準時点や導入実績が公表段階にある点は考慮のうえ、最新の情報を確認して検討することをおすすめします。
まとめ
本記事では、日本企業が押さえるべき主要な海外制裁リスト(OFAC SDNリスト・EU制裁統合リスト・国連安保理制裁リスト・財務省の資産凍結等対象者リストなど)の種類と法的根拠、暗号資産交換業者のトラベルルール対応、実務での照合手順、ツール選定のポイントを解説しました。
海外制裁リスト対応では、対応国・対応リスト数のカバレッジ、PEPs対応、リアルタイム更新・継続モニタリング機能、証跡管理の4点が主要な評価軸です。
そのうえで、制裁・公的リストの網羅性を最優先するなら網羅ウォッチリスト型、国内反社チェックと海外リスク情報を同じツールで回してコストを抑えたいなら即時DB照合型、現地に踏み込んだ調査が必要なら現地調査型、というように、自社の取引実態から必要な「型」を選ぶことが出発点になります。
本記事で取り上げたのは、海外制裁リスト対応に強い9サービスです。国内の反社チェックも含めてツール全体を見渡し、料金・データソース・精度から選びたい場合は、カテゴリの比較記事もあわせてご覧ください。
MCB FinTechカタログでは、反社チェックツールの詳細資料を無料でダウンロードできます。各社の機能・料金・海外対応状況を比較・検討する際の参考として、ぜひご活用ください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 日本企業も海外制裁リストへの対応義務がありますか?
海外制裁リストへの対応は、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく資産凍結義務と、FATF勧告・金融庁ガイドラインに基づくAML/CFT体制整備の両面から、多くの日本企業に実質的に求められます。外為法は国連安保理決議や日本政府の指定した個人・団体に対する資産凍結・取引禁止を定めており、金融機関や事業者は対象者リストとの照合が必要です。
加えて、米ドル決済や米国企業との取引が絡む場合はOFAC SDNリスト、EU取引がある場合はEU制裁統合リストなど、取引実態に応じて各国の制裁リストへの対応が求められます。国内取引のみであっても、財務省の資産凍結等対象者リストへの照合が実務上の起点になります。
出典・参考資料(2件)
Q. PEPs(政治的公開人物)とは何ですか?なぜ制裁スクリーニングで重要なのですか?
PEPs(Politically Exposed Persons:政治的公開人物)とは、外国の国家元首・政府高官・軍高官・司法関係者・公的企業の幹部などの役職にある個人と、その親族・密接関係者を指します。これらの人物は、その地位を利用した汚職・収賄・資金洗浄のリスクが相対的に高いとされるため、FATF勧告ではPEPsとの取引に対して強化されたデューデリジェンス(EDD)の実施が求められます。
制裁対象者そのものではなくても、リスクの高い取引先として通常より慎重な確認が必要になる点が重要です。PEPsは本人だけでなく家族・密接関係者も対象に含まれることが多く、ツールを選ぶ際は、カバーする職種分類数・対象国数・親族カバーの有無を確認することが望まれます。
Q. 国内の反社チェックと海外制裁リスト照合は、別々のツールを用意する必要がありますか?
海外制裁リスト照合は、国内の反社チェックと同一のツールで一体運用できる場合が多く、必ずしも別々に用意する必要はありません。本記事で比較したツールの多くは、国内メディア・行政処分情報などの反社データベースと、OFAC・EU・国連などの海外制裁リストやPEPsリストを1つのプラットフォームで照合できる設計になっています。
運用を分けると、証跡管理や継続モニタリングが二重になり負荷が増えるため、国内・海外を横断して同じワークフローで回せるかは、ツール選定の重要な判断軸になります。ただし、海外リスクへのアプローチ(自動データベース照合・グローバルウォッチリストの網羅性・現地調査代行)はサービスごとに異なるため、自社の取引実態に必要な型を見極めることが前提です。
Q. 暗号資産交換業者はトラベルルールと制裁スクリーニングをどう一体運用すればよいですか?
暗号資産交換業者は、トラベルルールで通知された送付人・受取人の情報を、そのまま制裁リストスクリーニングにかけて一体運用することで、制裁対象への資金移転を未然に防ぐ流れを作ります。トラベルルール(移転時情報通知義務)は令和4年の犯収法改正で新設され2023年6月1日に施行されたもので、暗号資産などの移転時に送付人・受取人の氏名や住所を移転先の事業者へ通知することを義務付けています。
通知された相手方の氏名をOFAC・EU・国連などの制裁リストやPEPsリストと照合してはじめて、リスク遮断の意味を持ちます。加えて暗号資産では、氏名だけでなく入出金先のウォレットアドレスがSDNリスト掲載アドレスに該当しないかを確認する仕組みも必要です。トラベルルール対応と国際的な制裁スクリーニングを同じ体制で回せるかが、業者にとってのツール選定の判断軸になります。
出典・参考資料(2件)
Q. OFACの制裁リストに掲載された暗号資産アドレス(ウォレット)との取引も制裁対象になりますか?
OFACがSDNリストに識別情報として暗号資産アドレスを併記している場合、相手方の氏名が判明していなくても、その掲載アドレスとの取引は制裁対象取引に該当し得ます。さらにOFACは、掲載する暗号資産アドレスが網羅的ではない旨を示しており、対象に関連する未掲載のアドレスについても取引を避ける責任は利用者側にあるとしています。
このため暗号資産交換業者では、取引相手の氏名・法人名の制裁リスト照合に加えて、入出金先のウォレットアドレスがSDNリスト掲載アドレスやそれに関連するアドレスに該当しないかを確認する仕組みが求められます。名前ベースのスクリーニングだけでは、暗号資産特有のリスクを捕捉しきれない点に注意が必要です。
出典・参考資料(1件)
Q. 制裁リスト照合で無関係な同姓同名がヒットした場合(誤検知)はどう対応すればよいですか?
誤検知(False Positive)への対応では、生年月日・住所・国籍・関連法人名などの補足情報を照合して同一人物かどうかを合理的に判断し、その判断根拠と対応結果を証跡として記録・保管します。外国語の人名・法人名は表記ゆれが多く、制裁対象者と同名の無関係な別人が大量にヒットすることがあるため、同一性判定は制裁リストスクリーニングで最も運用負荷が高い工程です。
金融庁ガイドラインでは、制裁対応の証跡を保管し社内外の監査に耐えられる体制の整備が求められており、「誰が・いつ・何を・どのように判断したか」を証明できる調査履歴の管理機能があるかが、ツール選定でも重要になります。制裁リストは随時更新されるため、一度照合した取引先を継続的に再スクリーニングする体制もあわせて必要です。
出典・参考資料(1件)
Q. 海外制裁リスト対応ツールの費用相場はどのくらいですか?
海外制裁リスト対応ツールの費用は、月額固定料金と検索件数に応じた従量課金を組み合わせる形が主流で、具体額は要問い合わせ・個別見積もりとなるサービスが多くを占めます。
本記事で比較したツールでは、月額27,500円〜(年間検索数上限つき)や、月間最低利用料金15,000円+1検索300円といった公表価格のものから、ID利用料+検索単価×件数の年契約で要見積もりのもの、会員制で個別見積もりのものまで幅があります。
海外リスク情報や現地調査は1件あたりの従量単価が国内チェックより高く設定される傾向があるため、想定する検索件数・対象範囲を踏まえて総額を試算し、各社に直接見積もりを取って比較することをおすすめします。主要ツールの初期費用・月額・1件あたり単価を横並びで把握したい場合は、反社チェックツールの費用を一覧比較した記事もあわせて参考になります。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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