取引先との契約書や、従業員・採用者との誓約書に「反社会的勢力排除条項(反社条項)」を入れておくよう指示されたものの、実際にどんな文言を書けばよいのか手が止まっている——契約ひな型の空欄を前に、そう感じている法務・総務・管理の担当者は少なくありません。
この記事では、そのまま契約書にコピーして使える反社会的勢力排除条項の条文例と、独立した書面として交わす誓約書のひな型(公的機関が公表するモデル条項ベース)を掲載します。あわせて、条項に必ず入れるべき構成要素、契約類型ごとの文言の違い、反社会的勢力をどこまで定義に含めるかまで整理します。
条項を結ぶことはゴールではなく、締結後に取引先や従業員を継続的に確認して初めて実効性を持ちます。記事の後半では、条項を実務で機能させるための反社チェックの方法もあわせて解説します。まずは自社のひな型に足りない文言から確認していきましょう。
目次
反社会的勢力排除条項の例文(契約書に入れる条文全文)
まず、契約書にそのまま組み込める反社会的勢力排除条項の条文例を掲載します。以下は、公益財団法人 暴力団追放運動推進都民センター(暴追都民センター)が公表している暴力団排除条項の文例です。契約の相手方に反社会的勢力でないことを確約させ、該当した場合には催告なしで契約を解除できる形の、汎用的な完成形です。
条項の全文(そのままコピーできる完成形)
第○条 反社会的勢力の排除
1 甲は、乙が以下の各号に該当する者(以下「反社会的勢力」という。)であることが判明した場合には、何らの催告を要せず、本契約を解除することができる。
① 暴力団
② 暴力団員
③ 暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者
④ 暴力団準構成員
⑤ 暴力団関係企業
⑥ 総会屋等
⑦ 社会運動等標ぼうゴロ
⑧ 特殊知能暴力集団
⑨ その他前各号に準ずる者2 甲は、乙が反社会的勢力と以下の各号の一にでも該当する関係を有することが判明した場合には、何らの催告を要せず、本契約を解除することができる。
① 反社会的勢力が経営を支配していると認められるとき
② 反社会的勢力が経営に実質的に関与していると認められるとき
③ 自己、自社若しくは第三者の不正の利益を図り、又は第三者に損害を加えるなど、反社会的勢力を利用していると認められるとき④ 反社会的勢力に対して資金等を提供し、又は便宜を供与するなどの関与をしていると認められるとき
⑤ その他役員等又は経営に実質的に関与している者が、反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有しているとき3 甲は、乙が自ら又は第三者を利用して以下の各号の一にでも該当する行為をした場合には、何らの催告を要せず、本契約を解除することができる。
① 暴力的な要求行為
② 法的な責任を超えた不当な要求行為
③ 取引に関して、脅迫的な言動をし、又は暴力を用いる行為
④ 風説を流布し、偽計又は威力を用いて甲の信用を棄損し、又は甲の業務を妨害する行為
⑤ その他前各号に準ずる行為4 ①乙は、乙又は乙の下請又は再委託先業者(下請又は再委託契約が数次にわたるときには、その全てを含む。以下同じ。)が第1項に該当しないことを確約し、将来も同項若しくは第2項各号に該当しないことを確約する。
②乙は、その下請又は再委託先業者が前号に該当することが契約後に判明した場合には、直ちに契約を解除し、又は契約解除のための措置を採らなければならない。
③乙が、前各号の規定に反した場合には、甲は本契約を解除することができる。5 ①乙は、乙又は乙の下請若しくは再委託先業者が、反社会的勢力から不当要求又は業務妨害等の不当介入を受けた場合は、これを拒否し、又は下請若しくは再委託先業者をしてこれを拒否させるとともに、不当介入があった時点で、速やかに不当介入の事実を甲に報告し、甲の捜査機関への通報及び甲の報告に必要な協力を行うものとする。
②乙が前号の規定に違反した場合、甲は何らの催告を要さずに、本契約を解除することができる。6 甲が本条各項の規定により本契約を解除した場合には、乙に損害が生じても甲は何らこれを賠償ないし補償することは要せず、また、かかる解除により甲に損害が生じたときは、乙はその損害を賠償するものとする。
出典:「表明・確約」及び「暴力団排除条項」(暴力団排除条項の文例)|公益財団法人 暴力団追放運動推進都民センター(https://boutsui-tokyo.com/wp-content/uploads/kakuyaku.pdf)
この文例は「甲が乙に確約させる」片務型です。売主・買主のように双方が対等に確約し合う契約では、同じ内容を双方向で定めます。自社が甲・乙どちらの立場になるかに応じて主語を置き換えてください。
各項が何を担保するか
条文を貼るだけでなく、各項がどのリスクに対応しているかを押さえておくと、自社のひな型に不足がないか判断できます。上の文例は、次の6つの役割で構成されています。
- 第1項(属性要件):相手が暴力団や準構成員、関係企業などに該当するかという「誰であるか」の側面を対象にします。暴力団員でなくなってから5年を経過しない者(いわゆる元暴5年)まで含めている点が特徴です。
- 第2項(密接関係性の排除):相手自身が反社会的勢力でなくても、経営を支配・関与されていたり、資金提供などで反社会的勢力を利用したりしている関係を排除します。
- 第3項(行為要件):暴力的要求・不当要求・脅迫・信用毀損など「どんな行為をしたか」という側面を対象にします。属性要件と行為要件の両面を押さえるのが基本です。
- 第4項(再委託先の確認):下請・再委託先まで反社会的勢力でないことを確約させ、判明時には契約解除などの措置を求めます。委託取引で重要になります。
- 第5項(不当介入の排除・通報):反社会的勢力から不当要求を受けた場合に拒否し、速やかに報告・通報に協力する義務を定めます。
- 第6項(損害賠償・免責):条項にもとづく解除で相手に損害が生じても賠償を要しないこと、解除により自社に損害が生じた場合は相手が賠償することを定めます。
いずれの項も「何らの催告を要せず」解除できる(無催告解除)としている点が、反社会的勢力を速やかに取引から排除するうえでの要になります。
反社会的勢力排除に関する誓約書の例文(取引先向け・従業員/採用者向け)
契約書の1条として組み込む反社条項とは別に、相手方から独立した1枚の書面として「表明・確約書(誓約書)」を差し入れてもらう方法があります。契約書に条項を入れられない場面や、取引開始時に相手方の意思を明確に残したい場面で使われます。ここでは公的なひな型にもとづく取引先向けの例文と、雇用・採用の場面で使う従業員/採用者向けの例文を掲載します。
取引先向け誓約書の例文(1枚の書面で全文)
以下は、暴追都民センターが公表している表明・確約書の文例です。宛先・表明本文・署名押印欄まで含む、1枚の書面としての完成形で、取引先(法人)から差し入れてもらう書式として使えます。各項末尾の〈いたします・いたしません〉は、署名者本人が該当するほうを○で囲む欄です。
暴力団等反社会的勢力ではないこと等に関する表明・確約書
○○株式会社
代表取締役 殿〔○○株式会社代表取締役〕
住所
氏名(ふりがな)
昭・平 年 月 日生( 歳)1 私[当社]は、現在又は将来にわたって、次の各号の反社会的勢力のいずれにも該当しないことを表明、確約〈いたします・いたしません〉。
①暴力団 ②暴力団員 ③暴力団準構成員 ④暴力団関係企業 ⑤総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ ⑥暴力団員でなくなってから5年を経過しない者 ⑦その他前各号に準ずる者2 私[当社]は、現在又は将来にわたって、前項の反社会的勢力又は反社会的勢力と密接な交友関係にある者(以下、「反社会的勢力等」と言う。)と次の各号のいずれかに該当する関係がないことを表明、確約〈いたします・いたしません〉。
①反社会的勢力等によって、その経営を支配される関係 ②反社会的勢力等が、その経営に実質的に関与している関係 ③自己、自社若しくは第三者の不正の利益を図り、又は第三者に損害を加えるなど、反社会的勢力を利用している関係
④反社会的勢力等に対して資金等を提供し、又は便宜を供与するなどの関係 ⑤その他役員等又は経営に実質的に関与している者が、反社会的勢力等との社会的に非難されるべき関係
3 私[当社]は、自ら又は第三者を利用して次の各号のいずれの行為も行わないことを表明、確約〈いたします・いたしません〉。
①暴力的な要求行為 ②法的な責任を超えた不当な要求行為 ③取引に関して脅迫的な言動をし、または暴力を用いる行為 ④風説を流布し、偽計又は威力を用いて貴社の信用を毀損し、又は貴社の業務を妨害する行為 ⑤その他前各号に準ずる行為4 私[当社]は、下請け又は再委託先業者(下請け又は再委託契約が数次にわたるときは、その全てを含む。以下同じ。)との関係において、次の各号のとおりであることを表明、確約〈いたします・いたしません〉。
①下請け又は再委託先業者が前1及び2に該当せず、将来においても前1、2及び3に該当しないこと②下請け又は再委託先業者が前号に該当することが判明した場合には、直ちに契約を解除し、又は契約解除のための措置をとること
5 私[当社]は、下請け又は再委託先業者が、反社会的勢力から不当要求又は業務妨害等の不当介入を受けた場合は、これを拒否し、又は下請け又は再委託先業者をしてこれを拒否させるとともに、速やかにその事実を貴社に報告し、貴社の捜査機関への通報に協力することを表明、確約〈いたします・いたしません〉。
6 私[当社]は、これら各項のいずれかに反したと認められることが判明した場合及び、この表明・確約が虚偽の申告であることが判明した場合は、催告なしでこの取引きが停止され又は解約されても一切異議を申し立てず、また賠償ないし補償を求めないとともに、これにより損害が生じた場合は、一切私の責任とすることを表明、確約〈いたします・いたしません〉。
平成 年 月 日 署名 ㊞
出典:「表明・確約」及び「暴力団排除条項」(表明・確約書の文例)|公益財団法人 暴力団追放運動推進都民センター(https://boutsui-tokyo.com/wp-content/uploads/kakuyaku.pdf)
元の書式には「各項目末尾の〈いたします・いたしません〉は、必ず署名者本人がどちらかを○で囲む」「契約相手に保証人がある場合は各別に作成する」という注記が添えられています。運用時はこの注記にも従ってください。
従業員・採用者向け誓約書の例文と、調査で踏み越えてはならない範囲
従業員や採用候補者に対しても、反社会的勢力でない旨を書面で表明してもらう運用が広く行われています。取引先向けのような公的な標準書式は見当たらないため、上記の表明・確約書を個人向けに整えて用いるのが実務的です。次のような文面が基本形になります。
誓約書
私は、現在及び将来にわたり、暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、社会運動等標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団その他これらに準ずる反社会的勢力のいずれにも該当せず、また反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有していないことを表明し、確約します。万一、本誓約に違反する事実が判明した場合は、貴社が何らの催告を要せず私との契約(雇用)を解除しても異議を申し立てません。
年 月 日 所属・氏名 ㊞
上記は公的な標準書式ではなく、取引先向けの表明・確約書を個人向けに整えた記載例です。自社の就業規則や雇用契約と合わせて調整してください。
雇用の場面で注意したいのは、反社チェックの名目であっても、採用調査で集めてよい個人情報には法律上の制限がある点です。職業安定法は、求職者などの個人情報を収集・保管・使用する際は「業務の目的の達成に必要な範囲内」に限るとしています。
(求職者等の個人情報の取扱い)第五条の五 (略)求職者、労働者になろうとする者又は供給される労働者の個人情報(以下この条において「求職者等の個人情報」という。)を収集し、保管し、又は使用するに当たつては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で、厚生労働省令で定めるところにより、当該目的を明らかにして求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。
出典:職業安定法(昭和22年法律第141号)第5条の5|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141)
さらに厚生労働省の指針は、人種・民族・社会的身分・門地・本籍・思想信条・労働組合への加入状況などを、原則として収集してはならないと定めています。過度な出自調査や身元調査はこの範囲を超えるおそれがあります。だからこそ、採用者・従業員には本人に「反社会的勢力ではない」旨を誓約・表明してもらう方式が、適法な手立てとして有効です。
取り交わし時の注意点(署名・押印・取得のタイミング・保管)
誓約書は、様式そのものだけでなく取り交わし方でも実効性が変わります。次の点を押さえておくと、いざというときに証拠として機能させやすくなります。
- 取得のタイミングは契約前・入社前:取引や雇用が始まってからでは、虚偽表明を理由とした解除がしにくくなります。関係が始まる前に取り交わします。
- 本人の意思が残る形で署名・押印:記名のみより署名のほうが、また認印より実印のほうが、本人の意思を示す証拠力は高くなります。重要な取引では署名を求めるのが安全です。
- 書面(またはその電子データ)として保管:口頭での確認にとどめず、後日参照できる形で残します。電子契約サービスを使えば、電子署名付きで取得・保管できます。
反社条項に必ず入れる構成要素チェックリスト
自社の既存ひな型に不足がないかを確認するには、次の5つの要素がそろっているかを見ます。いずれも、政府の「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」や各都道府県の暴力団排除条例が求める考え方に対応しています。
- 反社会的勢力の定義(属性要件):暴力団・暴力団員・準構成員・関係企業・総会屋などを列挙し、「誰が反社会的勢力に当たるか」を明確にします。政府指針も、属性要件に着目することが重要としています。
- 密接な関係性の排除:相手自身が反社会的勢力でなくても、経営を支配・関与されている、資金提供しているといった関係を排除の対象に含めます。
- 不当要求・暴力的行為の禁止(行為要件):暴力的要求や法的責任を超えた不当要求などをしないことを確約させます。政府指針は、属性要件とあわせて行為要件にも着目することが重要としています。
- 違反時の無催告解除:該当が判明した場合に、催告なしで直ちに契約を解除できると定めます。速やかな関係遮断のための核心部分です。
- 損害賠償・違約金と免責:解除に伴い相手に損害が生じても賠償を要しないこと、自社に損害が生じた場合は相手が賠償することを定めます。
属性要件と行為要件は、どちらか一方では網羅性が下がるため、両方を条文に反映させてください。それぞれの意味は記事後半の「反社条項とは」でも解説します。
契約類型別の文言の違い(取引基本・売買・賃貸借・業務委託・雇用/採用)
反社条項は、汎用の1本をどの契約にも貼れば済むわけではありません。契約の種類によって、足したほうがよい一文や変わる箇所があります。自社のケースに近い類型を確認してください。
取引基本契約の文言(フルスペックの基本形)
継続的な取引の土台となる取引基本契約には、この記事の冒頭で示した属性要件・密接関係性・行為要件・再委託先・無催告解除・損害賠償までそろったフルスペックの条項を入れておくのが基本です。個別契約に条項がなくても、基本契約の反社条項がすべての個別契約に及ぶよう「本基本契約及び個別契約に適用する」旨を明記しておくと抜けを防げます。
売買契約の文言(引渡し・代金支払いまでの期間と違約金)
売買では、当事者双方が対等に確約し合う双務型にするのが一般的です。警察庁が公表する売買契約のモデル条項では、物件の引渡しと売買代金全額の支払いが終わるまでの間、脅迫的言動や業務妨害などをしないことを双方に確約させ、あわせて違約金(損害賠償額の予定)を定める例を示しています。
第2項又は前項の規定によりこの契約が解除された場合には、解除された者は、その相手方に対し、違約金(損害賠償額の予定)として金○○○○円(売買代金の20%相当額)を支払うものとする
出典:売買契約書のモデル条項例の解説(暴力団排除条項等)|警察庁
ただし、モデル条項が例示する「売買代金の20%」といった違約金額は不動産売買を前提とした一例であり、あらゆる契約に共通する相場ではありません。金額は取引の規模や性質に応じて個別に設定してください。
賃貸借契約の文言(物件を反社会的勢力に利用させない確約)
賃貸借契約では、基本の反社条項に加えて、借主が物件を反社会的勢力の活動拠点に使わせないための一文を足します。貸主・借主が双方で表明し合う形にし、違反時には無催告で解除できるよう定めるのが一般的です。たとえば次のような条文を加えます。
借主は、本物件を暴力団事務所その他反社会的勢力の活動の拠点として使用し、又は反社会的勢力に本物件を転貸し、若しくは使用させてはならない。借主がこれに違反した場合、貸主は何らの催告を要せず本契約を解除することができる。
上記は公的モデルの逐語ではなく、実務上加える一文の例です。自社の契約内容に合わせて調整してください。
業務委託契約(請負・委任)の文言(再委託先の確認)
業務委託では、委託先だけでなく、その先の下請・再委託先まで反社会的勢力でないことを確約させる条項が重要です。冒頭の文例の第4項がこれにあたります。再委託が数次にわたる場合はそのすべてを対象に含め、判明時には委託先に契約解除などの措置を求められるようにしておきます。
雇用・採用時の文言(誓約書方式と調査の法的制約)
雇用の場面では、雇用契約書に反社条項を設けるほか、採用時・入社時に本人から誓約書を取得する方式が実務的です。就業規則に反社会的勢力との関係を懲戒・解雇事由として定めておくと、入社後に判明した場合の対応根拠になります。
前述のとおり、採用調査で収集できる個人情報は業務目的の達成に必要な範囲に限られるため、出自調査などに踏み込まず、本人による表明・誓約を軸に組み立てるのが安全です。誓約書の文面は「従業員・採用者向け誓約書の例文」で示したものを参考にしてください。
反社会的勢力の「定義範囲」をどこまで条文に書き込むか
条項の効き目は、「誰を・どこまで反社会的勢力として扱うか」の定義の広さで大きく変わります。定義が狭いと、形式的には該当しない相手をすり抜けさせてしまいます。見落とされやすい部分なので、設計の勘所を整理します。
まず「誰が反社会的勢力か」という属性の範囲です。暴力団員だけでなく、次のような人・組織まで含めるかを検討します。含める範囲を広げるほど、形式を変えて接近してくる相手を排除しやすくなります。
- 暴力団準構成員・関係企業:構成員本人でなくても、資金・便宜を提供するなど暴力団と関わる立場の人・組織。
- 元暴5年(暴力団員でなくなってから5年を経過しない者):離脱直後の再流入を防ぐため、多くのモデル条項が定義に含めています。
- 総会屋・社会運動等標ぼうゴロ・特殊知能暴力集団:暴力団以外にも、威力や詐欺的手法で不当な利益を追求する集団を広く対象にします。
次に「相手方のどの立場の人まで保証させるか」という人的範囲です。契約の相手方本人だけでなく、その役員や実質的支配者、グループ会社まで広げることで、名義を借りた迂回や実質支配のケースに対応できます。東京都暴力団排除条例も「暴力団関係者」を、暴力団員だけでなく「暴力団若しくは暴力団員と密接な関係を有する者」と定義しています。
四 暴力団関係者 暴力団員又は暴力団若しくは暴力団員と密接な関係を有する者をいう。
出典:東京都暴力団排除条例(平成23年東京都条例第54号)第2条第4号|警視庁(条例本文PDF)
定義を広げるほど守備範囲は広がりますが、実際に「密接な関係」に当たるかどうかは、条文を結んだ後の確認(反社チェック)で見極める必要があります。条文の広さと、締結後の確認の運用は、セットで設計します。
条文にどこまで書き込むかを決めたら、次は実際のチェックで取引先の誰を・どこまで確認するかが実務上の論点になります。取引先本人・役員・株主のどこにリスクが集中し、どう優先順位をつけて確認するかは、次の記事で詳しく整理しています。
反社条項と誓約書の使い分け(対象別の運用マトリクス)
「契約書の反社条項」と「独立した誓約書」は、どちらか一方だけあればよいというものではなく、法的な効き方が異なります。契約書内の反社条項は、該当が判明したときに即時解除する根拠になります。一方の誓約書(表明・確約書)は、相手が虚偽の表明をしていた場合に、損害賠償請求や契約解除をしやすくする根拠になります。両方を備えることで、入口での確約と、発覚時の即時解除・責任追及の双方をカバーできます。
対象ごとに、どの手段を組み合わせるかの目安を整理すると次のとおりです。
| 対象 | 取引先(法人) | 従業員・役員 | 採用候補者 |
|---|---|---|---|
| 契約書内の反社条項 | ◎取引基本契約・個別契約に必須 | ○ 雇用契約書に設ける | ― |
| 独立した誓約書(表明・確約書) | ○ 条項を入れにくい場面や取引開始時に併用 | ◎入社時に取得 | ◎採用時に取得(調査は適法範囲内で) |
| 就業規則 | ― | ◎反社排除・懲戒事由として規定 | ○ 入社後に適用 |
※上記は一般的な組み合わせの目安です。実際の運用は各社の取引・雇用形態に応じてご検討ください。
反社会的勢力排除条項(反社条項)とは・なぜ必要か
ここからは、条文を用意したうえで押さえておきたい背景を整理します。反社会的勢力排除条項(反社条項)とは、契約の相手方が反社会的勢力でないことを確約させ、該当が判明した場合に契約を解除して取引から排除できるようにする条項です。
反社条項とは(属性要件と行為要件の2軸)
反社会的勢力をとらえる際は、「誰であるか」という属性要件と、「どんな行為をするか」という行為要件の2つの軸で見ます。政府の指針も、この両面に着目することが重要だとしています。
暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である「反社会的勢力」をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である。
出典:企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針(平成19年6月19日 犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ)|法務省
暴力団排除条例と2007年の政府指針
反社条項が広く使われるようになった背景には、2007年(平成19年)の政府指針と、その後に各都道府県で整備された暴力団排除条例があります。政府指針は、契約書や取引約款に暴力団排除条項を導入することが有効だとしています。
また、全国の都道府県で暴力団排除条例が施行されており、事業者に対して契約時の対応を求めています。たとえば東京都暴力団排除条例は、事業者が契約の相手方などが暴力団関係者でないことを確認し、契約書に無催告解除などの特約を定めるよう「努めるものとする」と規定しています。これは法的な強制義務ではなく努力義務ですが、条項を整備しておくことが実務上の標準になっています。
第18条 事業者は、その行う事業に係る契約が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる疑いがあると認める場合には、当該事業に係る契約の相手方、代理又は媒介をする者その他の関係者が暴力団関係者でないことを確認するよう努めるものとする。
出典:東京都暴力団排除条例(平成23年東京都条例第54号)第18条|警視庁
2 事業者は、その行う事業に係る契約を書面により締結する場合には、次に掲げる内容の特約を契約書その他の書面に定めるよう努めるものとする。(略)
条項が無い場合のリスク
反社条項を入れていないと、取引開始後に相手が反社会的勢力だと判明しても、契約を解除する明確な根拠がなく、関係を断ちにくくなります。結果として、反社会的勢力に資金や便宜を提供したとみなされれば、暴力団排除条例にもとづく勧告・公表の対象となったり、取引先や金融機関からの信用を失ったりするおそれがあります。無催告で解除できる条項をあらかじめ備えておくことが、こうしたリスクを避ける前提になります。
締結後に反社チェックで実効性を保つ
反社条項や誓約書を整えても、それだけでは「入口の宣言」にとどまります。相手が本当に反社会的勢力でないか、また取引開始後に関係が生じていないかを確認して初めて、条項は実効性を持ちます。ここからは、条項を機能させるための反社チェックの方法を整理します。
反社チェックの3つの方法
反社会的勢力かどうかを確認する方法は、大きく3つに分けられます。
- 自社調査:インターネット検索や新聞記事の閲覧で、相手方の名称や代表者名にネガティブな情報がないかを確認します。コストはかかりませんが、担当者の手作業になり、同姓同名の判別や網羅性に限界があります。
- 専門機関・チェックツールの利用:反社チェック専用のデータベースやツールを使い、公知情報や独自データベースと突き合わせて調査します。件数が多い場合や継続的な確認に向いています。
- 行政機関への照会:暴力追放運動推進センターや警察へ相談・照会する方法です。一定の要件のもとで利用でき、疑わしいケースの確認に使われます。
取引先や採用が増えるほど、自社調査だけでは工数が膨らみ、確認漏れも起きやすくなります。定期的なチェックや大量の取引先を扱う場合は、チェックツールの活用が現実的です。
手作業でのチェックが実務でどれほどの工数になるのか、反社チェックサービスを提供するオープン株式会社への独自インタビューでは、具体的な件数をもとに次のように語られました。

たとえばシステム会社では、毎日数十件から多い時には100件のチェック業務が発生しますが、人手で行うと1件あたり1分として100分以上かかります。自動化によって怪しい情報が出た時だけ担当者が確認するという運用に切り替えることで、大幅な工数削減を実現しています。
主要な反社チェックツールの比較
ここでは、締結後の継続的な反社チェックに使える主要なツールを、料金と主な特徴で比較します。自社のチェック件数や必要なデータソースに合わせて選ぶ際の目安にしてください。
| サービス名 | RiskAnalyze(リスクアナライズ) | RISK EYES(リスクアイズ) | RoboRoboコンプライアンスチェック |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | 無料 | 無料 | 無料 |
| 月額費用 | 27,500円〜 (ライトプラン・年間600検索) | 15,000円〜 (税別・月間最低利用料) | 0円〜(従量プラン) 5,000円〜(ミニマムプラン) |
| 1件あたりの費用 | 約116〜175円 (プロフェッショナルプラン。ライト・スタンダードは年間検索数の包括料金) | 300円〜/検索 (1媒体ごと) | 250円〜(インターネット検索) 350円〜(+新聞検索) |
| 主なデータソース | 国内約1,000媒体 海外240以上の国・地域 PEPs・制裁リスト | WEBニュース約4,000媒体 新聞記事・ブログ/掲示板 制裁リスト(日米)・独自反社DB | インターネット検索(Google検索API連携) 新聞記事DB 海外情報DB(約190ヵ国・約540万件) |
| 継続チェック向け機能 | CSV一括検索(1,000件を約1分) API連携(無料) 証跡を7年間自動保存 | 差分検索(新規記事のみ) リスクアラート(自動通知) 一括検索 | Excel一括登録・1クリック検索 AI注目度判定(高・中・低) 生成AIによる記事要約 |
| 無料トライアル | ●(期間・件数は要相談) | ●(一括検索は10ワードまで) | ●(取引先10件まで) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 詳細を見る |
※2026年7月時点の各社公式・公表情報にもとづく目安です。税区分はRISK EYESが税別、RoboRoboが税抜、RiskAnalyzeは公式に記載がありません。最新の料金・プラン区分は各社の公式情報をご確認ください。
主要な反社チェックツールの個別紹介
RiskAnalyze(リスクアナライズ)(KYCコンサルティング株式会社)

AIを活用したWEBサービス型のコンプライアンス・反社チェックツールです。個人名や企業名を入力すると、反社会的勢力とのつながり・逮捕歴・行政処分・訴訟歴・風評などを調べ、判定済みの調査レポートを1件あたり最短0.4秒で表示します。CSVによる一括検索は1,000件を約1分で処理でき、調査の証跡はクラウド上に7年間自動保存されます。
API連携が無料で、Salesforceやkintoneといった基幹システムに組み込める点も特徴です。国内約1,000媒体に加え、海外240以上の国と地域のリスク情報、PEPs(重要な公的地位者)・制裁リストまでカバーします。情報セキュリティの国際規格ISO/IEC 27001:2022も取得しており(2025年7月登録)、累計導入企業数は1,300社(2025年6月時点)と公表されています。
RISK EYES(リスクアイズ)(ソーシャルワイヤー株式会社)

WEBニュースや新聞記事などの公知情報を使って、取引先・従業員のスクリーニングを行う反社チェック専用ツールです。法人名や人名と、逮捕などのネガティブワードを組み合わせて検索し、反社会的勢力との関係の疑い・犯罪関与・不祥事の有無を確認します。提供元のソーシャルワイヤー株式会社は東証グロース上場企業です。
前回の検索で出てこなかった新規記事だけを調べる差分検索や、リスク報道があれば自動通知するリスクアラート機能を備え、継続的なモニタリングを効率化できます。2015年以降の反社関連報道を独自に集めたデータベースや、除外ワードの自動抽出により、確認に不要な記事を減らす仕組みを持つのも特徴です。初期費用は無料で、月額最低15,000円(税別)から利用できます。
RoboRoboコンプライアンスチェック(オープン株式会社)

取引先や採用候補者が法令を遵守しているか、社会規範に反する活動がないかを自動でチェックするクラウド型のサービスです。Excelのドラッグ&ドロップで取引先を一括登録し、1クリックでまとめて検索できます。インターネット記事・新聞記事・海外情報のデータベースを組み合わせ、生成AIが記事を要約し、注目度を高・中・低の3段階で自動判別します。
RPA(定型業務をソフトウェアで自動化する仕組み)事業を母体とするグループが提供しており、反社チェック単体にとどまらず、営業から法務への申請・承認といった業務フロー全体を自動化できる点が強みです。
上場企業に求められるコンプライアンスチェックの要件についてSBI証券の監修を受けており、導入社数は10,000社を突破しています(2026年2月発表)。初期費用は無料で、実際の取引先を10件まで無料でチェックできます。
ここで取り上げた3ツールのほかにも、反社チェックツールは多数あります。料金・データソース・調査精度を軸に主要なツールを幅広く比較して選びたい場合は、次の記事が選定の入口として役立ちます。
まとめ
反社会的勢力排除条項は、公的機関が公表するモデル条項をもとに、属性要件・密接関係性・行為要件・無催告解除・損害賠償の5要素をそろえて整えるのが基本です。契約書に組み込む条項と、独立した書面として交わす誓約書は、即時解除の根拠と虚偽表明への責任追及という異なる役割を持つため、対象に応じて組み合わせます。契約類型ごとに足す一文や、反社会的勢力をどこまで定義に含めるかも、あわせて設計してください。
そして、条項を結ぶことはゴールではありません。取引先や従業員を継続的に確認して初めて、条項は実効性を持ちます。自社の取引量や体制に合わせて、反社チェックの運用まで含めて整えてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 反社会的勢力排除条項(反社条項)とは何ですか?
A. 反社会的勢力排除条項(反社条項)とは、契約の相手方が反社会的勢力でないことを確約させ、該当が判明した場合に無催告で契約を解除して取引から排除できるようにする契約条項です。暴力団などの「属性要件」と、暴力的・不当な要求といった「行為要件」の両面から相手を対象にし、2007年の政府指針や各都道府県の暴力団排除条例を背景に、多くの契約書で標準的に用いられています。
Q. 反社条項を入れ忘れた既存の契約書に、後から反社条項を追加するにはどうすればよいですか?
A. 既存の契約書に反社条項を追加するには、契約を一から結び直さなくても「覚書(変更契約書)」を取り交わす方法が実務的です。本契約に反社条項を新たに追加する旨を覚書に定め、双方が記名押印して原契約と一体で保管します。
相手が覚書の締結に応じにくい場合は、相手方から反社会的勢力排除に関する誓約書(表明・確約書)を一方的に差し入れてもらう方式でも、確約の証拠を残せます。次の契約更新のタイミングで、反社条項を盛り込んだ契約書へ切り替えるのも有効です。
Q. 反社条項は既存の取引先すべてと、遡って結び直す必要がありますか?
A. 既存の全取引先と遡って結び直すことを一律に義務づける法律の規定はありませんが、暴力団排除条例が求める趣旨からは、リスクの高い取引から順に整備していくのが望ましいといえます。東京都暴力団排除条例なども、事業者が契約書に反社条項を定めるよう「努めるものとする」という努力義務の形で求めており、遡及的な締結までを強制するものではありません。
すべてを一度に対応するのが難しい場合は、継続的・高額な取引や新規の重要取引を優先し、契約更新の機会に合わせて覚書や差し替えで順次整えていくのが現実的です。
Q. 反社会的勢力排除に関する誓約書は電子契約で取得してもよいですか?印紙税はかかりますか?
A. 反社条項付きの契約や誓約書は電子契約で取得しても法的に有効で、電子データで作成・交付する場合は印紙税もかかりません。印紙税は紙で作成・交付した課税文書に課される税で、国税庁は、契約書などを電磁的記録(電子データ)で作成・交付した場合は課税文書に当たらないとの取扱いを示しています。
電子署名やタイムスタンプを付して取得すれば、いつ・誰が確約したかの証跡も残せるため、大量の取引先から誓約書を集める運用にも向いています。
Q. 反社条項や誓約書は、個人事業主やフリーランスとの取引でも必要ですか?
A. 相手が法人か個人事業主・フリーランスかを問わず、反社条項や誓約書は取り交わしておくべきです。反社会的勢力の排除は取引相手の規模や形態にかかわらず求められ、個人との取引でも、結果として反社会的勢力に資金や便宜を提供したとみなされるリスクは変わりません。
詳細な契約書を交わさない小規模・単発の取引でも、反社会的勢力でない旨の誓約書を1枚差し入れてもらう方式であれば、相手の負担を抑えつつ確約を残せます。
Q. 反社会的勢力かどうかは、どうやって確認すればよいですか?
A. 反社会的勢力かどうかの確認には、自社によるインターネット検索・新聞記事の調査、反社チェック専用ツールやデータベースの利用、都道府県の暴力追放運動推進センターや警察への照会という3つの方法があります。取引先や採用が少数なら自社調査でも対応できますが、件数が多い場合や継続的なモニタリングが必要な場合は、確認漏れや工数の面からチェックツールの活用が現実的です。
反社条項は結んで終わりではなく、締結後にこうした確認を続けて初めて実効性を持ちます。
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