取引先や業務委託先を経由したサイバー攻撃・情報漏えいが相次ぎ、自社のセキュリティ対策だけでは事業を守りきれない時代になりました。委託先のリスクを継続的に把握・管理する取り組みは、サードパーティリスク管理(TPRM:Third-Party Risk Management)と呼ばれ、Excelやチェックシートでの属人的な管理から専用ツール・評価サービスへの移行が進んでいます。
ただし「TPRM」と一口に言っても、自社が主体となって委託先の評価・管理を仕組み化するツールと、委託先のセキュリティを外部から客観的にスコア化する評価サービスでは、解決できる課題も導入のしかたも異なります。両者を混同したまま製品を選ぶと、期待した効果が得られないまま運用が形骸化しかねません。
この記事では、委託先リスク管理を仕組み化するTPRM専用ツールと、委託先を外部から評価するセキュリティ格付・評価サービスの2系統に分けて、主要な15サービスの機能・対応範囲・提供形態を比較します。自社に合うタイプがひと目でわかる診断ウィジェットも用意しているので、はじめて検討する場合の絞り込みにお使いください。
目次
TPRM(サードパーティリスク管理)・委託先リスク管理とは
TPRM(サードパーティリスク管理)とは、業務委託先・仕入先・システム開発の外注先・利用するクラウドサービスなど、自社の事業に関わる第三者(サードパーティ)がもたらすリスクを評価し、継続的に管理する取り組みです。国内では「委託先リスク管理」「委託先管理」とほぼ同じ意味で使われ、対象には委託先がさらに再委託した先(再委託先)まで含まれます。
管理の対象になるリスクはセキュリティに限りません。情報漏えいやシステム停止といったサイバーリスクに加えて、委託先の財務悪化・法令違反・サービス停止など、事業継続に影響する幅広いリスクが対象です。ただし近年TPRMが注目される主因はサプライチェーンを狙ったサイバー攻撃の増加であり、本記事もセキュリティ観点の委託先リスク管理を中心に扱います。
なぜ今、委託先リスク管理が必要か
攻撃者は、セキュリティ対策の堅い大企業を直接狙う代わりに、対策の手薄な取引先・委託先を踏み台にして本丸へ侵入する手口を多用しています。自社の防御をいくら固めても、委託先がランサムウェアに感染すれば、そこを起点に業務が止まり、預けた個人データが漏えいするおそれがあります。
加えて、委託元には委託先を監督する法的な責任があります。個人データの取り扱いを委託する場合、委託元は委託先に対して必要かつ適切な監督を行う義務を個人情報保護法で課されており、監督を怠って委託先から漏えいが起きれば委託元の責任が問われます。
委託先の管理は「やったほうがよい」対策ではなく、法令上求められる義務でもあるという点が、取り組みを後回しにできない理由です。詳しい法的根拠は関連法令・ガイドラインと制度動向で解説します。
Excel・チェックシート管理の限界と形骸化
多くの企業は、委託先へのセキュリティチェックシートをExcelで作成し、メールで送付・回収する方法で委託先管理を始めます。委託先が数社であればこの方法でも回りますが、委託先が数十社・数百社に増えると、配布と回収の進捗管理、回答内容の評価、次年度の再評価といった作業が担当者一人に集中し、回らなくなります。
回収したチェックシートが評価されないまま保管されるだけになれば、管理は形だけのものになります。委託先の状況は時間とともに変わるため、一度きりの評価では、契約後に生じたリスクを見逃します。「チェックシートを配って集める」こと自体が目的化し、リスクの把握・低減という本来の目的から離れてしまう形骸化こそ、専用ツールや評価サービスが解決しようとしている課題です。
TPRM専用ツールとセキュリティ格付・評価サービスの違いと使い分け
委託先リスク管理を支援する製品は、大きく2つの系統に分かれます。自社が主体となって委託先の評価・管理業務を仕組み化する「TPRM専用ツール」と、委託先のセキュリティ状態を外部から客観的に評価・スコア化する「セキュリティ格付・評価サービス」です。まず両者の性格の違いを押さえると、自社に必要なのがどちらか(あるいは両方か)を判断しやすくなります。

| 特徴 | 向いている場面 | 詳細 | |
|---|---|---|---|
| 委託先リスク管理を仕組み化するタイプ(TPRM専用ツール) | 自社が委託先へアンケート(チェックシート)を配布・回収し、評価・契約・モニタリングまでの管理業務をワークフロー化する。評価の主体は自社 | 多数の委託先の評価・再評価を回す体制づくり、監査対応、契約・文書の一元管理 | 比較表を見る |
| 委託先を外部から客観評価するタイプ(セキュリティ格付・評価サービス) | 委託先の同意や協力を前提にせず、外部から観測できる情報などをもとに委託先のセキュリティを第三者がスコア化する。評価の主体は外部 | アンケート回答を待たずに客観指標で委託先を絞り込みたい、自社のセキュリティ状態を外部視点で把握したい | 比較表を見る |
委託先リスク管理を仕組み化するタイプ(TPRM専用ツール)
自社が委託先に対して行う評価・管理の一連の業務を、ツール上のワークフローに載せて仕組み化するタイプです。セキュリティチェックシートの配布・回収・催促、回答内容にもとづくリスク評価、契約書や評価結果の一元管理、定期的な再評価までを一つの画面で回せます。評価の主体はあくまで自社であり、ツールは業務を効率化し、抜け漏れと属人化を防ぐ役割を担います。
委託先が多く、評価を毎年繰り返す必要がある企業や、監査で「委託先をどう管理しているか」を説明できる状態にしたい企業に向いています。海外発の統合的なGRC製品の一機能として提供されるものから、日本の委託先管理の実務に合わせた国産ツールまで、選択肢の幅が広いのがこの系統です。
委託先を外部から客観評価するタイプ(セキュリティ格付・評価サービス)
委託先のセキュリティ状態を、第三者の視点で評価・スコア化するタイプです。代表的なのは、外部から観測できる公開情報をもとにセキュリティの弱点を点数化する「セキュリティ格付け」「セキュリティレーティング」型です。委託先にアンケートを書いてもらう手間をかけずに、多数の取引先を客観指標で横並び比較できます。
このグループには、外部観測に加えて委託先へのアンケート回答や第三者評価データベースを併用し、自己評価と客観評価を組み合わせるサービスも含まれます。
スコアは自社自身の評価にも使えます。取引先から自社のセキュリティ状態の提示を求められた際に、客観的な指標で説明する材料になります。一方で、外部から観測できる情報が中心の評価は、社内の運用ルールや契約上の取り決めまでは踏み込みにくいため、アンケート型の評価と組み合わせて使う企業もあります。
2系統の使い分け・併用パターン
どちらの系統を選ぶかは、解決したい課題で決まります。「多数の委託先の評価業務を回す体制を作りたい」「監査で説明できる管理記録を残したい」のであればTPRM専用ツール、「アンケート回答を待たず客観指標で委託先を絞り込みたい」「自社のセキュリティを外部視点で把握したい」のであればセキュリティ格付・評価サービスが起点になります。
両者は排他的ではありません。外部スコアで委託先を大まかに層別し、リスクの高い先に絞ってアンケートによる詳細評価を行う、という併用は実務でよく採られます。実際、外部評価の指標を取り込める専用ツールや、アンケート機能を備えた評価サービスもあり、系統の境界は一部で重なります。まず自社の主目的をどちらかに定め、必要に応じてもう一方を足すと、過剰な投資を避けられます。
また、仕組み化タイプの製品には、委託先管理を統合的なGRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)プラットフォームの一機能として備えるものもあります。委託先管理にとどまらず、内部統制や全社的なリスク管理まで一つの基盤で整えたい場合は、GRCツール全体の比較が判断の助けになります。
委託先リスク管理ツール・評価サービスの主要機能
ここからは、委託先リスク管理ツール・評価サービスに共通してよく搭載される主要な機能を解説します。製品によって強みは異なりますが、次の5つの機能が備わっているかどうかが、比較検討時の基本的な着眼点になります。各サービスがどの機能を強みとするかは、比較表の「主な機能」列で確認できます。
ベンダーリスクスコアリングは、委託先のリスクを点数や段階で可視化する機能です。アンケートの回答内容や外部から観測したセキュリティ情報をもとに、どの委託先のリスクが高いかを一覧で把握でき、対応の優先順位づけに使えます。評価の入力元がアンケートか外部観測かは、前述の2系統の違いに対応します。
セキュリティチェックシートの配布・回収の自動化は、委託先へのアンケート送付、回答の催促、回収状況の管理をツール上で自動化する機能です。Excelとメールで発生していた進捗管理の手間を削減し、回答の抜け漏れを防ぎます。業界標準の質問セットを雛形として持つ製品もあり、質問票をゼロから作る負担を減らせます。
契約書・評価文書の一元管理は、委託先ごとの契約書・秘密保持契約・評価結果・エビデンスをひとつの場所に集約する機能です。委託先の情報が担当者のメールやローカルフォルダに散在する状態を解消し、監査や社内稟議の際に必要な資料をすぐ取り出せる状態を作ります。
継続モニタリングは、契約後の委託先の状態を継続的に監視し、リスクの変化を検知する機能です。一度きりの評価では見逃す、契約後に生じた脆弱性や情報漏えいの兆候を捉えます。外部評価型のサービスはスコアの変動をアラートで通知し、専用ツールは再評価のスケジュールを管理するかたちで、この機能を実現します。
コンプライアンス評価支援は、委託先が特定の基準やガイドラインを満たしているかの確認を支援する機能です。個人情報保護法や各種セキュリティガイドライン、業界基準に沿った質問セットやチェック項目を備え、法令・規範への準拠状況を評価の中に組み込めます。
ここからは、自社の課題と規模から最適なタイプを診断できるウィジェットを用意しました。いくつかの質問に答えるだけで、仕組み化ツールと外部評価サービスのどちらが向いているか、候補サービスとあわせて確認できます。
【比較表】TPRMツール・セキュリティ格付サービスを比較
主要15サービスを、前述の2系統(委託先リスク管理を仕組み化するタイプ/委託先を外部から客観評価するタイプ)に分けて比較します。機能・対応範囲・提供形態・日本市場での提供・料金を横並びで確認できます。
掲載は系統ごとのグループ分けで、表内の並び順や番号は優劣を表すものではありません。料金は多くのサービスが個別見積もり(要問い合わせ)で、公開されている実額は限られる点にご留意ください。サービス名をクリックすると各社の個別紹介へ移動します。
【タイプ別比較表】委託先リスク管理を仕組み化するタイプ(TPRM専用ツール)
| サービス名 | VendorTrustLink | OneTrust | ServiceNow | SAP Ariba Supplier Risk | Conoris BP | Supplier Risk MT | AuditnQ | Lens RM |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 提供会社 | 株式会社アトミテック | OneTrust, LLC (国内窓口: GRCS・PwC Japan等のパートナー) | ServiceNow Japan合同会社 | SAPジャパン株式会社 | 株式会社Conoris Technologies | 株式会社GRCS | RenderingConsulting株式会社 | 株式会社レンズ |
| 提供形態 | クラウド(SaaS) | クラウド(統合GRCプラットフォームの一部) | クラウド(Now Platformのモジュール) | クラウド(SAP Ariba調達スイートの一部) | クラウド(SaaS) | クラウド(Salesforce基盤) | クラウド(SaaS) | クラウド(SaaS) |
| 国産/外資 | 国産 | 外資(米国・英国) | 外資(米国) | 外資(ドイツ) | 国産 | 国産 | 国産 | 国産 |
| 主な機能 | チェックシートの自動配布・回収・採点 委託先・契約情報の一元管理 | 委託先の評価〜継続モニタリング 50以上のフレームワーク準拠の質問票 | 委託先ライフサイクルを単一ワークフローで管理 他GRCモジュールと連携 | 200超のリスク指標でサプライヤーを評価 外部データプロバイダと連携 | 委託先・再委託先の階層管理 AIレビューアシスト・年次定期点検 | Web点検フォーム・委託先の可視化 SecurityScorecard連携 | 既存Excelチェックシートを活かした委託先管理・定期監査 Netskope CCI連携でSaaS評価 | 委託先・再委託先・クラウドサービスの一元管理 AIによるリスク評価支援 |
| 無料トライアル | あり | 公表なし | 公表なし | 公表なし | あり | 公表なし | 公表なし | 公表なし |
| 日本市場での提供 | 日本語対応 国内直販 | 日本語対応 大手・グローバル企業向け | 日本語対応 認定パートナー経由(プラットフォーム契約が前提) | 日本語対応 SAPジャパン・代理店経由(調達スイート導入が前提) | 日本語対応 国内直販 | 日本語対応 国内直販(GRCSのコンサル併用が前提) | 日本語対応 国内直販 | 日本語対応 国内直販(金融機関への提供実績) |
| 料金 | 要問い合わせ (アカウント数×委託先数で個別見積り) | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ (カスタムプラン) | 要問い合わせ (管理企業数により変動) | 要問い合わせ (ユーザー数課金・年間契約) | 要問い合わせ | 要問い合わせ |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 資料を見る | 資料を見る | 資料を見る | 資料を見る | 資料を見る | 資料を見る | 公式サイト |
【タイプ別比較表】委託先を外部から客観評価するタイプ(セキュリティ格付・評価サービス)
| サービス名 | SecurityScorecard | BitSight | UpGuard | Assured | Secure SketCH | Panorays | RiskRecon |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 提供会社 | SecurityScorecard, Inc. (日本法人: SecurityScorecard株式会社) | BitSight Technologies, Inc. (国内窓口: 伊藤忠テクノソリューションズ・テリロジー等) | UpGuard, Inc. | 株式会社アシュアード(ビジョナルグループ) | NRIセキュアテクノロジーズ株式会社 | Panorays Ltd. (国内窓口: SOMPOリスクマネジメント) | Mastercard (国内窓口: 株式会社DTS) |
| 評価方式 | 外部観測によるスコア(A〜Fの5段階・100点満点) | 外部観測によるスコア+質問票 | 外部観測によるスコア(0〜950)+アンケート | 第三者による評価レポートのデータベース参照型(約120項目) | 自己回答式の評価(得点・偏差値)+外部自動診断 | 外部評価+アンケートの「360度評価」(Risk DNA) | 外部観測(パッシブ型スキャン)によるスコア |
| 国産/外資 | 外資(米国) | 外資(米国) | 外資(米国・豪州) | 国産 | 国産 | 外資(イスラエル) | 外資(米国・Mastercard傘下) |
| 対応範囲 | 自社評価 取引先・サプライチェーン評価 | 自社評価 取引先評価・脅威インテリジェンス | 自社評価・情報漏えい監視 取引先評価 | SaaS評価 取引先企業の評価(Assured企業評価) | 自社評価(SINGLE) グループ会社(GROUPS)・委託先(3rd PARTY) | 取引先・委託先評価(TPRM) | 自社・関連会社評価 取引先評価 |
| 無料トライアル | あり (無料版Free Edition) | 公表なし | 公表なし | 公表なし | あり (SINGLE BASIC・2週間) | 公表なし | 公表なし (海外に30日評価版) |
| 日本市場での提供 | 日本語対応(UI・レポート) 国内パートナー経由で提供 | 主要部分は日本語対応(一部英語) 国内利用は数百社規模(NEC・資生堂等が事例公表) | 未対応(UI・サポートとも英語) 国内代理店・国内事例は確認できず | 日本語対応 導入1,500社超(うち金融機関150社以上) | 日本語対応(日本語・英語・中国語) 国内利用8,000社規模 | 日本語対応(UI・サポート) 大手製造業の国内事例あり | 日本語対応(DTS経由) 国内導入事例は非公表 |
| 料金 | 要問い合わせ (監視対象の企業数で変動) | 要問い合わせ (監視対象の企業数で変動) | 月額1,750米ドル〜(Standardプラン) 年額一括・ベンダー50社監視。上位は要問い合わせ | 要問い合わせ (従量課金/定額課金) | 要問い合わせ | 要問い合わせ (年契約ベース) | 要問い合わせ (監視対象のベンダー数・機能で変動) |
| 詳細情報 | 資料を見る | 資料を見る | 資料を見る | 資料を見る | 資料を見る | 資料を見る | 資料を見る |
サービス個別紹介
ここからは、各サービスの特徴を系統別に紹介します。自社の課題に合うタイプから読み進めてください。
委託先リスク管理を仕組み化するタイプ(TPRM専用ツール)
自社が主体となって委託先の評価・契約・モニタリングを仕組み化したい企業に向く製品です。多数の委託先を継続的に管理する体制づくりや、監査で説明できる記録の一元化を重視する場合に検討したいサービスを紹介します。
1. VendorTrustLink(株式会社アトミテック)

委託先や取引先へのセキュリティチェックシートの送付・回収・採点・履歴管理を自動化することに絞った、クラウド型のTPRMツールです。株式会社アトミテックが2024年10月のβ版提供を経て、2025年4月に正式リリースしました。国際的なリスクマネジメント規格であるISO 31000に準拠した設計を掲げています。
委託先は専用アカウントでプラットフォーム上から直接回答するため、メールの往復が発生しません。未回答の委託先には自動でリマインドが送られ、回収した回答は自動採点されて、経年での比較や重要度別のダッシュボード表示に反映されます。
料金は初期費用・月額とも要問い合わせで、アカウント数と委託先数に応じた個別見積りとなり、無料トライアルが用意されています。少人数の企業から利用でき、委託先の数に応じて始められる料金体系です。
2. OneTrust(OneTrust, LLC)

グローバルに展開する統合的なGRCプラットフォームのモジュールの一つとして、OneTrust, LLCが提供するTPRM製品です。プライバシー管理のSaaSを起点に、セキュリティやAIガバナンスまで対象を広げてきたプラットフォームの一部にあたります。
委託先のオンボーディングからリスク評価、継続モニタリング、オフボーディングまでを一つのプラットフォームで管理します。ISOやNISTなど50以上のコントロールフレームワークに沿った質問票テンプレートを標準で備え、Dow Jonesの制裁リスト情報や国内の信用情報などの外部リスクデータとも連携します。
日本法人は2022年に設立されていますが、国内での販売・導入や日本語サポートは、GRCSやTrustNow、PwC Japanといった国内パートナー経由で提供されるのが中心です。料金は公開されておらず、パートナー経由での個別見積りとなります。
3. ServiceNow(ServiceNow Japan合同会社)

ServiceNowのクラウド基盤「Now Platform」上で提供されるGRC・リスク管理製品群の一つで、国内ではServiceNow Japan合同会社が提供します。委託先管理を単体で導入するより、Now Platformを基盤に全社的なリスク管理を統合する使い方が想定されています。
委託先のオンボーディング、デューデリジェンス、リスク評価、継続モニタリング、オフボーディングまでを単一のワークフローに統合して管理します。Now Platform上のリスク管理・ポリシー/コンプライアンス・監査・事業継続管理といった他モジュールと連携できる点が特徴です。
利用にはServiceNowプラットフォームの契約が前提となり、導入はデロイト トーマツ コンサルティングやNTTデータ、日立ソリューションズなどの認定パートナー経由が通常です。国内の公開導入事例は川崎重工業や横河電機など大手製造業が中心で、料金は要問い合わせです。
4. SAP Ariba Supplier Risk(SAPジャパン株式会社)

SAPの支出管理ソリューション群「SAP Ariba」の一部として提供される、サプライヤー向けのリスク管理モジュールです。国内ではSAPジャパン株式会社および代理店経由で提供されます。
財務・コンプライアンス・地政学・ESG・サイバーセキュリティなど200件を超えるリスク指標をもとに、サプライヤーを評価・監視します。Dun & Bradstreet、EcoVadis、Verisk Maplecroftといった外部データプロバイダのリスク情報を集約し、サプライヤーの登録・見積評価・契約承認の各段階に評価のチェックポイントを組み込めます。
運用にはSAP Ariba調達スイートとのデータ連携が前提となるケースが多く、実質的な利用者は既にSAP Aribaを導入済みの大企業〜グローバル企業が中心です。公開されている導入事例も大手製造業が中心で、料金はカスタムプランのため要問い合わせです。
5. Conoris BP(株式会社Conoris Technologies)

委託先・再委託先へのセキュリティ調査と年次の定期点検を、Excel・メール中心の運用からクラウド上に移すためのVRM(ベンダーリスク管理)ツールです。株式会社Conoris Technologiesが提供しています。
委託先はプロジェクト別・会社別のツリー構造で階層的に管理でき、法人APIで国内の企業データベースと連携します。生成AIが調査票の回答を分析してリスク項目を抽出する「AIレビューアシスト機能」を備え、回収後の審査作業を支援します。
パーソルテンプスタッフの導入事例では、1件あたり平均3時間かかっていた審査対応時間が平均1時間、最短20分に短縮したと公表されています(2025年3月)。料金は管理企業数に応じて変動する要問い合わせで、無料トライアルが用意されています。多くの取引先を抱え、審査対応の工数削減を重視する企業に向いています。
6. Supplier Risk MT(株式会社GRCS)

東京証券取引所グロース市場に上場する株式会社GRCSが提供する、外部委託先・取引先のセキュリティリスクや契約・評価情報を一元管理するクラウド型ツールです。Salesforce AppCloud上で動作します。
Webの点検フォームで委託先の自己点検の回答を集め、委託先情報のデータベース化や、ツリー図・散布図・レーダーチャートによる可視化を行えます。2025年4月にはSecurityScorecardとの連携が追加され、第三者機関が算出する客観的なセキュリティスコアを取り込んだ評価にも対応します。
金融庁の監督指針で求められる外部委託先管理を想定した設計で、保険・金融業界を中心に導入が進み、日本生命保険相互会社の事例が公開されています。ライセンスはユーザー数に応じた年間契約で、GRCSのコンサルティング支援と併用する導入が前提です。料金は要問い合わせです。
7. AuditnQ(RenderingConsulting株式会社)

既存のExcelチェックシートをそのまま活かしながら、委託先管理・セキュリティチェック・定期監査を効率化するクラウドシステムです。RenderingConsulting株式会社が提供しています。
Excelの回答情報をシステム上で自動的に抽出してデータベース化し、委託先同士の比較や過去回答との比較を行えます。契約前の初回選定から定期・臨時の監査までを一元管理し、Netskope CCI(8万を超えるクラウドサービスの評価データ)と連携したSaaSの評価にも対応します。
グループ会社を含む複数社での利用に対応し、サプライチェーン全体のリスクのモニタリングを想定しています。運営会社は2023年設立で、対象企業規模や契約形態、料金は公表されておらず、導入にあたっては要問い合わせとなります。
8. Lens RM(株式会社レンズ)

株式会社レンズが提供する、委託先・サードパーティ管理を効率化する国産のSaaSです。2023年8月に提供を開始しました。
外部委託先・再委託先・クラウドサービスの一元管理に加え、社内の部門・プロジェクトのリスク管理や内部統制にも対応します。AIがチェックシートの回答情報からリスク項目を自動で検知し、リスク評価を支援します。委託先ネットワークの可視化にも対応します。
りそなホールディングスおよびグループの子銀行4社、GMOあおぞらネット銀行への提供を公表しており、金融機関での導入実績があります。バーゼル委員会の委託先管理原則など、金融の規制動向を踏まえた設計を訴求しています。料金は要問い合わせです。
委託先を外部から客観評価するタイプ(セキュリティ格付・評価サービス)
委託先や自社のセキュリティを、第三者の視点で客観的にスコア化したい企業に向くサービスです。外部から観測できる情報でスコア化する格付型が中心ですが、なかにはアンケート(自己申告)や第三者評価データベースを併用して評価するサービスもあります。多数の取引先を客観指標で横並びに比較したい場合や、自社の状態を外部視点で把握したい場合に検討したいサービスを紹介します。
9. SecurityScorecard(SecurityScorecard株式会社)

企業のセキュリティ対策状況を攻撃者の視点で外部から観測し、A〜Fの5段階・100点満点のスコアで評価するセキュリティレーティングサービスです。SecurityScorecard株式会社が提供し、UI・レポート・公式サイトは日本語に対応しています。
評価はマルウェア感染や脆弱性、DNS設定、漏えい認証情報などの公開情報を非侵入型で収集して行うため、対象企業の同意や接続を必要としません。自社スコアカードの継続モニタリングに加え、取引先・グループ会社のスコアを閲覧するサードパーティリスク管理(TPRM)やサプライチェーンの可視化に対応します。
料金はBusiness・Enterpriseとも個別見積りの要問い合わせで、監視対象とする企業数に応じて決まり、利用人数では変わりません。自社の評価だけであれば、自社スコアカードの無制限閲覧と取引先5社分のスコア確認をクレジットカード登録なしのFree Editionで使えます。
外部から付けられるスコアが、実際の侵害リスクとどう結びつくのか。提供元のSecurityScorecard株式会社は、独自インタビューでスコアと侵害可能性の相関について次のように説明しています。

特徴的なのは、このA〜Fの評価が、将来サイバー侵害を受ける可能性と相関しているという点です。A評価の組織が将来サイバー侵害を受ける可能性を1とすると、F評価の組織はその13.8倍も可能性が高くなる、という統計結果が出ています。スコアを良くしていくことが、そのまま将来の侵害リスクを下げることにつながるわけです。
10. BitSight(BitSight Technologies, Inc.)

MITでのサイバーセキュリティ研究を背景に米国で創業した、外部観測データによるセキュリティレーティングを起点とするサイバーリスク管理プラットフォームです。運営はBitSight Technologies, Inc.で、TPRMやエクスポージャー管理、脅威インテリジェンスまでを横断的にカバーします。
独自のスキャン基盤「Bitsight Groma」が公開IPアドレスなどをほぼ毎日モニタリングし、検知した設定不備や脆弱性は翌日にはスコアへ反映されます。委託先評価では、ポータル上でセキュリティ質問票を送受信して記録に残し、その回答を外部観測データで裏付けることもできます。
国内に日本法人はなく、伊藤忠テクノソリューションズやNEC、テリロジーなど複数の代理店経由で提供されます。製品UIの主要部分とレポートは日本語化されていますが、日本語対応の深度は契約する代理店により異なります。料金は非公表で、モニタリング対象の企業数に応じた個別見積りとなります。
どのような企業に導入が向くのか。提供元のBitSight Technologiesは、独自インタビューで、向くケースと向きにくいケースを次のように述べています。

単体企業でグループ会社もそれほどなくて、資産が限定されているケースは、BitSightという製品をわざわざ入れる必要性を感じていただきにくいかなとは思います。逆に、そういった企業様は、他の会社がモニタリングする対象先としては存在し得るとは思いますが、自社のセキュリティを可視化したいというニーズで導入いただくにはハードルが高いかなと考えています。
一方で、多くのインターネット公開資産を持つ企業様や、グループ会社を抱える企業様、サプライチェーンの委託先評価を継続的に行いたい企業様には、効果を発揮しやすい製品だと考えています。
11. UpGuard(UpGuard, Inc.)

セキュリティレーティング(0〜950のスコア)と外部アタックサーフェス監視を軸に、自社の情報漏えい監視「BreachSight」とベンダーリスク評価「Vendor Risk」を1つのプラットフォームに統合した、米国・オーストラリア発のサービスです。UpGuard, Inc.が提供します。
ベンダーへのセキュリティアンケートの送付・回収や修復管理に対応し、回答を再利用できる仕組み「Trust Exchange」でアンケートの工数を抑えられます。料金は月額1,750米ドルのStandardプラン(年額一括請求、ベンダー50社の監視)が公開されており、上位プランは要問い合わせです。
UI・ドキュメント・サポートはいずれも英語で、日本語サイトや国内代理店、日本国内の導入事例は確認できません。海外顧客が中心で価格も米ドル建てのため、導入検討にあたっては英語での情報収集と運用体制が前提になります。
12. Assured(株式会社アシュアード)

評価済みのクラウドサービスのセキュリティ情報をデータベース化し、利用企業が自社で個別に評価をせずに参照できる第三者評価型のプラットフォームです。株式会社アシュアード(東証プライム上場のビジョナルの子会社)が提供します。
セキュリティ専門資格を持つチームが約120項目の独自アセスメントで各サービスを評価し、利用企業はそのレポートを参照します。2025年6月には取引先企業自体のセキュリティを評価する「Assured企業評価」(200項目超)を追加し、SaaS評価とサードパーティリスク管理の両方をカバーします。
経済産業省の「情報セキュリティサービス基準」適合サービスに登録され(登録番号022-0009-10)、導入は1,500社を超え、うち金融機関が150社以上です。竹中工務店ではクラウドサービスの評価工数を42%削減した事例が公表されています。料金は従量課金と定額課金の2形態で、いずれも要お問い合わせです。
13. Secure SketCH(NRIセキュアテクノロジーズ株式会社)

NRIセキュアテクノロジーズ株式会社が運営する、Web上の設問への回答で自社のセキュリティ対策状況を得点と偏差値として可視化するセキュリティ評価SaaSです。約30業種で、同業種・同規模の企業とのベンチマーク比較ができます。
NIST CSFやISO/IEC 27001、サイバーセキュリティ経営ガイドラインなど10種類のガイドラインに沿ったチェックに対応します。プランは個社評価のSINGLE、グループ会社向けのGROUPS、委託先管理向けの3rd PARTYの3系統で構成され、委託先管理ではアンケートの配信・回収やSecurityScorecard連携による自動診断を利用できます。
UIは日本語・英語・中国語(簡体字)に対応します。公式サイトでは国内で8,000社規模の利用が示されており、SINGLEの下位プランには2週間の無料トライアルがあります。料金は全プランとも非公開で、契約規模やオプションに応じた要お問い合わせです。
14. Panorays(Panorays Ltd.)

取引先・委託先の外部アタックサーフェス評価と、セキュリティアンケート(調査票)による内部評価を組み合わせ、ベンダーごとのリスクを一つのスコア「Risk DNA」に集約するイスラエル発のサードパーティリスク管理プラットフォームです。Panorays Ltd.が開発しています。
外部からの観測とベンダーの自己申告の両面から評価する「360度評価」を採り、調査票の送付・回答解析・修復タスクの生成をAIが自動化します。継続的モニタリングで新規の脆弱性や情報漏えいを検知するとアラートを通知し、GDPRやCCPAなどの規制に対応したレポートも出力できます。
日本市場ではSOMPOリスクマネジメントが総代理店となり、MOTEXやユニアデックス、日立システムズなどが再販・運用支援を担います。UI・サポートともに日本語化されています。料金は年契約ベースの個別見積りで、要問い合わせです。
15. RiskRecon(Mastercard/国内販売代理店: 株式会社DTS)

決済大手Mastercard傘下のRiskReconが提供する、取引先のサイバー環境を外部から非侵入的(パッシブ型)にスキャンし、サードパーティのセキュリティリスクを継続的に評価するSaaSです。2019年にMastercardが買収して以降、同社のサイバーセキュリティ製品群の中核に位置づけられています。
発見した脆弱性を深刻度と資産価値の組み合わせで優先順位付けし、具体的なアクションプランとして提示します。取引先にエージェント設置や内部スキャンを求めないため評価開始時の負担が小さく、自社・関連会社のモニタリングも同一プラットフォームで行えます。資産を正しく帰属させる精度は99.1%(独立認証)とされています。
国内では株式会社DTSが販売代理店として、検討段階から契約後の運用まで日本語で対応します。取引先とのシステム連携が多い製造業や病院などを主な想定顧客に挙げています。料金は監視対象のベンダー数や機能ティアに応じた個別見積りで、要問い合わせです。
失敗しないTPRMツール・評価サービスの選び方
ここからは、委託先リスク管理ツール・評価サービスを選ぶ際に、自社の状況に当てはめて判断するための軸を解説します。系統の選択(仕組み化ツールか外部評価か)は前述の使い分けで決めたうえで、次の観点で自社の要件を整理し、記事上部の診断ウィジェットと比較表と併せて具体的な候補を絞り込みます。
委託先数・自社規模で選ぶ
管理対象の委託先が数社であればExcelでも回りますが、数十社を超えたあたりから、配布・回収・再評価の負荷が専用ツールの導入効果を上回ります。委託先が数百社規模になると、評価業務の自動化とワークフロー化がほぼ必須です。まず自社が管理すべき委託先の数を把握し、その規模で運用が回らなくなるおそれがないかを、想定される年間の評価件数から見極めることが大切です。
大企業向けの統合的な製品は機能が豊富な一方、設定や運用に相応の体制を要します。中堅・中小企業では、自社が扱える範囲の機能に絞った製品のほうが、導入後の運用が回りやすい場合があります。
機能の多さではなく、自社の体制で使いこなせる範囲かどうかが選定の基準になります。委託先が国内中心で数十社規模なら導入負荷の小さいツール、数百社やグループ全体を統合的に管理するなら統合基盤を備えた大規模向けの製品、というように規模で候補の性格が変わります。
評価方式で選ぶ(自己申告のアンケート回収型か、外部観測スコア型か)
同じ委託先評価でも、データの集め方によって分かることが変わります。委託先にアンケートで自己申告してもらう方式は、社内規程や契約上の取り決めといった外からは見えない対策まで把握できる反面、回答の負担と回答内容の正確性の担保が課題になります。外部から観測した情報でスコア化する方式は、委託先の協力なしに客観指標を得られる反面、内部の運用ルールまでは踏み込めません。
把握したいリスクが「委託先の運用・体制」なのか「外形的なセキュリティの弱点」なのかで、適した方式は変わります。判断材料になるのは、回答内容の正確性をどう担保するか、委託先の協力を得られるか、そして毎年の評価にかかる運用工数です。
アンケート型は回答の質と回収の手間、外部観測型は観測範囲の限界がそれぞれ弱点になるため、自社が下したい判断にどちらのデータが効くかが選定の起点になります。自社主体で委託先にアンケートして評価を仕組み化するならTPRM専用ツール、外部観測スコアで客観評価するなら格付・評価サービスが対応し、両方式を扱える製品もあります。
国内委託先中心かグローバルか(国産/外資・代理店経由の提供実態)
委託先が国内中心か、海外拠点やグローバルなサプライチェーンを含むかで、適したサービスが分かれます。国産ツールは日本の委託先管理の実務や規制動向に沿った設計で、日本語でのサポートや国内事例の面で導入しやすい傾向があります。海外発の製品は評価対象の網羅性やグローバル拠点の管理に強い一方、日本語UIや国内サポートの提供状況は製品によって差があります。
海外発のサービスの中には、国内代理店を通じて日本語サポートを提供するものもあれば、日本市場での提供実態が確認しづらいものもあります。国内委託先が中心なら日本語対応と国内事例のある国産ツール、グローバルなサプライチェーンを評価するなら評価対象の網羅性に強い外資系、というように委託先の所在で候補が分かれます。
導入後に日本語で運用支援を受けられるか、国内の導入事例があるかは、比較表の「日本市場での提供」の列で確認し、自社の委託先の所在と体制に合うかを見極めます。
料金・提供形態で選ぶ(多くが要問い合わせ)
委託先リスク管理ツール・評価サービスの多くは、料金を公開しておらず、管理する委託先の数や必要な機能に応じた個別見積もり(要問い合わせ)が基本です。課金は、評価・監視する委託先の数や利用アカウント数に応じて増える設計が多く、委託先が増えるほど費用も上がる点を前提に見積もりを取ります。
監視対象のベンダー数に応じた月額を公開する外部スコア型が一部にある程度で、多くは要問い合わせが実態です。そのため、公開された金額の大小だけで比較するのは困難で、複数社から見積もりを取り、自社の委託先数・利用範囲での総額を突き合わせる必要があります。
提供形態はクラウド(SaaS)が主流で、初期構築の負担が小さく、継続モニタリングのような常時稼働する機能と相性がよい形態です。見積もりを依頼する際は、委託先数の増加に応じて料金がどう変わるか、初期費用と月額・年額の内訳、サポートの範囲まで含めて確認すると、導入後の総コストを見誤りにくくなります。
委託先リスク管理の進め方(選定・契約・継続モニタリング・終了)
ここからは、委託先リスク管理を実際に進める際の一連の流れを解説します。ツールや評価サービスは、この流れのどこを効率化するかで選ぶと、導入後に機能を持て余しません。

選定・委託前の評価では、委託を始める前に、候補となる委託先のセキュリティ体制を評価します。取り扱わせる情報の重要度に応じて評価の深さを変え、リスクが高いと判断した先には追加の確認や条件を求めます。アンケートによる評価と外部スコアによる客観評価を組み合わせると、委託前の見極めの精度が上がります。
契約の段階では、委託先が担うセキュリティ上の役割と責任の範囲を契約に明記します。秘密保持や再委託の可否、インシデント発生時の報告義務などを取り決め、評価結果とあわせて記録に残します。契約・評価文書を一元管理できるツールは、この記録の散逸を防ぎます。
継続モニタリングは、委託先リスク管理の要です。契約後も委託先の状態は変わるため、定期的な再評価と、外部スコアの変動監視によって、リスクの変化を捉え続けます。ここが抜けると、冒頭で述べたチェックシートの形骸化に逆戻りします。委託先が多いほど、再評価のスケジュール管理やスコア変動のアラートを自動化する意義が大きくなります。
委託の終了時には、預けていたデータの返却・破棄の確認や、付与していたアクセス権限の削除を行い、記録に残します。委託関係が終わったあとにデータやアクセス権が残ると、それ自体がリスクになります。終了までを管理の対象に含めることで、委託先リスク管理のライフサイクルが一巡します。
この一連の流れを実務に落とし込む際に使えるチェックシートの具体的な項目や、委託先が100社を超えても運用が回る体制のつくり方は、以下の記事で手順に沿って解説しています。自社で委託先管理の仕組みを組み立てる際の参考にしてください。
関連法令・ガイドラインと制度動向
委託先リスク管理は、法令や国のガイドラインでも求められています。サービスを選ぶ際、これらの根拠を押さえておくと、社内稟議や監査対応で「なぜ取り組むのか」を説明しやすくなります。ここでは、委託先管理に関わる主要な法令・制度を解説します。
個人情報保護法(委託先の監督義務・第25条)
個人データの取り扱いを委託する場合、委託元には委託先を監督する義務があります。個人情報保護法第25条は、委託先の監督について次のように定めています。
(委託先の監督)
出典:個人情報の保護に関する法律 第25条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057)
第二十五条 個人情報取扱事業者は、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。
ここでいう「必要かつ適切な監督」には、委託先の適切な選定、契約による安全管理措置の取り決め、委託先の取り扱い状況の把握が含まれると解釈されています。委託先リスク管理ツールは、この選定・契約・状況把握を記録として残す手段になります。監督義務が対象とするのは個人データの取り扱いを委託する場面ですが、委託先管理に取り組む代表的な法的根拠として押さえておく価値があります。
サイバーセキュリティ経営ガイドライン(サプライチェーン全体の対策)
経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が策定する「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」は、経営者が認識すべき重要10項目を示しています。その最新版であるVer3.0(2023年3月公表)では、サプライチェーン全体のセキュリティ対策が「指示9」として位置づけられています。
指示9 ビジネスパートナーや委託先等を含めたサプライチェーン全体の状況把握及び対策
出典:サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver3.0 指示9|経済産業省・独立行政法人情報処理推進機構(https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/downloadfiles/guide_v3.0.pdf)
・サプライチェーン全体にわたって適切なサイバーセキュリティ対策が講じられるよう、国内外の拠点、ビジネスパートナーやシステム管理の運用委託先等を含めた対策状況の把握を行わせる。
指示9は、委託先の対策状況を把握させること、契約で役割と責任範囲を明確にすることを求めています。委託先リスク管理ツール・評価サービスは、この状況把握と契約管理を実務に落とし込む手段にあたります。ガイドラインは法律のような強制力を持ちませんが、経営者が取り組むべき水準を示す指針として広く参照されています。
経産省 セキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)と「セキュリティ格付け」
委託先のセキュリティ水準を客観的に示す仕組みとして、国の制度整備も進んでいます。経済産業省と内閣官房国家サイバー統括室は、「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」の制度構築方針を2026年3月27日に公表しました。
これは企業のセキュリティ対策の状況を可視化し、取引の中で確認できるようにする制度です。対策の段階を★3・★4(★5については今後検討)に区分し、自己評価または第三者評価機関による評価を行う設計になっています。
「セキュリティ格付け」という言葉でこの制度が語られることがありますが、経済産業省は制度の性質を格付けと明確に区別しています。
本制度は、企業のセキュリティ対策への対応状況を可視化するものであり、事業者のセキュリティ対策レベルを競わせることを目的としたもの(格付け制度等)ではありません。
出典:サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)|経済産業省(https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/scs.html)
つまり、SCS評価制度は対策状況を可視化する評価の仕組みであって、企業を順位づけする格付けではありません。制度は2026年度末頃の開始を目指しており、具体的な要求事項・評価基準をまとめた評価ガイドは2026年秋頃に公表予定です。
一方、本記事で「セキュリティ格付・評価サービス」と呼ぶ民間のサービスは、委託先のセキュリティを実際にスコアや指標で示すもので、検索語としての「セキュリティ格付け」に対応します。国の制度と民間サービスは別物である点を区別しておくと、情報を整理しやすくなります。
また、金融機関の場合は、金融庁の「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」(2024年10月)が独立の項目「2.6 サードパーティリスク管理」を設け、サプライチェーンのサイバーセキュリティリスクを適切に管理する必要性を示しています。業種によっては、こうした業種別の監督指針も選定の背景として押さえておくとよいでしょう。
出典・参考資料(4件)
- 出典:個人情報の保護に関する法律 第25条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057)
- 出典:サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver3.0|経済産業省・独立行政法人情報処理推進機構(https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/downloadfiles/guide_v3.0.pdf)
- 出典:サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)|経済産業省(https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/scs.html)
- 参考資料:金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン|金融庁(https://www.fsa.go.jp/news/r6/sonota/20241004/18.pdf)
まとめ
委託先リスク管理を支援するサービスは、自社が主体となって評価・管理を仕組み化するTPRM専用ツールと、委託先を外部から客観的に評価するセキュリティ格付・評価サービスの2系統に分かれます。どちらを選ぶかは、多数の委託先の評価業務を回したいのか、客観指標で委託先を絞り込みたいのか、という自社の主目的で決まります。
選定にあたっては、管理すべき委託先の数と自社の規模、評価データの集め方(アンケート型か外部観測型か)、委託先が国内中心かグローバルか、そして料金・提供形態を、自社の状況に当てはめて判断することが重要です。委託先の監督は個人情報保護法や国のガイドラインでも求められており、取り組みを後回しにできないテーマになっています。
まずは自社に合うタイプを診断で確認し、気になるサービスの資料を取り寄せて、機能や日本市場での提供状況を具体的に比較してください。
よくある質問(FAQ)
Q. TPRM(サードパーティリスク管理)とは何ですか?
A. TPRMとは、業務委託先・仕入先・システム開発の外注先・クラウドサービスなど、自社の事業に関わる第三者(サードパーティ)がもたらすリスクを評価し、継続的に管理する取り組みです。
国内では「委託先リスク管理」「委託先管理」とほぼ同じ意味で使われ、委託先がさらに再委託した先まで対象に含みます。管理するリスクはサイバー攻撃・情報漏えいなどのセキュリティに限らず、委託先の財務悪化やサービス停止など事業継続に関わるものまで及びますが、近年はサプライチェーンを狙った攻撃の増加を背景に、セキュリティ観点での委託先管理に関心が集まっています。
Q. TPRM専用ツールとセキュリティ格付・評価サービスの違いは何ですか?
A. 両者は評価の主体が異なり、TPRM専用ツールは自社が主体となって委託先へのアンケート配布から評価・契約・モニタリングまでを仕組み化する製品、セキュリティ格付・評価サービスは委託先のセキュリティ状態を外部から第三者がスコア化する製品です。
多数の委託先の評価業務を回したい、監査で説明できる管理記録を残したい場合はTPRM専用ツールが、アンケート回答を待たず客観指標で委託先を絞り込みたい、自社のセキュリティ状態を外部視点で把握したい場合はセキュリティ格付・評価サービスが起点になります。両者は排他的ではなく、併用も可能です。
Q. 委託先リスク管理は何社くらいから専用ツールで仕組み化すべきですか?
A. 委託先リスク管理をツールで仕組み化する目安は、Excelとチェックシートによる配布・回収・再評価が担当者一人に集中して回らなくなる、委託先が数十社を超えたあたりです。
委託先が数社であればExcelとメールでの管理でも運用できますが、数十社・数百社に増えると配布と回収の進捗管理、毎年の再評価が回らなくなりやすく、回収したチェックシートが評価されないまま形骸化する原因になります。将来の委託先増加を見込む場合は、早い段階でツール化を検討すると移行の負担を抑えられます。
Q. 経済産業省のセキュリティ格付け制度(SCS評価制度)はいつから始まり、対象は誰ですか?
A. 経済産業省などが進めるSCS評価制度(サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度)は2026年度末頃の開始を目指しており、サプライチェーンを構成する企業のセキュリティ対策状況を可視化する制度です。対策の段階を★3・★4(★5については今後検討)に区分し、自己評価または第三者評価機関による評価を行う設計です。
注意したいのは、この制度が「格付け制度」ではない点です。経済産業省は、企業の対応状況を可視化するものであり、事業者のセキュリティ対策レベルを競わせる格付けではないと明言しています。「セキュリティ格付け」という検索語で語られることがありますが、制度の性質は順位づけではなく可視化です。具体的な要求事項・評価基準をまとめた評価ガイドは2026年秋頃に公表される予定です。
- 出典:サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)|経済産業省(https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/scs.html)
Q. 個人情報保護法では、委託先の管理についてどのような義務がありますか?
A. 個人情報保護法第25条は、個人データの取り扱いを委託する場合、委託元に対して委託先への「必要かつ適切な監督」を義務づけています。
この「必要かつ適切な監督」には、委託先の適切な選定、契約による安全管理措置の取り決め、委託先の取り扱い状況の把握が含まれると解釈されています。監督を怠って委託先から個人データが漏えいすれば委託元の責任が問われるため、委託先管理は「やったほうがよい」対策ではなく、法令上求められる義務でもあります。委託先リスク管理ツールは、この選定・契約・状況把握を記録として残す手段になります。
- 出典:個人情報の保護に関する法律 第25条|e-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057)
Q. TPRMツール・セキュリティ格付サービスの料金相場はどのくらいですか?
A. 多くのサービスが個別見積もり(要問い合わせ)で、公開されている実額は限られます。
料金は、管理・監視する委託先数やアカウント数などに応じて変動する個別見積もりが一般的です。ごく一部に、監視するベンダー数に応じた月額を公開している外部スコア型のサービスもありますが、多くは要問い合わせが実態です。正確な費用は各社の資料請求や見積もりで確認するのが確実です。
Q. TPRM専用ツールとセキュリティ格付・評価サービスは併用できますか?
A. 併用でき、外部スコアで委託先を大まかに層別し、リスクの高い先に絞ってアンケートで詳細評価する使い方が実務でよく採られます。
外部評価の指標を取り込めるTPRM専用ツールや、アンケート機能を備えたセキュリティ格付・評価サービスもあり、2系統の境界は一部で重なります。まず自社の主目的をどちらかに定め、必要に応じてもう一方を足すと、過剰な投資を避けながら委託先管理の精度を高められます。
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