「日本国内で、どのERP(統合基幹業務システム)がどれくらい使われているのか」を知りたいとき、検索結果に並ぶ記事を読み比べると、シェア1位の製品がバラバラで戸惑うことがあります。ある調査ではSMILEシリーズが首位、別の調査ではOBIC7、利用者アンケートではマネーフォワードが1位——どれが本当の順位なのか分かりにくいのが実情です。
順位が食い違う理由は、調査ごとに「何を数えているか」が違うためです。導入している企業の数(社数シェア)で数えるか、売上金額で数えるか、利用者へのアンケートで数えるかによって、上位に来る製品は変わります。ERPは長く使い続ける基幹システムであり、選定を誤ると影響が大きいからこそ、順位の数字だけでなく「どの調査の・どの切り口の順位か」を押さえることが欠かせません。
この記事では、国内ERPのシェアランキングを調査別に一覧で示したうえで、なぜ調査ごとに1位が変わるのか、市場規模や世界シェアの動向、そしてシェアを自社の製品選定にどう活かすかまでを整理します。
目次
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【調査別】日本国内のERPシェアランキング早見表
ここからは、日本国内のERPシェアを調査別に見ていきます。まず全体像を1枚で掴めるよう、代表的な3つの調査(社数シェア・売上金額シェア・利用者アンケート)の首位と上位製品を早見表にまとめました。同じ「国内ERPシェア」でも、数え方によって上位に並ぶ製品が変わる点に注目してください。

| 調査(数え方) | 調査元・時点・対象 | 1位 | 主な上位製品 |
|---|---|---|---|
| 社数シェア(導入企業数・単一回答) | ノークリサーチ/2025年/年商500億円未満の中堅・中小企業 | SMILEシリーズ(大塚商会)15.1% | GLOVIA(富士通)14.0%、SAP ERP 12.0%、SAP Business One 7.9%、奉行V ERP 5.6%、OBIC7 5.2% |
| 売上金額シェア | ITR「ERP市場2025」/2023年度実績/国内53ベンダー調査 | OBIC7(オービック)11.8% | ITRは個社別の詳細順位を非公開。ベンダー別売上金額1位はOBIC7 |
| 利用者アンケート | BOXIL/2025年3月/ERP導入に携わった1,793人 | マネーフォワード クラウドERP 13.55% | Microsoft Dynamics 365 Business Central 7.98%、SAP Business One 7.81%、OBIC7 5.80%、freee統合型ERP 5.63% |
ノークリサーチ(社数シェア):SMILEシリーズが首位
社数シェアは「その製品を導入している企業がどれだけ多いか」を数える指標です。ノークリサーチの調査(年商500億円未満の中堅・中小企業1,300社が対象)では、2025年の最新版で大塚商会のSMILEシリーズが15.1%で首位、富士通のGLOVIAが14.0%で2位、SAP ERPが12.0%で続きました。
「SMILEシリーズ」はブランドの総称で、現行の中核製品は「SMILE V 2nd Edition」です(以降ではこの製品名で扱います)。この社数シェアは国産・外資を区別せず全ERPを対象とした順位で、外資のSAP ERPも3位(12.0%)に入っています。
同じノークリサーチの2023年版では、SMILEシリーズが37.0%、GLOVIAが28.8%と、2025年版より高い数値が出ていました。これは首位が動いたのではなく、後述するとおり集計方法(複数回答か単一回答か)が変わったためです。首位がSMILE、2位がGLOVIAという順位は両年で一貫しています。
出典・参考資料(2件)
- 出典:2025年 中堅・中小向けERP市場の導入シェアと注目すべきニーズ動向|ノークリサーチ(https://www.norkresearch.co.jp/pdf/2025itapp_erp_rel1.pdf)
- 出典:2023年 中堅・中小市場におけるERPの社数シェアと有力な差別化ポイント|ノークリサーチ(https://www.norkresearch.co.jp/pdf/2023itapp_erp_rel.pdf)
ITR(売上金額シェア):OBIC7が首位
売上金額シェアは「製品の売上規模でどれだけ大きいか」を数える指標です。調査会社ITRの「ITR Market View:ERP市場2025」によると、2023年度のERP市場ベンダー別売上金額シェアはOBIC7を提供するオービックが11.8%で1位でした。社数(導入企業数)で数えたノークリサーチとは首位が入れ替わり、1社あたりの規模が大きい製品ほど上位に出やすいのが売上金額ベースの特徴です。
ITRは市場規模と一部の順位を公表していますが、全ベンダーの詳細な売上金額シェア一覧は有料レポートに収録されており、無料で確認できるのはベンダー別1位(オービック)までです。
出典・参考資料(2件)
- 出典:ERP市場の提供形態別市場規模推移および予測を発表|アイ・ティ・アール(https://www.itr.co.jp/topics/pr-20250306-1)
- 出典:オービックがERP市場ベンダー別売上金額シェア1位を獲得(ITR調査レポートにて)|株式会社オービック(https://www.obic.co.jp/pressrelease/20250425.html)
BOXIL(利用者アンケート):マネーフォワードが首位
利用者アンケートは「実際にERPの導入に携わった人がどの製品を挙げたか」を集計する指標です。BOXILが2025年3月にERP導入経験者1,793人を対象に実施した調査では、マネーフォワード クラウドERPが13.55%で1位、Microsoft Dynamics 365 Business Centralが7.98%、SAP Business Oneが7.81%と続きました。
上位5製品を合わせても40.77%で、突出した1社が市場を占めるというより、複数の製品に利用が分散しているのが国内ERPの特徴です。
クラウド型のバックオフィスSaaSを出自とする製品が上位に来る点が、社数・売上ベースの調査との違いです。回答者の属性や利用製品の分布が結果に反映されるため、同じ国内ERPでも首位が変わります。
出典・参考資料(1件)
- 出典:ERPのシェア率とは?1,793人に聞いた市場シェア調査|BOXIL(https://boxil.jp/mag/a3340/)
なぜ調査ごとにERPシェア1位が違うのか
ここからは、早見表で見た「調査ごとに1位が違う」現象の理由を掘り下げます。結論から言えば、順位が食い違うのは製品の優劣が入れ替わっているのではなく、調査ごとに「何を・誰を対象に・どう数えているか」が異なるためです。
大きく分けて、数え方には3つの軸があります。社数シェアは導入している企業の数を数えるため、中堅・中小企業に広く導入されている製品が上位に出ます。売上金額シェアは製品の売上規模で数えるため、1社あたりの契約金額が大きい大手向け製品が上位に出やすくなります。利用者アンケートは回答者が挙げた製品を集計するため、認知度が高く新規導入が活発なクラウド製品が上位に来る傾向があります。
対象とする企業規模の違いも順位を左右します。ノークリサーチの社数シェアは年商500億円未満の中堅・中小企業が対象で、この層に強い国産ERPが上位に来ます。一方、世界シェアや大企業向けの売上を含めると、外資系の大規模ERPが存在感を増します。「どの規模の企業を対象にした調査か」を確認しないと、自社に当てはまらない順位を見てしまうことになります。
さらに、同じ調査会社でも集計方法が変わると数値は大きく動きます。ノークリサーチの社数シェアは、2023年版が「導入済み製品を複数回答可」で集計してSMILEシリーズが37.0%だったのに対し、2025年版は「最も主要な製品を1つだけ選ぶ単一回答」に変わり15.1%となりました。首位(SMILE)と2位(GLOVIA)の順位は変わっていませんが、数値そのものは集計設計に左右されます。
シェアの数字を見るときは、パーセンテージの大小だけでなく「どう数えた数字か」まで確かめることが大切です。
日本のERP市場規模と最新動向
ここからは、シェアの背景にある市場全体の規模と動きを見ていきます。個別製品の順位を理解するうえで、市場がどれくらいの規模で、どの方向へ動いているかを押さえておくと判断がしやすくなります。
国内ERP市場規模は調査によって幅がある
国内ERP市場の規模も、調査会社によって数字に幅があります。矢野経済研究所の調査では、2024年の国内ERPパッケージライセンス市場規模(エンドユーザ渡し価格ベース)は前年比12.1%増の1,684億4,000万円、2025年は11.7%増の1,881億9,000万円と予測されています。
一方、ITRの「ERP市場2025」では、2023年度の売上金額は前年度比17.7%増の2,027億円とされています。
数字が食い違うのは、市場の定義範囲が違うためです。矢野経済研究所はパッケージライセンスを中心とした市場を、ITRはSaaS型を含むより広いERP市場を対象としています。市場規模を引用するときも、どの調査の・どの範囲の数字かを確かめる必要があります。
出典・参考資料(2件)
- 出典:ERP市場動向に関する調査(2025年)|矢野経済研究所(https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3913)
- 出典:ERP市場の提供形態別市場規模推移および予測を発表|アイ・ティ・アール(https://www.itr.co.jp/topics/pr-20250306-1)
クラウド化の加速と2027年問題
市場の動きとして顕著なのが、オンプレミス型からクラウド型への移行です。矢野経済研究所によると、2024年のクラウド型利用は市場全体の約65%を占め、そのうちSaaS型は前年比36.2%増と高い成長を見せています。ITRの調査でも、SaaS市場は2023年度に前年度比29.3%増と、パッケージ市場(同2.2%増)を大きく上回る成長率でした。
もう一つの背景が「2027年問題」です。SAPは基幹ERP「SAP Business Suite 7(SAP ERP/ECC)」の標準保守を2027年末で終了すると公表しており、後継のクラウドERP「SAP S/4HANA」への移行案件が大企業を中心に続いています。
基幹システムの刷新需要が市場の成長を後押ししており、この移行の動きが今後のシェアにも影響していくと見られます。
出典・参考資料(3件)
- 出典:ERP市場動向に関する調査(2025年)|矢野経済研究所(https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3913)
- 出典:ERP市場の提供形態別市場規模推移および予測を発表|アイ・ティ・アール(https://www.itr.co.jp/topics/pr-20250306-1)
- 出典:Innovation Commitment for SAP S/4HANA(SAP Business Suite 7 の標準保守は2027年末まで)|SAP(https://support.sap.com/en/release-upgrade-maintenance/maintenance-information/maintenance-strategy/s4hana-business-suite7.html)
世界のERPシェアランキング(2024年にOracleが首位へ)
国内シェアの位置づけを相対的に捉えるため、世界のERPシェアも確認しておきましょう。世界市場では長くSAPが首位を保ってきましたが、2024年に変化がありました。
調査会社Apps Run The Worldによると、2024年にOracleが初めてSAPを抜き、ERPアプリケーションベンダーの世界首位となりました。Oracleの2024年のERPソフトウェア売上は87億ドル・市場シェア6.63%、SAPは86億ドル・6.57%と、わずかな差での首位交代です。1980年代からERP市場をリードしてきたSAPが2位に転じたのは、この調査では初めてのことです。
世界のERP市場規模については、Gartnerが2024年の市場を前年比11.3%増の約660億ドルと分析しており、SAP・Workday・Oracleなどが主要プロバイダーとして挙げられています。
ただし、Apps Run The World(ERPアプリケーション市場、総額約1,322億ドル)とGartner(約660億ドル)では市場の定義範囲が異なり、上位ベンダーの顔ぶれも変わるため、世界シェアも「どの調査の数字か」を意識して見る必要があります。
出典・参考資料(2件)
- 出典:Oracle Surpasses SAP To Become No. 1 ERP Apps Provider|Apps Run The World(https://www.appsruntheworld.com/oracle-surpasses-sap-to-become-no-1-erp-apps-provider/)
- 参考資料:Market Share Analysis: ERP Software, Worldwide, 2024|Gartner(https://www.gartner.com/en/documents/6654134)
シェア上位の主要ERPベンダーの特徴
ここからは、シェア上位に並ぶ主要ERPが「どんな企業・要件に向くか」を、系統ごとに整理します。順位表の製品名を、自社の候補として当たりをつける手がかりにしてください。
外資フルスコープ系(SAP・Oracle・Microsoft)
SAP・Oracle・Microsoftに代表される外資系ERPは、財務・調達・生産・販売・人事までを一気通貫でカバーする網羅性と、グローバル拠点の統合管理に強みがあります。多言語・多通貨・各国の会計基準に標準対応しているため、海外展開する大企業や製造業の全社基盤として選ばれてきました。世界シェアでも上位を占める一方、導入・運用には相応の体制と投資が必要になる傾向があります。
国産オンプレ系(OBIC7・SMILEシリーズなど)
OBIC7やSMILEシリーズに代表される国産ERPは、日本の商習慣(締め処理・手形管理など)や会計基準・税制への標準対応と、国内でのサポート体制の手厚さが強みです。国内の社数シェア・売上金額シェアで上位に位置しており、中堅企業から大手まで幅広く導入されています。法改正への対応も国内ベンダーが継続的に行うため、運用面の安心感を重視する企業に向いています。
クラウド・SaaS系(マネーフォワード・freee・NetSuiteなど)
マネーフォワードやfreee、NetSuiteに代表されるクラウド・SaaS型ERPは、初期投資を抑えたスモールスタートと短期間での導入、法改正への自動アップデート対応が強みです。利用者アンケートで上位に来るのもこの系統で、クラウド会計を出発点にバックオフィス全体へ広げる中堅・成長企業を中心に導入が進んでいます。必要なモジュールから段階的に追加できる柔軟性が特徴です。
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ERPシェアを製品選定にどう活かすか
ここまで見てきたシェアデータは、自社のERP選定にどう使えばよいのでしょうか。シェアは有力な手がかりですが、使い方を誤ると判断を狂わせることもあります。
シェアだけで選ぶリスク
シェア上位の製品は多くの企業に選ばれている実績があり、候補に入れる材料になります。ただし、シェアが高いことと自社に合うことは別問題です。たとえば大企業向けに売上規模の大きい製品が、中小企業の業務量やコスト感に合うとは限りません。逆に、社数シェアが高い中堅・中小向け製品が、海外拠点を持つ大企業の要件を満たすとも限りません。
シェアはあくまで「多くの企業が選んでいる」という事実であって、自社の業種・規模・業務要件への適合を保証するものではない点に注意が必要です。
自社の規模・業種・海外展開でどの調査を見るべきか
自社の状況に合わせて、参照すべき調査を選ぶと判断がしやすくなります。中堅・中小企業であれば、同じ規模帯を対象にしたノークリサーチの社数シェア(導入企業数)が、実際に自社と近い企業がどの製品を使っているかの目安になります。大企業で導入規模の大きい製品を検討するなら、ITRの売上金額シェアが参考になります。
クラウド型を重視するなら、新規導入の動向が反映されやすい利用者アンケート(BOXIL)が実態に近い傾向を示します。海外拠点を含めた全社基盤を検討するなら、国内シェアだけでなく世界シェアも併せて確認すると、グローバル対応力のある製品を見落とさずに済みます。複数の調査を組み合わせ、自社の条件に近い数字を重視することが、シェアを選定に活かすコツです。
自社の候補ERPを絞る
シェアで見てきた上位ERPのうち、代表的な製品を候補検討の手がかりとして紹介します。ここで取り上げるのは、3つの調査(社数シェア・売上金額シェア・利用者アンケート)のいずれかで首位・最上位に位置づけられた主要製品です。まずは比較表で各製品の位置づけを確認し、続けて代表的な製品を個別に紹介します。
| サービス名 | OBIC7 | SAP S/4HANA Cloud | GLOVIA(富士通) | SMILE V 2nd Edition | マネーフォワード クラウドERP |
|---|---|---|---|---|---|
| 提供会社 | 株式会社オービック | SAPジャパン株式会社(SAP SE) | 富士通株式会社/富士通Japan株式会社 | 株式会社大塚商会(開発: 株式会社OSK) | 株式会社マネーフォワード |
| 提供形態 | オンプレミス/クラウド(プライベートクラウド型) | クラウド(Public/Private)・オンプレミス | オンプレミス/クラウド(製品系統による) | オンプレミス/クラウド(SMILE V Air) | クラウド(SaaS) |
| 主な対象企業規模 | 中堅〜大企業 | 中堅〜大企業 | 中小〜大企業(2026年4月にGLOVIA Oneへ統合) | 中堅・中小企業 | 中堅〜上場・IPO準備企業 |
| シェア調査での位置づけ | 売上金額シェア1位(ITR「ERP市場2025」2023年度・11.8%) | 世界シェア2位(2024年・Oracleに次ぐ/Apps Run The World)。国内社数シェアは旧来のSAP ERP(ECC)が上位、S/4HANAはその移行先 | 国内シェア上位(社数シェア2位・ノークリサーチ2025・14.0%) | 社数シェア1位(SMILEシリーズ・ノークリサーチ2025・15.1%) | 利用者アンケート1位(BOXIL2025・13.55%) |
| 費用の目安 | 要問い合わせ(個別見積り) | 要問い合わせ(個別見積り) | 要問い合わせ(個別見積り) | 要問い合わせ(クラウド版 SMILE V Air は30日間の無料体験あり) | 要問い合わせ(中堅〜上場・IPO準備企業向けの個別見積り) |
| 詳細情報 | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | サービス詳細を見る | 公式サイト | 公式サイト |
※シェア調査の出典・時点・対象は本文「【調査別】日本国内のERPシェアランキング早見表」に記載。費用は2026年9月時点の各社公式情報にもとづき、公式に金額が非公開のものは「要問い合わせ」と記載しています。GLOVIAは富士通の複数製品系統の総称で、系統により提供主体・対象規模が異なります。
ここで取り上げた5製品は、各シェア調査で上位に入った代表的な製品です。ERPはこのほかにも数多く提供されており、シェアで当たりをつけたあとは、機能・料金・提供形態を横並びで比較し、自社の規模・業種に合う製品を絞り込んでいくのが選定の次の一歩になります。ERP全体の比較や選び方をより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
ERP比較20選|統合基幹業務システムを企業規模・提供形態・費用で徹底比較
会計や販売、在庫、人事給与を別々のシステムやExcelで管理していて、部門をまたぐたびにデータを入力し直している——そんな基幹業務の分断に限界を感じていませんか。老朽化した基幹システムの保守切れや、グループ経営・海外拠点の管理を機に、ERP…
1. OBIC7(株式会社オービック)

OBIC7は、株式会社オービックが自社開発・直接販売する国産の統合基幹業務システムです。会計・人事給与・販売・生産などの業務を一つの基盤に統合し、中堅企業から大手企業まで幅広く導入されています。ITRの「ERP市場2025」では、2023年度のベンダー別売上金額シェアで1位(11.8%)を獲得しており、売上規模の大きい国産ERPの代表格です。
開発から導入・保守までを自社で一貫して担う体制により、日本の商習慣や法改正への対応、長期的なサポートに強みがあります。追加のカスタマイズに頼らず標準機能で業務をカバーする設計思想で、運用のしやすさを重視する企業に向いています。
2. SAP S/4HANA Cloud(SAPジャパン株式会社)

SAP S/4HANA Cloudは、ドイツのSAP SE(日本法人はSAPジャパン株式会社)が提供するクラウドERPです。旧来のSAP ERP(ECC)の後継にあたり、インメモリデータベース基盤による処理性能と、グローバル拠点をまたぐ会計・経営管理の統合に強みがあります。
2024年の世界ERPシェアではOracleがSAPを僅差で抜きましたが、SAPは依然として世界トップクラスのベンダーです。
提供形態はマルチテナントのPublic Editionと、カスタマイズ可能なPrivate Editionを選べます。2027年に控える旧来型SAP ERPの標準保守終了に向けて、大企業を中心に移行案件が続いており、グローバルでの統合管理を重視する企業の有力な選択肢となっています。
3. SMILE V 2nd Edition(株式会社大塚商会)

1979年発売の「SMILE」シリーズを受け継ぐ国産の統合型基幹業務システムが、株式会社大塚商会のSMILE V 2nd Editionです(開発は大塚商会グループの株式会社OSK)。2022年に現行版へリニューアルされました。ノークリサーチの社数シェア調査では首位に位置しており、中堅・中小企業を中心に広く導入されているのが特徴です。
販売・会計・人事給与を中核に、CRMや業種別テンプレート(製造業・運送業・建設業向けなど)を組み合わせて構成できます。自社サーバーに導入するオンプレミス版と、クラウド版「SMILE V Air」の両方から、業務方針に応じて選べる点も導入検討のポイントです。
4. マネーフォワード クラウドERP(株式会社マネーフォワード)

クラウド会計を核に、中堅企業・IPO準備企業・上場企業のバックオフィスを統合するクラウドERPスイートが、株式会社マネーフォワードのマネーフォワード クラウドERPです。BOXILの利用者アンケート(1,793人)では首位に選ばれています。会計・給与・請求書・経費・債権請求・契約などのモジュールを、必要なものから組み合わせて導入できます。
豊富なAPIによるシステム間連携と内部統制の強化に対応し、中堅企業から上場・IPO準備企業までを対象としています。モジュール単位のスモールスタートから始め、事業の成長に応じて機能を追加していく運用に向いています。
まとめ
日本国内のERPシェアは、社数シェア(ノークリサーチ)ではSMILEシリーズ、売上金額シェア(ITR)ではOBIC7、利用者アンケート(BOXIL)ではマネーフォワードと、調査ごとに首位が入れ替わります。これは製品の優劣ではなく、数え方・対象企業規模・集計方法の違いによるものです。シェアを見るときは順位の数字だけでなく、「どの調査の・どの切り口の順位か」を必ず確認しましょう。
そのうえで、シェアはあくまで候補を絞る材料であり、最終的には自社の業種・規模・業務要件との適合を見極めることが重要です。自社に近い規模帯の調査を参照しつつ、気になる製品は資料を取り寄せて具体的に比較検討を進めてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. ERP(統合基幹業務システム)とは何ですか?
A. ERP(統合基幹業務システム)とは、会計・販売・生産・人事などの基幹業務を一つのシステムに統合し、経営に必要な情報を一元管理するソフトウェアです。
業務ごとに別々のシステムを導入する場合と違い、部門をまたいでデータをリアルタイムに共有できるため、経営判断の迅速化や業務の標準化につながります。提供形態にはクラウド型・オンプレミス型などがあり、企業規模や業種に応じて多様な製品が提供されています。
Q. 日本国内のERPシェア1位はどの製品ですか?
A. 日本国内のERPシェア1位は調査によって異なり、社数シェア(導入企業数)ではSMILEシリーズ、売上金額シェアではOBIC7、利用者アンケートではマネーフォワード クラウドERPが首位です。
ノークリサーチの社数シェア(2025年・年商500億円未満の中堅・中小企業が対象)ではSMILEシリーズが15.1%、ITRの売上金額シェア(2023年度)ではOBIC7を提供するオービックが11.8%、BOXILの利用者アンケート(2025年3月・1,793人)ではマネーフォワード クラウドERPが13.55%で、それぞれ首位です。
このように「国内シェア1位」は1つに定まらず、どの調査の・どの切り口の順位かによって変わります。
出典・参考資料(3件)
- 出典:2025年 中堅・中小向けERP市場の導入シェアと注目すべきニーズ動向|ノークリサーチ(https://www.norkresearch.co.jp/pdf/2025itapp_erp_rel1.pdf)
- 出典:オービックがERP市場ベンダー別売上金額シェア1位を獲得(ITR調査レポートにて)|株式会社オービック(https://www.obic.co.jp/pressrelease/20250425.html)
- 出典:ERPのシェア率とは?1,793人に聞いた市場シェア調査|BOXIL(https://boxil.jp/mag/a3340/)
Q. なぜERPのシェアランキングは調査ごとに1位が違うのですか?
A. ERPのシェア順位が調査で違うのは、製品の優劣が入れ替わっているのではなく、調査ごとに「何を・誰を対象に・どう数えているか」が異なるためです。
導入している企業の数を数える社数シェアでは中堅・中小に広く導入された製品が、売上金額シェアでは1社あたりの契約金額が大きい大手向け製品が、利用者アンケートでは認知度が高く新規導入が活発なクラウド製品が上位に出やすくなります。加えて、対象とする企業規模(大企業か中堅・中小か)や集計方法(複数回答か単一回答か)の違いも数値と順位を左右します。
Q. 日本のERP市場規模はどのくらいですか?
A. 日本のERP市場規模は調査によって幅があり、矢野経済研究所は2024年のパッケージライセンス市場を1,684億4,000万円、ITRはSaaSを含むERP市場を2023年度で2,027億円としています。
数字が食い違うのは市場の定義範囲が違うためで、矢野経済研究所はパッケージライセンスを中心とした市場を、ITRはSaaS型を含むより広い市場を対象としています。いずれの調査でも、オンプレミス型からクラウド型への移行が進み、SaaS市場が高い成長率を示している点は共通しています。
出典・参考資料(2件)
- 出典:ERP市場動向に関する調査(2025年)|矢野経済研究所(https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3913)
- 出典:ERP市場の提供形態別市場規模推移および予測を発表|アイ・ティ・アール(https://www.itr.co.jp/topics/pr-20250306-1)
Q. 世界のERPシェア1位はどの企業ですか?
A. 世界のERPシェアは、2024年にOracleが初めてSAPを抜いて首位となりました。
調査会社Apps Run The Worldによると、2024年のERPソフトウェア売上はOracleが87億ドル・市場シェア6.63%、SAPが86億ドル・6.57%と、わずかな差での首位交代でした。1980年代からERP市場をリードしてきたSAPが2位に転じたのは、この調査では初めてのことです。
ただし世界市場も調査によって定義範囲や上位ベンダーの顔ぶれが変わるため、「どの調査の数字か」を意識して見る必要があります。
出典・参考資料(1件)
- 出典:Oracle Surpasses SAP To Become No. 1 ERP Apps Provider|Apps Run The World(https://www.appsruntheworld.com/oracle-surpasses-sap-to-become-no-1-erp-apps-provider/)
Q. ERPは国産製品と海外製品でシェアや強みがどう違うのですか?
A. ERPは、国産製品が日本の商習慣・会計基準への標準対応と国内サポートに強く国内の社数・売上シェアで上位を占め、海外製品は多言語・多通貨などグローバル統合に強く世界シェアで上位を占めるという違いがあります。
OBIC7やSMILEシリーズなどの国産ERPは、締め処理や手形管理といった日本固有の業務や法改正への対応力を背景に、中堅・中小から大手まで国内で広く導入されています。一方、SAPやOracleなどの海外ERPは、海外拠点の統合管理に強みがあり、海外展開する大企業や製造業の全社基盤として選ばれる傾向があります。
Q. 自社の規模ではどの調査のERPシェアを参考にすればよいですか?
A. 参考にすべき調査は自社の規模で変わり、中堅・中小企業なら同じ規模帯を対象にしたノークリサーチの社数シェア、大企業ならITRの売上金額シェア、クラウド型重視なら利用者アンケート(BOXIL)が実態に近い目安になります。
海外拠点を含めた全社基盤を検討する場合は、国内シェアだけでなく世界シェアも併せて確認すると、グローバル対応力のある製品を見落とさずに済みます。単一の順位を鵜呑みにせず、自社の条件に近い調査の数字を重視することが、シェアを選定に活かすコツです。
Q. ERPはシェアが高い製品を選べば失敗しませんか?
A. ERPはシェアが高い製品でも自社に合うとは限らず、シェアだけで選ぶのは避けるべきです。
シェアは「多くの企業が選んでいる」という事実であり、候補を絞る有力な材料になります。ただし、自社の業種・規模・業務要件への適合を保証するものではありません。たとえば売上規模の大きい大企業向け製品が中小企業のコスト感に合うとは限らず、逆に中堅・中小向けで社数シェアが高い製品が海外拠点を持つ大企業の要件を満たすとも限りません。
最終的には気になる製品の資料を取り寄せ、自社要件との適合を具体的に見極めることが重要です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















