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ERP導入支援会社の選び方|コンサル型・SIer型・専業ベンダー型の違いと比較

ERP導入支援会社の選び方 コンサル型・SIer型・専業ベンダー型を比較のサムネイル画像

ERP(基幹システム)の新規導入や刷新を決めても、それを実際に進める段階で「どの会社に伴走してもらうか」で手が止まることは少なくありません。製品を選ぶ前の構想段階から相談したいのか、導入する製品はほぼ固まっていて構築を任せたいのか、自社の状況によって頼るべき相手が変わるためです。

ERP導入支援を掲げる会社は、製品に中立な立場で構想・要件定義から関わるコンサルティング会社もあれば、特定の製品に精通した専業ベンダーやシステム構築を主軸とするSIer(システムインテグレーター)もあります。支援の範囲も、上流の構想だけの会社から稼働後の定着・改善まで見る会社まで幅があります。

本記事では、ERP導入支援会社を製品中立の上流コンサル型・SIer/システム構築型・特定ERP専業/ベンダー型の3タイプに整理し、支援範囲の違いと選び方を解説します(以下、コンサル型/SIer型/専業・ベンダー型と呼びます)。

費用・期間の考え方や、製品選定と支援会社選定をどの順で進めるかまで、導入プロジェクトを任せる相手を判断する材料としてご活用ください。ERP製品そのものの比較検討は、別途まとめています。

また、自社の状況に合った支援タイプを手早く見極められるよう、「ERP導入支援タイプ診断もご用意しました。製品の決定状況や自社の段階を選ぶだけで、向いているタイプの見当がつきます。

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ERP導入支援会社の3タイプと支援範囲の違い

ここからは、ERP導入支援会社を支援スタンスと主に担う支援フェーズで3つのタイプに分けて解説します。同じ「導入支援」でも、製品に中立な立場で構想から入る会社と、特定製品の構築を主軸にする会社では、任せられる範囲も相談すべきタイミングも異なります。

いずれのタイプにも企業規模や業種を問わず選択肢があり、中小企業や非製造業でも依頼できる支援会社があります。自社に近い規模・業種の実績を持つ相手を選べるかどうかが、次に解説する選び方の起点になります。

製品中立の上流コンサル型

特定の製品を売ることを目的とせず、構想の整理・業務要件の定義・製品やベンダーの選定・IT投資計画の策定といった上流工程を支援するタイプです。「どの製品が自社に合うか」を決める前の段階から相談でき、複数製品を候補に並べて中立に評価してもらえるのが特徴です。

要件定義やベンダーとの調整を担うPMO(プロジェクト管理支援)まで引き受ける会社もあり、社内に基幹刷新を推進するノウハウが乏しい企業が「旗振り役」を外部に補うのに向きます。一方で、製品の開発・構築そのものは別のSIerやベンダーが担うことが多く、上流と構築で会社が分かれる前提を理解しておく必要があります。

SIer・システム構築型

導入する製品が決まった後の要件定義から、開発・構築・データ移行・テスト、そして稼働までを担うタイプです。複数のERP製品に対応するマルチベンダー型が多く、システム構築の実装力とプロジェクト管理力を強みにします。

製品選定がある程度固まっていて、「作り切る」フェーズを任せたい企業に向きます。自社開発のマスター管理ツールや導入テンプレートを持ち、構築を効率化する会社もあります。

特定ERP専業・ベンダー型

SAP・Odoo・NetSuite・GRANDITなど、特定のERP製品に精通した専業パートナーやベンダー直営の導入支援です。対応製品が絞られる代わりに、その製品の実装ノウハウ・テンプレート・過去事例が蓄積されており、製品を使いこなす前提での導入を深く支援できます。

導入したい製品がすでに決まっている、あるいは特定製品のエコシステムに乗ることを決めた企業に向きます。製品が未定の段階では、まず上流コンサル型で製品選定から整理する選択肢も検討に値します。

【支援範囲マトリクス】タイプ別に見る支援フェーズ

3タイプが導入のどのフェーズを主に担うかを、1枚に整理したのが次の表です。会社によって幅はありますが、「自社がどの段階を誰に任せたいか」を考える出発点として活用してください。

支援タイプ構想・企画製品・ベンダー選定要件定義開発・構築・移行稼働後の定着・改善
製品中立の上流コンサル型
SIer・システム構築型
特定ERP専業・ベンダー型
◎=主に担う/○=担うことが多い/△=限定的・会社により対応。実際の支援範囲は各社で異なるため、個別に確認してください。

上流コンサル型は構想と製品選定に強く、構築は別会社に引き継ぐのが一般的です。専業・ベンダー型は特定製品の要件定義から稼働後の定着まで一貫して深く支援でき、SIer型はその中間で「決まった製品を作り切る」フェーズに重心があります。

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【比較表】主要なERP導入支援サービスの比較

ここからは、3タイプの代表的なERP導入支援サービスを、支援タイプ・支援範囲・対応製品・導入実績・費用や期間の目安といった観点で横並びに比較します。気になるサービスは、後述の個別紹介と各社の資料もあわせてご確認ください。

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サービス名船井総合研究所タナベコンサルティングアイネスOdoo導入・開発・業務統合支援(マルウェブ)GRANDITSAP ERP導入支援サービス(アイ・ピー・エス)
支援タイプ製品中立の上流コンサル型製品中立の上流コンサル型SIer・システム構築型特定ERP専業・ベンダー型特定ERP専業・ベンダー型特定ERP専業・ベンダー型
主な支援範囲(フェーズ)目的・現状整理〜ベンダー選定〜導入・運用の3フェーズ
(共同プロジェクトチームでのPMO支援あり)
システム課題の可視化〜IT投資計画の策定の2フェーズ
(選定後のPMO型支援も追加可)
課題把握〜要件定義〜開発・構築・移行〜本番稼働〜運用保守の7フェーズ
(自社コンサルタントで一貫)
要件定義〜カスタマイズ開発〜外部システム連携〜データ移行〜運用
(日本ディレクション+海外開発の体制)
販売パートナー(SIer)が要件定義〜構築〜運用を担当
(70社以上のコンソーシアム方式)
構想立案〜設計・構築〜稼働後の運用・保守を一気通貫
(海外拠点はUNITED VARS連携で支援)
対応製品・スタンス特定製品に依らない独立系
Fit to Standard志向
上流工程に特化
RFI作成・ベンダー評価まで支援
SAP ERP/S/4HANA(マスタ管理ツール保有)
自社OSS ERP「Aerps One」も選択可
OSS ERP「Odoo」専門(公認導入パートナー)
EC・受発注との連携に強い
国産ERP「GRANDIT」(11モジュール・完全Web型)
日本商習慣に標準対応
SAP S/4HANA Cloud(Public/Private)専業
SAPプラチナパートナー
導入実績非公開
(ERP支援単独の社数は未公表)
非公開
(ERP支援単独の社数は未公表)
非公開
(社数の公表なし。1996年からERP支援)
非公開
(Odooは世界1,200万人以上が利用)
1,500社以上
(GRANDIT公式、2026年時点)
180社超
(創業以来29年累計、公式、2026年9月時点)
海外のべ100拠点以上
費用・期間の目安要問い合わせ
(無料相談あり)
要問い合わせ
(売上規模別に3プラン)
要問い合わせ導入支援は要問い合わせ
Odoo本体は月額22米ドル〜/ユーザー(12か月割引時、Community版は無償)
要問い合わせ
(導入期間6〜18か月が目安)
要問い合わせ
(導入期間1〜2年が目安)
詳細情報公式サイト公式サイト公式サイト公式資料を見る公式サイト公式サイト

ERP導入支援サービスの個別紹介

比較表で挙げた各サービスを、3つのタイプごとに紹介します。支援範囲や対応製品、得意とする領域が異なるため、自社が任せたいフェーズと照らし合わせながらご覧ください。

製品中立の上流コンサル型

製品を決める前の構想・要件定義・製品選定から中立に支援するタイプです。社内に推進役を置きにくい企業が、上流の設計を任せる相手として検討できます。

1. ERP・基幹システム導入支援コンサルティング(株式会社船井総合研究所)

株式会社船井総合研究所のERP・基幹システム導入支援コンサルティングの公式サイト

経営コンサルティングを手がける株式会社船井総合研究所が、ERP・基幹システムの導入を構想段階から稼働後まで一貫して支援するサービスです。銀行や会計事務所などの出資母体を持たない独立系の立場から、特定の製品に偏らず中立的にベンダー選定を支援します

支援は目的・現状整理、ベンダー選定、導入・運用の3フェーズで構成され、支援先企業と共同のプロジェクトチームを組んで進捗管理を担うPMO(プロジェクト管理支援)的な役割も引き受けます。業務をシステムの標準機能に合わせるFit to Standardを基本方針に掲げています。

公式サイトの支援事例は製造業が中心で、棚卸時間50%削減や月300万円のコストダウンといった成果が紹介されています(2026年9月時点、同社公式サイト)。費用・期間は公表されておらず、無料相談を経た個別見積もりとなります。

2. ERP導入支援コンサルティング(株式会社タナベコンサルティング)

株式会社タナベコンサルティングのERP導入支援コンサルティングの公式サイト

株式会社タナベコンサルティングのERP導入支援コンサルティングは、システム選定前の上流工程に重点を置いたサービスです。業務課題の可視化からIT投資計画の策定、RFI(情報提供依頼)の作成、ベンダー評価までを担い、製品の実装ではなく導入前の意思決定を支援します。

支援はシステム課題の可視化とIT投資計画の策定の2フェーズで構成され、As-Is/To-Beのシステム鳥瞰図を作成して課題を整理します。システム選定後は、開発ベンダーと発注企業の間に立つPMO型の伴走支援も追加で依頼できます。

対象は売上規模別に、ミニマム(売上100億円まで)・スタンダード(100〜300億円)・プレミアム(300億円以上)の3区分が設けられています。これは料金区分ではなく対象企業の規模区分であり、費用・期間は個別見積もりです

SIer・システム構築型

導入する製品が決まった後の要件定義から構築・稼働までを担うタイプです。「作り切る」フェーズの実装力とプロジェクト管理力で選ぶことになります。システム構築を主軸とする大手SIerは数多く、対応製品や業種実績で見比べる余地が大きい点に留意してください。

3. アイネス ERP導入支援サービス(株式会社アイネス)

アイネス ERP導入支援サービスの公式サイト

東証プライム市場に上場する株式会社アイネス(1964年設立)が、自社コンサルタントで手がけるERP導入支援サービスです。経営課題・業務課題・IT課題の把握からERPの選定・導入、稼働後の運用保守までを、代理店を介さず一貫して担うSIer型の支援体制をとっています。

導入は計画・業務要件定義・プロトタイプ・開発・テスト・運用準備・本番稼働という7つのフェーズで進め、要件定義から構築・データ移行・稼働までを作り込むフェーズを主戦場とします。SAP ERP/S/4HANA向けにはマスターデータ管理ツール「Aerps MASTER Ace」を自社で持ち、ユニリタとの協業で運用領域の支援範囲を広げています。

中堅中小企業には、オープンソースERP「iDempiere」を基盤とした自社ソリューション「Aerps One」も用意しています。ライセンス費用ゼロ・ノンプログラミングのパラメータ設定で導入できる低コスト路線が選べるのが、大手ERPパッケージ中心の会社との違いです。稼働後は、データセンター運用保守事業を背景とした継続的な運用保守サービスを受けられます。

特定ERP専業・ベンダー型

特定のERP製品に精通した専業パートナーやベンダー直営の支援です。導入したい製品が固まっている場合に、その製品の実装ノウハウを頼れます。このタイプにはベンダー直営(自社製品を自社で導入支援)と、製品を扱う販売パートナー経由の2通りがあり、後者では実際に伴走する会社がパートナーごとに変わる点も確認しておきましょう。

4. Odoo導入・開発・業務統合支援(株式会社マルウェブ)

Odoo導入・開発・業務統合支援(株式会社マルウェブ)のサービスサイト

株式会社マルウェブは、オープンソースERP「Odoo」の導入・開発を手がけるパートナー(Odoo Learning Partner)です。要件定義からカスタマイズ開発、外部システム連携、データ移行、運用までを一貫して支援します。OdooはベルギーのOdoo SAが提供するERPで、販売・購買・在庫・会計・CRM・EC・人事・製造など80以上のアプリを組み合わせて使えます。

導入は、日本側のディレクションと、ベトナム・中国の開発チームを組み合わせた体制で進めます。ECサイト構築(Magento・Shopify)を本業とする同社は、EC・受発注業務と基幹システムを連携させたい中小・中堅企業の統合を担える点が特徴です。

Odoo本体のライセンスは、マルウェブ経由の提示価格例(2026年時点)で、12か月契約の割引時に月額22米ドル/ユーザー(Standard)から、機能を拡張するCustomは33米ドル/ユーザーからです(米ドル建てのため、円換算額は為替により変動します)。導入支援費用は個別見積もりとなります。

ソースコードが公開されているCommunity Editionは無償で利用でき、自社サーバーでの運用も選べます。

5. GRANDIT(GRANDIT株式会社)

GRANDITの公式サイト

GRANDITは、GRANDIT株式会社が提供する国産の統合基幹業務システム(ERP)です。インフォコムや内田洋行ITソリューションズなど70社以上のSIerが共同で開発・保守・販売する「コンソーシアム方式」を採り、日本の月次締め・振替伝票・承認フローといった商習慣に標準で対応します。

販売・購買在庫・製造・会計・人事給与など11のモジュールから必要なものを選んで段階的に導入でき、クライアントのインストールが不要な完全Web型のため、テレワークやBYODにも当初から対応します。提供形態はオンプレミス、プライベートクラウド、AWS上のクラウドから選べます。

対象は年商50億〜数千億円クラスの中堅〜大企業で、導入実績は1,500社以上(GRANDIT公式サイト、2026年時点)です。料金はコンソーシアムの販売パートナーごとの個別見積もりで、導入期間は規模やモジュール数に応じて6〜18か月が目安です。既存の取引SIerを窓口に選べる点も、コンソーシアム方式ならではの特徴です。

6. SAP ERP導入支援サービス(株式会社アイ・ピー・エス)

SAP ERP導入支援サービス(株式会社アイ・ピー・エス)の公式サイト

SAP ERP導入支援サービスは、株式会社アイ・ピー・エスが手がけるSAP専業のシステムインテグレーション(SIer)サービスです。1997年からSAP ERPの導入・保守を専業とし、SAP社の国内最上位認定である「プラチナパートナー」(国内10社程度)を取得しています。

対応製品はSAP S/4HANA Cloudで、標準機能に業務を合わせるPublic Editionと、カスタマイズに対応するPrivate Editionを扱います。構想立案から設計・構築、稼働後の運用・保守までを一気通貫で支援し、海外子会社への展開はSAPパートナー連合「UNITED VARS」(70社以上が参画し約100カ国をカバー)と連携します。

導入実績は創業以来29年で180社超、海外はのべ100拠点以上で、製造業・商社を中心に、従業員30人未満の小規模から1,500人以上・グローバル15拠点規模の大企業まで対応します。導入期間はプロジェクトのキックオフから稼働まで概ね1年〜2年が目安です(企業規模・要件により変動)。費用は公式サイトに金額の記載がなく、個別の問い合わせが必要です。

ERP導入支援会社の選び方

ここからは、タイプを掴んだうえで具体的な1社に絞り込むための観点を5つ解説します。自社の状況に当てはめながら、優先順位をつけてご確認ください。

自社のどのフェーズを任せたいか

最初に決めるべきは、支援を頼みたい範囲です。製品が未定で構想から相談したいなら上流コンサル型、製品が決まっていて構築を任せたいならSIer型や専業・ベンダー型、というように、任せたいフェーズによって候補のタイプが変わります。

上流と構築で会社が分かれると、要件の引き継ぎに手間が生じる一方、中立な視点で製品を選べる利点があります。一気通貫で1社に任せると連携の手間は減りますが、その会社が扱う製品の範囲に選択肢が縛られます。どちらを重視するかを先に決めると、候補を絞りやすくなります。

導入実績と専門性をどう見極めるか

各社が掲げる導入社数や対応年数は、その会社の経験量を測る手がかりになります。ただし数字だけで判断せず、自社と近い業種・規模・製品での実績があるかを確認することが重要です。同じ「1,000社導入」でも、業種や企業規模が自社と離れていれば参考になりにくいためです。

各社の公式サイトが掲げる「豊富な実績」「業界トップクラス」といった表現は、そのまま受け取らず、具体的な事例や数値の裏づけを確認することが重要です。導入事例に自社と似た課題・規模の企業が挙がっているか、対応製品が自社の候補と一致しているかが、専門性を見極める実質的な基準になります。

要件定義やPMOを外部に任せられるか

ERP導入では、業務要件をまとめ、社内の各部門やベンダーとの調整を担う推進役が欠かせません。この役割を社内だけで担えない場合、要件定義やPMO(プロジェクト管理支援)を外部に委託できる会社かどうかが選定の分かれ目になります。

上流コンサル型やコンサル機能を持つ会社は、要件定義から社内調整まで伴走してくれることが多く、初めての基幹刷新でも進めやすくなります。構築主体の会社に依頼する場合は、要件定義を自社で固める必要があるのか、支援を受けられるのかを事前に確認しておくと、着手後のギャップを避けられます。

検討中の製品に対応しているか

導入したい製品が決まっている場合は、その製品の導入支援実績がある会社を選ぶのが基本です。専業・ベンダー型は対応製品が絞られる代わりに実装ノウハウが深く、マルチベンダー型のSIerは複数製品に対応できる幅があります。

製品がまだ決まっていないなら、特定製品に縛られない上流コンサル型に選定から相談する方が、後戻りが少なくなります。「支援会社に合わせて製品が決まってしまう」状態を避けたい場合ほど、製品選定の段階で中立性を保てる相手を選ぶ意味があります。

稼働後の定着・業務改善まで見てくれるか

ERPは導入して終わりではなく、現場に定着し、業務改善につながって初めて投資が回収されます。稼働後の運用サポートや、定着状況を見ながらの改善提案まで支援範囲に含むかどうかは、長期的な成果を左右します。

構築までで契約が切れる会社と、稼働後の伴走まで見る会社では、導入後の立ち上がりに差が出ます。運用フェーズの支援メニューや保守契約の範囲を、契約前に確認しておくとよいでしょう。導入の目的が「システムを入れること」ではなく「業務を変えること」であるほど、稼働後まで見てくれる相手の価値が高まります。

この5つの観点は、先に挙げた3タイプと組み合わせて考えると絞り込みやすくなります。製品が未定で構想から中立に相談したいなら上流コンサル型、要件定義から構築・移行を作り込みたいならSIer型、導入する製品が決まっているなら専業・ベンダー型が中心的な候補になります。

任せたいフェーズ・製品の決定状況・稼働後の伴走まで含めて、どのタイプを軸にするかを先に決めると迷いが減ります。各タイプに当てはまる具体的なサービスは、上の比較表と診断で確認してください。

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ERP導入支援の費用・期間の相場

ここからは、費用と期間の当たりを整理します。前提として、ERP導入支援の費用・期間には、公的機関や大手調査による「相場」を示す公開データが見当たりません。支援範囲・製品・企業規模で大きく変わるためで、多くの会社が費用を「要問い合わせ」としています。以下は各社が公表している目安であり、市場の平均値ではない点にご注意ください。

金額の目安が乏しくても、費用の内訳の考え方は押さえられます。ERP導入支援の費用は、要件定義・構築・データ移行など導入時に一度かかる初期費用と、稼働後の保守やクラウド利用料・ライセンス料といった継続費用に分かれます。見積もりを取るときは、この2つを分けて確認すると各社を比べやすくなります。

費用は「要問い合わせ」が中心、規模で幅がある

上流コンサル型では、支援対象を企業規模で区切ってプランを設けている会社があります。たとえばタナベコンサルティングは、売上規模別に「ミニマム(売上100億円まで)」「スタンダード(100〜300億円)」「プレミアム(300億円以上)」の3プランを設けています(金額は要問い合わせ)。自社の規模でどのプランに当たるかが、費用感の目安になります。

専業・ベンダー型でも、初期費用や月額はプロジェクトの規模・要件次第で個別見積もりとなるのが一般的です。クラウド型のERPは、ハードウェアやインフラの購入が不要なため初期費用を抑えやすく、サブスクリプション型でコストを平準化しやすいとされます。オンプレミス型か、クラウド型かによっても費用構造が変わります。

期間はキックオフから稼働まで1〜2年が一つの目安

導入期間も製品や規模で幅がありますが、公表している会社の値が参考になります。SAP専業のアイ・ピー・エスは、よくある質問で「プロジェクトキックオフしてから稼働までおよそ1年〜2年が目安」と示しています(2026年9月3日時点、同社公式サイト)。これは1社が公表する目安であり、すべてのERP導入に当てはまる期間ではありませんが、年単位のプロジェクトになることを見込んでおくと計画を立てやすくなります。

期間を左右する大きな要因は、業務を製品の標準機能にどこまで合わせるかです。カスタマイズを増やすほど開発・テスト・保守の工数が膨らむため、標準に寄せる方針か個別開発を厚くする方針かを、支援会社と早い段階ですり合わせることが、期間と費用の見通しを立てるうえで役立ちます。

ERP製品選定と支援会社選定の進め方

ここからは、製品選定と支援会社選定をどの順で進めるかを、自社の段階別に整理します。「製品を先に決めるか、選定から支援会社に任せるか」で、最初に相談すべき相手が変わります。自社の段階別の進め方を、次の図に整理しました。

ERP導入支援の進め方を製品の決定状況で分けた図。製品が未定の場合は、まず上流コンサル型に相談して構想整理と製品・ベンダー選定を受け、製品が固まった後にSIer・専業型へ構築を引き継ぐ流れ。製品が決まっている場合は、その製品の専業・ベンダー型やSIer型に要件定義から構築を任せ、要件定義やPMO、稼働後の運用まで見てもらえるかを契約前に確認する流れ。

製品が未定なら、上流コンサル型に選定から相談する

どのERP製品を導入するか決まっていない段階では、製品に中立な上流コンサル型に、構想の整理と製品・ベンダーの選定から相談する進め方があります。自社の業務課題を起点に候補製品を絞り込めるため、「支援会社の扱う製品ありき」で選択肢が狭まるのを避けられます。

製品が固まった後は、その製品に強いSIerや専業ベンダーに構築を引き継ぐ流れが一般的です。上流コンサルがPMOとして構築フェーズも監督すれば、要件のブレを抑えられます。ERP製品そのものの機能や種類を比較したい場合は、SAP・Oracle NetSuite・Odoo・GRANDITなど主要製品を企業規模・提供形態別に整理した製品比較の解説もあわせてご確認ください。

製品が決まっているなら、その製品の専業・SIerに構築を任せる

導入する製品がすでに決まっているなら、その製品の導入実績が豊富な専業・ベンダー型やSIer型に、要件定義から構築を任せる進め方が効率的です。製品の実装ノウハウが蓄積されている会社ほど、標準機能を活かした短期導入がしやすくなります。

この場合も、要件定義やPMOを自社だけで担えるかを確認し、不足するなら支援メニューに含まれる会社を選ぶとよいでしょう。稼働後の運用まで見てもらえるかも、あわせて確認しておきたい点です。

基幹刷新の判断が迫られている場合の背景

基幹システムの刷新を急ぐ背景には、外部要因もあります。経済産業省は2018年の「DXレポート」で、老朽化・複雑化した既存システムが残ると2025年以降に最大で年間12兆円(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性があると指摘し、これを「2025年の崖」と呼びました。レガシー刷新の遅れが経営リスクになるという警鐘です。

製品固有の事情もあります。SAPは、SAP ERP 6.0(ECC)を含むSAP Business Suite 7の標準保守を2027年末で終了し、追加費用を払えば2028年から2030年末まで延長保守を選べるとしています。

以降はS/4HANAへの移行が前提となるため、SAP利用企業では刷新の判断が迫られており、これは「SAPの2027年問題」と呼ばれます。こうした期限がある場合、製品選定と支援会社選定を並行して進める必要が出てきます。

出典・参考資料(2件)

よくある質問(FAQ)

Q. ERP導入支援とは何ですか?

A. ERP導入支援とは、企業がERP(統合基幹業務システム)を新規導入・刷新する際に、構想策定・要件定義・製品選定・開発構築・稼働後の定着までを外部の専門会社が伴走して支援するサービスです。担う会社はコンサルティング会社・SIer・特定製品の専業ベンダーなどに分かれ、それぞれ得意とする工程や対応製品が異なります。自社に推進ノウハウが乏しい部分を外部で補う目的で利用されます。

Q. ERP導入支援会社にはどんなタイプがありますか?

A. ERP導入支援会社は、大きく製品中立の上流コンサル型・SIer/システム構築型・特定ERP専業/ベンダー型の3タイプに分かれます。上流コンサル型は製品選定前の構想・要件定義に強く、SIer型は決まった製品の要件定義から構築・稼働までを担い、専業・ベンダー型は特定製品の実装ノウハウを深く持ちます。自社が任せたいフェーズによって、適したタイプが変わります。

Q. ERP導入支援の費用相場はどのくらいですか?

A. ERP導入支援の費用は、公的機関や大手調査による「相場」を示す一次データが見当たらず、多くの会社が個別見積もり(要問い合わせ)としています。支援範囲・対応製品・企業規模によって大きく変わるためです。

上流コンサル型のタナベコンサルティングのように売上規模別のプラン区分を設ける会社もありますが、金額は問い合わせが前提です。クラウド型ERPはハードウェアやインフラの購入が不要なため、初期費用を抑えやすい傾向があります。

Q. ERP導入支援の期間はどのくらいかかりますか?

A. ERP導入支援の期間は製品や規模で幅がありますが、SAP専業のアイ・ピー・エスはキックオフから稼働までおよそ1〜2年が目安と公表しています(2026年9月時点、同社公式サイト)。

GRANDITのように規模やモジュール数に応じて6〜18か月を目安とする製品もあり、カスタマイズを増やすほど開発・テストの工数が膨らんで長引きます。年単位のプロジェクトになることを見込んでおくと、計画を立てやすくなります。

Q. 中小企業でもERP導入支援を依頼できますか?

A. 中小企業でもERP導入支援は依頼できます。 近年はクラウド型ERPの普及で中堅・中小企業の導入が増えており、オープンソースERP(OdooやiDempiereなど)を基盤にライセンス費用を抑えた低コストの導入路線を選べる支援会社もあります。

「大企業向け」に見える製品でも規模を問わず採用例が広がっているため、自社と近い規模・業種の導入実績があるかを確認すると、過剰にならない支援を受けやすくなります。

Q. 製品が決まっていなくてもERP導入支援に相談できますか?

A. 製品が未定でも、製品中立の上流コンサル型であれば構想の整理や製品・ベンダーの選定から相談できます。 自社の業務課題を起点に候補製品を絞り込めるため、「支援会社が扱う製品ありき」で選択肢が狭まるのを避けられます。製品が固まった後に、その製品に強いSIerや専業ベンダーへ構築を引き継ぐ進め方が一般的です。

Q. 新規導入と既存システムのリプレイスで、ERP導入支援の内容は変わりますか?

A. 新規の基幹システム構築も既存システムのリプレイスも、どちらもERP導入支援の対象です。 リプレイスでは現行システムからのデータ移行や業務の棚卸しが論点になり、新規導入では業務プロセスそのものの設計が中心になるなど、重点は異なります。上流コンサル型を中心に、どちらのケースでも支援実績を持つ会社が多くあります。自社がどちらに当たるかを伝えたうえで、近い実績があるかを確認するとよいでしょう。

Q. 要件定義やPMOをERP導入支援会社に任せられますか?

A. 要件定義やPMO(プロジェクト管理支援)は、多くのERP導入支援会社に外部委託できます。 社内に基幹刷新の推進役を置きにくい場合、業務要件のとりまとめや、社内各部門・開発ベンダーとの調整を担ってもらえる会社を選ぶと進めやすくなります。ただし構築主体のSIer型では、要件定義を自社で固める前提の会社もあるため、どこまで支援を受けられるかを契約前に確認しておくと、着手後のギャップを避けられます。

まとめ:自社の段階から支援タイプを選ぶ

ERP導入支援会社は、製品に中立な立場で構想から支援するコンサル型、決まった製品を作り切るSIer型、特定製品に精通した専業・ベンダー型の3タイプに整理できます。まだ製品が決まっていないなら選定から任せられるコンサル型、製品が固まっているならその製品に強いSIer型・専業型が起点になります。

そのうえで、任せたいフェーズ・自社に近い規模や業種の実績・要件定義やPMOを委託できるか・稼働後まで見てくれるかを確認すると、候補を1社に絞り込めます。費用と期間は各社で幅があるため、初期費用と継続費用を分けて見積もりを取り、複数社を見比べて判断してください。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
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