取引先の不祥事がSNSで一夜にして拡散し、法令に違反していなくても「社会的に許されない」として批判が広がっています。こうした場面が珍しくなくなり、企業コンプライアンスは経営の土台として位置づけられるようになりました。担当者が最初につまずきやすいのが、「コンプライアンス=法令遵守」と訳した瞬間に、実際に守るべき範囲が見えなくなることです。
背景には、違反が企業の存続に直結するという現実があります。コンプライアンス違反を一因とする倒産は近年高い水準で推移しており、企業の規模を問わず対策が求められています。
本記事では、企業コンプライアンスの定義と守備範囲を結論から整理し、混同しやすい関連用語との違い、重視すべき理由、違反の類型、体制の作り方までを一つずつ解説します。専任部署がなくても着手できるように、体制構築の手順とチェックリスト、そして体制を継続的に回すための仕組みまでを見取り図として示します。
目次
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企業コンプライアンスとは?意味と守備範囲(法令遵守との違い)
企業コンプライアンスとは、法令だけでなく、社内規則や社会的な規範・企業倫理までを含めて守り、公正な事業活動を行うことを指します。コンプライアンス(compliance)はもともと「要求に応じる・従う」という意味の言葉で、日本語では「法令遵守」と訳されることが多いものの、実務ではより広い範囲を指す言葉として使われています。
守備範囲を整理すると、大きく次の3つに分けて考えられます。この3つを押さえると、「法律に触れていないから問題ない」という判断がなぜ通用しないのかが見えてきます。
- 法令: 法律・政省令・条例など、違反すれば罰則や行政処分の対象になるルール
- 社内規則: 就業規則・行動規範・各種社内規程など、自社が定めたルール
- 社会規範・企業倫理: 法令にはなっていないが、社会通念上守るべきとされる公正さ・誠実さ
「法令遵守」の枠だけで捉えると、3つ目の社会規範・企業倫理が抜け落ちます。ハラスメントの黙認や不適切なSNS投稿のように、法律違反とまでは言い切れない行為でも、社会からの信頼を大きく損なう事態は少なくありません。企業コンプライアンスを社内で説明するときは、「法令+社内規則+社会規範・企業倫理」という広い範囲を守ることだ、と共有しておくと認識のずれを防げます。

コーポレートガバナンス・内部統制・CSR・ESGとの違い
ここからは、コンプライアンスと同じ文脈で使われやすい関連用語との違いを整理します。いずれも「健全な企業経営」に関わる言葉ですが、目的や対象が異なるため、混同すると社内での議論がかみ合わなくなります。
| 用語 | コンプライアンス | コーポレートガバナンス | 内部統制 | CSR(企業の社会的責任) | ESG | リスクマネジメント |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 主な目的・意味 | 法令・社内規則・社会規範を守り、公正に事業を行うこと | 経営を監督・規律し、株主をはじめとする関係者の利益にかなう意思決定を担保する仕組み | 業務を適正に遂行するために組織内に組み込む仕組み・プロセス | 環境・地域・従業員など社会に対して企業が果たす責任 | 環境・社会・ガバナンスの観点で企業を評価する枠組み(主に投資家視点) | 事業に関わるさまざまなリスクを特定・評価し、対応する活動 |
| コンプライアンスとの関係 | 本記事のテーマ | 統治の仕組みの中で、コンプライアンスは守るべき規律の一つに位置づけられる | 法令等の遵守は内部統制が達成すべき目的の一つ。コンプライアンスを現場で機能させる仕組み | コンプライアンスはCSRの前提・土台にあたる | ガバナンス(G)や社会(S)の評価にコンプライアンスの取り組みが反映される | コンプライアンス違反もリスクの一つ。法令違反リスクへの対応がコンプライアンスに重なる |
特に内部統制は、金融庁(企業会計審議会)の基準で目的と構成要素が明確に定義されており、コンプライアンスとの関係を理解する手がかりになります。基準では内部統制を次のように定めています。
内部統制とは、基本的に、業務の有効性及び効率性、報告の信頼性、事業活動に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセスをいい、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング(監視活動)及びIT(情報技術)への対応の6つの基本的要素から構成される。
出典:財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準(令和5年4月改訂)|金融庁
このうち「事業活動に関わる法令等の遵守」がコンプライアンスに直結する目的です。コンプライアンスは守るべき規律そのもの、内部統制はそれを現場で確実に機能させるための仕組み、という関係で捉えると整理しやすくなります。目的の一つは2023年(令和5年)の基準改訂で「財務報告の信頼性」から「報告の信頼性」へと広げられており、財務以外の報告も対象に含まれます。
企業コンプライアンスがなぜ重要なのか(違反を放置するとどうなるか)
コンプライアンスを重視すべき理由は、違反を放置した場合に自社が受けるダメージが、経営を揺るがす規模になり得るからです。ここでは、放置したときに起きる代表的な帰結を具体的に見ていきます。
- 法的責任・行政処分: 課徴金・業務停止命令・許認可の取消しなど、事業継続そのものに影響する処分を受けることがあります
- 信用の失墜: 報道やSNSでの拡散により企業イメージが低下し、顧客離れや取引の解除につながります
- 採用・人材への影響: 労働環境やハラスメントに関する問題は、離職や採用難として跳ね返ります
- 倒産リスク: 取引停止・信用収縮が重なり、資金繰りが行き詰まるケースもあります
倒産に至る規模感は、統計にも表れています。帝国データバンクの調査では、コンプライアンス違反を一因とする倒産は2024年に388件と2年連続で過去最多を記録しました。直近の2025年は278件と4年ぶりに減少に転じたものの、なお高い水準にあり、違反類型では「粉飾」が最も多くなっています。
これらは大企業に限った話ではありません。むしろ、専任部署や十分なチェック体制を持たない中小企業ほど、違反が表面化したときの影響は相対的に大きくなります。だからこそ、規模にかかわらず早い段階での体制づくりが重要になります。
コンプライアンス違反の主な類型と事例
ここからは、何がコンプライアンス違反にあたるのかを類型ごとに整理します。自社の業務に当てはめながら、どこにリスクが潜んでいるかを洗い出す手がかりにしてください。以下の表は、違反の類型・よくある行為・主に関係する法令・実際に問題化した例を並べたものです。
| 類型 | 労務・ハラスメント | 不正会計・粉飾 | 情報漏えい | 不当表示・品質偽装 | 取引の公正・下請取引 | その他(情報管理・SNS等) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| よくある行為の例 | 長時間労働・サービス残業、パワハラ・セクハラの放置 | 売上の過大計上、経費の付け替え、決算の虚偽記載 | 個人情報の紛失・不正持ち出し、委託先からの漏えい | 実際と異なる効能・産地の表示、検査データの改ざん | カルテル・談合、下請代金の不当な減額・支払遅延 | インサイダー取引、従業員による不適切なSNS投稿 |
| 主に関係する法令 | 労働基準法、労働施策総合推進法 | 会社法、金融商品取引法 | 個人情報保護法 | 景品表示法、各種業法 | 独占禁止法、下請法 | 金融商品取引法 ほか |
| 実際に問題化した例 | 過重労働による健康被害、ハラスメントを理由とした訴訟・報道 | 上場企業の過年度決算の訂正、粉飾を一因とする倒産 | 顧客情報の大規模流出、委託先経由での情報漏えい | 優良誤認表示による措置命令、製品の認証不正 | 公正取引委員会による排除措置命令・課徴金 | 役職員によるインサイダー取引、SNS炎上による信用低下 |
とくに労務・ハラスメントは、多くの企業に共通するリスクです。パワーハラスメントについては、労働施策総合推進法により、事業主に「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動から労働者を守る雇用管理上の措置が義務づけられ、中小企業も2022年(令和4年)4月から義務化されています。「うちは小規模だから関係ない」とは言えない領域です。
表に挙げた法令はあくまで「主に関係する」ものであり、個別の行為が違反にあたるかどうかは事実関係によって判断が変わります。自社での判断に迷う場面では、顧問弁護士や社会保険労務士など専門家への相談を前提に、まずは類型ごとにリスクの所在を把握しておくことが出発点になります。
コンプライアンス体制の作り方(着手手順とチェックリスト)
ここからは、コンプライアンス体制を実際に作る手順を解説します。専任部署がなくても着手できるよう、なぜ違反が起きるのかを押さえたうえで、方針づくりから研修までの流れを順番に見ていきます。
独占禁止法のように、分野によっては当局がコンプライアンス体制づくりの指針を公表しています。公正取引委員会は「実効的な独占禁止法コンプライアンスプログラムの整備・運用のためのガイド」を公表しており、体制を整える際の参考になります。
出典・参考資料(1件)
なぜコンプライアンス違反は起きるのか(体制で防ぐべき理由)
体制づくりの前に、違反が起きる原因を押さえておくと、どの打ち手が効くのかが見えてきます。多くの違反は、次の3つが重なったときに起こります。
- 規範意識の低さ: 「これくらいは大丈夫」という慣れや、成果を優先する空気が不正を後押しする
- 知識の不足: 法改正や社内ルールを知らず、違反していることに気づかない
- 体制の未整備: チェックや相談の仕組みがなく、問題が早期に把握・是正されない
この3つはいずれも、個人の資質だけでなく組織の仕組みで抑えられる要因です。だからこそ、意識・知識・仕組みのそれぞれに手を打つ体制づくりが、違反の予防につながります。

手順① 基本方針・行動規範を定める
最初に、経営として何を大切にし、何を許容しないのかを基本方針・行動規範として明文化します。抽象的なスローガンで終わらせず、日常業務で判断に迷う場面を想定した具体的な行動基準まで落とし込むことが重要です。経営トップが自らの言葉で発信することで、現場に「本気度」が伝わり、規範意識の底上げにつながります。
手順② 社内規程を整備する
方針を実務で機能させるために、就業規則・情報管理規程・ハラスメント防止規程などの社内規程を整備します。すでにある規程も、法改正や実態に合わなくなっていることが少なくありません。最新の法令に沿っているか、実際の運用と食い違っていないかを定期的に見直し、改定履歴を残しておくことが、いざというときの説明責任にも役立ちます。
手順③ 相談・内部通報窓口を設置する
違反の芽を早期に把握するには、従業員が安心して相談・通報できる窓口が欠かせません。内部通報については、公益通報者保護法が事業者に体制整備を求めており、常時使用する労働者数によって義務か努力義務かが分かれます。
事業者は、前項に定めるもののほか、公益通報者の保護を図るとともに、公益通報の内容の活用により国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守を図るため、第三条第一号及び第六条第一号に定める公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとらなければならない。
3 常時使用する労働者の数が三百人以下の事業者については、第一項中「定めなければ」とあるのは「定めるように努めなければ」と、前項中「とらなければ」とあるのは「とるように努めなければ」とする。
出典:公益通報者保護法 第11条|e-Gov法令検索
この規定は2022年(令和4年)6月に施行された改正で強化されたものです。条文を整理すると、常時使用する労働者が300人を超える(301人以上の)事業者は通報対応の担当者を定め、必要な体制を整備する義務を負い、300人以下の事業者は努力義務となります。
従業員数が数十〜数百名の企業では、自社が義務の対象か努力義務かが人数によって分かれるため、まず自社の位置づけを確認しておくとよいでしょう。窓口は、通報者が不利益を受けない運用と、寄せられた情報を調査・是正につなげる仕組みまでをセットで整えることが求められます。
手順④ 研修で全社に浸透させる
方針・規程・窓口を整えても、従業員に知られていなければ機能しません。定期的な研修で、行動規範の内容・身近な違反事例・法改正のポイントを共有し、知識の不足を埋めていきます。
役職や部門ごとにリスクが異なるため、対象に応じて内容を変えると効果が高まります。研修は一度きりにせず、法改正や社会状況の変化に合わせて継続的に実施することが、意識の定着につながります。
自社で研修を内製するのが難しい場合は、eラーニング形式の教材を活用する選択肢もあります。教材テーマや料金、対象範囲を比較して選びたい方は、次の記事で詳しく解説しています。
体制づくりのチェックリスト
ここまでの手順を、自社の状況を点検するチェックリストにまとめました。着手できているか、形だけになっていないかを確認する目安として活用してください。
- 経営トップの言葉で、基本方針・行動規範を明文化・発信しているか
- 就業規則・情報管理・ハラスメント防止などの社内規程が、最新の法令と実態に沿っているか
- 従業員が安心して使える相談・内部通報窓口があり、通報者保護と是正の運用まで整っているか
- 役職・部門に応じたコンプライアンス研修を定期的に実施しているか
- 違反の兆候を検知・記録し、是正につなげる仕組み(内部監査・モニタリング)があるか
コンプライアンス運用を支える仕組み(内部監査・モニタリングとコンプライアンス管理ツール)
体制は作って終わりではなく、回し続けて初めて機能します。ここからは、組んだ体制を継続的に運用し、違反の兆候を検知・記録して是正につなげる仕組みを見ていきます。
運用の柱になるのが、内部監査とモニタリングです。規程どおりに業務が行われているか、通報や研修の記録が残っているかを定期的に点検し、問題があれば是正して再発防止につなげます。この「点検→是正→改善」を繰り返すことで、体制が形骸化するのを防げます。
ただし、対象部署や委託先が増えるほど、規程の配布状況・研修の受講履歴・通報対応の記録・委託先の点検結果を手作業で管理する負担は大きくなります。
こうした継続運用を支えるのが、コンプライアンス管理ツールやGRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)ツールと呼ばれる仕組みです。担う領域はサービスによって異なりますが、代表的な機能には次のようなものがあります。
- 規程管理: 社内規程の作成・改定・従業員への配布・閲覧状況の管理
- 研修・教育管理: eラーニングの配信と受講状況の把握
- 内部通報受付: 通報の受付・匿名対応・対応履歴の記録
- リスク評価・モニタリング: リスクの洗い出し・評価と、監査・点検の記録
- 委託先・取引先リスク管理: 委託先へのチェックシート配布・回収・評価の一元化
規程の管理が追いつかないのか、委託先の点検を効率化したいのか、内部通報や研修を一元管理したいのか、自社の課題によって選ぶべきツールは変わります。次のセクションでは、こうした運用を支える代表的なサービスを紹介します。
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コンプライアンス管理を支えるサービスの比較と紹介
ここでは、コンプライアンスの継続運用を支える代表的なサービスを紹介します。担う領域が異なる3つのタイプ(委託先リスク管理・規程管理・統合的なコンプライアンス管理)を取り上げ、まず比較表で違いを俯瞰したうえで、それぞれの特徴を解説します。
| 比較項目 | VendorTrustLink | KiteRa Biz | NAVEX One プラットフォーム |
|---|---|---|---|
| 提供会社 | 株式会社アトミテック | 株式会社KiteRa | NAVEX Global(日本法人: NAVEX Japan) |
| 対応領域 | 委託先・取引先リスク管理(TPRM) | 社内規程の作成・管理(規程DX) | 統合コンプライアンス管理(GRC) |
| 主な機能 | チェックシートの配布・回収・自動採点・履歴管理、委託先管理 | 規程の作成・改定・周知・電子申請、AI法改正レビュー、新旧対照表の自動作成 | 内部通報、ポリシー管理、第三者リスク管理、研修、ERM(全社的リスク管理)、情報開示 |
| 料金 | 要問い合わせ(アカウント数×委託先数で個別見積り) | 従業員規模別の定額制(要問い合わせ) | 要問い合わせ(個別見積り) |
| 無料プラン・トライアル | 無料トライアルあり(期間非公開) | 無料プランあり(Free) | 要問い合わせ |
| 主な対象規模 | 中小〜大企業 | 中小〜大企業 | 大手・グローバル展開企業 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 詳細を見る | 詳細を見る |
1. VendorTrustLink(株式会社アトミテック)

VendorTrustLink(ベンダートラストリンク)は、委託先・取引先へのチェックシート審査をクラウド化する委託先リスク管理(TPRM)サービスです。情報漏えいやコンプライアンス違反といった委託先起因のリスクを、チェックシートの配布・回収・自動採点・履歴管理によって可視化・一元管理できます。
国際的なリスクマネジメントの指針であるISO 31000に沿った設計を掲げ、これまでExcelやスプレッドシートで行っていた委託先点検を効率化したい企業に向いています。
設問は選択式・自由記述・画像や動画の添付などに対応し、配点設定や部署別の絞り込みも可能です。複数の委託先への一括送付や未回答者への自動リマインド、経年比較のためのレーダーチャート表示など、審査業務の手間を減らす機能を備えます。
2. KiteRa Biz(株式会社KiteRa)

社内規程の作成・改定・管理・周知に課題を抱える企業に向くのが、KiteRa Biz(キテラビズ)です。就業規則をはじめとする社内規程や労使協定書の作成から、改定、従業員への周知、行政への電子申請までをクラウド上で一元管理できる、社内規程DXサービスです。約200種類の規程雛形を条文解説付きで備え、設問に答える形式で規程を作成できるため、専任担当者がいなくても着手しやすいのが特徴です。
新設・改正された法令が規程に反映されているかをAIがチェックする機能や、改定時の新旧対照表の自動作成、グループ会社間の規程差異の可視化など、規程を最新の状態に保つための機能がそろっています。基本機能を試せる無料プラン(Free)も用意され、従業員が社内規程をいつでも閲覧できるリンク発行にも対応しています。
3. NAVEX One プラットフォーム(NAVEX Global)

内部通報から研修、ポリシー管理までを一つの基盤でまとめたいなら、NAVEX One プラットフォームが選択肢になります。米NAVEX Global社が提供する統合型のGRCプラットフォームで、内部通報(EthicsPoint/WhistleB)、ポリシー管理、第三者リスク管理、コンプライアンス研修、ERM(全社的リスク管理)などを単一の基盤に統合しています。
内部通報ホットラインをいち早くソフトウェアとして提供した企業として知られ、同社によると、グローバルで13,000社以上に導入されています(2026年時点)。
2025年10月には日本オフィスが開設され、導入から運用まで日本語での対応が始まりました。中堅・中小企業向けに機能を絞ったバンドルも用意されており、内部通報・研修・ポリシー管理を個別のツールで揃えるのではなく、まとめて運用したい企業に適しています。料金は要問い合わせによる個別見積もりです。
ここで取り上げた3つは代表例で、GRCツールには対応領域や想定する企業規模の異なるサービスが数多くあります。選び方の観点や機能の違いをふまえて幅広く比較検討したい方は、次の記事で26のサービスを整理していますので、あわせてご覧ください。
まとめ
企業コンプライアンスは、法令だけでなく社内規則や社会規範・企業倫理までを含めて守る、幅広い取り組みです。まず定義と守備範囲を正しく押さえ、関連用語との違いを整理したうえで、違反の類型を自社に当てはめてリスクを洗い出すことが出発点になります。
体制づくりは、基本方針・行動規範の策定から始まり、規程整備、相談・内部通報窓口の設置、研修による浸透という手順で進めます。そして、内部監査・モニタリングで違反を検知・記録し是正につなげる継続運用まで回して、初めて体制が機能します。
規程管理・内部通報・委託先点検といった運用の負担が大きくなってきたら、コンプライアンス管理ツールやGRCツールの活用も選択肢になります。自社の課題に合ったサービスの資料を取り寄せ、比較することから検討を始めてみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 企業コンプライアンスとは何ですか?
企業コンプライアンスとは、法令だけでなく、社内規則や社会規範・企業倫理までを含めて守り、公正に事業活動を行うことを指します。コンプライアンス(compliance)はもともと「要求に応じる・従う」という意味の言葉で、日本語では「法令遵守」と訳されることが多いものの、実務では法令・社内規則・社会規範の3つを守る、より広い範囲を指す言葉として使われています。
Q. コンプライアンスと法令遵守は何が違うのですか?
コンプライアンスは、法令遵守より広く、法令に加えて社内規則と社会規範・企業倫理までを守る対象に含む点が異なります。「法令遵守」の枠だけで捉えると、社会通念上守るべき公正さ・誠実さが抜け落ちます。ハラスメントの黙認や不適切なSNS投稿のように、法律違反とまでは言い切れなくても社会からの信頼を大きく損なう行為があるため、「法律に触れていないから問題ない」という判断は通用しません。
Q. 企業ではどんなコンプライアンス違反が起こりやすいですか?
企業で起こりやすいコンプライアンス違反は、長時間労働やハラスメントなどの労務問題と、情報漏えい・不正会計が代表的です。ほかにも不当表示・品質偽装、カルテルや下請代金の不当減額(独占禁止法・下請法)、インサイダー取引や従業員による不適切なSNS投稿などがあります。
なかでも労務・ハラスメントは業種や規模を問わず多くの企業に共通するリスクで、自社の業務に当てはめてどこにリスクが潜むかを洗い出すことが出発点になります。
Q. 内部通報窓口の設置は法律上の義務ですか?
内部通報窓口の設置が義務かどうかは従業員数で分かれ、常時使用する労働者が300人を超える(301人以上の)事業者は体制整備が義務、300人以下は努力義務です。これは公益通報者保護法(第11条、2022年〈令和4年〉6月施行の改正で強化)が定めるものです。
対象事業者は通報対応の担当者を定め、通報者が不利益を受けない運用と、寄せられた情報を調査・是正につなげる体制の整備が求められます。従業員数が数十〜数百名の企業では義務か努力義務かが人数で分かれるため、まず自社の位置づけを確認するとよいでしょう。
出典・参考資料(1件)
Q. 専任部署がなくてもコンプライアンス体制は作れますか?
専任部署がなくても、基本方針・行動規範の明文化から着手できます。体制づくりは、①経営トップの言葉で基本方針・行動規範を定める、②就業規則やハラスメント防止規程などの社内規程を整備する、③相談・内部通報窓口を設置する、④研修で全社に浸透させる、という手順で進めるのが基本です。
そのうえで内部監査・モニタリングで違反の兆候を検知・記録し是正につなげる運用まで回すと、体制が機能します。まずは自社の状況をチェックリストで点検し、着手できていない項目から手を打つのが現実的です。
Q. コンプライアンス研修ではどんな内容を扱えばよいですか?
コンプライアンス研修では、行動規範の内容・身近な違反事例・法改正のポイントを扱うのが基本です。役職や部門ごとにリスクが異なるため、対象に応じて内容を変えると効果が高まります。研修は一度きりではなく、法改正や社会状況の変化に合わせて継続的に実施することで、規範意識の定着や違反の未然防止につながります。
方針・規程・窓口を整えても従業員に知られていなければ機能しないため、研修は体制を現場で動かすための不可欠な打ち手です。
Q. コンプライアンス管理ツール(GRCツール)では何ができますか?
コンプライアンス管理ツール(GRCツール)では、規程管理・研修管理・内部通報受付・リスク評価・委託先リスク管理などを一元的に行えます。担う領域はサービスによって異なり、社内規程の作成・改定・配布に強いもの、内部通報や研修・ポリシー管理を統合するもの、委託先へのチェックシート審査を効率化するものなどがあります。
規程の配布状況・研修の受講履歴・通報対応の記録・委託先の点検結果を手作業で管理する負担が大きくなってきたら、自社の課題(規程管理・内部通報・委託先点検のどれが重いか)に合わせて選ぶのが選定のポイントです。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















