企業活動には、情報漏えいや自然災害、法令違反、取引先の倒産など、事業の継続をおびやかすさまざまなリスクが伴います。近年はこうしたリスクが多様化し、経営企画や総務、情報システム、法務などの担当者が「自社でもリスクマネジメントの体制を整えるように」と求められる場面が増えています。
とはいえ、「リスクマネジメントとは具体的に何を指すのか」「危機管理やリスクヘッジと何が違うのか」を、社内説明に使えるだけの正確さで押さえられているとは限りません。言葉のイメージだけが先行し、何から手をつければよいか分からないまま進んでいるケースも少なくありません。
この記事では、リスクマネジメントの意味と目的から、企業が備えるべきリスクの種類、進め方(プロセス)、リスクへの対応手法までを基礎から整理します。あわせて、リスクヘッジ・クライシスマネジメント・BCPといった紛らわしい類語との違いや、体制づくりの第一歩、洗い出しから対応・見直しまでを継続的に回すための手段までを解説します。
目次
一括ダウンロードする
リスクマネジメントとは?
リスクマネジメントとは、事業に影響を与えうるリスクをあらかじめ洗い出して評価し、対応策を講じて損失を抑える一連の取り組みを指します。問題が起きてから対処するのではなく、平常時から備えることで、いざリスクが顕在化したときの損失を小さくとどめることを狙いとしています。
国際的なリスクマネジメントの指針であるJIS Q 31000:2019(ISO 31000:2018)では、リスクマネジメントを次のように定義しています。
リスクマネジメント(risk management)
出典:JIS Q 31000:2019 リスクマネジメント−指針(ISO 31000:2018)3.2|日本産業規格
リスク(3.1)について,組織を指揮統制するための調整された活動。
ここでいう「リスク」は、事故や損失といった悪い出来事だけを指すわけではありません。同じ規格では、リスクを「目的に対する不確かさの影響」と定義しており、期待していた状態からのずれ全般を対象にしています。
リスク(risk)
出典:JIS Q 31000:2019 リスクマネジメント−指針(ISO 31000:2018)3.1|日本産業規格
目的に対する不確かさの影響。
注記1 影響とは,期待されていることからかい(乖)離することをいう。影響には,好ましいもの,好ましくないもの,又はその両方の場合があり得る。影響は,機会又は脅威を示したり,創り出したり,もたらしたりすることがあり得る。
つまりリスクマネジメントは、好ましくない事態への備えだけでなく、不確かさそのものを見定めて意思決定に活かす取り組みだといえます。実務では、損失を避ける・小さくするという守りの側面が中心になりますが、規格上はより広い概念として位置づけられています。
リスクマネジメントの目的と重要性
ここからは、企業がリスクマネジメントに取り組む目的と、近年その重要性が増している背景を確認します。
リスクマネジメントの目的は、リスクが現実になったときの損失を小さくとどめ、事業を継続できる状態を保つことにあります。問題が起きる前にリスクとその影響を把握し、対策を用意しておくことで、被害を最小限に抑え、企業としての信頼や価値を守ります。
その重要性が高まっている背景には、企業が向き合うリスクの多様化があります。中小企業庁の2021年版中小企業白書では、企業が想定するリスクの中身が変化していることが示されています。
同白書では、「感染症流行前は、『感染症』と回答した企業は約2割にすぎなかったが、感染症流行後は約7割と明確にリスクとして認識されている」とされ、取引先の倒産をリスクとして想定する企業の割合も増えているといいます。想定すべきリスクの幅が広がっていることがうかがえます。
出典・参考資料(1件)
一方で、こうした備えは十分に追いついていません。特に中小企業では、大企業に比べて対応が遅れている状況が指摘されています。同白書は、自然災害への備えについて次のように述べています。
「十分に対応を進めている」、「ある程度対応を進めている」と回答した割合は、大企業が約5割であるのに対して、中小企業は約3割にとどまっており、大企業と比べて中小企業の自然災害へのリスク対応が進んでいない状況が分かる。
出典:2021年版中小企業白書 第1部第1章第5節|中小企業庁
リスクが多様化する一方で備えが追いついていない現状は、何が自社にとってのリスクかを定期的に見直し、組織として備える仕組みを持つことの意義を示しています。
リスクマネジメントで扱うリスクの種類と具体例
ここでは、企業が備えるべきリスクにどのような種類があるのかを整理します。リスクを漏れなく洗い出すには、まずどんな切り口で分けられるのかを知っておくと役立ちます。
リスクの分け方には決まった正解があるわけではありませんが、リスクマネジメントや損害保険の分野では、原因や影響する領域ごとに次の4つに整理するのが一般的です。
| リスクの種類 | 戦略リスク | 財務・金融リスク | ハザード(災害)リスク | オペレーショナルリスク |
|---|---|---|---|---|
| 主な内容 | 経営判断や事業環境の変化に伴うリスク | 資金や取引にまつわるリスク | 事故や災害など外部要因による損害リスク | 日常業務や組織運営に潜むリスク |
| 具体例 | 新規事業の失敗 需要の急変 競合の台頭 M&Aの想定外 | 売掛金の未回収 取引先の倒産 為替・金利の変動 資金繰りの悪化 | 地震・台風・水害 火災 感染症の流行 設備の事故 | 情報漏えい 法令違反・コンプライアンス違反 人為ミス ハラスメント |
※上記はリスクを整理するための一般的な分類の一例です。分類の呼び方や区分は文献・組織によって異なる場合があります。
純粋リスクと投機的リスク
先ほどの4分類が「どの領域のリスクか」で分けるのに対し、こちらは「結果が損失だけか、利益もありうるか」で分ける別の切り口です。損失だけをもたらすリスクと、損失にも利益にもなりうるリスクに分けて考えます。
前者は「純粋リスク」と呼ばれ、火災や事故、情報漏えいのように、起きれば損失にしかならないものが当てはまります。後者は「投機的リスク」と呼ばれ、新規投資や事業展開のように、結果によって損失にも利益にもなりうるものを指します。リスクマネジメントでは主に純粋リスクへの備えが中心になりますが、投機的リスクも意思決定の判断材料として扱われます。
自社にとってのリスクを洗い出すときは、こうした分類を手がかりに、各領域で「自社では何が起こりうるか」を具体的に書き出していくと、抜け漏れを防ぎやすくなります。
一括ダウンロードする
リスクマネジメントの進め方(プロセス)
続いて、リスクマネジメントを実際にどのような流れで進めるのかを見ていきます。場当たり的に対策を打つのではなく、一定の手順に沿って回すことで、リスクの見落としや対応の偏りを防げます。
JIS Q 31000:2019(ISO 31000:2018)は、リスクマネジメントのプロセスを次のように示しています。
リスクマネジメントプロセスには,方針,手順及び方策を,コミュニケーション及び協議,状況の確定,並びにリスクのアセスメント,対応,モニタリング,レビュー,記録作成及び報告の活動に体系的に適用することが含まれる。
出典:JIS Q 31000:2019 リスクマネジメント−指針(ISO 31000:2018)6.1|日本産業規格
この流れを実務の順序に置き換えると、大きく次のステップで進みます。
- 状況の確定:自社の目的や事業内容をふまえ、対象範囲や判断の基準を定める
- リスク特定:どんなリスクがあるかを洗い出す
- リスク分析:それぞれの起こりやすさや影響の大きさを見極める
- リスク評価:分析結果をもとに対応の優先順位を判断する
- リスク対応:優先度の高いリスクから具体的な手を打つ
- モニタリング・レビュー:状況の変化や対策の効果を継続的に確認し、必要に応じて見直す
このうちリスク特定・リスク分析・リスク評価の3つをまとめて「リスクアセスメント」と呼びます。また、これらの活動全体を貫くように、関係者との「コミュニケーション・協議」を重ねていくのが規格の考え方です。

リスク分析では、「起こりやすさ(発生確率)」と「起きたときの影響の大きさ」の2つの軸でリスクを見積もるのが基本です。両方が高いリスクほど優先して対応し、低いものは受け入れる、といった判断がしやすくなります。この一連のプロセスを一度きりで終わらせず、繰り返し回していくことが、リスクマネジメントの実効性を保つうえで欠かせません。
リスクへの対応手法(リスクコントロールとリスクファイナンシング)
プロセスの中でも、読者が具体的にイメージしにくいのが「リスク対応」の部分です。ここでは、リスクにどう手を打つのかという対応手法を整理します。
リスクへの対応手法は、リスクマネジメントや損害保険の分野で、大きく「リスクコントロール」と「リスクファイナンシング」の2つに分けて整理されてきました。前者はリスクそのものを減らす手立て、後者はリスクが現実になったときの損失を資金面でまかなう手立てです。

リスクコントロール(リスクそのものを減らす)
リスクコントロールは、リスクの発生そのものや、起きたときの被害を小さくするための対応です。代表的なものに次の手法があります。
- 回避:リスクの原因となる活動をやめる(リスクの高い事業や取引から撤退する など)
- 損失防止:リスクが起きる可能性を下げる(防災設備の設置、社内研修、アクセス制御 など)
- 損失削減:起きたときの被害を小さくする(データのバックアップ、初動対応マニュアルの整備 など)
- 分離・分散:リスクを一箇所に集中させない(拠点やサーバーの分散、取引先の複数化 など)
リスクファイナンシング(損失を資金面でまかなう)
リスクファイナンシングは、リスクが現実になったときの損失を、あらかじめ用意した資金でカバーする対応です。主に次の2つに分かれます。
- 移転:損失を自社以外に移す(保険への加入、契約による責任分担 など)
- 保有:損失を自社で引き受ける(引当金や内部留保で備える など)
これらの手法は、先ほどのJIS Q 31000:2019(ISO 31000:2018)が示すリスク対応の選択肢とも整合します。規格では、リスク対応の選択肢として次のように挙げられています。
リスク対応の選択肢には,次の事項の一つ以上が含まれてもよい。
出典:JIS Q 31000:2019 リスクマネジメント−指針(ISO 31000:2018)6.5.2|日本産業規格
− リスクを生じさせる活動を開始又は継続しないと決定することによってリスクを回避する。
− ある機会を追求するために,リスクを取る又は増加させる。
− リスク源を除去する。
− 起こりやすさを変える。
− 結果を変える。
− (例えば,契約,保険購入によって)リスクを共有する。
− 情報に基づいた意思決定によって,リスクを保有する。
「回避」「起こりやすさを変える」「結果を変える」はリスクコントロールに、「保険購入によって共有する」「保有する」はリスクファイナンシングに対応します。自社のリスクごとに、これらを組み合わせて対応方針を決めていくことになります。なお、リスクファイナンシング(保険による移転や損失の保有など)の考え方は、経済産業省のリスクファイナンス研究会報告書でも整理されています。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:リスクファイナンス研究会 報告書〜リスクファイナンスの普及に向けて〜|経済産業省
混同しやすい類語との違い
リスクマネジメントには、意味が近く混同されやすい言葉がいくつかあります。ここでは、リスクヘッジ・クライシスマネジメント・リスクアセスメント・BCPとの違いを整理します。まずは全体像を一覧で確認します。
| 用語 | リスクマネジメント | リスクヘッジ | クライシスマネジメント(危機管理) | リスクアセスメント | BCP(事業継続計画) |
|---|---|---|---|---|---|
| 位置づけ | リスクを洗い出し・評価・対応・見直しまで体系的に回す活動全体 | 想定される損失を回避・軽減する個別の備え・手法 | 危機が実際に起きた後の被害最小化・事後対応 | リスクの特定・分析・評価を行うプロセス | 緊急事態でも事業を継続・早期復旧するための計画 |
| リスクマネジメントとの関係 | 全体の枠組み | 対応手法の一部にあたる個別の手立て | 主に「事後」を担う。リスクマネジメントは「事前」が中心 | リスクマネジメントの一段階(プロセスの一部) | リスク対応の一手段(特定領域の計画) |
リスクヘッジとの違い
リスクヘッジは、もともと投資や取引の分野で使われてきた言葉で、想定される損失に備えてそれを回避・軽減する個別の手立てを指します。たとえば、為替変動に備えて先物取引を組み合わせる、在庫を分散させる、といった具体策がこれにあたります。
リスクマネジメントが、リスクの洗い出しから評価・対応・見直しまでを組織全体で体系的に回す枠組みであるのに対し、リスクヘッジはその中で使われる個別の備えの一つです。「体系的なマネジメント」と「個別の回避手段」という関係で捉えると整理しやすくなります。
クライシスマネジメント(危機管理)との違い
クライシスマネジメント(危機管理)は、事故や災害、不祥事などの危機が実際に発生した後に、被害を最小限に抑え、事業や信頼の回復を図る取り組みを指します。初動対応や情報公開、復旧の指揮といった、危機が起きてからの対処に主眼があります。
両者の違いは「事前」か「事後」かにあります。リスクマネジメントはリスクが顕在化する前の予防や備えが中心で、クライシスマネジメントは顕在化した後の対応が中心です。実務では、事前のリスクマネジメントで備えつつ、万一に備えてクライシスマネジメントの体制も用意しておく、という両輪の関係になります。
リスクアセスメントとの違い
リスクアセスメントは、リスクマネジメントのプロセスの一段階です。JIS Q 31000:2019(ISO 31000:2018)では、次のように定義されています。
リスクアセスメントとは,リスク特定,リスク分析及びリスク評価を網羅するプロセス全体を指す。
出典:JIS Q 31000:2019 リスクマネジメント−指針(ISO 31000:2018)6.4.1|日本産業規格
つまりリスクアセスメントは、リスクマネジメント全体の中の「リスクを見極める工程」にあたります。リスクマネジメントがアセスメントに加えて対応やモニタリングまでを含む枠組みであるのに対し、リスクアセスメントはその手前の評価部分だけを指す、という関係です。
BCPとの違い
BCP(事業継続計画)は、緊急事態に直面したときに事業を継続・早期復旧するための計画です。中小企業庁は、BCPを次のように説明しています。
BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。
出典:中小企業BCP策定運用指針 1.1 BCP(事業継続計画)とは|中小企業庁
リスクマネジメントがあらゆるリスクを対象に幅広く備える枠組みであるのに対し、BCPは災害や大事故など事業の継続をおびやかす緊急事態に対象を絞り、「有事にどう事業を続けるか」を具体的に取り決めた計画です。リスクマネジメントの中で、事業継続に関わる領域を担う一手段と位置づけられます。
リスクマネジメントは何から始めればよいか
最後に、実際に自社でリスクマネジメントに取り組むとき、何から着手すればよいのかを整理します。あわせて、洗い出しから対応・見直しまでを継続的に回すための手段にも触れます。
実務の第一歩(責任者の明確化・リスクの洗い出し・体制整備)
リスクマネジメントがうまく回らない企業では、いくつか共通のつまずきが見られます。誰が責任者なのかが曖昧なまま担当者任せになっている、そもそも自社のリスクが十分に洗い出せていない、対応を続ける体制が整っていない、といったものです。裏を返せば、これらを一つずつ解消していくことが第一歩になります。
まず取り組みたいのが、リスクマネジメントの責任者と担当範囲を決めることです。経営層の誰が最終責任を持ち、各部署の誰がリスクの報告・対応にあたるのかをはっきりさせておくと、いざというときに動ける体制になります。
次に、自社で起こりうるリスクを洗い出します。前述のリスクの種類(戦略・財務・ハザード・オペレーショナル)を切り口に、各部署の担当者を集めて「自社では何が起こりうるか」を書き出していくと、抜け漏れを防ぎやすくなります。洗い出したリスクは、起こりやすさと影響の大きさの2軸でマッピングする「リスクマップ」に整理すると、どこから手をつけるべきかが一目で分かります。
そのうえで、優先度の高いリスクから対応方針とルールを定め、定期的に見直す体制を整えていきます。最初からすべてを完璧に整える必要はありません。まずは主要なリスクの洗い出しと責任者の明確化から着手し、運用しながら対象範囲と精度を広げていくのが現実的です。
継続運用の限界と、GRC・リスク管理ツールの活用
リスクマネジメントは一度整えて終わりではなく、洗い出し・評価・対応・見直しを継続的に回し続ける必要があります。この運用を表計算ソフトや紙で回そうとすると、担当者の異動で経緯が引き継がれない、更新が滞る、社内規程や委託先の情報が分散して全体像が見えにくい、といった課題が出てきます。
こうした継続運用を支える手段が、リスク・コンプライアンス・ガバナンス(GRC)に関わる領域を管理するツールです。GRCは、リスク管理・法令遵守(コンプライアンス)・企業統治(ガバナンス)という、相互に関わる3つの領域を指します。これらをまとめて扱う統合型のツールもあれば、委託先リスク管理・情報セキュリティ(ISMS・Pマーク)の運用・社内規程の管理といった、特定の領域に特化したツールもあります。
ここでは、GRCの各領域を担う代表的なツールを1つずつ紹介します。自社でどの領域の運用に課題があるか(取引先・委託先の管理、情報セキュリティ認証の運用、社内規程の整備など)を手がかりに、近い領域のサービスから見ていくと選びやすくなります。より多くのツールや統合型を含めて比較したい場合は、後掲の比較表と関連記事もあわせてご覧ください。
VendorTrustLink(株式会社アトミテック)

委託先や取引先に起因するリスクの管理に強みを持つのが、株式会社アトミテックのVendorTrustLinkです。委託先へのチェックシートの送付・回収・採点・履歴管理をクラウド上で自動化する、委託先リスク管理(TPRM)に特化したサービスです。国際的なリスクマネジメント指針であるISO 31000に準拠した設計を掲げています。
委託先は専用アカウントからプラットフォーム上で回答でき、結果は自動採点されてレーダーチャートや一覧で可視化されます。未回答者への自動リマインドや経年比較にも対応し、情報漏えいやコンプライアンス違反など委託先起因のリスクを一元管理できます。表計算での委託先アンケート運用から移行したい企業に向いています。料金はアカウント数と委託先数に応じた個別見積りで、公式サイトでは要問い合わせとなっています。
SecureNavi(SecureNavi株式会社)

SecureNaviは、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格ISO/IEC 27001)やPマーク(プライバシーマーク)の取得・運用を一元管理するクラウド型のツールです。情報セキュリティ領域の運用を支え、Excelやワードで分散しがちな規程類・情報資産台帳・リスクアセスメント・内部監査の記録をSaaS上に集約します。
認証取得に必要な工程をステップに分けて提示し、情報資産の登録内容に基づくリスクアセスメントの自動提案や、内部監査の計画・記録の一元管理といった機能を備えています。取得フェーズだけでなく、更新審査や規格改訂への対応など運用フェーズまでカバーする点が特徴で、専任のセキュリティ担当者を置きにくい企業でも認証取得と運用を進めやすい設計です。料金は公式サイトでは要問い合わせとなっています。
KiteRa Biz(株式会社KiteRa)

株式会社KiteRaが提供するKiteRa Bizは、就業規則をはじめとする社内規程や労使協定書の作成・改定・管理・従業員への周知・行政への電子申請までを、クラウド上で一元管理できる社内規程向けのサービスです。ガバナンスの土台となる社内規程の整備・管理を担います。
設問に答える形で規程を作成できるほか、約200種類の規程雛形や、新設・改正された法令が条文に反映されているかをチェックするAI規程レビュー、改定時の新旧対照表の自動作成などの機能を備えています。
料金は、公式サイトでは公開されておらず問い合わせが必要ですが、従業員規模に応じた定額制です。無料のFreeプランのほか、従業員100人以下で月額50,000円(初期費用50,000円)、101〜500人で月額200,000円(初期費用300,000円)、501人以上は要問い合わせとなっています。金額はMCB FinTechカタログの掲載情報にもとづきます。
ここで紹介した3サービスは、GRCの各領域を代表する例です。より多くのGRC・リスク管理ツールを、機能や料金、対応領域から比較して選びたい場合は、以下の比較表とあわせて次の記事もご覧ください。
| サービス名 | VendorTrustLink | SecureNavi | KiteRa Biz |
|---|---|---|---|
| 提供会社 | 株式会社アトミテック | SecureNavi株式会社 | 株式会社KiteRa |
| 対応領域 | 委託先・取引先のリスク管理(TPRM) | 情報セキュリティ(ISMS・Pマーク)の取得・運用 | 社内規程・ガバナンス文書の作成・管理 |
| 主な機能 | チェックシートの送付・回収・自動採点・履歴管理 委託先の一元管理・レーダーチャート可視化 | 認証取得をステップ化したガイド リスクアセスメント自動提案・内部監査・規程類の一元管理 | 設問式の規程作成・約200種の規程雛形 AI法改正レビュー・新旧対照表の自動作成・電子申請 |
| 料金 | 要問い合わせ (アカウント数×委託先数で個別見積り) | 要問い合わせ | 月額5万円(100人以下)/20万円(101〜500人) 501人以上は要問い合わせ |
| 無料で試せるか | 無料トライアルあり(期間非公開) | 要問い合わせ | 無料プランあり(Freeプラン) |
| 導入形態 | クラウド(SaaS) | クラウド(SaaS) | クラウド(SaaS) |
| こんな企業向け | 委託先アンケートを表計算で運用しており、委託先起因のリスクを一元管理したい企業 | 専任のセキュリティ担当者を置きにくく、ISMS・Pマークを社内で取得・運用したい企業 | 就業規則など社内規程の整備・改定・周知を効率化したい企業 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | オンライン相談を予約 | サービス詳細を見る |
GRCツールおすすめ26選を徹底比較|ESG開示基準・委託先管理の動向と失敗しない選び方を解説
近年、サプライチェーンを狙うサイバー攻撃やAI普及によるセキュリティリスクに加え、2027年3月期から順次見込まれるESG開示義務化など、企業を取り巻く法規制やリスクは複雑化しています。 既存のシステムや部分的なソリューションによる管理では…
まとめ
リスクマネジメントとは、事業に影響を与えうるリスクを洗い出して評価し、対応と見直しまでを継続的に回して損失を抑える取り組みです。リスクには戦略・財務・災害・業務などさまざまな種類があり、状況の確定からリスクアセスメント、対応、モニタリングへと進むプロセスに沿って備えていきます。
リスクヘッジや危機管理、BCPといった類語と混同しやすいものの、それぞれ担う範囲や場面が異なります。まずは責任者を決めて自社のリスクを洗い出すところから始め、洗い出し・評価・対応・見直しを続ける段階では、GRC・リスク管理ツールの活用も検討してみてください。各サービスの資料を取り寄せ、自社に合う仕組みを比較する材料としてご活用ください。
一括ダウンロードする
よくある質問(FAQ)
Q. リスクマネジメントとは何ですか?
A. リスクマネジメントとは、事業に影響を与えうるリスクをあらかじめ洗い出して評価し、対応策を講じて損失を抑える一連の取り組みです。国際的な指針であるJIS Q 31000:2019(ISO 31000:2018)では「リスクについて、組織を指揮統制するための調整された活動」と定義されています。問題が起きてから対処するのではなく、平常時から備えて損失を小さくとどめる点に特徴があります。
Q. リスクマネジメントの目的は何ですか?
A. リスクマネジメントの目的は、リスクが現実になったときの損失を小さくとどめ、事業を継続できる状態を保つことにあります。起こりうるリスクとその影響を事前に把握し、対策を用意しておくことで、被害を最小限に抑え、企業としての信頼や価値を守ります。
Q. リスクマネジメントとリスクヘッジ・危機管理の違いは何ですか?
A. リスクマネジメントがリスクの洗い出しから評価・対応・見直しまでを体系的に回す枠組み全体を指すのに対し、リスクヘッジはその中で使われる個別の回避・軽減手段、危機管理(クライシスマネジメント)は危機が実際に起きた後の事後対応を指します。リスクマネジメントは事前かつ全体の枠組み、リスクヘッジは個別の手立て、危機管理は事後の対処、と整理すると区別しやすくなります。
Q. 中小企業でもリスクマネジメントに取り組む必要はありますか?
A. 企業規模にかかわらず、リスクマネジメントは必要です。中小企業庁の2021年版中小企業白書では、自然災害への対応を進めている企業の割合が、大企業の約5割に対して中小企業は約3割にとどまると指摘されています。経営体力の小さい中小企業ほど、一度の損失が事業継続に直結しやすいといえます。まずは責任者を決め、自社で起こりうるリスクを洗い出すところから、規模に見合った範囲で始めるのが現実的です。
Q. リスクマネジメントにISO 31000の認証取得は必要ですか?
A. リスクマネジメントの指針であるISO 31000(JIS Q 31000)は、認証取得を目的とした規格ではありません。組織がリスクマネジメントを設計・運用するための考え方や枠組みを示すガイドラインであり、取り組みそのものに認証は必須ではありません。
一方で、情報セキュリティのISMS(ISO/IEC 27001)やプライバシーマークのように、特定領域には認証制度が用意されており、対外的に体制の整備を示したい場合に活用されます。
Q. リスクマネジメントはExcelなどの表計算だけで運用できますか?
A. 小規模なうちは表計算での管理も可能ですが、洗い出し・評価・対応・見直しを継続的に回す段階になると、表計算だけの運用には限界が出てきます。担当者の異動で経緯が引き継がれない、更新が滞る、社内規程や委託先の情報が分散して全体像が見えにくい、といった課題が生じやすいためです。
継続運用を支える手段として、リスク・コンプライアンス・ガバナンスを統合的に管理するGRC・リスク管理ツールの活用も検討するとよいでしょう。
GRC・リスク管理ツールの料金・機能を一括チェック
MCB FinTechカタログでは、リスクの洗い出しや評価、社内規程・委託先・情報セキュリティの管理を支えるGRC・リスク管理ツールの最新資料をまとめて取り寄せられます。機能や対応領域、料金を比較して、自社のリスクマネジメントの継続運用に合った仕組みを選ぶ判断材料にご活用ください。
一括ダウンロードする
MCB FinTechカタログに掲載しませんか?
MCB FinTechカタログでは、掲載企業様を募集しています。マネックスグループの金融実務ノウハウを活かした独自の評価軸と検索設計により、導入検討者が最適なサービスを効率的に発見できる法人向け比較プラットフォームです。掲載後は管理画面から料金表や導入事例を随時更新でき、常に最新の情報を訴求可能。まずは下記フォームより、お気軽にお問い合わせください。

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















