上場やIPO準備を進めるなかで「内部統制監査を受けることになる」と告げられ、そもそも何をされるのか、自社は何を準備すればよいのかがつかめず不安を感じている方は少なくありません。名前が似ている内部監査や会計監査との違いも、曖昧なまま実務が進みがちです。
本記事では、内部統制監査とは何か(誰が・何を・何のために行うのか)を結論から示し、内部監査・会計監査との違いや、対象企業と免除の条件を整理します。あわせて、監査の流れで被監査側が準備すること、監査報告書の意見区分や6つのアサーションまで、金融商品取引法や金融庁の基準を根拠に解説します。
あわせて、監査対応の負担が大きい内部統制の文書化やJ-SOX(内部統制報告制度)への対応を効率化するツールも後半で紹介します。全体像を押さえたうえで、自社の準備を具体的に進めたい方はぜひ参考にしてください。
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目次
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内部統制監査とは(誰が・何を・何のために)
内部統制監査とは、外部の公認会計士または監査法人が、経営者の作成した内部統制報告書を対象に、財務報告に係る内部統制の評価が適正に表示されているかを確かめる監査です。自社の内部統制そのものを直接採点するのではなく、「経営者が行った内部統制の評価」が正しいかどうかを第三者の立場で検証する点が核心です。

この監査を受ける根拠は、金融商品取引法にあります。上場企業などは、事業年度ごとに財務報告に係る内部統制を評価した「内部統制報告書」を有価証券報告書と併せて提出する義務があり(同法第24条の4の4)、その内部統制報告書には公認会計士または監査法人の監査証明を受けなければならないと定められています。
金融商品取引所に上場されている有価証券の発行会社その他の者で政令で定めるもの(略)が、第二十四条の四の四の規定に基づき提出する内部統制報告書には、その者と特別の利害関係のない公認会計士又は監査法人(略)の監査証明を受けなければならない。
出典:金融商品取引法(第193条の2第2項)|e-Gov法令検索
ここでいう内部統制は、金融庁・企業会計審議会の基準で「4つの目的の達成のために組織内の全ての者によって遂行されるプロセス」と定義されています。4つの目的とは、業務の有効性及び効率性、報告の信頼性、法令等の遵守、資産の保全です。
この内部統制は、統制環境・リスクの評価と対応・統制活動・情報と伝達・モニタリング・ITへの対応という6つの基本的要素で構成されます。内部統制監査は、このうち「財務報告の信頼性」に関わる内部統制の評価を対象にしています。
出典・参考資料(2件)
- 出典:金融商品取引法(第24条の4の4・第193条の2第2項)|e-Gov法令検索
- 出典:財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準(令和5年4月7日 意見書)|金融庁・企業会計審議会
内部統制監査・内部監査・会計監査・監査役監査の違い
ここからは、混同しやすい4つの監査を横並びで整理します。とくに「自分たちで行う内部監査」と「外部にやられる内部統制監査」、そして「財務諸表を対象にする会計監査」は、実施主体も対象も目的も異なります。
| 監査の種類 | 内部統制監査 | 内部監査 | 会計監査(財務諸表監査) | 監査役監査 |
|---|---|---|---|---|
| 実施主体 | 外部の公認会計士・監査法人 | 社内の内部監査部門 | 外部の公認会計士・監査法人 | 監査役・監査役会 |
| 対象 | 経営者が作成した内部統制報告書(財務報告に係る内部統制の評価) | 自社の業務プロセスや内部統制の運用状況 | 財務諸表(貸借対照表・損益計算書など) | 取締役の職務執行 |
| 主な目的 | 経営者の内部統制評価が適正かを第三者が検証する | 内部統制が有効に機能しているかを自ら点検・改善する | 財務諸表が適正に表示されているかを検証する | 取締役の業務執行の適法性・妥当性をチェックする |
| 法的な位置づけ | 金融商品取引法第193条の2第2項に基づく法定監査(上場企業など) | 法律で一律に課された監査ではない(会社法は大会社などに内部統制システムの整備方針の決定を求め、内部監査はその一部として社内に置かれる) | 金融商品取引法第193条の2第1項・会社法(会計監査人設置会社)に基づく法定監査 | 会社法に基づく(監査役設置会社) |
混同しやすいのが内部監査と内部統制監査ですが、内部監査は社内の担当者が行う自主的な点検活動で、内部統制の一部(モニタリング)を担うものです。一方の内部統制監査は、その内部統制について経営者が下した評価を、社外の監査人が客観的に検証する法定監査という違いがあります。
また、会社法が大会社などに義務づけているのは「内部統制システム(体制)の整備の基本方針を取締役会で決定すること」であって、内部監査という活動そのものを一律に強制する規定ではありません。内部監査を法定の義務と誤解しやすいため、根拠を正確に押さえておくことが大切です。
出典・参考資料(2件)
- 出典:金融商品取引法(第193条の2)|e-Gov法令検索
- 出典:会社法(第362条第4項第6号・第5項)|e-Gov法令検索
内部統制監査の対象企業と適用条件(義務・免除)
自社が対象になるのか、いつから受けるのか、免除はあるのか。ここでは対象範囲と、新規上場企業に用意された免除の条件を整理します。
内部統制報告書の提出義務は、金融商品取引所に上場している有価証券の発行会社など(政令で定めるもの)が対象です。上場企業は事業年度ごとに内部統制報告書を提出し、その報告書について監査証明(内部統制監査)を受けるのが原則になります。
ただし、新規上場企業には一定の免除が設けられています。金融商品取引法は、一定の規模に達しない上場会社が新規上場後3年を経過する日までに提出する内部統制報告書について、監査証明を要しないと定めています。ここで注意したいのは、免除されるのはあくまで監査(監査証明)だけで、内部統制報告書の提出自体は免除されない点です。
さらに、この免除の対象は「一定の規模に達しない会社」に限られます。財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令(内部統制府令)は、その規模基準を「資本金100億円以上、または負債合計1,000億円以上」と定めており、これに達する会社は免除の対象外です。
免除を受けられるのは資本金100億円未満かつ負債合計1,000億円未満で新規上場した会社に限られ、規模の大きい新規上場企業は初年度から内部統制監査を受けることになります。
整理すると、免除は「①資本金・負債が上記の規模基準に達しない会社が、②新規上場後3年以内に提出する内部統制報告書について、③監査(監査証明)だけを受けなくてよい」という限定的なものです。報告書の作成・提出は免除の間も必要になります。
出典・参考資料(2件)
- 出典:金融商品取引法(第24条の4の4・第193条の2第2項第4号)|e-Gov法令検索
- 出典:財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令(第10条の2)|e-Gov法令検索
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内部統制監査の実施の流れ(被監査側が準備すること)
内部統制監査は、事業年度を通じて経営者の評価と監査人の監査が並行して進みます。被監査側(自社)が何を準備・提出するのかという視点で、大きな流れを追っていきます。
- 評価範囲の決定:経営者が、財務報告への影響の重要性をもとに、評価対象とする事業拠点や業務プロセスの範囲を決めます。
- 内部統制の文書化:対象の業務プロセスについて、後述の3点セット(業務フロー・業務記述書・RCM)を整備します。
- 整備状況・運用状況の評価:経営者が、統制が適切に設計されているか(整備)、実際に機能しているか(運用)を評価します。
- 内部統制報告書の作成:評価の結果を内部統制報告書としてまとめます。
- 監査人による内部統制監査:外部の監査人が、経営者の評価範囲・評価手続・評価結果の妥当性を検証し、監査意見を表明します。
これらのステップは、事業年度の時系列では期首・期中・期末の3つの局面に分かれて進みます。

文書化の3点セット(業務フロー・業務記述書・RCM)
被監査側の準備で中心になるのが、業務プロセスに係る内部統制の文書化です。実務では次の3点セットを作成します。
- 業務フロー図:受注から入金までなどの業務の流れを図で示し、どこにリスクと統制があるかを可視化します。
- 業務記述書:業務の手順を文章で記述し、担当者や処理の内容を明確にします。
- RCM(リスク・コントロール・マトリックス):業務上のリスクと、それに対応する統制(コントロール)を一覧に整理し、対応関係を明らかにします。
これら3点セットは相互に整合している必要があり、業務プロセスの変更があるたびに更新が求められます。作成と維持の負担が大きい領域のため、後半で紹介するツールによる効率化が検討されます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準・実施基準(令和5年4月7日 意見書)|金融庁・企業会計審議会
6つのアサーション(監査要点)
監査人が内部統制を検証する際の着眼点が「監査要点(アサーション)」です。金融庁・企業会計審議会の基準では、次の6つが挙げられています。
監査人は、経営者が評価した個々の統制上の要点について、内部統制の基本的要素が適切に機能しているかを判断するため、実在性、網羅性、権利と義務の帰属、評価の妥当性、期間配分の適切性及び表示の妥当性等の監査要点に適合した監査証拠を入手しなければならない。
出典:財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準(令和5年4月7日 意見書)|金融庁・企業会計審議会
- 実在性:計上されている資産や取引が実際に存在するか
- 網羅性:計上すべき取引が漏れなく記録されているか
- 権利と義務の帰属:資産の権利や負債の義務が自社に帰属しているか
- 評価の妥当性:資産や負債が適切な価額で評価されているか
- 期間配分の適切性:取引が正しい会計期間に計上されているか
- 表示の妥当性:財務諸表への表示・開示が適切に行われているか
監査人は、これらの監査要点に照らして、経営者が主張する内部統制の有効性が事実に裏づけられているかを検証します。被監査側としては、監査要点に対応する記録・証憑を準備しておくと監査対応がスムーズになります。たとえば網羅性であれば取引が漏れなく記録される統制の証跡を、実在性であれば実際の取引を裏づける証憑を残しておく、といった対応です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準(監査基準 三 4(3))|金融庁・企業会計審議会
内部統制監査報告書とは(記載内容・監査意見・関係者の責任)
監査の結果は「内部統制監査報告書」としてまとめられ、監査人の意見や、意見の根拠、経営者・監査人それぞれの責任などが記載されます。ここでは、結果として何が示されるのかを見ていきます。
監査意見の4区分
監査人が表明する意見は、次の4つに区分されます。区分の名称は基準で定義されており、丸めずにそのまま押さえておくことが大切です。
- 無限定適正意見:内部統制報告書が基準に準拠し、内部統制の評価を全ての重要な点で適正に表示していると認められる場合の意見
- 限定付適正意見:評価範囲・評価手続・評価結果に不適切な点があるが、全体としては虚偽表示に当たるほどではない場合に、除外事項を付して表明する意見
- 不適正意見:不適切な点の影響が、内部統制報告書全体として虚偽表示に当たるほど重要と判断される場合の意見
- 意見不表明:重要な監査手続を実施できず、意見表明の基礎を得られなかった場合に、意見を表明しない旨とその理由を記載するもの
監査人は、経営者の作成した内部統制報告書が、一般に公正妥当と認められる内部統制の評価の基準に準拠し、財務報告に係る内部統制の評価について、全ての重要な点において適正に表示していると認められると判断したときは、その旨の意見(この場合の意見を「無限定適正意見」という。)を表明しなければならない。
出典:財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準(監査基準 四)|金融庁・企業会計審議会
経営者・監査役・監査人の責任
内部統制監査では、関係者それぞれの責任の区分が明確にされています。誰が何を担うのかを整理しておくと、自社の担当者としての立ち位置も見えてきます。
- 経営者:内部統制を整備・運用し、その有効性を自ら評価して内部統制報告書を作成する責任を負います。
- 監査役・監査役会:取締役の職務執行を監査する立場から、内部統制の整備・運用状況を監視します。
- 監査人(公認会計士・監査法人):経営者の評価が適正かを独立の立場で監査し、意見を表明する責任を負います。
出典・参考資料(1件)
- 出典:財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準(監査基準 四 内部統制監査報告書)|金融庁・企業会計審議会
開示すべき重要な不備が見つかった場合の対応と上場への影響
評価や監査の過程で不備が見つかったとき、どう扱われるのかは多くの担当者が気にする点です。ここでは「開示すべき重要な不備」の意味と、その後の対応を整理します。
「開示すべき重要な不備」とは、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高い財務報告に係る内部統制の不備をいう。
出典:財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準(用語の定義)|金融庁・企業会計審議会
軽微な不備であれば、期末までに是正できれば内部統制は有効と評価できる余地があります。一方、期末時点で開示すべき重要な不備が残っている場合は、その内容を内部統制報告書に記載し、公表することになります。
開示すべき重要な不備があるからといって、直ちに上場廃止になるわけではありません。ただし、内部統制が有効でない旨を公表することになるため、投資家の信頼に影響し得ます。不備は早期に発見し、期末までに是正を進めることが実務上の要点になります。
不備を指摘された場合、被監査側は不備の原因を分析して是正措置を立案し、統制の設計や運用を見直します。そのうえで、是正した統制が期末時点で有効に機能しているかを再度評価(テスト)し、監査人と評価結果を協議しながら進めるのが一般的な流れです。是正が期末に間に合えば内部統制は有効と評価できる可能性があるため、不備は早い段階で洗い出すことが重要になります。
出典・参考資料(1件)
- 出典:財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準(Ⅰ 用語の定義)|金融庁・企業会計審議会
内部統制監査の費用相場とスケジュール感
費用とスケジュールも、準備を進めるうえで気になるところです。ただし内部統制監査については、単独の費用相場を示す公式な集計は公開されていない点に注意が必要です。
実務上、内部統制監査は財務諸表監査(会計監査)と一体で監査法人と契約されるのが一般的で、監査報酬も両者を合わせた形で開示されます。そのため「内部統制監査だけでいくら」という金額を単独で切り出すのは難しく、目安として示す場合も監査報酬全体の規模感で捉えるのが現実的です。
金額の当たりをつける手がかりとして、日本公認会計士協会の監査実施状況調査(2023年度)が、金融商品取引法監査を受ける会社の売上規模別の平均監査報酬を公表しています。これは会計監査(財務諸表監査)と内部統制監査を合わせた監査報酬で、内部統制監査だけの額ではありませんが、規模感をつかむ参考になります。
- 売上高10億円未満:約897万円
- 売上高10億円以上50億円未満:約1,913万円
- 売上高50億円以上100億円未満:約2,092万円
- 売上高100億円以上500億円未満:約2,543万円
- 売上高500億円以上:約4,351万円
- 全体平均:約1,989万円
金融商品取引法監査(財務諸表監査+内部統制監査)の1社あたり平均監査報酬。消費税抜き、2023年度調査。内部統制監査単独の額ではありません。
内部統制監査は、この監査報酬に含まれる形で費用が発生します。IPO準備段階では、これに加えて文書化や内部統制構築の支援を外部のコンサルティング会社・監査法人に依頼する費用がかかることもあり、その分は別途見込んでおくのが安全です。
スケジュールは、事業年度を通じて進むのが基本です。期首に評価範囲を決め、期中に文書化と整備・運用の評価を行い、期末にかけて内部統制報告書の作成と監査人の監査が進みます。とくにIPO準備段階では、上場申請期の前々期・前期から文書化と運用実績の積み上げが必要になるため、早めに着手することが求められます。
出典・参考資料(1件)
- 出典:監査実施状況調査(2023年度)|日本公認会計士協会
2024年4月の実施基準改正で企業が対応すべきこと
内部統制の評価及び監査の基準・実施基準は改訂され、2024年(令和6年)4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。改訂の要点のうち、企業が実務で対応すべき中心は、実施の流れの最初のステップである「評価範囲の決定」のやり方の見直しです。
改訂基準及び改訂実施基準は、令和6(2024)年4月1日以後開始する事業年度における財務報告に係る内部統制の評価及び監査から適用する。
出典:内部統制の評価及び監査の基準並びに実施基準の改訂について(意見書)|金融庁・企業会計審議会
従来は、評価対象を選ぶ指標として「売上高等のおおむね3分の2」や「売上・売掛金・棚卸資産の3勘定」がよく使われてきました。改訂では、これらを機械的に当てはめるべきではないことが明確化され、財務報告への影響の重要性を踏まえて評価範囲を判断し直すことが求められています。
評価対象とする重要な事業拠点や業務プロセスを選定する指標について、例示されている「売上高等のおおむね3分の2」や「売上、売掛金及び棚卸資産の3勘定」を機械的に適用すべきでないことを記載した。
出典:内部統制の評価及び監査の基準並びに実施基準の改訂について(意見書)|金融庁・企業会計審議会
実務としては、これまで慣例で決めていた評価範囲を、自社の事業の実態やリスクに照らして見直すことが必要になります。範囲の決定根拠を説明できるよう、リスク評価の記録を整えておくことがポイントです。
出典・参考資料(1件)
内部統制監査の負担を減らす内部統制・J-SOX対応ツール
ここまで見てきたとおり、内部統制監査への対応では、文書化(3点セット)の作成・維持や整備・運用評価に相応の工数がかかります。加えて、職務分掌や取引の監査証跡といったシステム面の統制を業務システムの中で担保できれば、手作業での照合・突合の負担も減らせます。
ここでは、こうした負担に対してアプローチの異なる2つの代表的なツールを取り上げます。ひとつは文書化とJ-SOX評価そのものを効率化するタイプ、もうひとつはERP(統合基幹業務システム)に組み込まれ、職務分掌や監査証跡といったシステム統制を担うタイプです。それぞれの対応領域や料金を、次の比較表で確認できます。
| サービス名 | smoove J-SOX | Oracle NetSuite GRC |
|---|---|---|
| 提供会社 | 株式会社WARC | 日本オラクル株式会社 |
| 提供形態 | クラウド(SaaS) | クラウドERP付帯 |
| 主な対応領域 | J-SOX業務全般 (文書化〜整備・運用評価) | ERP一体の内部統制 (アクセス管理・監査証跡) |
| 3点セット文書化 | ● | × |
| 整備・運用状況の評価 | ●(ロールフォワード評価まで対応) | △(継続モニタリングで対応) |
| 職務分掌・監査証跡(システム統制) | × | ●(ERP一体で標準装備) |
| 無料トライアル | ● | ×(公式に記載なし) |
| 料金 | 要問い合わせ (規模・ユーザー数に応じた課金) | 要問い合わせ (NetSuiteライセンスに含む) |
| 対象規模 | IPO準備〜上場企業 | スタートアップ〜成長企業 |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式資料を見る |
smoove J-SOX(株式会社WARC)

smoove J-SOX は、J-SOX(内部統制報告制度)対応に必要な3点セットの作成から証憑データの管理、整備状況・運用状況の評価、ロールフォワード評価まで、年間を通じた内部統制業務をクラウド上で一元管理できる国産のSaaSです。公認会計士の監修のもとで設計されています。
業務フローの変更をRCMに自動で反映して採番などの重複作業を減らせるほか、証憑ファイルの添付・紐付けをシステム内で完結できます。生成AIによるリスクスキャンで業務記述からの見落としを検知する機能も備えます。無料トライアルが用意され、IPO準備企業から東証プライム上場企業まで幅広く対象としています。
Oracle NetSuite GRC(日本オラクル株式会社)

Oracle NetSuite GRC は、クラウドERP「NetSuite」に組み込まれたガバナンス・リスク・コンプライアンスの機能群です。独立した専用製品ではなく、NetSuiteのプラットフォームライセンスに標準で含まれる形で提供されます。財務データやユーザーアクセス、承認ワークフローが同一基盤にあるため、外部ツールとの連携設定なしで内部統制を組み込めるのが特徴です。
職務分掌や監査証跡、承認ワークフローといった内部統制の仕組みを業務システムの中で運用できるほか、上場準備に必要な内部統制機能を標準装備すると訴求しています。ERPを一体で導入し、内部統制対応まで含めて整えたい成長企業に向く選択肢です。
業務データと内部統制を同じ基盤で扱うことが、被監査側の照合作業にどう影響するのか。提供元の日本オラクルは、独自インタビューで次のように述べています。
統制のためのツールを別で持っていると、業務システム側のデータをエクスポートして、突き合わせて、チェックして、という作業がどうしても発生します。ここがかなり労働集約的で、ミスも起きやすいんです。NetSuiteの場合は、取引が発生したその瞬間のデータがそのまま統制の対象になります。ワークフローによる承認や、不正につながりかねない操作の検知も、業務の流れの中で自動的に回っていきます。あとから人手で照合する作業そのものを減らせるので、内部監査や経理の方の負担を大きく軽くできるという声をよくいただきます。
内部統制・J-SOX対応にとどまらず、リスク管理やコンプライアンスまで含めてガバナンス関連のツールを幅広く比較したい場合は、以下の記事で選び方や主要サービスを詳しく解説しています。導入を具体的に検討する際の参考にしてください。
まとめ
内部統制監査は、外部の公認会計士・監査法人が、経営者の作成した内部統制報告書を対象に、財務報告に係る内部統制の評価が適正かを検証する法定監査です。自分たちで行う内部監査や、財務諸表を対象とする会計監査とは実施主体も目的も異なります。
被監査側の準備は、評価範囲の決定と3点セットによる文書化、整備・運用評価が中心です。新規上場企業には規模に応じた監査の免除がある一方、内部統制報告書の提出自体は免除されない点や、2024年4月改正で評価範囲の決め方が見直された点も押さえておきましょう。文書化やJ-SOX評価の負担が大きい場合は、専用ツールの活用も検討してみてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 内部統制監査とは何ですか?
A. 内部統制監査とは、外部の公認会計士または監査法人が、経営者の作成した内部統制報告書を対象に、財務報告に係る内部統制の評価が適正に表示されているかを確かめる法定監査です。自社の内部統制そのものを直接採点するのではなく、経営者が行った評価の適正性を第三者の立場で検証する点が特徴で、金融商品取引法により上場企業などに義務づけられています。
出典・参考資料(1件)
- 出典:金融商品取引法(第193条の2第2項)|e-Gov法令検索
Q. 内部統制監査と内部監査は何が違うのですか?
A. 内部統制監査と内部監査の最大の違いは、内部統制監査が外部の監査人による法定監査であるのに対し、内部監査は社内の担当者が自ら行う自主的な点検活動である点です。内部監査は内部統制の一部(モニタリング)を担う社内の仕組みで、法律で一律に義務づけられたものではありません。一方の内部統制監査は、その内部統制について経営者が下した評価を、社外の監査人が客観的に検証する金融商品取引法上の監査です。
出典・参考資料(2件)
- 出典:金融商品取引法(第193条の2)|e-Gov法令検索
- 出典:会社法(第362条第4項第6号・第5項)|e-Gov法令検索
Q. 内部統制監査はどの企業が受ける義務がありますか?
A. 内部統制監査を受ける義務があるのは、金融商品取引所に上場している有価証券の発行会社など(政令で定めるもの)です。これらの企業は事業年度ごとに内部統制報告書を提出し、その報告書について公認会計士または監査法人の監査証明(内部統制監査)を受ける必要があります。非上場企業には、原則として内部統制報告書の提出・監査の義務はありません。
出典・参考資料(1件)
- 出典:金融商品取引法(第24条の4の4・第193条の2第2項)|e-Gov法令検索
Q. 新規上場した会社は内部統制監査が免除されると聞きましたが本当ですか?
A. 一定の規模に達しない新規上場会社は、上場後3年を経過する日までに提出する内部統制報告書について、監査証明(内部統制監査)が免除されます。ただし注意点が2つあります。免除されるのは監査だけで、内部統制報告書の提出自体は免除されません。また免除の対象は資本金100億円未満かつ負債合計1,000億円未満の会社に限られ、これを超える規模で新規上場した企業は初年度から内部統制監査を受けます。
出典・参考資料(2件)
- 出典:金融商品取引法(第193条の2第2項第4号)|e-Gov法令検索
- 出典:財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令(第10条の2)|e-Gov法令検索
Q. 内部統制監査で開示すべき重要な不備が見つかると上場廃止になりますか?
A. 開示すべき重要な不備が見つかっても、直ちに上場廃止になるわけではありません。この場合は内部統制が有効でない旨を内部統制報告書に記載して公表することになり、投資家の信頼に影響し得ますが、それ自体が上場廃止に直結する仕組みではありません。不備は早期に発見し、期末までに是正を進めることが実務上の要点になります。
出典・参考資料(1件)
- 出典:財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準(Ⅰ 用語の定義)|金融庁・企業会計審議会
Q. 内部統制監査で無限定適正意見を受ければ、自社の内部統制に問題はないと考えてよいですか?
A. 無限定適正意見は、経営者による内部統制の評価が適正に表示されていると認められたことを示すもので、内部統制そのものに一切問題がないことを保証するものではありません。あくまで「経営者の評価が正しい」という判断であり、無限定適正意見を得たあとも、内部統制の継続的な見直しと改善は引き続き必要です。
出典・参考資料(1件)
- 出典:財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準(監査基準 四)|金融庁・企業会計審議会
Q. 内部統制監査の費用はどのくらいかかりますか?
A. 内部統制監査は財務諸表監査(会計監査)と一体で監査法人と契約されるのが一般的で、内部統制監査だけを切り出した公式な費用相場は公表されていません。監査報酬は両者を合わせて開示されるため、費用は監査報酬全体の規模感で捉えるのが現実的です。
本文では、日本公認会計士協会の監査実施状況調査(2023年度)をもとに、売上規模別の平均監査報酬の目安を紹介しています(内部統制監査単独の数値ではない点に留意してください)。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:監査実施状況調査(2023年度)|日本公認会計士協会
Q. IPO準備企業は内部統制監査に向けていつから準備を始めるべきですか?
A. IPO準備企業は、上場申請期の前々期・前期の段階から、文書化と運用実績の積み上げに着手しておくことが求められます。内部統制の整備・運用は一定期間の実績が評価の対象になるため、直前に着手しても間に合いません。評価範囲の決定、3点セット(業務フロー・業務記述書・RCM)による文書化、整備・運用評価を計画的に進めることが重要です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















