生成AIの業務活用が広がるなかで、「AIガバナンス」という言葉を目にする機会が増えています。とはいえ、その言葉が何を指すのか、自社で何にどう取り組めばよいのかが分かりにくいと感じる担当者は少なくありません。
AIガバナンスは、AIの活用に伴う特有のリスクを管理し、責任あるAI活用を進めるための枠組みです。取り組みを欠いたまま利用を広げると、誤った情報の生成や機密情報の漏えい、偏りのある判断といった問題が、企業の信頼を損なう事態につながりかねません。
本記事では、AIガバナンスの意味と必要性、押さえておきたい原則と進め方を整理します。あわせて、日本のガイドライン・法規制(AI事業者ガイドライン、AI推進法)と、海外の主要な枠組みまで解説します。自社で何から始めるかを検討する材料としてご活用ください。
目次
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AIガバナンスとは?ITガバナンス・コンプライアンスとの違い
AIガバナンスとは、AIの開発・提供・利用に伴う特有のリスクを、AIのライフサイクル全体を通じて認識し、必要な対策を自主的に実行していくための枠組みを指します。ルールやツールを一度整えて終わりにするのではなく、開発から運用・見直しまでを継続的に管理する取り組みです。
従来のITガバナンスや情報セキュリティが、システムの安定稼働や情報の保護を主な対象にしてきたのに対し、AIガバナンスは、学習データの偏りによる差別的な判断や、誤った情報の生成、判断根拠の不透明さといった、AIならではの課題に焦点を当てます。
法令順守(コンプライアンス)は守るべき最低限のラインですが、AIガバナンスはそこにとどまらず、社会からの信頼を保ちながらAIの利便性を引き出すことを目指す点に特徴があります。

日本では、総務省と経済産業省が公表する「AI事業者ガイドライン」が、この枠組みの考え方を次のように示しています。
本ガイドラインは、AI の安全安心な活用が促進されるよう、我が国におけるAI ガバナンスの統一的な指針を示す。これにより、様々な事業活動においてAI を活用する者が、国際的な動向及びステークホルダーの懸念を踏まえた AI のリスクを正しく認識し、必要となる対策を AI のライフサイクル全体で自主的に実行できるように後押しし〔…〕イノベーションの促進とライフサイクルにわたるリスクの緩和を両立する枠組みを積極的に共創していくことを目指す。
出典:AI事業者ガイドライン(第1.2版)|総務省・経済産業省
こうした考え方を組織のマネジメントシステムとして体系化した国際規格が、2023年に発行されたISO/IEC 42001です。情報セキュリティのISO/IEC 27001と同じ「マネジメントシステム規格」の系統にあたり、AIの管理を継続的に回す仕組みとして位置づけられています。
出典・参考資料(2件)
AIガバナンスはなぜ必要か——AI固有のリスクとは
AIガバナンスが求められる背景には、AIを業務に組み込むことで生じる固有のリスクがあります。代表的なものは次のとおりです。
- 学習データの偏りに起因する、差別的・不公平な判断
- 事実と異なる情報を生成してしまうハルシネーション
- 入力した個人情報や機密情報の漏えい
- 生成物による著作権の侵害
- 判断の根拠を説明できない不透明さ
これらは抽象的な懸念にとどまりません。2025年に公布された「AI推進法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)」も、基本理念のなかで次のようにリスクを明記しています。
人工知能関連技術の研究開発及び活用は、不正な目的又は不適切な方法で行われた場合には、犯罪への利用、個人情報の漏えい、著作権の侵害その他の国民生活の平穏及び国民の権利利益が害される事態を助長するおそれがあることに鑑み、その適正な実施を図るため、人工知能関連技術の研究開発及び活用の過程の透明性の確保その他の必要な施策が講じられなければならない。
出典:人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(令和7年法律第53号)第3条第4項|e-Gov法令検索
管理されないAIが実際に問題を起こした例も報告されています。マイクロソフトが2016年に公開した対話型AI「Tay」は、一部の利用者による意図的な悪用を受けて差別的・不適切な発言を学習し、公開から24時間以内に停止・謝罪へと至りました。同社は公式ブログで、公開初日にTayの機能を悪用する動きが確認されたと説明しています。
また、海外の刑事司法で再犯リスクの予測に使われた「COMPAS」というツールでは、人種によって予測の偏りが生じているとの指摘が調査報道で示されました。開発元はベースとなる再犯率の違いによるものと反論しており、公平性の捉え方をめぐる論争が続いています。
それでも、AIによる判断が人の権利に関わる場面で、偏りと説明責任が問われうることを示す事例として、複数の報道や研究で取り上げられています。いずれも海外の事例ですが、AIを判断に用いる際に共通して起こりうる課題を示しています。
出典・参考資料(3件)
AIガバナンスの主な原則
AIガバナンスに取り組むうえで各社・各ガイドラインに共通して挙げられる原則があります。中心となるのは、人間中心・公平性・透明性・説明責任(アカウンタビリティ)の4つです。
- 人間中心:AIの判断に人が適切に関与し、最終的な責任を人が担う前提で活用する
- 公平性:学習データやアルゴリズムに起因する差別・不公平な扱いを防ぐ
- 透明性:AIをどこでどう使っているか、判断の根拠をたどれる状態にする
- 説明責任:AIの利用による影響について、組織として責任をもって説明できるようにする
これらは特定の企業が独自に定めた造語ではなく、国内外のガイドラインが共有する柱です。AI事業者ガイドラインも、原則の位置づけを次のように説明しています。
この「原則」は、「人間中心の AI 社会原則」を土台としつつ、OECD の AI 原則等の海外の諸原則を踏まえ、再構成したものである。
出典:AI事業者ガイドライン(第1.2版)|総務省・経済産業省
同ガイドラインでは、上記の4つに加えて、安全性・プライバシー保護・セキュリティ確保なども共通の指針として掲げられています。自社の原則を定める際は、これらを土台に、扱うデータや利用シーンに合わせて具体化していくとよいでしょう。
出典・参考資料(1件)
AIガバナンスの進め方——体制づくりと運用のステップ
ここからは、AIガバナンスを実際に始めるための体制づくりと運用の流れを解説します。一度きりの整備ではなく、リスクの変化や技術の進歩に合わせて見直しを続ける、継続的な仕組みとして設計するのが基本です。

AIガバナンス委員会と役割分担
取り組みの起点となるのが、責任の所在を明確にする体制づくりです。多くの企業では、経営層を含む部門横断の委員会や会議体を設け、AI活用の方針決定とリスク管理を統括します。情報システム部門だけでなく、法務・コンプライアンス、リスク管理、事業部門が関わることで、技術・法務・現業のそれぞれの視点からAIの利用を見られるようにします。
リスクベースの棚卸し・設計・継続的モニタリング
体制を整えたら、自社がどこでどのようにAIを使っているかを洗い出し、利用ごとにリスクの大きさを見極めることが出発点になります。すべてを一律に厳しく管理するのではなく、影響の大きい用途に重点を置く「リスクベース」の考え方が現実的です。
そのうえで、利用ルールや承認フローを設計し、運用を始めます。運用後は、想定どおりに機能しているかを継続的に確認し、問題があれば改善する流れを回していきます。
指標(KRI=重要リスク指標、KPI=重要業績評価指標)を決めて定点観測すると、変化に気づきやすくなります。AIや制度は速く変わるため、完璧な制度を先に作り込むより、小さく始めて改善を重ねる進め方が向いています。
AI利用規程に何を書くか迷う場合は、次のような項目から着手すると具体化しやすくなります。
- 機密情報・個人情報を許可なくAIに入力しないこと
- 生成物は事実確認と出典確認を経てから使うこと
- 業務で使ってよいAIツールの範囲
- AIに判断を委ねてよい業務と、人が必ず確認する業務の線引き
- 問題が起きたときの報告ルート
自社の利用実態に合わせて、優先度の高いものから明文化していきましょう。
企業の体制事例(大和証券グループ)
実際の体制づくりの参考として、金融業の事例を紹介します。大和証券グループは、AI活用に関するグループ全体のガバナンスを統括する委員会を設置し、指針を定めて運用しています。
2023年、大和証券グループは、AI活用に関するグループ全体のガバナンスを統括する機関として、「グループAIガバナンス委員会」を設置しました。同委員会は、デジタル戦略の最高責任者であるCIOを委員長とし、サステナビリティ、企画、コンプライアンス、人事、リスク管理(CRO)といった経営の中核機能を担う責任者で構成されています。
出典:AIガバナンス|大和証券グループ
同グループは、AIガバナンス指針として次の7項目を掲げています(2023年6月23日制定、2024年9月1日一部改訂)。
- AIによる社会・経済への貢献
- 人間中心のAIの提供
- AIの透明性と説明責任
- AIの適正利用と適正学習
- 法令遵守とプライバシー保護
- セキュリティとAI監視
- AIのガバナンス態勢とリテラシーの向上
前述の原則が、委員会の設置や指針の明文化という形で実務に落とし込まれている点が参考になります。
出典・参考資料(1件)
日本のガイドライン・法規制(AI事業者ガイドライン・AI推進法)
日本でAIガバナンスに取り組む際に押さえておきたいのが、政府のガイドラインと法律です。いずれも企業に直接の罰則を課すものではなく、自主的な取り組みを促す性格を持つ点が要点です。
まず、実務の指針となるのが総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」です。2026年3月に公表された第1.2版では、AIに関わる事業者を3つの立場に分けて、それぞれが取り組むべき事項を整理しています。
出典:AI事業者ガイドライン(第1.2版)|総務省・経済産業省
- AI 開発者(AI Developer) AI システムを開発する事業者(AI を研究開発する事業者を含む)
- AI 提供者(AI Provider) AI システムをアプリケーション、製品、既存のシステム、ビジネスプロセス等に組み込んだサービスとして AI 利用者(AI Business User)、場合によっては業務外利用者に提供する事業者
- AI 利用者(AI Business User) 事業活動において、AI システム又は AI サービスを利用する事業者
自社がどの立場にあたるかを確認すると、取り組むべき範囲が見えてきます。同ガイドラインは、同一の事業者が複数の立場を兼ねる場合があるとも示しており、たとえばAIを組み込んだサービスを提供しつつ社内でも利用する企業は、提供者と利用者の両方の観点で考える必要があります。
多くの企業は、まず既存のAIサービスを業務に使う「AI利用者」にあたります。利用者の立場でまず押さえたいのは、AIの適正な利用、入力する情報の管理、生成物の内容確認、そして人による最終判断です。前述した社内ルールに盛り込む項目は、この利用者としての取り組みを具体化したものにあたります。
法律としては、2025年6月4日に「AI推進法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律、令和7年法律第53号)」が公布・一部施行され、同年9月1日に全面施行されました。この法律は、AIに関する基本理念や国・事業者などの責務、国の推進体制を定める、いわゆる理念法です。
研究開発や活用を後押しすることを主眼とし、企業に対して具体的な行為義務や罰則を課す規定は設けられていません。ただし、事業者に国などの施策への協力を求める規定はあり、活用事業者については協力を義務づける表現が用いられています。
そのため、日本のガイドラインと法律は「守らなければ罰せられるルール」ではなく、「政府が示す統一的な指針と理念」として捉えるのが正確です。後述するEU AI法のように義務と罰則を伴う規制とは性格が異なる点に注意しましょう。
出典・参考資料(3件)
海外の主要な枠組みと日本企業への関係
AIガバナンスは国際的にも整備が進んでおり、日本のガイドラインもこれらを踏まえて作られています。代表的な4つの枠組みを、発行主体・策定年・日本企業への関係で整理します。
| 海外の主要なAIガバナンス枠組み | OECD AI原則 | NIST AI RMF | ISO/IEC 42001 | EU AI法 |
|---|---|---|---|---|
| 発行主体 | OECD(経済協力開発機構) | 米国国立標準技術研究所(NIST) | ISO・IEC(国際標準化機構ほか) | EU(欧州議会・理事会) |
| 策定年 | 2019年採択・2024年改定 | 2023年(1.0版) | 2023年 | 2024年成立・発効/2026年本格適用 |
| 位置づけ | 法的拘束力のない勧告(ソフトロー) | 任意適用のAIリスク管理フレームワーク | 認証可能なAIマネジメントシステムの国際規格 | リスクに応じた義務と罰則を伴う規制 |
| 日本企業への関係 | 日本も参加。AI事業者ガイドラインの原則の土台となっている | 法的拘束力はないが、リスク管理の実務で参照される | 任意の認証規格。ISMS等と同じ系統で既存の統制に接続しやすい | 域外適用あり。EU域内で使われるAIに関わる企業は要確認 |
※各枠組みの内容は改定される場合があります。最新の情報は各発行主体の公式情報をご確認ください。
このうちISO/IEC 42001は認証を取得できる国際規格で、情報セキュリティのISMS(ISO/IEC 27001)と同じマネジメントシステムの系統にあたります。このため、すでにISMSを運用している企業は、その仕組みを土台にAIガバナンスへ広げやすいという利点があります。
一方でEU AI法は、リスクの高さに応じて義務や罰則を定める規制で、日本の理念法とは性格が異なります。とくに注意したいのが域外適用です。EUは、EU域内で使われることを想定したAIの出力を提供する事業者には、EU域外の企業であっても規制が及びうるとしています。EU市場に関わる製品・サービスでAIを使う場合は、自社が対象になるかを確認しておくとよいでしょう。
出典・参考資料(4件)
中小・中堅企業は何から始めるか(スモールスタート)
ここまで見てきた体制づくりは、専任のチームを持たない中小・中堅企業には負担が大きく感じられるかもしれません。ただし、最初から大がかりな仕組みを整える必要はありません。影響の大きい用途から小さく始め、運用しながら広げていく進め方が現実的です。
具体的には、まず自社でのAI利用の範囲を絞って把握し、リスクの大きい使い方から利用ルール(社内規程)を整えていきます。次に、責任者を決めて運用を始め、問題がないかを定期的に確認する流れを回していきます。この一連の流れは、前述したリスクベースの棚卸しと継続的モニタリングを、小さな範囲で実践することにほかなりません。
既存のISMS・プライバシーマーク・内部統制(GRC)を活かして始める
AIガバナンスは、必ずしもゼロから作る必要はありません。すでにISMS(ISO/IEC 27001)やプライバシーマークを取得している企業や、内部統制・リスク管理(GRC)の仕組みを持つ企業は、その体制を土台にできます。リスクアセスメントや内部監査、規程の管理といった運用の型は、AIガバナンスでも共通して使えるためです。
前述のとおりAIマネジメントシステムの国際規格ISO/IEC 42001はISMSと同じ系統にあります。既存の統制の枠組みにAI特有の観点(学習データの管理、判断の透明性など)を足していく形で始めると、負担を抑えながら実効性のある取り組みにつなげやすくなります。
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AIガバナンスの体制づくり・運用を支えるツール
AIガバナンスの体制づくりと運用は、社内規程の整備やリスク管理、内部監査といった地道な実務の積み重ねです。まずは棚卸しとルール整備が土台ですが、その運用を効率化し、専任担当がいなくても内製で回しやすくする選択肢として、規程管理やマネジメントシステム運用のツールがあります。以下では、AIガバナンス専用ではないものの運用の下支えに使えるサービスを紹介します。
以下はご紹介するサービスの比較表です。
| AIガバナンス運用を支えるサービスの比較 | KiteRa Biz | SecureNavi |
|---|---|---|
| 支援する主な実務(役割) | 社内規程の作成・改定・管理・周知 (AI利用規程など社内ルールの整備) | ISMS・プライバシーマークの取得・運用 (マネジメントシステム運用の自動化基盤) |
| 主な機能 | 設問式の規程作成、約200種類の規程雛形、 AIによる法改正レビュー、新旧対照表の自動作成 | リスクアセスメント自動提案、内部監査サポート、 規程・証跡の版管理、従業員向けセキュリティ教育 |
| 料金 | Freeプランあり/100人以下は初期費用・月額とも5万円〜 (従業員規模別の定額制。2026年時点の掲載情報) | 要問い合わせ (2026年8月時点、公式サイトで非公開) |
| 詳細情報 | サービス詳細を見る | オンライン相談を予約 |
1. KiteRa Biz(株式会社KiteRa)

KiteRa Biz は、株式会社KiteRaが提供する社内規程管理のクラウドサービスです。就業規則をはじめとする社内規程・労使協定書の作成・改定・管理・従業員への周知までをクラウド上で一元管理できます。AIガバナンスの取り組みでは、定めた原則を社内のルールに落とし込み、法・ガイドラインの更新に合わせて改定し続ける必要があります。この規程整備という実務を支える点で、体制づくりの土台になります。
設問に回答するだけで規程を作成できる機能や、約200種類の規程雛形を備え、AI利用規程などの整備をゼロから始める負担を軽減します。新設・改正された法令が規程に反映されているかをAIがチェックする機能や、改定時にワンクリックで新旧対照表を作成する機能もあり、ガイドラインや制度の更新に規程を追随させやすい設計です。
運営元は情報セキュリティのISO/IEC 27001認証を取得しています。料金は、Freeプランのほか、従業員規模に応じた定額制で、100人以下は初期費用・月額とも50,000円から利用できます(2026年時点。料金は変動する場合があるため、最新は公式情報でご確認ください)。
2. SecureNavi(SecureNavi株式会社)

SecureNavi は、SecureNavi株式会社が提供する、ISMS(ISO/IEC 27001)やプライバシーマークの取得・運用をクラウド上で自動化・一元管理するツールです。ExcelやWordで分散しがちな規程類・情報資産台帳・リスクアセスメント・内部監査記録などをまとめて管理でき、取得だけでなく更新審査や内部監査といった運用フェーズにも対応します。
AIガバナンスそのものに特化した製品ではありませんが、リスクアセスメント・内部監査・規程や証跡の管理・従業員教育といったマネジメントシステムの運用を自動化する基盤として、AIガバナンス体制の継続的な運用にも応用できる選択肢です。前述のとおりAIマネジメントシステムはISMSと同じ系統にあるため、既存の情報セキュリティの運用にAIの観点を重ねていきたい企業に向きます。
コンプライアンス担当を専任で置きにくい中小企業でも、コンサルティングに頼らず内製で運用できる設計を掲げています。料金は要問い合わせです(2026年8月時点、公式サイトでは金額を非公開)。
ここで紹介した2つは、規程管理やマネジメントシステム運用といった個別の実務を支えるサービスです。内部統制・リスク管理・コンプライアンスを一元的に管理するGRCツールまで視野を広げて比較したい場合は、以下の記事で選び方や機能、料金を詳しく整理しています。体制づくりの土台となる仕組みを幅広く検討したい方はあわせてご覧ください。
まとめ
AIガバナンスは、AIの活用に伴う特有のリスクを、ライフサイクル全体で管理し、責任あるAI活用を続けるための枠組みです。バイアスや誤情報、情報漏えいといったリスクに備え、人間中心・公平性・透明性・説明責任といった原則を土台に、体制づくりとリスクベースの運用を継続的に回していくことが求められます。
日本では、AI事業者ガイドラインとAI推進法が自主的な取り組みを促す指針・理念として整備され、海外ではEU AI法のように義務を伴う規制も進んでいます。まずは自社のAI利用を把握し、既存の内部統制やISMSを活かしながら小さく始めることが、無理のない第一歩になります。規程整備や運用を支えるツールも活用しながら、自社に合った体制を築いていきましょう。
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よくある質問(FAQ)
Q. AI推進法を守らないと罰則はありますか?
A. AI推進法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)に、企業への罰則や具体的な行為義務を定めた規定はありません。この法律は2025年6月4日に公布・一部施行され、同年9月1日に全面施行された、AIに関する基本理念や国・事業者の責務、国の推進体制を定める理念法です。研究開発や活用を後押しすることを主眼としており、違反に対する罰金や刑事罰は設けられていません。
ただし、AIを活用する事業者には国などの施策に協力するよう求める規定があり、国が示すAIとの向き合い方の方針として押さえておく意味があります。
出典・参考資料(2件)
Q. AI事業者ガイドラインは、企業に守る義務がありますか?
A. AI事業者ガイドラインは法的な強制力を持つルールではなく、企業が自主的に取り組むための指針(ソフトロー)です。総務省・経済産業省が公表する、日本におけるAIガバナンスの統一的な考え方を示した文書で、従わなくても罰則が科されるものではありません。もっとも、AIに関わる開発者・提供者・利用者が何に取り組むべきかを整理した政府の公式な指針であり、社内ルールづくりの土台として参照する価値があります。
出典・参考資料(1件)
Q. AIガバナンスとISMS(ISO/IEC 27001)やプライバシーマークは何が違いますか?
A. ISMSやプライバシーマークが情報の保護(機密性・完全性や個人情報の適正な取り扱い)を対象とするのに対し、AIガバナンスはバイアスや誤情報(ハルシネーション)、判断の不透明さといったAI固有のリスクを対象とします。守る対象が異なる別々の枠組みですが、リスクアセスメントや規程管理、内部監査といった運用の型は共通します。
すでにISMSやプライバシーマークを運用している企業は、その仕組みにAI特有の観点(学習データの管理、判断の透明性など)を足す形でAIガバナンスを始められます。
Q. AIガバナンスは中小企業も取り組む必要がありますか?
A. AIを業務に使う企業であれば、規模を問わずAIガバナンスに取り組む意味があります。情報漏えいや誤情報、著作権の侵害といったAI固有のリスクは、企業の大小にかかわらず生じるためです。
変わるのは体制の重さです。大企業が部門横断の委員会を設けるのに対し、中小企業では責任者を1人決めて既存の内部統制に相乗りするなど、規模に見合った形で構いません。専任担当を置けなくても、担当を明確にして運用を続けられる形にすることが要点です。
Q. AIガバナンスは何から始めればよいですか?
A. 最初の一歩は、自社が「どの業務で・どんなAIを・誰が」使っているかという利用実態の棚卸しです。使い方を把握したうえで、リスクの大きい用途から利用ルール(社内規程)を整え、責任者を決めて運用と定期的な見直しを回していきます。完璧な制度を先に作り込むより、影響の大きい範囲から小さく始めて改善を重ねる方が、変化の速いAIには向いています。
Q. 日本国内だけで事業を行う企業でも、EU AI法の対象になりますか?
A. EU域内で使われることを想定したAIの出力を提供する場合は、日本国内の企業でもEU AI法の対象になりうる点に注意が必要です(域外適用)。EU AI法は、リスクの高さに応じて義務と罰則を定める規制で、罰則のない日本の理念法とは性格が異なります。
EU市場向けの製品・サービスでAIを使っている、あるいはEUの利用者に提供している場合は、自社が対象になるかを確認しておくと安心です。国内利用に限られる場合は、まず日本のガイドラインに沿った自主的な体制づくりを優先すれば十分です。
出典・参考資料(1件)
Q. AIガバナンスに取り組むと、生成AIの活用にブレーキがかかりませんか?
A. AIガバナンスは活用を止めるための仕組みではなく、リスクを抑えながら安心してAIの利便性を引き出すための枠組みです。政府のAI事業者ガイドラインも、イノベーションの促進とリスクの緩和を両立させることを目的に掲げています。
むしろ、ルールがあいまいなまま利用を広げる方が、情報漏えいや信頼失墜といったトラブルで活用そのものが止まるリスクは高くなります。適切なガバナンスは、全社的なAI活用を後押しする土台になります。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。


















