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ERPで生産管理はどこまでできる?生産管理システムとの違いと選び方

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基幹システムの刷新を検討する製造業の現場では、「ERPを入れれば生産管理まで一気通貫でつながる」というベンダー提案と、「うちの工程は特殊だから専用の生産管理システムが必要」という現場の声が並び立ちがちです。両者は前提が異なるため、どちらが正しいかは会話だけでは決着しません。

判断のためにまず確かめておきたいのは、ERPの生産管理モジュールに含まれる機能の中身です。所要量計算(MRP)や部品表(BOM)管理、生産計画、工程進捗、実績収集、原価計算、ロットトレースといった機能が自社の生産形態にどこまでフィットするかを見ておきます。そのうえで初めて「ERPで足りるか」「専用の生産管理システムを併用するか」を条件で切り分けられます。

本記事は、ERPの生産管理モジュールの機能を機能名レベルで押さえ、専用の生産管理システムとの違いを条件で切り分けられる状態を目指します。業種・生産形態別のマッピング、選定時の観点、導入でつまずきやすい点、費用感、代表製品までを順に解説します。

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ERPの生産管理モジュールでできること — 機能名レベルで見る

ERP(統合基幹業務システム)の生産管理モジュールは、会計・販売・購買・在庫といったバックオフィス機能と一つのデータ基盤でつながり、製造プロセスの計画から実績・原価までを扱います。ここでは、ERPの生産管理で扱われる代表的な機能を、それぞれ何をするものかとあわせて一覧化します。呼称・粒度はベンダーごとに違うため、詳細な実装差は個別ERPの公式資料で確認する前提です。

機能名は、日本産業規格 JIS Z 8141:2022「生産管理用語」(日本規格協会)で定義される用語を使っています。同規格は鉱工業における生産管理の用語を体系化した唯一の公的規格で、MRPやBOMといった用語もここで定義されています。

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機能詳細
生産計画・スケジューリング需要予測・受注情報から製品の生産数量と時期を計画します。基準生産計画(MPS)や、機械・工程能力を考慮した詳細スケジューリング(APS)まで対応する製品もあります。
所要量計算(MRP)計画された生産量と部品構成表(BOM)を突き合わせ、必要な原材料・部品の数量と手配時期を自動計算します。安全在庫・調達リードタイムを踏まえた発注提案まで生成する製品が中心です。
部品表(BOM)管理製品を構成する部品・材料の親子関係と員数を管理します。設計部門と共有するE-BOMと、製造で使うM-BOMを連動させる仕組みや、多階層BOM・製番別BOMに対応する製品もあります。
工程管理・進捗管理生産オーダーを工程ごとに分解し、着手・完了・待機状態を管理します。ガントチャートで負荷や遅延を可視化する製品もあります。
実績収集現場での作業実績(数量・時間・不良)を収集し、計画との差異を集約します。ハンディターミナル・タブレット・IoT機器からの入力連携に対応する製品もあります。
原価計算標準原価・実際原価・製番別原価などの区分で製造原価を集計します。会計モジュールと同一基盤で動くため、月次締めと同時に原価が確定します。
ロットトレース原材料ロットと完成品の対応関係を記録し、出荷後の不具合発生時に影響範囲を追跡します。食品・医薬品・自動車部品などトレーサビリティ要件の強い業種で用います。
販売・購買・在庫連携受注・発注・在庫増減が生産計画・所要量計算に自動で反映されます。ERPの中で完結するため、専用の生産管理システムのように会計・販売との連携設計を追加で行う必要がありません。
備考上記機能の実装粒度・呼称はベンダー・製品により差があります。個別ERPの対応範囲は各社公式資料で確認してください。

ここで押さえたいのは、ERPの生産管理は「専門的な生産管理システムより機能が浅い」と一律で語れる領域ではないという点です。個別受注・繰返量産・プロセス生産のいずれをカバーする製品もあれば、汎用性を優先して現場管理の細部は薄めに設計された製品もあります。次章の対比表では、この機能の粒度と会計・販売との連携範囲を、生産管理システム側と並べて確認します。

ERPと生産管理システムの違いを対比表で理解する

ここからは、ERPと生産管理システムの違いを、目的・管理対象・機能の粒度・連携範囲・カスタマイズ性・費用規模の観点で対比します。「ERPは統合的、生産管理システムは専門的」という一般論では自社の判断材料にならないため、それぞれの弱点も並列で見ていきます。

ERPとは(目的と機能)

ERPは、会計・販売・購買・在庫・人事給与・生産管理といった基幹業務を単一のデータベースで統合し、部門横断で経営情報を可視化するためのソフトウェアです。1990年代に欧米で普及し、日本でも主要ベンダーがパッケージを提供しています。1つのマスタで顧客・品目・取引を持ち、部門をまたぐ二重入力を排除できることが最大の特徴です。

製造業向けにも、Oracle NetSuite・SAP S/4HANA・Infor CloudSuite Industrial Enterprise・OBIC7・GRANDIT・PROACTIVE といった製品が生産管理モジュールを含めて提供されており、MRPやBOM、生産計画、原価管理までを扱えます。

一方で、細かな工程管理・実績収集・現場端末との連携などは、専用の生産管理システムやMES(製造実行システム)と組み合わせるケースもあります。

生産管理システムとは(目的と機能)

生産管理システムは、製造現場の計画・実行・実績・原価を扱う専門パッケージです。個別受注型・繰返量産型・プロセス型といった生産形態ごとの業界慣行に踏み込んだ機能設計になっており、多階層BOM・製番管理・工程別実績収集・ガントチャートによる詳細スケジューリングなどを、ERPの汎用モジュールより深い粒度で提供します。

代表例には、機械装置・個別受注向けの TECHS-S NOA、多品種少量・繰返量産向けの mcframe 7 SCM(SCM=サプライチェーン管理)、生産スケジューラ(APS)、量産型の生産管理パッケージなどがあります。ERPと比べると現場密着の機能が厚い反面、会計・販売・購買との連携は自社側で設計する必要があり、二重入力や整合性の管理が別途課題になります。

生産管理システムと近い領域を担うシステムとして MES がありますが、MES はより現場寄り(機械制御・作業指示・実績収集)に特化する位置づけで、生産管理システムとは扱う工程の粒度が異なります。本文の対比では便宜上まとめて「専用の生産管理システム」として扱い、階層差の詳細は FAQ で解説します。

目的・機能・連携範囲・カスタマイズ性・費用規模の対比表

両者の違いを、実際の選定で確認する観点で対比表にまとめます。同じ「生産計画」「BOM管理」でも、扱える粒度と、会計・販売との連携をどう実現するかで運用の負荷が大きく変わります。

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観点ERP(生産管理モジュール搭載)専用の生産管理システム
導入目的会計・販売・購買・在庫・生産までを一つのデータ基盤で扱い、経営情報を横断で可視化する個別受注型・繰返量産型・プロセス型など特定の生産形態に踏み込んだ現場管理を実現する
管理対象全社の資金・モノ・情報の流れ(生産管理は基幹業務の一部)製造現場の計画・工程・実績・原価(生産に閉じたスコープ)
生産管理機能の粒度MRP・BOM・生産計画・工程管理・原価計算の主要機能を搭載。深さは製品差が大きい業種特化型で機能が深い。多階層BOM・製番管理・詳細スケジューリング・現場実績収集などが充実
会計・販売・購買との連携同一データベースで自動連携(連携設計が原則不要)他システムとの連携は自社で設計。API・CSV・データ連携の設計と保守が必要
カスタマイズのしやすさパッケージ標準の業務プロセスに合わせるFit&Gapが基本。アドオン開発は可能だが後日の保守負担につながりやすい業種テンプレートが充実しており、自社工程に合わせやすい。専業ベンダーが業界慣行を把握している
提供形態クラウド(SaaS)/オンプレミス/ハイブリッドが選べる製品が多いクラウド・オンプレともに存在。中小向けは月額数万円〜のクラウド型も
費用規模の目安一般的に語られる目安として、中堅企業向けクラウドで年間数百万円〜、大企業向けオンプレで初期数千万円〜数億円規模になることも(掲載製品の公表価格ベンチマークは§費用感で確認)一般的に語られる目安として、中小向けクラウドは月額数万円〜、中堅企業向けオンプレは数百万円〜数千万円規模(掲載製品の公表価格ベンチマークは§費用感で確認)
向いている企業会計・販売・生産まで一気通貫で扱いたい企業、複数拠点・グローバル展開で経営情報を統一したい企業生産管理業務を深く扱いたい企業、会計・販売はすでに別システムで稼働している企業、生産形態が特殊な業種

対比表の「費用規模の目安」は、ERPの機能スコープ・利用ユーザー数・カスタマイズの深さで大きく変動します。実額のレンジは公的統計に一貫した数字がないため、候補製品ごとに公式資料を取り寄せて確認するのが確実です。

ERPで足りるケース/専用の生産管理システムを併用すべきケース — 業種・生産形態別マッピング

ERPと生産管理システムのどちらを選ぶかは、自社の生産形態・既存システム・現場管理の必要粒度で切り分けられます。ここでは、代表的な生産形態別に「ERPで足りるケース」「生産管理システムを併用すべきケース」「既存の生産管理システムを残してERPを入れる連携パターン」を整理します。

生産形態×システム構成のマッピング表

生産形態別に、業種の代表例と、推奨されるシステム構成の目安を整理します。実際には同じ業種でも工場ごとに条件が異なるため、あくまで検討の起点として活用してください。

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生産形態業種の代表例推奨システム構成の目安
個別受注生産(一品モノ)産業機械・工作機械・特注装置・金型・造船・大型プラント製番管理・個別原価計算が必須。専用の生産管理システム主体、ERPは会計・販売として並列連携
多品種少量生産電子部品・機械加工・化学関連の一部・特殊材料BOM管理・工程管理の粒度が肝。生産形態対応の広いERP、または専用生産管理システムとERPの併用
繰返量産生産自動車部品・電気電子部品・食品の一部MRP・スケジューリングを重視。ERPの生産管理モジュールで足りるケースが多い
プロセス生産(配合型)化学・食品・医薬品・化粧品・飼料・塗料配合管理・ロットトレース・GMP(医薬品・食品の適正製造規範)対応が必須。業種テンプレートを持つERPまたは配合型専門システム

ERPで足りるケース(要件例)

次の条件が重なる企業では、ERPの生産管理モジュールで運用が成立するケースが多く見られます。会計・販売との統合効果を優先しやすい状況です。

  • 生産形態が繰返量産・組立型が中心で、標準品の割合が高い
  • 会計・販売・購買・在庫がまだ個別システムかExcelで、これから一気通貫の基盤を作りたい
  • 現場実績の収集は月次締めに間に合えばよく、リアルタイム性の要求が強くない
  • 複数拠点・グループ会社で経営情報を統一したい
  • ERP側で用意されている業種テンプレートが自社の業種に合致する

専用の生産管理システムを併用すべきケース(要件例)

一方で、次のような条件が優勢な企業では、専用の生産管理システムをERPと併用する構成が現実的です。ERPは会計・販売の統合基盤として使い、生産管理は業種特化型のパッケージで賄う分業設計となります。

  • 個別受注生産で製番管理・個別原価計算が必須
  • 多階層BOM(設計変更が頻繁)や複雑なガントチャート運用が現場で回っている
  • プロセス製造で配合管理・GMP対応・ロットトレースの規制要件を満たす必要がある
  • 現場実績を秒〜分単位で収集し、リアルタイムでラインの負荷を可視化したい
  • ERPの標準機能で対応するとアドオンが膨らむと判断される

既存の生産管理システムを残しつつERPを入れる連携パターン

すでに現場で運用が定着している生産管理システムがある場合、その置き換えを前提にせず、ERPと連携する構成もよく選ばれます。ERPは会計・販売・購買・在庫の統合基盤として導入し、生産管理システム側からERPに実績・原価・在庫増減を渡す設計です。

連携方式は、API・CSVファイル連携・データベース連携のいずれかが中心で、選定時には両システムが対応する方式と、リアルタイム性・データの粒度・保守負担を確認します。ERP側にAPI連携用のインターフェースが標準で用意されているか、既存生産管理システムのカスタマイズ余地がどこまであるかで、実装コストが変わります。

生産管理に強いERPの選び方

「ERPで生産管理を扱う」と判断が固まった場合、候補製品を絞り込む観点を整理しておきます。ここでは6つの観点を、それぞれ実際に確認すべき問いとあわせて解説します。

1. 自社の業種・生産形態にテンプレートが用意されているか

ERPの多くは、業種・生産形態別の標準テンプレート(業務プロセスと初期マスタ)を持ちます。テンプレートが自社の業態に近いほど、Fit&Gapの工数を抑えられます。逆に、想定業種と自社の業態がずれると、標準機能の外側でカスタマイズが積み重なり、後述するアドオン膨張の温床になります。

まず、自社の業種(食品配合型・自動車部品組立型・個別受注機械など)向けの業種テンプレートが標準で提供されているかを確認します。あわせて、そのテンプレートで動く導入事例が同業種で公開されているかも見ておきます。テンプレートが用意されていない場合、そのERPは自社に合わない可能性が高くなります。

2. 既存の会計・販売・購買との連携方式は自社の環境に合うか

ERPを全面刷新するのか、生産管理・在庫だけをERPに入れて既存の会計・販売を残すのかで、要求される連携方式が変わります。全面刷新なら同一データベース内の自動連携で完結しますが、部分導入では既存会計側との仕訳連携・マスタ整合の設計が発生します。

見るのは、既存の会計・販売システムに対する連携実績の有無、連携方式(API・CSV・ネイティブ連携)の自動化度合い、マスタ管理の正本をどちらに置くかの3点です。連携部分の設計・保守が想定以上に重くなると、統合基盤としての価値が薄れます。

3. カスタマイズ性とFit&Gapの粒度はどこまで許容できるか

ERPはパッケージ標準の業務プロセスに自社を寄せる(Fit)のか、自社の業務に合わせて機能を追加する(Gap=アドオン)のかを、要件定義の段階で線引きします。アドオンは短期的には現場を助けますが、バージョンアップのたびに再検証・再テストが発生し、保守コストが積み上がります。

標準機能でカバーできる範囲をRFP(提案依頼書)の段階で機能単位まで書き出せているか、アドオンを認める判断基準(例:法定要件は必須、業務都合は却下)を社内で先に合意できているか、そしてバージョンアップ時のアドオン改修の見積り方法が事前に共有されているかを見ます。ここを詰めずに導入に入ると、後段のつまずき点として顕在化します。

4. 提供形態(クラウド/オンプレミス/ハイブリッド)は自社の環境に合うか

クラウド型ERPはインフラ・OS・ミドルウェアの保守をベンダー側が担うため、情シスの運用負担を抑えられますが、コードレベルの改修を伴う大規模なカスタマイズには制約があります。一方、オンプレミス型は柔軟なカスタマイズができる反面、インフラ運用と定期的なバージョンアップ対応が自社側の責任になります。

基幹業務のうち生産管理・在庫が現場密着で頻繁なカスタマイズを要するか、セキュリティポリシー上で外部データセンター利用が許容されるか、災害対策・回線冗長化まで含めた運用体制を自社とベンダーのどちらが持てるかが分岐点になります。会計はクラウド、生産管理はオンプレといったハイブリッド構成を選ぶ企業も増えています。

5. サポート体制と導入実績は自社の規模・業種に十分か

ERPの導入は数か月から1年以上を要するプロジェクトで、ベンダーの導入コンサル・保守体制が結果を左右します。同じ製品でも、担当する導入パートナーによって進捗管理・要件定義の質は変わります。

まず、自社と同規模・同業種の導入事例が公式サイトや事例集に掲載されているかを見ます。次に、導入パートナーの担当プロジェクトマネージャーの経験・実績を確認できるか、稼働後の保守を同一チームが担うのか別チームに引き継がれるのかまで踏み込んで確認します。導入後の運用が長く続くため、稼働後の窓口の一貫性が特に重要です。

6. セキュリティ要件と法令対応は自社基準を満たすか

ERPには会計・人事・取引データといった機密性の高い情報が集約されます。自社の情報セキュリティポリシー、顧客との契約要件、そして業界別の規制を満たせるかを確認します。業界別の規制には、食品のHACCP(食品衛生管理手法)、医薬品のGMP、自動車のIATF(自動車業界の品質規格)などがあります。

ISO/IEC 27001・SOC2などの第三者認証の取得状況、アクセス権限・ログ監査・データ暗号化の標準搭載範囲、業種特有の規制(配合履歴・ロットトレース・監査証跡)に対応した機能の有無を突き合わせて評価します。稟議・監査の段階で不足が発覚すると、導入計画そのものの見直しが必要になります。

専用の生産管理システムを主軸にする場合の見方

ERPではなく専用の生産管理システムを主軸に据える構成を選ぶ場合、上記6観点をそのまま当てはめる前に、専用パッケージ側特有の見方も並べて検討してください。以下の4項目は、業種特化型パッケージが「深さ」で選ばれるときの判断軸です。

  • 業種特化テンプレートの深さ:個別受注・繰返量産・プロセス配合など、自社の生産形態に踏み込んだ業種テンプレートを持つか。同業種の稼働事例で機能の使い方が語られているか。
  • 現場実績の取り込み精度:ハンディターミナル・タブレット・IoT機器・PLC からの実績取込の粒度(秒/分/時間)と、現場作業導線への組み込みやすさ。
  • 会計/販売との連携の作り込み:既存の会計・販売システムに対する連携実績と、連携方式(API・CSV・ネイティブ連携)の自動化度合い。マスタの正本をどちら側に持つかの設計余地。
  • 専業ベンダーの業界理解と伴走:業界慣行に踏み込んだ要件定義ができるか。稼働後の運用支援・バージョンアップ対応の体制。

ERPで生産管理を導入するときにつまずきやすい点と回避策

ERPで生産管理まで扱う導入プロジェクトは、成功事例だけでなく、実務で頻繁に発生するつまずき点も把握しておくと計画の精度が上がります。ここでは代表的な4つの落とし穴と、それぞれの回避策を解説します。

まず前提として、システム開発プロジェクト全体の傾向を公的調査で押さえておきます。日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の調査によれば、プロジェクトの規模が大きくなるほど工期・予算の遅延・超過率が上がる傾向が続いており、その根本要因として業務・システムの複雑さと計画時の考慮不足が上位に挙がります。

10 年間(14〜23 年度)の推移ではすべてのプロジェクト規模で「予定どおり完了」の割合が低下傾向にある。また、「予定より遅延」と回答した割合は、プロジェクト規模が大きくなるほど上がっており、500 人月以上のプロジェクトでは半数以上が「予定より遅延」となっている。

業務・システムの複雑さという根本原因が解決しない限り、工期、予算、品質共に大幅な改善は難しいと推察される。

出典:企業IT動向調査報告書 2024(2023年度調査)§8.1|日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)

ERPを含む基幹刷新プロジェクトも大規模帯に入ることが多く、この統計傾向の対象範囲に含まれます。以下、実務で起きやすい4つのつまずき点を見ていきます。

自社工程に標準機能が合わずアドオンが膨らむ

ERPは業種テンプレートを持つ製品でも、自社独自の工程・帳票・承認フローに合わせようとするとアドオン開発が積み上がります。個々の要望は小さくても、積算すると開発費が数千万円規模に達し、後段のバージョンアップでも都度改修が発生する状態になります。

回避策:Fit&Gapの粒度をRFPの段階で決めておくことが有効です。標準機能でカバーする範囲・アドオンを認める判断基準(法定要件は必須、業務都合は原則却下など)を社内で先に合意し、要件定義の場でこの基準に照らして判断します。ベンダー任せにせず、業務側の意思決定者が同席するプロセスを設計に含めるのが実務のポイントです。

現場が実績を入力してくれない

生産管理の価値は、現場からの実績データが継続的に入って初めて成立します。しかし、入力端末・入力タイミング・作業手順の設計が現場感覚とずれると、入力が滞り、計画と実績が乖離した状態が固定化します。結果として、原価計算や工程進捗の可視化も機能しません。

回避策:実績収集の端末(ハンディターミナル・タブレット・IoT機器)と入力タイミング(工程完了時/シフト終了時/自動収集)を、現場の作業導線に合わせて設計します。設計段階で現場のリーダーに参加してもらい、日常の作業のどこに入力を組み込むかを一緒に決めておくと、稼働後の定着率が変わります。

BOMマスタ整備の負担が想定を超える

ERPの生産管理を機能させるには、部品構成表(BOM)と品目マスタが正確に整備されていることが前提です。既存のExcel・図面・部品リストからBOMを起こす作業は、想像より工数がかかります。多品種少量の企業では、対象品目が数千〜数万件になり、稼働までにマスタが揃わずスケジュール遅延の主要因になります。

回避策:BOMマスタ整備は段階分けが有効です。売上構成上の主要品目から優先的に整備し、稼働後に段階的に対象品目を広げる部分稼働のアプローチを取ります。全品目を揃えてから稼働、という計画は現実的でないことが多く、優先度で線引きすることでスケジュールの現実性を保てます。

会計・販売・在庫の旧システムからのデータ移行の落とし穴

ERPへの移行では、旧システムのマスタ・残高・履歴データを新ERPに移す作業が発生します。品目コード体系の変更・単位換算・取引先コードの統合・過去仕訳の移行範囲など、判断事項が多く、移行データの粒度合わせに工数が集中します。移行判定を軽く見積もると、稼働直前になって整合エラーが多発し、並行稼働期間が延びます。

回避策:並行稼働期間(旧システムと新ERPを両方動かして結果を突き合わせる期間)を計画段階で明示的に確保し、移行データの粒度合わせ(コード体系のマッピングルール・数量単位の変換ルール・履歴データの移行範囲)を要件定義の中で決めておきます。

旧システムの読み解きに要する時間を過小評価しないことが実務の要点です。

ERPで生産管理まで含めた場合の費用感と導入期間の目安

ERPで生産管理まで扱う場合の費用感は、企業規模・利用範囲・カスタマイズの深さで大きく変動し、公的統計にERPに限定した費用レンジはありません。ここでは、後掲の10製品のうち公表価格を持つ製品を並べたうえで、規模別の傾向と公開されている工期・予算の分布から目安を示します。

掲載製品の公表価格ベンチマーク

後掲の10製品のうち、公式サイトで価格帯が確認できるのは次のとおりです。他は個別見積り前提のため、公式資料の取り寄せが必要です。

  • TECHS-S NOA:月額45,000円〜(クラウド版標準プラン、税抜。中小・個別受注特化)
  • Odoo導入・開発・業務統合支援:Odooライセンス $22〜33/ユーザー/月+導入費は個別見積り(中小〜中堅・統合基幹)
  • GRANDIT:パートナー経由の個別見積り
  • PROACTIVE:要問い合わせ(目安として初期2,000万円〜)
  • Oracle NetSuite/SAP S/4HANA Cloud/OBIC7/GLOVIA/SMILE V/mcframe:いずれも要問い合わせ(大企業向けフルスコープでは、初期のライセンス・カスタマイズ・データ移行の合算で数千万円〜数億円規模に達する例も一般的に語られます)

クラウドERPは月額数万円〜数十万円のサブスクリプション型が中心で、生産管理モジュールや業種テンプレートを追加すると上乗せが発生する製品が多く見られます。オンプレミス型・大企業向けフルスコープは初期投資が桁違いになるため、稟議の場では上記の公表価格帯を出発点にして、対象製品の個別見積りで幅を詰めるのが実務の順序です。

導入期間の目安(人月と暦月の換算例)

導入期間の目安は、規模と要件で幅があります。JUASの調査では、100人月未満の中小規模プロジェクトの約8割以上が「予定どおり/ある程度は予定どおり完了」する一方、500人月以上の大規模プロジェクトでは半数以上が「予定より遅延」します。

人月から暦月への一般的な換算例として、規模ごとに次の置き方が現場実務でよく使われます。50人月クラスは5〜10名×5ヶ月で、暦月では概ね半年前後です。100人月クラスは10名×約10ヶ月で暦月では1年前後、300人月クラスは15〜20名×15〜20ヶ月で暦月では1年半〜2年が目安になります。

ERPで生産管理まで含めるプロジェクトは中〜大規模帯に入ることが多いため、予算・期間ともに一定のバッファを見込む前提が現場実務では一般的です。

経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」でも、ERPを含む基幹システムの浸透度が国内企業の生産性に影響している可能性が指摘されています。基幹刷新は一過性の投資ではなく、中長期の経営課題として位置づけられます。稟議での桁感を示すときは、掲載製品の公表価格帯と規模別の遅延・超過リスクを併せて提示すると、意思決定者の理解を得やすくなります。

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生産管理に対応するERPの代表例 — スポット比較と個別紹介

ここからは、生産管理に対応するERPと、参考として生産管理システム側の代表例を並列で紹介します。ERPだけを持ち上げず、専用の生産管理システムも同じ場で見比べることで、自社の生産形態・既存システム・規模との適合を判断しやすくします。

表の1行目にサービス名、2行目に「システム類型」を配置しています。まずシステム類型の行を見て ERP/中間/専用生産管理システムの群分けを把握したうえで、細部の比較に進んでください。

詳細は続くサービス個別紹介と、各社の公式資料を突き合わせて判断することを推奨します。

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サービス名Odoo導入・開発・業務統合支援Oracle NetSuiteSAP S/4HANA CloudOBIC7 生産情報システムPROACTIVEGLOVIASMILE VGRANDITmcframeTECHS-S NOA
システム類型ERPERPERPERPERPERPERPERPERP/生産管理システム(中間)生産管理システム(個別受注特化)
主な生産管理機能MRP・多階層BOM・生産オーダー・PLM(製品ライフサイクル管理)・品質・Shop Floor・IoT Box連携MRP・プランニング/スケジューリング・製造管理・Shop Floor Control・品質管理生産計画(PP)・MRP・DDMRP・Universal Journalによる会計統合受注/計画/個別受注生産、製番手配・MRP手配、組立型/配合型、E-BOM/M-BOM連携生産管理・MESモジュール、AIエージェント連携、SaaS/オンプレ/IaaSの選択導入GLOVIA iZ(4基幹統合に生産を含む)/GLOVIA OM・G2(製造業特化・生産管理主軸)生産革新Blendjin(配合型)/Ryu-jin(繰返量産型)と会計・販売の統合連携個別/繰返/ハイブリッド生産、サマリー型/ストラクチャー型BOM、ガントチャート、品目・製番ロットトレース見込/受注/半見込生産、BOM/MRP、PLM/MES/IoT/COCKPITまで垂直統合個別受注特化、マスタ事前登録不要、CAD/Excel BOM取込、仕掛かり原価のリアルタイム可視化
提供形態クラウド/セルフホストクラウド(SaaS)クラウド/オンプレオンプレ/プライベートクラウドSaaS/オンプレ/IaaSクラウド/オンプレオンプレ(SMILE V)/クラウド(SMILE V Air)クラウド/オンプレ(完全Web型)オンプレ(mcframe 7)/クラウド(mcframe X)クラウド(サブスク)/オンプレ
業種・生産形態フィット中小〜中堅/統合基幹+EC・海外拠点中堅〜大企業/多拠点・海外拠点(190通貨・27言語)中堅〜大企業/GROW(中堅)・RISE(大企業)でグローバル対応中堅〜大企業/組立型・配合型混在、化粧品・食品・機械中堅〜大企業/業種横断(7,500社超の導入基盤)中堅〜大企業/企業規模別・業種別ラインナップ中堅製造業/化学・食品(配合型)、自動車部品・電気部品(繰返量産型)中堅〜大企業/組立系・プロセス系両方中堅〜大企業製造業/医薬・食品・化学・機械中小製造業/機械・装置・個別受注(一品モノ)
費用感Odooライセンス$22〜33/ユーザー/月+導入費は個別見積り要問い合わせ(年間ライセンス制)要問い合わせ(Public最小30 FUE〜)要問い合わせ要問い合わせ(目安:初期2,000万円〜)要問い合わせ要問い合わせパートナー経由の個別見積りパートナー経由の個別見積り月額45,000円〜(クラウド版標準プラン、税抜)
詳細情報公式資料を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見るサービス詳細を見る公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト

1. Odoo導入・開発・業務統合支援(株式会社マルウェブ)

Odoo導入・開発・業務統合支援のウェブサイト

ベルギー Odoo S.A. のオープンソースERP「Odoo」を、要件定義・カスタム開発・データ移行・運用定着まで一貫して支援するサービスです。株式会社マルウェブが提供しており、越境EC(Magento2・Shopify)で培った受託開発のノウハウを活かし、EC・購買・在庫・会計・製造までを1系統で統合する使い方を得意としています。

Odoo Manufacturing モジュールは、MRP・多階層BOM・生産オーダー・PLM・品質管理・保守・Shop Floor・IoT Box連携を備え、販売・購買・在庫・会計と単一データベースで統合されます。オープンソースでライセンスコストを抑えつつカスタマイズ余地を確保したい、中小〜中堅製造業の初めての統合ERPとして候補に入ります。

日本語プロジェクトマネジメント×海外開発チームのハイブリッド体制でコスト最適化を図っている点も特徴です。

2. Oracle NetSuite(日本オラクル株式会社)

Oracle NetSuiteのウェブサイト

Oracle NetSuite は、日本オラクル株式会社が提供するクラウドERPで、190通貨・27言語・200か国に対応し、海外拠点を含む中堅〜大企業製造業の統合基幹として広く採用されています。SuiteSuccess Manufacturing Edition が製造業向けの業種テンプレートを提供します。

資材所要量計画(MRP)については、公式に次のように説明されています。

需要と部品構成表(BOM)に基づいて、完成品の組み立てに必要な原材料、部品、サブアセンブリの内容とその時期を決定することで、生産プロセスを加速します

出典:資材所要量計画(MRP)システムとは|NetSuite(日本オラクル株式会社)

製造業向け機能としては、プランニングおよびスケジューリング、製造管理、作業現場管理(Shop Floor Control)、品質管理などの機能グループが公式に整理されています。海外拠点を持つ企業や、経営情報を全社で統一したい中堅〜大企業製造業の候補として位置づけられます。

3. SAP S/4HANA Cloud(SAPジャパン株式会社)

SAP S/4HANA Cloudのウェブサイト

SAP S/4HANA Cloud は、SAPジャパン株式会社が提供する SAP S/4HANA のクラウド版で、Universal Journal による会計統合と、SCM・生産・販売・購買を単一基盤で扱える点が特徴です。生産計画(PP)モジュールにMRP機能が組み込まれ、需要・受注・従属所要(BOM展開)を元に手配提案を生成する仕組みが公式のラーニングコンテンツで解説されています。

S/4HANA 2021以降はDDMRP(Demand Driven MRP)にも対応しています。

提供体系は、中堅企業向けの GROW with SAP と、大企業向けの RISE with SAP に分かれており、規模帯に応じた導入パスが用意されています。既存の SAP ECC からの移行、海外グループ会社を含めた基幹統一、IFRS対応など、大規模かつ多拠点の要件を持つ企業の候補として挙がります。

4. OBIC7 生産情報システム(株式会社オービック)

OBIC7 生産情報システムのウェブサイト

OBIC7 は、中堅・大企業向けの純国産統合ERPで、会計・販売・人事給与・原価管理・生産管理を一貫して扱えるラインナップを持ちます。生産情報システムは、複数の生産形態と業種テンプレートに対応しており、公式には次のように説明されています。

複数の生産形態(受注生産/計画生産/個別受注生産)、手配方式(製番手配、MRP手配)、生産管理方式(組立型、配合型)に対応しています。また、それぞれの混在や併用も可能です。

E-BOMとM-BOMの連携を実現。ユニット単位での部品手配、製造指示が可能で、親子製番による細かな原価管理を実現。

出典:機能概要|生産管理システム「OBIC7生産情報システム」|株式会社オービック

組立型・配合型の両方の業種テンプレートを持ち、化粧品・食品の配合型製造や、機械組立の混流生産にも対応できる点が特徴です。国産ERP大手として、稟議・監査対応の実績を重視する中堅・大企業の候補になります。

5. PROACTIVE(SCSK株式会社)

PROACTIVEのウェブサイト

PROACTIVE は、SCSKが1993年から提供する国産ERPで、生産管理・MES モジュールを明示的にラインナップしています。SaaS・オンプレミス・IaaSのハイブリッド導入を選択でき、業界固有要件が強い販売・生産管理はオンプレミス、会計はSaaSといった使い分けもできます。

7,500社超の導入基盤を持ち、SCSKグループのシステムインテグレーション力を背景に、中堅〜大企業の基幹刷新を伴走する体制が整っています。国産ERPで、業種テンプレートと導入伴走を重視する製造業の稟議で候補に挙がる選択肢です。

6. GLOVIA(富士通株式会社)

GLOVIA は、富士通グループが提供する国産ERPブランドで、企業規模別・業種別に生産管理を扱うラインナップを持ちます。GLOVIA iZ(中堅企業向け、会計・人事給与・販売・生産の4基幹統合)、GLOVIA OM/G2(米国 Fujitsu Glovia の製造業特化・生産管理主軸)、GLOVIA smart(業種特化型)と、選択肢が分かれています。

富士通グループのSI・データセンター基盤を背景に、中堅〜大企業製造業で採用されている代表選択肢の1つです。生産管理を主軸とする GLOVIA OM/G2 のような製造業特化型と、統合ERPの GLOVIA iZ を、要件に応じて選び分けられる点が特徴です。

7. SMILE V(株式会社大塚商会)

SMILE Vのウェブサイト

SMILE V は、大塚商会が提供する中堅企業向けの国産統合ERPで、会計・販売・人事給与に加え、業種特化型の生産管理として生産革新シリーズを持ちます。生産革新 Blendjin は化学・食品の配合型製造向け、Ryu-jin は自動車部品・電気部品などの繰返量産型向けと、生産形態別のラインナップが特徴です。

大塚商会の長年の取引基盤とSI体制を背景に、中堅製造業で「業種別テンプレート×統合ERP」の切り口で検討される選択肢です。会計・販売と一体で導入するときの運用一元化がメリットになります。

8. GRANDIT(GRANDITコンソーシアム)

GRANDITのウェブサイト

GRANDIT は、GRANDITコンソーシアムが提供する完全Web型純国産ERPで、11モジュール(販売・購買・在庫・製造・会計・資産管理・経費・債権・債務・人事・給与)に加え、BI・ワークフロー・EDIを標準搭載します。国内累計1,500社超の導入実績を持ちます。

生産管理モジュールの公式資料には、次のように記載されています。

個別生産、繰返生産、ハイブリッド生産などの生産形態に対応

生産形態に併せたBOM管理(サマリー型BOM、ストラクチャー型BOM)/在庫推移を考慮した生産計画/ガントチャートによる品目・製番・工程での作業進捗を管理/計画予定を考慮した所要量シミュレーション/品目・製番によるロットトレース/月次標準、予定原価、実績の3種類で品目別原価管理

出典:生産管理モジュール|Web-ERP【GRANDIT】|株式会社システムインテグレータ

個別生産・繰返生産・ハイブリッド生産の複数形態と、サマリー型/ストラクチャー型のBOMを扱えるため、生産形態が混在する中堅製造業の統合ERPとして検討される選択肢です。

9. mcframe(株式会社ビジネスエンジニアリング)

mcframeのウェブサイト

mcframe は、ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)が提供する製造業特化型の国産システムで、mcframe 7 SCM/PCM(オンプレ)と mcframe X(クラウド)に加え、PLM・MES・IoT・COCKPITで設計〜製造実行〜基幹〜経営ダッシュボードまで垂直統合する構成をとっています。ERP側と生産管理システム側の両側面を持つ製品として位置づけられます。

mcframe 7 SCM の公式資料には、次のように記載されています。

見込生産、受注生産、半見込生産など、あらゆる生産形態に対応

BOMとMRPは、効率的な部材手配と製造管理を行うための、mcframe 7の生命線

組立加工からプロセス、医薬品業界まであらゆる製造業に対応

出典:mcframe 7 SCM|株式会社ビジネスエンジニアリング

ERP型の統合を志向するというより、生産管理・SCMの機能に厚みを持たせた製造業特化型として設計されており、汎用ERPと専用の生産管理システムの中間で検討される選択肢です。医薬・食品・化学・機械の業種別実績があります。

10. TECHS-S NOA(株式会社テクノア)

TECHS-S NOAのウェブサイト

TECHS-S NOA は、株式会社テクノアが提供する個別受注型・機械装置製造業向けの生産管理システムで、統合ERPではなく専用パッケージの立ち位置です。マスタ事前登録なしで運用開始できる、CAD・Excelからの部品表取込に対応する、仕掛かり原価をリアルタイムで可視化するなど、量産型ERPの生産管理モジュールでは対応が難しい「一品モノ・中小製造業」の領域をカバーします。

月額45,000円〜という価格帯は、大手ERPと桁違いの水準で、中小製造業でも導入しやすい設計です。統合ERPを入れる規模ではないが、生産管理は専門的に扱いたいという企業の候補として、対比の中で参考にできる選択肢です。

10製品の詳細を確認したうえで、ERP(統合基幹業務システム)そのものの機能・選び方・主要製品の比較をさらに広く読み比べたい場合は、以下の記事もあわせてご参照ください。

まとめ

ERPの生産管理モジュールでは、MRP・BOM管理・生産計画・工程管理・実績収集・原価計算・ロットトレース・販売購買在庫連携までを、会計・販売と同一データ基盤で扱えます。ただし、機能の粒度と業種テンプレートの深さはベンダーごとに大きな差があり、汎用ERPと専用の生産管理システムを一律で比べることはできません。

判断の分かれ目は、自社の生産形態(個別受注・多品種少量・繰返量産・プロセス)と、既存の会計・販売の稼働状況、現場管理に求める粒度で切り分けられます。繰返量産・組立型で会計もこれから、というケースはERPで足りることが多く、個別受注・プロセス配合・現場のリアルタイム管理を重視するケースでは専用の生産管理システムとの併用が現実的です。

候補製品を絞り込んだら、業種テンプレートの適合・既存システムとの連携方式・Fit&Gapの粒度・提供形態・サポート体制・セキュリティ要件を、公式資料と個別見積もりで確認する段階に進みます。導入プロジェクトそのものの落とし穴(アドオン膨張・現場実績入力・BOMマスタ整備・データ移行)も、要件定義の段階で対策を織り込んでおくと、稼働後の手戻りが小さくなります。

「ベンダーはERP一気通貫、現場は専用システム」の対立をどう調停するか

冒頭で示した「ベンダーは ERP 一気通貫を推す/現場は専用の生産管理システムに固執する」の対立は、両者が別の前提で話しているために会話だけでは決着しません。ベンダー側が ERP 一気通貫を推す背景には、統合による会計・販売・生産のデータ一元化と経営情報の可視化という便益、およびライセンス・保守を単一パッケージで扱う商流上のメリットがあります。

現場側が専用の生産管理システムに固執する背景には、業種テンプレートに埋め込まれた業界慣行の深さと、現場工程・帳票への即応性、既存パッケージで培われた運用ノウハウがあります。どちらも自分の持ち場では正しい判断です。

調停の原則は、対立を「どちらが正しいか」で片付けず、本記事の切り分け表と併用パターンで示したとおり、自社の生産形態・既存の会計販売の稼働状況・現場管理の必要粒度で条件付けて判断することです。

実務の落としどころは3つの型で整理できます。繰返量産・組立型で会計もこれから、というケースは ERP に寄せる。個別受注・プロセス配合・現場リアルタイム管理が中核のケースは専用生産管理システムを主軸に据えて ERP を会計販売基盤として連携する。既に定着した生産管理システムがあるケースはそれを残して ERP と連携する。

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よくある質問(FAQ)

Q. ERPの生産管理モジュールとは何ですか?

A. ERPの生産管理モジュールは、生産計画・所要量計算(MRP)・部品表(BOM)管理・工程管理・実績収集・原価計算といった製造業務を、会計・販売・購買・在庫と同一のデータ基盤で扱うためのソフトウェアです。部門をまたぐ二重入力を排除できる点と、月次締めと同時に製造原価が確定する点が、専用の生産管理システムと連携させる構成にはない特徴です。

機能の呼称・粒度はベンダーごとに違うため、個別ERPが自社の生産形態にどこまで踏み込んで対応するかは、候補製品の公式資料で確認する前提になります。

Q. ERPの生産管理はクラウド型でも十分に使えますか?

A. ERPの生産管理をクラウド型で運用することは可能ですが、カスタマイズの深さと現場端末との連携要件で向き不向きが分かれます。繰返量産・組立型で標準機能に業務を寄せられるケースでは、インフラ運用をベンダー側が担うクラウドERPが導入しやすい選択肢です。

一方で、コードレベルの大規模なカスタマイズが必要な場合や、ハンディターミナル・IoT機器を交えた秒〜分単位のリアルタイム実績収集を求める場合は、オンプレミス型や、生産管理だけをオンプレに残すハイブリッド構成が現実的です。「クラウド/オンプレ」は費用や運用体制だけで決めず、現場運用の要件と併せて判断してください。

Q. ERPの生産管理と、MES(製造実行システム)はどう違いますか?

A. ERPの生産管理は経営情報の可視化まで担う統合基幹の一部で、MESは製造現場での作業指示・機械制御・実績収集に特化した現場層のシステムです。両者は競合するものではなく、扱う階層が異なります。

一般的には、ERPが生産計画・MRP・BOMを扱い、MESがその計画を受けて現場のライン制御と実績収集を担い、ERPに実績を戻す構成をとります。ERPとMES/専用の生産管理システムを併用する場合は、どの層でどのデータを正として持つかを設計段階で切り分けておくと、二重入力や整合性エラーが発生しにくくなります。

Q. ERPの生産管理モジュールに加えて、生産スケジューラ(APS)は必要になりますか?

A. ERPの生産管理モジュールで基準生産計画(MPS)までは扱える製品が多い一方、機械・工程能力の制約を踏まえた分単位の詳細スケジューリングを行うなら、生産スケジューラ(APS)の併用が現実的です。APSは制約条件を計算に組み込みガントチャート単位で計画を組み立てる専用エンジンで、ERPだけで同等の精度を出すのは難しい領域です。

繰返量産で標準リードタイムの範囲内に計画が収まる工場はERPの標準機能で足りることが多く、多品種少量・段取り替えが頻発する工場や機械の稼働制約が厳しい工場では、APSとERPを組み合わせる構成が選ばれます。

Q. 中小製造業でもERPで生産管理まで扱うのは現実的ですか?

A. 中小製造業でも、クラウド型ERPや中堅企業向けの国産ERPを使えばERPで生産管理まで扱う構成は現実的です。ただし、業種テンプレートが自社の生産形態に合っているかを事前に確認することが前提になります。

本記事で紹介した10製品では、TECHS-S NOA が月額45,000円〜(クラウド版標準プラン、税抜)、Odoo が用途別ライセンスで小規模から始められる価格帯を公表しており、中小製造業でも稟議に載せやすい水準です。他の製品は要問い合わせが中心ですが、公式サイトの問い合わせフォームから見積依頼が可能です。

一方で、個別受注型で製番管理・個別原価計算が中心となる工場や、現場密着の細かな進捗管理が業務の中核になる工場では、統合ERPよりも中小製造業向けの専用生産管理システム(TECHS-S NOAなど)を主体にして、会計・販売はクラウド会計と分業する構成のほうが導入負荷が小さいこともあります。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。
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