後継者不在、事業拡大のための譲渡、ノンコア事業の切り出しなど、経営者がM&Aを本気で検討し始めた段階で、銀行担当者や税理士から「まずはM&Aアドバイザリーに一度話を聞いては」と勧められた、あるいはネットで調べていて「M&A仲介」と「M&Aアドバイザリー」という異なる言葉に引っかかった、という方は多いのではないでしょうか。
両者は同じ「M&Aの支援サービス」に見えて、契約の相手方・利益相反への向き合い方・報酬の受け取り方が構造的に異なります。この違いを掴まないまま候補会社の資料請求に動くと、自社のケースに合わない支援機関に依頼して意思決定の主導権を手放したり、想定外の費用体系に直面したりする可能性があります。
本記事では、M&Aアドバイザリーの定義とM&A仲介との違いを、中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」の一次記述を引きながら整理します。あわせて業務プロセス・費用相場(レーマン方式の料率テーブル)・提供会社の分類・選び方の観点・関連法令の位置づけまで、候補会社2〜3社に絞り込む判断材料として扱います。
目次
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M&Aアドバイザリーとは
M&Aアドバイザリーとは、M&Aを検討する売り手または買い手のどちらか一方に立って、戦略立案から相手先探索・企業価値評価・交渉・契約実行までを助言・支援する専門サービスの一形態です。
中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」では、この立場を担う支援機関を「FA(フィナンシャル・アドバイザー)」と定義しており、契約の名称としては「FA契約」のほか「業務委託契約」「アドバイザリー契約」等の呼び方があるとしています。
FA(フィナンシャル・アドバイザー)とは、譲り渡し側(※)又は譲り受け側の一方との契約に基づいてマッチング支援等を行う支援機関をいい、一部のM&A専門業者がこれに該当する(業務範囲は個別の支援機関ごとに異なる。)。
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁(p.17-18)
同ガイドラインは、契約書上の名称についても以下のとおり整理しています。
まずは仲介者・FAを選定し、仲介契約・FA契約を締結する(名称は「仲介契約」「FA契約」のほか、「業務委託契約」「アドバイザリー契約」等とされることもある。)。
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁(p.37)
「M&Aアドバイザリー」と「M&Aアドバイザー」の関係
「M&Aアドバイザリー」は業態・サービスの呼称であるのに対し、「M&Aアドバイザー」は案件を担当する個人(担当者)を指すことが多い言葉です。会社としてM&Aアドバイザリーサービスを提供する組織のなかで、実際に売主または買主に伴走する担当者を「M&Aアドバイザー」と呼びます。両者は指す対象の粒度が異なるだけで、対立する概念ではありません。
M&Aアドバイザリーと「M&A仲介」の違い
M&Aアドバイザリー(FA)とM&A仲介は、どちらもM&Aの成立を支援する業態ですが、依頼者との契約の結び方が根本的に異なります。中小M&Aガイドライン第3版は、両者の位置づけを次のように区別しています。
【仲介】契約の相手方等:譲り渡し側・譲り受け側の双方と契約を締結する。双方から手数料の支払を受けることが通常である。
【FA】契約の相手方等:譲り渡し側・譲り受け側の一方と契約を締結する。その一方から手数料の支払を受ける。
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁(p.41-42)
この違いは「双方と契約する両手型」か「一方と契約する片手型」かという構造の差であり、そこから利益相反の生じ方・報酬源・向く案件のタイプまで派生します。主要な観点を横並びで整理すると次のとおりです。
| 比較の観点 | M&Aアドバイザリー(FA・片手型) | M&A仲介(両手型) |
|---|---|---|
| 契約の相手方 | 売主または買主のいずれか一方と契約 | 売主と買主の双方と契約 |
| 報酬源 | 契約した一方(依頼者)から手数料を受領 | 双方から手数料を受領するのが通常 |
| 依頼者との利害 | 依頼者の利益(譲渡条件の最大化・最小化)に専念できる立場 | 双方の意向を一元的に把握し、成立を目指す立場(一方の利益のみを優先できない) |
| 意思決定の主導権 | 依頼者側にある | 仲介者による調整に委ねる場面が多い |
| 向く案件の傾向 | 譲渡額最大化や入札方式(オークション)を重視するケース、株主等への合理的説明が必要なケース(債務整理を要する案件を含む) | 成立までのコミュニケーションを一元化し、円滑な調整を重視するケース |
M&Aアドバイザリー・FA・M&Aコンサルティングの呼称の整理
実務上、M&Aアドバイザリー・FA・M&Aコンサルティングの呼び方が併存しますが、中小企業庁はFA契約と同じ内容の契約が業務委託契約・アドバイザリー契約等の名称でも締結されると整理しており、片手型で売主または買主の一方に立つサービスを指す点で実体は共通です。
M&Aコンサルティングという呼称も同種の業務を指すケースが多い一方、戦略立案や統合支援など特定フェーズに特化したコンサルティングサービスを含む場合もあり、契約範囲は個別に確認する必要があります。
片手型(FA)が合う条件・両手型(仲介)が合う条件
どちらの型が優れているという話ではなく、案件の性質と経営者の重視点で使い分けます。中小M&Aガイドライン第3版の「活用例」を踏まえると、次のような整理ができます。
- 片手型(FA)が合う場合:譲渡額の最大化を最重視する場合、厳格な入札方式で複数の買い手候補を競わせたい場合、債務整理を伴うなど株主・債権者への合理的な説明責任がある場合、利益相反の懸念を構造的に排除しておきたい場合
- 両手型(仲介)が合う場合:売主・買主のコミュニケーションを一元化し成立までの調整を重視する場合、双方が事業承継目的で条件面での対立が小さいと見込まれる場合、規模が中小で複数社FA体制のコストに見合わない場合
中小M&Aガイドライン第3版は、両者の活用例を次のように示しています。
【FA・活用例】譲り渡し側・譲り受け側が、自社にとって最も有利な取引条件でM&Aを成立させることを重視する場合のほか、自社の関係者(債権者、株主等)との関係で、譲渡額をはじめ最も有利な取引条件でのM&Aの成立を目指す必要がある場合(例えば以下のとおり)
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁(p.41-42)
・譲渡額の最大化を特に重視し、厳格な入札方式(最も有利な条件を示した入札者を譲り受け側とする方式)による譲り渡しを希望する場合(例えば、債務整理手続を要する債務超過企業のM&Aの場合等)
・経営者が、株主等に対し、最善のM&Aをしたと合理的に説明できるよう、支援機関の選定においても利益相反のおそれが生じない機関を選定する等、一定の配慮をする必要がある場合
【仲介・活用例】譲り渡し側・譲り受け側が、自社にとって最も有利な条件(例えば、譲渡額の最大化・最小化等)でM&Aを成立させることだけを重視するのではなく、仲介者が双方とそれぞれコミュニケーションをとることを通じて円滑に手続を進めることを重視する場合
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁(p.41-42)
M&Aアドバイザリーの業務内容(プロセス)
M&Aアドバイザリーの業務は、依頼を受けた時点の戦略立案から、成約後のPMI(Post Merger Integration・買収後の統合作業)まで及びます。実務上のM&Aプロセスは、以下のようなフェーズで進みます。
| フェーズ | アドバイザーが担う主な役割 |
|---|---|
| 1. 戦略立案 | M&Aの目的(承継・成長・カーブアウト等)を整理し、譲渡・譲受の方針、想定スキーム、希望条件、スケジュールを依頼者と設計する |
| 2. 相手先探索(ロングリスト・ショートリスト) | 候補先を幅広く抽出したロングリストを作成し、依頼者の希望条件で絞り込んでショートリストに整理する |
| 3. 企業価値評価(バリュエーション) | DCF法(Discounted Cash Flow・割引キャッシュフロー法)・類似会社比較法・純資産法などで企業価値を試算し、想定譲渡価格レンジを依頼者と共有する |
| 4. 打診・交渉 | 秘密保持契約(NDA)を締結したうえで匿名情報を提示し、関心を示した候補先とトップ面談・条件交渉を進める |
| 5. 基本合意(LOI:Letter of Intent/MOU:Memorandum of Understanding) | 主要条件(譲渡価格・スキーム・スケジュール・独占交渉権等)を書面化し、基本合意書を締結する |
| 6. デューデリジェンス(DD) | 買い手が実施する各種DDの受け入れ調整、資料開示範囲の管理、Q&Aの取りまとめを行う |
| 7. 最終契約(DA:Definitive Agreement) | DD結果を踏まえた条件調整を経て、株式譲渡契約書などの最終契約を締結する |
| 8. クロージング | 譲渡代金の決済、株式・事業の引き渡し、必要な行政手続きを完了させる |
| 9. PMI(統合) | クロージング後の組織統合・業務統合を支援する。範囲は契約により異なる |
DDにおけるアドバイザーの立ち位置
デューデリジェンス(DD)そのものは、財務・法務・税務・ビジネス・ITなどの領域ごとに、買い手が起用する専門家(監査法人・法律事務所・コンサルティングファーム等)が実施するのが実務上の一般的な役割分担です。M&Aアドバイザリーは、DDを「実施する主体」ではなく、DDプロセス全体を取りまとめる役割を担うことが多くなります。
具体的には、売主側FAはDD対応窓口として資料開示範囲の管理・Q&A対応・スケジュール調整を担い、買主側FAはDDチームの起用調整・DD結果の交渉論点への反映を担います。ただし、Web3・ブロックチェーンなど専門性の高い領域では、FA自らが技術DDや事業DDの一部を実施するケースもあります。契約時点で「どのDD領域をFAが直接担うか、外部専門家に委ねるか」を明確にしておくのが安全です。
M&Aアドバイザリーの費用相場と報酬体系
M&Aアドバイザリーの費用は、「相談料」「着手金」「月額報酬(リテイナーフィー)」「中間金」「成功報酬」「デューデリジェンス費用」の複数費目で構成されます。中小M&Aガイドライン第3版は、これらの費目の位置づけについて次のように整理しています。
料金体系として、着手金・月額報酬・中間金・成功報酬の形式が多く見られることから、これらの概要について、以下、整理する。ただし、仲介者・FAの手数料には一般的な法規制がなく、どのような料金体系を採用するかは、あくまで各仲介者・FAによる点については留意が必要である(着手金・月額報酬・中間金を設けず、成功報酬のみを設ける仲介者・FAも相当数あるとされる。また、着手金・月額報酬・中間金が成功報酬に含まれるか否かの確認も必要である。)。なお、別途、実費(交通費等)を請求することもある。
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁(p.63)
費用構造の全体像と相場レンジ
費用相場の実額は各社で幅があり、単一の一次情報では確定しません。幅が生じる理由は主に2つで、1つ目は独立系専業FAを中心に着手金・月額報酬・中間金を撤廃する「完全成功報酬制」が広がっていること、2つ目は大手仲介・金融機関系が案件規模・複雑度に応じて着手金・リテイナー額を個別に設定する運用が一般的であることです。
以下は、複数の解説サイト(M&Aキャピタルパートナーズ/fundbook)の公表数値を並置した目安です。
| 費目 | M&Aキャピタルパートナーズの公表 | fundbookの公表 | 費目の位置づけ |
|---|---|---|---|
| 相談料 | 多くは無料。有料の場合は数千円〜数万円 | 無料〜1万円程度が多い | 初回相談時。無料が一般的 |
| 着手金 | 50〜200万円 | 無料〜数百万円と大きな幅 | 契約締結時に発生。近年は無料化が進む |
| 月額報酬(リテイナー) | 数十万〜数百万円 | 無料〜数百万円 | 案件期間中の月次固定報酬 |
| 中間金 | 成功報酬全体の10〜20% | 成功報酬の10〜30% | 基本合意(LOI/MOU)締結時に発生 |
| 成功報酬 | レーマン方式(下記) | レーマン方式で、取引金額に1〜5%などの料率を乗じる | クロージング時に発生 |
| デューデリジェンス費用 | 数十万〜数百万円 | 数十万〜数千万円と幅が広い | 買主が起用する外部専門家への費用(FA報酬とは別建て) |
着手金と月額報酬は「無料〜数百万円」の幅で公表されており、単一の相場に集約はできません。中間金も出典により10〜20%と10〜30%で差があるため、依頼前に契約書と料金表で個別に確認する必要があります。
出典・参考資料(2件)
実額試算例:譲渡価額5億円の中小M&Aケース
費目の総額感を掴むため、譲渡価額5億円(株式価額ベース)の中小M&Aで、大手仲介モデル(着手金あり・レーマン方式)に依頼した場合の総費用を試算します。
- 成功報酬:譲渡価額5億円 × 5%(5億円以下部分の料率)= 2,500万円(ただし多くの仲介者・FAが最低手数料を設けており、5億円規模では最低手数料が適用されるケースもあります。金額は各社で異なり、公表されていない場合が多い)
- 着手金:M&Aキャピタルパートナーズの目安上限で 200万円(完全成功報酬制の会社なら0円)
- 中間金:成功報酬2,500万円 × 20%(基本合意時に発生)= 500万円(成功報酬に含まれるケースもあり、その場合は総額から控除)
- 合計目安:約2,700万〜3,200万円(着手金・中間金は成功報酬内包の有無で総額が変動)
加えて、買主が起用する外部専門家によるDD費用(数十万〜数百万円)が売主・買主双方に別建てで発生します。上記はあくまで機構としての内訳試算で、実額は候補会社ごとの料率テーブル・最低手数料・成功報酬の計算基準(後述)で数千万円単位の差が出る点に留意してください。
見積依頼時に分解して確認する項目
候補会社2〜3社に相見積を依頼するときは、総額の数字だけでなく次の内訳を明示で聞き分けます。
- 着手金・月額報酬・中間金の 各費目の有無と金額(成功報酬に含まれるか否かの明示を含む)
- 成功報酬の レーマン方式の料率テーブル(何%〜何%の何段階か。特に大型階層の料率)
- 成功報酬の 計算基準となる価額(株式価額/移動総資産/純資産のいずれか)
- 最低手数料の金額(レーマン方式で算出した額が下回った場合の適用値)
- DD費用の 負担分担(買主負担が原則だが、売主準備分・売主起用の外部専門家分の見込み)
レーマン方式による成功報酬の料率テーブル
M&Aアドバイザリー・M&A仲介の成功報酬は、レーマン方式による料率で算定するのが一般的です。中小M&Aガイドライン第3版は、レーマン方式の一例として次の料率を示しています。
【レーマン方式の一例】
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁(p.64-65)
5億円以下の部分:5%
5億円超10億円以下の部分:4%
10億円超50億円以下の部分:3%
50億円超100億円以下の部分:2%
100億円超の部分:1%
※あくまで一例であり、各階層における価額・割合は各仲介者・FAにより異なる。
基準となる価額を階層ごとに分け、それぞれの階層に対応する料率を乗じた金額を合算する仕組みで、譲渡規模が大きくなるほど適用料率が段階的に下がる「逆進性」が特徴です。
同じ料率テーブルは日本M&Aセンターの「手数料・料金について」ページやM&Aキャピタルパートナーズの「レーマン方式とは?」ページでも公表されており、業界内で広く採用されています。大型案件でさらに料率を下げるケースもありますが、公表料率としては現時点で確認できる範囲では100億円超1%までが一般的です。
また、譲渡規模が小さい案件では基準価額が小さくなり、料率だけで算出すると必要な報酬水準に達しないため、中小M&Aガイドラインは多くの仲介者・FAが「最低手数料」を設けていると指摘しています。最低手数料の金額は各社で異なるため、料率とあわせて個別確認が必要です。
成功報酬の計算基準(株式価格ベースと移動総資産ベース)
レーマン方式で料率を乗じる「基準となる価額」は、各社によって設定が異なります。代表的な基準は以下の3つです。
- 譲渡価額(株式価格)ベース:株式譲渡の対価そのものを基準とする。負債を引き継がない譲渡では実額と一致しやすい
- 移動総資産ベース:譲渡価額に有利子負債や運転資本の引き継ぎ分を加えた金額を基準とする。日本M&Aセンターは「譲渡企業の時価総資産額」を基準に採用していると公式に明示しています
- 純資産ベース:譲渡対象の純資産額を基準とする
同じ譲渡価額でも計算基準の違いで最終的な成功報酬額は数千万円単位で変動します。契約前に「基準となる価額」の定義を必ず確認し、可能であれば複数社に同一条件で概算見積もりを依頼して比較するのが安全です。
出典・参考資料(2件)
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M&A支援機関の全体地図
M&Aの支援機関は、片手型のFA(M&Aアドバイザリー)以外にも、両手型のM&A仲介会社・M&Aプラットフォーム・事業引継ぎ支援センター等が並立しています。本記事冒頭で整理したとおり位置づけは異なりますが、候補選定の初期段階では自社の案件規模・目的に合う支援機関の型を掴んでおく必要があります。
まずはFA会社の代表的な5タイプを整理し、参考として仲介会社・プラットフォームの位置づけも同表に併記します。母体・得意領域・向く案件規模で並べたのが以下の表です。
| タイプ | 特徴・強み | 向く案件規模の傾向 |
|---|---|---|
| 投資銀行(外資系・国内証券系) | クロスボーダー・大型案件の実行力、資金調達との一体対応、業界カバレッジの厚さ | 数百億円以上の大型案件、上場企業のM&A |
| 独立系専業FA(M&Aブティック) | 片手型に特化し利益相反を構造的に排除。担当者の裁量が大きく機動力が高い。大型特化と小規模特化に分かれる | 数億〜数百億円と幅がある(近年は数千万〜数億円の小規模案件に特化する独立系FAも増えている) |
| 総合経営コンサルティング会社 | 戦略立案・PMIを含む一気通貫の支援、業界知見・オペレーション支援の厚さ | 大型案件、事業ポートフォリオ再編案件 |
| 金融機関系(メガバンク・地銀・信託銀行) | 既存取引先ネットワーク、資金調達との一体対応、地域案件のカバレッジ | 数億〜数十億円の中堅・地域案件 |
| 士業事務所(税理士法人・監査法人系FAS) | 財務・税務DD、株価算定、税務ストラクチャリングの専門性 | 事業承継、税務スキームが論点になる案件 |
| M&A仲介会社 | 両手型で双方の調整を担う。案件データベースが大きい | 数億〜数十億円の事業承継案件が中心 |
| M&Aプラットフォーム/事業引継ぎ支援センター | 案件のマッチングをオンラインまたは公的支援で提供。低コスト・小規模案件に対応 | 数千万〜数億円の小規模案件 |
年商10〜数十億円規模の案件では、金融機関系・独立系専業FA(小規模特化)・士業系FAS・M&A仲介会社・M&Aプラットフォームが選択肢に入りやすい階層です。数百億円以上の大型・クロスボーダー案件になると投資銀行・総合コンサル・独立系専業FA(大型特化)が主戦場に変わります。
「特化型FA」というポジション(売主専任・業界特化)
上記の分類に加えて、片手型FAのなかでも「売主専任」に特化する会社や、「Web3・ブロックチェーン」「医療」「IT」など業界特化の技術DDに対応できる会社が近年増えています。汎用ファームでは対応しきれない技術評価やセルサイド固有のノウハウが必要な案件では、特化型FAが選択肢になります。本記事では次の節で、この2つの潮流を体現する掲載サービスの例を具体的に紹介します。
業界全体を広く比較したい方は、金融コンサル会社比較のピラー記事もあわせて参照ください。
特化・専任型FAの実例(掲載サービス)
ここでは、片手型FAのうち「売主専任」に特化するサービスと、「Web3・ブロックチェーン業界」に特化するサービスの2社を具体例として紹介します。汎用ファームでは対応しきれない売主側固有のノウハウや業界特化の技術DDが必要な案件で、特化型FAがどう機能するかを掴む題材です。
業界特化型FAはWeb3のほかにも、医療・製造・ITなどの領域で展開されており、汎用ファームでは対応しきれない技術評価が必要な案件では選択肢になります。
| サービス名 | M&A Lead | Consensus Base |
|---|---|---|
| タイプ | 売主専任型(片手取引) | 業界特化型(Web3・ブロックチェーン) |
| 対象案件(特徴) | 業種不問の売主側譲渡案件 公表事例は約5,000万〜10億円規模 (事業承継・上場企業子会社カーブアウトなど) | Web3・ブロックチェーン領域の買収・売却・提携 (GameFi/NFT/DeFi/ウォレット/Layer1・Layer2/DID/ZK等) |
| 料金体系 | 完全成功報酬制 着手金・中間金・月額報酬0円 成功報酬はレーマン方式1〜5% | 要問い合わせ (レーマン方式採用有無は非公開) |
| 対応領域 | 買い手候補探索・条件交渉が中心 相談〜成約まで売主専属で伴走 全国対応・オンライン相談可 | 候補先探索〜LOI/MOU〜DDマネジメント〜PMIまで一気通貫 技術DD・スマートコントラクト監査観点のアセスメント含む 国内外対応(東南アジア・欧州・北米ネットワーク) |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る |
売主専任型(片手取引)の例:M&A Lead(M&A Lead株式会社)

M&A Leadは、M&A Lead株式会社が2022年に設立し、「売主様だけのために働く譲渡企業専属のM&Aアドバイザリー」を掲げるサービスです。両手型仲介が売主・買主の双方から手数料を受領するのに対し、M&A Leadは売主のみから成功報酬を受領する片手取引モデルを採用します。
譲渡価格・雇用条件・契約条件など売主にとって有利な条件の追求に専念できる立場を明示している点が特徴です。料金体系は着手金・中間金・月額報酬をすべて0円とする完全成功報酬制で、成功報酬は譲渡対価に対しレーマン方式(1〜5%)で算定します。
買い手候補の探索は、自社アドバイザーに加え他社M&A仲介会社・独立系アドバイザーとも連携する「100を超えるM&Aネットワーク」を通じて幅広く実施します。事業承継から上場企業の子会社カーブアウト(親会社からの事業切り出し)案件まで、美容業・動物病院・食品製造業・EC事業・インフルエンサーマーケティング事業等の幅広い成約実績を公表しており、全国対応・オンライン相談可です。
業界特化型(Web3・ブロックチェーン)の例:Consensus Base(コンセンサス・ベイス株式会社)

Web3業界特化M&Aアドバイザリー|Consensus Baseは、コンセンサス・ベイス株式会社が2023年に開始したM&Aアドバイザリー事業です。同社は2015年設立のブロックチェーン受託開発・技術コンサルティング会社で、その技術基盤をM&A支援に転用しています。
同社の主力であるブロックチェーン開発事業で蓄積した技術知見を、M&Aの技術DDと事業評価に転用する立て付けで、GameFi・NFT・DeFi・ウォレット開発・Layer1/Layer2・DID・ゼロ知識証明などWeb3特有の技術領域を対象にした支援を提供します。
支援範囲は候補先探索(ロングリスト作成)・LOI/MOU締結支援・DDマネジメント・技術DDやスマートコントラクト監査観点でのアセスメント・取引スキーム設計・トークンの取扱いに関する法務的整理・PMIまでを一気通貫で提供すると公式に明記しています。
国内外を対象とし、東南アジア・欧州・北米のネットワークを活用したクロスボーダー案件にも対応します。料金体系(着手金・成功報酬)は公式には非公開で、案件ごとの個別見積もりです。無料相談は公式サイトから申し込めます。
M&Aアドバイザリー会社の選び方(5つの観点)
M&Aアドバイザリー会社を絞り込むときの判断軸は、公的資料でも整理されています。中小M&Aガイドライン第3版は、選定にあたって確認すべき観点を次のように述べています。
仲介者・FAの選定に当たっては、業務形態や業務範囲・内容、契約期間、報酬(手数料)体系、M&A取引の実績(M&Aに取り組んだ件数・年数等)、利用者の声等をホームページや担当者から確認した上で、複数の仲介者・FAの中から比較検討して決定することが重要である。加えて、いわゆる「相性」も重要なことがある。
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁(p.37)
この記述と、M&A支援機関登録制度が公表している「登録支援機関のデータベース」で確認できる情報項目(専従者数・手数料算定基準・報酬発生タイミング等)を踏まえ、実務で使える5つの観点を整理します。
同業種・同規模での成約実績があるか
M&Aは業種・企業規模ごとに買い手候補の顔ぶれ・DDの重点論点・想定バリュエーション倍率が大きく異なります。同業種・同規模での成約実績が多い会社ほど、候補先探索の精度と交渉での主張の説得力が上がります。確認方法は、公式サイトの成約事例ページで業種・売上規模の分布を見る、面談時に「自社と同規模・同業種の案件を過去何件担当したか」を担当者に直接尋ねる、の2点が有効です。
利益相反への姿勢を明示しているか
片手型(FA)か両手型(仲介)かは、依頼者の利益をどこまで優先できるかを構造的に決めます。自社サイトで「当社は売主専任です」「片手取引のみ」等の位置づけを明示している会社は、利益相反への向き合い方が明確です。両手型を選ぶ場合でも、双方の代理をする範囲・情報遮断の運用ルール・利益相反が顕在化した場合の対応方針を書面で提示できるかを確認します。
担当者と直接面談できるか
M&Aは1年前後の長期プロジェクトで、担当者との相性・スキル・熱量が案件の進捗と結果を大きく左右します。契約前に、実際に案件を担当する予定のメンバーと面談する機会を得られるかを確認します。
営業担当者と実行担当者が別で、契約後に別の担当者に切り替わるケースもあるため、担当者の経歴(金融・コンサル・事業会社での実務経験、担当した案件の業種・規模)まで開示を求めます。M&A支援機関登録制度のデータベースでは、登録機関の専従者数を公開しており、専任チームの規模の目安になります。
情報管理体制は整っているか
M&Aは、買い手候補への打診段階から重要な情報を段階的に開示していきます。情報漏洩は取引の破談だけでなく、従業員の動揺・取引先の離反・株価への影響につながるため、NDA運用・匿名情報(ノンネーム資料)の作成基準・情報開示範囲の管理ルールをどう定めているかを確認します。特に、複数の買い手候補と並行して交渉する場合、どの候補にどこまでの情報を開示したかを一元管理できる体制が必要です。
料金体系は透明か
着手金・月額報酬・中間金・成功報酬の各費目、レーマン方式の料率テーブル、成功報酬の計算基準(株式価額ベースか移動総資産ベースか)、最低手数料、途中解約時の違約金・テール条項の有無を、契約前に書面で明示できるかを確認します。
M&A支援機関登録制度のデータベースでは、登録機関ごとに「報酬の発生タイミング(着手金/月額報酬/中間金/成功報酬)」「報酬基準額(譲渡額/純資産/移動総資産等)」「最低手数料の額」を公表しており、候補会社の比較の初期材料として活用できます。
依頼前に契約書ドラフトで確認すべき条項
候補会社が絞れた段階で提示されるFA契約書ドラフトに対しては、料金体系のほかに以下の4つの条項を書面で明示させ、後戻りしにくい意思決定の自由度を確保しておきます。
テール条項の期間
契約解除後にアドバイザリー会社が紹介した候補先と直接交渉して成約した場合、遡って成功報酬を請求できる旨を定めるのがテール条項です。期間は業界内で数か月から数年まで幅があり、この長さが契約解除後の意思決定の自由度を直接左右します。契約書ドラフトで期間・対象候補先の範囲・報酬計算方法を明示させます。
途中解約時の違約金相場と既払報酬の返金可否
契約締結後にM&A自体を中止する、または他社に切り替えるケースは実務上一定数発生します。この場合の違約金の算定式(発生タイミング・金額の上限)、既払いの着手金・月額報酬・中間金の返金可否・返金割合を、契約書ドラフトで確認します。中間金が「基本合意まで進んだ時点で発生・不返還」となっているかも要確認です。
情報漏洩発生時の解除条項と損害賠償
NDAはほぼ全社で締結されますが、実際に情報漏洩が発生した場合の契約解除の要件・違約金の有無・損害賠償の範囲が契約書に明記されているかは会社差があります。段階的開示ルール(ノンネーム→ネームクリア→詳細情報)の逸脱を解除事由に含めているか、電子データ管理の違反時の責任分担がどう定められているかを確認します。
双方要望が対立した場合の調整方針の明文化(両手型を選ぶ場合)
両手型(仲介)を選ぶ場合は、成約自体を目指す構造上、譲渡価格の最大化交渉が難しくなる場面が生じ得ます。契約書ドラフトで、双方の要望が対立した場合の仲介者の調整方針、価格交渉における仲介者の立ち位置、利益相反が顕在化した際の解除条項を書面で確認します。中小M&Aガイドライン第3版は仲介者に対し利益相反リスクへの対応措置を求めており、各社が定めた具体運用ルールの提示可否は判断材料になります。
M&Aアドバイザリー業務に関わる法令・ガイドライン
M&Aアドバイザリー業務そのものには特別な業法規制はありませんが、依頼する側・される側の双方が押さえておくべき公的枠組みが複数あります。読者が意思決定の根拠として確認できるよう、公的資料・法令原文を示しながら整理します。
中小M&Aガイドライン(中小企業庁)が求めるもの
中小企業庁は2020年3月に「中小M&Aガイドライン」を策定し、2024年8月に第3版へ改訂しました。用語定義・比較・選定観点・報酬体系・契約ひな形・利益相反対応・登録制度など、中小M&Aの支援機関に関わる論点を体系的に整理した公的資料です。
本記事でも用語定義・料金体系・選び方の一次根拠として繰り返し引用しています。M&Aアドバイザリー会社の選定時に、候補先が同ガイドラインの遵守を宣言しているかを確認するだけでも、初期の絞り込み材料になります。
M&A支援機関登録制度の位置づけ
M&A支援機関登録制度は、中小企業庁が2021年に創設した公的な登録制度で、中小M&Aガイドラインの理解と普及、および中小M&A市場の環境整備を目的としています。同庁の資料では、制度の趣旨を次のように説明しています。
M&A支援機関登録制度は、「中小M&Aガイドライン」の理解及び普及を促すとともに、M&A支援機関に係る一定の規律の下で中小M&A市場の環境整備を図ることを目的としています。中小企業がより一層円滑にかつ安心してM&Aを手段の一つとして選択できる環境の実現を目指します。
出典:M&A支援機関登録制度について(令和8年度)|中小企業庁(p.2)
登録には、中小企業庁の公表資料(令和8年度(2026年度))で以下の要件を満たす必要があるとされています。
- 中小M&Aガイドラインの遵守を宣言すること
- 遵守宣言を自社ホームページ(またはホームページがない場合は会社概要・パンフレット等)に掲載すること
- 登録後の遵守事項を履行することを誓約すること
- 法人または個人事業主として継続的に事業活動を行っていること
- 秘密保持義務条項が、顧客による情報提供受付窓口利用や国の事業承継・引継ぎ支援センター等への相談を制約しないこと
- 役員等が反社会的勢力に該当しないこと
- 経済産業省の所管補助金交付等の停止・契約に係る指名停止措置を受けていないこと
登録機関のデータベース(M&A支援機関登録制度のホームページ)では、登録支援機関の種類(専門業者・金融機関等の別)、専従者数、手数料の算定基準、報酬基準額(譲渡額/純資産/移動総資産等)、最低手数料の額、報酬の発生タイミングを検索できます。会社選びの初期段階で候補を絞る情報源として活用できます。
M&Aアドバイザリー業務と許認可(原則不要・例外的な局面)
M&Aアドバイザリー業務そのものは、業として行うために特別な免許・許認可を必要としません。中小M&Aガイドライン第3版が「仲介者・FAの手数料には一般的な法規制がなく」と明記しているとおり、業法上の登録要件は設けられていないのが実態です(前掲p.63)。
ただし、M&Aアドバイザリー業務のなかで「有価証券の売買の媒介・取次ぎ・代理」等に該当する行為(例:上場株式のTOB、私募の取扱い等)を業として行う場合は、金融商品取引法第29条の適用を受け、金融商品取引業として同法上の登録が必要となり得ます。
第二十九条 金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができない。
出典:金融商品取引法 第29条|e-Gov法令検索
また、弁護士法第72条は弁護士でない者が業として法律事務を取り扱うことを禁じています。
(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
出典:弁護士法 第72条|e-Gov法令検索
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
この条文を中小M&A実務に当てはめると、契約条項の踏み込んだ解釈・助言や、クロージング後の紛争解決への関与は、非弁行為に該当する可能性があります。中小M&Aガイドライン第3版は、この点について次のように明記しています。
クロージング後の両当事者間の紛争解決(一方当事者との交渉も含む。)への関与・支援については、基本的には仲介者・FAによる役務提供はクロージング時点において終了していることや、紛争解決への関与・支援は非弁行為(弁護士資格を有する者のみが実施することができる役務(弁護士法第72条))に該当する可能性があることから、仲介者・FAによる支援に限界がある点について留意する必要がある。
出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁(p.48/p.62)
実務上は、契約書のリーガルレビュー、紛争解決、税務ストラクチャリングなど、専門資格が求められる領域については、M&Aアドバイザリー会社が推薦する外部の弁護士・税理士と連携する体制になっているのが一般的です。依頼前に、外部専門家の連携範囲と費用負担の分担を確認します。
中小M&A専門人材のスキルマップ(資格制度の整備状況)
中小企業庁は、M&A支援を担う専門人材の質を担保するため、2025年4月に「中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ」を公表しました。中小M&Aに携わる個人が身につけるべき使命・倫理・行動規範・知識・スキルを体系化した資料です。
令和6年度の中小企業活性化・事業承継総合支援事業(受託:PwCコンサルティング合同会社)による調査成果物として整理されたものです。同スキルマップの整備を踏まえ、中小M&Aに関する資格制度の創設が検討されています。会社選定時に、担当者がこのスキルマップに沿った教育・研修を受けているかを確認するのも判断材料になります。
出典・参考資料(1件)
まとめ
M&Aアドバイザリー(FA)は、売主または買主の一方に立って戦略立案からクロージング・PMIまでを支援する片手型のサービスで、双方から手数料を受領する両手型のM&A仲介とは、利益相反の生じ方・報酬源・意思決定の主導権が構造的に異なります。どちらの型を選ぶかは、譲渡価格の最大化や入札方式を重視するか、双方の調整と円滑な成立を重視するかで判断します。
費用相場は、着手金・月額報酬・中間金・成功報酬・DD費用の複数費目で構成され、成功報酬はレーマン方式(5億円以下5%〜100億円超1%)が一般的です。各費目・料率・計算基準は各社で幅があるため、候補会社2〜3社に同一条件で見積もりを依頼して比較するのが安全です。
会社の分類(投資銀行/独立系専業FA/総合コンサル/金融機関系/士業FAS/M&A仲介/プラットフォーム)と自社の案件規模・目的の相性を掴んだうえで、実績・利益相反への姿勢・担当者・情報管理・料金の透明性の5観点で絞り込み、契約書ドラフト段階ではテール条項・違約金・情報漏洩発生時の解除条項・双方要望対立時の調整方針の4条項を書面で確認します。
公的な判断材料としては、中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」の遵守宣言、M&A支援機関登録制度への登録の有無、担当者が中小M&A専門人材のスキルマップに沿った教育を受けているかが確認材料になります。まずは候補会社の資料請求と無料相談で、料金体系と担当者の質を実地で見てから絞り込みを進めるのが実務的な進め方です。
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よくある質問(FAQ)
Q. M&AアドバイザリーとM&Aアドバイザーの違いは何ですか?
A. 「M&Aアドバイザリー」はサービス・業態の呼称で、「M&Aアドバイザー」は案件を担当する個人の呼称です。M&Aアドバイザリーサービスを提供する会社のなかで、実際に売主または買主に伴走する担当者がM&Aアドバイザーと呼ばれます。
中小M&Aガイドライン第3版では、支援機関としての位置づけは「FA(フィナンシャル・アドバイザー)」の用語で整理されており、契約名称は「FA契約」のほか「業務委託契約」「アドバイザリー契約」等と呼ばれます。
Q. M&A仲介とM&Aアドバイザリー(FA)はどちらを選ぶべきですか?
A. 案件の性質と重視する条件で使い分けます。譲渡価格の最大化・入札方式による売却・利益相反リスクの構造的排除を重視する場合は片手型FA、双方の調整を一元化して円滑な成立を重視する場合は両手型仲介が選ばれます。
中小M&Aガイドライン第3版は、活用例として前者に「厳格な入札方式による譲り渡し」「株主等への合理的な説明」を挙げ、後者に「双方とのコミュニケーションを通じて円滑に手続きを進める」ケースを挙げています。
Q. M&Aアドバイザリーの主な業務内容は何ですか?
A. 戦略立案・相手先探索(ロングリスト/ショートリスト)・企業価値評価(バリュエーション)・打診と交渉・基本合意・DDマネジメント・最終契約・クロージング・PMIまで、M&Aプロセス全体をワンストップで支援します。DD自体は買い手が起用する専門家(監査法人・法律事務所等)が実施するのが一般的で、アドバイザリーは資料開示・Q&Aの取りまとめといったマネジメント役を担います。
Q. M&Aアドバイザリーの手数料はどれくらいかかりますか?
A. 着手金・月額報酬・中間金・成功報酬の複数費目で構成され、成功報酬はレーマン方式で算定するのが一般的です。各費目の実額は各社で幅があり、M&Aキャピタルパートナーズは着手金を「50〜200万円」、fundbookは「無料〜数百万円」と公表しています。中間金は成功報酬の10〜20%(M&Aキャピタルパートナーズ)〜10〜30%(fundbook)が目安です。
中小M&Aガイドライン第3版は「仲介者・FAの手数料には一般的な法規制がなく、どのような料金体系を採用するかは、あくまで各仲介者・FAによる」と明記しており、契約前の個別確認が必須です。
Q. レーマン方式の「逆進性」とは何ですか?
A. 基準となる価額の階層が上がるほど適用料率が段階的に下がる仕組みのことです。中小M&Aガイドライン第3版の一例では、5億円以下の部分5%、5〜10億円の部分4%、10〜50億円の部分3%、50〜100億円の部分2%、100億円超の部分1%と、階層が上がるにつれ料率が下がります。
譲渡規模が大きいほど成功報酬の総額は増えるものの、譲渡価額に対する報酬率の実効値は下がるため、大型案件ほど料率負担が相対的に軽くなります。
Q. M&Aアドバイザリーにはどのような種類の会社がありますか?
A. 投資銀行(外資系・国内証券系)、独立系専業FA、総合経営コンサルティング会社、金融機関系(メガバンク・地銀・信託銀行)、士業事務所(税理士法人・監査法人系FAS)、M&A仲介会社、M&Aプラットフォーム/事業引継ぎ支援センターなどがあります。
大型・クロスボーダー案件は投資銀行、ミッドキャップは独立系専業FA、中堅・地域案件は金融機関系、事業承継や税務スキームが論点になる案件は士業FASが向く傾向があります。近年は売主専任や業界特化(Web3・医療・IT等)の特化型FAも増えています。
Q. M&Aアドバイザリー会社はどのように選べばよいですか?
A. 同業種・同規模での成約実績、利益相反への姿勢、担当者との面談可否、情報管理体制、料金体系の透明性の5観点で複数社を比較するのが基本です。中小M&Aガイドライン第3版は「業務形態や業務範囲・内容、契約期間、報酬(手数料)体系、M&A取引の実績、利用者の声等をホームページや担当者から確認した上で、複数の仲介者・FAの中から比較検討して決定することが重要」と述べています。
M&A支援機関登録制度のデータベースでは、専従者数・手数料算定基準・報酬発生タイミング・最低手数料の額を検索できます。
Q. M&Aアドバイザリー業務に特別な許認可は必要ですか?
A. M&Aアドバイザリー業務そのものには特別な業法規制はなく、原則として許認可は不要です。中小M&Aガイドライン第3版が「仲介者・FAの手数料には一般的な法規制がなく」と明記するとおり、業法上の登録要件は設けられていません。
ただし、有価証券の売買の媒介・取次ぎ・代理等に該当する行為を業として行う場合は、金融商品取引法第29条に基づき金融商品取引業として同法上の登録が必要となり得ます。契約書の踏み込んだ解釈助言や紛争解決への関与は、弁護士法第72条の非弁行為に該当する可能性があるため、外部の弁護士との連携が実務上必要になります。
Q. M&A支援機関登録制度とは何ですか?
A. 中小企業庁が2021年に創設した公的な登録制度で、中小M&Aガイドラインの理解と普及、および中小M&A市場の環境整備を目的としています。登録には、中小M&Aガイドラインの遵守宣言、自社ホームページでの宣言掲示、登録後の遵守事項の履行誓約、反社会的勢力に該当しないこと等の要件を満たす必要があります。
登録機関のデータベースでは、支援機関の種類・専従者数・手数料算定基準・報酬発生タイミング・最低手数料の額を検索できるため、会社選定の初期の情報収集手段として活用できます。
Q. M&A支援機関登録制度の登録機関はどうやって探せますか?
A. 中小企業庁「M&A支援機関登録制度」の公式データベース(https://ma-shienkikan.go.jp/)で検索できます。同データベースでは、登録支援機関の種類(専門業者・金融機関等の別)、専従者数、手数料の算定基準、報酬基準額(譲渡額/純資産/移動総資産等)、最低手数料の額、報酬の発生タイミング(着手金/月額報酬/中間金/成功報酬)を絞り込み検索できます。
候補会社を「同業種・同規模の実績がある登録機関」で初期スクリーニングする用途に向いています。
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出典・参考資料(13件)
- 出典:中小M&Aガイドライン(第3版)|中小企業庁
- 出典:M&A支援機関登録制度について(令和8年度)|中小企業庁
- 参考資料:M&A支援機関登録制度|中小企業庁
- 出典:【中小M&A専門人材(個人)向け】使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ|中小企業庁
- 参考資料:中小M&Aガイドライン|中小企業庁
- 出典:弁護士法 第72条|e-Gov法令検索
- 出典:金融商品取引法 第29条|e-Gov法令検索
- 出典:手数料・料金について|日本M&Aセンター
- 出典:レーマン方式とは?|M&Aキャピタルパートナーズ
- 出典:M&A手数料の相場と種類|M&Aキャピタルパートナーズ
- 出典:M&Aにかかる手数料はどのくらい?費用相場や種類、計算方法を解説|fundbook
- 参考資料:M&A Lead公式サイト|M&A Lead株式会社
- 参考資料:Web3業界特化M&Aアドバイザリー|Consensus Base(コンセンサス・ベイス株式会社)

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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