基幹システムと販売管理やEC、CRMのあいだを、いまも手作業のCSV取り込みでつないでいませんか。件数が増えるほど転記ミスや二重入力が起きやすく、担当者しか手順を知らない属人化も進みます。そろそろ仕組みで連携したいと考えたとき、多くの担当者が最初に迷うのが「どの連携方式を選べばよいのか」という点です。
連携の手段には、API直接連携・iPaaS・ETL・ELT・EAI・ファイル連携・DB連携・個別スクラッチ開発があります。それぞれリアルタイム性や実装のしやすさ、費用感が大きく異なるため、方式を横並びで理解しないまま製品を探すと、自社に合わない選択につながりかねません。
本記事では、基幹システム連携の主要な方式を一枚の表で比較し、それぞれの仕組みとメリット・デメリット、自社に合う方式の選び方、費用の目安までを整理します。製品そのものより先に「連携のやり方」の違いを軸にまとめているので、自社に合う連携方法を判断する材料としてご活用ください。
目次
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基幹システム連携の主要方式を一枚で比較
ここからは、基幹システムと他システムをつなぐ代表的な7つの方式を、リアルタイム性・実装や保守の難しさ・費用感・向く用途などの観点で横並びに整理します。まず全体像をつかんでから、次章で各方式の仕組みを詳しく見ていきましょう。
| 連携方式/比較項目 | API直接連携 | iPaaS | ETL・ELT | EAI | ファイル連携(SFTP・CSV) | DB連携 | 個別スクラッチ開発 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| リアルタイム性 | ◎即時 | ●準リアルタイム可 | ×バッチ中心 | ●即時も可 | ×バッチ | ●条件しだい | ◎要件しだい |
| 実装・保守の難度 | 中〜高(接続先ごとに個別実装) | 低〜中(GUI・ノーコード) | 低〜中 | 中(ノーコードだが設計は要) | 低(枯れた技術) | 中〜高(DB構造に依存) | 高(すべて自作) |
| 費用感 | 小〜中 | 中(月額) | 中(従量・月額) | 中〜大(要見積もり) | 小〜中 | 中 | 大(要見積もり・保守重い) |
| 障害の切り分け | 接続が増えると難しい | ハブで一元管理しやすい | 処理単位で追いやすい | ハブで管理しやすい | ファイル単位で追いやすい | DB変更の影響が波及しやすい | 実装の作り込みに依存 |
| 対応接続先の広さ | 個別実装しだい | ◎コネクタ多数 | ●DB・DWH・SaaS | ◎基幹含め多様 | ●異OS間も可 | △DB同士 | 自由(作れば対応可) |
| レガシー(API無し)対応 | ×相手のAPIが前提 | △コネクタしだい | ●DB経由で対応 | ◎DB直接取得など | ◎API不要 | ●DB直結 | ●作り込みしだい |
| 向く用途・規模 | 2〜3システムを即時でつなぐ/小〜中規模 | 多数のSaaS・基幹を自動連携/内製したい中小〜中堅 | 分析・データ集約(DWH)/横断でデータを見たい | 基幹を含む社内システムの接続/中堅〜大企業 | API無しの古い基幹・夜間バッチ・拠点間転送 | 大量データの高速処理/同一基盤内 | 特殊要件・細かい制御が必要/開発リソースがある企業 |
◎=得意・向く、●=対応可、△=条件つき、×=不向き。各評価は次章「連携方式ごとの仕組みとメリット・デメリット」で解説する各方式の技術特性にもとづきます。
この表からわかるとおり、連携方式の選択は「リアルタイム性を取るか、費用と保守の軽さを取るか」というトレードオフが軸になります。即時連携が要らない業務まで無理にリアルタイム化すると、実装・運用の負担が過剰になりがちです。次章で、各方式がなぜこの評価になるのかを仕組みから読み解いていきます。
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連携方式ごとの仕組みとメリット・デメリット
ここからは、比較表の各評価の背景を、方式ごとの仕組みから解説します。はじめに、混同されやすい「iPaaS」「EAI」「ETL」「ESB」という言葉の違いを整理してから、7つの方式を順に見ていきます。
iPaaS・EAI・ETL・ESBの違いを整理する
連携ツールの解説では、これらの用語が入り混じって使われがちです。まずはそれぞれが何を指すのかを押さえておくと、後の方式選びで迷いにくくなります。
| 用語/観点 | iPaaS(アイパース) | EAI(イーエーアイ) | ETL・ELT | ESB(イーエスビー) |
|---|---|---|---|---|
| 指すもの | クラウド上で提供される、アプリやデータを横断連携するためのセルフサービス型ツール群 | 異なるシステムやアプリを、APIやミドルウェアを使って相互に接続する取り組み・製品 | 複数のデータソースをデータウェアハウス(DWH)に集約する処理(ELTは変換とロードの順序を入れ替えた派生形) | 多数のアプリをバス型の基盤経由で統合するアーキテクチャ(設計思想) |
| 連携での位置づけ | クラウドを前提に、多数のSaaSや基幹をGUIでつなぐ「連携基盤サービス」 | 社内の基幹を含む多様なシステムをつなぐ考え方。オンプレミス由来の製品が多い | 連携というより「分析用にデータを集める」ための仕組み | 個別の方式名というより、システム同士を疎結合にする設計の考え方 |
整理すると、iPaaS・EAIは「システムをつなぐ手段」、ETL・ELTは「分析用にデータを集める手段」、ESBは「つなぎ方の設計思想」という関係です。EAIは古くからある考え方で、それをクラウドで提供したものがiPaaSに近いと捉えると、全体像がつかみやすくなります。ESBは個別の連携方式というより設計の考え方にあたるため、次からの方式比較では独立した方式としては扱いません。
出典・参考資料(4件)
- 参考資料:What is iPaaS (integration platform as a service)?|IBM(https://www.ibm.com/think/topics/ipaas)
- 参考資料:What is EAI (enterprise application integration)?|IBM(https://www.ibm.com/think/topics/enterprise-application-integration)
- 参考資料:What is ETL? (Extract Transform Load Explained)|Amazon Web Services(https://aws.amazon.com/what-is/etl/)
- 参考資料:What is an ESB?|MuleSoft(https://www.mulesoft.com/resources/esb/what-esb)
API直接連携
API直接連携は、システムが公開するAPIを通じて、アプリケーション同士を直接つなぐ方式です。多くの場合HTTP/HTTPSの通信でJSONやXML形式のデータをやり取りし、片方で起きた変更をもう片方へ即時に反映できます。
メリットは、リアルタイム性の高さと、必要なデータだけを細かく制御できる柔軟性です。一方で、接続する相手ごとに個別の実装が必要になり、つなぐシステムが増えるほど開発量と保守の負担が積み上がります。相手側のAPI仕様が変更されると連携が止まるため、継続的なメンテナンスも欠かせません。
2〜3のシステムを即時でつなぎたい小〜中規模の連携に向きます。逆に、多数のシステムを面的につなぐ用途では、後述のiPaaSやEAIのほうが保守しやすくなります。
iPaaS(クラウド連携基盤)
iPaaSは、クラウド上で提供されるセルフサービス型の連携ツール群です。あらかじめ用意されたコネクタ(接続部品)を使い、画面上でアイコンをつなぐような操作で連携フローを組み立てられます。
最大の特徴は、対応する接続先の広さと内製のしやすさです。たとえばWorkatoは14,000以上、Zapierは9,000以上、Makeは3,000以上のアプリと接続できると各社が公表しています(各社公式サイト・2026年9月時点)。ハブ経由で連携を一元管理するため、接続先が増えても保守性を保ちやすい点も利点です。
デメリットとして、月額のサブスクリプション費用がかかり、コネクタが用意されていない独自システムとの連携では追加の作り込みが必要になります。
多数のSaaSや基幹を業務フローに沿って自動連携したい企業、エンジニアが限られていても内製で進めたい中小〜中堅企業に向いています。
出典・参考資料(3件)
- 参考資料:Workato公式サイト(https://www.workato.com/)
- 参考資料:Zapier公式サイト(https://zapier.com/)
- 参考資料:Make公式サイト(https://www.make.com/en)
ETL・ELT
ETLは、複数のデータソースからデータを抽出(Extract)し、変換(Transform)してから、データウェアハウス(DWH)と呼ばれる集約先へ書き込む(Load)処理です。ELTは、この変換とロードの順序を入れ替えた派生形で、先にデータを取り込んでから変換します。
ETL・ELTの本来の目的は、業務システム間の即時連携ではなく、分析や予実の可視化のためにデータを一箇所へ集めることにあります。そのため定期的なバッチ処理が中心で、リアルタイム連携には向きません。近年はtroccoやFivetranのようなクラウド型サービスがあり、GUIで転送・変換を設定できます。
販売管理・会計・各種SaaSのデータを横断で分析したい、経営ダッシュボードにまとめたいといった用途に適しています。
出典・参考資料(3件)
- 参考資料:What is ETL?|Amazon Web Services(https://aws.amazon.com/what-is/etl/)
- 参考資料:trocco公式サイト|株式会社primeNumber(https://trocco.io/)
- 参考資料:Fivetran公式サイト(https://www.fivetran.com/)
EAI
EAIは、異なるシステムやアプリケーションを、APIやミドルウェアを介して相互に接続する取り組みや製品を指します。基幹システムは使っているプログラミング言語やOS、データ形式が異なることが多く、そのままでは互いに通信しづらいという前提に立って、あいだをつなぐ役割を担います。
代表的な製品では、ASTERIA Warpが基幹システムからクラウド、生成AIまで100種類以上の接続先にノーコードでつなげると案内しています。DataSpider Servistaも50種類以上の接続アダプタを備え、画面上のアイコン操作でデータをつなげると説明しています(いずれも各社公式・2026年9月時点)。
APIを持たないシステムに対してもDBから直接データを取得するなど、多様な接続手段を持つ点が強みです。費用は要問い合わせ型が中心で、導入・保守にあたって設計の検討も必要になります。
基幹を含む社内の多様なシステムをまとめて接続したい、レガシーな基幹も対象に含めたい中堅〜大企業に向いています。
出典・参考資料(2件)
- 参考資料:ASTERIA Warp公式サイト|アステリア株式会社(https://www.asteria.com/jp/warp/)
- 参考資料:DataSpider Servista公式サイト|株式会社セゾンテクノロジー(https://www.saison-technology.com/service/product/lineup/dataspider/)
ファイル連携(SFTP・CSV)
ファイル連携は、CSVなどの形式でデータをファイルに書き出し、SFTPなどの手段で受け渡す方式です。長く使われてきた枯れた技術で、実装のハードルが低く、異なるOSの環境間でもやり取りしやすいという特徴があります。
APIを持たない古い基幹システムでも現実的に連携できる点が最大の利点です。夜間にまとめて処理する大量データのバッチ転送にも適しています。専用のファイル連携ミドルウェアであるHULFTは、マルチOSに対応し、通信の暗号化やFIPS 140-2・PCI DSSといったセキュリティ基準への対応をうたっています(セゾンテクノロジー公式・2026年9月時点)。
一方で、ファイルを定期的にやり取りする性質上リアルタイム性は低く、転送の成否を監視する運用が欠かせません。
APIを持たないレガシー基幹との連携、拠点間・企業間での大量データの受け渡し、証跡やセキュリティが重視される場面で選ばれます。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:HULFT10公式サイト|株式会社セゾンテクノロジー(https://www.saison-technology.com/service/product/lineup/hulft-10/)
DB連携
DB連携は、システムが持つデータベース同士を直接つなぎ、データを読み書きする方式です。大量のデータを高速に処理でき、条件のつくり方によってはほぼリアルタイムでのデータ共有もできます。
ただし、データベースの構造に強く依存するため、テーブル設計の変更が連携全体に影響しやすく、アクセス権限やセキュリティの設計にも注意が必要です。基幹システムの内部構造に踏み込む連携になるため、影響範囲を見極めたうえで採用します。
同一のデータベース基盤の内側で大量データを扱うケースや、他の方式では性能が足りない場面で検討されます。
出典・参考資料(1件)
- 参考資料:What Is Data Replication?|IBM(https://www.ibm.com/think/topics/data-replication)
個別スクラッチ開発
個別スクラッチ開発は、連携の仕組みを既製のツールに頼らず、自社の要件に合わせてゼロから作り込む方式です。要件に応じて細かい制御ができ、特殊な業務ロジックにも対応できます。
反面、設計から実装、テスト、保守までをすべて自前で担うため、開発工数が大きく、費用は要件により大きく変動します。作り込んだ担当者に知識が集中しやすく、保守の属人化にもつながりやすい方式です。一般には、既製ツールを使う場合に比べて初期・保守の負担が重くなりやすい点を踏まえて判断します。
既製ツールでは実現できない特殊要件があり、かつ社内やベンダーに開発リソースを確保できる企業が対象になります。
自社に合う連携方式の選び方
方式ごとの特徴がつかめたら、自社の状況に当てはめて絞り込みます。ここでは、各方式の説明を繰り返すのではなく、判断を分けるポイントを順にたどっていきます。次の図は、以下で説明する4つの判断の流れをまとめたものです。

まず確認したいのは、つなぎたい相手のシステムがAPIを持っているかです。APIが無い古い基幹システムが対象なら、ファイル連携や、DBから直接データを取得できるEAIが現実的な選択肢になります。APIがあるなら、次の判断に進みます。
次に、連携にリアルタイム性が要るかを見極めます。受発注のように即時反映が必要な業務はAPI直接連携やEAIが向きますが、夜間にまとめて処理すれば足りる業務まで即時化すると、実装と運用の負担が過剰になります。分析のためにデータを集めたいだけなら、バッチで集約するETL・ELTが適しています。
続いて、つなぐシステムの数を確認します。2〜3システムを個別につなぐだけならAPI直接連携で足りますが、多数のSaaSや基幹を面的につなぐなら、コネクタが豊富でハブ管理できるiPaaSやEAIのほうが保守しやすくなります。
最後に、社内の開発リソースを踏まえます。エンジニアが限られるなら、GUIやノーコードで内製しやすいiPaaS・ETLが向きます。特殊な要件があり開発体制も確保できる場合に限り、個別スクラッチ開発が選択肢に入ります。この4つの分岐を順にたどると、自社が検討すべき方式が数個に絞り込めます。
たとえば、APIを持つSaaSやクラウドサービスを10種類ほど業務フローでつなぎたく、社内のエンジニアも限られる場合は、コネクタが豊富で内製しやすいiPaaSが有力な候補になります。一方、API非対応の古い基幹から夜間に大量データを会計へ渡すだけなら、ファイル連携で十分です。販売や会計のデータを横断で分析したいのであれば、ETL・ELTでデータウェアハウスに集約する方式が適しています。
連携方式別・規模別のコスト目安
費用は方式によって考え方が異なり、公開されている価格帯と、要問い合わせ型のものが混在します。ここでは公開情報から確認できる範囲で目安を示します。実際の費用は接続数や規模、カスタマイズの度合いで変わるため、導入時には見積もりで確認してください。
| 方式/費用 | iPaaS | ETL・ELT(クラウド) | EAI | API直接連携 | ファイル連携 | DB連携 | 個別スクラッチ開発 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 費用の考え方 | 月額のサブスクリプション(プラン制) | プラン制または処理量に応じた従量制 | 製品ライセンス+導入・保守(要問い合わせ型が中心) | 自社またはベンダーの開発費(接続先の数に比例) | ミドルウェアのライセンス+運用(小規模なら自作も可) | 既存DB基盤のコストに内包(別基盤接続時はミドルウェア・開発費) | 要件定義から保守までの開発費 |
| 公開されている価格帯の例 | Zapierは有料プランがProfessional 月額19.99米ドル〜、Team 月額69米ドル〜、Enterpriseは要問い合わせ(年払い時の月額表示・公式・2026年9月時点) | troccoはFree(無料)/Starter 7.5万円/Essential 15万円/Advanced 30万円(税抜・初期費用なし)、上位は要問い合わせ。Fivetranは処理行数に応じた従量制(各社公式・2026年9月時点) | ASTERIA Warp・DataSpider・HULFTはいずれも公式サイトに価格の掲載がなく、個別見積もり | 接続先の数と仕様により変動。要見積もり | 製品利用時は要見積もり。既存の仕組みで完結する場合もある | 同一基盤内で完結する場合は追加費用が小さい。別基盤との接続や専用ツール利用時は要見積もり | 要件により大きく変動し、実額は要見積もり |
クラウド系(iPaaS・クラウドETL)は公開価格が確認できますが、EAI製品と個別開発は要問い合わせ・要見積もりが中心です。金額は各社公式・2026年9月時点。
クラウド型のiPaaSやETLは、無料枠や月額数万円から小さく始められるため、初期費用を抑えて試しやすいのが特徴です。一方、EAI製品や個別スクラッチ開発は初期の作り込みと保守の比重が大きくなりやすいため、接続数や運用体制まで含めた総コストで比較することをおすすめします。
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出典・参考資料(3件)
- 参考資料:Zapier Pricing(https://zapier.com/pricing)
- 参考資料:trocco 料金プラン|株式会社primeNumber(https://primenumber.com/services/trocco/pricing/)
- 参考資料:Fivetran Pricing(https://www.fivetran.com/pricing)
連携でよくある失敗と回避のポイント
方式選びと並行して、つまずきやすい点も押さえておくと、導入後の後悔を減らせます。ここでは代表的な失敗と、その回避策を整理します。
連携の頻度・タイミングを決めずに始める。「どのデータを、どの頻度で(即時/1時間ごと/夜間バッチ)同期するか」を設計しないまま繋ぐと、データの不整合や、特定時間帯への処理集中による負荷が起きがちです。方式を決めるのと同時に、業務ごとの同期頻度を先に決めておくと安定します。
初回のデータ移行と名寄せを甘く見る。連携を始めると、既存システムごとに異なる取引先コードや商品コード、重複データが表面化します。継続的な連携の仕組みづくりだけでなく、初回に既存データの体系をそろえる名寄せの工数を見込んでおかないと、稼働直後にデータが合わない事態になります。
連携の監視とリカバリ運用を用意しない。連携は動き始めてからが本番で、通信断やデータ不備で処理が止まることがあります。停止を検知する仕組みと、止まったデータをどう再送・再処理するかの手順を決めておかないと、気づかないうちにデータが欠落します。監視や再実行の機能を、方式・ツール選定の段階から評価しておきます。
保守を属人化させる。個別開発や独自の作り込みに寄せすぎると、担当者しか手順を把握できない状態になりがちです。GUIで連携フローを可視化できるiPaaSやEAIを使う、設定やフローをドキュメント化するなど、引き継げる形を意識します。
決済・金融・バックオフィス領域の連携で押さえる論点
決済・金融・バックオフィスの基幹連携では、一般的な連携に加えて、締め処理や証跡、セキュリティといった業務要件が方式選びに影響します。代表的な場面ごとに、現実的な方式を整理します。
会計との連携。販売管理や経費のデータを会計システムへ渡す連携では、月次・日次の締め処理のタイミングにあわせたバッチ連携が中心になります。仕訳の正確さと、あとから経緯を追える証跡が重要なため、処理単位を追いやすいETLやファイル連携が扱いやすい場面が多くあります。
EDI・企業間のデータ交換。取引先とのEDIでは、相手先の環境やフォーマットに合わせる必要があり、異なるOS間でもセキュアにファイルを受け渡せるファイル連携ミドルウェアが現実解になりやすい領域です。金融領域では、通信の暗号化やPCI DSSなどのセキュリティ基準への対応が選定基準になります。
請求・債権とEC決済の連携。ECの受注・決済データを基幹の請求・債権管理へ反映する連携では、注文のたびに反映したいケースが多く、API直接連携やiPaaSが向きます。決済代行サービスやECカートが提供するAPI・コネクタに、選ぶツールが対応しているかを確認しておくとスムーズです。
あわせて、決済代行側がどのような接続方式(リンク型・トークン型・API型)を用意しているかで、基幹側とのつなぎ方も変わります。その違いは決済代行の接続方式とは?リンク型・トークン型・API型の違いと選び方で整理しています。
連携に対応した基幹システム(ERP)の選び方
連携方式の見当がついたら、次は実際のツールや基幹システムの選定に進みます。すでに基幹システムを運用していて連携ツールだけを探している場合は、選んだ方式に対応するツール(本記事で挙げたiPaaS・EAI・ETLの代表製品など)の資料を起点に、自社の基幹・繋ぎたい先に対応しているかを確認するとよいでしょう。
一方、基幹システム(ERP)そのものを刷新・見直す段階にあるなら、「連携のしやすさ」を選定軸に加えておくと、後から周辺システムを増やすときの負担を抑えられます。具体的には、APIを公開しているか、対応コネクタやアプリマーケットが充実しているか、銀行・カード・SaaSとの自動連携の範囲が広いか、といった点が着眼点です。
ここでは、こうした外部システムとの連携を主要な価値に掲げる基幹システムを取り上げます。
各サービスの詳細に入る前に、連携の観点でまとめた比較表で全体像を確認しましょう。
| サービス名 | Odoo導入・開発・業務統合支援 | freee 統合型ERP | マネーフォワード クラウドERP | Microsoft Dynamics 365 Business Central |
|---|---|---|---|---|
| 提供形態 | クラウド(SaaS)/セルフホスト(OSS版) | クラウド(SaaS) | クラウド(SaaS) | クラウド(SaaS)/オンプレミス/ハイブリッド |
| 対象企業規模 | 中小・中堅企業 | 中小・成長企業 (従業員2〜数百名) | 中堅〜上場・IPO準備企業 (従業員51名〜) | 中小・中堅企業 (従業員50〜1,000名程度) |
| 連携方式・APIの特徴 | オープンソースで独自連携を自由に作り込み可能。80以上のアプリを相互連携 | 豊富なAPIとアプリマーケット(freeeアプリストア)で周辺SaaSと連携 | 豊富なAPIで柔軟に連携。銀行・カード・電子マネーの自動連携 | Microsoft 365・Power Platform・Copilotとネイティブ連携。AppSourceでアドオン追加 |
| 主な連携先・エコシステム | EC(Magento・Shopify)・受発注システム Odooの80以上のアプリ | Salesforce・Slack Google Workspace など | 銀行・カード・電子マネー Salesforce・freee仕訳連携 | Excel・Teams・Power BI Power Automate などMicrosoft製品 |
| 料金の目安 | 月額22米ドル〜/ユーザー(12ヶ月契約時。通常28.30米ドル) 導入支援は個別見積もり | 数十万〜数百万円 (個別見積もり) | 月々2,480円〜(従業員50名以下の中小プラン) 従業員51名以上は要問合せ | Essentials 月額7,610円〜/ユーザー 実装費はパートナー見積もり |
| 業種・用途の適合 | EC・受発注と基幹の統合 業種を問わずカスタマイズ | IT・コンサル・広告など 無形商材の受託型ビジネス | 中堅〜上場のバックオフィス統合 IPO準備・内部統制 | Microsoft環境を活かす 製造業を含む中小・中堅 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※各社公式サイトの公開情報にもとづく2026年9月時点の目安です。料金・連携の対応範囲は変更される場合があるため、導入検討時に各社の最新資料でご確認ください。
つなぐ先の基幹システムそのものも、連携のしやすさだけでなく機能や料金まで含めて幅広く見比べて選びたいところです。ERP(統合基幹業務システム)の主要サービスをタイプ別に整理し、料金・機能・選び方まで解説した以下の記事も、あわせてご覧ください。
Odoo導入・開発・業務統合支援(株式会社マルウェブ)

Odooは、販売・購買・在庫・会計・CRM・ECなど80以上のアプリを相互に連携させて使う、オープンソースの統合型基幹プラットフォームです。株式会社マルウェブは、その公認導入パートナーとして、要件定義からカスタマイズ開発、外部システム連携、運用支援までを一貫して手がけます。
オープンソースであるため、自社の業務フローに合わせた独自の連携をつくり込みやすいのが特徴です。マルウェブはMagentoやShopifyといったECの導入支援も手がけており、EC・受発注システムと基幹を深くつなぐ構成を得意としています。周辺システムを柔軟に組み合わせながら基幹を整えたい中小・中堅企業に向いています。
freee 統合型ERP(freee株式会社)

クラウド会計で広く使われるfreeeが、会計・請求・工数管理・案件管理・経費・給与・人事労務を統合した基盤として提供するのが、freee 統合型ERPです。IT・コンサル・広告など、無形商材を扱う受託型ビジネスを主な対象としています。
連携の面では、豊富なAPIとアプリマーケット(freeeアプリストア)を備え、SalesforceやSlack、Google Workspaceなどとつなげられる点が強みです。既存のSaaSと組み合わせて周辺業務まで自動化したい、成長段階の中小企業に適しています。
マネーフォワード クラウドERP(株式会社マネーフォワード)

マネーフォワード クラウドERPは、会計・給与・請求・経費・債権請求・契約などのモジュールを組み合わせて導入する、中堅〜上場企業向けのクラウドERPです。必要な機能から小さく始め、段階的に広げられる設計になっています。
公式サイトでも、豊富なAPIでシステム間を柔軟に連携できる点を打ち出しています。銀行・カード・電子マネーとの自動連携や、Salesforceとの連携により、入力作業を減らせる点が特徴です。内部統制への対応も備えており、IPO準備や上場企業のバックオフィス統合に向いています。
Microsoft Dynamics 365 Business Central(日本マイクロソフト株式会社ほか)

Microsoftが中小・中堅企業向けに提供するクラウドERPが、Microsoft Dynamics 365 Business Centralです。財務・販売・購買・在庫・製造・プロジェクト管理を単一の基盤に統合し、日本語版は日本マイクロソフトの認定パートナーが提供・保守します。
最大の特徴は、Microsoft 365やPower Platform(Power BI・Power Automate・Power Apps)、Copilotとのネイティブ連携です。ExcelやTeamsからERPのデータを直接扱えるほか、AppSourceのアドオンで機能を追加しやすく、既存のMicrosoft環境と組み合わせて連携を広げやすい構成になっています。
まとめ
基幹システム連携の方式選びは、リアルタイム性と、費用・保守の軽さのトレードオフが軸になります。即時反映が必要な業務にはAPI直接連携やEAI、分析用のデータ集約にはETL・ELT、多数のシステムを内製でつなぐならiPaaSが向きます。
APIを持たない古い基幹システムには、ファイル連携やEAIが現実的な選択肢です。まずは「相手にAPIがあるか」「リアルタイム性が要るか」「つなぐ数はいくつか」「社内に開発リソースがあるか」を順に確認し、方式を数個に絞り込んでください。そのうえで、対応するツールや連携しやすい基幹システムの資料を集めて比較を進めてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 基幹システム連携とは何ですか?
A. 基幹システム連携とは、ERPや販売管理・会計などの基幹システムと、EC・CRM・BIといった周辺システムのあいだでデータを自動的にやり取りする仕組みです。手作業のCSV取り込みを置き換え、転記ミスや二重入力、属人化を防ぐことを目的とします。
実現する手段には、API直接連携・iPaaS・ETL・ELT・EAI・ファイル連携・DB連携・個別スクラッチ開発といった方式があり、リアルタイム性や費用、実装の難しさが方式ごとに異なります。
Q. iPaaS・EAI・ETLは何が違いますか?
A. 大きく分けると、iPaaSとEAIは「システム同士をつなぐ手段」、ETL・ELTは「分析用にデータを集める手段」です。EAIは社内の基幹を含む多様なシステムを接続する古くからある考え方で、それをクラウドで提供したものがiPaaSに近い位置づけになります。
ETL・ELTは、複数のデータを分析用のデータウェアハウス(DWH)へ集約する処理で、即時連携ではなく定期的なバッチ処理が中心です。用語が混在しがちですが、「つなぐ」のか「集める」のかで捉えると整理しやすくなります。
Q. APIを持たない古い基幹システムでも連携できますか?
A. 連携できます。APIが無い古い基幹システムでは、ファイル連携(SFTP・CSV)や、DBから直接データを取得できるEAIが現実的な選択肢です。ファイル連携は枯れた技術で実装のハードルが低く、異なるOSの環境間でも受け渡しできます。無理にAPI連携でつなごうとすると行き詰まりやすいため、API不要の方式を最初から候補に入れておくと現実的に進められます。
Q. リアルタイム連携は常に選んだほうがよいですか?
A. 必ずしもそうではありません。リアルタイム連携は実装・運用のコストが高く、夜間バッチで足りる業務まで即時化すると過剰投資になりがちです。受発注のように即時反映が必要な業務に絞ってリアルタイム化し、分析用のデータ集約や月次・日次の締め処理はバッチで済ませるのが基本です。まず「本当に即時性が要るのはどの業務か」を切り分けることが、費用と保守の負担を抑えるポイントになります。
Q. 連携方式の選定は、まず何から決めればよいですか?
A. 最初に「つなぎたい相手にAPIがあるか」と「どの連携に即時性が必要か」を切り分けることから始めます。APIが無ければファイル連携やEAI、即時性が要らなければETL・ELTというように、この2点で候補が絞られます。そのうえで、つなぐシステムの数(多いならiPaaSやEAI)と社内の開発リソース(限られるならGUIで内製しやすいiPaaS)を加味すると、検討すべき方式が数個に絞り込めます。
Q. 連携は内製と外注のどちらがよいですか?
A. GUIやノーコードで組めるiPaaS・ETLは内製しやすい一方、基幹側の改修やセキュリティ要件が絡む部分は外注が安全です。エンジニアが限られる組織でも、コネクタが用意された範囲であればiPaaSで内製を進められます。
ただし、基幹システムの内部構造に踏み込む連携や、特殊な業務ロジックが必要な部分は、専門のベンダーに任せたほうがリスクを抑えられます。すべてを自前で作り込むと保守が属人化しやすい点にも注意が必要です。
Q. 基幹システム連携の費用はどのくらいかかりますか?
A. クラウド型のiPaaSやETLは無料枠や月額数万円から始められる一方、EAI製品や個別スクラッチ開発は要見積もりで初期・保守の比重が大きくなります。iPaaSは月額のサブスクリプション、クラウドETLはプラン制または処理量に応じた従量制が中心です。
EAI製品(ASTERIA Warp・DataSpiderなど)や個別開発は接続数やカスタマイズの度合いで大きく変わるため、公開価格だけでなく、接続数・運用体制まで含めた総コストで比較することをおすすめします。
Q. 連携ツールを選ぶときに最も重要な確認点は何ですか?
A. 自社がつなぎたい基幹システムやSaaSに、そのツールのコネクタ・アダプタが対応しているかが最も重要です。iPaaSやEAIは対応する接続先が製品ごとに異なり、目的の基幹・決済・EC・会計サービスに対応していないと導入後に行き詰まります。契約前に、つなぎたいシステムとデータ・連携頻度を洗い出し、評価版などで実際に接続できるかを確かめておくと失敗を避けられます。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















