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基幹業務とは?業務システムとの違いや業界別の業務具体例を解説

基幹業務とは

企業経営でよく使われる「基幹業務」は、重要であることは理解されていても、具体的に何を指すのか曖昧なまま使われがちな言葉です。

しかしDXが進む現在、基幹業務とそれを支える基幹システムを正しく理解することは、企業の継続的な成長に欠かせません。基幹業務が止まることは、企業活動そのものが停止することを意味するからです。

本記事では、基幹業務の定義を整理したうえで、情報系システムとの違いや、クラウドERP・FinTechを活用した業務効率化の考え方を解説します。経営企画や情報システム部門の方が、実務判断に活かせる内容を目指します。

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基幹業務とは何か? 定義とビジネスにおける役割

基幹業務(Core Business / Mission-Critical Operations)とは、企業の経営活動において、それが停止するとビジネスそのものが成り立たなくなる、主要かつ直接的な業務のことを指します。

企業活動は多岐にわたりますが、すべての業務が「基幹」であるわけではありません。基幹業務の最大の特徴は、「売上や利益を生み出す直接的な活動」および「金銭やモノの流れを管理する活動」である点です。

一般的に、以下の4つの領域が基幹業務の代表例とされます。

1. 販売管理(Sales Management)

顧客からの受注、商品やサービスの出荷、そして売上の計上までを管理する業務です。見積もりの作成から請求書の発行までが含まれ、企業の「収入」に直結する最重要プロセスです。

2. 購買管理(Purchase Management)

原材料や商品の仕入れ、発注、検収、そして仕入先への支払い管理を行う業務です。適切なタイミングで適切なコストでモノを調達することは、利益率を確保するための生命線となります。

3. 在庫管理(Inventory Management)

仕入れた商品や原材料、製造した製品の数量や保管場所を管理する業務です。過剰在庫はキャッシュフローを悪化させ、欠品は販売機会の損失(機会損失)を招きます。適正在庫の維持は、経営効率に直結します。

4. 会計・財務管理(Financial Accounting)

企業活動の結果を数値として記録・集計し、財務諸表(貸借対照表、損益計算書など)を作成する業務です。また、資金繰りやキャッシュフロー管理といった財務戦略も含まれます。これらは企業の「血液」であるお金の流れを把握するために不可欠です。

(補足)人事給与は基幹業務か?

人事・給与管理も企業運営に不可欠ですが、定義によっては「バックオフィス業務(管理業務)」として、直接利益を生む基幹業務とは区別されることがあります。しかし、従業員への給与支払いが滞れば企業活動は停止するため、システム的には「基幹システム」と同等の高い安定性が求められる領域です。

「基幹システム」「業務システム」「情報系システム」それぞれの違い

企業のITシステムは、その役割によって大きく「基幹システム」「業務システム」「情報系システム」に分けられます。

これらの違いを理解するうえで重要なのは、システムが停止した場合に、企業活動へどの程度の影響が出るかという観点です。

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基幹システム (Mission-Critical)業務システム (Operational System)情報系システム (Information System)
主な対象業務販売、購買、在庫、会計、決済、生産など顧客管理、勤怠管理、ワークフロー、受発注管理などメール、チャット、スケジュール、掲示板、BIなど
目的業務の記録・実行・処理(Do)業務プロセスの効率化・自動化(Work Efficiently)コミュニケーション・情報共有・意思決定支援(Think)
停止時の影響甚大(経営・ビジネスが物理的に停止する)業務効率が大きく低下するが、代替手段で継続可能一時的な不便はあるが、業務自体は継続可能
データの性質高い整合性・正確性が必須(1円・1件のズレも許容不可)正確性は重要だが、基幹ほどの厳密性は求められない即時性・共有性・閲覧性が重視される
求められる稼働率限りなく100%に近い安定稼働(冗長化・即時復旧前提)高い安定性が望ましいが、短時間の停止は許容される多少のメンテナンス停止や遅延は許容される

1. 止まると「経営」が止まるのが基幹システム

「基幹業務」を直接支えるITシステムを、基幹システム(Mission-Critical System)と呼びます。

基幹システムが停止すると、注文の受付ができない、出荷や請求処理が止まる、決済や会計処理が行えないといった事態が発生します。これは単なる業務遅延ではなく、企業の経済活動そのものが停止する状態です。

そのため、基幹システムには極めて高い可用性・信頼性・セキュリティが求められ、障害が発生しないこと、また発生しても即座に復旧できることが前提となります。

2. 止まると「業務が滞る」のが業務システム

業務システムは、特定の業務プロセスを効率化・自動化するためのシステムです。
たとえば、顧客管理、勤怠管理、ワークフローなどが該当します。

これらが停止すると業務効率は大きく低下しますが、Excelや手作業などの代替手段で一時的に対応することは可能です。

業務は滞るものの、経営そのものが直ちに止まるわけではない点が、基幹システムとの大きな違いです。

3. 止まっても「業務を工夫できる」のが情報系システム

メールやチャット、グループウェアなどは情報系システムに分類されます。情報系システムが停止した場合、情報共有やコミュニケーションは不便になりますが、電話や口頭連絡などで代替することが可能です。

情報系システムは、あくまで業務効率や意思決定を支援するためのツールであり、業務そのものを実行する基盤ではありません。この点で、業務そのものを遂行する基盤である基幹システムとは、求められる要件や重要度が明確に異なります。

業界別・基幹業務の具体例

基幹業務の基本は共通していますが、業種によって「何が最もクリティカル(重要)か」は異なります。

1. 製造業の場合:生産管理が核となる

製造業においては、「販売」「購買」に加え、「生産管理(工程管理・原価計算)」が極めて重要な基幹業務となります。
「いつまでに(納期)」「どれくらいのコストで(原価)」「どのラインを使って(リソース)」製品を作るかを制御できなければ、製造業としての価値を提供できません。

2. 小売・流通業の場合:在庫と物流の最適化

小売業では、「店舗管理(POS)」や「物流管理」が基幹業務の中核を担います。数万点に及ぶSKU(在庫保管単位)をリアルタイムで管理し、店舗と倉庫の在庫を連動させる必要があります。

3. 金融・サービス業の場合:契約と請求の管理

モノを扱わないサービス業や金融業では、「プロジェクト管理」や「契約管理」が基幹業務となります。特にサブスクリプション型のビジネスでは、継続的な課金・請求管理が収益の柱となります。

基幹業務システム(ERP)の役割と最新トレンド

かつて、販売管理システム、会計システム、人事システムは、それぞれ独立したバラバラのシステムとして導入されることが一般的でした。しかし、これではデータが分断され(サイロ化)、経営判断に必要な情報をリアルタイムに把握することが困難です。

そこで主流となっているのが、これらを統合管理するERP(Enterprise Resource Planning:統合基幹業務システム)です。

1. 部分最適から全体最適へ

ERPを導入することで、「販売システムで受注入力すると、自動的に在庫が引き当てられ、会計システムに売掛金が計上される」といったデータ連携がシームレスに行われます。これにより、転記ミスがなくなり、経営者は「今、会社にいくら現金があり、いくら利益が出ているか」を即座に把握できるようになります。

2.「所有」から「利用」へ:クラウドERPの台頭

従来、基幹システムは自社サーバーに構築する「オンプレミス型」が主流でしたが、現在は「クラウド型(SaaS)」への移行が急速に進んでいます。

  • 初期費用の抑制:ハードウェア投資が不要。
  • 常に最新:法改正(インボイス制度や電子帳簿保存法など)への対応がベンダー側で行われる。
  • BCP対策:データが堅牢なデータセンターに保管されるため、災害時でも業務継続が可能。

3.「2025年の崖」とレガシーシステムからの脱却

経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」問題の核心は、老朽化した複雑な基幹システム(レガシーシステム)がDXの足かせになることです。ブラックボックス化した既存システムを刷新し、データを活用できる基盤へ移行することは、日本企業の喫緊の課題となっています。

基幹業務の効率化とDX推進のポイント

単にシステムを入れ替えるだけでは、基幹業務の改革は成功しません。重要なのは、システム刷新を機に業務プロセスそのものを見直す(BPR:ビジネスプロセス・リエンジニアリング)ことです。

1. 業務の標準化(Fit to Standard)

日本の企業は、自社の独自ルールに合わせてシステムをカスタマイズ(改修)する傾向があります。しかし、過度なカスタマイズはシステムの複雑化を招き、将来的なアップデートを困難にします。

現代のDXにおいては、システムの標準機能に業務フローを合わせる「Fit to Standard」の考え方が主流です。これにより、業界のベストプラクティスを取り入れ、業務効率を飛躍的に高めることができます。

2. FinTechとの融合による「お金の業務」の自動化

基幹業務の中で最も工数がかかり、かつミスが許されないのが「入出金消込」「経費精算」などの金銭処理です。

最新の基幹システムは、FinTech(金融テクノロジー)と深く結びついています。

  • 銀行API連携:銀行口座の入出金明細を自動で取得し、会計仕訳を自動生成する。
  • 法人カード連携:クレジットカードの利用明細を経費精算システムに自動取り込みする。
  • デジタル決済:請求書の支払いをシステム上からワンクリックで実行する(Embedded Finance)。

このように、基幹業務と金融サービスをAPIでつなぐことで、経理部門の手作業を極小化し、月次決算の早期化を実現できます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 基幹システムとERPの違いは何ですか?

A. 厳密には、基幹システムは「主要業務を支えるシステム全般」を指し、ERPは「それらを統合して一元管理するパッケージソフトウェアや概念」を指します。しかし、現在では基幹システムの多くがERPパッケージを用いて構築されているため、実務上は同義として扱われることが多くなっています。

Q2. 中小企業でも基幹システムの刷新は必要ですか?

A. はい、必要です。むしろリソースの限られる中小企業こそ、クラウドERPなどを活用して業務を自動化・効率化し、少人数で高収益を生む体質への転換が求められています。安価なSaaS型サービスの登場により、中小企業でも導入しやすくなっています。

Q3. 基幹システムのクラウド化におけるセキュリティリスクは?

A. かつては「自社にデータを置くほうが安全」と考えられていましたが、現在は専門家が24時間体制で監視する大手クラウドベンダー(AWS, Azureなど)やSaaSを利用する方が、自社管理よりもセキュリティレベルが高いケースが一般的です。ただし、アクセス権限の管理など、運用面のセキュリティ対策は自社で徹底する必要があります。

まとめ:基幹業務の高度化が企業の競争力を決める

基幹業務とは、企業が存続し利益を生み出すための「心臓部」です。販売、購買、在庫、会計といった業務が滞りなく、かつ有機的に連携して動くことで、企業は初めて健全な経営を行うことができます。

今日のビジネス環境において、基幹業務システムは単なる「記録のための道具」から、「未来を予測し、戦略を立てるための基盤」へと進化しています。レガシーシステムを刷新し、データドリブンな経営体制を構築することは、攻めの経営への転換点となるでしょう。

貴社の基幹業務は、今のビジネススピードに対応できていますか? もし、データのサイロ化や手作業の多さに課題を感じているなら、今こそシステムのあり方を見直すタイミングかもしれません。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

大阪大学経済学部卒業。都市銀行退職後に暗号資産関連スタートアップの創業メンバーとして業界調査や相場分析に従事。2018年、マネックスグループ入社。マネックスクリプトバンクでは業界調査レポート「中国におけるブロックチェーン動向(2020)」や「Blockchain Data Book 2020」などを執筆し、現在はweb3ニュースレターや調査レポート「MCB RESEARCH」などを統括。国内メディアへの寄稿も多数。2021年3月より現職。
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