決済大手のStripeが、Web3インフラへの関与を急速に深めています。Stripeは6月11日、暗号資産ウォレット基盤を開発するPrivyの買収合意を発表しました。さらにその翌日には、EコマースプラットフォームのShopify、暗号資産取引所のCoinbaseと連携し、ステーブルコインUSDCによる決済をShopify加盟店で展開することも明らかにしました。
これらの動きは、FinTechのプレイヤーがWeb3の複雑な技術を取り込み、より広範な普及を目指す潮流の表れと言えます。これらの発表が持つ意味と、決済の未来に与える影響について見ていきましょう。
※本記事の内容は、マネックスクリプトバンクが週次で配信しているニュースレター「MCB FinTechカタログ通信」の抜粋です。毎週月曜17時に配信しており、無料でご購読いただくと、FinTech・Web3の注目トピックスを解説するニュースレターに加え、注目の特集記事、ビットコイン最新動向や相場予想などもお読みいただけます。
目次
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サービス掲載を相談するUXの課題に挑む「Embedded Wallet」
今回の動きを理解する上で、まずはPrivyが提供する技術について見ていきましょう。同社が専門とするのは「Embedded Wallet(埋め込み型ウォレット)」です。
これは、Web3サービスを利用する際に、ユーザーがウォレットの存在を意識する必要がない仕組みを指します。従来のブラウザ拡張機能ウォレットとは異なり、アプリケーション内にウォレット機能が統合されており、ユーザーはEメールやSNSアカウントでログインするだけで、バックエンドでウォレットが作成されます。
Embedded Walletには、Account Abstraction(AA)という技術が用いられています。AAにより、ウォレット管理の大きなハードルであったシードフレーズの自己管理や、ガス代の都度払いといった煩雑なプロセスを、サービス提供者側で代替することが可能になります。Web2サービスに近いユーザー体験(UX)の実現を目指すアプローチです。
AAの詳細については、 Ethereum技術解説シリーズにて取り上げていますので、ぜひそちらもご覧ください。
StripeによるWeb3参入動向
StripeのWeb3関連の動きは、今回のPrivy買収、Shopify/Coinbaseとの連携が初めてではありません。約3ヶ月前となる2月4日には、ステーブルコイン決済プラットフォームを提供するスタートアップであるBridgeを買収しています。
- Bridge買収(約3ヶ月前): ステーブルコイン決済プラットフォームを獲得
- Privy買収(今回): ステーブルコイン決済に必要となるウォレット基盤を獲得
- Shopify/Coinbase連携(今回): ECでのステーブルコイン決済を展開
Bridgeについては、年間で50億ドル以上の取引を処理しており、顧客に米国務省や米国財務省、SpaceXやCoinbaseなどが含まれていると報道されていた企業です。
またPrivyについても、すでに7,500万以上のアカウントを持ち、 NFTマーケットプレイスのOpenSeaなど、著名なプロジェクトでの採用実績があります。Stripeはすでに実績のある技術基盤を取り込むことで、Web3領域への参入を加速させる狙いがあるとみられます。
ステーブルコイン決済市場の現状と勢力図
Shopifyとの連携は、ステーブルコイン決済が実世界の商取引へ拡大する一つの事例です。オンチェーン分析企業のArtemisによると、 過去2年でステーブルコインによる決済額は940億ドル以上に達し、月間決済額は20億ドル未満から63億ドル超へと成長しています。
今回の連携で採用されたUSDCは、Circle社が発行するステーブルコインです。市場では長らくTether(USDT)が圧倒的なシェアを占めていますが、USDCは規制遵守と透明性を強調することで、金融機関や大企業との連携を模索してきました。
Shopifyが34カ国でUSDC決済を導入し、マーチャント(出店者)が法定通貨で売上を受け取れるようにしたことは、国際間取引における為替リスクや送金コストといった課題への解決策となり得ます。こうしたユースケースの積み重ねが、今後のステーブルコイン市場シェアにどう影響するか注目されます。
考察
Stripeの一連の動きは、決済の「Web3化」という大きなトレンドの先駆けとなる可能性があります。Stripeは年間1.4兆ドルの決済を処理しており、これらの一部がステーブルコイン決済に代替されることは、Web3領域にとって非常に大きなインパクトがあります。
Stripeのような企業の参入が、Web3領域全体の発展にとって起爆剤となるのか、あるいは新たな寡占を生むのか。Web3および決済の未来を占う上で、その動向を慎重に見守る必要があるでしょう。
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