2026年6月1日に施行予定の改正保険業法(令和7年法律第54号)に合わせ、金融庁は関連する施行規則・監督指針等の見直しを進めています。
特に注目されているのが、比較推奨販売に関する説明類型の整理です。施行規則改正案では、説明類型が「イ又はロ」に整理され、いわゆる「ハ方式」に相当する取扱いが削除される方向が示されています。
これにより、顧客の意向に沿った選別を経ずに特定商品を提示・推奨する運用は難しくなり、意向把握~絞り込み~推奨理由の説明・記録まで、保険代理店における業務フロー全体の見直しが必要となります。
本記事では、比較推奨販売の基本から、金融庁の方針に基づくハ方式廃止の影響について解説します。また、法改正に対応し、業務効率を維持するための具体的なシステム選びについてもご紹介します。
比較推奨販売における体制整備に課題を感じている保険代理店の方は、ぜひご参考にしてください。
目次
比較推奨販売とは?保険業法における基本概念
比較推奨販売とは、複数の所属保険会社等を有する保険募集人(いわゆる乗合代理店)が、複数の保険契約を比較して説明したり、顧客の意向に沿って商品を選別した上で提示・推奨したりする募集形態を指します。
保険業法および保険業法施行規則では、顧客に対して商品を提案・推奨する基準や理由、提案契約の概要を明確に説明することが求められています。
このため保険代理店は、単に商品を羅列するのではなく、顧客のニーズを的確に把握する必要があります。また、選定した商品の特徴や、他の商品との違いを客観的に示すことが求められます。
イロハ方式の定義と違い

比較推奨販売のプロセスは、説明の粒度や商品の絞り込み方によって「イ方式」「ロ方式」「ハ方式」の3つに分類されてきました。
イ方式は、代理店が取り扱うすべての同種商品を提示し、それぞれの特徴や保険料などといった契約内容を網羅的に比較説明する手法です。顧客はすべての選択肢から選ぶことができますが、代理店側の説明負担が大きくなります。
ロ方式は、顧客の意向を事前にヒアリングし、2つ以上の比較可能な同種商品の中から、その条件に合致する商品に絞り込んで比較説明を行う手法です。提案する契約の概要や提案理由(基準)を説明することが求められますが、顧客のニーズに直結するため、納得感の高い提案が可能となります。
ハ方式は、代理店独自の提案理由や基準によって、顧客の意向に沿った選別を経ずに、特定の商品を「自社の推奨商品」として提示する手法です。顧客の個別意向による絞り込みを省略できるため、営業現場での負担が少ないという特徴がありました。
【2026年6月施行】ハ方式の廃止と金融庁の比較推奨販売方針
2025年6月6日に公布された改正保険業法(令和7年法律第54号)は、2026年6月1日に施行予定です。
これに合わせて金融庁は施行規則等の見直しを進めており、施行規則改正案では、比較推奨販売に関する説明類型が「イ又はロ」に整理され、いわゆる「ハ方式」に相当する取扱いが削除される方向が示されています。
2026年6月1日に施行予定となっている改正保険業法について、より詳しい情報を知りたい方は以下の記事もご参照ください。
ハ方式廃止の背景
ハ方式の廃止が行われる背景には、顧客本位の業務運営の徹底があります。
2024年12月に金融庁によって取りまとめられた「損害保険業等に関する制度等
ワーキング・グループ 報告書」では、乗合代理店が「便宜供与」を理由としながら、たとえば経営方針であるなどとして代理店独自の理由であるかのように装う場合があり得る点も指摘されています。
また、現行の枠組みでも理由説明を適切に行えば直ちに違法とは言い切れない一方で、顧客の意向に沿わず代理店都合で推奨する販売形態(ハ方式)は、顧客利益を勘案した誠実・公正な業務遂行の観点から適切ではない、という問題意識が示されています。
顧客の利益よりも代理店の都合が優先される販売形態は、保険業法の趣旨に反します。金融庁は、顧客の意向を無視した自社推奨を制限し、透明性の高い比較推奨販売を定着させるために制度改正を行いました。
ロ方式への移行で保険代理店に求められる対応
ハ方式の廃止に伴い、推奨を伴う提案を行う場合には、保険代理店はロ方式による比較推奨販売を行う必要があります。
特に、顧客の意向に沿って選別した保険契約の中から特定の商品を推奨する場合には、代理店都合ではなく、顧客の最善の利益を勘案した合理的かつ具体性のある基準・理由を説明し、他の商品もある旨や求めに応じて説明できる旨も伝えることが求められます。
また、顧客の意向が不明確な場合でも、顧客が特に重視すると考えられる事項を例示するなどして、可能な限り意向を把握した上で選別する運用が必要です。
このように、ロ方式による比較推奨販売を行う際は、顧客の意向を詳細に把握し、それに基づいて商品を絞り込んだ明確な根拠を記録・保存しなければなりません。
このプロセスを紙やエクセルで管理する場合、営業担当者の事務負担は増加します。意向把握の履歴や比較推奨の証跡を正確に残し、後から検証可能な状態にしておくための体制整備が求められます。
比較推奨販売の体制整備を効率化するシステム活用
厳格化される記録・保存義務に対応するためには、専用となる保険代理店システムの導入が有効です。システムを活用することで、意向把握から商品提案、記録の保管までを一括して処理できます。
システム導入によるコスト削減効果と業務効率化
システムの導入は、コンプライアンスの強化だけでなく、ペーパーレス化や点検・監査対応の効率化を通じて、郵送・印刷・保管コストやチェック工数の削減が期待できます。
ただし、削減効果は取扱件数、運用設計、監査体制、既存システムの有無などにより大きく変動するため、自社の業務量・フローに合わせて試算することが重要です。たとえば、規模の異なる2つのケースで、以下のような導入効果が期待できる可能性があります。
- 広域乗合代理店のケース: 数百名規模の募集人を抱える広域乗合代理店では、月間数千件に及ぶ意向把握書類のペーパーレス化が可能であると想定されます。郵送費や印刷代、監査部門による書類チェック工数を削減でき、大幅なコスト圧縮が見込めます。
- 地域密着型代理店のケース: 数名規模の地域密着型代理店でも、営業担当者が事務作業に取られる時間を月間数十時間削減できると想定されます。顧客との面談時間を創出し、コンプライアンスを遵守しながら営業収益の向上を図ることが可能です。
比較推奨販売に対応した保険代理店システム比較
ここからは、法改正に対応した比較推奨販売機能を持つ、代表的な保険代理店システムをご紹介します。ぜひ、自社の業務フローや規模に合わせて比較検討を行ってみてください。
| hokan® | AS-BOX | YouWill-CRM | |
|---|---|---|---|
| 提供会社 | 株式会社hokan | 株式会社アイリックコーポレーション | トラストオフィス株式会社 |
| 初期費用 | 要お問い合わせ | 30,000円〜 | 200,000円〜 |
| 月額料金 | 要お問い合わせ | 18,000円〜 | 3,000円/人(年契約)~ |
| 意向把握・比較推奨対応 | ● | ● | ● |
| 主な特徴 | 意向把握から比較推奨(ロ方式)までを標準機能で完結。共同GW連携による一元管理。 | 生損保約25社の一括検索と比較表作成に対応。 | 低コストで満期管理や意向把握の自動化を実現。 |
| 詳細情報 | 公式資料・料金詳細を見る | 詳細はこちら | 詳細はこちら |
また、以下の記事では保険代理店システムについて、選び方や機能などを詳細に解説しています。導入を検討される方は、ぜひこちらもご覧ください。
hokan®(株式会社hokan)

hokanは、適正な営業活動と監査体制を構築できるクラウド型保険代理店システムです。「hokan意向把握」という専用機能を備えており、意向確認プロセスを標準機能のみで適切に遂行できます。
顧客の当初意向に基づき、選択肢に応じた保険商品の絞り込みをシステム上で記録できます。電子署名にも対応しているため、紙の出力や原本保管が不要となり、業務の標準化とペーパーレス化を同時に実現します。
また、共同ゲートウェイから出力した契約データ(1700バイト標準フォーマット)の一括インポートにも対応しており、顧客・契約データの整備負荷を下げる運用も検討できます。
AS-BOX(株式会社アイリックコーポレーション)

AS-BOXは、生命保険・損害保険あわせて約25社(2026年1月時点)の商品を一括で検索・試算できるシステムです。 異なる保険会社の商品を統一フォーマットの比較表として作成できます。
改正保険業法に対応した意向把握機能や証跡管理機能を標準で搭載しています。 申込書連動機能により、ペーパーレスでの手続きも支援します。
| AS-BOX | |
|---|---|
| 提供会社(運営会社) | 株式会社アイリックコーポレーション |
| 主な特徴・強み | ・生保23社・損保2社の一括検索に対応 ・比較表自動作成 ・募集文書取得済み |
| 月額料金 | 18,000円~/ID |
| 初期費用 | 30,000円~ |
| 共同ゲートウェイ連携 | あり |
| 顧客管理機能 | 基本的な顧客管理機能 |
| 意向把握・業法対応 | 意向把握対応、証跡管理 |
| 満期更改管理 | 基本対応 |
| モバイル対応 | ブラウザ対応 |
| 主な利用顧客・業種 | 保険ショップ、生保中心の代理店、中小規模代理店 |
YouWill-CRM(トラストオフィス株式会社)

YouWill-CRMは、保険代理店業務に特化した顧客管理システムです。 生命保険と損害保険の契約データを一元管理し、顧客ごとの状況を可視化します。
意向把握や比較推奨、高齢者募集など、改正保険業法に対応した記録機能を標準搭載しています。 年契約の場合は月額3,000円/ユーザーから利用でき、システム導入コストを抑えたい企業に適しています。
| YouWill-CRM | |
|---|---|
| 提供会社(運営会社) | トラストオフィス株式会社 |
| 主な特徴・強み | ・最安値水準の料金 ・シンプル設計 ・サブスク型 ・必要機能網羅 |
| 月額料金 | Standard 3,000円/人、Core 2,000円/人 |
| 初期費用 | 200,000円(初期設定支援・環境整備) |
| 共同ゲートウェイ連携 | あり(契約データ自動収集) |
| 顧客管理機能 | 顧客・世帯管理、契約管理、CSV一括取込 |
| 意向把握・業法対応 | 標準装備 |
| 満期更改管理 | 自動リマインドメール、進捗管理 |
| モバイル対応 | 対応 |
| 主な利用顧客・業種 | 中小規模保険代理店、コスト重視の代理店 |
まとめ
2026年6月1日施行予定の改正保険業法に合わせ、施行規則改正案では比較推奨販売の説明類型が「イ又はロ」に整理され、いわゆるハ方式に相当する取扱いが削除される方向が示されています。
推奨を伴う提案(ロ方式)では、顧客の意向に沿った絞り込みと、合理的かつ具体性のある推奨理由の説明が重要になります。さらに、適切性を確認・検証できるよう、記録・証跡の保存期間等を社内規則で定めた上で運用することが求められます。
hokanなどの専用システムを導入することで、法対応の負担を軽減し、顧客本位の営業活動に注力することが可能です。MCB FinTechカタログでは、これらのシステムの詳細な資料を無料で請求できます。ぜひ各社の資料をご覧になって、自社に最適なシステムの比較検討を進めてください。
よくある質問(FAQ)
Q. ハ方式の廃止はいつから適用されますか?
A. 改正保険業法(令和7年法律第54号)は2026年6月1日に施行予定です。これに合わせて、施行規則改正案では比較推奨販売の説明類型が「イ又はロ」に整理され、いわゆるハ方式に相当する取扱いが削除される方向が示されています。
Q. すべての保険商品で比較推奨販売の記録が必要ですか?
A. 記録の要否は、実際の募集形態(イ方式またはロ方式)によって整理する必要があります。推奨を伴うロ方式の場合は、意向に沿った選別と推奨理由(基準)の説明が重要となるため、説明の根拠が確認できるような記録・証跡の整備が実務上不可欠です。
Q. システムを導入しない場合のリスクは何ですか?
A. 紙やエクセルでの管理は、記録の抜け漏れや紛失のリスクを伴います。また、運用が属人化しやすく、金融庁の監督指針に基づく自己点検や監査の際に、「比較推奨販売の適切性を確認・検証するための記録・証跡」を迅速に提示できないリスクが高まります。
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