毎年1月31日が提出期限となる償却資産税の申告において、申告すべき資産が計上漏れになっていることに後から気づいたり、多忙な決算対応の中で提出期限を過ぎてしまったりするケースは、中小企業の経理担当者を中心に少なくありません。
本記事では、地方税法に定められた申告義務の内容と、申告を行わなかった場合または申告漏れが生じた場合に課せられる過料・追徴課税・延滞金のリスクを具体的に解説します。あわせて、申告漏れに気づいた場合の修正申告の具体的な手順も整理します。
さらに、申告漏れを構造的に防ぐ方法として、償却資産申告書の自動作成やeLTAX連携に対応した固定資産管理システムの活用についても整理します。自社の申告体制を見直す参考にしていただければ幸いです。
目次
償却資産税の申告義務とその根拠
ここでは、償却資産税の申告義務の根拠となる法律と、申告対象となる資産の範囲を整理します。
申告義務は地方税法第383条に定められている
償却資産税は、土地・家屋以外の事業用有形固定資産(構築物・機械装置・工具器具備品など)に課される地方税であり、地方税法上の正式区分は「固定資産税(償却資産)」です。土地・家屋の固定資産税が市区町村側で評価額を計算するのに対し、償却資産は資産の所有者が自ら申告する自己申告方式となっています。
地方税法第383条は、償却資産の所有者に対し、毎年1月1日現在の保有状況について必要な事項を1月31日までに資産の所在する市区町村長(東京都23区内は東京都主税局都税事務所)に申告する義務を定めています。この義務は課税標準額が免税点(150万円未満)の場合も免除されません。免税点未満であっても申告書を提出し、市区町村が免税点に該当するかどうかを確認する仕組みとなっています。
申告の対象となる資産
申告対象となる資産は、事業の用に供することができる有形の減価償却資産です。地方税法では、構築物・機械装置・船舶・航空機・車両および運搬具・工具器具備品の6種類に区分されています。
実務上で注意が必要な点として、少額減価償却資産特例(取得価額30万円未満)を適用して会計上に一括費用化した資産も、事業の用に供されている限り償却資産税の申告対象となります。会計上の処理とは異なる論点であるため、申告漏れが発生しやすい典型的なケースの一つです。また、会計帳簿上の簿価が1円(備忘価額)になった資産であっても、事業に利用し続けている場合は引き続き申告対象です。償却資産税における評価額の最低限は取得価額の5%とされており、完全にゼロにはなりません。
償却資産税を申告しないとどうなるか
申告を行わなかった場合、または本来申告すべき資産を計上していなかった場合には、地方税法の規定にもとづき以下のペナルティが科される可能性があります。
10万円以下の過料(地方税法第386条)
正当な理由がないにもかかわらず申告を行わない場合、地方税法第386条の規定により、各市区町村の条例にもとづいて10万円以下の過料が科せられることがあります。過料は刑事罰とは区別される行政罰であり、前科にはなりません。ただし、申告義務を履行しないことに対する公法上のペナルティとして位置づけられています。
最長5年遡及での追徴課税
市区町村の調査や申告者自身の申告により、申告漏れの資産が判明した場合には、その資産が課税対象となった年度まで遡及して税額が修正されます。地方税法第17条の5第5項の規定により、遡及できる期間は最長5年度分(不正行為による場合は7年度分)です。
遡及分の税額は、次の納期限に一括で納付することが求められます。例として、2026年に2021年取得の資産の申告漏れが発覚した場合、2022年度から2026年度までの5年度分が追徴対象となる可能性があります。遡及期間が長くなるほど一括納付額が大きくなるため、申告漏れに気づいた時点での対処が追徴額の累積を抑える鍵となります。
延滞金の加算
追徴課税が行われる際、すでに納期限が経過している年度分については、地方税法第368条の規定にもとづき、不足税額に加えて延滞金が徴収されます。延滞金は納期限の翌日から日割りで加算されるため、過去年度分の遡及期間が長いほど負担が増します。延滞金の具体的な率は特例基準割合にもとづいて毎年改定されますので、詳細は申告先の市区町村窓口にご確認ください。
虚偽申告は刑事罰の対象
申告を行わない場合の過料(行政罰)とは異なり、虚偽の申告を行った場合には、地方税法第385条の規定により1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金という刑事罰の対象となります。資産の取得価額を意図的に過少申告したり、架空の資産情報を記載したりする行為がこれに該当します。
ペナルティの規模は申告漏れ資産の取得価額や遡及年度数によって大きく異なります。申告漏れに気づいた時点で自社の資産管理体制を点検することが、負担の軽減につながります。
申告漏れに気づいた場合の修正申告の方法
申告漏れや申告内容の誤りに気づいた場合は、速やかに修正申告(訂正申告)を行うことが求められます。市区町村による調査が入る前に自ら申告することで、延滞金の負担を一定程度抑えられる場合もあります。
修正申告書の書き方
修正申告では、通常の申告書と同様の様式を使用し、申告書の上部余白または備考欄に「修正」と明記したうえで提出します。修正申告の記載方法は申告内容の変更内容によって異なります。
| 変更内容 | 申告漏れ資産の追加 | 取得価額・資産情報の訂正 | 申告済み資産の除却・売却 |
|---|---|---|---|
| 対応する明細書 | 種類別明細書(増加資産・全資産用) | 種類別明細書(増加資産・全資産用) | 種類別明細書(減少資産用) |
| 記載方法 | 対象資産を明細書に記入し、摘要欄に「申告漏れ」など修正理由を記載 | 変更前の内容に抹消線を引き、欄内の下段に変更後の内容を記載 | 対象資産を記入し、摘要欄に除却・売却の理由と日付を記載 |
※上記は一般的な記載方法です。詳細は申告先の市区町村窓口にご確認ください。
提出先と申告のタイミング
修正申告書の提出先は、申告対象の資産が所在する市区町村の固定資産税担当窓口(東京都23区内は管轄の都税事務所)です。資産が複数の市区町村にまたがる場合は、資産ごとにそれぞれの市区町村に修正申告書を提出します。
修正申告のタイミングに厳密な期限は設けられていませんが、気づいた時点で速やかに申告することが延滞金や追徴課税の負担軽減につながります。特に複数年度にわたる申告漏れが発覚した場合は、事前に市区町村窓口に連絡を取り、具体的な手続きと遡及対象年度の確認を行うことが安全です。
eLTAXを使った電子申告での修正申告
修正申告は、eLTAX(地方税ポータルシステム)を利用した電子申告でも対応可能です。PCdeskなどのeLTAX対応ソフトから修正申告データを作成して送信することができます。電子申告を利用する場合は、事前にeLTAXの利用者IDの登録が必要です。なお、固定資産管理システムの中には、eLTAX対応ソフトに読み込み可能なCSVデータを出力できるものもあり、修正申告時の作業効率化に役立ちます。
固定資産管理システムで申告漏れを防ぐ
申告漏れが発生する主な原因は、取得・除却された資産の台帳への反映ミス、会計処理と償却資産税の対象資産のルールの違いを踏まえた管理の欠如、そして申告書作成作業の属人化です。固定資産管理システムを導入することで、資産の増減に連動した申告書類の自動生成が可能になり、こうした申告漏れのリスクを構造的に低減できます。
ここでは、償却資産申告書作成機能やeLTAX連携に対応した固定資産管理システム3つを比較表で整理したうえで、それぞれの特徴をご紹介します。
| サービス名 | マネーフォワード クラウド固定資産 | FAManager | 総合資産管理サービス A.S.P Neo 3.0 |
|---|---|---|---|
| 提供企業 | 株式会社マネーフォワード | 株式会社TKC | 三井住友ファイナンス&リース株式会社 |
| 償却資産申告書出力 | ● | ● | ● |
| 法人税別表16出力 | ● | ● | ● |
| eLTAX連携 | ●(PCdeskへのCSVエクスポート) | ●(e-TAX連携による電子申告) | ● |
| 対象企業規模 | 中小〜中堅企業 | 中堅・大企業、上場企業グループ | 中堅〜大手企業 |
| 提供形態 | クラウド(SaaS) | クラウド(TISC) | ASP / クラウド(プライベートデータセンター) |
| 月額費用 | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ | 資産件数に応じた月額固定料金制(要問い合わせ) |
| 詳細情報 | オンライン相談を予約 | 公式サイト | 公式サイト |
※上記は2026年5月時点の公式情報にもとづきます。実際の機能・料金については各社の公式サイトでご確認ください。
また、以下の記事では固定資産管理システムについて、選び方や主要な機能などを詳しく解説しています。導入を検討される方は、ぜひこちらもご覧ください。
【新リース会計対応】固定資産管理システムおすすめ20選を徹底比較|大企業・中小企業・個人事業主向け
Excel管理の属人化・計算ミスに加え、2027年4月からは新リース会計基準(IFRS16号相当)が強制適用され、オフバランスだったリース取引の大半がオンバランス化されます。 税制改正への追従や償却資産税申告書の作成工数も重荷となり、システ…
1. マネーフォワード クラウド固定資産(株式会社マネーフォワード)

株式会社マネーフォワードが提供する、クラウド型の固定資産管理システムです。固定資産台帳管理・減価償却計算・仕訳連携を一元的に担い、償却資産申告書(課税台帳・種類別明細書)の出力、法人税別表16の出力、eLTAX対応ソフト「PCdesk」への読み込みに対応したCSVエクスポートに対応しています。
減価残存率・価格・課税標準額の自動算出から種類別明細書への反映、2025年6月に提供開始された加速償却機能(除売却予定日の設定による償却期間短縮と自動再計算)も利用できます。マネーフォワード クラウド会計PlusとのAPI連携のほか、他社会計システムとのCSV連携にも対応しています。
2. FAManager(株式会社TKC)

株式会社TKCが提供する、中堅・大企業および上場企業グループ向けのクラウド固定資産管理システムです。2026年2月時点の公式プレスリリースで導入実績800社超が公表されています。
税務対応の面では、償却資産申告書の自動作成、法人税申告書別表16の自動作成(減価償却方法から償却超過額を自動算定)、そしてe-TAX連携による電子申告に対応しています。年次バージョンアップによる税制改正への継続対応が特徴で、2025年7月版では令和7年度税制改正・リース税制改正に対応した改定が行われています。TKC全国会に加盟する税理士・公認会計士が導入サポートに関与する体制も整備されています。
3. 総合資産管理サービス A.S.P Neo 3.0(三井住友ファイナンス&リース株式会社)

三井住友ファイナンス&リース株式会社が2004年より提供するASP/クラウド型の固定資産管理サービスで、2025年10月時点の公式サイト記載によると導入実績は約1,700社以上に上ります。大手リース会社が自社のリース資産管理・リース会計の業務知見を背景に開発しており、リース資産管理機能が標準で含まれます。
償却資産税対応の面では、法人税別表・償却資産税申告書の自動作成とeLTAX連携を標準機能として提供しています。月額費用は資産件数に応じた固定料金制で、税制改正・会計基準改正に伴うシステム改修費用は原則としてSMFL側が対応します(公式サイト記載)。顧客側での追加改修費用は原則として発生しません。
まとめ
償却資産税の申告義務は地方税法第383条に定められており、毎年1月31日までに資産所在の市区町村への申告が求められます。申告を行わなかった場合、地方税法第386条にもとづく10万円以下の過料のほか、最長5年遡及での追徴課税と延滞金の加算が課せられます。虚偽申告は刑事罰(1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)の対象となる点も留意が必要です。
申告漏れに気づいた場合は、速やかに修正申告書を作成して申告先の市区町村窓口に提出することが求められます。eLTAXを利用した電子申告でも修正申告に対応可能です。複数年度にわたる申告漏れが疑われる場合は、事前に市区町村窓口に連絡を取り、遡及対象年度と手続きを確認したうえで申告に臨むことが安全です。
毎年の申告作業を確実かつ効率的に進めるためには、固定資産管理システムの活用が有効です。償却資産申告書の自動作成機能やeLTAX連携機能を持つシステムを導入することで、申告漏れのリスクを構造的に低減できます。自社の規模や管理体制に合ったシステムを選定し、適切な申告体制を整えてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 償却資産税の申告期限はいつですか?
A. 毎年1月31日が申告期限です。地方税法第383条により、1月1日現在の保有状況を同日までに資産の所在する市区町村(東京都23区内は都税事務所)に申告します。1月31日が土日祝日にあたる場合は翌平日が期限となります。課税標準額が免税点(150万円未満)の場合でも申告義務は免除されません。
Q. 申告漏れがあった場合、何年分遡って追徴されますか?
A. 最長5年度分が遡及の上限です(地方税法第17条の5第5項)。申告漏れの資産が判明した場合、その資産が課税対象となった年度から直近年度まで、最大5年度分の固定資産税(償却資産)が追徴されます。追徴分はすでに納期限が過ぎているため、延滞金も合わせて徴収されます。なお、不正行為を伴う場合は7年度分の遡及が適用されます。
Q. 法定耐用年数を超えた資産も申告が必要ですか?
A. 事業に利用し続けている限り申告が必要です。償却資産税における評価額は毎年前年評価額×(1-減価率÷2)の算式で減少しますが、評価額の最低限は取得価額の5%とされており、法定耐用年数が経過しても評価額がゼロになることはありません。帳簿上の簿価が備忘価額1円になった資産についても、事業の用に供されている場合は申告対象です。
固定資産管理システムの料金・機能を一括チェック
MCB FinTechカタログでは、固定資産管理システムの最新資料をワンクリックで一括入手することができます。各種手数料・対応可能な形式やフォーマットの有無など、比較に必要な情報をすばやく把握できます。
MCB FinTechカタログに掲載しませんか?
MCB FinTechカタログでは、掲載企業様を募集しています。マネックスグループの金融実務ノウハウを活かした独自の評価軸と検索設計により、導入検討者が最適なサービスを効率的に発見できる法人向け比較プラットフォームです。掲載後は管理画面から料金表や導入事例を随時更新でき、常に最新の情報を訴求可能。まずは下記フォームより、お気軽にお問い合わせください。






