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固定資産の減損会計に対応したシステムの選び方と比較

固定資産の減損会計は、資産が将来にわたって生み出す収益が取得原価を大幅に下回ると見込まれる場合に、帳簿価額を回収可能価額まで引き下げる会計処理です。上場企業や一定規模以上の大企業には適用が義務付けられており、精度の高い減損テスト・仕訳生成・開示書類の作成が毎期求められます。しかし減損の兆候把握から割引キャッシュ・フロー(DCF)計算、仕訳起票まで手作業で対応しようとすると、工数と誤謬リスクの両面で経理部門への負荷が重くなりがちです。

本記事では、固定資産の減損会計に対応した管理システムの選び方と、実際に比較検討する際に役立つポイントを解説します。あわせて、減損会計機能を備えた代表的なシステム5製品の機能・特徴を比較表形式で紹介しているので、導入検討の出発点としてお役立てください。

記事後半には自社の状況に合ったシステムを絞り込める診断ウィジェットと比較表を用意しています。企業規模や必要な会計基準、既存システムとの連携要件など、条件を入力するだけで候補を素早く特定できます。

この記事を読むとわかること
  • 固定資産の減損会計の基本概念と4ステップの処理フロー
  • 手作業処理の限界と、システム化で解決できる課題
  • 減損会計対応システムを選ぶ際の3つの判断ポイント
  • 主要システム5製品の機能・特徴・対象規模の比較
  • 自社の条件に合ったシステムの探し方
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固定資産の減損会計とは

減損会計の目的と対象資産

減損会計とは、企業が保有する固定資産について、その資産から期待される将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回ると判断された場合に、帳簿価額を回収可能価額まで切り下げる会計処理のことです。日本では2005年4月1日以降に開始する事業年度から強制適用されており(2004年4月1日以降開始事業年度からは早期適用が認められていました)、企業会計基準第17号「固定資産の減損に係る会計基準」がその根拠となっています。

減損会計の対象となるのは、事業用の有形固定資産(建物・機械・設備など)や無形固定資産(ソフトウェア・特許権など)です。遊休資産や処分予定資産も対象に含まれます。一方で、棚卸資産や金融資産など他の会計基準によって評価される資産は対象外となります。

減損処理の4つのステップ

減損処理は、以下の4つのステップで進みます。各ステップの判断基準と処理内容を正確に把握しておくことが、システム選定においても重要になります。

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ステップ① 減損の兆候の把握② 減損損失の認識③ 回収可能価額の測定④ 減損損失の計上・仕訳生成
判断基準営業損益の継続的なマイナス、資産の市場価値の著しい下落、経営環境の著しい悪化など割引前将来キャッシュ・フローの合計が帳簿価額を下回る場合正味売却価額と使用価値のいずれか高い方帳簿価額 – 回収可能価額 = 減損損失額
処理内容各資産または資産グループに減損の兆候があるかを定期的に確認する兆候あり資産に対し、割引前CFを見積もり、帳簿価額と比較する割引率(加重平均資本コストを参考)を用いたDCF計算で使用価値を算定する減損損失を特別損失として計上し、各台帳の帳簿価額を修正する。翌期以降の償却計算も修正
実務上のポイント対象資産の絞り込みが鍵。見落とし防止のためシステムでのリスト管理が有効CFの見積りには事業計画との整合性が求められる。過年度データの参照が不可欠DCF計算は複雑で誤謬が生じやすい。システムによる自動算定で精度が向上する複数台帳(日本基準・IFRS・税務)が並走する場合、各台帳への自動反映が求められる

IFRSを適用している企業はIAS第36号「資産の減損」に従った処理が必要です。日本基準と異なり、IFRSでは「減損損失の戻し入れ」が認められており、翌期以降の回収可能価額の回復が確認された場合に損失の一部または全部を戻し入れる処理が求められます。IFRS適用企業では、IAS第36号への対応可否がシステム選定の可否に直結します。

固定資産管理システムで減損処理を自動化するメリット

手作業による処理の限界と属人化リスク

規模が大きくなるほど、固定資産の数は数千〜数万件に及びます。減損の兆候チェックを手作業でリスト管理し、エクセルでDCF計算を行い、その結果を会計システムに手で入力するという一連の作業は、時間的なコストだけでなく計算ミスや転記漏れのリスクを内包しています。また、こうした専門性の高い業務が特定の担当者に集中しやすく、担当者の異動や退職が業務継続性のリスクになる点も見逃せません。

システム化で実現できること

固定資産管理システムに減損会計機能を持たせることで、業務の効率化と精度向上が期待できます。減損の兆候に該当する資産の自動抽出によってチェック漏れを防ぎ、DCF計算の自動化によって担当者の計算負荷と誤謬リスクを低減できます。減損損失が確定すれば会計仕訳が自動生成され、複数台帳(会計用・税務用・IFRS用など)への反映も一括処理されるため、次期以降の減価償却計算も正確に継続されます。

減損会計対応システムを選ぶ3つのポイント

① 減損処理フロー(兆候→認識→測定→仕訳)を一貫してカバーするか

減損処理の4ステップのうち、どこまでシステムがサポートするかは製品によって異なります。兆候チェックや簡易的な判定ツールのみを提供するシステムもあれば、DCF計算から仕訳生成・台帳修正までを一気通貫で処理できるシステムもあります。

できれば、兆候のリスト管理から減損損失の計上・翌期以降の償却再計算まで、すべてのステップを1つのシステム内で完結させられるものを選ぶと、工程間のデータの引き渡しによるミスを防ぎやすくなります。

② IFRS・複数帳簿への対応範囲を確認する

連結財務諸表でIFRSを採用している上場企業、または今後IFRSへの切り替えを視野に入れている企業は、IAS第36号に準拠した減損処理(損失の戻し入れを含む)に対応しているかどうかを必ず確認してください。

また、会計用・税務用・IFRS用・管理会計用など複数の台帳を並行管理する場合、台帳ごとに異なる償却基準での計算結果を個別に保持できる仕組みが必要です。台帳数や対応会計基準の種類は、製品によって「最大2台帳」から「最大6台帳」まで幅があるため、自社の複数帳簿管理の要件と照らし合わせて選定してください。

③ 既存の会計・ERPシステムとシームレスに連携できるか

固定資産管理システムは会計システムや基幹ERPと密接に連携しながら運用されます。減損損失の仕訳データを連携する際、リアルタイムのAPI連携で自動転送できるか、CSVによる手動インポートが必要かによって作業工数と誤謬リスクが変わります。

ERP統合型の製品であれば同一基盤内で連携が完結しますが、単体のSaaS型製品では連携先システムごとに個別の設定が必要になる場合があります。既存の基幹システムとの連携方式は、選定の段階で各社に確認してください。

【比較表】減損会計に対応した固定資産管理システム

以下は、減損会計機能を有する代表的な固定資産管理システム5製品の比較表です。各製品の提供形態・対象規模・主要機能の対応状況を一覧で確認できます。

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サービス名マネーフォワード クラウド固定資産ProPlus 固定資産システムFAManagerOBIC7 固定資産管理システムPROACTIVE 固定資産管理
提供会社株式会社マネーフォワード株式会社プロシップ株式会社TKC株式会社オービックSCSK株式会社
対象規模中小〜中堅企業大企業・上場企業中堅・大企業・上場グループ大企業〜中堅企業中堅〜大企業
提供形態クラウド(SaaS)オンプレ / IaaS / SaaSクラウド(TISC)クラウド(ERP統合型)ERP統合型(クラウド対応)
減損会計対応(公式に明示記述なし)(専用モジュール・減損戻入対応)(標準機能として搭載)(ERP統合・仕訳まで一体)(減損損失の戻し入れ含む)
IFRS対応×(非対応)(IFRS16含む・最大6帳簿)(日本基準とのダブルスタンダード)(コンポーネントアカウンティング対応)
新リース会計基準対応(別製品クラウドリース会計で対応)(2026年夏以降本機能搭載予定)(公式に明示記述なし)(公式に明示記述なし)
複数帳簿管理(会計・税務台帳)(最大6帳簿)(6基準の台帳並行管理)(5種類の償却費管理)
料金要問い合わせ要問い合わせ要問い合わせ要問い合わせ要問い合わせ
詳細情報オンライン相談を予約公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト

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各システムの特徴

マネーフォワード クラウド固定資産

マネーフォワード クラウド固定資産

株式会社マネーフォワード(東証プライム上場)が提供するクラウド型の固定資産管理システムです。固定資産台帳の登録・管理から減価償却の自動計算、法人税別表16・償却資産申告書の出力、eLTAX電子申告向けデータエクスポートまでを一元処理できます。2025年6月には「加速償却機能」を提供開始し、除売却予定日を設定するだけで再計算と仕訳作成を自動化できるようになりました。マネーフォワード クラウド会計PlusとのAPI連携による1クリック仕訳連携も強みで、他社会計システムとはCSV連携に対応します。

ただし、公式サイト(2026年4月21日時点)では減損会計処理に関する具体的な機能記述は確認できませんでした。中小〜中堅企業の固定資産管理・税務申告業務を中心に対応する設計となっており、減損会計処理が必須要件の場合は導入前に公式での確認が必要です。

ProPlus 固定資産システム

ProPlus 固定資産システム

株式会社プロシップ(東証プライム上場)が提供する固定資産管理の専業パッケージです。1994年の販売開始以来、固定資産領域に特化した開発を継続しており、シリーズ累計5,500社以上の導入実績を持ちます(公式サイト記載、時点明記なし)。1資産に対して最大6帳簿(財務会計・税務・IFRS・管理会計等)を同時管理できる設計が特徴で、IFRS第16号(リース会計)および減損会計(IFRS基準での戻し入れ処理を含む)に標準対応しています。

IFRS早期適用済み(270社)と早期適用表明済み(11社)の合計281社のうち、86社がProPlusユーザーです(東証HP 2024年5月時点、公式サイト記載)。固定資産システム・リース資産管理・減損会計・建設仮勘定管理を含む「ProPlus Fixed Assets Suite」として包括的な固定資産管理ソリューションを提供しており、24ヶ国の固定資産税務への対応や海外グループ法人への展開も可能です。

FAManager

FAManager

株式会社TKC(東証プライム上場)が2015年より提供しているクラウド型の固定資産管理システムです。導入実績は800社超(TKC公式プレスリリース 2026年2月25日付)で、中堅・大企業および上場企業グループの連結会計ニーズを中心にサービスを提供しています。減損会計・リース会計(IFRS第16号対応含む)・資産除去債務の3つをいずれも標準機能として搭載しており、別途オプション購入なしで利用できます。

法人税申告書別表16の自動作成やe-TAX償却資産との連携による電子申告、年次バージョンアップによる税制改正対応(2025年7月版で令和7年度税制改正に対応)も特徴です。新リース会計基準(2027年4月以降開始事業年度に強制適用)については、2025年1月版で影響額試算ツールを提供開始し、2026年夏以降に使用権資産・リース負債の登録や自動算定機能を順次搭載予定です。TKC全国会に加盟する税理士・公認会計士が導入・運用をサポートする体制を備えています。

OBIC7 固定資産管理システム

OBIC7 固定資産管理システム

株式会社オービック(東証プライム上場)が提供する統合業務ソフトウェア「OBIC7」に含まれる固定資産管理モジュールです。取得・分割・売却・除却・移動・休止・減損・資産除去債務などの異動処理から減価償却計算・税務申告書作成(法人税別表十六・固定資産税申告書)までを一体で扱えます。6種類の償却基準を並行管理できる設計で、日本基準とIFRSのダブルスタンダードに対応しています。

会計情報ソリューションの一部としてERPと同一基盤で動くため、減損処理の結果が仕訳データとして会計システムへ自動連携されます。オプションでリース資産管理・建設仮勘定管理にも対応し、現物管理機能(付帯写真・契約書類・棚卸チェックリスト等)も備えています。OBIC7シリーズ全体でシリーズ累計28,000社超の導入実績があります(時点の明示なし、公式サイト記載)。主な対象は大企業〜中堅企業で、連結会計やIFRS対応を要する上場企業での採用実績を持ちます。

PROACTIVE 固定資産管理

PROACTIVE 固定資産管理

住友商事グループのSCSK株式会社が提供する国産ERP「PROACTIVE(プロアクティブ)」に内包される固定資産管理モジュールです。ERPシリーズ全体で7,500社超の導入実績(2026年4月時点、公式サイト記載)を持ちます。固定資産のライフサイクル全般(取得申請・資本的支出・除売却・建設仮勘定・減価償却・減損会計・資産除去債務)をカバーし、処理結果が財務会計モジュールへ自動仕訳連携されます。

会計用・管理用・税務用を含む5種類の償却費を並行管理でき、IFRSのコンポーネントアカウンティング(構成要素ごとの減価償却)にも対応しています。最大50期分の減価償却シミュレーション機能も備えており、長期的な設備投資計画の策定に活用できます。クラウド版「ProActive C4」はサブスクリプションモデルで提供されており、SaaS形式での導入も可能(最短約3ヶ月の導入期間に対応)です。

まとめ

固定資産の減損会計対応システムを選ぶ際は、「減損処理フローの一気通貫対応」「IFRS・複数帳簿への対応範囲」「既存システムとの連携方式」の3点が主要な判断軸になります。中小〜中堅企業で日本基準の税務申告まで対応するクラウドSaaS型を求める場合と、上場企業グループでIFRS・減損・新リース会計基準への包括対応を重視する場合では、適切な製品の選択肢が異なります。

ERP統合型のOBIC7・PROACTIVE・専業パッケージのProPlusは、IFRSや複数帳簿管理など大企業・上場企業が求める要件に対応しています。TKCのFAManagerは減損・リース・資産除去債務を標準搭載しており、新リース会計基準への対応機能も2026年夏以降に順次搭載予定です。マネーフォワード クラウド固定資産は中小〜中堅規模での基本的な固定資産管理・税務申告業務に適しているものの、減損会計処理の対応可否については導入前の確認が必要です。

各システムの料金はいずれも非公開で、企業規模・導入モジュール・サポート内容によって変動します。比較検討の際は、各社への問い合わせと並行して、固定資産管理システムの選定ポイントを横断的に整理した解説記事もあわせてご覧ください。

よくある質問

固定資産管理システムで減損処理まで対応できますか?

製品によります。減損会計機能を標準搭載しているシステム(FAManager・ProPlus・OBIC7・PROACTIVEなど)では、減損の兆候チェックから損失計上・台帳修正・翌期以降の償却再計算まで一括処理できます。一方、基本的な固定資産台帳管理と税務申告書作成に特化したシステムでは、減損会計機能が含まれていない場合もあります。導入前に減損処理の具体的な対応範囲を確認することをお勧めします。

中小企業でも減損会計対応システムは必要ですか?

減損会計の適用義務は、金融商品取引法の適用を受ける上場企業や、会社法の大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)が中心です。中小企業については「中小企業会計に関する指針」に基づき任意適用となっており、義務ではありません。ただし、将来の上場準備や金融機関への財務報告の信頼性向上を目的として、中小企業段階から減損会計に対応できる環境を整えておくという選択肢もあります。自社の将来計画も踏まえて判断してください。

減損会計対応システムの費用はどのくらいかかりますか?

本記事で紹介した5製品はいずれも公式サイトに価格の明示がなく、企業規模・対象資産数・導入モジュール・サポートプランなどにより個別見積りとなります。ERP統合型の製品はオンプレミス型で初期費用が高額になる傾向があります(参考: SuperStream-NXのオンプレミスBase User Licenceは5ユーザーで400万円〜との情報あり)。FAManagerやPROACTIVEのクラウド版はサブスクリプション形式での利用が可能ですが、具体的な費用は各社への問い合わせが必要です。複数社への見積もり依頼と、自社の要件整理を並行して進めることをお勧めします。

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