個人事業主として事業用の設備や機器を購入した際、減価償却の計算や償却資産税の申告書作成に多くの時間を割いていませんか。会計ソフトとは別にExcelで固定資産台帳を管理している方も少なくなく、転記ミスや耐用年数の設定誤りが申告漏れにつながるリスクがあります。
本記事では、個人事業主・フリーランスが固定資産管理を効率化するためのクラウドソフト・システムの選び方を解説します。150万円の免税点と申告要否の判定基準、会計ソフト内蔵型と専用システムの機能差について整理します。
また、個人事業主プランを備えたクラウドサービスや、資産件数の増加に対応できる専用システムについても比較してご紹介します。
目次
個人事業主に固定資産管理システムが必要な理由
減価償却と償却資産税の申告義務
個人事業主が事業の用に供している有形の減価償却資産(器具・備品、機械・装置、構築物など)は、毎年1月1日時点の保有状況に基づき、償却資産税(固定資産税の一種)の課税対象となります。法人と同様に、個人事業主も毎年1月31日までに、各資産の所在地を管轄する市区町村に申告書(第26号様式)を提出する義務があります(地方税法第383条)。
この申告を怠ると、地方税法第386条および各市町村の条例に基づき10万円以下の過料が科される場合があります。事業規模が小さいからといって申告義務が免除されるわけではなく、開業したばかりのフリーランスが業務用のパソコンや撮影機材を購入した場合も、申告対象となり得ます。
150万円の免税点と申告省略の条件
地方税法第351条の規定により、課税標準額(各資産の評価額合計)が150万円未満の場合は固定資産税(償却資産税)が課税されません。ただし、免税点未満であっても申告書の提出義務は免除されないため、毎年1月31日までの申告は必要です。
課税標準額が150万円を超えると、固定資産税の計算対象となり、各市区町村が税率(標準税率1.4%)を乗じて税額を算出します。正確な評価額を把握するためにも、資産ごとの取得価額・耐用年数・償却残存率を管理できるシステムの活用が有効です。
青色申告の少額減価償却資産特例との関係で注意すべき点
青色申告をしている個人事業主は、「少額減価償却資産の特例」(租税特別措置法第28条の2)により、取得価額40万円未満の資産を取得した年に全額費用計上できます(令和8年度税制改正により2026年4月1日以後の取得分から適用。2026年3月31日以前の取得分は30万円未満)。しかし、この特例はあくまで所得税上の取り扱いであり、市区町村への償却資産税(地方税)には適用されません。
したがって、少額減価償却資産特例を適用して一括損金算入した場合でも、償却資産税の申告においては資産として計上し、評価額を算出する必要があります。この「所得税と地方税での取り扱いの違い」を見落とすと、申告漏れのリスクが生じます。クラウドソフトを活用することで、このような取り扱いの違いを踏まえた台帳管理が正確に行えます。
個人事業主向け固定資産管理システムの選び方
固定資産管理ソフトの選択肢は、個人事業主の資産規模と申告ニーズによって大きく異なります。以下の3つのポイントを確認することで、自社に合ったシステムを絞り込むことができます。
個人事業主向けプランが用意されているかを確認する
固定資産管理専用のシステムは主に法人・中小企業向けに設計されているものが多く、個人事業主プランを提供していないサービスも存在します。管理する資産件数が10〜30件程度の段階では、高機能な専用システムよりも、会計ソフトに内蔵された固定資産台帳機能で十分なケースが多くあります。
料金面でも、法人向け専用システムは月額数万円以上になる場合があり、個人事業主には費用対効果が合わないことがあります。個人事業主向けプラン(年払い月額1,000〜3,000円程度)を提供しているクラウド会計ソフトを選択肢として比較することが重要です。
会計ソフト内蔵型か専用システムかを見極める
個人事業主が固定資産管理に使えるソフトは、大きく2種類に分かれます。以下の比較を参考に、自社の状況に合った選択肢を検討してください。
| 提供形態 / 比較項目 | 特徴 | 月額費用の目安 | 向いている事業者 |
|---|---|---|---|
| 会計ソフト内蔵型 | 減価償却仕訳が会計帳簿と自動連動。確定申告・消費税・固定資産を一元管理できる | 個人向け: 年払い月額1,000〜3,000円程度 | 資産件数が少なく、会計ソフトと一元化したい個人事業主・小規模事業者 |
| 専用システム型 | 複数台帳管理・eLTAX電子申告・現物管理など高度機能に特化。大量資産の管理に強い | 法人向け: 数万円〜(要問い合わせが多い) | 資産件数が多い、複数台帳管理や償却資産電子申告が必要な中小企業・成長期の事業者 |
償却資産申告書の作成と出力に対応しているかを確認する
選定時に確認すべき重要な機能のひとつが、償却資産申告書の出力対応です。各市区町村への提出が求められる「第26号様式(申告書)」「種類別明細書(増加・減少・全資産用)」の出力に対応しているかを確認します。
電子申告(eLTAX)への対応も比較ポイントになります。eLTAX経由で申告を行うと、複数の市区町村への一括申告が可能になり、事務負担を大幅に削減できます。クラウドサービスによっては、申告書用データのCSVエクスポートまで対応しているものの、eLTAX対応ソフト(PCdeskなど)への読み込みは別途必要なケースもあります。導入前に対応範囲を確認することが求められます。
個人事業主に対応した固定資産管理ソフト・システムの比較
会計ソフト内蔵型と専用システム型、それぞれの代表的なクラウドサービスを以下の比較表に示します。自社の資産規模と申告要件に合わせて選択してください。
| サービス名 / 比較項目 | freee会計(個人事業主向けプラン) | マネーフォワード クラウド固定資産 |
|---|---|---|
| 提供会社 | フリー株式会社 | 株式会社マネーフォワード |
| 提供形態 | クラウド会計ソフト(固定資産台帳内蔵) | クラウド固定資産管理専用システム |
| 個人事業主プラン | ● | △(主に法人・中小企業向け。詳細は要問い合わせ) |
| 月額費用(年払い) | 980円〜(スターター) | 要問い合わせ |
| 固定資産台帳 | ● | ● |
| 減価償却自動計算・仕訳連動 | ● | ● |
| 償却資産申告書出力 | △(別表16等の出力・申告書転記用データの出力に対応) | ◎(申告書・種類別明細書の出力・eLTAX連携対応) |
| 無料トライアル | 30日間 | 公式サイトに記載なし |
| 詳細情報 | 公式サイト | ミーティングを予約する |
また、以下の記事では固定資産管理システムについて、選び方や機能などを詳細に解説しています。導入を検討される方は、ぜひこちらもご覧ください。
【新リース会計対応】固定資産管理システムおすすめ20選を徹底比較|大企業・中小企業・個人事業主向け
Excel管理の属人化・計算ミスに加え、2027年4月からは新リース会計基準(IFRS16号相当)が強制適用され、オフバランスだったリース取引の大半がオンバランス化されます。 税制改正への追従や償却資産税申告書の作成工数も重荷となり、システ…
1. freee会計(フリー株式会社)

フリー株式会社が提供するクラウド型の会計ソフトで、個人事業主から中小企業・上場企業まで幅広いプランを用意しています。固定資産管理は会計ソフト本体に内蔵された「固定資産台帳」機能として提供されており、減価償却費の自動計算から仕訳の自動生成までを会計帳簿と一体で処理できます。
個人事業主向けプランは年払い月額980円〜(スターター)から利用でき、30日間の無料トライアルが用意されています。銀行口座やクレジットカードとの自動連携(1,000以上のサービス対応)により、固定資産の取得にかかる支払いデータを会計帳簿に取り込みやすい構成です。固定資産登録時にはAIによる資産分類・償却方法の自動推測機能が働き、入力工数の削減が期待できます。
2026年春には、新リース会計基準(2027年4月1日以降開始事業年度から強制適用)に対応した新プロダクト「freee固定資産」の提供も予定されており、将来的な機能拡充が発表されています(2025年9月11日プレスリリース)。
2. マネーフォワード クラウド固定資産(株式会社マネーフォワード)

株式会社マネーフォワードが提供するクラウド型の固定資産管理専用システムです。固定資産台帳の登録・管理、減価償却の自動計算、法人税別表16および償却資産申告書の出力、eLTAX対応ソフト「PCdesk」への連携まで一元的に担う専用システムとして設計されています。
複数台帳の並行運用(会計用台帳と税務用台帳の分離管理)や、加速償却機能(除売却予定日を設定することで償却期間を短縮し再計算・仕訳作成を自動化、2025年6月提供開始)など、専用システムならではの機能が充実しています。SOC1 Type2報告書の提供など内部統制対応機能も備えており、事業の成長に伴い資産件数が増加した段階での移行先として検討できます。
料金は要問い合わせとなっており、主に法人・中小企業を対象とした設計です。個人事業主が導入を検討する場合は、まずオンラインでの導入相談から確認することが推奨されます。
まとめ
個人事業主の固定資産管理では、毎年1月31日までの償却資産申告の義務と、150万円の免税点を正確に把握した上で、適切なシステムを選択することが重要です。青色申告の少額減価償却資産特例と償却資産税の取り扱いの違いも、申告漏れを防ぐ上で注意が必要な観点です。
事業規模が小さく管理する資産件数が少ない段階では、会計・確定申告・固定資産を一元化できるクラウド会計ソフトが運用コストを抑えやすい選択肢です。一方、資産件数の増加や複雑な償却計算が必要になった段階では、専用システムへの移行も選択肢になります。
各サービスの詳細機能・料金の最新情報は公式サイトで確認し、自社の資産規模と申告要件に合ったサービスを選択してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 個人事業主が固定資産管理ソフトを使う必要はありますか?
事業用の減価償却資産を複数保有する場合、固定資産管理ソフトの活用が申告ミスの防止に有効です。課税標準額の合計が150万円未満であれば固定資産税の納税義務は生じませんが、申告書の提出義務は残ります。Excelのみでの管理では耐用年数や償却残存率の計算誤りが生じやすく、クラウドソフトによる自動計算で正確性を高めることが重要です。
Q. 青色申告の少額減価償却資産特例を使えば、償却資産申告は不要になりますか?
不要にはなりません。青色申告の少額減価償却資産特例(現行は取得価額40万円未満。2026年3月31日以前の取得分は30万円未満の基準が適用)は所得税上の取り扱いであり、市区町村に申告する償却資産税(地方税)には適用されません。所得税で費用計上済みの資産であっても、市区町村への償却資産申告書の提出は必要な点に注意が必要です(地方税法第383条)。
Q. 会計ソフトの固定資産台帳機能で、償却資産申告書を直接出力できますか?
サービスによって対応範囲が異なります。会計ソフト内蔵の固定資産台帳機能は、申告書作成に必要なデータの出力や法人税別表16への対応が含まれますが、市区町村様式の申告書を直接出力する機能が限定的な場合があります。一方、固定資産管理専用システムは、「償却資産申告書(種類別明細書含む)」の出力とeLTAX電子申告データのエクスポートに対応していることが多く、複数市区町村への一括申告にも対応しやすい構成です。導入前に公式サイトや問い合わせで対応範囲を確認することを推奨します。
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