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チャージバック対策とは|加盟店の負担額の内訳と、3-Dセキュア・不正検知・保証の選び方(2025年3月末義務化対応)

チャージバック対策とは?のサムネイル画像

チャージバックの通知が立て続けに届いた場面で、まず読者が知りたいのは「結局いくら私(加盟店)が払うのか」という損失額の全体像です。原則は加盟店負担で、商品代金の売上取消に加えて、送料や決済手数料も戻ってこないケースが一般的です。ただし本人認証サービス(EMV 3-Dセキュア、以下 3DS)を通した取引であれば、いわゆるライアビリティシフトが適用され、加盟店が金銭的な責任を負わずに済みます。

本記事では、加盟店負担の金額の内訳、発生パターン別の負担の線引き、対策の4本柱(EMV 3-Dセキュア/セキュリティコード/不正検知サービス/チャージバック保証)と運用の使い分けを整理します。

あわせて、2025年3月末の EMV 3-Dセキュア原則義務化の実務要件、Visa/Mastercard のモニタリング制度、既に発生した案件で反証(異議申立て/Representment)が可能かどうかまで、経済産業省ガイドラインや日本クレジット協会の一次統計、カードブランド公式ドキュメントに沿って解説します。

対策の実装は、3DS 対応の決済代行や不正検知サービスの選定と、既発生案件の反証相談を並行して進めるかたちが自然な流れになります。記事末尾で主要な決済代行を比較し、資料の一括ダウンロードもご利用いただけます。

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加盟店はいくら払うのか|損失の内訳表

まず一言で|「原則加盟店負担、ただし 3DS 認証済みならライアビリティシフトで負担が移る」

不正利用や商品未着などを理由にカード名義人がカード会社へ支払いを拒否した場合、その返金原資は加盟店契約に基づいて加盟店が負担するのが原則です。加盟店契約上、決済代行が加盟店に支払った売上代金は、チャージバックが確定した時点で遡及的に効力を失い、加盟店が返金する義務を負います。主要な決済代行の加盟店利用規約でも、以下のような条項が典型的に定められています。

販売契約が解除、取消し、無効等の理由により効力を失った場合(提携事業者が定めるチャージバック事由に該当する場合を含みます。)、その他当社が加盟店に対して合理的な理由を示した場合、債権譲渡契約は直ちにかつ遡及的に効力を失うものとし、加盟店は、直ちに当該販売契約に関連して当社が加盟店に対して支払った金額を返金しなければなりません。この場合、当社は、当社の裁量で当該返金の額を、加盟店に対して支払われるべき金額から控除することができるものとします。

PAY.JP 加盟店利用規約 第7条第9項(PAY 株式会社)

ただしこの原則には、本人認証を通した取引に限って加盟店の負担が免除される仕組みがあります。EMV 3-Dセキュア(3DS 2.0)を通した取引で不正利用が生じてチャージバックとなった場合、ライアビリティシフトが働き、金銭的な責任はカード発行会社(イシュアー)に移ります。決済代行公式の記述でも、この分岐が明示されています。

チャージバックで取り消された売上は、クレジットカード利用者さまの本人確認がされていない場合は加盟店さまが支払い、本人確認ができている場合はクレジットカード会社が支払うことになります。

万一、本人認証サービス(3Dセキュア)を導入していて不正利用が発生した場合は、チャージバックによる損失をEC事業者さまが負担する必要はありません。原則、クレジットカード会社の負担となります。

SBペイメントサービス「チャージバックとは?」

損失の内訳表(項目×加盟店負担可否×金額感)

チャージバックが確定したときに加盟店が実際に失うものは、売上取消となる商品代金だけではありません。送料や決済手数料の扱い、決済代行が徴収するチャージバック手数料、そしてカードブランドのモニタリング制度に該当した場合の追加費用まで含めて全体像を掴む必要があります。次の表は、5項目それぞれについて負担の有無と金額感を1枚に整理したものです。

チャージバック発生時に加盟店が失うもの(項目別)

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項目商品代金(売上取消)送料・配送コスト決済手数料チャージバック手数料モニタリング制度罰金
加盟店負担◎(原則負担)◎(負担)○(一般的に返還されない)△(発生するケースあり)△(閾値超過時のみ)
金額感・条件チャージバック確定額の全額。既発送商品も原則戻ってこない加盟店側で計上済みの実費。売上取消と一緒に失う決済代行との契約による。多くの決済代行で取消時に返還しない運用1件あたりの相場は各決済代行が非公表。加盟店契約書で確認Visa VAMP/Mastercard ECM の閾値を超えた月次課金。月額数千〜数万米ドル規模

読者が金額を掴みにくい2項目、すなわち「チャージバック手数料」と「モニタリング制度罰金」について、補足しておく。

チャージバック手数料は、主要決済代行の公式ページを横断的に確認しても、1件あたりの単価が公表されていない。加盟店契約時に個別に条件が定められ、発生時に個別通知される運用が一般的です。

相場を知りたい場合は、契約書のチャージバック手数料条項を確認するか、加盟店契約前に決済代行へ照会する。「1件あたりXXX円」といった記載を見かけても、それは特定の決済代行の一例か加盟店契約の実測値であって、業界一律の相場ではありません。

モニタリング制度罰金は、Visa と Mastercard が加盟店ごとに発生率と件数を監視し、閾値を超えた月に加盟店へ追加費用を課す制度です。Visa は 2025年6月1日から VAMP に既存プログラムを統合、Mastercard は ECM Program で運用しています。

詳細な閾値と月額罰金の水準は後述のモニタリング制度で扱います。

直近発生案件の損失額を見積もる|計算式と数値例

実際に発生した案件について、上司や経営層へ提出する損失額の内訳を組み立てる場合は、次の計算式で1件ごとに合算し、月次で集計するのが分かりやすい。

【1件あたりの損失額】
= 商品代金(税込売上取消額)
+ 送料・梱包実費
+ 決済手数料(返還されない部分)
+ チャージバック手数料(発生時のみ、加盟店契約書の該当額)
+ 反証にかかる社内工数(人件費換算)
+ (閾値超過時)モニタリング制度罰金の按分

数値例として、税込 11,000 円の商品が 3 件チャージバックとなり、決済手数料率 3.6%、チャージバック手数料が 1 件 1,500 円、反証工数が 1 件 30 分(人件費換算 1,500 円)を仮に置くと、次の内訳になります。

  • 売上取消(商品代金): 11,000 円 × 3 件 = 33,000 円
  • 送料・梱包実費: 800 円 × 3 件 = 2,400 円
  • 返還されない決済手数料: 11,000 円 × 3.6% × 3 件 ≒ 1,188 円
  • チャージバック手数料: 1,500 円 × 3 件 = 4,500 円
  • 反証工数(人件費換算): 1,500 円 × 3 件 = 4,500 円
  • 1 か月分の実損合計: 約 45,588 円

チャージバック手数料と決済手数料の実額は加盟店契約書に定めがあり、通知メールと請求明細を突き合わせれば実測できます。反証工数は自社の実感で置き換える。閾値超過時のモニタリング制度罰金は月額の別枠になるため、後述する VAMP/ECM 節で扱います。

月次で集計する際には、直近3か月の発生件数と金額を「発生パターン別(後述)」で分類しておくと、次章以降の対策の優先順位づけがそのまま社内資料になります。3DS 導入済み取引と未導入取引を分けて集計しておくと、ライアビリティシフトが働かなかった案件の割合が把握でき、追加対策の必要度も判断しやすい。

なぜ加盟店が原則負担するのか|加盟店契約と国際ブランド規約の位置づけ

用語の定義:チャージバック/ライアビリティシフト/モニタリング制度

本記事の前提となる3つの用語を最初に整理しておく。

  • チャージバック:カード名義人が「身に覚えがない」「商品が届かない」等の理由でカード会社に異議申立てを行い、認められた場合に売上を取り消して名義人に返金する仕組み。返金原資は加盟店契約に基づいて加盟店が負担する。法律で直接規定された制度ではなく、加盟店契約と国際ブランド規約に基づく契約上の手続きです。
  • ライアビリティシフト:本人認証(EMV 3-Dセキュアや ICチップ)を通した取引で不正利用が発生した場合に、金銭的な責任が加盟店からカード発行会社(イシュアー)に移る仕組み。カードブランドの規約で定められています。
  • モニタリング制度:Visa/Mastercard 等の国際ブランドが加盟店ごとの発生率と件数を監視し、閾値を超えた月次で加盟店へ追加費用を課す制度。Visa は VAMP、Mastercard は ECM/HECM の名称で運用しています。

なぜ加盟店負担が原則か|加盟店契約に基づく契約上の手続き

チャージバックは、加盟店契約と国際ブランド規約に基づいて動く契約上の手続きです。前節で引用した決済代行の利用規約のとおり、加盟店契約には「チャージバック事由が発生した時点で、決済代行が加盟店へ支払った売上代金の裏側にある債権譲渡契約が遡及的に効力を失い、加盟店が返金する」という構造が組み込まれています。

加盟店側からは「なぜ自分が」と感じられやすいが、法律で加盟店に負担を強制しているわけではありません。決済代行との契約書と、その先にあるカードブランド規約がこの負担分岐を定めている、という位置づけになります。

この構造は、決済代行を切り替えたり自社で決済を行ったりしても本質的には変わらない。国際ブランドが加盟店側に負担ルールを課しているため、決済代行はその契約条件を加盟店契約で受け止め、実務を回しています。加盟店側にできることは、負担分岐のうち「加盟店から離れる方に移せる条件」(=本人認証を通す)を満たす取引の割合を上げることと、発生パターンに応じた対策を組み合わせることに集約されます。

ライアビリティシフトの適用条件(対面/オンライン/3DS 認証済み)

ライアビリティシフトの適用条件は、対面決済とオンライン決済で異なります。対面決済では ICチップ搭載カードを ICチップ対応端末で読み取ることが条件で、磁気ストライプ読み取りやカード情報の手入力では加盟店負担が原則となります。

オンライン決済では EMV 3-Dセキュア(3DS 2.0)を通した認証が条件で、CVV/セキュリティコード入力だけでは不十分です。決済代行公式の記述でも、この分岐は次のように明示されています。

3Dセキュアを通じて本人認証を実施したにも関わらず不正利用が生じ、チャージバックが発生した場合、債務責任は加盟店からクレジットカード会社に移ります(ライアビリティシフトの適用)。つまり加盟店がチャージバックの金銭的な責任を負うことはありません。1点だけ注意が必要です。3Dセキュア1.0は2022年10月にサポートを終了しており、最新版の3Dセキュア2.0に移行していないと、債務責任はクレジットカード会社には移りません。

Square Japan「チャージバックとは?よくある事例と対策を紹介」

3DS 認証済みでも加盟店負担が残るケース

3DS 認証済みでも、ライアビリティシフトが働かず加盟店負担のまま残るケースもあります。ここではライアビリティシフト適用の例外要件として最低限を押さえておく(義務化後の運用フェーズで発生率がゼロになりません構造については後述の「義務化後も残るチャージバックリスク」で詳しく扱う)。

  • 不正利用以外のチャージバック:商品未着・認識ずれ・二重請求・サブスク解約忘れなど、そもそもライアビリティシフトの対象外
  • 3DS 2.0 未対応の取引:3DS 1.0 は 2022年10月にサポート終了、3DS 2.0 へ未移行の加盟店の取引は適用されない
  • 3DS 適用外のカード・取引種別:コーポレートカード、メール決済リンクなど 3DS の対象外となる取引がある

【背景】チャージバック増加の実態と、狙われやすいEC事業者

被害額の年別推移と番号盗用の比率

日本クレジット協会が2026年6月30日に公表した「クレジットカード不正利用被害額の発生状況」によれば、直近3年のクレジットカード不正利用被害額は次のように推移しています。

クレジットカード不正利用被害額の年別推移(日本クレジット協会)

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期間2023年(1〜12月)2024年(1〜12月)2025年(1〜12月)
不正利用被害額540.9 億円555.0 億円510.5 億円
番号盗用被害額(構成比)504.7 億円(93.3%)513.5 億円(92.5%)475.4 億円(93.1%)

2024年までは増加基調だったが、2025年は前年から45億円ほど減少し、前年割れに転じた。減少の背景には 2025年3月末の EMV 3-Dセキュア原則義務化の効果があるとみられます。

ただし被害の中心が「番号盗用」であることは変わっていない。2025年でも全体の 93.1% が非対面での番号盗用による被害で、EC 事業者にとっては依然として高水準の脅威が続いている局面と見るべきです。

狙われやすい商材と発生率の目安

不正利用は換金性の高い商材と、単価が高くデジタル配送で完結する商材で集中的に発生する傾向があります。主な狙われやすい商材カテゴリは次のとおりです。

  • デジタルコンテンツ(電子書籍、動画配信、ゲーム内アイテム)
  • 家電・PC・タブレット・スマートフォン
  • ブランド品・時計・宝飾品
  • チケット類(イベント、航空券)
  • コスメ・ヘアケア・健康食品
  • ホビー・トレーディングカード・フィギュア

これらの商材を扱う EC 事業者は、他のカテゴリよりも発生率が高くなりやすい状況です。自社の月次発生件数と発生率(=発生件数÷売上件数)を把握しておき、業界内で高い水準に近づいた場合はモニタリング制度の閾値との距離を意識する必要がある(後述)。

増加の根本原因(3DS 普及の遅れ・カード情報漏洩・EC急拡大)

2024年までの被害額増加の背景には、大きく3つの構造要因があった。第1に、EC 加盟店における 3-Dセキュアの普及が長らく緩やかで、本人認証を通さない取引の割合が高かったこと。第2に、フィッシングや情報漏洩によりカード番号情報の流出が続いており、非対面での番号盗用に使える情報プールが増え続けたこと。第3に、コロナ禍以降の EC 市場拡大により、そもそも狙われる取引総数が増えたことです。

2025年の減少は、これらの構造要因のうち第1(3DS 普及)が原則義務化によって是正されはじめたことが大きい。ただし、フィッシング等による情報漏洩や、3DS 適用外取引・フレンドリー詐欺・アカウント乗っ取り経由の被害は残るため、義務化後も発生率がゼロになるわけではありません。

発生パターン別|加盟店負担の線引きと、効く対策の対応表

5つの発生パターン

チャージバックが発生する典型パターンは、大きく5つに整理できます。それぞれで加盟店負担の扱いと、反証(異議申立て)で覆せる可能性、有効な対策が異なります。

  1. 不正利用(番号盗用):本人以外の第三者がカード番号を不正に使って決済したケース。EMV 3-Dセキュアの主な対策対象。
  2. 商品未着:カード名義人本人が購入し、代金を支払ったが、商品が届かなかったとの申立て。反証で覆せる可能性があります。
  3. 商品不良・認識ずれ:届いた商品が説明と異なる、破損している等の申立て。返品ポリシーや商品説明の運用が反証の可否を左右する。
  4. 二重請求:同じ取引に対して重複して請求されたとの申立て。決済ログで反証しやすい。
  5. サブスクリプション解約忘れ・自動更新への異議:サブスクの更新請求に対する申立て。返金対応・解約手続きの明示性が反証の材料となります。

パターン×対策マトリクス

5つの発生パターンごとに、加盟店負担・反証可否・特に効く対策を1枚に整理すると、自社での対策の優先順位が見えてくる。

発生パターン × 加盟店負担/反証可否/効く対策

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発生パターン1. 不正利用(番号盗用)2. 商品未着3. 商品不良・認識ずれ4. 二重請求5. サブスク解約忘れ・自動更新
加盟店負担の原則原則負担/3DS 認証済みなら免除原則負担原則負担原則負担原則負担
反証で覆せる可能性本人否認は原則覆せない配送記録があれば覆せる可能性商品説明・返品ポリシーが明確なら覆せる可能性決済ログで覆せる可能性が高い解約手続きが明示的なら覆せる可能性
特に効く対策EMV 3-Dセキュア、不正検知サービス、チャージバック保証配送トラッキング、署名受領、配送前の本人確認商品説明の透明化、返品ポリシー明記、事後対応記録決済ログの保管、重複チェックの運用更新通知の送付、解約導線の明示、返金運用

パターン別の「優先すべき対策」の見つけ方

自社で優先すべき対策は、直近の発生パターン別件数を集計し、多い順に対応表と突き合わせて決めるのが実務的です。たとえば「番号盗用による不正利用」が半数以上を占めますなら、EMV 3-Dセキュア導入と不正検知サービスが最優先になります。

「商品未着」や「認識ずれ」が多いなら、配送トラッキング・返品ポリシー・商品説明の運用改善が費用対効果的に効く。サブスク型の事業では、解約導線の見直しと更新通知の設計が効くことが多い。

パターンの内訳が偏っている場合、費用のかかる対策(不正検知サービスなど)を全パターンに一律導入するよりも、多いパターンから順番に投資したほうが月次の削減効果が見えやすくなります。上司や経営層への提案時は、パターン別発生件数と対応する対策の月額コストを並べて示すと、投資判断がしやすい。

対策の全体像|4本柱+運用の使い分け(副作用と費用対効果の判断軸まで)

チャージバック対策は「4本柱+運用+選定判断」で成り立っています。4本柱は EMV 3-Dセキュア・セキュリティコード・不正検知サービス・チャージバック保証で、それぞれ効くパターンと費用感が異なります。これに社内運用(配送・返品・商品説明の設計)が加わり、最後に選定の判断軸(副作用と費用対効果)を確認する。以下、順に見ていく。

4本柱1:EMV 3-Dセキュア(3DS 2.0)|適用条件と CV 影響(本人認証)

EMV 3-Dセキュア(3DS 2.0)は、オンライン決済で本人認証を行う仕組みで、認証を通した取引で不正利用があった場合にライアビリティシフトが働く、対策の中核です。国際ブランド共通の枠組みで、多くの決済代行が標準機能または追加オプションで提供しています。効くのは主に「不正利用(番号盗用)」パターンで、その他のパターン(未着・認識ずれ・二重・サブスク)にはほぼ効きません。

導入時の副作用として、認証が要求されることで一部の正当な取引が離脱する(決済コンバージョン低下)リスクがあります。3DS 2.0 ではリスクベース認証によりチャレンジ発生率を抑える設計になっているが、業種・商材・利用者属性によっては差が出るため、導入前後の承認率を比較して調整するのが実務的です。

4本柱2:セキュリティコード(CVV)|手軽さと限界(本人性の補助確認)

セキュリティコード(CVV/CVC)は、カード裏面等の3〜4桁のコード入力を求める仕組みで、決済フォームで簡単に導入できます。カード情報の全項目が漏洩していない場合には一定の抑止効果があります。

ただしカード情報の広範な漏洩や、フィッシング経由で番号とセキュリティコードがセットで流出しているケースには効きません。決済代行公式でも「セキュリティコード入力があっても不正利用時のチャージバックは EC 事業者負担になる」点が明示されており、単独では対策として不十分です。3DS 2.0 と組み合わせて多層的に使うのが基本形になります。

4本柱3:不正検知サービス|ルールベース/機械学習の違いと費用感(取引スコアリング)

不正検知サービスは、決済ごとに複数の属性(IPアドレス、デバイス指紋、配送先、カード発行国、購入履歴など)をスコアリングし、不正の可能性が高い取引を検知・保留する仕組みです。主な方式は2つあり、ルールベースは事業者が定義したルール(例:初回購入で高額、配送先と請求先が異なる など)で判定し、機械学習型は蓄積した取引データから統計的にリスクを判定する。多くの現行サービスは両者を組み合わせています。

費用感は、月額固定型(数万円〜数十万円)・トランザクション従量型(1件あたり数円〜数十円)・成功報酬型など多様で、事業規模と取引量で選ぶ。副作用として、誤検知による正当取引のブロック(=機会損失)が挙げられます。

導入直後は誤検知が出やすいため、ルール調整とスコア閾値のチューニング期間が必要になります。EMV 3-Dセキュアと組み合わせると、3DS では拾えない「認証を通した後のフレンドリー詐欺」や「3DS 適用外取引」もカバーできます。

4本柱4:チャージバック保証・補償の選び方(月額と補償上限の見方)(残余リスクの外出し)

チャージバック保証・補償サービスは、3DS や不正検知を通してもすり抜けた不正利用の損害を、決済代行や提携保証会社が補償するオプションです。月額料金と補償上限で条件が設計され、実装できる対策として最後の砦になります。

相場感として、大手決済代行が付帯オプションで提供するチャージバック保証プランでは、月額数千円台から加入でき、3-Dセキュア導入の有無で補償上限が二段階に分かれる設計(3DS 未導入時は月30万円程度、導入時は月100万円程度まで補償を厚くする)が採られています例があります。本人認証を通した取引を優遇する思想は複数社の保証設計に共通します。

具体的な月額料金・補償上限・補償対象パターンは決済代行や提携保証会社ごとに異なるため、記事末尾のサービス比較セクションと資料ダウンロードを併用して条件を並べるのが実務的です。

選ぶときの観点は、次の4点です。

  • 月額料金と補償上限のバランス(月商と月次発生件数から損益分岐を計算)
  • 補償対象パターン(不正利用のみか、未着・認識ずれ等まで含むか)
  • 3DS 導入とセットで条件が変わる設計かどうか
  • 決済代行本体との契約とセットで加入する形か、独立契約か

社内運用(配送前確認・配送記録保管・返品ポリシー明記)

4本柱と並んで、社内運用は費用対効果の高い対策で、多くのパターンに効く。特に有効なのは次の5つで、いずれもコストはほぼゼロ、反証(後述)の勝率も直接引き上げる。

  • 高額注文や配送先と請求先が異なる注文への配送前確認電話
  • 配送トラッキングと署名受領の徹底
  • 返品ポリシーと商品説明の明示(サイト内で誰でも確認できる場所に)
  • サブスクリプションの解約導線と更新通知の設計
  • 決済ログ・注文時 IP・本人確認記録の保管

選定の判断軸1|不正対策の「負の側面」(誤検知・CV低下・拡張コスト)と回避策

対策を導入する際、決済コンバージョン(承認率)とのトレードオフを見落とすと、防いだ損失以上に売上機会を失う場合があります。主な負の側面は3つあります。

  • 誤検知(false positive):不正検知や 3DS チャレンジで、正当取引が離脱する。特に不正検知サービスは導入直後、ルール調整が済むまで誤検知が多くなりやすい。
  • 決済コンバージョン低下:3DS 認証や CVV 入力を要求する分だけ、決済フォームの離脱率が上がる。業種によって影響度が異なり、単価が低い商材ほど離脱の影響を受けやすい。
  • 拡張コスト:機械学習型の不正検知や API 連携型の対策は、月額料金の他に開発工数がかかる場合があります。決済代行標準機能の 3DS・CVV から入り、必要に応じて追加すると初期投資を抑えやすい。

回避策は、導入直後の期間を「チューニング期間」と割り切って承認率・発生率・誤検知率を並べて見ること、決済代行標準機能から順に導入して段階的に強化すること、業種・商材の性格に合わせてルール閾値を調整することです。

選定の判断軸2|費用対効果で並べる(自社の月商・発生率での軸)

対策の費用対効果は、自社の月次チャージバック損失額と、対策の月額コストを並べて計算するのが早い。おおまかな順序は次のとおりです。

  1. まず社内運用(配送記録・返品ポリシー・商品説明)を整える。ほぼコストゼロで、多くのパターンに効く。
  2. 次に EMV 3-Dセキュア(3DS 2.0)を導入する。多くの決済代行で標準機能または低コストで対応可能で、ライアビリティシフトの効果が大きい。
  3. 不正利用パターンが多い場合、不正検知サービスを追加する。月商と発生件数で費用対効果を計算する。
  4. 残余リスクを抑えたい場合、チャージバック保証・補償を追加する。保険的な性格の対策として、月額と補償上限で判断する。

この順序は、費用のかかる対策から入るのではなく、まず自社運用と 3DS で「拾える範囲」を広げ、残った領域に応じてサービスを追加していく考え方に基づく。上司や経営層への提案時は、この順序で「対策A(3DS)を入れると発生件数の何%が減る見込み、月額コスト何円、損益分岐は何か月」といった形で並べると判断しやすい。

EMV 3-Dセキュアの 2025年3月末原則義務化|経産省ガイドラインが求める実務要件

義務化の対象と期限(経産省ガイドライン【5.0版】の該当節)

EMV 3-Dセキュアの原則義務化は、経済産業省・クレジット取引セキュリティ対策協議会が2024年3月に公表した「クレジットカード・セキュリティガイドライン【5.0版】」で正式に位置づけられた。当該ガイドラインは、次のように義務化の対象・期限・法的位置づけを明記しています。

このような不正利用の発生状況等を踏まえ、EC 加盟店の不正利用対策として、後述のとおり EC 加盟店が取扱う商材や不正利用の被害発生状況等から不正利用発生のリスクに応じて、非対面不正利用対策の 4 つの方策をベースとした複数の対策を導入することとしてきたが、EC 加盟店における非対面不正利用被害が増加している現状を踏まえ、2025 年 3 月末までに、原則、全ての EC 加盟店に EMV 3-D セキュアの導入を求めることとしている。割賦販売法第 35 条の 17 の 15 及び同施行規則第 133 条の 14 の規定も踏まえ、加盟店が、クレジットカード番号等の通知を受けた際、当該通知がイシュアーから当該クレジットカード番号等の交付等を受けた利用者によるものであるかの適切な確認をするための措置として、EMV 3-D セキュアの導入を求めるものである。

クレジット取引セキュリティ対策協議会「クレジットカード・セキュリティガイドライン【5.0版】」(2024年3月)pp.8-9

対象は「原則、全ての EC 加盟店」で、期限は2025年3月末です。すでに義務化期日は経過しており、記事発行時点(2026年)は義務化「後」の運用フェーズに入っています。

満たすべき実務要件(EMV 3-Dセキュア対応の決済代行・カード会社連携)

実務では、EC 加盟店が自ら EMV 3-Dセキュアの技術対応を行うことは稀で、契約している決済代行の 3-Dセキュア対応機能を有効化するかたちが一般的です。決済代行によって「標準機能」「オプション追加」「別途申込」の扱いが異なり、加盟店側で行う作業は次に集約されます。

  • 現在契約している決済代行が EMV 3-Dセキュア(3DS 2.0)に対応しているか確認する。
  • 対応している場合、機能を有効化する(申込・設定変更が必要な場合がある)。
  • 対応していない、または将来の要件(コーポレートカードや特定ブランドへの対応など)が不足しています場合、対応済みの決済代行への切り替えを検討する。
  • 認証を経た取引の割合をモニターし、3DS 適用外取引(コーポレートカード、特定チャネル)の扱いを整理します。

切り替え先の決済代行を検討する段階では、手数料相場・対応ブランド・機能を横並びで整理した比較記事が判断材料になります。決済代行そのものの選び方(初期費用・月額・決済手数料・トランザクション費といった費目の押さえ方や、業種別の適合)は、次の記事にまとめています。

未対応時のリスク(加盟店契約・アクワイアラー側の対応)

2025年3月末以降、EMV 3-Dセキュアに未対応のまま運用を続ける加盟店には、複数の実務上のリスクが積み上がる。

  • 不正利用によるチャージバックがライアビリティシフトの対象にならず、加盟店負担のまま残る
  • 被害の発生状況によっては、決済代行・アクワイアラー側から契約条件の見直しや加盟店契約の解除に至る可能性が指摘されている
  • 後述するモニタリング制度の閾値超過リスクが高まり、月次の追加費用に発展する可能性がある

義務化後も残るチャージバックリスク(3DS 適用外取引・フレンドリー詐欺)

ガイドラインは 2025年3月時点で【6.0版】、2026年3月に【6.1版】に改訂されており、義務化「後」の運用フェーズでは、EMV 3-Dセキュア導入と併せて脆弱性対策・不正ログイン対策を「指針対策」に格上げする流れになっています。【6.1版】では、義務化後も残るリスクとして次の観点が扱われています。

本協議会としてはこれまでも、非対面取引のカード情報保護対策としての「脆弱性対策」の強化や、不正利用対策としての本人認証を強化するために、EMV 3-D セキュアの導入推進や多面的・重層的な対策の導入の必要性を本ガイドラインに掲載し、クレジットカード取引関係事業者に取組を求めてきたところであるが、上述のような不正利用被害の状況を踏まえ、本ガイドライン【6.0 版】(2025 年 3 月公表)では、非対面取引のカード情報保護対策として「脆弱性対策」、不正利用対策としてのカード決済前の「不正ログイン対策の実施」とカード決済時の「EMV 3-D セキュアの導入」を指針対策に追加した。

クレジット取引セキュリティ対策協議会「クレジットカード・セキュリティガイドライン【6.1版】」(2026年3月)

実務上、義務化後も残るリスクとして次の点を意識する必要があります。

  • 3DS 適用外取引:一部のカードブランド、コーポレートカード、決済チャネル(メール決済リンクなど)は 3-Dセキュアの対象外となる場合があります。
  • フレンドリー詐欺:本人が自分でカードを利用したうえで「身に覚えがない」と申告するケースは、本人認証を通しても発生しうる。反証で覆すことになります。
  • アカウント乗っ取り経由の被害:EC サイトの会員アカウントが乗っ取られ、登録済みカードで決済されるケース。決済前の不正ログイン対策が必要になります。
  • 不正利用以外のチャージバック:未着・認識ずれ・二重・サブスク解約忘れなど、3-Dセキュアが直接効かないパターンは残る。

モニタリング制度と追加コスト|Visa VAMP/Mastercard ECM

モニタリング制度とは(VAMP/ECM の目的と発動閾値の概念)

国際ブランドは、加盟店ごとに不正利用・チャージバックの発生件数と比率をモニタリングし、閾値を超えた月に追加費用を課す制度を運用しています。「見落としがちな第2の負担」として、加盟店契約の直接損失(商品代金・送料など)とは別枠で発生します。制度の名称と考え方は以下のとおりです。

Visa は 2025年6月1日から VAMP(Visa Acquirer Monitoring Program)の要件を更新し、既存の VAMP に VDMP・VFMP を統合して単一の枠組みに再編しました。Visa 公式の Fact Sheet はこの統合について次のように説明しています。

Visa is updating the requirements for the Visa Acquirer Monitoring Program (VAMP), consolidating the existing VAMP, Visa Fraud Monitoring Program, and Visa Dispute Monitoring Program into a single global program. Updates to the program thresholds will be effective 1 June 2025.

Visa Acquirer Monitoring Program Fact Sheet 2025(Visa Corporate)

VAMP は「Fraud(不正、TC40)+ Disputes(争議、TC15)÷ 精算取引件数(TC05)」の合算比率(VAMP Ratio)で判定する設計に変わった。旧 VDMP が「争議単独の比率」で見ていたのに対し、新 VAMP は不正と争議の両方を1つの指標にまとめています。

加盟店側では、発生率の社内 KPI を「dispute 単独」から「fraud + disputes の合算」に切り替える必要があります。

Mastercard は「ECM(Excessive Chargeback Merchant)Program」を継続運用しており、月次のチャージバック件数と比率で判定する。ECM は「月次のファーストプレゼントメントのチャージバック件数と、前月の売上件数に対する比率(basis points 表記、150bps=1.5%)」で閾値超過を判定する設計です。

Excessive Chargeback Merchant (ECM): 100 to 299 first presentment chargebacks AND 150 to 299 basis points chargeback-to-transaction ratio. High Excessive Chargeback Merchant (HECM): 300 or more first presentment chargebacks AND 300 or more basis points chargeback-to-transaction ratio.

Mastercard Excessive Chargeback Merchant (ECM) Program FAQ(JPMorgan Payment Network Updates 掲載の Mastercard 公式資料)

加盟店契約への影響(追加費用・アカウント停止リスク)

閾値を超えた月からは、月次で追加費用(アセスメントフィー)が課される。Mastercard ECM の場合、違反継続月数に応じて次のように段階的に増額する設計となっています。

Mastercard ECM/HECM のアセスメントフィー(月額、EUR/USD)

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違反継続月数1〜3か月4〜6か月7〜11か月12〜18か月19か月以上
ECM猶予期間(課金対象外)5,00025,00050,000100,000
HECM猶予期間(課金対象外)10,00050,000100,000200,000

Visa VAMP でも、アクワイアラーレベルで Above Standard(≥50bps)/Excessive(≥70bps)の判定基準が置かれ、加盟店個別にも Excessive Merchant 閾値(AP/Canada/EU/U.S. で ≥220bps・月間1,500件以上、2026年4月1日以降は ≥150bps に引き下げ済み)が定義されています。

閾値を超えると、アクワイアラー経由で加盟店に費用が転嫁されるほか、状況が改善しない場合は加盟店契約の解除に至る可能性もあります。上表 EUR/USD 建ての月額罰金は、参考換算として 1 万米ドル=約 155 万円前後(2026 年時点の目安)で見ると、対策の月額コスト(3DS や不正検知の数千〜数十万円)を大きく上回る負担になります。

閾値超過を避けるための実務(発生率の社内 KPI 化)

制度側の閾値は「月次の発生率と件数」で判定されるため、社内では次の3点をモニターしておくのが実務的です。

  • 月次のチャージバック件数と、売上件数に対する比率(basis points)
  • 月次の不正利用件数(Visa VAMP の合算比率の母数)
  • 直近3〜6か月の推移と、閾値までの距離

閾値の 50〜70% あたりまで近づいた月からは、対策(3-Dセキュア強化・不正検知ルール見直し・運用改善)を積み増すのが安全です。閾値を超えてから追加費用が始まると、対策コストを大きく上回る出費になります。決済代行やアクワイアラーが提供する管理画面で発生率レポートを取得できる場合が多いので、月次レビューの定型項目に組み込むと運用が回りやすい。

異議申立て(Representment)の実務|勝てるパターン・必要書類・期限

発生から確定までの流れ(通知→調査→反証書類提出→最終判断)

チャージバックは、次の順序で進行する。

  1. カード名義人がカード発行会社に異議申立てを行う。
  2. カード会社が加盟店側にチャージバックを通知する(決済代行経由)。
  3. 加盟店は反証(Representment)するか、返金を受け入れるかを判断する。
  4. 反証する場合、期限内に反証書類(配送記録・注文時IP・返品ポリシー等)を提出する。
  5. カード会社が反証書類を審査し、最終判断(覆る/確定)を通知する。

反証が認められれば、売上取消は解除され、加盟店は損失を回収できます。ただし反証が認められなかった場合、あるいは反証しなかった場合は、売上取消が確定し、加盟店が返金原資を負担します。

勝てるパターン/覆せないパターンの見分け方

反証で覆せる可能性は、発生パターンごとに大きく異なります。「本人否認による不正利用」は本人からの申告手続きが成立しており、原則覆すのは難しい。ただし 3-Dセキュアを通した取引ならライアビリティシフトが働くため、そもそも加盟店側の反証は不要になります。

覆せる可能性が比較的高いのは、「商品未着」「認識ずれ」「二重請求」「サブスク解約忘れ」など、加盟店側で客観的な記録(配送伝票、決済ログ、返品ポリシー、更新通知の送付履歴)を残せているパターンです。これらは反証書類の内容次第で判断が分かれる。

必要書類チェックリスト(配送伝票・注文時IP・本人確認記録・返品ポリシー)

反証で提出する書類は、発生パターンごとに変わるが、一般的に有効なのは以下です。

  • 署名済みの契約書・請求書
  • 払い戻し・キャンセルに関するポリシー(サイト内での公開ページのスクリーンショット)
  • 配達またはサービス提供の証明(配送伝票、追跡番号、受領サイン)
  • 問題解決のためにカスタマーサポートで行ったやりとりの証拠(メール、チャットログ)
  • 購入商品・サービスの説明文(商品ページのスクリーンショット)
  • 注文時の IP アドレス、デバイス情報、購入履歴(不正利用への反証時)

決済代行公式でも、この方向性は次のようにまとめられています。

チャージバックの内容によりけりですが、一般的には以下のような書類が有効です。署名済みの契約書、請求書/払い戻しやキャンセルに関するポリシー/配達またはサービス提供の証明/問題解決のために行った努力の証拠/購入商品/サービスの説明文。

Square Japan「チャージバックとは?よくある事例と対策を紹介」

期限とタイムライン(カードブランド差・決済代行別)

反証の期限は、カードブランドと決済代行によって異なります。目安として、決済代行が加盟店から反証書類を受け付ける社内期限は 5〜60日程度の幅があり、加盟店契約と決済代行の管理画面で個別に確認する必要があります。

期限の厳しい例では、通知を受けてから 5 日以内に反証意向と証明書類の提出を求める運用を採る決済代行もある(下記引用)。この 5 日はその決済代行の社内期限で、その後カード会社側での審査が続きます。全体の解決期間は、齟齬がなければ2週間程度、齟齬がある場合は90日以上に及ぶことがあります。

通知を受けてから 5日以内 に決済の有効性を証明する書類を提出し、申し立てに反証する旨をSquareに知らせましょう。

Square Japan「チャージバックとは?よくある事例と対策を紹介」

ここで引用した「5日以内」は一決済代行の社内運用期限の一例で、他社ではより長い期限を採る場合もあります。カードブランド側の Dispute Rules(Visa/Mastercard 等)の期限に比べて短い場合が多いため、決済代行の通知を受け取ったら、まず反証意向と必要書類の入手可否を確認するのが実務的な最初の動きになります。

チャージバック対策に強い決済代行・不正検知サービスの比較

選定の3つの観点(3DS 対応/不正検知の方式/保証の有無と月額)

チャージバック対策を実装する段階で決済代行を選ぶときは、次の3観点で見比べると比較がしやすい。

  • EMV 3-Dセキュアの対応:標準機能か追加オプションか、対応ブランド・チャネルの範囲
  • 不正検知サービスの方式:ルールベース/機械学習/両者併用、社内提供か外部連携か
  • チャージバック保証・補償の有無と月額:3-Dセキュア導入との連動、補償対象パターン、補償上限

以下、この3観点で「対策を1社で完結させたい」ニーズに応えられる代表的な決済代行と、不正検知の系統別の代表サービスをご紹介します。

1. Paysys(ペイシス、株式会社ペイメントフォー)

Paysys(ペイシス)公式サイトのスクリーンショット

株式会社ペイメントフォーが提供する、システム開発を必要とせずに導入できるオンライン決済サービス。管理画面から請求URL・決済フォーム・API連携の3方式で導入でき、EMV 3-Dセキュアを追加費用なしで標準搭載する点が、チャージバック対策の観点では中核の特徴になります。

対応ブランドは Visa・Mastercard・JCB・American Express・Diners の5社で、カード情報は PCI DSS(SAQ Type-D)準拠環境で扱います。

BtoB 限定プランは初期費用0円・決済手数料〜1.99%(カタログサービスページ掲載値、2026年時点)で、既存の決済代行から乗り換えて 3-Dセキュアを標準有効化したい読者の実装先として候補に置ける(BtoC は個別見積)。

導入方式は開発不要のメールリンク型・フォーム型から、事業拡大後に API 連携型へ段階的に切り替えられます。規模を問わず専任担当者が導入から運用まで対応する体制を敷いており、3-Dセキュアの有効化設定や、不正利用が発生した際の相談窓口を一本化しやすい。

2. GMOイプシロン(GMOイプシロン株式会社)

GMOイプシロン(イプシロン決済サービス)公式サイトのスクリーンショット

チャージバック保証サービスを本体パッケージ内で提供する、中小EC向けのオンライン決済代行。GMOペイメントゲートウェイの100%子会社が運営し、Epsilon byGMO の名称で4万社以上の EC 事業者が利用している(2025年3月末時点、公式プレスリリース)。

チャージバック保証は月額3,900円(2024年4月改定)で、3-Dセキュア認証支援サービスの契約有無により補償上限が月額100万円/30万円の二段階に分かれる設計となっています。本人認証を通した取引を優遇する思想は、本記事で整理した対策の優先順位(3-Dセキュア+不正検知+残余リスクの保証)と一致する。

3-Dセキュア認証支援は本体サービス側、不正検知・不正住所照合・reCAPTCHA は追加オプションとして提供される。決済代行本体・3-Dセキュア・不正検知・チャージバック保証を1社内で組み合わせられる構成で、対策手段を系統別に見比べる際の基準線として置きやすい。

3. SBペイメントサービス(SBペイメントサービス株式会社)

SBペイメントサービスのオンライン決済サービス公式サイトのスクリーンショット

EMV 3-Dセキュア(本人認証)と AI 不正検知を、いずれも無償オプションとして提供する大手決済代行。ソフトバンク株式会社の100%子会社で、EC・実店舗向けに40ブランド以上の決済手段を単一契約・単一接続で扱える点を訴求しています。

公式サイト(sbpayment.jp/support/ec/about-chargeback/)では、加盟店負担の内訳や 3-Dセキュア導入時のライアビリティシフトなど、チャージバック実務の解説コンテンツも公開されています。運用中に発生した論点を、決済代行本体の公式資料で参照しやすい点は、選定時に確認しておくと安心です。

年間決済取扱高は11.4兆円、決済処理件数は5億8,726万件(いずれも2025年度実績、公式 advantage ページ掲載)と、業界大手の処理規模を持つ。料金は業種・取扱高に応じた個別見積で、初期費用・月額固定費・決済手数料・決済サービス利用料・トランザクション費の複数項目から構成される。

4. VeriTrans4G(ベリトランス4G、株式会社DGフィナンシャルテクノロジー)

VeriTrans4G(ベリトランス4G)公式サイトのスクリーンショット

株式会社DGフィナンシャルテクノロジー(旧ベリトランス、1997年創業)が提供する総合決済プラットフォーム。2024年10月に EMV 3-Dセキュア導入支援サービス「ASUKA-3DS」を発表しており、記事本文で扱った2025年3月末の原則義務化に対して、既存 EC 加盟店向けの実装支援メニューを名前付きでラインナップしている代表格になります。

3-Dセキュア 2.0 対応に加え、カード情報の非保持・非通過設計(トークン決済/リンク決済)と、継続課金の決済失敗率を抑えるカード情報自動更新(洗替)を備える。接続方式は API・トークン・リンク(POP/3G-Web)・メールリンクから選べ、既存システムの改修規模に応じて段階的に切り替えられます。

決済手段は30種類以上(クレジット・コンビニ・キャリア・ID/QR・電子マネー・銀行系・後払い・越境)を1接続で提供します。決済取扱高9.1兆円・処理件数17.3億件(いずれも2025年4月〜2026年3月末実績。公式LP注記どおり、DGグループのプラットフォームソリューション・セグメント全体の実績)で、業界大手として位置づけられます。

【比較表】チャージバック対策に強い決済代行・不正検知サービス

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サービス名Paysys(ペイシス)GMOイプシロンSBペイメントサービスVeriTrans4G
EMV 3-Dセキュア(3DS 2.0)標準搭載(追加費用なし)3-Dセキュア認証支援サービス(本体オプション)無償オプション対応(ASUKA-3DS導入支援あり)
不正検知サービス情報なし追加オプション(不正検知・不正住所照合・reCAPTCHA)AI不正検知(無償オプション)不正検知ソリューション対応
チャージバック保証情報なし月額3,900円
補償上限:3DS契約時100万円/月
非契約時30万円/月
情報なし情報なし
対応決済手段クレカ5ブランド
PayPay
コンビニ
ペイジー
銀行振込
WEB口座振替
クレカ
コンビニ
ネット銀行
電子マネー
キャリア
QR・ウォレット
後払い
口座振替
40ブランド以上
クレカ/キャリア/
QR・ID/コンビニ/
後払い ほか
30種類以上
クレカ/コンビニ/
キャリア/QR・ID/
電子マネー/後払い/
越境
詳細情報公式資料を見る公式サイト公式サイト公式サイト

ここまで、チャージバック対策の観点から代表的な4サービスをご紹介しましました。3-Dセキュアや不正検知の対応範囲に加えて、決済手段・入金サイクル・手数料まで含めてオンライン決済システム全体を横並びで比較したい場合は、以下の記事もあわせてご参照ください。決済代行の選定は、チャージバック対策単独ではなく、決済チャネル全体との統合で判断するとぶれません。

まとめ|損失実績・対策の費用対効果・推奨案を1枚にする

本記事でまとめた要点を、上司や経営層への提案資料に組み立て直すときのポイントは次のとおりです。

  • 損失実績:直近3か月の発生件数と金額を、発生パターン別(不正利用・未着・認識ずれ・二重・サブスク解約忘れ)と 3-Dセキュア導入有無別に集計します。加盟店負担が実際に何円になっているかを内訳(商品代金・送料・決済手数料・チャージバック手数料)で並べる。
  • 負担の原則:原則加盟店負担で、EMV 3-Dセキュアを通した不正利用はライアビリティシフトによりカード発行会社の負担となります。3-Dセキュア未対応や適用外取引・フレンドリー詐欺・不正利用以外のパターンは加盟店負担のまま残る。
  • 制度動向:EMV 3-Dセキュアは2025年3月末に原則義務化された。Visa は同年6月から VAMP に統合し、Mastercard ECM も継続運用中。閾値を超えると月次の追加費用(数千〜数万米ドル規模)が発生します。
  • 対策の順序:まず社内運用(配送記録・返品ポリシー・商品説明)を整え、次に EMV 3-Dセキュアを導入する。発生率の高いパターンに応じて不正検知・チャージバック保証を積み増す。月商・発生率・対策コストの3つで費用対効果を計算する。
  • 既発生案件:反証(Representment)で覆せる可能性があるものは、配送記録・返品ポリシー・決済ログを揃えて期限内に決済代行へ提出する。3-Dセキュア済み取引で不正利用が理由のものは、加盟店側の反証は不要でライアビリティシフトの適用を確認する。

対策の実装は、3-Dセキュア対応・不正検知連携・チャージバック保証を1社でまかなえる決済代行を選ぶか、既存の決済代行に追加オプションを組み合わせるかの2択が実務的な選択肢になります。記事末尾の資料一括ダウンロードから、主要な決済代行の資料をまとめて取得して、月額・機能・保証条件を比較検討する足場を作ることをおすすめする。

よくある質問(FAQ)

Q. チャージバックとは何ですか?

A. チャージバックとは、カード名義人が「身に覚えがない」「商品が届かない」等を理由にカード会社へ異議申立てを行い、認められた場合に売上を取り消して名義人に返金する仕組みである。法律で直接規定された制度ではなく、加盟店契約と国際ブランド規約に基づく契約上の手続きで、返金原資は原則として加盟店が負担する。

ただし、EMV 3-Dセキュアを通した取引で不正利用が理由となった場合には、ライアビリティシフトが働いて金銭的な責任がカード発行会社に移ります。加盟店が負担するかどうかは、認証の有無と発生理由で分岐する仕組みになっています。

Q. チャージバックが発生したら、加盟店は必ず全額を負担するのですか?

A. チャージバックが発生した場合、原則として加盟店が全額を負担するが、EMV 3-Dセキュア(3DS 2.0)を通した取引で不正利用が理由の場合はライアビリティシフトによりカード発行会社の負担に移る。負担の中身は、商品代金(売上取消)・送料・決済手数料の返還されない部分に加え、加盟店契約によってはチャージバック手数料も加わる。

3-Dセキュア未対応の取引、3-Dセキュア適用外のカード・チャネル、商品未着・認識ずれ・二重請求・サブスクリプション解約忘れなど「不正利用以外」を理由とするチャージバック、および本人が自分で利用したうえで「身に覚えがない」と申告するフレンドリー詐欺については、3-Dセキュア認証済みでも加盟店負担が残る点に注意が必要です。

Q. チャージバック手数料の相場はいくらですか?

A. チャージバック手数料は1件あたりの単価が業界で一律に公表されておらず、加盟店契約時に個別に条件が定められる運用が一般的である。主要な決済代行の公式ページを横断的に確認しても、金額の一次的な記載は行われていない。

金額を確定させたい場合は、加盟店契約書のチャージバック手数料条項を確認するか、決済代行に個別照会するのが実務的です。契約前であれば、見積時に条件を提示してもらう。二次情報で「1件あたりXXX円」といった記載を見かけても、それは特定の決済代行の一例か加盟店契約の実測値であり、業界一律の相場ではない点に留意する必要があります。

Q. 3-Dセキュアを導入すればチャージバックはゼロになりますか?

A. 3-Dセキュアを導入してもチャージバックはゼロにはなりません。ライアビリティシフトが働くのは「本人認証を通した取引で、不正利用(番号盗用)が理由のチャージバック」に限られるためです。

3-Dセキュア導入後も加盟店側に残る主なケースは次のとおり。3-Dセキュアと並行して、不正検知サービス・社内運用・チャージバック保証を多層的に組み合わせる必要があります。

  • 3-Dセキュア適用外の取引(コーポレートカード、メール決済リンク等の一部チャネル)
  • 「不正利用以外」を理由とするチャージバック(未着・認識ずれ・二重・サブスク解約忘れ)
  • 本人が自分で利用したうえで申告するフレンドリー詐欺
  • EC サイトの会員アカウント乗っ取り経由の被害

Q. チャージバックが起きやすい商材はありますか?

A. チャージバックは、換金性が高い商品と、単価が高くデジタル配送で完結する商品に集中的に発生する傾向がある

代表的なカテゴリは、デジタルコンテンツ・家電/PC・ブランド品・チケット類・コスメ/健康食品・ホビー品などです。これらの商材を扱う EC 事業者は他カテゴリよりも発生率が高くなりやすい状況です。

自社の月次発生件数と発生率(=発生件数 ÷ 売上件数)を把握し、モニタリング制度の閾値との距離を意識する運用が求められます。

Q. ECサイトだけでなく実店舗(対面決済)でもチャージバック対策は必要ですか?

A. 対面決済でもチャージバック対策は必要で、要点はICチップ搭載カードをIC対応端末で読み取ることである。ライアビリティシフトの適用条件は、対面決済ではICチップ搭載カードのIC読み取りが条件となり、磁気ストライプ読み取りやカード情報の手入力で決済した取引は、偽造カード等による不正利用が発生した場合の負担が加盟店側に残ります。

カード情報が広範に漏洩している現状では、対面でも偽造カード被害は生じうる。IC対応端末の使用に加え、高額・換金性の高い商材を扱う対面店舗では、店員による本人確認や購入時の身分証確認の運用も反証(後述)時の材料になります。

Q. チャージバックに対して異議申立て(反証)で覆せるのはどんな場合ですか?

A. 反証で覆せる可能性が比較的高いのは「商品未着」「認識ずれ」「二重請求」「サブスク解約忘れ」など、加盟店側で客観的な記録(配送伝票・決済ログ・返品ポリシー・更新通知の送付履歴)を残せているパターンである。逆に「本人否認による不正利用」は本人からの申告手続きが成立しており、原則として覆すのは難しい。

3-Dセキュアを通した取引で不正利用が理由のチャージバックは、そもそもライアビリティシフトが働くため加盟店側の反証は不要になります。反証書類は、署名済み契約書・返品ポリシーのスクリーンショット・配送伝票と追跡番号・受領サイン・カスタマーサポートのメールやチャットログ・商品説明ページ・注文時のIPアドレスやデバイス情報などが、発生パターンごとに有効となります。

Q. 反証からチャージバック確定まで、どのくらいの時間がかかりますか?

A. 反証書類の提出期限は決済代行の社内期限として5〜60日程度の幅があり、決着までの全体期間は最短2週間、齟齬がある場合は90日以上に及ぶことがある。カードブランドと決済代行によって期限が異なるため、通知を受け取った時点で決済代行の管理画面または加盟店契約書で個別に確認する必要があります。

実務的な初動は、決済代行の通知を受けた段階で反証意向を伝え、必要書類の入手可否を確認することです。カードブランド側のDispute Rules(Visa/Mastercard等)の期限に比べて決済代行の社内期限は短い場合が多いため、書類収集は早めに動く。反証機会は原則1回のみで、期限を過ぎると売上取消が確定する。

Q. Visa VAMP や Mastercard ECM の閾値に該当したら、加盟店にどんな追加費用が発生しますか?

A. 閾値を超えると月次でアセスメントフィー(追加費用)が課金され、Mastercard ECM の場合は違反継続月数に応じて月額 5,000〜100,000 EUR/USD 規模まで段階的に増額する設計になっている。HECM(High Excessive Chargeback Merchant)区分では月額 200,000 EUR/USD に達するレンジもあります。

Visa VAMP は 2025年6月1日から VDMP・VFMP を統合した枠組みで、Fraud+Disputes の合算比率(VAMP Ratio)で判定する。閾値超過月からアクワイアラー経由で加盟店に追加費用が転嫁されるほか、状況が改善しない場合は加盟店契約の解除に至る可能性もあります。

閾値の 50〜70% あたりまで近づいた月から、対策(3-Dセキュア強化・不正検知ルール見直し・運用改善)を積み増すのが実務的です。

Q. EMV 3-Dセキュア 2025年3月末原則義務化後、加盟店は何をすべきですか?

A. 義務化後の加盟店に求められるのは、契約している決済代行のEMV 3-Dセキュア(3DS 2.0)対応状況を確認し、機能を有効化することである。EC加盟店が自ら3-Dセキュアの技術対応を実装するケースは稀で、決済代行の3-Dセキュア対応機能を使うかたちが一般的になります。

実務手順は次の4点です。

  1. 現在契約している決済代行が EMV 3-Dセキュアに対応しているか確認する
  2. 対応していれば機能を有効化する(申込・設定変更が必要な場合がある)
  3. 対応していない、または将来の要件が不足しています場合は、対応済みの決済代行への切り替えを検討する
  4. 認証を経た取引の割合をモニターし、3-Dセキュア適用外取引(コーポレートカード・特定チャネル)の扱いを整理する

義務化「後」の運用フェーズでは、経産省ガイドラインが【6.0版】以降で脆弱性対策・不正ログイン対策を「指針対策」に格上げしており、3-Dセキュアと並行してこれらの実装も求められます。

料金・手数料を一括チェック

3-Dセキュア対応・不正検知連携・チャージバック保証を備えた主要な決済代行の資料は、次のフォームから一括でダウンロードできます。加盟店ごとの適合条件は個別条件によって変わるため、資料を並べて機能・月額・補償条件を比較し、社内検討の材料として活用してほしい。

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