スマートフォンにマイナンバーカードの機能を搭載し、それを使って本人確認ができる仕組みが広がっています。iPhoneでは2025年6月24日から利用でき、Androidでも搭載サービスの刷新が予定されており、オンラインで本人確認(eKYC)を行う事業者にとって新しい選択肢になりつつあります。
ただし「スマホでマイナンバーカードを使った本人確認」と一口に言っても、従来からある物理カードのICチップ読み取り(公的個人認証/JPKI)なのか、スマホに載せた電子証明書を使い、顔写真を含む「カード代替電磁的記録」を送る新しい仕組み(ル方式)なのかで、制度上の位置づけも対応サービスも変わります。ここを取り違えると、検討の方向がまるごとずれてしまいます。
この記事では、スマホに搭載したマイナンバーカードで本人確認を行う「ル方式」の正体を、犯罪収益移転防止法(犯収法)の条文まで踏み込んで整理します。物理カードの読み取りとの違い、いつからどのOSで使えるのか、自社で導入するための前提、そして対応している本人確認サービスまでを解説します。
目次
スマホのマイナンバーカードで本人確認(ル方式)とは
ここからは、スマホに搭載したマイナンバーカードで行う本人確認の正体を確認します。
スマホのマイナンバーカードで本人確認を行う方法は、犯収法の施行規則で新たに認められた確認方法で、条文上の号記号「ル」から実務では「ル方式」と呼ばれます。マイナンバーカードの機能をスマートフォンに搭載した「スマホ用電子証明書」を使い、券面情報と本人の写真のデータを送信して本人確認を完結させる仕組みです。
その中核にあるのが「カード代替電磁的記録」というデータです。番号利用法(正式名称:行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)第2条第8項では、次のように定義されています。
この法律において「カード代替電磁的記録」とは、前項第一号から第六号までに掲げる事項(外国人住民にあっては、同項第二号に掲げる事項を除く。)及び本人の写真(略)に係る電磁的記録(略)
並びに当該電磁的記録がその送信を行った者のものであることを当該電磁的記録の送信を受けた者が確認するために必要な事項として主務省令で定める事項に係る電磁的記録について地方公共団体情報システム機構(以下「機構」という。)が電子署名(略)を行ったものにより一体的に構成された電磁的記録をいう。
出典:行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 第2条第8項|e-Gov法令検索
かみくだくと、カード代替電磁的記録とは「マイナンバーカードの券面事項(氏名・住所・生年月日など)と本人の写真のデータに、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)の電子署名を一体的に付したもの」です。
物理カードの代わりにスマートフォンへ載せる、いわば「カードそのものに相当するデータ」と言えます。ル方式は、この記録を事業者が受け取り、送信者本人のものであることを確認することで、本人確認を成立させます。
物理カードのICチップ読み取り(JPKI・カ方式)との違い
まず、読者が最も混同しやすい「物理カードのICチップ読み取り」との違いから整理します。
マイナンバーカードを使った本人確認には、大きく2つの系統があります。ひとつは物理カードのICチップを読み取る公的個人認証(JPKI)で、犯収法施行規則では現行の号記号「カ」(2025年6月24日の改正前は「ワ」)に当たります。もうひとつが、今回のスマホ用電子証明書を使う「ル方式」です。両者は「マイナンバーカードの電子証明書を使う」点では共通しますが、法令上の扱いが異なります。
最大の違いは「本人の写真を送るかどうか」です。カ方式(JPKI)は署名用電子証明書による電子署名を送信する方法で、顔写真は送りません。一方のル方式は、券面事項に加えて本人の写真の情報を含むカード代替電磁的記録を送信します。この違いは、警察庁の公表するQ&Aでも、ル方式で顔写真を求める理由として説明されています。
| 確認方法 | 物理カードのICチップ読み取り(JPKI・カ方式) | スマホ用電子証明書(ル方式) |
|---|---|---|
| カード実物 | 原則必要(スマホやリーダーでカードのICチップを読み取る) | 不要(スマホに搭載した電子証明書を利用) |
| 本人の写真の送信 | × | ● |
| 法令上の号 | 犯収法施行規則6条1項1号カ(旧ワ方式) | 犯収法施行規則6条1項1号ル(カード代替電磁的記録) |
| 対応時期 | 従来から利用可能 | 2025年6月24日〜 |
※公的個人認証(JPKI)は物理カードだけでなくスマホ用電子証明書でも利用できる基盤です。そのため「スマホでの本人確認=ル方式」と一対一で決まるわけではなく、顔写真を含むカード代替電磁的記録を使う確認方法がル方式に当たります。
なお、スマホ用電子証明書そのものは、公的個人認証サービスのポータルサイトで「スマートフォンのGP-SE(GlobalPlatform準拠のSecure Element。セキュリティ機能を有したICチップのこと)という安全な場所に格納されており、マイナンバーカード用電子証明書と同一の認証局から発行しています」と説明されています。
マイナンバーカードを持っていない人はスマホ用電子証明書を利用できない点も、あわせて示されています。
公的個人認証(JPKI)そのものの仕組みや、対応するサービス・認証局の違いまで踏み込んで整理したい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
いつから・どのOSで使えるか(iPhone・Androidの対応時期)
事業者が気にする「今もう使えるのか」を、OSごとに見ていきます。
制度としてのル方式は、2025年6月24日公布・施行の犯収法施行規則の改正(令和7年内閣府等命令第2号)で追加されました。これと同じ日に、デジタル庁とAppleから「iPhoneのマイナンバーカード」の提供開始が発表されています。制度の追加とiPhoneでの搭載開始が同日である点は紛らわしいものの、前者は犯収法上の確認方法の追加、後者はApple Walletへの搭載開始という別の出来事です。
- iPhone:2025年6月24日から「iPhoneのマイナンバーカード」を提供開始。マイナンバーカードをApple Walletに追加して利用します。
- Android:Android向けのスマホ用電子証明書搭載サービスは2023年5月から提供されており、2026年秋頃に「Androidのマイナンバーカード」へ刷新される予定です。
時系列で整理すると、次のとおりです。

Androidについては「2026年秋にはじめて使えるようになる」という意味ではありません。スマホ用電子証明書自体は2023年5月から提供されており、2026年秋はこれをiPhoneと同等の「カード」体験へ刷新する予定という位置づけです。読者が「Androidでは今スマホのマイナンバーカードをまったく使えない」と誤解しないよう、時期の意味を正確に押さえておく必要があります。
犯収法上の位置づけ(eKYC各方式の中でのル方式)
ここからは、ル方式が犯収法上どの確認方法に当たるのか、そしてeKYC全体の中でどこに位置づくのかを確認します。
施行規則の「ル」=カード代替電磁的記録(法令上の根拠)
ル方式の根拠は、犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則 第6条第1項第1号ルにあります。条文は次のとおりです。
ル 当該顧客等から、カード代替電磁的記録(番号利用法第二条第八項に規定するカード代替電磁的記録をいう。)を構成する電磁的記録(略)のうち、当該顧客等の氏名、住居、生年月日及び写真の情報が記録されているもの(以下「特定電磁的記録」という。)の送信(番号利用法第十八条の三第一項の認定を受けたプログラムを用いて行うものに限る。(略))を受けるとともに、
当該特定電磁的記録が当該送信を行った当該顧客等のものであることの確認(番号利用法第十八条の四第一項の規定により提供されるプログラム又は同条第二項の認定を受けたプログラムを用いて行うものに限る。(略))を行う方法
出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則 第6条第1項第1号ル|e-Gov法令検索
条文からわかるとおり、ル方式は「カード代替電磁的記録(氏名・住居・生年月日および写真の情報)の送信を受ける」ことと、「その記録が送信者本人のものであることを確認する」ことの2つで構成されます。いずれも、番号利用法第18条の3・第18条の4にもとづく認定プログラムを用いることが条件です。警察庁のQ&Aでは、この確認方法は対面取引・非対面取引を問わず用いられると整理されています。
eKYC各方式(ホ/ヘ/カ/ル)の中での位置と今後の方式選定
ル方式は、犯収法施行規則が定めるオンライン本人確認(eKYC)の方式のひとつです。事業者が方式を選ぶうえでは、他の方式との関係も押さえておくと判断しやすくなります。現行の主な方式は次のとおりです。
- ホ方式:本人の容貌(セルフィー)と写真付き本人確認書類の画像を送信する方法。もっとも普及していますが、2027年4月1日施行の改正(令和7年内閣府等命令第3号)で廃止されます。
- ヘ方式:本人の容貌と、本人確認書類のICチップ情報を送信する方法。
- カ方式(旧ワ方式・JPKI):マイナンバーカードの署名用電子証明書による公的個人認証を用いる方法。
- ル方式:スマホに搭載したマイナンバーカード(カード代替電磁的記録)を用いる方法。
4方式の関係と、ホ方式の廃止後に移行先となる方式を図にまとめると、次のとおりです。

そもそもeKYC(オンライン本人確認)とは何か、ここで挙げた各方式の仕組みや方式ごとのなりすましリスク・セキュリティの違いまで踏み込んで押さえたい場合は、4つの方式を体系的に整理した以下の記事もあわせてご覧ください。
方式選定で見落とせないのが、ホ方式の廃止です。もっとも普及しているホ方式が2027年4月1日で使えなくなるため、ICチップの読み取りを前提とするヘ方式・カ方式(JPKI)や、スマホ搭載マイナを使うル方式への移行が今後の論点になります。既存のeKYCフローがホ方式中心であれば、廃止までに代替となる方式へ切り替える準備が必要です。ル方式は、その移行先のひとつとして検討できます。
ホ方式の廃止をはじめ、2027年4月の犯収法改正で本人確認の要件がどう変わるのか、全体像を押さえておきたい場合は、改正内容をまとめた以下の記事もあわせてご覧ください。
自社がル方式を導入するための前提
ここからは、自社のサービスにル方式を取り入れるために何が必要かを整理します。
ル方式の条文(施行規則6条1項1号ル)は、カード代替電磁的記録の送信も、その本人性の確認も、番号利用法第18条の3第1項・第18条の4にもとづく認定を受けたプログラムを用いて行うことを求めています。つまり、ル方式に対応するには、この認定プログラムを実装した仕組みを使うことが法令上の前提になります。
この要件は、対応するeKYCサービスを利用すれば基本的にサービス側で満たされます。自社でゼロから作り込む必要はなく、認定プログラムを実装したサービスを選ぶことが実務上の出発点になります。
導入を検討するときは、この「法令上の要件=認定プログラム」と「利用者の接点=OSごとの搭載の仕組み」を分けて考えると整理しやすくなります。実際にスマホのマイナンバーカードを提示する場面はOSで実装が分かれ、iPhoneではApple Walletに搭載する形で、Androidでは搭載サービス(2026年秋に「Androidのマイナンバーカード」へ刷新予定)で提供されます。
ル方式に対応する本人確認(eKYC)サービス
ここからは、スマホのマイナンバーカード(ル方式)やマイナンバーカードを使った本人確認に対応する具体的なサービスを紹介します。ル方式そのものへの対応を表明しているサービスと、公的個人認証(JPKI)でマイナンバーカードの本人確認に対応するサービスがあり、それぞれ対応状況が異なります。
選ぶときは目的で分けると整理しやすくなります。ル方式そのものを今すぐ導入したいならLIQUIDやTRUSTDOCKなど対応を表明済みのサービス、マイナンバーカードを使った本人確認(JPKI含む)の体制づくりを幅広く相談したいならネクスウェイ、といった選び分けができます。
対応するサービスを使えば、iPhone利用者に対しては現時点でもル方式による本人確認を導入できます。Android利用者への本格対応は「Androidのマイナンバーカード」への刷新(2026年秋予定)が目安になるため、自社の利用者のOS構成もあわせて確認してください。
なお、各サービスの公式サイトでは公的個人認証(JPKI)を旧号の「ワ方式」と記載している場合がありますが、2025年6月24日の改正で現行の号記号は「カ」です(本記事前半の解説を参照)。以下では各社の記載に沿って触れつつ、現行の号にそろえて整理します。
ここでは対応方式を軸に整理しますが、料金・機能・サポート体制まで含めてeKYCサービス全体を比較したい場合は、主要サービスを網羅した以下の比較記事もあわせてご覧ください。
各サービスの対応方式や提供形態を一覧にまとめました。まずは全体像を把握したうえで、気になるサービスの詳細を確認できます。
| サービス名 | ネクスウェイの本人確認ソリューション | LIQUID eKYC | TRUSTDOCK | ダブルスタンダードeKYC | Polarify eKYC | xID(xID株式会社) | LINE eKYC |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 対応する本人確認方式 | ホ/ヘ/カ(JPKI)/SMS/郵送(リ) | カ(JPKI)/ヘ/ル方式 | ホ/ヘ/ト/チ/リ/ヌ/ル+公的個人認証(カ/旧ワ) | 撮影(ホ)/ICチップ読取(ヘ)/公的個人認証(カ/旧ワ・JPKI) | ホ/ヘ/カ(旧ワ・公的個人認証・JPKI) | JPKI(公的個人認証・カ/旧ワ方式)に特化 | 容貌+書類(画像/IC)/別ブランドでJPKI(カ/旧ワ方式) |
| ル方式対応 | ×(対応の表明なし。JPKI/カ・ヘ方式で対応) | ●(提供中) | ●(対応方式に明記) | ●(対応を表明/D-Confia・2025年12月〜) | ― (公式に確認できず。JPKIで対応) | ― (公式に確認できず。JPKI特化で対応) | ― (公式に確認できず。別ブランドのJPKIで対応) |
| 提供形態 | API・アプリ/BPO(目視確認代行) | JavaScript組込/API/SDK | API/アプリ/有人審査(24時間365日) | パッケージ/API/フルカスタマイズ | SDK(アプリ)/ブラウザ/BPO(審査代行) | API/SDK(自社アプリ組込) | クラウド(API)/LINE公式アカウント組込 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※「ル方式対応」の凡例:●=ル方式への対応を公式に表明/―=本記事の執筆時点で公式にル方式対応を確認できず(マイナンバーカードの本人確認は公的個人認証=JPKIで対応。要問い合わせ)/×=対応の表明なし。対応状況は各社で更新されるため、最新の対応可否・対応OSは各サービスの公式情報でご確認ください。
1. ネクスウェイの本人確認ソリューション(株式会社ネクスウェイ)

KYC業務をまとめて支えるトータル支援型のサービスです。株式会社ネクスウェイが提供し、eKYC(オンライン本人確認)に加えて公的個人認証(JPKI)、書類確認、法人確認、目視確認の代行(BPO)、転送不要郵便までを1つのサービスで一括対応します。
マイナンバーカードを使った本人確認では、ICチップと容貌画像を照合するヘ方式、署名用電子証明書による公的個人認証(カ方式)に対応し、デジタル庁の「デジタル認証アプリ」を活用したJPKIをAPIで提供します。
ホ方式の廃止に向けた移行や、目視確認・反社リスクチェックまで含めて相談できる点が、体制づくりを重視する事業者にとって有力な選択肢になります。なお、スマホ搭載マイナンバーカード(ル方式)そのものへの対応は、2026年7月時点で公式には表明されていません。
2. LIQUID eKYC(株式会社Liquid)

ル方式への対応を公式に表明しているeKYCサービスです。スマホのウォレット機能に登録したマイナンバーカードを用い、顔認証または指紋認証で本人確認を完結させる方法を、2025年6月24日の改正犯収法に対応する形で提供しています。運営する株式会社Liquidは、ITRの調査でeKYC市場シェアの上位を継続的に獲得していると訴求しています。
ル方式に加えて、公的個人認証(カ方式・JPKI)や、本人確認書類のICチップ読み取りと容貌撮影を照合するヘ方式にも対応します。金融・通信・古物・シェアリング・暗号資産など幅広い業種での導入実績があり、ホ方式廃止後の方式移行を含めて相談したい事業者に向いています。
3. TRUSTDOCK(株式会社TRUSTDOCK)

オンライン本人確認(eKYC)とKYCを専門に手がける独立系サービスです。公式のeKYC製品ページでは、犯収法施行規則6条1項の「ホ・ヘ・ト・チ・リ・ヌ・ル」に加え、マイナンバーカードによる公的個人認証「ワ」に対応すると案内しており、スマホ搭載マイナを使うル方式も対応方式として挙げられています。
API提供により、事業者は必要な確認だけを選んで自社サービスに組み込めます。個人の本人確認に加えて法人確認(KYB)まで対応し、24時間365日の有人審査体制を自社で持つ点も特徴です。必要な方式を柔軟に組み合わせたい事業者にとって、選択肢の広さが強みになります。
4. ダブルスタンダードeKYC(株式会社ダブルスタンダード)

東証プライム上場の株式会社ダブルスタンダードが提供するeKYCサービスで、本人確認アプリ「D-Confia(ディーコンフィア)」と技術を共有します。顔認証・OCR・データクレンジングの技術を組み合わせ、書類撮影・容貌撮影による確認から、マイナンバーカードのICチップ読み取り、公的個人認証(JPKI=ワ方式)までをオンラインで完結させます。
公的個人認証型のeKYCは、公式のJPKIページで犯収法の「ワ」に対応すると明記されています。さらに同社は、本人確認アプリ「D-Confia」で、2025年12月よりiPhoneに搭載したマイナンバーカードを用いたル方式へ随時対応を開始すると告知しています(順次対応)。ビッグデータ処理基盤の技術を土台に、本人確認と後続のデータ処理までを見据えて設計されている点が特徴です。
5. Polarify eKYC(株式会社ポラリファイ)

改正犯収法に対応した本人確認(eKYC)と、生体認証(当人認証)を提供するサービスです。株式会社ポラリファイが運営し、マイナンバーカードの署名用電子証明書を用いる公的個人認証(カ方式〈旧ワ方式〉・JPKI)に対応します。JPKI専用のページも展開しており、マイナンバーカードを使った本人確認を検討する事業者が対応状況を確認しやすくなっています。
eKYCと生体認証を組み合わせられるため、本人確認だけでなく、その後のログインや取引時の当人認証まで一貫して設計したい事業者に適しています。
6. xID(xID株式会社)

マイナンバーカードの公的個人認証(JPKI)に特化したデジタルID基盤です。中核となる個人向けアプリ「xID」は、マイナンバーカードの署名用電子証明書をNFCで読み取って一意のデジタルIDを生成します。事業者向けにはxID API/SDKを提供しており、これを通じて自社サービスにマイナンバーカードによる公的個人認証ベースの本人確認や電子署名を組み込めます。
容貌撮影を伴うホ方式・ヘ方式などの画像系には対応せず、JPKIに特化している点が特徴です。マイナンバーカードの電子証明書を使った本人確認を、開発の自由度を確保しながら自社プロダクトに実装したい事業者に向いています。
7. LINE eKYC(LINEヤフー株式会社)

LINEヤフー株式会社が、AIテクノロジーブランド「LINE CLOVA」を通じて提供する本人確認ソリューションです。容貌と書類画像・ICチップを判定するAI型のeKYCに加え、マイナンバーカードのICチップを用いる「LINE 公的個人認証サービス(JPKI)」を別ブランドで提供しており、公的個人認証(カ方式〈旧ワ方式〉)でのマイナンバーカード本人確認に対応します。
自社のアプリ・Webフォーム・LINE公式アカウントに組み込んで利用できるため、LINEを顧客接点に持つ事業者が本人確認フローを設計しやすい点が特徴です。AI型eKYCとJPKIの2系統があるため、どちらの方式を使うかは提供スキームを確認して選ぶ必要があります。
まとめ
スマホのマイナンバーカードで行う本人確認(ル方式)は、犯収法施行規則6条1項1号ルにもとづき、券面事項と本人の写真を含む「カード代替電磁的記録」を送信して本人確認を完結させる方法です。物理カードのICチップ読み取り(JPKI・カ方式)とは、顔写真を送るかどうかという点で法令上の扱いが分かれます。
制度としては2025年6月24日に追加され、iPhoneでは同日から、Androidでも2026年秋の刷新に向けて利用環境が広がっています。ホ方式が2027年4月1日で廃止されることも踏まえると、マイナンバーカードを使う方式は今後の本人確認フローで重みを増していきます。
自社への導入を検討する際は、法令上の要件(認定プログラム)を満たすeKYCサービスの中から、対応状況の合う候補を比較することが第一歩になります。まずは対応サービスの資料を取り寄せ、自社のフローに合うかを確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q. ル方式とは何ですか?
A. ル方式とは、スマートフォンに搭載したマイナンバーカード(カード代替電磁的記録)を送信して、オンラインで本人確認を完結させる犯収法上の確認方法です。犯罪収益移転防止法施行規則6条1項1号ルに定められており、券面事項(氏名・住所・生年月日)と本人の写真の情報を、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)の電子署名が付いたデータとして送信し、それが送信者本人のものであることを確認して成立します。
条文上の号記号「ル」から、実務では「ル方式」と呼ばれます。
- 出典:犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則 第6条第1項第1号ル|e-Gov法令検索
- 出典:行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 第2条第8項|e-Gov法令検索
Q. ル方式と、物理カードのICチップ読み取り(JPKI・カ方式)は何が違いますか?
A. 両者の最大の違いは、本人の写真を送信するかどうかです。ル方式は券面事項に加えて本人の写真を含むカード代替電磁的記録を送信するのに対し、カ方式(JPKI)は署名用電子証明書による電子署名を送信する方法で、顔写真は送りません。どちらもマイナンバーカードの電子証明書を使う点は共通しますが、犯収法施行規則上の号(ル/カ)が分かれており、制度上の扱いが異なります。
Q. スマホのマイナンバーカードによる本人確認(ル方式)は、iPhone・Androidでいつから使えますか?
A. iPhoneは2025年6月24日から「iPhoneのマイナンバーカード」を利用でき、Androidはスマホ用電子証明書が2023年5月から提供済みで、2026年秋頃に「Androidのマイナンバーカード」へ刷新される予定です。Androidは2026年秋に初めて使えるようになるという意味ではなく、既存の搭載サービスをiPhoneと同等の“カード”体験へ刷新する位置づけです。
制度としてのル方式(犯収法施行規則の改正)は2025年6月24日に追加されています。
Q. マイナンバーカードを持っていない人も、ル方式(スマホのマイナンバーカード)で本人確認できますか?
A. マイナンバーカードを持っていない人は、ル方式では本人確認できません。ル方式の前提となるスマホ用電子証明書は、マイナンバーカードを保有している人だけが搭載・利用できる仕組みだからです。カードを持たない利用者も含めて本人確認を受け付ける必要がある場合は、他の確認方式(画像による確認やICチップ読み取り等)を併用できる設計にしておくことが実務上の検討点になります。
Q. ホ方式が廃止されたら、ル方式に切り替えなければなりませんか?
A. ル方式への一本化が求められるわけではありません。2027年4月1日にホ方式(セルフィーと本人確認書類の撮影)は廃止されますが、移行先はICチップを読み取るヘ方式・カ方式(JPKI)や、スマホ搭載マイナを使うル方式など複数あります。既存のeKYCフローがホ方式中心であれば、廃止までに自社の利用者層やフローに合ったいずれかの方式へ切り替える準備を進めることになります。
Q. 自社のサービスにル方式を導入するには何が必要ですか?
A. 番号利用法第18条の3・第18条の4にもとづく認定を受けたプログラムを実装した仕組みを使うことが、法令上の前提になります。ル方式の条文は、カード代替電磁的記録の送信も、その記録が送信者本人のものであることの確認も、認定プログラムを用いて行うことを求めています。
そのため自社でゼロから作り込むのではなく、この要件を満たしたeKYCサービスを利用するのが一般的です。iPhone・Androidなど利用者側の接点(OSごとの搭載の仕組み)と、法令上の要件(認定プログラム)を分けて整理すると検討しやすくなります。
Q. ル方式に対応している本人確認(eKYC)サービスはどれですか?
A. 本記事の執筆時点では、LIQUID eKYC やTRUSTDOCK がル方式への対応を公式に表明しています。ダブルスタンダードの「D-Confia」のように対応時期を告知しているサービスもあります。
一方、マイナンバーカードでの本人確認に対応していても、公的個人認証(JPKI・カ方式)が中心でル方式は未表明のサービスもあります。対応状況は各社で更新されるため、最終的には各サービスの公式情報や資料で最新の対応状況を確認してください。本記事後半の一覧では、各サービスの対応方式と提供形態を横並びで確認できます。
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