建設業では、材料費や外注費、職人の人件費、重機の手配といった支払いが工事の完成前に先行する一方、工事代金の入金は完成・検収の後になりやすく、着工から入金までの立替期間が長くなりがちです。受注が順調でも手元資金は薄くなり、次の支払いや大型案件の着工資金の工面に悩む場面は少なくありません。
資金を外部から調達する方法は、銀行融資やファクタリングだけではありません。公共工事の前払金や、建設業だけが使える公的な融資制度まで選択肢は幅広くあります。手段ごとに入金までの早さ・調達できる額・審査の通りやすさが異なるため、自社の状況に合う方法を見極めることが資金繰りの安定につながります。
この記事では、建設業で使える資金調達手段を一覧で比較し、各手段が自社に向くかどうか、公共工事で使える前払金や公的制度の仕組み、そしてケース別の選び方までを整理します。手元資金の確保に向けた具体的な検討材料としてご活用ください。
目次
建設業で使える資金調達手段の比較一覧
まずは、建設業で使える主な資金調達手段を一覧で見渡します。民間の融資、公的な融資、売掛債権や手形の早期資金化、公共工事だけで使える制度まで、資金化までの目安・調達額の目安・コスト・審査のハードル・建設業で向く場面を横並びに整理しました。

| 資金調達手段 | 銀行融資・プロパー融資 | 信用保証協会の保証付き融資 | 日本政策金融公庫の融資 | ビジネスローン・オンライン融資 | ファクタリング(請負代金・注文書・出来高) | 手形割引・でんさい割引 | 公共工事の前払金・中間前払金(前払金保証) | 出来高融資制度・地域建設業経営強化融資制度 | リース・割賦 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 資金化までの目安 | 数週間〜1か月程度 | 数週間程度 | 数週間〜1か月程度 | 最短即日〜数日 | 最短即日〜数日 | 数日程度 | 契約後・工事中盤の請求後 | 工事の出来高に応じて | 数日〜数週間 |
| 調達額の目安 | 数百万〜数億円 | 保証枠の範囲内 | 数百万〜数千万円 | 数十万〜1,000万円程度 | 数十万〜数億円(売掛債権の範囲) | 手形・電子記録債権の額面の範囲 | 前払金は請負代金の通常4割+中間前払金2割 | 請負金額から前払金等を差し引いた範囲内 | 対象となる設備・重機の範囲 |
| コスト(金利・手数料) | 低い(金利) | 低め(金利+保証料) | 低い(公的な低利) | 高め(金利) | 手数料が生じる(2社間は高め) | 割引料がかかる | 低い(低い保証料) | 低い(低金利とされる) | リース料に金利相当分を含む |
| 審査のハードル | 高い(決算3期・経営事項審査・完成工事高を重視) | 中〜高(保証審査) | 中(公的な低利融資) | 中(金利は高めになりやすい) | 低〜中(自社が赤字でも売掛先の信用を重視) | 中 | 低(保証事業会社の保証。保証人・担保不要) | 低(保証人・担保不要) | 中 |
| 建設業で向く場面 | 低金利で長期の運転・設備資金を確保したいとき | 担保・実績が乏しく銀行融資を通しにくいとき | 創業・設備投資などを公的な低利で借りたいとき | 少額の資金を早く借りたいとき | 借入枠がない・工事代金や注文書を早期に資金化したいとき | 受け取った手形・でんさいを支払期日前に現金化したいとき | 公共工事の着工資金・中盤の資金を確保したいとき | 公共工事等で出来高に応じて公的に借りたいとき | 重機・設備を初期投資を抑えて導入したいとき |
※上記は一般的な傾向の目安です。入金までの日数・調達額・手数料・金利は、事業者や契約条件により異なります。
各手段の建設業での実際
ここからは、各手段が建設業で実際にどう使えるのかを、向く場面・向かない場面を先に示しながら解説します。手段は「借りて資金を作る融資」「借りずに債権や手形で入金を前倒す方法」「設備・重機を調達するリース」の3つに分けて整理します。公共工事だけで使える前払金保証や公的な融資制度については、この後の専用セクションで詳しく取り上げます。
融資で調達する(借りて資金を作る)
銀行融資・プロパー融資
金利を抑えて長期の運転資金や設備資金を確保したい場合、銀行のプロパー融資(信用保証協会の保証を付けない直接融資)が基本の選択肢になります。低コストで大きな額を調達できる一方、審査のハードルは高めです。
建設業の審査では、過去3期分の決算書に加え、完成工事高や施工能力、経営事項審査(公共工事の入札参加に必要な、経営状況などを点数化する審査)の評点が見られます。工事が完成していない期(工事未成)や赤字の期の決算は評価が下がりやすく、審査に通りにくくなる点に注意が必要です。
資金使途と返済計画を明確にした事業計画書を用意し、複数の金融機関と日頃から取引関係を築いておくことが、融資を受けやすくする実務的なポイントです。
信用保証協会の保証付き融資
担保や実績が乏しく、プロパー融資を通しにくい場合は、信用保証協会の保証を付けた融資が有効です。協会が保証人となることで、金融機関が融資に応じやすくなります。創業間もない企業や、担保となる不動産を持たない下請け中心の事業者に向いています。
ただし、金融機関の審査に加えて保証協会の保証審査も必要となり、保証料の負担が生じます。融資が実行されるまでに一定の期間がかかるため、急ぎの資金需要には向きません。
日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫は、政府が出資する公的金融機関です。民間金融機関を補完する役割を担い、創業資金や設備投資資金を比較的低い金利で借りやすいのが特徴です。創業期や、民間の融資だけでは資金が足りない段階で活用しやすい選択肢といえます。
民間金融機関との取引実績が浅い事業者でも相談しやすい一方、申込から融資実行までは数週間から1か月程度を見込む必要があります。
ビジネスローン・オンライン融資
ノンバンクや金融機関が提供するビジネスローン・オンライン融資は、最短即日から数日で少額を借りられるスピードが強みです。銀行融資が間に合わない急ぎの支払いに対応しやすい反面、金利は銀行融資より高めに設定される傾向があります。
調達額は数十万円から1,000万円程度が中心で、大型の資金調達には向きません。一時的なつなぎ資金として使い、返済負担が重くならない範囲で利用するのが現実的です。
債権・手形を早期に資金化する(借りずに入金を前倒す)
ファクタリング(請負代金・出来高・注文書段階の債権の資金化)
ファクタリングは、保有している売掛債権(工事代金の請求権など)を専門会社に買い取ってもらい、入金期日を待たずに現金化する方法です。借入れではなく債権の売却であるため、負債が増えず、自社が赤字でも売掛先の信用を軸に利用できるのが、融資と大きく異なる点です。
一般に「ファクタリング」とは、事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です。
出典:ファクタリングの利用に関する注意喚起|金融庁
建設業では、工事代金の請求権(請負代金)だけでなく、工事が完成する前の出来高部分や、受注時点の注文書・発注書を対象に資金化できるサービスもあります。まだ請求前の段階でも、着工前の材料費・外注費・人件費を確保できるため、立替負担の大きい建設業と相性が良い方法です。
契約方式には、利用会社とファクタリング会社の2社で契約する2社間(売掛先に知られずに利用できるが手数料は高め)と、売掛先を含めた3社間(手数料は低いが売掛先の承諾が必要)があります。手数料は取引条件によって幅があるため、複数社の見積もりを比較して選ぶことが大切です。
ファクタリングを利用する際は、それを装った高金利の貸付けに注意が必要です。金融庁は、貸付けと同様の機能を持つ取引は貸金業に該当するおそれがあるとして、注意を呼びかけています。
ファクタリングとして行われる取引であっても、経済的に貸付けと同様の機能を有していると思われるようなものは、貸金業に該当するおそれがあります。
出典:ファクタリングの利用に関する注意喚起|金融庁
あわせて、給与を担保にした「給与ファクタリング」など、貸金業登録のない業者による資金調達には手を出さないことも重要です。金融庁は、給与ファクタリングを装って個人に貸付けを行うヤミ金融の存在を確認したとして、注意を呼びかけています。契約前に、登録された貸金業者か、債権の売買として適正な条件かを確認しましょう。
手形割引・でんさい割引
受け取った約束手形や電子記録債権(でんさい)を、支払期日前に金融機関などへ持ち込んで現金化するのが手形割引・でんさい割引です。手形取引が残る建設業では、受け取った手形を早期に資金化する手段として使われてきました。
ただし、紙の手形は電子化・廃止に向かっています。金融庁は、銀行界が2026年度末までに電子交換所での手形・小切手の交換をゼロにし、2027年度初から交換を廃止する方針を示していることを公表しています。
銀行界は、政府方針に沿って、「手形・小切手機能の全面的な電子化に向けた自主行動計画」において、2026年度末までに電子交換所における手形・小切手の交換枚数をゼロにすることを最終目標として掲げ、2027年度初から電子交換所における手形・小切手の交換を廃止することとし、産業界および政府とも一丸となって当該目標の達成に取り組んでいます。
出典:手形・小切手機能の全面的な電子化について|金融庁
あわせて、手形で下請代金を支払う場合のサイト(支払期日までの期間)も短縮されています。国土交通省は、建設業法にもとづき、2024年(令和6年)11月から、期間が60日を超える手形を指導の対象とする運用に変更したことを示しています。従来は建設工事を含む多くの業種で120日が基準でしたが、60日へ統一されました。
令和6年11月から、手形の期間が60日を超える手形を「割引困難手形」のおそれがあるものとして指導の対象とする運用に変更。
出典:手形による下請代金の支払(手形期間のルール)|国土交通省
リース・割賦で設備・重機を調達する
重機や車両、建設機械を導入する際は、一括購入ではなくリースや割賦を使うことで、初期の資金負担を抑えられます。運転資金を手元に残しながら設備を確保できるため、大きな設備投資が資金繰りを圧迫するのを避けたいときに向いています。
リースは融資のように現金を手にする手段ではなく、設備投資の負担を毎月の費用に平準化する方法です。手元資金を運転資金に回しながら必要な重機・車両を確保したい場合の選択肢になります。
建設業だけが使える公的な資金調達制度
公共工事を請ける建設業には、一般の融資とは別に、建設業だからこそ使える公的な制度があります。着工前にまとまった資金を受け取れる前払金保証制度と、工事の出来高に応じて公的に融資を受けられる制度です。いずれも保証人や不動産担保を必要とせず、資金繰りの負担を軽くできます。
これらの制度は、公共工事を発注者から直接受注する立場(元請)が発注者に対して持つ債権を前提とする仕組みです。公共工事の下請けとして元請から仕事を受けている場合は、元請に対する請負代金をファクタリングなどで早期に資金化する方法が中心になります。

公共工事前払金保証制度(着工前にまとまった資金を受け取る)
公共工事では、発注者である国や地方公共団体が、工事代金の一部を着工前に前払いする仕組みが整えられています。この前払金を受け取るために、前払金保証事業会社の保証を利用するのが公共工事前払金保証制度です。前払金の割合は、通常は請負代金の4割とされています。
国をはじめ地方公共団体などは、発注した工事の円滑、適正な施工を支援するために、工事代金の一部(通常は4割)を前払いする制度(前払金制度)を整備しています。
出典:前払金保証制度について|東日本建設業保証株式会社
さらに、一定の要件を満たすと、前払金に加えて中間前払金を受け取れます。工期の2分の1が経過し、その時点で実施すべき作業が行われ、出来高が請負金額の2分の1以上に達していることが条件です。
国土交通省、農林水産省をはじめとする国の機関や地方公共団体などは、前払金に加えて、工事代金の2割を前払いする制度(中間前払金制度)を整備しています。
出典:中間前払金保証制度について|東日本建設業保証株式会社
前払金保証には保証人や担保を設定する必要がなく、低い保証料で着工資金を確保できます。前払金で下請企業への支払いや資材の手当てを早期に進められるため、立替負担の大きい公共工事の資金繰りを支える中心的な仕組みです。利用にあたっては、東日本建設業保証・西日本建設業保証・北海道建設業信用保証といった前払金保証事業会社が窓口となります。
出来高融資制度(建設業振興基金)
出来高融資制度は、工事の出来高に応じて受けられる公的な融資です。次に述べる国の地域建設業経営強化融資制度の枠組みのなかで、一般財団法人建設業振興基金が融資窓口(融資事業者)の一つとして行います。保証人・担保が不要で、金融機関の借入枠がない場合でも相談でき、工事出来高の範囲で資金調達ができるため、資金繰り計画を立てやすいのが特徴です。
出典:出来高融資制度|資金繰り対策|一般財団法人建設業振興基金
- 出来高に応じた融資が受けられます! 工事出来高の範囲で資金調達ができますので資金繰り計画の立案が容易になります。
- 簡易・迅速な融資が受けられます! 保証人・担保不要 金融機関の借入枠がない場合もOK。
融資は、建設業振興基金への相談から始まり、発注者への債権譲渡の承諾を経て、債権譲渡契約を結んだうえで実行されます。保証人・担保が不要で低金利とされていますが、金利や融資限度額の具体的な数値は公式には示されていないため、実際の条件は建設業振興基金への相談で確認するとよいでしょう。
地域建設業経営強化融資制度(国土交通省)
地域建設業経営強化融資制度は、国土交通省が設けた制度の枠組みで、前述の出来高融資制度もこの制度のもとで運用されます。公共工事などの発注者に対して持つ工事請負代金債権を担保に、出来高に応じて融資を受けられます。さらに、保証事業会社の保証を付けることで、工事の出来高を超える部分についても金融機関から融資を受けられます。
中小・中堅建設企業が、公共工事等の発注者に対して有する工事請負代金債権を担保に事業協同組合等又は一定の民間事業者から出来高に応じて融資を受けられるとともに、保証事業会社の保証により、工事の出来高を超える部分についても金融機関から融資を受けることが可能となる地域建設業経営強化融資制度を平成20年11月4日より実施しています。
出典:地域建設業経営強化融資制度について|国土交通省
利用にあたっては、発注者が工事請負代金債権の譲渡を承諾していることが必要です。対象は、資本金20億円以下または従業員数1,500人以下の中小・中堅建設企業で、公共工事や公共性のある民間工事が対象となります。融資を受けられるのは、請負金額から前払金等を差し引いた範囲内です。
国土交通省が示すモデルケースでは、請負金額1億円・工期6か月・前払金4,000万円の工事で、工事の出来高が70%に達した段階で、最大6,000万円の融資を受けられるとされています。制度は2031年(令和13年)3月31日まで延長されています。
なぜ建設業は資金繰りが厳しいのか
自社に合う手段を選ぶには、建設業の資金繰りがなぜ厳しくなりやすいのか、その構造を押さえておくと判断しやすくなります。原因は主に、入金と支払いのタイミングのズレ、先行して発生する立替、そして手形による現金化の遅れにあります。

支払サイトと入金サイトのズレ
建設業では、工事代金の入金が完成・検収の後になりやすく、着工から入金まで数か月あくことも珍しくありません。工期が長い大型工事ほど、この立替期間は長くなります。一方で、材料費や人件費などの支払いは工事の進行中に発生し続けるため、売上はあっても手元の現金が不足しやすい構造になっています。
特に重層下請構造のもとでは、下請けほど元請けの支払条件を受け入れざるを得ず、資金繰りのしわ寄せが集まりやすくなります。
材料費・外注費・人件費・重機費の先行立替
工事が始まると、建築資材の購入費、作業員や職人への人件費、下請けへの外注費、重機の調達費といった支出が先に発生します。これらはすべて、工事代金が入金される前に自社が立て替える必要があります。
工事の規模が大きくなるほど、1件あたりに必要な立替資金も膨らみます。天候による工期の延長や追加工事が生じると、入金がさらに後ろ倒しになり、立替負担が想定を超えることもあります。
こうした立替負担が建設業で特に重くなる事情は、売掛債権の資金化を手がけるファクタリング会社の相談現場にも表れています。

弊社で最も多いのは建設関係の企業様です。次に多いのが運送業のお客様で、この2つは突出して多いです。実はこの2つの業種は、どうしても自分の売上以上にかかる支払いが増えてしまう事情があるからです。運送業であれば燃料費が上がるだけでも追加で負担がかかりますし、建設業であれば下請け業者を雇うことや、材料費や工具類を先に確保しなくてはいけないため、工程が進む段階で一時的に入金額よりも支払いが増えてしまうことがあります。また、施工の現場が天候によって稼働日数が左右される部分もありますので、建設業はファクタリング利用で問題が解決できるケースが多く、ご相談が多い傾向にあります。
手形・でんさいによる現金化の遅れ
建設業では、工事代金の支払いに手形や電子記録債権が使われる場面が残っています。手形で受け取ると、額面どおりの現金を手にできるのは支払期日の後になり、入金がさらに遅れます。
工期末や年度末に入金が偏りやすいことに加え、支払いを手形やでんさいで受け取ると、現金化がその期日の先まで延び、立替期間がさらに長くなります。受け取った手形やでんさいを支払期日前に資金化できるかどうかが、手元資金を保つうえでの分かれ目になります。
自社のケース別・資金調達手段の選び方
手段の全体像と建設業特有の事情を踏まえたうえで、自社の状況ごとに向いている手段を整理します。民間工事か公共工事か、支払サイトの長さ、資金が必要になる緊急度、決算の状況によって、選ぶべき手段は変わります。
支払サイトが長い元請けが中心のとき
入金までの期間が長い元請けを相手にしている場合、工事代金の請求権を早期に資金化するファクタリングが立替負担の軽減に効きます。借入枠を使わずに現金を確保でき、負債を増やさずに済みます。恒常的に立替が発生するなら、売掛債権の一部だけを資金化し、手数料負担を抑えながら継続的に使う方法もあります。
急いで現金が必要なとき
翌月の支払いに間に合わせたいなど、スピードを最優先する場面では、最短即日から数日で資金化できるファクタリングや、少額を早く借りられるビジネスローンが候補になります。銀行融資は低コストですが実行まで時間がかかるため、急ぎの資金には向きません。緊急時の手段は金利や手数料が高くなりやすいため、必要な額に絞って使うのが現実的です。
銀行融資では間に合わない急ぎの局面については、ファクタリングの相談現場でも具体的な声が語られています。
多いのは、「このままだと2〜3週間後の支払いに間に合わない」という局面です。銀行融資は申込みから1ヶ月〜2か月ぐらいかかることもあるので、時間が間に合わないとなったときに、ファクタリングを選ばれることが多いです。
公共工事を請けるとき
公共工事や公共性のある民間工事を請ける場合は、まず建設業だけが使える公的制度を検討します。着工前には前払金保証制度で請負代金の一部を受け取り、工事の進行中は出来高融資制度や地域建設業経営強化融資制度で出来高に応じた資金を確保できます。いずれも保証人・担保が不要で、民間の融資より負担を抑えられます。
赤字期・借入枠がなく融資が難しいとき
工事未成の期や赤字の決算で銀行融資の審査に通りにくい、あるいは借入枠を使い切っている場合は、融資以外の手段を軸に据えるのが現実的です。ファクタリングは自社の財務状況より売掛先の信用を重視するため、赤字期でも利用できることがあります。負債を増やさずに資金を確保できる点も、これ以上借入れを増やしたくない状況に合います。
ファクタリングの審査では実際に何が見られ、通過率を高めるにはどう備えればよいのか、また安全な業者をどう見分けるのかは、以下の記事で詳しく解説しています。赤字期の利用を検討する際の判断材料としてあわせてご確認ください。
前倒しでの資金化を相談できるサービス
ここでは、工事代金や注文書などの債権を早期に資金化したいときに相談できるファクタリングサービスを紹介します。建設業の請負代金や注文書に対応するサービスを中心に、手数料・入金スピード・買取可能額・契約方式を比較しました。
| サービス名 | ビートレーディング | PAYTODAY | Mentor Capital | 入金前払いシステム(JTC) | ベストペイ(BESTPAY) | トップ・マネジメント |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 手数料(レンジ) | 2社間4%〜/3社間2%〜 | 1%〜9.5% | 要お問い合わせ | 1.2%〜10%(承諾ありは1.2%〜、承諾なしは5%〜) | 5%〜(上限非公開) | 2社間3.5%〜/3社間0.5%〜(他商品は上限非公開) |
| 入金スピード(最短) | 最短即日(審査最短2時間) | 最短30分 | 最短即日(審査最短60秒) | 最短即日 | 最短翌営業日 | 最短即日(2社間) |
| 買取可能額 | 1万円〜7億円(買取実績) | 10万円〜上限なし | 要お問い合わせ | 100万円〜(上限は売掛債権の範囲内) | 要お問い合わせ | 要お問い合わせ |
| 契約方式 | 2社間・3社間・注文書 | 2社間中心(3社間も案内) | 2社間・3社間 | 2社間(非通知)・3社間 | 2社間のみ | 2社間・3社間・2.5社間(電ふぁく) |
| 建設業での対応 | 請求書・注文書に対応 | 請求書(売掛債権)に対応 | 請求書・契約書に対応 (建設業の相談が最多) | 請求書に対応 (建設・運送・製造が中心) | 注文書(発注書)に対応 (利用業種は建設業が最多) | 請求書・注文書・見積書に対応 |
| 詳細情報 | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式資料を見る | 公式サイト | 公式サイト |
※手数料・入金スピード・買取可能額は各社公式サイトの公表値(2026年7月時点)にもとづきます。「要お問い合わせ」は、公式で具体的な数値が非公開、または表記に幅がある項目です。手数料は売掛先の信用状況・契約方式・債権内容などにより変動するため、実際の条件は各社にご確認ください。
さらに多くのファクタリング会社を、手数料・入金スピード・買取可能額で見比べたい場合は、以下の記事で主要なサービスを幅広く比較していますので、あわせてご覧ください。
1. ビートレーディング(株式会社ビートレーディング)

2012年創業のファクタリング専業会社で、2社間・3社間に加え、注文書(発注書)を対象とした注文書ファクタリングにも対応します。工事の受注段階で資金化できるため、着工前の材料費・外注費を確保したい建設業の資金需要に合います。
手数料は2社間が4%から、3社間が2%からと公式サイトで具体的なレンジを開示しています。買取率は最大98%、買取金額は1万円から7億円までの実績があり、少額から大型の資金調達まで幅広く対応します。審査は最短2時間、資金化は最短即日という速さも特徴です。全国5拠点の体制で、顧問弁護士の起用や経営革新等支援機関の認定など、コンプライアンス体制も整えています。
2. PAYTODAY(Dual Life Partners株式会社)

オンライン完結型のファクタリングサービスで、独自のAI審査により面談不要で申し込めます。書類の提出から入金までをオンラインで済ませたい事業者に向いています。
手数料は1%から9.5%と上限まで公式に明示されており、初期費用・月額費用はかかりません。買取金額は10万円から上限なしで、少額のニーズにも対応します。入金は最短30分という速さで、急ぎの資金需要に応えます。売掛先への通知が不要な2社間方式を主軸とし、法人だけでなく個人事業主・フリーランスも利用できます。
3. Mentor Capital(株式会社Mentor Capital)

売掛金の早期現金化を支援するファクタリング会社で、相談が最も多い業種として建設業を挙げています。支払サイトが長く立替負担が大きい建設業の事情を踏まえた対応に強みがあります。
2社間・3社間の両方式に対応し、最短即日での資金化が可能です。赤字や債務超過、税金の滞納がある企業、創業1年未満の事業者も対象とし、売掛債権の実在性と売掛先の支払実績を軸に総合的に審査することで、買取率最大98%を訴求しています。数百万円から数千万円規模の資金調達の実績もあり、ヒアリングをもとに無理のない範囲での利用を提案するとしています。
4. 入金前払いシステム(株式会社JTC)

名古屋・東京・大阪に拠点を持つファクタリング専業会社です。2社間方式を「入金前払いシステム」と呼び、取引先に知られずに売掛金を早期資金化できる点を掲げています。売掛先との関係を保ちながら資金を確保したい事業者に向いています。
手数料は、取引先の承諾が得られる契約で1.2%から、承諾のない契約で目安5%からとされ、調達可能額は100万円から売掛金額の範囲で上限なしと案内されています。金額が大きいほど手数料を抑えやすい傾向があります。事前審査で見積もり金額と手数料を提示し、内容を確認したうえで契約に進む流れです。相談は建設業をはじめ幅広い業種から寄せられています。
5. ベストペイ(株式会社アレシア)

受注時点の注文書・受注書を対象に資金化する、注文書(発注書)ファクタリングのサービスです。請求書が発行される前の受注段階で資金化できるため、着手前の材料費・外注費・人件費といった先行資金の確保に向いています。
電子記録債権機関の指定を受けたフィンテック企業のリスク分析手法を活用し、債権が確定する前の受注ベースでの資金化を実現していると説明しています。手数料は5%からで、償還請求権のない買取型(万一売掛先が支払わなくても利用者が返済を求められない方式)を採用しています。入金は最短翌営業日です。注文書ファクタリングの取り扱いは法人が対象です。
6. トップ・マネジメント(株式会社トップ・マネジメント)

2009年創業のファクタリング専業会社で、商品ラインナップの幅広さが特徴です。2社間・3社間に加え、見積書・受注書・発注書を対象とした将来債権ファクタリングや、電子記録債権を活用した2.5社間方式「電ふぁく」を扱います。
手数料は2社間が3.5%から、3社間が0.5%から、電ふぁくが1.8%からとされ、電ふぁくは電子記録債権を使うことで売掛先に債権譲渡を知られにくい設計です。累計取引実績は約45,000社で、2社間は最短即日での資金化に対応します。受注段階の債権やでんさいなど、資金化したい債権の種類に応じて手段を選べます。
まとめ
建設業の資金調達には、銀行融資や日本政策金融公庫といった融資、工事代金や注文書を早期に資金化するファクタリング、受け取った手形の割引、そして公共工事だけで使える前払金保証制度・出来高融資制度・地域建設業経営強化融資制度まで、幅広い選択肢があります。
手段ごとに入金までの早さ・調達額・審査の通りやすさが異なるため、支払サイトの長さや緊急度、公共工事かどうか、決算の状況といった自社のケースに照らして、向いている手段を2〜3個に絞り込むことが第一歩です。借入枠がない、赤字期で融資が難しいといった状況でも、売掛債権を活かせる手段があります。まずは自社に合う方法から、資料請求や相談で具体的な条件を確認してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 建設業の資金調達にはどんな方法がありますか?
A. 建設業の資金調達には、銀行融資や日本政策金融公庫などの融資、工事代金や注文書を早期に資金化するファクタリング、受け取った手形の割引、そして公共工事だけで使える前払金保証制度や出来高融資制度があります。手段ごとに入金までの早さ・調達額・審査の通りやすさが異なるため、支払サイトの長さや緊急度、公共工事かどうかといった自社の状況に照らして、向いている手段を絞り込むことが大切です。
Q. 建設業は赤字でも資金調達できますか?
A. 建設業が赤字でも、売掛先の信用を軸に審査するファクタリングであれば資金調達できる場合があります。ファクタリングは借入れではなく売掛債権(工事代金の請求権など)の売却で、自社の財務状況より売掛先の支払能力が重視されるためです。工事未成の期や借入枠を使い切っている状況でも、負債を増やさずに現金を確保できます。ただし、売掛債権の実在性なども審査されるため、必ず利用できるとは限りません。
Q. 建設業のファクタリングは注文書や出来高でも資金化できますか?
A. 建設業のファクタリングは、確定した請求分だけでなく、工事が完成する前の出来高部分や、受注時点の注文書・発注書を対象に資金化できるサービスもあります。まだ請求前の段階でも資金化できるため、着工前の材料費・外注費・人件費の確保に使えます。ただし、対応できる債権の種類はサービスによって異なるため、注文書や出来高の資金化を希望する場合は事前に確認が必要です。
Q. 建設業に必要な運転資金の目安はどれくらいですか?
A. 建設業に必要な運転資金は、工事代金が入金されるまでの立替期間に発生する材料費・外注費・人件費などの支出を賄える額が目安で、一般には月商(月間の売上高)の数か月分が一つの基準とされます。建設業は着工から入金までの立替期間が長く、工期や支払サイトによって必要額が変わります。資金繰り表で不足する時期と金額をあらかじめ把握し、余裕を持たせて確保しておくと安心です。
Q. 公共工事の前払金はいくら受け取れますか?
A. 公共工事の前払金は、通常は請負代金の4割を着工前に受け取れます。さらに、工期の2分の1が経過し、その時点で実施すべき作業が行われ、出来高が請負金額の2分の1以上に達しているなどの要件を満たすと、中間前払金として工事代金の2割を追加で受け取れます。いずれも前払金保証事業会社の保証を利用する仕組みで、保証人や担保は不要です。前払金の割合は発注者によって異なる場合があります。
Q. 建設業の手形の「60日ルール」とは何ですか?
A. 手形の「60日ルール」とは、下請代金を手形で支払う際に、支払期日までの期間(サイト)が60日を超える手形が行政指導の対象になる基準のことです。国土交通省は建設業法にもとづき、2024年(令和6年)11月から、従来120日だった基準を60日に統一しました。
あわせて紙の手形自体も電子化・廃止に向かっており、銀行界は2026年度末までに電子交換所での手形・小切手の交換をゼロにする方針を示しています。受け取った手形やでんさいをどう早期に資金化するかが、当面の資金繰りの論点になります。
Q. 建設業の資金調達はファクタリングと銀行融資のどちらを選べばよいですか?
A. 建設業の資金調達では、急いで現金が必要なときや借入枠がないときはファクタリング、低コストで長期の資金を確保したいときは銀行融資が向いています。ファクタリングは最短即日で資金化でき審査も通りやすい反面、手数料が生じます。銀行融資は金利が低く大きな額を長期で借りられますが、実行まで時間がかかり審査のハードルも高めです。
緊急度・コスト・調達額を踏まえて選び、状況によっては両者を組み合わせて使い分けるのも有効です。
Q. 建設業が銀行融資の審査で重視されるポイントは何ですか?
A. 建設業の銀行融資審査では、過去3期分の決算書に加え、完成工事高や施工能力、公共工事の入札に用いる経営事項審査(経審)の評点が重視されます。工事未成や赤字の決算は評価が下がりやすいため、資金使途と返済計画を明確にした事業計画書を用意し、日頃から複数の金融機関と取引関係を築いておくことが、融資を受けやすくする実務的なポイントです。
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