毎月の月額料金を払い続けるクラウド型ではなく、一度購入すれば使い続けられる「買い切り型(インストール型)」の給与計算ソフトを探していませんか。少人数の給与計算に必要な機能はそろっていて、ランニングコストは抑えたい。そう考える小規模の会社や個人事業主、社会保険労務士の方は少なくありません。
ただ、買い切り型は「買ったら終わり」ではない点に注意が必要です。給与計算は毎年の法改正への対応が欠かせず、買い切り型でも年次更新版の購入や年間保守契約という形で、継続的な費用が発生する製品がほとんどです。買い切り価格の安さだけで選ぶと、数年使ううちにかえって割高になることもあります。
本記事では、買い切り型(インストール型)の給与計算ソフト6製品を、買い切り価格と毎年の更新・保守費用、法改正への対応方式まで一つの表で横並びにして比較します。あわせて、買い切りとクラウドのどちらが自社に向くかの判断材料も整理しました。自社に合う1本を選ぶための検討材料としてご活用ください。
また、買い切り型で足りるか、それともクラウド型に切り替えるべきかを、いくつかの質問に答えるだけで判断できる「かんたん診断」もご用意しています。迷ったときの出発点としてお使いください。
目次
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本記事の対象範囲(買い切り型に絞って比較します)
この記事は、給与計算ソフトのうち「買い切り型(インストール型・パッケージ版)」に絞って比較・解説します。パソコンにインストールして使い、購入時に代金を支払えばソフト自体はそのまま使い続けられるタイプです。
月額料金で使うクラウド型も含めた給与計算ソフト全体の比較や、クラウド型の選び方は別の記事で扱っています。買い切りとクラウドの両方を視野に入れて幅広く検討したい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。
ここからは、買い切り型に的を絞って製品を見ていきます。
買い切り型の給与計算ソフトおすすめ比較【比較表】
まずは、買い切り型(インストール型)で購入できる代表的な給与計算ソフト6製品を比較します。買い切り価格だけでなく、2年目以降にかかる年次更新・保守費用や、年末調整への対応まで並べました。全体像を表で確認してください。
| 製品名 | 給料王 | かるがるできる給料 | 給料らくだプロ26 | Cells給与 | MJSかんたん!給与 | JDL IBEX給与II |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 買い切り価格 | 初年度82,500円 (ソフト+保守料込み) ※本体単独価格は要問い合わせ | 5,500円(税込) (かるがるできる給料26・本体) | 19,602円(税込) (給料らくだプロ26・実売/定価21,780円) | 38,500円(税込) (Cells給与・本体) | 35,750円(税込) (Ver.13・本体) | 38,000円(税抜) (2027年1月に48,000円へ改定予定) |
| 年次更新・保守費用 | 38,500円/年(税込) (2年目以降のバリューサポート) | 要問い合わせ (購入後1年は無償、以降は有償保守) | 要問い合わせ (年次バージョンアップ型) | 42,900円/年(税込) (初年度から保守契約が必要) | 15,950円/年(税込) (あんしん!サポート) | 保守クラブ22,000円/年(税抜) (2027年1月から30,000円) 非加入時は都度15,000円(税抜) |
| 法改正対応方式 | 保守契約型 (バリューサポートで更新) | 年次買い替え型 (新版購入または有償保守) | 年次買い替え型 (毎年の新版購入) | 保守契約型 (年間保守で更新) | 保守契約型 (あんしん!サポートで更新) | 保守契約型 (保守クラブまたは都度更新) |
| 年末調整 | ● | ×自動計算なし(手入力・印刷のみ) | ● | ● | ● | △会計事務所側で実施する運用が前提 |
| 対応人数・規模 | 中小企業・個人事業主向け | 20名程度まで (登録上限30名) | 100名程度まで (登録上限なし) | 社労士・会計事務所向け (複数顧問先を一元管理) | 50名程度まで (登録上限50名) | 処理300人まで (登録1,000社・会計事務所向け) |
| 対応OS・複数台 | Windows(詳細は公式) | Windows 11 Home/Pro 複数台の同時利用不可(データは1台のみ) | Windows(詳細は公式) | Windows(詳細は公式) | Windows 11のみ 複数台利用は公表なし | Windows 11のみ(Mac非対応) 複数台のデータ共有不可 |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※2026年9月時点の各社公式サイト等の記載に基づきます。買い切り価格は原則としてソフト本体価格を記載し、税抜・税込の別は各社公式の表記に従いました。給料王は本体単独価格が公式で確認できず、初年度82,500円(ソフト+保守料込み)の表記のみのため、他社の本体価格と同じ基準では横並びできない点にご注意ください。Cells給与は初年度から保守契約が必要です。かるがるできる給料・給料らくだプロの年次更新費用は公式で金額を確認できなかったため「要問い合わせ」としています。JDL IBEX給与IIは2027年1月に本体価格・保守年会費の改定が予告されています。買い切り型は原則として1台のパソコンでの運用が前提で、複数台でのデータ共有可否は製品によって異なります。最新の料金・機能は各社公式ページをご確認ください。
買い切り価格は数千円から4万円程度まで幅があり、2年目以降の更新・保守費用の有無や金額も製品によって異なります。価格の安さと、必要な機能(特に年末調整の自動計算)がそろっているかを、あわせて見ることが大切です。
たとえば最安のかるがるできる給料(5,500円)は年末調整の自動計算に対応しないため、年末調整を税理士や会計事務所に任せる場合の割安な選択肢になります。年末調整まで自社で行いたい場合は、対応している他製品を選ぶとよいでしょう。次の各製品の紹介で、それぞれの特徴を詳しく確認していきます。
買い切り型の給与計算ソフト6製品の詳細
続いて、買い切り型の各製品について、提供元・買い切り価格・特徴・法改正への対応を個別に見ていきます。自社の従業員数や必要な機能に照らして、比較表で気になった製品を詳しく確認してください。
1. 給料王(ソリマチ株式会社)

会計ソフト「会計王」などを手がけるソリマチ株式会社が、中小企業・個人事業主向けに提供する給与計算ソフトです。給与・賞与計算から年末調整、社会保険・労働保険関連の書類作成、マイナンバー管理までを1本で処理できます。
従来の買い切り型「パッケージ版」に加え、2026年4月からは月額・年額課金の「クラウド版」の提供も始まりました。担当者1名での利用はパッケージ版、複数担当者や会計事務所・社労士との連携が必要な場合はクラウド版が案内されています。
公式サイトによると、パッケージ版は初年度82,500円(ソフト代金+保守料金)で導入でき、2年目以降は保守サービス「バリューサポート」の年額38,500円(税込)で法改正への対応を継続します。購入後3か月間は電話による無料サポートが付きます。
2. かるがるできる給料(株式会社ビーエスエルシステム研究所)

現行版「かるがるできる給料26」の買い切り価格は5,500円(税込)で、20名程度までの小規模企業や個人事業主に向けた製品です。社員情報と勤怠の数値を入力するだけで、給与・賞与や社会保険料・所得税を自動計算します。
ただし、この製品は年末調整の自動計算に対応しておらず、源泉徴収票への金額の手入力と印刷にとどまります(同社公式FAQによる)。年税額や過不足額は自分で計算しておく必要があるため、年末調整まで自動化したい場合は上位版の給料らくだプロが選択肢になります。
法改正への対応は、例年10月ごろに発売される新バージョンへの買い替えか、有償の年間保守サービスへの加入で行う仕組みです。購入後1年間は無償の保守サービスが付き、更新プログラムの提供とサポートを受けられます(有償保守の年額は要問い合わせ)。
3. 給料らくだプロ26(株式会社ビーエスエルシステム研究所)

先ほどのかるがるできる給料と同じビーエスエルシステム研究所が展開する、上位ラインの買い切り型給与計算ソフトです。給与・賞与計算や社会保険算定に加え、年末調整の自動計算まで1本で対応します。
登録できる社員数に上限はなく、100名程度までの企業を想定した設計です。複数事業所や複数の勤怠パターンの登録に対応し、タイムカード入力機能や、アマノのTimeP@CKなど外部タイムレコーダーからの勤怠データのCSV取込も利用できます(取込にはレイアウト設定が必要です)。
現行版「給料らくだプロ26」の実売価格は税込19,602円(ビーエスエルシステム研究所の認定販売店ミモザ情報システム掲載、定価21,780円)です。かるがるできる給料と同じく年次バージョンアップ型で、法改正に追随するには毎年の新版購入が前提になります。
4. Cells給与(株式会社セルズ)

Cells給与は、社会保険労務士事務所が複数の顧問先企業の給与計算を一元管理することを主眼に置いた給与計算ソフトです。株式会社セルズが「社労士が作った、社労士のための給与計算システム」として提供しています。
給与明細の作成・印刷、賃金台帳、支給控除一覧、振込用データの生成、年末調整までを備え、顧問先とのクラウド経由でのデータ共有にも対応します。KING OF TIMEやジョブカン勤怠管理などの勤怠データを、CSVで取り込めます。
料金は本体38,500円(税込)に初年度保守契約42,900円(税込)を加えた初年度合計81,400円で、2年目以降は年額42,900円(税込)の保守契約が続きます。顧問先5社での契約時には、保守契約料が無料になる案内もあります。
5. MJSかんたん!給与(株式会社ミロク情報サービス)

従業員50名程度までの小規模事業者に絞った、買い切り型の給与計算ソフトです。東証プライム市場に上場する株式会社ミロク情報サービスが提供し、給与・賞与や社会保険料・所得税の計算から年末調整、社会保険の届出書類作成までを1本で行えます。
現行の「Ver.13」の本体価格は税込35,750円(税抜32,500円)で、月額課金は発生しません。法改正対応プログラムや電話サポートを受けるには、年額15,950円(税込)の年間保守契約「あんしん!サポート」への加入が実質的に必要です。新規購入者には、登録後3か月間の無償電話サポートが付きます。
2025年6月30日の注文受付分をもって、保守サービスの付かない単体の「バージョンアップ版」の販売は終了しました。以降に新版へ切り替えるには、あんしん!サポートへの加入が前提です。対応OSはWindows 11のみです。
6. JDL IBEX給与II(株式会社日本デジタル研究所)

1968年設立の株式会社日本デジタル研究所が提供する、パッケージ型(買い切り)の給与計算ソフトです。登録できる会社数は1,000社、処理人数は300人までに対応し、会計事務所が複数の顧問先の給与計算を代行する用途にも使われています。
本体価格は38,000円(税抜)で、2027年1月5日以降の注文分からは48,000円(税抜)への改定が予告されています。法改正への対応は、保守「アイベックス・サポート・クラブ」の年会費22,000円(税抜。2027年1月契約開始分から30,000円に改定予定)か、非加入時の都度更新15,000円(税抜)で行う仕組みです。
対応OSはWindows 11のみで、Macには対応しません。複数台のPCでデータを共有して処理することはできず、1台での運用が前提です。また年末調整は、顧問会計事務所とデータを連携して事務所側で行う運用が想定されています。年末調整を社内で完結させたい小規模企業には不向きで、税理士・会計事務所に任せている場合の選択肢です。
買い切りで足りる?クラウドに切り替えるべき?かんたん診断
ここまで買い切り型の製品を見てきましたが、従業員数や運用体制によっては、月額のクラウド型のほうが結果的に手間もコストも抑えられる場合があります。いくつかの質問に答えると、買い切り型で足りるか、クラウド型を検討したほうがよいかの目安がわかります。
クラウド型も選択肢に入る場合は、法令改正に自動で対応する弥生給与 Nextのようなサービスもあります。買い切り型との違いをふまえて、次からの解説で判断していきましょう。
弥生給与 Next(クラウド型・月額)

弥生給与 Nextは、弥生株式会社が提供するクラウド型の給与計算ソフトです。買い切り型ではなく、月額または年額の利用料を払い続ける形態で、年契約の場合はエントリープランで月あたり1,700円(税抜)から利用でき、初期費用はかかりません。ここまで紹介した買い切り型とは料金の仕組みが異なりますが、毎年の法改正対応の手間を避けたい場合の現実的な選択肢として取り上げます。
買い切り型との最大の違いは、健康保険料率の改定や年末調整の制度変更といった毎年の法令改正への対応がサービス側で自動的に反映される点です。公式サイトでは「法令改正にも自動対応」と案内されており、買い切り型のように更新版を買い直したり、年間の保守契約を自分で管理したりする必要はありません。
対象は公式訴求で300名未満の中小企業とされ、給与・賞与計算やWeb給与明細の配信に加え、勤怠管理・労務管理との連携も同じ契約体系で扱えます。複数人での運用や将来の増員に備えたい場合、あるいは毎年の法改正対応を自分で追いかけたくない場合の乗り換え先になります。また、デスクトップ版の「弥生給与」は新規販売を終了しており、買い切りの現行選択肢ではなく、弥生給与 Nextが後継として案内されています。
買い切り(インストール型)の給与計算ソフトとは?クラウド型との違い
ここでは、買い切り型がどのようなソフトか、クラウド型やオンプレミス型と何が違うのかを整理します。製品を見て「そもそもクラウドと比べて損か得か」を確かめたい方は、この章で判断の土台を作ってください。まずは両者の違いを大づかみに確認しましょう。

買い切り型=一度購入すれば月額料金は不要
買い切り型(インストール型・パッケージ版)は、ソフトを購入してパソコンにインストールし、その端末で給与計算を行うタイプです。購入代金を支払えばソフト本体はそのまま使い続けられ、クラウド型のような月額・年額の利用料はかかりません。
データは自社のパソコン内に保存されるため、インターネットに接続していなくても給与計算ができます。毎月の固定費を持ちたくない、社内で完結させたいという小規模の会社や個人事業主に向いた形態です。
クラウド型(月額)との違い
クラウド型は、インターネット経由でサービスを利用し、月額または年額の料金を払い続ける形態です。法令改正への対応がサービス側で自動的に反映され、常に最新の状態で使える点が大きな違いです。
買い切り型は初期の支払いだけで使い始められますが、法改正への対応は更新版の購入や保守契約という形で自分で手配する必要があります。一方のクラウド型は毎月の料金がかかる代わりに、法改正対応や複数人での同時利用、データのバックアップをサービス側に任せられます。どちらが得かは、利用年数と使い方によって変わります。
オンプレミス型との違い
大企業向けには、自社サーバーに大規模なシステムを構築するオンプレミス型もありますが、初期費用が高額で中小規模には向きません。本記事で扱う買い切り型は、市販のパッケージソフトを1台のパソコンにインストールして使う手軽なタイプで、オンプレミス型とは規模も費用感も大きく異なります。
買い切り型(インストール型)のメリット・デメリット
ここからは、買い切り型の利点と、導入前に知っておきたい注意点を対で整理します。両方を一度に把握することで、自社にとって損か得かを判断しやすくなります。
買い切り型のメリット
前述のとおり毎月の月額料金がかからないことが最大の利点で、対象人数が少なく基本的な機能で足りる場合は総額を低く抑えやすくなります。加えて、データを社外に預けず手元の端末だけで完結できるため、情報の管理を社内に閉じておきたい会社にも向きます。
処理を手元のパソコンで行うため動作が軽快で、給与計算のたびに通信環境に左右されにくい点も、日々の業務では見落とされがちな利点です。
買い切り型のデメリットと導入前の注意点
まず、法改正への対応が自動ではない点に注意が必要です。健康保険・介護保険・雇用保険の料率改定や、所得税・年末調整・住民税の更新は毎年のように発生します。買い切り型ではこれらに、更新版の購入や年間保守契約という形で追随する必要があり、継続的な費用と手間がかかります。この点は後述の「法改正対応の製品別実態」で詳しく取り上げます。
また、原則として1台のパソコンにインストールして使うため、複数人で同時に給与計算を行う運用には向きません。製品によっては複数台でのデータ共有ができないものもあります。さらに、スマートフォンからの利用や、データのバックアップの管理は自分で行う必要があります。複数拠点・複数担当での運用や、テレワークでの利用を想定する場合は、この制約が判断の分かれ目になります。
買い切り型の給与計算ソフトの選び方(6つのポイント)
ここからは、買い切り型を選ぶときに確認したい6つのポイントを解説します。比較表の各項目を「自社ならどう見るか」に置き換えて、1本に絞り込む手がかりにしてください。特に費用と法改正対応は、直後の章でさらに詳しく掘り下げます。
買い切り価格はいくらか
買い切り価格は、数千円のものから4万円程度のものまで幅があります。ただし、価格が安い製品は年末調整の自動計算に対応していないなど、機能が絞られていることがあります。価格だけで判断せず、自社に必要な機能を満たしているかとあわせて確認しましょう。
年次更新・保守費用はいくらか
買い切り型でも、法改正に対応し続けるには2年目以降の費用がかかるのが一般的です。費用のかかり方には、毎年の年間保守契約に加入する方式と、法改正対応版を都度購入する方式があります。買い切り価格に加えて、この継続費用が毎年いくらかかるのかを必ず確認してください。総額での比較の考え方は、後述の総保有コストの章で詳しく解説します。
対応できる従業員数・規模はどれくらいか
製品によって、登録できる従業員数の上限が決まっているものがあります。たとえば数十名までを想定した製品もあれば、上限を設けていない製品もあります。現在の人数だけでなく、今後の採用計画もふまえて、余裕を持って対応できる製品を選ぶと安心です。
対応OSは自社の環境に合うか(Macは要注意)
買い切り型の給与計算ソフトの多くはWindows専用で、Macには対応していません。Macで使いたい場合は、対応状況を購入前に必ず確認する必要があります。また、複数台のパソコンで同じデータを共有して処理できるかも製品差があるため、1台での運用か複数台での運用かをはっきりさせておきましょう。
法改正にどう対応する製品か
毎年の法改正への対応方法は、製品を長く使ううえで最も重要な確認事項です。保守契約に入っていれば最新の法令にプログラムが自動更新される製品もあれば、毎年新しいバージョンを買い直す製品もあります。年末調整の計算まで自動で行えるか、源泉徴収票の作成に対応しているかも、あわせて確認しましょう。詳しくは次章で製品ごとに整理します。
サポート体制は十分か
給与計算は法令にかかわる業務のため、操作や制度改正で不明点が出たときに問い合わせられるサポートがあると安心です。電話・メールなどの対応窓口や受付時間、旧バージョンのサポートがいつまで続くのかを確認しましょう。多くの製品では、法改正対応と同じ保守契約の中にサポートが含まれています。
気になる製品が見つかったら、複数の給与計算ソフトの資料をまとめて取り寄せて、料金や機能をじっくり比べられます。
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法改正対応の製品別実態(更新版か・保守で自動更新か)
ここからは、買い切り型でも避けて通れない「毎年の法改正対応」について、なぜ必要なのか、製品ごとにどう対応するのかを整理します。買い切り型を長く使ううえで、費用にも手間にも直結する最も重要な論点です。
給与計算は毎年の制度変更に追随する必要がある
給与計算にかかわる制度は、毎年のように変わります。健康保険料率と介護保険料率は年度ごとに見直され、その都度3月分(4月納付分)から適用されます。雇用保険料率も年度ごとに定められ、実際に前年から変動しています。
一方で、厚生年金保険料率は段階的な引き上げが平成29年(2017年)9月で終了し、その後は18.3%で固定されています。社会保険料率がすべて毎年変わるわけではなく、毎年度改定されるのは健康保険・介護保険・雇用保険の料率です。
年金制度改正に基づき平成16年から段階的に引き上げられてきましたが、平成29年9月を最後に引上げが終了し、厚生年金保険料率は18.3%で固定されています
出典:日本年金機構「厚生年金保険の保険料」(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150515-01.html)
加えて、所得税や年末調整も制度改正の影響を受けます。令和7年(2025年)度税制改正では、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられ、基礎控除の見直しや特定親族特別控除の創設が行われました。いわゆる「年収の壁」への対応として知られるこの改正は、令和7年(2025年)12月に行う年末調整から適用されています。
住民税(特別徴収)も、毎年5〜6月に市区町村から届く通知にもとづき、6月から翌年5月までの税額を毎月の給与から差し引く年度更新が発生します。
これらの制度変更に給与計算ソフトが追随しなければ、古い料率や税額で計算してしまう事故につながります。買い切り型を選ぶうえで、法改正にどう対応するのかの確認が欠かせないのはこのためです。
出典・参考資料(4件)
製品によって「保守契約型」と「年次買い替え型」に分かれる
買い切り型の法改正対応は、大きく2つの方式に分かれます。1つは、年間の保守契約に加入することで、最新の法令に対応したプログラムが提供される方式です。給料王の「バリューサポート」、MJSかんたん!給与の「あんしん!サポート」、Cells給与やJDL IBEX給与IIの保守サービスがこれにあたります。
もう1つは、毎年発売される新しいバージョンを購入し直す年次更新型で、かるがるできる給料や給料らくだプロのシリーズがこの形をとります。

いずれの方式でも、買い切り価格を払えば以後の費用が一切かからないわけではない点は共通です。実際に、あるメーカーは買い切り型パッケージソフトの価格改定にあたって、次のように法改正対応の負担が増えていることを理由として挙げています。
近年、労務関係制度の改正が継続的に行われています。年収の壁への対応をはじめ、給与・社会保険制度の見直しなど、システム開発・保守に求められる対応は年々増加しております。
出典:株式会社日本デジタル研究所「JDL IBEX パッケージソフト 価格改定のお知らせ」(https://www.jdl.co.jp/info/2027-ibex-rev.html)
買い切りソフトを提供するメーカー自身が、法改正対応のコストが年々増えていると述べています。買い切り型を選ぶ際は、この毎年の対応費用を織り込んで検討することが大切です。
年末調整の対応範囲は製品ごとに確認する
法改正対応と並んで確認したいのが、年末調整への対応です。多くの製品は年末調整の計算に対応していますが、たとえばかるがるできる給料は年末調整の自動計算に対応しておらず、源泉徴収票への手入力・印刷にとどまります。上位版の給料らくだプロは年末調整の自動計算に対応しており、同じメーカーの製品でも対応範囲が異なります。
年末調整を自社で完結させたいか、税理士や会計事務所に任せるかによって、必要な機能は変わります。買い切り価格が安い製品を選ぶ場合は、年末調整の対応範囲を購入前に必ず確認しておきましょう。
「買い切りは本当に安い?」総保有コストの考え方
ここでは、買い切り型を数年使ったときの総額(総保有コスト)で、本当に割安かを考えます。買い切り価格の安さだけで判断すると見えにくい部分なので、契約前に一度整理しておくことをおすすめします。
買い切り型の費用は、購入時の買い切り価格だけでは終わりません。前章のとおり、法改正に対応し続けるには年間保守契約か更新版の購入という継続費用がかかります。買い切り価格が3万円台でも、年間の保守料が10,000〜40,000円程度かかる製品では、数年使うと保守料の累計が本体価格を上回ることもあります。
実際に、保守契約型の代表的な2製品と、クラウド型の弥生給与 Nextを数年スパンの累計で並べると、次のようになります(各社公式の料金にもとづく概算・税込)。
| 製品(例) | 初年度 | 3年累計 | 5年累計 |
|---|---|---|---|
| 給料王(買い切り+保守) | 82,500円 | 159,500円 | 236,500円 |
| Cells給与(買い切り+保守) | 81,400円 | 167,200円 | 253,000円 |
| 弥生給与 Next(クラウド・年額プラン) | 20,400〜84,000円 | 61,200〜252,000円 | 102,000〜420,000円 |
この試算からわかるとおり、少人数で下位プランのクラウド型なら5年使っても買い切り型より割安に収まることもあります。一方、上位プラン相当の機能が必要になると、クラウド型の年額が積み上がり、買い切り型より高くつく場合もあります。どちらが得かは、必要な機能と利用年数によって入れ替わります。
上の表は、年間保守契約で法改正に対応する保守契約型の例です。かるがるできる給料や給料らくだプロのような年次買い替え型は、費用のかかり方が異なります。法改正のたびに新バージョン(本体はそれぞれ5,500円前後・2万円前後)を購入する形だからです。更新を見送れば追加費用はかかりませんが、その年の法改正には対応できず、毎年更新を重ねると本体価格分が積み上がります。
数字で比べるときは、買い切り価格だけでなく2年目以降の保守料や更新版の費用を必ず含めてください。この総額で見る視点を持つと、「買い切りだから安い」という思い込みによる失敗を避けられます。
買い切り型が向いている企業・向いていない企業
ここまでの内容をふまえて、買い切り型が向いている企業と、クラウド型を検討したほうがよい企業を整理します。自社がどちらに当てはまるかを確認してください。
買い切り型が向いているのは、毎月の固定費を持ちたくない、給与計算の対象が少人数で機能も基本的なもので足りる、社内のパソコンで完結させたい、という会社や個人事業主です。1台のパソコンで担当者1名が給与計算を行う運用であれば、買い切り型の利点を活かしやすくなります。
一方で、複数の拠点や複数の担当者で同時に給与計算を行いたい、従業員数が増えていく見込みがある、法改正への対応を自分で追いかけるのは避けたい、テレワークでも使いたい、という場合は、クラウド型のほうが運用の手間を減らせます。次の章では、いま買い切り型を使っていて将来クラウドへ移りたくなった場合の乗り換えについて解説します。
数年後に従業員が増えたら?買い切りからクラウドへの乗り換え
ここからは、買い切り型を使い始めたあとで、従業員の増加や運用体制の変化によりクラウド型へ移りたくなった場合の乗り換えについて解説します。将来の選択肢を確保しておきたい方は確認してください。
買い切り型からクラウド型への乗り換えは可能ですが、移行できるデータの範囲は移行元と移行先の製品によって異なります。従業員の氏名・住所・扶養や社会保険の情報といった基本のマスタは、CSV形式で取り込める製品が多く見られます。一方、過去の給与明細や賞与の履歴は移行先にそのまま取り込めないことが多く、期首の残高や年間累計だけを手入力するケースもあります。
乗り換えのタイミングとしては、過去データの引き継ぎが少なくて済む年度の切り替え時(1月や事業年度の初め)が現実的です。検討する際は、移行できるデータの範囲と手順を移行先のサービスに確認しておくと安心です。
将来的にクラウド型への移行も視野に入れるなら、クラウド型のサービスがどのような移行支援を用意しているかを、あらかじめ調べておくとよいでしょう。買い切り型で始めつつ、事業の成長に合わせて切り替えるという選択肢を持っておくことで、いまの導入判断がしやすくなります。
まとめ:買い切り型は「価格+毎年の更新費用」で選ぶ
買い切り型の給与計算ソフトは、月額料金がかからず、少人数で基本的な機能が足りる場合にコストを抑えやすい選択肢です。ただし、法改正に対応し続けるには、年間保守料や更新版の購入という継続費用がかかります。
選ぶときは、買い切り価格の安さだけでなく、毎年の更新・保守費用、年末調整への対応、複数台での利用可否、そして数年使ったときの総額まで確かめましょう。複数人での利用や将来の増員、法改正対応の手間を避けたい場合は、クラウド型も選択肢に入れて比べるのがおすすめです。
本記事の比較表と診断も使いながら、自社に合う1本を見つけてください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 給与計算ソフトの買い切り型とは何ですか?
A. 給与計算ソフトの買い切り型とは、ソフトを一度購入すればパソコンにインストールして使い続けられる、月額料金のかからないタイプです。パッケージ版・インストール型とも呼ばれ、データを自社のパソコン内に保存するため、インターネットに接続していなくても給与計算ができます。毎月の固定費を持ちたくない、社内で完結させたいという少人数の会社や個人事業主に向いた形態です。
Q. 買い切り型の給与計算ソフトでも、毎年の更新・保守費用はかかりますか?
A. 買い切り型でも、法改正に対応し続けるには2年目以降の年間保守料や更新版の購入費用がかかるのが一般的です。本記事で紹介した製品でも、年間保守料はおおむね15,000〜43,000円程度、あるいは毎年の新バージョンへの買い替えという形で継続費用が発生します。「買い切り価格だけ払えば以後は無料」ではない点に注意し、数年分の総額で比較することが大切です。
Q. 買い切り型の給与計算ソフトは複数人・複数台で使えますか?
A. 買い切り型は、原則として1台のパソコンにインストールして担当者1名が使う運用が前提で、複数人での同時利用や複数台でのデータ共有には向きません。製品によっては複数台でのデータ共有ができないものもあります。複数の拠点や担当者で同時に給与計算をしたい場合や、テレワークでの利用を想定する場合は、クラウド型のほうが適しています。
Q. 買い切り型の給与計算ソフトはMacで使えますか?
A. 買い切り型の給与計算ソフトは、多くがWindows専用で、Macには対応していません。本記事で紹介した製品でも、MJSかんたん!給与やJDL IBEX給与IIは対応OSがWindows 11のみです。Macで使いたい場合は、対応OSを購入前に必ず確認するか、ブラウザ上で動作するクラウド型を検討する必要があります。
Q. 買い切り型の給与計算ソフトは法改正に自動で対応しますか?
A. 買い切り型は、クラウド型と違い、法改正に自動では対応しません。健康保険・介護保険・雇用保険の料率や、所得税・年末調整・住民税は毎年のように改正されるため(厚生年金保険料率は2017年9月以降18.3%で固定)、買い切り型では年間保守契約への加入か法改正対応版の買い替えという形で、自分で対応を手配する必要があります。
毎年の対応に手間をかけたくない場合は、法令改正に自動で対応するクラウド型が選択肢になります。
Q. 買い切り型の給与計算ソフトで年末調整までできますか?
A. 買い切り型で年末調整までできるかは、製品によって対応範囲が異なります。たとえば給料らくだプロやCells給与、MJSかんたん!給与は年末調整の計算に対応していますが、かるがるできる給料は年末調整の自動計算に対応しておらず、源泉徴収票への手入力・印刷にとどまります。年末調整を自社で完結させたい場合は、買い切り価格が安い製品ほど対応範囲を購入前に確認しておくことが重要です。
Q. 無料の給与計算ソフトだけで給与計算できますか?
A. 無料の給与計算ソフトだけで済ませられるのは、従業員が数名程度で、ごく基本的な計算に用途が限られる場合に限られます。無料版やExcelテンプレートは登録できる人数や機能に上限があり、法改正にともなう料率更新や年末調整に対応しきれないことが多いためです。少人数でも継続して正確に運用するなら、数千円から購入できる買い切り型が現実的な選択肢になります。
Q. 給与計算ソフトは買い切り型とクラウド型のどちらが得ですか?
A. 買い切り型とクラウド型のどちらが得かは、利用年数と使い方によって変わります。短期間の利用や、担当者1名・少人数・基本機能で足りる場合は買い切り型が割安になりやすく、長く使うほど毎年の保守料や更新費用が積み上がります。
一方、複数人での利用や将来の増員が見込まれる場合や、法改正対応の手間を避けたい場合は、月額はかかっても運用の手間が少ないクラウド型が向きます。「買い切り価格+毎年の更新・保守費用×利用年数」とクラウドの年額×利用年数を並べて比べると、判断しやすくなります。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

















