返金やキャッシュバック、アンケートの謝礼、業務委託の報酬。相手が一般の個人で、しかも件数が多い支払いほど、経理の手元では作業が積み上がります。振込先の口座情報を一件ずつ集め、間違いがないか確かめ、月末にまとめて振込データを作る。1件数百円の振込手数料も、件数が増えれば無視できない額になります。
企業から個人への送金サービスは、この一連の作業を肩代わりする仕組みです。企業はメールアドレスや携帯電話番号を宛先に送金を指示し、受取人が自分でATMでの現金受取・銀行口座への振込・電子マネーへのチャージなどから受け取り方を選びます。企業が口座情報を集めて持ち続けなくてよくなる点が、手数料の削減と並ぶ導入理由になっています。
本記事では、企業から個人への送金に使える15サービスを同じ項目で比較します。1件あたりの費用と受取方法に加えて、提供会社が資金移動業者として登録しているかどうかで変わる「1回あたりの送金上限」と「預けた資金の保全」まで整理しました。自社の支払額と受取相手に合う手段を選ぶための材料としてご活用ください。
また、貴社の状況に合わせて最適なサービスを最短で見つけられるよう、「30秒で終わる選定診断ツール」をご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。
目次
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企業から個人への送金サービスとは
企業から個人への送金サービスは、企業が多数の個人へ現金相当の価値を支払う業務を代行する法人向けのサービスです。企業は送金額と宛先(メールアドレス・携帯電話番号など)を登録するだけで済み、受取人は届いた案内から自分で受け取り方を選びます。BtoC送金サービス、送金代行、支払代行といった名前で提供されており、呼び方は事業者によって異なります。
従来の銀行振込と最も違うのは、企業が受取人の口座情報を持たなくても支払いが完結する点です。この違いが、後述する手数料や事務負担、個人情報の管理リスクの差につながります。
銀行振込・現金書留・郵便為替の何が負担になるのか
個人への支払いで従来使われてきた手段には、それぞれ運用上の制約があります。銀行振込は、支払うたびに受取人から金融機関名・支店名・口座番号・名義を集める必要があり、収集の手間と、集めた口座情報を保管し続けることによる情報管理の負担が生じます。名義の表記違いによる組戻しも起きやすく、その都度の連絡と再手続きが発生します。
現金書留は、現金を封入して郵送するため、封入作業と郵送費が件数に比例して増えます。郵便為替(普通為替証書)は、為替証書を購入して送り、受取人が郵便局の窓口で換金する流れになるため、受取人側にも窓口へ出向く手間がかかります。いずれも、送った資金が受け取られたかどうかを企業側がリアルタイムで把握しにくい点も共通します。
現金の手渡しは、支払いそのものは即時に完了しますが、現金を用意して保管する必要があり、金額の相違や紛失が起きたときの確認が難しくなります。件数が少ないうちは成立しても、支払先が増えるほど成り立たなくなる方法です。
どんな支払いで使われているか
送金サービスが使われるのは、支払先が不特定多数の個人で、1件あたりの金額が比較的小さく、支払いが継続的に発生する場面です。各社が公式に挙げている用途を整理すると、次のような支払いに集中しています。
- 通販・ECの返品にともなう返金、サービス解約時の精算金の返還
- 販促キャンペーンのキャッシュバック、当選金・賞金の支払い
- アンケート・モニター・治験などの協力謝礼
- 業務委託先やギグワーカーへの報酬、フリーランスへの支払い
- 採用選考に来た応募者への交通費、内定者への支給
- リユース・買取サービスの買取代金、保険金・給付金の支払い
- イベント中止時の参加費返金など、短期間に大量発生する返金
いずれも、受取人が自社の顧客や取引先ではない、あるいは継続的な取引関係にないケースが多く、口座情報を聞き出すこと自体が心理的なハードルになります。受取人に口座情報の提供を求めずに支払える点が、これらの用途で選ばれる理由です。
法人向けの支払代行・振込代行との違い
送金を代行するサービスには、支払先が法人(仕入先・外注先)であることを前提にしたものもあります。こちらは請求書の受領から支払データの作成、振込の実行までを一括して引き受けるもので、支払先が固定的で、振込先口座も継続して同じであることが前提になっています。
これに対して本記事が扱うのは、支払先が一般の個人で、その都度相手が入れ替わる支払いです。受取人が受け取り方を選べる仕組みや、口座情報を企業が保持しない設計は、この前提から生まれています。
ただし、振込代行として提供されているサービスの中にも、給与や賞与といった個人あての支払い向けのプランを別に用意しているものがあり、個人への支払いに使えるかどうかはサービス単位で確認が必要です。
受取人はどうやって受け取るのか
受取方法は、サービス選びで最も大きな分岐になります。企業側の使い勝手が同じでも、受取人が使える手段が合っていなければ、送金しても受け取られないまま残ってしまうためです。現金相当を受け取る手段は、大きくATMでの現金受取・銀行口座への振込・電子マネーやコード決済へのチャージの3つに分かれます。このほかにギフト券やポイントで渡す選択肢もあり、これは記事後半で別に取り上げます。
多くのサービスは複数の受取方法を用意し、受取人に選ばせる形をとっています。1つの手段しか提供しないサービスもあるため、自社の受取人層にどの手段が合うかを先に考えておくと選定が進みます。

ATMで現金として受け取る
企業から届いた番号やQRコードをATMに入力し、その場で現金を受け取る方法です。コンビニに設置されたATMを使えるサービスが中心で、受取人は銀行口座もスマートフォンのアプリも持っていなくて構いません。口座を持たない相手や、口座情報を教えたがらない相手にも支払えるのがこの方式の利点です。
一方で、ATMが払い出せるのは紙幣だけであるため、1,000円未満の端数をどう扱うかがサービスごとに決まっています。端数分を電子マネーへのチャージに回す、募金に充てる、硬貨の払戻票を発行するといった扱いが用意されています。
また、1回のATM受取で扱える金額に上限があり、10万円程度に設定されている例が多く見られます。少額の謝礼やキャッシュバックには向きますが、まとまった金額の支払いには別の受取方法と組み合わせる必要があります。
銀行口座へ振り込む
銀行口座への振込には、方式が2通りあります。1つは、受取人が案内画面から自分で口座情報を入力し、そこへ振り込む方式です。口座情報を集める作業がサービス側に移るため、企業の手元に口座情報が残りません。もう1つは、企業が用意した口座情報をまとめて渡し、振込の事務だけを代行してもらう方式です。
この違いは選定に直結します。口座情報を集める手間と、集めた情報を保管し続ける負担をなくしたいのであれば、受取人が自分で入力する方式でなければ目的を果たせません。振込代行として提供されているサービスには後者が多く、その場合は従来どおり企業が口座情報を回収することになります。どちらの方式かは、比較表の「主な受取方法」列と各サービスの紹介で確認してください。
受取人にとっては使い慣れた方法で、受け取った資金をそのまま生活口座で使える点が利点になります。
受取方法の中では扱える金額が大きく、100万円程度まで対応するサービスもあります。ただし受取人が口座情報を入力する必要があるため、入力の誤りによる組戻しは一定の割合で発生します。入力内容を自動で検証する仕組みや、誤りがあったときに受取人自身がやり直せる導線があるかどうかで、企業側に戻ってくる問い合わせの量が変わります。
電子マネー・コード決済にチャージする
受取人が普段使っているコード決済の残高や電子マネーへ、金額をチャージする方法です。受取人はアプリを開いて受け取り操作をするだけで完了し、着金までの時間が最も短くなります。日常的にコード決済を使っている層に対しては、受け取りの手間が小さいぶん受け取ってもらえる確率が高くなります。
注意したいのは、対応するブランドがサービスごとに異なる点です。受取人が使っていないブランドしか選べなければ、この受取方法は事実上機能しません。また、チャージされた残高をそのまま現金として引き出せるかは、受け取り先のサービスの仕様によります。
現金化を前提とする支払いでは、受取人が最終的に現金へ換えられるかまで確認しておく必要があります。1回のチャージ額の上限も、ATM受取や銀行振込とは別に設定されていることがあります。
1件あたりの費用と料金体系
費用は、1件あたりの送金手数料、初期費用、月額の固定費の3つで構成されるのが一般的です。実額を公開しているサービスで見ると、1件あたりの手数料はおおむね50円台から500円程度の幅に収まります。銀行の窓口やATMからの振込と比べれば低い水準ですが、金額はサービスによって10倍近い開きがあります。
ここで見落としやすいのが、1件あたりの手数料だけで比べると総額を読み違えるという点です。1件あたりが安くても月額の固定費が必要なサービスがある一方、月額が無料で1件あたりがやや高いサービスもあります。
月あたりの送金件数を当てはめて、初期費用と固定費を含めた総額で比べる必要があります。目安として、月間の件数が少ないうちは月額固定費のないサービスが有利になり、件数が増えるほど1件あたりの単価が効いてきます。
もう一つ、料金表には現れない負担があります。送金の原資を事前に事業者へ預けておく方式(デポジット型)を採るサービスでは、預けた資金がその期間拘束されます。手数料としては発生しませんが、資金繰りの観点では実質的なコストです。この点は導入から送金までの流れで詳しく整理します。
料金の開示状況には差がある
比較にあたって先に知っておきたいのが、料金を公式サイトで開示している事業者がむしろ少数派であることです。本記事で比較する15サービスのうち、1件あたりの金額を何らかの形で公表しているのは6社、うち条件を問わない一律価格を示しているのは4社です。残りの多くは初期費用・月額費用・送金手数料の3つで構成されるという体系の説明にとどまり、金額の記載がありません。
公表されている1件あたりの金額を並べると、50円台から500円までの幅があります(税別・税込の表記は社によって異なります)。同じ「1件あたり」でも10倍近い差があるため、比較表の「1件あたりの費用」列で自社の件数に当てはめて確かめてください。
非公開である理由は、送金件数や受取方法の組み合わせによって個別に見積もる商習慣があるためと考えられますが、比較検討の初期段階では判断材料が揃わないことを意味します。実務上は、実額を公開しているサービスで相場感をつかんだうえで、非公開のサービスには自社の想定件数と金額帯を伝えて見積もりを取る進め方が現実的です。
提供会社が資金移動業者かどうかで変わること
ここが、送金サービスを選ぶうえで最も見落とされやすい論点です。同じように「企業から個人へ送金できます」と説明されていても、その送金をどの法的な枠組みで行っているかはサービスによって異なります。銀行以外の事業者が為替取引を業として営むには、資金決済に関する法律(資金決済法)にもとづく資金移動業の登録が必要ですが、登録をしている事業者と、していない事業者が混在しています。
提供会社の登録の有無と種別によって変わるのは、次の4点です。順に見ていきます。
- 1回あたりに送れる金額の上限
- 登録がない場合に、どの枠組みで送金しているのか
- 事業者に預けた資金が保全されるかどうか
- 給与の支払いに使えるかどうか

資金移動業の種別と1回あたりの送金上限
資金移動業は、2021年5月1日に施行された改正資金決済法によって3つの類型に分けられました。分けている基準は、1回に動かせる金額です。
第三十六条の二 この章において「第一種資金移動業」とは、資金移動業(特定資金移動業を除く。第四項を除き、以下同じ。)のうち、第二種資金移動業及び第三種資金移動業以外のものをいう。
出典:資金決済に関する法律 第36条の2|e-Gov 法令検索
2 この章において「第二種資金移動業」とは、資金移動業のうち、少額として政令で定める額以下の資金の移動に係る為替取引のみを業として営むこと(第三種資金移動業を除く。)をいう。
3 この章において「第三種資金移動業」とは、資金移動業のうち、特に少額として政令で定める額以下の資金の移動に係る為替取引のみを業として営むことをいう。
条文には金額が書かれておらず、「政令で定める額」とされています。その金額を定めているのが施行令です。
第十二条の二 法第三十六条の二第二項に規定する少額として政令で定める額は、百万円に相当する額とする。
出典:資金決済に関する法律施行令 第12条の2|e-Gov 法令検索
2 法第三十六条の二第三項に規定する特に少額として政令で定める額は、五万円に相当する額とする。
整理すると、第二種は1回100万円以下、第三種は1回5万円以下の送金しか扱えません。第一種にはこの種の金額の定めがありません。3つの類型はいずれも登録制で、第一種はそれに加えて業務実施計画の認可を受ける必要があります。
ここから実務的に重要なことが導けます。金融庁が公開している資金移動業者登録一覧(2026年7月31日現在)に載っているのは全84者で、その内訳は第二種のみが76者、第一種と第二種を併せ持つのが7者、第一種のみが1者、第三種は0者です。
第三種は制度としては存在しますが、実際に登録している事業者は1社もありません。そして第一種を持つ8者の多くは海外送金を主とする事業者で、本記事で比較する15サービスの提供会社はいずれも含まれていません。
整理すると、本記事で比較する15サービスのうち、提供会社が自社で資金移動業の登録をしている8社は、すべて第二種です。いずれも1回あたり100万円以下という上限がかかります。1件で100万円を超える支払いを想定している場合は、資金移動業者が提供するサービスでは原則として捌けないことになります。
もう一点、第一種には厳しい制約があります。第一種資金移動業者は、具体的な送金の指図を伴わない資金を利用者から預かり続けることができません。上限がない代わりに資金を滞留させられないため、原資をあらかじめ預けておくデポジット型の運用とは相性がよくない設計になっています。
出典・参考資料(1件)
登録がない事業者はどのような枠組みで送金しているのか
比較対象15サービスのうち、残る7サービスの提供会社は資金移動業者登録一覧に掲載されていません。これは問題があるという意味ではなく、そもそも資金移動業とは別の枠組みで提供しているということです。枠組みが違えば、かかる規制も変わります。
典型的なのは、振込の事務を代行する形です。この場合、資金を動かす当事者はあくまで依頼した企業であり、事業者は企業に代わって振込の手続きを行っているという整理になります。あるサービスの利用規定には、契約者が為替取引の当事者となるものではない旨が明記されています。為替取引を業として営んでいるわけではないため、資金移動業の登録は必要ありません。
もう一つは、実際に資金を動かす部分を登録済みの資金移動業者に担わせる形です。サービスとしては1つの窓口に見えても、銀行口座への払い出しは提携先の資金移動業者が、コード決済への入金はその決済事業者が実行している、という構造になっているものがあります。この場合、送金上限や資金の保全は実行主体の側の枠組みに従うため、「どの部分を誰が担っているか」を確認しないと実態がつかめません。
実務上の違いが出るのは、資金決済法上の100万円という上限がかからない点です。実際、振込代行として提供されているあるサービスは、公式のよくある質問で送金額に上限がない旨を明記しています。
1件で100万円を超える支払いが必要な場合、選択肢はこちら側に絞られます。ただし後述するとおり、資金決済法にもとづく資金の保全義務も同時にかからないため、上限と保全はトレードオフの関係にあると理解しておく必要があります。
資金移動業の登録がなくても他人のお金を扱える枠組みは、支払う側だけでなく、代金を回収する側にもあります。回収側の代表例である収納代行について、どこからが資金移動業に該当するのかの線引きを解説した記事があります。枠組みの違いを押さえたうえで事業者の説明を読みたい方は、こちらもご参照ください。
違法な収納代行業者の見極め方は?許認可制度の有無と最新の法改正・資金決済法
「収納代行サービスを使う際、法的に安全な事業者をどう判断すべきか?」 ECやサブスクの拡大で、収納代行サービスのニーズは急速に高まっています。一方で、収納代行には“これを取ればOK”という単一の許認可制度があるわけではなく、参入障壁が低いと…
預けた資金は保全されるのか
送金サービスでは、支払いの原資を事前に事業者へ預けたり、送金を指示してから受取人が受け取るまでの間、資金が事業者の手元にとどまったりします。この資金が事業者の破綻時にどうなるかは、資金移動業者かどうかで扱いが変わります。
先に押さえておきたいのは、資金決済法が保全の対象として定めているのは「送金を指示したあと、受取人に届くまでの資金」(未達債務)であるという点です。送金指示より前に預けてあるデポジットが同じ枠組みで保全されるかは条文からは読み取れないため、事業者ごとに確認が必要になります。
資金移動業者には、まだ受取人に届いていない資金(未達債務)の額に応じた履行保証金を供託する義務があります。供託に代えて、銀行等との保全契約や信託会社との信託契約による保全も認められています。各社が「信託保全」として案内しているのは、この信託契約による保全です。
第四十三条 資金移動業者は、次の各号に掲げる資金移動業の種別に応じ、当該各号に定めるところにより、資金移動業の種別ごとに履行保証金をその本店(外国資金移動業者である資金移動業者にあっては、国内における主たる営業所。第四十八条において同じ。)の最寄りの供託所に供託しなければならない。
出典:資金決済に関する法律 第43条|e-Gov 法令検索
保全額は未達債務の額と権利実行の手続費用の合計を基準としますが、金額が小さい場合でも下限があり、施行令は最低要履行保証額を1,000万円と定めています。そして事業者が破綻した場合、利用者はこの履行保証金から他の債権者に先立って弁済を受けられます。
第五十九条 資金移動業者がその営む一の種別の資金移動業に係る為替取引に関し負担する債務に係る債権者(履行保証人債務引受契約又は履行保証人保証契約に基づく債務の弁済をした履行保証人適格者が、民法(明治二十九年法律第八十九号)第四百九十九条の規定により当該債権者に代位する場合を除く。)は、当該種別の資金移動業に係る履行保証金について、他の債権者に先立ち弁済を受ける権利を有する。
出典:資金決済に関する法律 第59条|e-Gov 法令検索
ただし、優先して弁済を受けられることと、すぐに戻ってくることは別です。実際の還付は、60日を下らない期間を定めた債権申出の公示を経てから配当の手続きに入るため、手元に戻るまでには相応の時間がかかります。「保全されているから資金繰りに影響しない」とまでは言えない点に注意が必要です。
一方、資金移動業の登録をしていない事業者には、この履行保証金の枠組みは適用されません。振込代行として提供しているサービスの中には、預かった資金を信託口座で分別管理する仕組みを自主的に設けているものがあり、利用規約にその旨を明記している例もあります。資金決済法による保全ではないため、どのような仕組みで、どの範囲の資金が守られるのかを規約で個別に確認する必要があります。
出典・参考資料(1件)
給与や報酬の支払いに使えるか
報酬や謝礼に使えるサービスを、そのまま従業員の給与の支払いに転用できるとは限りません。賃金の支払い方法は労働基準法が定めており、原則として通貨で支払う必要があります。
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
出典:労働基準法 第24条|e-Gov 法令検索
この例外として、2023年4月1日から資金移動業者の口座への賃金支払い(給与のデジタル払い)が認められています。ただし要件は厳格で、労働基準法施行規則は、対象を第二種資金移動業を営む事業者のうち厚生労働大臣の指定を受けた者に限定しています。
イ 賃金の支払に係る資金移動を行う口座(以下単に「口座」という。)について、労働者に対して負担する為替取引に関する債務の額が百万円を超えることがないようにするための措置又は当該額が百万円を超えた場合に当該額を速やかに百万円以下とするための措置を講じていること。
出典:労働基準法施行規則 第7条の2第1項第3号|e-Gov 法令検索
ロ 破産手続開始の申立てを行つたときその他為替取引に関し負担する債務の履行が困難となつたときに、口座について、労働者に対して負担する為替取引に関する債務の全額を速やかに当該労働者に弁済することを保証する仕組みを有していること。
ここでいう100万円は、1日に受け取れる金額ではなく口座の残高の上限です。加えて、労働者が銀行口座での受け取りも選べるようにしたうえで、要件を説明して本人の同意を得ることが求められます。
実際に指定を受けた事業者は、2026年7月1日現在で4社です。制度の天井は残高100万円ですが、各社が実際に設定している受入上限額は10万円から30万円で、規制上の上限とは開きがあります。
給与の支払いに使いたい場合は、この指定を受けた事業者に限られ、かつ各社の上限額の範囲内で運用することになります。報酬や謝礼として使えるサービスであっても、賃金の支払いを利用規約で禁じている事業者もあるため、給与への転用を考えている場合は必ず規約を確認してください。
この章で確認すべきことをまとめると、①自社の1件あたりの金額がそのサービスの上限に収まるか ②預ける資金がどう扱われるか ③給与に使うなら厚生労働大臣の指定があるかの3点です。各社の値は比較表の「1回あたりの送金上限」列と「資金移動業の登録」列にまとめてあります。
出典・参考資料(1件)
自社に合うサービスの選び方
ここまでの内容を、選定の優先順位に組み替えます。まず自社の1件あたりの支払額が上限に収まるかを確かめるところから始まります。自社で資金移動業の登録をしている事業者は1回100万円が上限ですが、電子決済等代行業(銀行のAPIに接続して送金の指図を伝える登録業種)など別の枠組みを併用して100万円超に対応するサービスもあります。
上限は登録の種別だけで決めつけず、比較表の「1回あたりの送金上限」列で確認してください。逆に、1件あたりが数千円から数万円の少額が中心であれば、上限が問題になることはまずないので、次の受取方法から読み始めて構いません。
次に受取相手に確実に届くか、その次に初期費用と月額を含めた総額、そして既存システムとの連携、最後に資金の保全とセキュリティの体制という順です。金額の上限と総額の考え方はすでに整理したので、ここではまだ触れていない3つの観点を掘り下げます。
受取相手が確実に受け取れるか
どの受取方法が選べるかと、自社の受取人層がその手段を実際に使うかは別の問題です。送金しても受け取られなければ、企業側には未処理の支払いが残り、督促や再送の事務が発生します。受取人の年齢層や生活圏に合った手段が用意されているかを、具体的に当てはめて見ておく必要があります。
あわせて見ておきたいのが、受け取り操作でつまずいたときに受取人自身で解決できるかどうかです。届いた案内から受け取り完了までの手順が少なく、口座情報の入力を誤ったときにやり直せる導線があれば、企業への問い合わせは減ります。
逆に、受け取りに専用アプリの登録や本人確認手続きを求めるサービスでは、その手間を受取人が受け入れるかを見積もる必要があります。少額の謝礼のために本人確認を求められれば、受け取り自体を諦める人が出ます。
既存システムとどう連携するか
送金の指示方法には、管理画面での手入力、CSVファイルの一括アップロード、API連携、全銀フォーマットでの受け渡しがあります。月に数件であれば手入力でも回りますが、件数が増えると一括登録が前提になります。
選定時に確認すべきは3点です。API連携が提供されているか、自社の開発リソースで対応できるか、そして既存の会計システムや基幹システムから出せるデータ形式が受け付けてもらえるかです。既存システムが全銀フォーマットしか出力できないのであれば、それに対応しているサービスを選ぶほうが導入は速く進みます。
逆に、返金処理を自社サービスの画面から自動で走らせたいのであればAPI連携が要件になります。実際の登録手順は導入から送金までの流れで扱います。
個人情報とセキュリティの体制
送金サービスを使う最大の理由の一つが、口座情報を自社で保持しなくてよくなることです。これは設計そのものが情報管理リスクを下げているという意味で、認証の有無以前に効く要素です。ただし、送金の宛先としてメールアドレスや携帯電話番号は扱うため、個人情報を一切扱わなくなるわけではありません。
体制面を確認する際は、プライバシーマーク、ISO/IEC 27001(ISMS)、PCI DSSといった認証について、規格名だけでなく取得している主体と範囲まで見ておくと精度が上がります。グループ会社が取得しているだけで当該サービスは範囲外というケースや、認証の有効期限が切れているケースがあるためです。資金の保全については前の章で整理したとおり、資金移動業者かどうかで枠組みが変わります。
しかし、自社がどの条件を優先すべきか、といった判断が難しいケースも存在します。そのような場合でも貴社の状況に合わせて最適なサービスを最短で見つけられるように、「30秒で終わる選定診断ツール」を以下にご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。
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【比較表】企業から個人への送金サービス15社を比較
ここからは、企業から個人への送金に使える15サービスを同じ項目で比較します。1件あたりの費用と初期費用・月額費用、受取人が選べる受取方法、1回あたりの送金上限、提供会社の資金移動業の登録、企業側の連携方式を並べました。並び順は、受取人が選べる受取方法の多いものからおおむね順に並べています。
| サービス名 | ウォレッチョ | GMO-PG送金サービス | 支払代行サービス(SBペイメントサービス) | ウェルネット送金サービス | CASH POST | マルチバリューチャージサービス | doreca | ATM受取(セブン・ペイメントサービス) | Kyash法人送金サービス | Bチャージ | セゾンスマート振込サービス | ウェブフリコム | DSKスマート送金 | ペイジェント支払い代行サービス | 楽たす振込・楽たす給与振込 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1件あたりの費用 | 〜270円/件程度 (公式サイト記載の目安) | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 50円〜/件(税別) (詳細は個別見積もり) | 要問い合わせ | 286円/件(税込) 給与振込プラン132円/件(税込) | 440円/件(税込) 給与・賞与振込262円/件(税込) | 500円/件(税別) | 要問い合わせ | 316円/件(税込) 楽たす給与振込183円/件(税込) |
| 初期費用・月額費用 | 初期費用0円〜/月額10,000円 (プラン・条件により異なる) | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 初期費用 要問い合わせ/月額0円 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 初期費用0円/月額 要問い合わせ | 要問い合わせ | 初期費用0円/月額0円 | 初期費用0円/月額0円 | 初期費用10,000円(税別)/月額0円 | 要問い合わせ | 初期費用0円/月額0円 |
| 主な受取方法 | セブン銀行ATM(現金) 銀行振込 PayPay/楽天ペイ/au PAY Amazonギフトカード | 銀行振込 セブン銀行ATM(現金) au PAY Amazonギフト券/QUOカードPay デジタルギフト | 銀行口座 ソフトバンクカード d払い残高 au PAYプリペイドカード/au PAY | 銀行振込 セブン銀行ATM(現金) ローソン店頭(現金) Amazonギフトカード 支払秘書への入金 | 銀行振込 ローソン店頭(現金) d払い セブン銀行ATM(現金) | 電子マネー・コード決済 ブランドプリペイドカード ATM(現金) | 銀行口座 au PAY 楽天キャッシュ WebMoneyプリペイドカード | セブン銀行ATM(現金) 電子マネー(nanaco・交通系・楽天Edy) (受取方法は企業がコースを選択) | Kyashアプリ残高 銀行振込 (受取にアプリ登録・本人確認が必要) | au PAY残高 (現金出金・自分の銀行口座への送金が可能) | 銀行振込 | 銀行振込 | 銀行振込 | 銀行振込 | 銀行振込 |
| 1回あたりの送金上限 | 公式に非公開 | 1件100万円 (電代業併用オプションで100万円超にも対応) | 公式に非公開 | 受取方法により異なる (銀行振込100万円/セブン銀行ATM紙幣分10万円/ローソン店頭3万円未満) | 受取方法により異なる (セブン銀行ATM10万円/ローソン店頭29,999円。銀行振込・d払いは公式に非公開) | 公式に非公開 | 公式に非公開 | 現金コース10万円/電子マネーコース25,000円 | 1件100万円 | 公式に非公開 | 上限なし(公式FAQに明記) | 公式に非公開 | 公式に非公開 | 公式に非公開 | 公式に非公開 |
| 資金移動業の登録 | 自社では登録なし (提携先の資金移動業者が実行) | 第二種(関東財務局長 第00037号) | 第二種(関東財務局長 第00017号) | 第二種(北海道財務局長 第00002号) | 第二種(関東財務局長 第00094号) | 自社では登録なし (受取先の決済事業者が実行) | 自社では登録なし (銀行口座払いはウェルネットが実行) | 第二種(関東財務局長 第00058号) | 第二種(関東財務局長 第00082号) | 第二種(関東財務局長 第00053号) | 自社では登録なし(振込事務代行) | 自社では登録なし(振込事務代行) | 第二種(東海財務局長 第00001号) | 自社では登録なし (立替払いによる支払代行) | 自社では登録なし(振込事務代行) |
| 連携方式 | 管理画面 CSV API | 管理画面 CSV API SFTP(オプション) | CSV API(要申込) SFTP(要申込) | 管理画面 (他の方式は要問い合わせ) | 管理画面 CSV API | 管理画面(Web方式) API | 管理画面 API 全銀フォーマット | 管理画面 CSV API(個別見積り) | CSV 全銀フォーマット API | CSV SFTP API | 管理画面 Excel専用ファイル 全銀フォーマット | CSV 全銀フォーマット | CSV(1オーダー最大1万件) | 管理画面 CSV 全銀フォーマット API | 管理画面 Excel・CSV 全銀フォーマット |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※上記は各社が公式に公開している情報にもとづく2026年8月時点の内容です。料金・受取方法・上限額は変更されることがあるため、実際の導入検討にあたっては各社の最新情報をご確認ください。
1. ウォレッチョ(株式会社スコープ)

受取人が6つの受け取り方から選べる点を軸にした送金サービスです。セブン銀行ATMでの現金受取、銀行振込、PayPay・楽天ペイ・au PAYの各残高へのチャージ、Amazonギフトカードが用意されています。広告・販促の企画を手がける株式会社スコープが新規事業として開発し、2021年にATMでの現金受取から提供を始め、2023年に法人向けのSaaSとして提供形態を改めました。
初期費用は0円から、月額利用料は10,000円、送金手数料は1件あたり270円程度までと公式サイトのユースケースページに記載があります。ただしプラン・条件によって価格が異なるという注記が付いているため、実額は見積もりで確認することになります。
送金の指示は管理画面へのCSVアップロード、API連携、依頼書ファイルの納品の3方式に対応し、受取URLの有効期限は発行から60日です。株式会社スコープ自身は資金移動業者として登録しておらず、ATMでの現金受取は第二種資金移動業者である株式会社セブン・ペイメントサービス(関東財務局長 第00058号)が担っています。1回あたりの送金上限は公式に示されていません。
2. GMO-PG送金サービス(GMOペイメントゲートウェイ株式会社)

決済代行を主力とするGMOペイメントゲートウェイ株式会社が2015年から展開する、EC・オンラインサービス事業者向けの返金・送金代行サービスです。受取方法は銀行振込、セブン銀行ATM、Amazonギフト券、au PAY、QUOカードPay、デジタルギフトの6系統で、デジタルギフトはPayPayや楽天ポイントなど50以上の交換先に対応します。
同社は第二種資金移動業者(関東財務局長 第00037号)で、1件あたり100万円という上限がかかります。この上限に対し、2026年2月からは電子決済等代行業の登録とGMOあおぞらネット銀行のAPIを組み合わせた電代業併用オプションの提供が始まり、同じ画面から100万円を超える送金も扱えるようになりました。オプション利用時の上限額はプレスリリースに記載がありません。
企業側の送金指示は、管理画面での都度登録とCSVによる一括登録に加え、API連携とオプションのSFTP連携に対応します。初期費用・月額費用・送金手数料はいずれも公式に金額が示されておらず、送金方法と送金件数に応じた見積もりになります。
3. 支払代行サービス(SBペイメントサービス株式会社)

受取人が用意する情報は携帯電話番号と氏名(カナ)だけで、そこからソフトバンクカード、d払い残高、au PAYプリペイドカード、au PAY、銀行口座の5つから受け取り方を選ぶ仕組みです。提供するのはソフトバンク株式会社が全額出資するSBペイメントサービス株式会社で、公式ページでは法人から個人・法人への支払いを代行するサービスと説明されています。
同社は資金移動業者(関東財務局長 第00017号)として登録しており、種別は第二種です。1回あたりの送金上限は公式に示されておらず、初期費用・月額費用・送金手数料も金額の掲載がないため、費用の判断材料は問い合わせでしか得られません。
企業側の送金指示は、標準提供のCSVファイルアップロードに加え、申し込みによってAPI方式・SFTP方式も選べます。導入事例としては、ブックオフコーポレーション株式会社が買取代金の受け取り手段として2019年11月に採用し、当初の120店舗から順次拡大したことが公式に紹介されています。
4. ウェルネット送金サービス(ウェルネット株式会社)

決済事業を手がけるウェルネット株式会社が提供する送金代行サービスで、採用選考時の交通費支給、チケットの払い戻し、宅配買取代金の支払いなどに使われています。受取人は銀行振込、セブン銀行ATMでの現金受取、ローソン店頭での現金受取、Amazonギフトカードコード、同社のウォレット「支払秘書」への入金の5つから選べます。
同社は第二種資金移動業者(北海道財務局長 第00002号)で、業務取扱要領には受取方法ごとの上限額が銀行振込100万円、セブン銀行ATMの紙幣受取10万円、ローソン店頭3万円未満と明記されています。ATMで払い出せるのは紙幣までなので、紙幣にならない端数は硬貨の払戻票発行・電子マネーへのチャージ・募金のいずれかから受取人が選びます。
振込の前に受取人が入力した口座情報を照合し、組戻しを未然に防ぐ機能を備えます。初期費用・月額費用・送金手数料はいずれも公式に金額の記載がなく、送金指示の方式も公式資料からは特定できませんでした。管理画面を利用する場合、開発なしで最短1.5〜2.5か月で開始できるとされています。
5. CASH POST(株式会社DGフィナンシャルテクノロジー)

公式サイトで530を超えるサイト・サービスに使われていると案内されている、株式会社DGフィナンシャルテクノロジーの送金サービスです。受取人のメールアドレス(携帯電話番号や住所情報での代替も可)だけで送金を開始でき、受取人は銀行振込、ローソン店頭、d払い、セブン銀行ATMの4つから受け取り方を選びます。
受取方法ごとの上限額が公開されているのがこのサービスの特徴で、ローソン店頭は1回29,999円まで、セブン銀行ATMは1回10万円までとされています。ATMでの1,000円未満の端数は、レジでの硬貨受取・電子マネーへのチャージ・募金のいずれかに振り替えられます。
提供会社は第二種資金移動業者(関東財務局長 第00094号)で、送金の指示は管理画面での個別登録、CSVによる一括登録、API連携に対応します。月額固定費は0円ですが、契約時の初期費用と送金1件ごとの手数料・処理料は金額が公開されていません。契約できるのは法人のみで、個人事業主への提供は行っていないと明記されています。
6. マルチバリューチャージサービス(ヤマトシステム開発株式会社)

ヤマトシステム開発株式会社が2019年にリユース業界向けとして提供を始めたサービスで、買取代金のほか、ギグワーカーへの報酬、保険金、新卒採用時の交通費といった支払いに使われています。受取人はSMSで届いたリンクから、電子マネーやコード決済、ブランドプリペイドカード、ATMでの現金受取などの中から受け取り方を選びます。
導入形態はAPI方式とWeb方式の2つで、Web方式なら企業側のシステム開発をせずに導入できます。2020年12月の提供開始時には、サービス開始までの期間を従来の約3分の1に短縮できると案内されました。企業から同社への資金の渡し方も、デポジットを前もって積む前払いと、月間のチャージ額を月末にまとめて精算する後払いから選べます。
初期費用・月額費用・1件あたりの送金手数料はいずれも個別見積もりで、1回あたりの送金上限とあわせて公式には示されていません。提供会社であるヤマトシステム開発株式会社は資金移動業者として登録しておらず、受取先となるPayPay株式会社、楽天Edy株式会社、株式会社Kyashはそれぞれ資金移動業者の登録を持っています。
7. doreca(BIPROGY株式会社)

複数の決済事業者への接続を一つの窓口にまとめる基盤で、BIPROGY株式会社はこれをマルチペイメントゲートウェイと呼んでいます。2020年5月の提供開始以降、au PAY、WebMoneyプリペイドカード、楽天キャッシュ、銀行口座と接続先を広げてきました。企業は決済事業者ごとに個別のシステム接続を用意せずに済みます。
資金を実際に動かすのは、接続先の各事業者です。銀行口座への支払いは2024年10月からウェルネット株式会社(第二種資金移動業者、北海道財務局長 第00002号)との連携で提供されており、導入企業は同社とも別途契約を結ぶ必要があります。BIPROGY株式会社自身が資金移動業者として登録している事実は、公式サイトからは確認できません。
賃金のデジタル払いにも広がっており、2026年3月からPayPay株式会社の「PayPay給与受取」への送金に対応する予定が2025年12月に発表されました。企業側の送金指示は、全銀協規定フォーマットに準拠したAPI接続と、規定フォーマットのファイルをWeb画面からアップロードする方式に対応します。料金と1回あたりの送金上限は公式に示されていません。
8. ATM受取(株式会社セブン・ペイメントサービス)

銀行口座を持たない相手にも支払える設計で、受取人はメールアドレスか携帯電話番号だけで、全国27,000台以上のセブン銀行ATMから原則24時間365日、現金を受け取れます。提供するのはセブン銀行グループの株式会社セブン・ペイメントサービスで、契約企業は2024年6月末時点で900社を超えたと発表されています。
受取方法は、受取人が選ぶのではなく送金する企業が現金コースと電子マネーコースのどちらかを選ぶ仕組みです。1件あたりの上限は現金コースが10万円、電子マネーコースが25,000円で、現金コースの1,000円未満の端数は、セブン-イレブンのレジでの硬貨受取・電子マネーへのチャージ・募金から受取人が選びます。
第二種資金移動業者(関東財務局長 第00058号)として、送金資金は三井住友銀行およびセブン銀行との履行保証金保全契約にもとづき保全されると公式のよくある質問に記載があります。送金の登録は管理画面への直接入力とCSVアップロードに対応し、API接続は個別見積もりです。料金は初期費用・月額利用料・送金手数料の3要素(税別)と示されるのみで、金額は問い合わせ時に案内されます。
9. Kyash法人送金サービス(株式会社Kyash)

初期費用0円、送金手数料1件50円〜(税別)と、1件あたりの費用を公式サイトに実額で示している数少ないサービスです。株式会社Kyashが2021年に提供を開始し、2025年10月時点で累計送金件数130万件・累計送金額200億円に達したと発表しています。詳細な料金は代理店経由の個別見積もりになります。
受取人は、Kyashアプリの残高で受け取るか、1,000を超える国内金融機関の中から自分の銀行口座を指定するかを選べます。ただしどちらの場合も、受け取る前にKyashアプリのインストールと会員登録、スマートフォンでの本人確認が必要です。少額の謝礼を不特定多数に支払う場合は、この手続きを受取人が受け入れるかが分かれ目になります。
同社は第二種資金移動業者(関東財務局長 第00082号)で、1回あたりの送金上限は100万円以下です。送金の指示は全銀フォーマットやCSVのファイルアップロードとAPI連携に対応し、導入までの目安はファイル方式で最短2週間、API連携で約1か月とされています。ただし利用規約は、労働の対価としての賃金の支払いに使うことを原則として禁じています。
10. Bチャージ(auフィナンシャルサービス株式会社)

受取先をau PAY残高に絞った送金サービスで、運営するauフィナンシャルサービス株式会社は第二種資金移動業者(関東財務局長 第00053号)として登録しています。受取人がauの回線契約者である必要はなく、au IDの登録とau PAYアプリのダウンロードがあれば受け取れることが公式のよくある質問に明記されています。
受け取ったau PAY残高は、加盟店でのコード決済やMastercard加盟店でのカード決済に使えるほか、現金として出金したり自分の銀行口座へ送金したりできます。同社は2025年4月4日に賃金のデジタル払いに対応する資金移動業者として厚生労働大臣の指定を受けており、給与の受け取りは「au PAY 給与受取」という別のサービス名で提供されています。
送金の指示はCSVのアップロード、SFTP連携、API連携の3方式で、API連携では送金の都度リアルタイムに処理されます。料金は加盟店規約で個別に合意する形になっており、送金手数料・初期費用・月額費用のいずれも公開されていません。契約できるのは法人のみで、個人事業主からの申し込みは受け付けていません。
11. セゾンスマート振込サービス(株式会社セゾンパーソナルプラス)

クレディセゾングループの株式会社セゾンパーソナルプラスが提供する振込代行サービスです。受取方法は国内金融機関の口座への銀行振込のみですが、公式のよくある質問で振込件数・金額に上限はないと明記されている点が、1件100万円の上限がかかる資金移動業者のサービスとの違いになります。
初期費用と月額費用は0円で、振込手数料は同行宛・他行宛や振込金額を問わず一律です。総合振込と当日振込のプランが286円(税込)、従業員への給与・賞与を想定した給与振込プランが132円(税込)と、個人あての支払いにも金額を明示したプランが用意されています。組戻手数料は880円、返金手数料は550円です。
同社は資金移動業者として登録しておらず、利用規約では振込事務を代行するサービスと位置づけられています。入金専用口座は三井住友銀行の信託口座で、預けた資金は分別管理されると公式のよくある質問に記載があります。送金データの登録は管理画面での個別入力、Excel専用ファイル、全銀フォーマットの固定長ファイルに対応し、API連携についての記載は確認できません。
12. 振込代行サービス ウェブフリコム(株式会社フォーライフシステム)

2002年の提供開始から20年以上運営され、2025年9月時点の導入企業は9,000社を超えると発表されている振込代行サービスです。運営するのは大阪市に本社を置く株式会社フォーライフシステムで、受取方法は全国銀行内国為替制度に加盟する金融機関の口座への振込のみ、ゆうちょ銀行も対象です。海外の金融機関への振込には対応していません。
初期費用・月額固定費はかからず、振込手数料は総合振込が1件440円、給与・賞与振込が1件262円(いずれも税込・一律)です。CSVの一括アップロードと全銀フォーマットに対応し、複数段階の承認フローも設定できます。大会中止にともなう3,000件を超えるランナーへの参加費返金を処理した事例が公式に紹介されています。
利用規定は、本サービスが振込事務の代行であり契約者が為替取引の当事者となるものではないと明記しており、同社は資金移動業者としての登録を持ちません。1件あたりの上限額についての公式の記載もありません。資金管理を受託するNTTスマートトレード株式会社は、株式会社フォーライフシステムの破綻時に振込資金の全額が返還されない場合がある旨を自社サイトで示しています。
13. DSKスマート送金(株式会社電算システム)

受取人への案内文の送付から口座情報の収集、送金、送金できなかった場合の再連絡までをまとめて委託できるのが、株式会社電算システムのDSKスマート送金です。顧客窓口は自社で持ったまま送金処理だけを任せる形も選べ、イベント中止にともなう大量返金と、個別の少量返金の双方を想定した設計になっています。
初期費用10,000円、送金処理料は1件500円(いずれも税別)と実額が公開されており、月額基本料金はかかりません。電話受付を委託する場合は1件400円、案内をハガキで送る場合は1通122円が別途必要です(いずれも税別)。
同社は第二種資金移動業者(東海財務局長 第00001号)として登録しています。受取方法は銀行口座への振込のみで、都市銀行から信用金庫・農業協同組合まで幅広い金融機関に対応しますが、ATMでの現金受取や電子マネーへのチャージは公式には案内されていません。送金先情報はCSVで登録し、1オーダーにつき最大1万件までです。1回あたりの送金上限額の明記は公式ページにありません。
14. ペイジェント支払い代行サービス(株式会社ペイジェント)

株式会社NTTデータと三菱UFJニコス株式会社が半分ずつ出資する株式会社ペイジェントの支払い代行サービスです。同社が支払い先へ立替払いする方式のため、企業側は送金原資を前もって預ける必要がありません。原資を預けている間の資金拘束を避けたい場合の選択肢になります。
受取方法は全銀ネットに接続する金融機関の口座への振込で、24時間365日のリアルタイム着金に対応します。振込の際に口座情報を自動で確認する仕組みを備え、組戻しの発生を抑える設計です。フードデリバリーの配達員をはじめとするギグワーカーへの報酬、返金、買取金の支払いなどが公式に用途として挙げられています。
支払いの依頼は管理画面での口座情報登録と定期振込依頼のほか、CSVファイル、全銀フォーマットのファイル、API接続に対応します。初期費用・月額費用・1件あたりの送金手数料はいずれも公開されていません。会社概要に記載された事業内容は収納代行事業で、資金移動業者としての登録は金融庁の登録一覧でも確認できませんでした。
15. 楽たす振込・楽たす給与振込(株式会社ミロク情報サービス)

振込代行のプランが用途別に2つに分かれており、仕入先への支払いなどに使う「楽たす振込」と、従業員の給与・賞与に特化した「楽たす給与振込」から選びます。提供するのは、税理士事務所向けの業務ソフトを主力とする株式会社ミロク情報サービスで、同社のクラウドサービス群bizSkyの一つとして位置づけられています。
初期費用・月額基本料・組戻手数料はいずれも無料で、かかるのは振込手数料だけです。楽たす振込は1件316円、楽たす給与振込は1件183円(いずれも税込・一律)で、同社の会計ソフト利用企業にはそれぞれ285円・153円の特別価格が案内されています。ただし特別価格の適用条件は公式サイトに詳しい説明がありません。
受取方法は銀行口座への振込のみで、即時振込・税金の振込・海外送金には対応していません。同社が資金移動業者として登録している旨の記載は公式サイトにも利用規約にもなく、利用規約では振込資金専用口座の資金を振込実施金融機関へ信託して保全すると定めています。データの登録は画面への直接入力、Excel・CSVの取り込み、全銀フォーマット連携に対応します。
送金サービスに切り替えるとコストと業務はどう変わるか
候補が絞れたら、次は社内で検討を通すための材料が必要になります。導入によって何がどれだけ変わるのかを、費用と業務の両面から整理します。
銀行振込と比べた削減額の試算
削減額は、現在の振込方法と件数によって決まります。銀行振込の手数料は振込方法によって差が大きく、窓口が最も高く、ATM、インターネットバンキングの順に下がります。他行あての振込では、窓口で数百円台後半、インターネットバンキングでも百数十円から数百円かかるのが一般的です。
仮に、他行あての振込を月100件、インターネットバンキングから1件220円で行っている企業を考えます。この場合の振込手数料は月22,000円、年間で264,000円です。ここで比較表で公表されている単価のうち低めの水準にあたる1件132円を置くと月13,200円、年間158,400円となり、年間で105,600円の差が出ます。
ただし月額固定費が1万円かかるサービスであれば年間12万円が上乗せされ、差し引きでは増える計算になります。この試算は置いた前提のもとでの数字なので、自社の件数と単価に置き換えて確かめてください。
件数が少ない場合は、手数料の削減より後述する事務負担の軽減のほうが導入効果として大きくなることもあります。金額だけで判断せず、作業時間の削減とあわせて評価してください。
口座情報を預からなくなることで減るリスクと事務
費用よりも効果が大きいことがあるのが、口座情報を集めて保管する業務がなくなることです。従来は、支払いのたびに受取人へ口座情報を照会し、回収し、誤りがないか確認し、支払いが終わった後もその情報を保管期間中は管理し続ける必要がありました。送金サービスでは受取人が自分で受け取り方を指定するため、この一連の作業が企業の手を離れます。
情報管理の観点でも、保有していない情報は漏えいしません。個人情報の取扱件数が減れば、社内の管理規程にもとづく点検やアクセス権限の管理の対象も減ります。社内で導入を検討する際は、手数料の削減額と並べて示すと判断材料になります。
加えて、送金の受付が24時間365日可能なサービスが多く、金融機関の営業時間や振込の締め時間に業務が縛られなくなります。月末に作業が集中していた企業では、支払いを分散して処理できるようになる効果もあります。
導入から送金までの流れ
契約後、実際にどう運用するのかを、資金を預けるところから受け取られなかった分が戻るところまで通しで見ておきます。導入後の工数を見積もるうえで、ここが最も具体的な材料になります。

資金の預け方
送金の原資をいつ事業者へ渡すかは、大きく3つの方式に分かれます。1つ目は、あらかじめまとまった額を預けておき、そこから送金するたびに引き落とす方式です。送金の指示から着金までが速い一方、預けている資金がその間拘束されます。
2つ目は、送金の都度、必要額を入金する方式です。資金が長く拘束されない代わりに、入金の確認を挟むぶん着金までに時間がかかります。3つ目は、事業者がいったん立て替えて送金し、後から企業へ請求する方式です。企業側の資金拘束が発生しないため資金繰りの面では有利ですが、与信審査が入ることがあります。
どの方式かは料金表には表れませんが、預ける金額と期間によっては実質的なコストになります。とくに月間の送金額が大きい企業では、この違いが手数料の差より効くことがあります。
送金データの登録から着金まで
登録の方式は選び方で見たとおりですが、運用に入ると件数の制約が効いてきます。一括登録では1回で扱える件数に上限が設けられていることがあり、大量の返金が発生する場面では分割が必要になります。
登録後の流れは、受取人へメールやSMSで案内が届き、受取人が案内から受け取り方を選び、手続きを完了させると着金する、という順です。企業側は管理画面で受け取り状況を確認できるため、誰がまだ受け取っていないかを把握できます。着金までの時間は受取方法によって変わり、コード決済へのチャージは即時に近い一方、銀行口座への振込は金融機関の処理時間に左右されます。
承認のフローを設けられるサービスもあり、担当者が登録した送金データを上長が承認してから実行する運用が組めます。内部統制の観点から支払いに承認を必須としている企業では、この機能の有無が要件になります。
受け取られなかった送金はどうなるか
送金サービスでは、受取人が手続きをしなければ資金は受け取られないまま残ります。案内のメールが埋もれる、受取方法を選ぶ前に忘れられる、といった理由で一定の割合は必ず発生します。経理処理の観点では、この未受取の資金がいつ、どのように企業へ戻るのかが問題になります。
受け取りには期限が設けられているのが通例で、公式に確認できる範囲では、2週間程度から60日程度まで幅があります。期限を延長できる仕組みを持つサービスもあります。
しかし、期限を過ぎた資金がどう戻るのか、返還に手数料がかかるのかを公式に明記している事業者はほとんどありません。本記事で比較した15サービスを確認した限り、受取期限を公開しているサービスはいくつかあるものの、期限経過後の返還ルールと返還時の手数料まで公開しているものは確認できませんでした。
利用規約や公式のよくある質問にも記載がなく、「送金元へ問い合わせてください」という受取人向けの案内にとどまっているのが実情です。
この状況自体が、選定時に確認すべき点があるということを示しています。月末や期末に未受取の資金がどれだけ残り、それがいつ戻るのかは、預り金の残高管理と決算作業に直結します。見積もりを取る段階で、返還までの日数、返還手数料の有無、未受取分の一覧を取得する方法の3点を必ず質問してください。運用が始まってから確認すると、想定していなかった残高が積み上がることになります。
導入前に確認しておきたい注意点
導入後につまずきやすい点を、あらかじめ3つ挙げておきます。いずれも契約前に確認できる内容です。加えて、管理画面の操作や一括登録のファイル形式は担当者が覚える必要があり、導入直後は一時的に手間が増えます。マニュアルや導入時の支援があるかも、あわせて確認しておくとよいでしょう。
急ぎの支払いには間に合わないことがある
送金サービスは24時間受付に対応していても、実際に着金するまでには受取人の操作が挟まります。受取人がすぐに手続きをするとは限らないため、「今日中に必ず相手の手元へ届ける」という使い方には向きません。
また、あらかじめ資金を預ける方式では、預け入れの反映に金融機関の営業時間が影響します。送金指示の締切時間と、資金の入金がいつ反映されるかを確認し、余裕を持ったスケジュールを組む必要があります。急ぎの支払いが定期的に発生する業務では、従来の振込手段を併用できる体制を残しておくのが現実的です。
受取人によっては使えないことがある
送金先を個人に限定しているサービスがあり、法人や個人事業主あての支払いには使えないことがあります。逆に、契約できる側を法人に限り、個人事業主の申し込みを受け付けていないサービスもあります。自社が契約できるか、支払先が対象に含まれるかの両方を確認してください。
受取人の側にも条件がつくことがあります。受け取りに専用アプリの登録と本人確認を求めるサービスでは、その手続きを済ませられない相手には支払えません。年齢による制限が設けられている場合もあります。海外に居住する個人への支払いは、国内向けのサービスでは対象外となるのが一般的で、その場合は海外送金に対応した別の手段を検討することになります。
海外在住の受取人が一定数含まれるのであれば、国内向けの送金サービスとは別に、海外への送金手段を用意しておくことになります。銀行・ネット銀行・送金専門サービスの手数料と為替コストを法人の視点で比較した記事がありますので、そちらを検討の出発点にしてください。
サービスの提供終了に備える
この領域では、提供が終了したサービスが実際にあります。企業から個人への送金機能を提供していた株式会社pringは、2026年5月にサービス終了を発表し、同年8月24日に資金移動業の登録を廃止する予定です。送金機能は同月17日から順次停止しています。LINE Payの送金機能も2024年10月に終了し、日本国内でのサービス自体も2025年4月に終了しました。
支払いの手段が突然使えなくなると、返金や報酬支払いといった止められない業務が影響を受けます。個別のサービスの良し悪しの問題ではなく、選定時に次の点を確認しておく必要があるということです。まず、そのサービスが提供会社の事業の中でどう位置づけられているかを見ます。
次に、終了時にどれだけの猶予期間が設けられ、未受取の資金がどう処理されるかが規約に定められているか。そして、いざというときに切り替えられる代替手段を把握しているか。契約書や利用規約のサービス終了に関する条項は、契約前に目を通しておくべき箇所です。
現金の代わりにギフト券で渡すという選択肢
ここまで比較してきたのは、現金相当の価値を個人に送る手段です。しかし、送金上限に収まらない、手数料が見合わない、受取人層に合う受取方法がないといった理由で、現金での送金が噛み合わないこともあります。その場合に検討したいのが、ギフト券やポイントで渡す方法です。
法人向けのデジタルギフトは、電子マネーやコンビニの商品引換券、複数の商品から受取人が選べるカタログ型などを、メールやURL、QRコードで配布できるサービスです。受取人はメールやURLから数タップで受け取れるため、手続きの軽さが求められる少額多数の謝礼や景品で選ばれることがあります。
利用目的に応じた選び方や、料金・手数料の違いは「法人向けデジタルギフトおすすめ25選|利用目的別の選び方と料金・手数料を比較」で整理しています。
現金の送金と比べたときの違いは3点あります。1つ目は、受取人の使い勝手です。ギフト券は使える店舗やサービスが限られるため、現金と同じようには使えません。使途を問わない支払い、たとえば実費の精算や報酬の支払いには向きません。
2つ目は費用構造で、送金サービスが1件あたりの手数料を取るのに対し、デジタルギフトは券面額に対する発行手数料という形が中心になります。最低発注額が設定されていることもあります。3つ目は社内での処理です。ギフト券の購入と配布は送金とは会計上の扱いが異なり、税務上の取り扱いも用途によって変わります。
謝礼やキャンペーンのように、渡す金額が小さく使途を限定しても構わない支払いであれば、ギフト券のほうが運用は軽くなります。逆に、返金や実費の精算のように現金でなければ成立しない支払いでは、送金サービスを選ぶことになります。どちらの手段が自社の支払いに合うかを、用途ごとに切り分けて検討してください。
ギフト券で渡す方向で検討する場合、実際の比較では券種(電子マネー型・カタログ型・商品引換型)と、券面額に対する手数料や最低発注額の条件が判断材料になります。以下の記事では法人向けデジタルギフト25サービスを利用目的別に比較していますので、自社の謝礼やキャンペーンに使える券種を探す際にご覧ください。
法人向けデジタルギフトおすすめ25選|利用目的別の選び方と料金・手数料を比較
キャンペーンの景品やアンケートの謝礼、福利厚生のインセンティブを配るたびに、送り先の住所収集や商品の発送、在庫の管理に追われていませんか。受け取る側にとっても、後日郵送で届くより、その場でスマートフォンから受け取れる方が利便性は高くなってい…
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まとめ
企業から個人への送金サービスを選ぶとき、最初に確認すべきは1件あたりの手数料ではなく、自社の支払額が送金の上限に収まるかどうかです。自社で資金移動業の登録をしている事業者はいずれも第二種で、1回あたり100万円以下という上限がかかります。
それを超える支払いがあるなら、振込の事務を代行する枠組みのサービスか、別の枠組みを併用して上限を引き上げているサービスが候補になります。ただし振込の事務代行には資金決済法にもとづく保全の枠組みがかかりません。上限と保全はトレードオフの関係にあります。
次に効いてくるのが受取方法です。受取人が使える手段が用意されていなければ、送金しても受け取られず、未処理の支払いが残ります。受取人の年齢層や生活圏に合う手段があるか、受け取り操作でつまずいたときに本人が解決できるかを、自社の受取人像に当てはめて確認してください。費用は1件あたりの単価だけでなく、初期費用と月額固定費、そして原資を預ける方式による資金拘束まで含めて総額で比べます。
そして、見積もりを取る段階で必ず質問しておきたいのが、受け取られなかった資金の扱いです。返還までの日数、返還手数料の有無、未受取分を把握する方法の3点と、原資を前払いで預ける方式かどうか(預ける場合は残高がどう扱われるか)は、公開情報ではほとんど確認できないにもかかわらず、月次の預り金管理と決算作業に直結します。
選び方で挙げた5つの軸——上限・受取のされやすさ・総額・既存システムとの連携・保全とセキュリティ——に、この未受取の扱いを加えた6点を自社の条件に当てはめて、候補を絞り込んでください。
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よくある質問(FAQ)
Q. 企業から個人への送金サービスとは何ですか?
A. 企業から個人への送金サービスとは、企業がメールアドレスや携帯電話番号を宛先に支払いを指示すると、受取人が自分で受け取り方を選んで現金相当の価値を受け取れる、法人向けの支払い代行サービスです。
受取人が選べるのは、コンビニなどに設置されたATMでの現金受取、自分の銀行口座への振込、電子マネーやコード決済へのチャージといった手段です。BtoC送金サービス、送金代行、支払代行と呼ばれることもあり、名称は事業者によって異なります。
銀行振込との最も大きな違いは、企業が受取人の口座情報を集めて保管しなくても支払いが完結することです。返金やキャッシュバック、アンケートの謝礼、業務委託の報酬など、支払先が不特定多数の個人で件数が多い支払いで使われています。
Q. 企業から個人への送金サービスは、受取人が銀行口座を持っていなくても送金できますか?
A. 企業から個人への送金サービスでは、ATMでの現金受取や電子マネー・コード決済へのチャージに対応したサービスを選べば、受取人が銀行口座を持っていなくても支払えます。
ATM受取は、企業から届いた番号やQRコードをATMに入力して現金を受け取る方式で、受取人は口座もスマートフォンのアプリも用意する必要がありません。
ただしATMが払い出せるのは紙幣だけであるため、1,000円未満の端数は硬貨の払戻票の発行・電子マネーへのチャージ・募金などに振り替えられます。1回のATM受取の上限は10万円程度に設定されている例が多く、まとまった金額の支払いには別の受取方法との組み合わせが必要です。
注意したいのは、口座の有無とは別に受取人へ条件がかかる場合があることです。受け取りに専用アプリのインストールや本人確認を求めるサービスでは、その手続きを済ませられない相手には支払えません。
Q. 企業から個人への送金サービスで、1件100万円を超える支払いはできますか?
A. 企業から個人への送金サービスのうち、提供会社が自ら資金移動業の登録をしているものは1回100万円が上限です。ただし別の枠組みを併用して100万円超に対応するサービスもあります。
資金移動業は1回に動かせる金額によって3つの類型に分かれ、第二種は1回100万円以下、第三種は1回5万円以下の送金しか扱えません(第一種にはこの種の金額の定めがありません)。
金融庁の資金移動業者登録一覧(2026年7月31日現在)に載る84者のうち第三種の登録は0者で、第一種を持つ8者に本記事の比較対象の提供会社は含まれていません。本記事で比較した15サービスのうち、提供会社が自社で登録している8社は、すべて第二種にあたります。
1件100万円を超える支払いがあるなら、振込の事務を代行する枠組みで提供され、資金決済法上の上限がかからないサービスが候補になります。ただしその場合は同法にもとづく資金の保全義務もかからないため、上限と保全はトレードオフの関係になります。
出典・参考資料(3件)
Q. 資金移動業の登録がない事業者の送金サービスを使っても問題ありませんか?
A. 資金移動業の登録がないこと自体は問題ではなく、その事業者が資金移動業とは別の枠組みで送金を提供していることを意味します。
典型的なのは、振込の事務を代行する形です。資金を動かす当事者はあくまで依頼した企業であり、事業者は企業に代わって振込の手続きを行っているという整理になるため、為替取引を業として営むことにはあたらず、登録は必要ありません。もう一つは、実際に資金を動かす部分を登録済みの資金移動業者や決済事業者に担わせる形で、この場合の送金上限や資金の保全は実行主体の側の枠組みに従います。
確認しておきたいのは、資金決済法にもとづく履行保証金の保全(まだ受取人に届いていない資金を供託・保全契約・信託によって守る仕組み)が適用されない点です。預かった資金を信託口座で分別管理する仕組みを自主的に設けている事業者もありますが、法律にもとづく保全ではないため、どのような仕組みで、どの範囲の資金が守られるのかを利用規約で個別に確認してください。
出典・参考資料(1件)
Q. 企業から個人への送金サービスを、従業員の給与の支払いに使えますか?
A. 企業から個人への送金サービスを給与の支払いに使えるのは、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座へ支払う場合に限られ、報酬や謝礼に使えるサービスをそのまま賃金の支払いに転用することはできません。
賃金は労働基準法第24条により通貨で支払うのが原則で、その例外として2023年4月1日から資金移動業者の口座への賃金支払い(給与のデジタル払い)が認められました。対象は第二種資金移動業を営む事業者のうち厚生労働大臣の指定を受けた者に限られ、指定を受けているのは2026年7月1日現在で4社です。
制度上の100万円という数字は、1日あたりに受け取れる金額ではなく口座残高の上限です。しかも指定4社が実際に設定している受入上限額は10万円から30万円で、規制上の天井とは開きがあります。
加えて、労働者が銀行口座での受け取りも選べるようにしたうえで、要件を説明して本人の同意を得ることが求められます。報酬や謝礼には使えるサービスでも、賃金の支払いを利用規約で禁じている事業者があるため、規約の確認が欠かせません。
出典・参考資料(3件)
Q. 送金した資金が受取人に受け取られなかった場合はどうなりますか?
A. 受け取られなかった資金は受取期限を過ぎると企業へ戻るのが通例ですが、返還までの日数や返還手数料を公式に明記している事業者はほとんどありません。
受け取りの期限は、公式に確認できる範囲では2週間程度から60日程度まで幅があり、期限を延長できる仕組みを持つサービスもあります。一方で、期限を過ぎた資金がいつ戻るのか、返還に手数料がかかるのかは、本記事で比較した15サービスを確認した限り公開されていませんでした。
未受取の資金は月末・期末の預り金の残高管理と決算作業に直結するため、見積もりの段階で、返還までの日数・返還手数料の有無・未受取分の一覧を取得する方法の3点を質問しておいてください。提供会社が資金移動業者であれば、まだ受取人に届いていない資金(未達債務)は履行保証金による保全の対象に含まれます。
出典・参考資料(1件)
Q. 企業から個人への送金サービスは、法人や個人事業主あての支払いにも使えますか?
A. 企業から個人への送金サービスには送金先を個人に限定しているものがあり、法人や個人事業主あての支払いには使えないことがあります。
外注先やフリーランスへの支払いに使いたい場合は、支払先として個人事業主や法人が対象に含まれるかを契約前に確認してください。支払先が固定的で振込先口座も継続して同じであれば、請求書の受領から振込までを引き受ける法人向けの支払代行のほうが適していることもあります。
契約する企業の側にも条件が付く場合があります。契約できるのは法人のみで、個人事業主からの申し込みを受け付けていないサービスもあるため、自社が契約できるかと、支払先が対象に含まれるかの両方を確認する必要があります。
Q. 企業から個人への送金サービスで、海外に住んでいる個人に送金できますか?
A. 国内向けの送金サービスでは、海外に居住する個人への支払いは対象外となるのが一般的です。
受け取り先が国内の金融機関の口座、国内のコード決済や電子マネー、国内のATMを前提に組まれているためで、海外の金融機関への振込には対応していないと明記しているサービスもあります。海外在住の受取人が混ざる場合は、国内向けのサービスで扱えるかを個別に確認し、扱えなければ海外送金に対応した別の手段を検討することになります。
Q. 企業から個人への送金サービスは、導入を決めてから送金を始めるまでどれくらいかかりますか?
A. 企業から個人への送金サービスの導入期間は連携方式によって変わり、公式に目安を示しているサービスでは、ファイルやCSVで送金データを渡す方式で最短2週間、API連携で1か月程度とされています。
一方で、管理画面を使い開発を伴わない場合でも1.5〜2.5か月を見込むと案内しているサービスもあり、期間には幅があります。開発の要否だけでなく、契約時の審査、社内の稟議、テスト送金までを含めた期間で見積もっておくと、実際のスケジュールとのずれが小さくなります。
早く始めたい場合は、まず管理画面やCSVでの運用で開始し、件数が増えた段階でAPI連携に切り替える進め方も取れます。その場合は、後からAPI連携に移行できるかを契約前に確認しておいてください。
Q. 企業から個人への送金サービスで料金を公開していない事業者から、比較できる見積もりを取るにはどうすればよいですか?
A. 月間の送金件数、1件あたりの金額帯、必要な受取方法、送金データの連携方式、資金の預け方の5点を揃えて伝えると、各社から横並びで比べられる見積もりが返ってきます。
本記事で比較した15サービスのうち、1件あたりの金額を何らかの形で公表しているのは6社(うち一律価格は4社)にとどまります。送金件数や受取方法の組み合わせによって個別に見積もる商習慣があるためで、前提を揃えずに問い合わせると、各社の回答が比較できない形で返ってきます。
回答を受け取ったら、1件あたりの手数料だけでなく初期費用と月額固定費を含めた総額で並べ、原資を事前に預ける方式かどうかによる資金拘束もあわせて評価してください。未受取資金の返還ルールも同じタイミングで聞いておくと、導入後に想定外の負担が出にくくなります。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
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