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IDS/IPS製品おすすめ19選を比較|検知方式・誤検知対策・設置形態から選び方を解説

IDS/IPS製品おすすめ19選を比較のサムネイル画像

ファイアウォールもアンチウイルスも入れているのに、社内ネットワークに入り込む攻撃を止めきれているか自信が持てない。そんな状態から侵入検知の仕組みを探し始めると、最初にぶつかるのが「IDSとIPS、自社はどちらを入れるべきか」という問いではないでしょうか。

検知だけのIDSなら業務通信を止める心配はない一方、攻撃そのものは通ってしまいます。遮断まで行うIPSは被害を未然に防げますが、誤検知で正規の通信まで止まれば業務が停止します。この二択に、製品ごとの検知方式や設置形態、運用体制の違いが重なるため、比較が難しくなります。

本記事では、IDS・IPS製品19サービスを比較・解説します。検知方式(シグネチャ型・アノマリ型)、設置形態(ミラーポート・インライン)、遮断の可否、チューニングを誰が担うかといった、誤検知への備えを判断できる軸で整理しました。自社のネットワーク構成と運用体制に合う製品を絞り込む材料としてご活用ください。

また、貴社の状況に合わせて最適なサービスを最短で見つけられるよう、「30秒で終わる選定診断ツール」をご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。

IDS・IPSとは|検知だけのIDSと遮断まで行うIPS、導入で得られること

ここからは、IDSとIPSがそれぞれ何をする仕組みで、両者がどう違うのかを整理します。

侵入検知とは、コンピュータやネットワークで起きている事象を監視し、セキュリティポリシーへの違反やその兆候を示す事象がないかを分析する処理を指します。侵入防御は、その侵入検知を行ったうえで、検知した事象を止めようとする処理までを含みます。

IDS(不正侵入検知システム)とは

IDS(Intrusion Detection System)は、ネットワークを流れる通信を監視し、不正なアクセスや攻撃の兆候を見つけて管理者に知らせる仕組みです。通信そのものを止める機能は持たないため、検知した後にどう対処するかは担当者の判断に委ねられます。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、IDSを次のように説明しています。

不正侵入検知システムと呼び、ネットワーク通信を監視し、不審な通信が見つかった際に担当者へ通知を行う。自動でブロックする機能はないが、通知を受けることで、担当者が内容を確認し対応に着手する契機となる。

情報セキュリティ10大脅威 2026 解説書[組織編] p.48|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

通信を止めないという性質は、裏を返せば導入時に業務を止めるリスクが小さいことを意味します。まず自社のネットワークで何が起きているかを可視化したい段階では、この設計が扱いやすい選択肢になります。

IPS(不正侵入防御システム)とは

IPS(Intrusion Prevention System)は、IDSと同じく通信を監視したうえで、不審な通信を検知した時点で自動的に遮断まで行う仕組みです。攻撃を受けてから担当者が対応するまでの時間差がなくなるため、被害の拡大を防ぎやすくなります。

IPAは、IPSの利点と同時に注意点も併せて示しています。

不正侵入防止システムと呼び、ネットワーク通信を監視し、不審な通信が見つかった場合は担当者への通知だけでなく自動でブロックも行う。IDSよりリスクの低減はできるが正規の通信をブロックしてしまうおそれもあり、組織の方針を踏まえた上での選定が必要である。

情報セキュリティ10大脅威 2026 解説書[組織編] p.48|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

「正規の通信をブロックしてしまうおそれ」が、IPS導入をためらう最大の理由になります。この点をどう設計で抑えるかは、本記事の後半で設置形態と遮断の設定に分けて扱います。

IDSとIPSの違い|検知して知らせるか、通信を止めるか

両者の違いは、検知した後の動作と、機器を置く場所に現れます。IDSは通信のコピーを見て通知するだけなので通信経路の外に置けますが、IPSは通信を止める必要があるため通信経路上に置くことになります。

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検知した後の動作機器を置く場所誤検知が起きたときの影響機器の障害が業務に与える影響向いている状況
IDS(不正侵入検知システム)管理者へ通知する。通信は流れたまま通信経路の外(通信のコピーを受け取る)不要な通知が増える。業務通信は止まらない監視が止まるが通信は流れ続けるまず自社ネットワークの状況を可視化したい
IPS(不正侵入防御システム)通知に加えて通信を自動的に遮断する通信経路上(通信が機器を通過する)正規の通信が遮断され、業務が止まることがある通信経路上にあるため、通信断につながりうる検知から遮断までを人手を介さず完結させたい

もっとも、この区別は製品カテゴリの違いというより設定の違いに近い側面があります。米国国立標準技術研究所(NIST)が2007年に公開した「NIST SP 800-94」は、IPS製品の防御機能を管理者が無効化してIDSとして動作させられるのが通例だと記しています。

IDS and IPS technologies offer many of the same capabilities, and administrators can usually disable prevention features in IPS products, causing them to function as IDSs.

(訳:IDSとIPSの技術は多くの同じ機能を備えており、管理者は通常、IPS製品の防御機能を無効化してIDSとして動作させることができる)

NIST SP 800-94, Guide to Intrusion Detection and Prevention Systems (IDPS), Executive Summary|NIST(米国国立標準技術研究所、2007年2月)

製品名に「IPS」と付いていても、遮断を有効にしなければIDSとして運用できます。したがって選定の実質は「IDS製品かIPS製品か」ではなく、「どこに置き、どこまで自動で止める設定にするか」の設計判断になります。

IDS・IPSを導入するメリット

導入の効果は、インターネットに接している機器が日常的に探索されているという前提に立つと理解しやすくなります。警察庁が公開した「令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」は、同庁のセンサーが観測した不審なアクセスの件数を次のように報告しています。

令和7年に警察庁が設置したセンサーにおいて検知した、ぜい弱性探索行為等の不審なアクセス件数は、1日・1IP アドレス当たり 9,605.7 件(前年比 0.9%増)と、引き続き高水準で推移しており、その大部分が海外を送信元とするアクセスで占められている

令和7年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について p.19|警察庁サイバー警察局(令和8年3月)

同資料は、観測されたアクセスの半数以上が不特定多数の機器を対象としたもので、公開された機器やサービスが「常時第三者に探索される前提で運用されている現状」を意味すると述べています。狙われる理由は企業の知名度や規模ではなく、インターネットに接していることそのものだという整理です。

侵入の入口も変化しています。同資料はランサムウェア攻撃の手口について、標的型攻撃メールの添付ファイルによる感染は少なくなり、インターネットに露出した箇所から遠隔操作で内部に侵入する手口が多くを占めると分析し、被害組織へのアンケートでは侵入経路のうちVPN機器が6割以上を占めたと報告しています。

攻撃者はネットワーク境界から入り、管理者権限の奪取を試みながら内部を探索して重要データを物色します。この一連の動きのうち、境界での探索や侵入後の不審な通信は、ネットワークの通信を継続的に見る仕組みがなければ気づけません。

導入して得られるのは、この「気づけない時間」を短くすることです。具体的には次の3つに分かれます。

  • 境界への探索やスキャンに気づける:公開している機器がどこから、どのポートを狙われているかがログとして残り、対処の優先順位を決められます。
  • 侵入後の内部の通信を捉えられる:ふだん通信しない端末同士のやり取りや、社外の見慣れない宛先への接続が可視化され、被害が広がる前に手を打てます。
  • 遮断まで有効にすれば人手を介さず止められる:夜間や休日に攻撃を受けても、担当者の対応を待たずに通信を遮断できます。
出典・参考資料(3件)

ファイアウォール・WAF・UTMとの違い|IDS・IPSが守る層と、防げる攻撃の範囲

ここからは、すでに導入していることが多い他のセキュリティ製品との守備範囲の違いを整理します。

ファイアウォール・IDS・IPS・WAF・エンドポイント側の対策が何を見る仕組みかを並べた図。ファイアウォールは送信元・送信先のIPアドレスやポート番号を見て許可か拒否かを判断し、IDS・IPSはパケットの内容をネットワークレベルで検査、WAFはアプリケーションレベルで監視してWebサイトを保護、エンドポイント側の対策は端末の中で完結する不審な挙動を担う。UTM・次世代ファイアウォールはこれらを1台にまとめた統合機器

ファイアウォールとの違い(通信の中身を見るかどうか)

ファイアウォールは、通信を許可するか拒否するかを判断する仕組みです。IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版は、インターネットと社内LANの間に設置して外部からの不正なアクセスを社内ネットワークに侵入させないようにできる技術だと説明しています。

判断の材料になるのは、送信元・送信先のIPアドレスやポート番号といった通信の宛名にあたる情報です。許可したポートを通る通信であれば、その中身に攻撃が仕込まれていても通過します

これに対してIDS・IPSは、通過する通信の中身(パケットの内容)を検査し、既知の攻撃パターンや通常とは異なる挙動がないかを見ます。同ガイドラインはIDSの設置場所の例として「インターネットとファイアウォールの間」を挙げており、両者は置き換えではなく重ねて使う関係にあります。

WAFとの違い(守る対象がネットワークかWebアプリケーションか)

WAF(Web Application Firewall)は、Webサーバーの前段またはWebサーバー内に設置し、Webサイトを保護する仕組みです。IPAは、IDS・IPSとWAFの関係を監視するレイヤーの違いとして説明しています。

IDS、IPS がネットワークレベルでの監視を行うのに対して WAF はアプリケーションレベルで監視する。組み合わせて適用することでより強固な防御が可能になる。

情報セキュリティ10大脅威 2026 解説書[組織編] p.48|独立行政法人情報処理推進機構(IPA)

自社で開発・運用しているWebアプリケーションの脆弱性を狙う攻撃に備えるならWAF、社内ネットワークやサーバーのOS・ミドルウェアを狙う通信に備えるならIDS・IPS、という住み分けになります。どちらか一方で他方を代替できる関係ではありません

UTM・次世代ファイアウォールとの関係(IPS機能を内包する統合機器)

UTM(Unified Threat Management、統合脅威管理)は、複数のセキュリティ機能を1台にまとめた機器です。IPAは「IDS や IPS の機能やファイアウォール、アンチウイルス等、他の機能も備えた製品」であり、統合されていることで運用コストや手間の低減が期待できると説明しています。

次世代ファイアウォール(NGFW)も同様に、ファイアウォール機能に侵入防御・アプリケーション制御・アンチウイルスなどを統合した製品です。すでにUTMや次世代ファイアウォールを使っている場合、IPS機能は追加のライセンスやサブスクリプション契約を結ぶことで有効にできる構成が多く、専用機を新たに置く前に確認しておく価値があります。

ただし、統合機器のIPS機能と専用機では、処理性能や検知ルールの細かな調整の自由度が異なります。統合機器は1台で複数の検査を行うため、通信量が多い環境では性能面の余裕を確認する必要があります。

IDS・IPSで防げる攻撃と防げない攻撃

IDS・IPSが得意とするのは、OSやミドルウェア、公開サービスの脆弱性を突く通信や、不正アクセスを試みる探索行為です。既知の攻撃パターンと照合できる通信、あるいは通常の通信量・接続先から外れた挙動が検知の手がかりになります。

具体的には、バッファオーバーフローなどソフトウェアの脆弱性を突く通信、公開ポートを調べるポートスキャン、パスワードを総当たりで試すブルートフォース、侵入後に外部の指令サーバーと通信するC2通信、社内の別の端末やサーバーへ広がろうとする横方向の通信などが該当します。

一方、Webアプリケーションの入力欄を悪用する攻撃はWAF、端末の中で完結する不審な挙動はエンドポイント側の仕組みが主に担います。担当が分かれるため、どの層に何を置くかを先に決めておくと重複投資を避けられます。

一方、はっきりと守備範囲の外にあるのが暗号化された通信の中身です。NIST SP 800-94は、ネットワーク型の製品について次のように記しています。

Network-based IDPSs cannot detect attacks within encrypted network traffic, including virtual private network (VPN) connections, HTTP over SSL (HTTPS), and SSH sessions.

(訳:ネットワーク型のIDPSは、VPN接続、HTTPS、SSHセッションを含む暗号化された通信の中の攻撃を検知できない)

NIST SP 800-94, §4.3.3.4 Technology Limitations|NIST(2007年2月)

この制約への対処法も同文書に示されています。VPNゲートウェイで復号された後の通信を監視できる位置にセンサーを置くか、通信の送信元・送信先のホスト上で監視するホスト型を併用する、という考え方です。暗号化された通信を復号して検査するSSL/TLSインスペクション機能を備えた製品を選ぶ選択肢もあります。

出典・参考資料(3件)

IDS・IPSの種類と検知方式|どこの通信を、何を根拠に見るか

製品を比べる前に、2つの軸を押さえておくと比較表が読みやすくなります。どこの通信を見るか(監視する場所)と、何を根拠に攻撃と判定するか(検知方式)です。

ネットワーク型・ホスト型・クラウド型(どこの通信を見るか)

ネットワーク型は、特定のネットワークセグメントや機器を流れる通信を監視し、ネットワークとアプリケーションのプロトコルの動きを分析して不審な活動を特定します。NIST SP 800-94は、境界のファイアウォールやルーター、VPNサーバー、リモートアクセスサーバー、無線ネットワークの近くなど、ネットワークの境目に設置されるのが最も一般的だとしています。

ホスト型は、1台のホストの特性とそのホスト内で起きる事象を監視します。監視対象には、そのホストに関わる通信のほか、システムログ、実行中のプロセス、アプリケーションの活動、ファイルへのアクセスや変更、設定変更などが含まれます。同文書は、公開サーバーや機密情報を保持するサーバーといった重要なホストに導入されることが多いとしています。

クラウド型は、監視する場所の分類というより提供形態の呼び方です。クラウド事業者が自社基盤の通信ログやミラーリングした通信を分析するサービスとして提供するものと、拠点に機器を置かずクラウド上で通信を集約して検査するものがあり、いずれも自社でハードウェアを保有せずに済みます。

比較表では、この軸は「監視対象」と「設置形態」の列に対応します。守りたい対象が社内ネットワーク全体なのか、公開サーバー単体なのか、クラウド上のシステムなのかで、見るべき列が変わります

シグネチャ型とアノマリ型(何を根拠に攻撃と判定するか)

シグネチャ型は、既知の脅威に対応するパターン(シグネチャ)と観測した事象を照合して攻撃を特定する方式です。NIST SP 800-94は、既知の脅威の検知には非常に有効である一方、未知の脅威や回避技術で偽装された脅威、既知の脅威の変種の多くには効果が乏しいと記しています。同文書は、ファイル名を1文字変えただけでシグネチャに一致しなくなる例を挙げています。

アノマリ型は、正常と見なす活動の定義と観測した事象を比較し、大きな乖離を見つける方式です。利用者・ホスト・ネットワーク接続・アプリケーションなどの通常の挙動をプロファイルとして持ち、そのプロファイルは一定期間の観測によって作られます。未知の脅威の検知に有効である点が最大の利点だと同文書は述べています。

実際の製品では、既知の攻撃をシグネチャで押さえつつ、シグネチャに一致しない挙動をアノマリ型の分析で補う構成が一般的です。比較表の「検知方式」列では、シグネチャ型のみか、振る舞い検知のみか、両方を備えるかを製品ごとに整理しています。通信の中身を検査しない仕組みの製品や、公開情報がない製品はその旨を記載しています。

出典・参考資料(1件)

誤検知はなぜ起き、業務に何が起きるか|設置形態と遮断の設計

ここからは、IPS導入で最も懸念される誤検知について、原因・影響・判断・備えの順に整理します。

前提として、誤検知をゼロにできる製品は存在しません。NIST SP 800-94は、この点を検知精度の構造的な限界として説明しています。

It is not possible to eliminate all false positives and negatives; in most cases, reducing the occurrences of one increases the occurrences of the other.

Many organizations choose to decrease false negatives at the cost of increasing false positives, which means that more malicious events are detected but more analysis resources are needed to differentiate false positives from true malicious events.

(訳:誤検知と見逃しをすべて排除することはできない。多くの場合、一方を減らせば他方が増える)

(訳:多くの組織は誤検知が増えることと引き換えに見逃しを減らす選択をしており、それはより多くの悪意ある事象が検知される一方で、誤検知と本物を区別するためにより多くの分析リソースが必要になることを意味する)

NIST SP 800-94, §2.2 Common Detection Methodologies|NIST(2007年2月)

同文書は、検知精度を上げるために設定を調整することを「チューニング(tuning)」と定義しています。選定の論点は「誤検知が少ない製品はどれか」ではなく、「誤検知が起きる前提で、誰がどう調整し続けるか」に置き換わります。

誤検知はなぜ起きるか|シグネチャ型とアノマリ型で変わる起きやすさ

誤検知の起きやすさは検知方式によって異なります。シグネチャ型は既知のパターンとの照合なので判定の根拠が明確で、誤検知が起きた場合も原因のシグネチャを特定して除外や調整がしやすい構造です。

アノマリ型については、NIST SP 800-94が2つの課題を指摘しています。プロファイルから大きく外れる無害な活動によって誤検知が多く発生しやすいこと、そして事象の複雑さと件数から、なぜそのアラートが出たのかを分析者が判断し、誤検知かどうかを検証することが難しい場合が多いことです。

同文書は、プロファイルの初期作成には数日から数週間の観測期間が必要になることも記しています。導入直後は判定の精度が安定せず、その間に誤って悪意ある活動を正常なものとしてプロファイルに取り込んでしまう問題も起きうるとされています。

この違いは、導入後に必要な手間の違いとして現れます。振る舞い検知を主軸とする製品を選ぶ場合は、学習期間と、アラートの内容を読み解ける体制をあらかじめ見込んでおく必要があります。

ミラーポート設置(検知のみ)とインライン設置(遮断あり)で影響がどう変わるか

誤検知が業務に及ぼす影響は、機器をどこに置くかで決まります。NIST SP 800-94は、センサーの設置形態をインラインとパッシブに分けています。

Inline. An inline sensor is deployed so that the network traffic it is monitoring must pass through it, much like the traffic flow associated with a firewall.

(訳:インライン設置では、監視対象の通信がセンサーを通過するように配置される。ファイアウォールの通信の流れに近い)

Passive. A passive sensor is deployed so that it monitors a copy of the actual network traffic; no traffic actually passes through the sensor.

(訳:パッシブ設置では、センサーは実際の通信のコピーを監視する。通信自体はセンサーを通過しない)

NIST SP 800-94, §4.2.2 Network Architectures and Sensor Locations|NIST(2007年2月)
ミラーポート設置とインライン設置の違いを示した図。ミラーポート設置ではインターネットからスイッチを経て社内ネットワークへ流れる通信のコピーをセンサーが監視し、通信自体はセンサーを通過しないため誤検知が起きても業務通信は流れ続け、遮断は他の機器と連携して行う。インライン設置ではセンサーが通信経路上にあり通信を検査して破棄・拒否できる一方、誤検知が起きると該当する通信がその場で止まり、機器の障害も通信断につながる

パッシブ設置の代表的な方法が、スイッチのミラーポート(spanning port)に接続する構成です。多くのスイッチには通過する全通信を見られるポートがあり、そこにセンサーをつなぐと多数のホストの通信を監視できます。導入が比較的容易で費用も抑えられる一方、スイッチの設定を誤ると全ての通信を見られなくなる点が落とし穴だと同文書は指摘しています。

もう一つの方法がネットワークTAPで、光ファイバーなどの物理的な伝送媒体とセンサーを直接つなぎ、媒体を流れる全通信のコピーをセンサーに渡します。ミラーポートより取りこぼしが起きにくい反面、設置時にネットワークの停止を伴うのが一般的です。

止め方も設置形態で変わります。同文書は、インライン設置のセンサーの多くがファイアウォール機能を備えて不審な通信を破棄・拒否できるのに対し、パッシブ設置のセンサーはファイアウォールやルーター、スイッチといった他の機器に指示を出して通信をブロックさせる方法をとると整理しています。比較表の「遮断の可否」列を自動遮断・連携遮断・検知のみの3つで分けているのは、この違いに対応させるためです。

「IDSかIPSか」は製品名ではなく設置と遮断の設計で決まる

ここまでを踏まえると、自社が決めるべきことは製品カテゴリの選択ではなく、次の2つの設計判断だと分かります。1つは通信経路上に機器を入れるかどうか、もう1つは検知した通信を自動で止めるかどうかです。

通信経路上に置けば遮断できますが、機器の障害がそのまま通信断につながります。経路の外に置けば業務への影響は避けられる代わりに、遮断は他の機器との連携に頼ることになり、止めるまでに一手間かかります。

自動遮断の可否については、いきなり有効にしない方法があります。NIST SP 800-94は、遮断を実行せずに「もし遮断していたら」を記録するモードの存在を記しています。

Some IDPS sensors have a learning or simulation mode that suppresses all prevention actions and instead indicates when a prevention action would have been performed.

This allows administrators to monitor and fine-tune the configuration of the prevention capabilities before enabling prevention actions, which reduces the risk of inadvertently blocking benign activity.

(訳:一部のIDPSセンサーは、防御動作をすべて抑制し、代わりに防御動作が実行されたはずの箇所を示す学習モード・シミュレーションモードを備えている)

(訳:これにより管理者は、防御動作を有効にする前に設定を監視・調整でき、無害な活動を誤ってブロックする危険を減らせる)

NIST SP 800-94, §3.2.4 Prevention Capabilities|NIST(2007年2月)

まず検知のみで運用して自社のネットワークで何が引っかかるかを把握し、誤検知の傾向をつかんでから遮断を有効にする。この段階的な進め方ができるかどうかは製品によって差があるため、比較表では「検知のみ運用への切替」を独立した列として設けています。

誤って遮断が起きたときの流れは次のとおりです。インライン設置では、該当する通信がその場で止まります。管理者が先に気づくとは限らず、「特定の取引先とファイルがやり取りできない」「基幹システムの連携が止まった」といった利用者からの申告で発覚するのが通例です。

復旧は、アラートから原因のシグネチャや検知ルールを特定し、そのルールを除外するか検知のみに切り替える手順になります。したがって、管理画面でルール単位の除外をすぐ投入できるか、それを担える人が業務時間中に確保できるかが、実際の停止時間を左右します。

ここで混同しやすいのが、機器の障害に備えるフェイルオープン(バイパス)機構です。これは機器が故障・停電したときに通信を素通しさせる仕組みで、機器が正常に動作したうえでの誤遮断には働きません。障害対策と誤検知対策は別々に確認する必要があります。

ミラーポート設置の場合、誤検知が増えても業務通信は流れ続け、確認すべき通知が増えるだけで済みます。その代わり、本当に止めたい通信を遮断するには連携先の機器に設定を反映させる手間がかかります。

IDS・IPS導入のデメリットと注意点|誤検知による遮断・通信遅延・運用負荷・コスト

導入前に見込んでおくべき負担は4つに整理できます。

  • 誤検知による業務通信の遮断:自動遮断を有効にしている場合、正規の通信が止まって業務に支障が出ることがあります。段階的な有効化と、遮断を解除する手順の事前整備で影響を抑えます。
  • 通信の遅延と性能への影響:インライン設置では全通信が機器を通過するため、処理能力が不足すると通信が遅くなります。暗号化された通信を復号して検査する機能を有効にすると、処理負荷はさらに上がります。
  • アラート対応とチューニングの工数:導入直後は誤検知が多く、通知を確認して除外設定を積み重ねる作業が続きます。見逃しを減らす方向に寄せるほど、確認すべきアラートは増えます。
  • 継続的に発生する費用:機器やライセンスの費用に加え、シグネチャの更新契約と保守が毎年かかります。無償で導入できるOSSの場合も、更新と運用を担う人的コストは残ります。

これらは製品の欠陥ではなく、通信を検査する仕組みに内在する性質です。導入計画の段階でどこまで自社が担い、どこからを外部に任せるかを決めておくと、運用が始まってから行き詰まる事態を避けられます。

チューニングとアラート対応を誰が回すか(自社運用/ベンダー委託/OSS自前)

運用体制は大きく3通りに分かれます。どれを選ぶかで、必要な人員も費用の内訳も変わります。

自社で運用する場合、機器の設定・シグネチャの更新確認・アラートの一次判断を情シス部門が担います。判断できる担当者が常時いる組織であれば、除外設定を自社の業務実態に合わせて細かく積み上げられる利点があります。

ベンダーや代理店に委託する場合は、監視センターがアラートを一次判断し、必要なものだけを報告する形が一般的です。夜間・休日の通知を自社で受けなくてよくなる代わりに、監視サービスの費用が別途かかります。委託の範囲がログの分析までなのか、遮断設定の変更まで含むのかは契約によって異なります。

OSSを自前で運用する場合は、導入設定からルールの管理、障害対応までをすべて自社で担います。ライセンス費用はかからない一方、シグネチャの供給条件や動作モードの設計を理解している人材が前提になります。

比較表の「運用・チューニング支援」列では、この3通りのどれを取りやすい製品かを整理しています。専任のセキュリティ担当を置けない組織では、この列が実質的な絞り込みの起点になります。

出典・参考資料(2件)

IDS・IPSのタイプ別の特徴|どこに置き、誰が運用するかで選択肢が変わる

ここからは、選択肢を5つのタイプに分けて整理します。守りたい対象と運用体制から、自社に近いタイプを見つけてください。

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特徴遮断の考え方該当する主なサービス詳細
IPS専用アプライアンス通信経路上で攻撃を止めることに特化。処理性能と検知ルールの調整幅が広いインライン設置で自動遮断TippingPoint、SecureSoft Sniper IPS、Cisco Secure IPS比較表を見る
振る舞い検知・接続制御型通信のコピーを見るため導入時に業務を止めにくい。未知の挙動や未承認の接続を捉える段階的に有効化、または外部機器と連携して遮断Network Blackbox、L2Blocker、Darktrace、Vectra AI比較表を見る
統合機器のIPS機能既存のファイアウォール・UTMに機能を追加。機器を増やさず運用先を1つにまとめられるゲートウェイ上で自動遮断FortiGate、PA-Series、Quantum ゲートウェイ、Sophos Firewall、クラウド型UTM、サクサのUTM比較表を見る
クラウド環境・ホスト型クラウド基盤のログや通信、サーバー上の挙動を検査。自社で機器を持たない検知中心。遮断は別サービスとの連携や防御モードの切替によるTrend Vision One、Amazon GuardDuty、Cloud IDS、Microsoft Defender for Cloud比較表を見る
OSSタイプ無償で導入でき、検知のみと遮断ありを設定で切り替えられる。運用は自社完結インラインモードにすれば遮断可能Snort、Suricata比較表を見る

通信を検査して攻撃を止めることに専念したい(IPS専用アプライアンス)

通信経路上に置き、パケットの中身を検査して既知の攻撃を遮断することに特化した機器です。多くはインライン設置を前提とし、機器が故障しても通信を流し続けるフェイルオープン機構を備えます。

脆弱性の修正プログラムをすぐに適用できない場合に、ネットワーク側で攻撃の通信を遮断して時間を稼ぐ「仮想パッチ」を備える製品もあります。IPAは仮想パッチについて、根本的な解決方法ではなく、あくまで暫定対策である点に注意が必要だとしています。修正プログラムの適用計画と併せて使うものだと理解しておく必要があります。

おすすめ企業:通信量が多く処理性能に余裕が要る環境、検知ルールを自社の業務に合わせて細かく調整したい組織。

遮断で業務を止めず、不審な通信を見つけることを優先したい(振る舞い検知・接続制御型)

ミラーポートやTAPで通信のコピーを受け取り、通常の状態からのずれや、許可していない端末の接続を見つけるタイプです。通信経路に入らないため、導入時に業務が止まるリスクを抑えられます。

遮断は、収集のみ・検知のみ・自動遮断といったモードを段階的に切り替えるか、ファイアウォールなど外部の機器に指示を出して行う設計が中心です。侵入後にネットワーク内部を探索する動きを捉えたい場合や、まず自社ネットワークの実態を可視化したい段階に向きます。

おすすめ企業:業務通信を止めるリスクを取れない環境、既知のパターンに当てはまらない不審な動きまで把握したい組織。

いまのファイアウォール・UTMに機能を足して賄いたい(統合機器のIPS機能)

次世代ファイアウォールやUTMに統合された侵入防御機能を使うタイプです。機器を増やさずに済み、管理画面も既存のものに集約できます。

侵入防御機能は本体に標準で含まれるとは限らず、別途サブスクリプションやライセンス契約が必要な製品もあります。見積もりを取る際は、本体価格に何が含まれ、何が追加契約になるかを確認しておくと後の想定外を防げます。

おすすめ企業:すでに統合機器を運用していて機器点数を増やしたくない組織、拠点数が多く各拠点に1台で完結させたい環境。

クラウド上のシステムや公開サーバーを守りたい(クラウド環境・ホスト型)

クラウド基盤側のログやミラーリングされた通信を分析する検知サービスと、サーバーにエージェントを導入して通信や挙動を検査する方式が含まれます。自社でハードウェアを持たずに始められるのが共通点です。

クラウド事業者が提供する検知サービスは、検知して通知するところまでを担い、遮断は別のサービスと組み合わせる設計のものが少なくありません。ホストにエージェントを導入する方式は、暗号化される前・復号された後の通信を見られるため、暗号化通信の内部が見えないというネットワーク型の制約を補えます。

おすすめ企業:システムの主要部分がクラウド上にある組織、公開サーバーやワークロード単位で守りを固めたい環境。

コストを抑えて自前で運用したい(OSSタイプ)

無償で導入でき、設定によって検知のみのモードとインライン(遮断あり)のモードを切り替えられます。動作モードの切替そのものが、IDSとIPSの違いが設計の問題であることを分かりやすく示す例でもあります。

費用がかからないのはライセンスの部分だけです。シグネチャに相当するルールセットの管理、検知精度の調整、障害時の切り分けはすべて自社で担うことになります。ルールセットには無償のものと有償のものがあり、無償版は配信が遅れる場合があります。

おすすめ企業:ネットワークとセキュリティの運用に精通した人材がいる組織、検証環境で挙動を確かめてから商用製品の導入を判断したい場合。

出典・参考資料(1件)

IDS・IPS製品の選び方

ここからは、比較表を読む前の物差しとなる4つの観点を示します。

守りたい対象に設置形態が合っているか

最初に決めるのは、何を守りたいかです。社内ネットワーク全体の通信を見たいなら境界やコアスイッチにセンサーを置くネットワーク型、公開サーバーを個別に守りたいならホスト型、クラウド上のシステムが中心ならクラウド基盤の検知サービスが候補になります。

ここで併せて確認したいのが、既存のネットワーク構成に無理なく入るかどうかです。ミラーポートを使う場合はスイッチに空きポートと設定変更の余地があるか、インライン設置なら通信断を伴う切り替え作業をいつ実施できるかが、導入時期を左右します。

生産ラインや24時間稼働のシステムを抱えていて、通信を止められる時間帯を確保できない場合もあります。その場合は、まずミラーポートやTAPで検知のみを始めて実態を把握し、機器の更改やネットワーク構成の見直しに合わせてインライン化を検討する進め方が現実的です。対象を境界の1か所に絞れば、切り替えに必要な停止時間も短く抑えられます。

VPN経由の通信やHTTPS通信の中身を見たい場合は、復号された後の通信を監視できる位置にセンサーを置けるか、あるいは製品側がSSL/TLSインスペクションに対応しているかまで確認が必要です。

検知方式と誤検知への備えが自社の運用力に見合うか

誤検知への備えは、比較表の検知方式・遮断の可否・検知のみ運用への切替・運用/チューニング支援の4列から読み取れます。ただし公式サイトに記載がなく「記載なし(要確認)」となっている項目もあり、その場合は問い合わせで埋めることになります。

見積もりや問い合わせの際に確認しておきたいのは次の5点です。いずれも導入後の運用負荷を左右し、後から変更が効きにくい部分です。

  • 遮断を止めて検知のみで運用できるか。切り替えの単位は機器全体か、検知ルール単位か
  • ミラーポートやTAPを使ったパッシブ設置に対応しているか
  • シグネチャ・検知ルールの更新頻度と、更新が保守契約に含まれるか
  • チューニングを委託できる範囲(アラートの一次判断まで/除外設定の投入まで/遮断設定の変更まで)と対応時間帯
  • 誤って遮断したときに、管理画面で除外を投入して復旧するまでの手順

防ぎたい攻撃に対応しているか

自社が特に警戒する攻撃を先に挙げ、それが製品の検知対象に入っているかの確認が要ります。公開サーバーの脆弱性を狙う通信、社内に侵入した後の横方向の移動、許可していない端末の接続では、必要な製品の性質が変わります。

あわせて、シグネチャの更新頻度と供給体制も確認が必要です。既知の攻撃パターンとの照合に頼る以上、新たな脆弱性が公表されてから対応するシグネチャが届くまでの速さが、実際の守りの強さを左右します。

守備範囲の外にある攻撃も把握しておく必要があります。Webアプリケーションの入力を悪用する攻撃はWAF、端末上で完結する不審な挙動はエンドポイント側の対策と、担当する仕組みが分かれます。

もう一つ、製品を絞り込むのと並行して確かめておきたいのが、自社のシステムにどの脆弱性が残っているかです。狙われうる箇所が分かっていれば、優先して監視・遮断すべき通信も、修正プログラムの適用計画も具体的に決められます。診断の方法(手動・ツール自動)や費用相場から自社に合う診断を選ぶ際は、以下の記事が参考になります。

国内で導入・サポートを受けられるか

海外ベンダーの製品では、日本法人が直接サポートを行わず、正規販売代理店が窓口になる体制が一般的です。この場合、実際の対応品質は契約する代理店とサポートグレードによって決まります。

確認したいのは、日本語での問い合わせ窓口があるか、対応時間が24時間365日か平日日中か、障害時の代替機提供がどの水準かの3点です。国内ベンダーの製品は、管理画面やマニュアルが日本語で統一されている点が運用上の負担軽減につながります。

導入支援の範囲も確認しておきたい点です。設置作業と初期設定までなのか、運用開始後のチューニングまで伴走するのかで、社内に必要な工数が変わります。

IDS・IPSの費用相場|提供形態別の目安

費用の考え方は提供形態で大きく変わります。まず、どこにお金がかかり、何が自社に残るのかという構造を提供形態別に整理します。製品ごとの実際の金額は、後述の比較表と各製品の紹介に記載しています。

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提供形態クラウド・マネージド提供型クラウド事業者の検知サービスアプライアンス型(専用機・UTM)OSS
費用のかかり方初期費用+月額費用分析するログ量・監視対象リソース数に応じた従量課金機器の購入費+シグネチャ更新・保守の年額ライセンス費用は無料。ルールセットと運用工数が実費
金額の調べ方初期費用と月額を公式サイトに掲載している製品がある。金額は各製品の比較表・個別紹介を参照課金単位は公式の料金ページに掲載。単価まで載せる事業者と、料金計算ツールでの確認が必要な事業者がある多くがオープン価格で公式サイトに定価の掲載がなく、代理店の見積もりが前提。希望小売価格を公開している製品もある本体は無料。有償ルールセットの価格は公開しているプロジェクトと非公開のプロジェクトがある
監視・遮断の代行オプション契約で分析官がログ分析・緊急遮断を代行(費用は要問い合わせ)クラウド事業者のサポート契約に依存(AWSは24時間365日・日本語対応がビジネスプラン月額100ドル〜)ベンダー・代理店の監視サービスを別契約(費用は要問い合わせ)公式の有償サポート窓口なし
自社に残る作業設定作業から運用までを提供事業者に任せられる検知後の遮断は別サービスと連携する仕組みを自前で構築設置とチューニング。委託できる範囲は契約による導入設計・ルール管理・チューニング・障害対応をすべて自社

クラウド・マネージド提供型の費用感(月額・監視込み)

拠点に機器を置かず、クラウド側で通信を検査する形態では、初期費用と月額費用が公開されているものがあります。監視や緊急時の遮断代行をオプションとして別料金で提供する構成が一般的です。

クラウド事業者が自社基盤向けに提供する検知サービスは、分析するログ量や監視対象リソース数に応じた従量課金です。監視対象を広げるほど費用が増えるため、どの範囲を保護対象にするかで金額が大きく動きます。

アプライアンス型の費用感(初期費用+年間保守・シグネチャ更新)

機器を購入して設置する形態では、本体価格に加えてシグネチャ更新のライセンスと保守契約が毎年かかります。本体を買えば検知機能まで付いてくるとは限らず、侵入防御はサブスクリプション契約として別建てになる製品もあります。

この形態はオープン価格を採用するベンダーが多く、公式サイトに定価が掲載されていないのが通例です。処理性能(スループット)と拠点規模で機種が分かれるため、自社の通信量を伝えたうえで代理店に見積もりを依頼する流れになります。

公開価格がない以上、金額は見積もりでしか分かりません。問い合わせの際に次の項目をまとめて伝えると、往復の回数が減り、複数社の見積もりを同じ条件で比べられます。

  • 守りたい対象と設置場所(インターネットとの境界/拠点間/公開サーバーの前段/クラウド環境)
  • 拠点数と、拠点ごとの回線速度・想定スループット
  • 保護対象の台数(サーバー・端末・ネットワーク機器)
  • インライン設置が可能か(通信を止められる時間帯を確保できるか)
  • 暗号化された通信の中身まで検査したいか(SSL/TLSインスペクションの要否)
  • 監視・チューニングをどこまで委託したいか、必要な対応時間帯(平日日中か24時間365日か)
  • 初期費用と、年間の保守・シグネチャ更新費用を分けた提示を依頼すること

OSSの「無料」に含まれないコスト(シグネチャ管理・チューニング・障害対応の内製工数)

OSSはライセンス費用がかからない一方、実際には3種類のコストが残ります。

  • ルールセットの管理:検知の要となるルールは、無償で入手できるものと有償契約が必要なものがあります。無償版は最新ルールの配信が一定期間遅れる仕組みを採るプロジェクトもあり、公開直後の攻撃への対応に差が出ます。
  • 導入設計とチューニング:動作モードの選択、インライン構成の組み方、誤検知の除外設定を自社で設計します。検知精度は投じた工数に比例します。
  • 障害対応とバージョン更新:ベンダーのサポート窓口がないため、不具合の切り分けとバージョンアップの検証を自社で行います。

費用の妥当性を判断する材料として、被害が起きた場合の復旧費用も押さえておく価値があります。警察庁の資料によれば、ランサムウェア被害を受けた組織のうち、復旧に総額1,000万円以上を要した組織の割合は全体の5割を超えています。復旧期間についても、1か月未満で復旧した組織は5割強にとどまります。

出典・参考資料(1件)

費用の桁感が見えても、自社がどのタイプに適しているかの判断は別の難しさがあります。そのような場合でも貴社の状況に合わせて最適なサービスを最短で見つけられるように、「30秒で終わる選定診断ツール」を以下にご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。

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【比較表】IDS・IPS製品おすすめ19選を検知方式・遮断可否・設置形態で比較

ここからは、自社の課題や要件に合わせた客観的な比較・選定ができるよう、主要なIDS・IPS製品19サービスを5つのタイプ別に分類してご紹介します。誤検知が起きたときに何が起きるかを判断できるよう、検知方式・設置形態・遮断の可否・検知のみ運用への切替を並べています。

【タイプ別比較表】IPS専用アプライアンス

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サービス名TippingPointSecureSoft Sniper IPSCisco Secure IPS
検知方式シグネチャ(Digital Vaccine)シグネチャ(独自のALSIエンジンで通信の方向やセッションの整合性も判定)シグネチャ(Snortルール)+振る舞い(SnortML)
設置形態インラインインラインインライン/ミラー・TAP(管理コンソールのポリシー設定で切替)
遮断の可否自動遮断できる自動遮断できる自動遮断できる(インラインペア構成時)
検知のみ運用への切替(検知ルール単位で通信を止めない動作を選べる)記載なし(要確認)(タップ付きインライン・パッシブ・ERSPANは検知のみ)
監視対象社内ネットワークの通信(外部との通信・内部の機器どうしの通信)社内ネットワークの通信社内ネットワークの通信(L3〜L7のパケット)
運用・チューニング支援販売代理店が導入設計からチューニング・運用支援まで個別に提供保守は平日9時〜17時(拡張保守で24時間365日受付)。ログ監視と検知ポリシーの調整は別サービス日本法人が販売・保守の窓口(問い合わせ電話は9時〜17時)。導入・最適化サービスあり
費用要問い合わせ(30日間の無料体験版あり)要問い合わせ要問い合わせ
詳細情報公式サイト公式サイト公式サイト

【タイプ別比較表】振る舞い検知・接続制御型

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サービス名Network BlackboxL2BlockerDarktraceVectra AI
検知方式シグネチャ+振る舞い異常検知(両方)接続機器の照合(ARPパケットを監視。通信の中身は検査しない)振る舞い(自己学習型AI。シグネチャに依存しない)振る舞い(AIモデル)+シグネチャ(Vectra Match)
設置形態ミラー・TAPセンサーをLANのセグメントごとに接続(既存構成の変更不要)ミラー・TAPミラー・TAP
遮断の可否外部機器との連携で遮断自動遮断できる(承認リストにない端末の接続を遮断)外部機器との連携で遮断外部機器との連携で遮断
検知のみ運用への切替(本体は検知に専念する設計)(収集のみ・自動ブロックしないのモードを選べる)(遮断を担うRESPONDはアドオン。検知のみで導入できる)(連携先を設定しなければ検知のみ)
監視対象社内ネットワークの通信(全パケットを保存)社内LANに接続された端末社内ネットワークの通信(メール・クラウド・OT・アカウント・端末にも拡張)社内ネットワークの通信/クラウド/アカウント基盤/Microsoft 365
運用・チューニング支援国内総代理店が導入・運用支援を担当(サポート対応時間は非公開)保守契約のテクニカルサポート(電話は平日9:00〜17:30)。チューニング支援メニューの記載なし24時間体制のSOC支援。国内は代理店が監視・分析サービスを提供国内代理店マクニカが監視代行(窓口は平日9:00〜17:00)
費用要問い合わせオンプレミス版:管理機240,000円+センサー140,000円/台〜(次年度以降の年間保守は製品価格の12%)
クラウド版:管理機月額20,000円+センサー月額3,000円/台〜
要問い合わせ要問い合わせ
詳細情報公式資料を見る詳細を見る詳細を見る詳細を見る

【タイプ別比較表】統合機器のIPS機能

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サービス名FortiGatePA-SeriesQuantum ゲートウェイSophos Firewallクラウド型UTM(NTTスマートコネクト)サクサのUTM
検知方式シグネチャ(FortiGuard IPS Service)+AI・機械学習による分析シグネチャ+機械学習・ディープラーニング(Advanced Threat Prevention)シグネチャ+振る舞い+プロトコル検証シグネチャ(50以上のカテゴリ。総数と更新頻度は公式ヘルプに記載なし)記載なし(基盤にFortiGateを採用)記載なし
設置形態インライン(ゲートウェイに設置)インライン(Virtual Wire・レイヤー2・レイヤー3)/ミラー(TAPモード)インライン(ゲートウェイに設置)インライン(ゲートウェイ/ブリッジ)/ミラー(TAPモード)クラウド基盤に通信を集約(拠点に機器を置かない)拠点のゲートウェイに設置するアプライアンス(インラインかどうかの記載なし)
遮断の可否自動遮断できる自動遮断できる(インラインモード時)自動遮断できる自動遮断できる自動遮断できる自動遮断できる(公式表記はIPS/IDS機能)
検知のみ運用への切替(one-arm snifferモード。専用処理チップを使わず性能は下がる)(TAPモードは監視のみで遮断しない)(Detectモードで全ての保護機能を検知だけにできる)(TAPモードはセキュリティポリシーの適用外で検知のみ)記載なし(要確認)記載なし(要確認)
監視対象拠点とインターネットの間の通信(TLS 1.3を含むSSLインスペクションに対応)拠点とインターネットの間の通信(インラインモードでSSL/TLS復号に対応)拠点とインターネットの間の通信拠点とインターネットの間の通信(TLS 1.3を含む復号検査に対応)各拠点とインターネットの間の通信(標準プランはサーバー・デバイス100台相当まで)拠点を通過するWeb通信・メール送受信(推奨PC接続台数はStd 15台/Pro 60台)
運用・チューニング支援販売代理店が窓口(メーカーは直接販売・直接サポートを行わない)サポートは3段階(プレミアムは24時間365日)。国内は正規販売代理店が保守を提供国内販売代理店経由。対応時間は公式に記載なしSophos MDRで24時間365日の監視代行。国内の日常運用は販売パートナーが担当オプションの「セキュリティ監視分析」で分析官がログ分析・緊急遮断を代行(緊急の設定変更は12時間以内)取扱販売店が導入・問い合わせの窓口(メーカー直販なし)。リモート保守は無料、代替機発送は有償
費用要問い合わせ(オープン価格)要問い合わせ要問い合わせ要問い合わせ(無料トライアルあり)初期費用110,000円(税込121,000円)〜
月額38,500円(税込42,350円)〜(最低利用期間1年)
要問い合わせ(販売店への見積もり)
詳細情報公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト公式サイト

【タイプ別比較表】クラウド環境・ホスト型

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サービス名Trend Vision OneAmazon GuardDutyCloud IDS(Google Cloud)Microsoft Defender for Cloud
検知方式シグネチャ(侵入防御ルールがアプリケーション層のパケットと照合)脅威インテリジェンスとの照合+機械学習による異常検知シグネチャ(Palo Alto Networksの脅威防御技術。毎日自動更新)複数のシグナルの相関分析(検知アルゴリズムの詳細は記載なし)
設置形態エージェント(サーバーに導入)クラウド基盤のログ分析(Runtime Monitoringのみエージェントが必要)クラウド基盤のパケットミラーリングクラウド基盤・エージェントのログ分析(通信経路上には入らない)
遮断の可否自動遮断できる(防御モード時)検知のみ(遮断は別サービスとの連携が前提)検知のみ(遮断はCloud NGFWなど別サービスとの併用が前提)検知のみ(遮断はAzureのネットワーク側の機能が担当)
検知のみ運用への切替(遮断しない検出モードと防御モードを切り替えられる)該当なし(遮断機能を持たないため常に検知のみ)該当なし(遮断機能を持たないため常に検知のみ)該当なし(遮断機能を持たないため常に検知のみ)
監視対象サーバー・クラウドワークロード(エージェントを入れたホストの通信)AWS環境(EC2・EKS・S3・RDS・Lambdaなど。オンプレミス・他クラウドは対象外)Google Cloud環境のVPC通信(外部からの通信とVM間の通信)Azure・AWS・Google Cloudとオンプレミス(Azure Arc経由)のサーバー・コンテナー・データベースなど
運用・チューニング支援Managed XDR(MDR)で24時間365日の監視代行(料金は要問い合わせ)AWS Support契約に依存(24時間365日・日本語対応はビジネスプラン月額100ドル〜)シグネチャ更新は自動。技術サポートは有償のカスタマーケア契約が前提Defender Expertsをサーバー台数単位で追加できる。導入支援はパートナー経由
費用要問い合わせ(クレジット制のTrendAI Flex。30日間の無料トライアルあり)従量課金(米国東部リージョンの例:VPCフローログ・DNSログ分析が最初の500GBまで1GBあたり1.00ドル)
新規アカウントは30日間無料
従量課金(エンドポイント1時間あたり1.50ドル+検査トラフィック1GBあたり0.07ドル)
無料枠の記載なし
従量課金(公式料金ページに実額の表示なし。最初の30日間は無料)
詳細情報詳細を見る公式サイト公式サイト公式サイト

【タイプ別比較表】OSSタイプ

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サービス名SnortSuricata
検知方式シグネチャ(Cisco Talosが開発・検証するルール)シグネチャ(ルールセットは本体に同梱されず外部から導入)
設置形態ミラー・TAP(NIDSモード)/インラインミラー・TAP(IDSモード)/インライン
遮断の可否自動遮断できる(インラインモード時)自動遮断できる(IPSモード時)
検知のみ運用への切替(NIDSモードは検知とアラート出力にとどまる)(IDSモードは監視のみで通信に介入しない)
監視対象社内ネットワークの通信社内ネットワークの通信
運用・チューニング支援公式の有償サポート窓口なし(フォーラム・GitHubなどコミュニティが中心)SLAを伴う商用サポート窓口の記載なし(コミュニティフォーラムが中心)
費用本体は無料
最新ルールを即時受け取るSubscriberは1センサーあたり年額29.99ドル(Personal)/399ドル(Business)
本体は無料
有償ルールセットのET Proは価格非公開(要問い合わせ)
詳細情報公式サイト公式サイト

※各社の公式サイト・公式ドキュメントで公開されている情報にもとづき、2026年8月時点で整理したものです。公開されていない項目は「記載なし(要確認)」と表記しています。仕様・料金は改定されるため、導入検討時は各社の最新情報をご確認ください。

IDS・IPS製品おすすめ19選の詳細

ここからは、各製品の検知方式・設置形態・遮断の可否・運用支援・費用を個別に見ていきます。

IPS専用アプライアンス

通信経路上に置いて攻撃を止めることに特化した製品群です。処理性能と検知ルールの調整幅を重視する環境に向きます。

1. TippingPoint(トレンドマイクロ株式会社)

TippingPointの公式サイト

通信経路上に置いて攻撃を止めることに特化した、トレンドマイクロ株式会社のIPS専用アプライアンスです。もとは米HP社が保有していた製品ラインで、2015年10月にトレンドマイクロが同事業を買収して以降、自社のネットワークセキュリティ製品として提供しています。インラインで設置し、外部との通信から社内の機器どうしの通信までをディープパケットインスペクションで検査します。

検知の中核は、同社の脅威研究部門が配信するシグネチャ「Digital Vaccine」です。脆弱性そのものを保護対象とする仮想パッチを配信する仕組みで、修正プログラムが提供される前でも、その脆弱性を狙う通信を遮断できるとしています。自社で運営する脆弱性発見コミュニティ Zero Day Initiative の発見情報も、このシグネチャに反映されます。

遮断の強さは検知ルール単位で調整でき、公式ドキュメントには通信を止めずに検知だけを行う動作を選べると記載があります。国内では複数の販売代理店が導入設計からチューニング・運用支援までを個別に提供しており、公式サイトに一次店の一覧が掲載されています。価格は公開されておらず要問い合わせですが、30日間の無料体験版が用意されています。

2. SecureSoft Sniper IPS(セキュアソフト株式会社)

SecureSoft Sniper IPSの公式サイト

東京都渋谷区に本社を置くセキュアソフト株式会社が開発・販売する、IPS単機能の専用アプライアンスです。管理画面・ヘルプファイル・マニュアルがすべて日本語で提供され、問い合わせ窓口も国内にあります。モデルは200Mbps〜400Mbpsの小規模向けから最大20Gbpsまで4系統が用意されています。

検知には独自開発のALSIエンジン(Application Layer Stateful Inspection)を用い、パターンの一致だけでなく、通信の方向やリクエスト・レスポンスの種別、セッションの整合性まで見て攻撃を判定します。シグネチャの更新はソフトウェア保守契約に含まれますが、更新の頻度は公開されていません。

装置にはバイパスモジュールが内蔵されており、障害時や無通電時は自動でバイパス状態へ切り替わります。

ミラーポートに接続して検知のみで運用できるかは公式サイトに記載がなく、事前の確認が必要です。保守は平日9時〜17時の窓口が基本で、拡張保守を契約すると24時間365日の受付と、障害の切り分け完了後4時間での駆けつけを目標とした現地対応が加わります。ログ監視と検知ポリシーの調整は別サービスとして提供されており、本体の価格とあわせて個別の問い合わせが必要です。

3. Cisco Secure IPS(シスコシステムズ合同会社)

Cisco Secure IPSの公式サイト

シスコシステムズ合同会社が国内で扱う侵入防御機能で、旧称はFirepower NGIPS、さらに遡るとSourcefire 3D IPSにあたります。現在は独立した専用機というより、同社のファイアウォール製品を動かすソフトウェア「Secure Firewall Threat Defense」の動作モードの一つ(IPS専用モード)として提供される形が主流です。

監視対象はL3からL7までのパケットで、検知の中核はSnortルールによるパターン照合です。現行世代はマルチスレッド処理に対応したSnort 3エンジンを採用し、ルールは脅威インテリジェンス部門のCisco Talosが供給します。公式製品ページでは、新たなポリシールールや署名を2時間ごとに取得すると説明されています。

シグネチャに一致しない亜種の攻撃には、深層ニューラルネットワークを用いるSnortMLが対応します。設置形態は管理コンソールのポリシー設定で切り替えられ、遮断まで行えるのは通信経路に挟むインラインペア構成のみで、タップ付きインライン・SPANポート経由のパッシブ・ERSPANの各モードは検知のみの動作になります

日本法人が販売と保守の窓口となり、公式製品ページには問い合わせ用の電話番号(9時〜17時)が案内されています。ただし技術サポートが24時間対応かどうかは公開されていません。価格も公開されておらず、販売代理店経由の見積もりとなります。

振る舞い検知・接続制御型

通信のコピーを監視するため、導入時に業務通信を止めるリスクを抑えられる製品群です。未知の挙動や未承認の接続を捉えることを重視する環境に向きます。

4. Network Blackbox(株式会社クワッドマイナージャパン)

Network Blackboxの公式サイト

ネットワークを流れるパケットを100%保存することを基盤に据えた、オンプレミス型アプライアンスのNDR(ネットワークの通信を監視し、検知から対応までを担う仕組み)製品です。韓国Quad Miners Inc.の日本法人である株式会社クワッドマイナージャパンが提供しており、検知方式はシグネチャベース検知と、利用者の行為をもとにした振る舞い異常検知の両方を公式に掲げています。

設置は、既存ネットワークのパケットをTAP経由でミラーリングして取り込むアウトオブバンド方式で、国内総代理店の発表では最大40Gbpsの通信をフルパケット検査できるとされています。通信経路上に機器を入れない構成のため、本体は検知に専念し、遮断はファイアウォールなど外部のセキュリティ機器へ制御コマンドを送って実行させる設計です。

保存したパケットは、MITRE ATT&CKに基づく脅威ハンティングや、メール・ファイル送受信といった通信内容を再構成するフォレンジック調査にも使えます。国内では総代理店の株式会社フーバーブレインと、技術面の窓口となる系列の株式会社フーバー・クロステクノロジーズが導入・運用支援を担当します。料金とサポート対応時間はいずれも公開されておらず、個別の問い合わせが必要です。

5. L2Blocker(エクスジェン・ネットワークス株式会社)

L2Blockerの公式サイト

社内LANに接続された端末そのものを監視対象とする、エクスジェン・ネットワークス株式会社の不正アクセス検知・遮断システムです。LANを流れるARPパケットを読み取り、承認リストにない機器の接続を検知して遮断する仕組みのため、通信の中身に潜む攻撃パターンの検査は行いません

守る相手は、外部から送り込まれる攻撃通信ではなく、許可していない端末の持ち込みや無断接続です。センサーをLANのセグメントごとに1台つなぐだけで既存構成を変えずに導入でき、動作は収集のみ・自動ブロックしない・自動ブロックするの3モードを切り替えられるため、接続機器の棚卸しから始めて遮断を後から有効にできます。導入前には評価機の貸出も受けられます。

オンプレミス版は管理機のL2Bマネージャーが240,000円、センサーが1台140,000円(最大32VLANに対応するタグVLAN版は340,000円)で、年間保守は初年度が無償、次年度以降は製品価格の12%です。クラウド版はマネージャー月額20,000円、センサー月額3,000円から。いずれも公式の価格ページに税区分の記載はなく、問い合わせ窓口は平日9:00〜17:30の電話とメールです。

6. Darktrace(Darktrace Limited)

Darktraceの公式サイト

英国ケンブリッジで2013年に設立されたDarktrace Limitedが開発し、日本にはダークトレース・ジャパン株式会社を置いています。ネットワーク向けのDarktrace/NETWORKについて、公式サイトはシグネチャ・ルール・脅威インテリジェンスに依存しないと明記しており、自社環境で何が正常かをAIが学習し、そこからの逸脱を脅威として捉える設計をとります。

検知はミラーポートやSPAN、TAP経由で通信を取り込む方式で、インライン設置は必須ではありません。遮断を担うRESPOND(旧Antigena)は検知機能に対するアドオンのため、検知のみの構成で導入し、後から遮断を足せます。実行時は、既存のファイアウォールやスイッチ、エンドポイント製品と連携して該当する接続をブロックします。

RESPONDには、推奨された対処を人が承認してから実行するモードと、完全に自律して実行するモードがあり、公式は多くの組織が承認モードで始めて数週間以内に自律モードへ移行するとしています。監視範囲はネットワークを中核に、メール・クラウド・OT・アイデンティティ・エンドポイントへ広がります。

運用面では24時間体制のSOCによる支援を公式が掲げ、国内ではSB C&S・エムオーテックスなどの販売代理店がアラートの監視・分析サービスを個別に組み立てています。料金は公開されていません。

7. Vectra AI(Vectra AI, Inc.)

Vectra AIの公式サイト

振る舞い検知を主軸としながら、シグネチャ照合を後から足せる構成をとるのがVectra AIです。米国のVectra AI, Inc.が開発し、150以上のAIモデルで攻撃者の行動を分析することに加え、2023年に追加されたVectra MatchがSuricataエンジンによる既知の攻撃パターンの検知を担います。

センサーはSPAN・ミラーポートやTAP、パケットブローカー経由で通信を受け取るパッシブ方式が基本で、インライン設置は基本構成では不要です。遮断は連携先の機器に任せる設計で、検知したIPアドレスをファイアウォールに参照させて止めるほか、連携するEDRによる端末の隔離、Active DirectoryやMicrosoft Entra IDでのアカウント無効化を実行できます。

監視対象はオンプレミスのネットワークにとどまらず、AWS・Azure・Google Cloudなどのクラウドやアカウント基盤、Microsoft 365、IoT/OTにも及びます。国内では代理店のマクニカ株式会社が販売・導入支援とアナリストによる監視代行を担い、問い合わせ窓口は平日9:00〜17:00です。

料金は公式・代理店とも公開していません。

統合機器のIPS機能

ファイアウォールやUTMに侵入防御を統合した製品群です。機器を増やさず既存のゲートウェイで完結させたい環境に向きます。

8. FortiGate(フォーティネットジャパン合同会社)

FortiGateの公式サイト

FortiGateは、ファイアウォールにアプリケーション制御・アンチウイルス・SD-WANなどを統合した次世代ファイアウォールです。侵入防御は本体に標準で含まれるのではなく、「FortiGuard IPS Service」というセキュリティサブスクリプションの契約によって有効になります

検知は、FortiGuard Labsが配信する既知の脆弱性・攻撃のシグネチャ(公式のサービス資料では2023年8月発行時点で13,500件超)と、シグネチャに一致しない挙動を捉えるAI・機械学習の分析を併用する方式です。TLS 1.3を含むSSLインスペクションに対応し、HTTPS経由の通信も検査対象にできます。

遮断せず検知だけで使いたい場合は、インターフェースを「one-arm sniffer」モードにすると通信を検査・記録するだけの動作になります。ただし公式ドキュメントには、このモードでは専用処理チップを使わずCPU処理となり性能が下がる旨が記されています。販売もサポートも正規販売代理店が窓口で、価格は公開されておらず個別見積もりです。

9. PA-Series(パロアルトネットワークス株式会社)

PA-Seriesの公式サイト

パロアルトネットワークス株式会社が国内で提供する次世代ファイアウォールのハードウェア製品ラインで、多拠点向けのPA-400 Seriesから大規模データセンター向けのPA-7000 Seriesまで機種が分かれます。侵入防御に当たる機能は本体には含まれず、追加ライセンスの脅威防御サブスクリプション「Advanced Threat Prevention」が担います。

検知は、既知の脆弱性攻撃に対するシグネチャと、通信をその場で分析する機械学習・ディープラーニングを組み合わせる方式です。設置形態はVirtual Wire・レイヤー2・レイヤー3の各インラインモードで検知した通信を遮断でき、ミラーポートに接続するTAPモードは監視のみで遮断はできません。

SSL/TLSの復号はインラインモードで対応し、TAPモードはインバウンドの復号に限られます。サポートはプラチナ・プレミアム・スタンダードの3段階で、プレミアムは24時間365日の支援体制と公式サイトに記載されています。価格は公開されておらず、正規販売代理店経由の見積もりになります。

10. Quantum ゲートウェイ(チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ株式会社)

Quantum ゲートウェイの公式サイト

ソフトウェアブレードと呼ぶ機能単位で、ファイアウォール・アンチウイルス・アプリケーション制御などを1台のゲートウェイに載せるのが、チェック・ポイントのQuantumシリーズです。侵入防御もこのうちの「IPSソフトウェアブレード」として動作し、専用機を別に置かずに有効化できます。大企業向けのQuantum Forceから中小企業向けのQuantum Sparkまで規模別に用意されています。

検知エンジンは、シグネチャ・振る舞い分析・プロトコル検証を組み合わせる構成(Multi-Tier Threat Detection Engine)です。公式ドキュメントでは、脆弱性の公開前やパッチが提供されていない段階でも保護できる事前対応型の保護機能が多いと説明されています。

運用面では、すべての保護機能を検知だけで動かす「Detect」モードと、遮断まで行う「Prevent」モードを切り替えられる点が判断材料になります。導入初期は検知のみで誤検知の傾向を確かめてから遮断へ移せます。ライセンス体系と価格は公開されておらず、国内販売代理店経由の見積もりです。

11. Sophos Firewall(ソフォス株式会社)

Sophos Firewallの公式サイト

Web保護・侵入防御・TLSインスペクション・サンドボックスを1つの製品にまとめた次世代ファイアウォールで、国内ではソフォス株式会社が窓口となります。侵入防御は「Xstream DPI Engine」の一部として、アンチウイルスやアプリケーション制御と同じ検査エンジン上で処理される構成です。

検知はシグネチャに基づく方式で、シグネチャはブラウザ・ファイル形式・プロトコル・OS・サーバー製品といった50以上のカテゴリに分かれ、それぞれ重要度と推奨アクションを持ちます。シグネチャの総数と更新頻度は公式ヘルプに記載がありません。暗号化された通信は、TLS 1.3を含む復号検査に対応します。

設置形態は、経路上に置くゲートウェイモードとブリッジモードでの遮断運用に加え、ミラーポートを使うTAP(Discover)モードでの検知限定運用も選べます。TAPモードを流れる通信にはセキュリティポリシーを適用できないため、このモードでは遮断が行えません。価格とライセンス構成は公開されておらず要問い合わせで、公式ページには無料トライアルの案内があります。

12. クラウド型UTM(NTTスマートコネクト株式会社)

クラウド型UTMの公式サイト

拠点にUTM機器を置かず、NTTスマートコネクト株式会社が大阪のデータセンターに構えたUTM基盤へ各拠点のインターネット接続を集約する形のサービスです。ファイアウォール・アンチウイルス・Webフィルタリングなどと並んで、IPS(不正侵入防御)が標準機能として含まれます。

基盤に使われているのはFortinetのFortiGateとFortiAnalyzerです。監視対象は各拠点とインターネットの間を流れる通信で、標準プランはサーバー・デバイス100台相当までが目安とされています。検知方式とSSL/TLSインスペクションの可否は公式ページに記載がなく、問い合わせでの確認が必要です。

オプションの「セキュリティ監視分析」を契約すると、同社の分析官がログを分析し、インシデント発生時の早期通知と緊急遮断まで代行します。緊急の設定変更は12時間以内の対応です。費用は初期費用110,000円(税込121,000円)から、月額38,500円(税込42,350円)からで、最低利用期間は1年です。

13. サクサのUTM(サクサ株式会社)

サクサのUTMの公式サイト

電話交換機・ビジネスホンを祖業とする国内の通信機器メーカー、サクサ株式会社が製造・販売するUTMアプライアンスです。中堅・中小企業向けで、上位のSS7000シリーズはファイアウォール・Webフィルタリング・メール誤送信防止などと合わせて、IPS/IDS機能を本体に備えます。

公式仕様として公開されているスループットは、ファイアウォール3.0Gbps・IPS 1.36Gbps・アンチウイルス560Mbpsです。推奨するPC接続台数はStdが15台、Proが60台とされています。検知方式や、検知のみで運用できるモードの有無については公式サイトに記載がありません。

サクサは直接販売を行っておらず、導入も日常の問い合わせも取扱販売店が窓口になります。コールセンターでのリモート保守は無料、故障時の代替機発送とC&Cサーバー通信の監視・駆除は有償の登録制です。セキュリティ機能の保護期間は標準版5年・Plus版6年・Plus+版7年で、価格は公開されておらず販売店への問い合わせとなります。

クラウド環境・ホスト型

クラウド基盤やサーバー単位で通信・挙動を検査する製品群です。自社で機器を持たずに始めたい環境に向きます。

14. Trend Vision One(トレンドマイクロ株式会社)

Trend Vision Oneの公式サイト

トレンドマイクロが提供する、エンドポイント・サーバー・クラウド・メール・ネットワークを単一コンソールで管理するセキュリティプラットフォームです(2026年4月から公式表記は「TrendAI Vision One」)。

本記事が扱うホスト型の侵入検知・防御を担うのは、サーバー・クラウドワークロード向けのWorkload Securityです。サーバーにエージェントを導入し、そのホストが送受信する通信を監視します。

検知はシグネチャベースで、侵入防御ルールがDNS・HTTP・SSL・SMTPといったアプリケーション層のパケットと条件を照合します。動作は遮断しない検出モードと、攻撃を実際にブロックする防御モードを切り替えられるため、まずルールの誤検知を確かめてから防御へ移す進め方が可能です。ベンダーの修正パッチが提供されるまでの間、脆弱性を突く通信を遮断する仮想パッチにも対応します。

運用を任せる選択肢としてManaged XDR(MDR)があり、メール・エンドポイント・サーバー・クラウドワークロード・ネットワークを対象に、24時間365日でアラート監視を代行します(料金は要問い合わせ)。ライセンスはクレジットを消費する「TrendAI Flex」に一本化され、サーバー・クラウド向けの費用も問い合わせが必要です。全機能を30日間試せる無料トライアルも案内されています。

15. Amazon GuardDuty(アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社)

Amazon GuardDutyの公式サイト

AWSアカウントとその上のワークロード・データを対象とする、脅威検出のマネージドサービスです。VPCフローログやDNSログ、AWS CloudTrailの管理イベントといったAWS内にすでにあるログを継続的に分析し、不審な挙動を検出結果として出力します。基本の検知はエージェントレスで通信経路上に入らず、エージェントが要るのはOSレベルの挙動を見るRuntime Monitoringだけです。

検知には、悪意のあるIPアドレスやドメインの脅威インテリジェンスとの照合に加え、機械学習による異常検出を組み合わせます。一方で遮断機能は持たず、公式FAQでも脅威を自動的には遮断しないと明記されています。不審なアクセスを止めるには、Amazon EventBridgeとAWS Lambda、AWS Systems Manager Automationなどと連携した仕組みを別途構築します。

監視できる範囲はEC2・EKS・S3・RDS・LambdaなどAWS環境に限られ、オンプレミスや他クラウドのネットワークは対象外です。問い合わせ窓口も本サービス専用のものはなく、24時間365日の電話・チャット対応と日本語での対応は、ビジネスプラン(最低月額100ドル〜)以上のAWS Support契約が前提になります。

料金は分析するログ量に応じた従量課金です。公式が例示する米国東部(バージニア北部)リージョンでは、VPCフローログとDNSログの分析が月あたり最初の500GBまで1GBあたり1.00ドル、次の2,000GBが0.50ドルで、東京リージョンの単価は公式料金ページに一覧がなくAWS料金計算ツールでの確認が必要です(2026年8月時点)。新規アカウントは30日間無料で試せます。

16. Cloud IDS/Google Cloud IDS(グーグル・クラウド・ジャパン合同会社)

Cloud IDSの公式サイト

Palo Alto Networksの脅威防御技術を、Google Cloudのマネージドサービスとして使える侵入検知の仕組みです。VPC内を流れる通信をパケットミラーリングでコピーして検査し、外部からVPCへの通信とVM間の通信の双方を対象にできるため、内部での横展開の検知にも使えます。監視できるのはGoogle Cloud環境のみで、オンプレミスや他クラウドのネットワークは対象外です。

検知はシグネチャベースで、マルウェアやC2通信、バッファオーバーフローなどを5段階の重要度で分類します。シグネチャは自動で毎日更新されるため、利用者側での管理作業は発生しません。ただし攻撃を遮断する機能はなく、公式ドキュメントでも検知とアラートにとどまるとされ、遮断が必要ならCloud NGFWなど別サービスとの併用が前提です。

運用面では、監視したいリージョンごとにIDSエンドポイントを作成し、全トラフィックを対象にするか、プロトコルやIPアドレス範囲で絞り込むかを選べます。検知結果は脅威ログとして出力され、Cloud Logging経由で監視・調査します。技術的な問い合わせは有償のカスタマーケア契約が前提で、無償プランの対象は請求・支払いに関する内容に限られます。

費用はIDSエンドポイントの稼働1時間あたり1.50ドルと、検査対象トラフィック1GBあたり0.07ドルで、この2つが同時に発生します。無料枠については、公式料金ページに記載がありません(2026年8月時点)。

17. Microsoft Defender for Cloud(日本マイクロソフト株式会社)

Microsoft Defender for Cloudの公式サイト

Azure・AWS・Google Cloudに加え、Azure Arc経由でつないだオンプレミスのサーバーまでを対象に、クラウド資産の状態管理(CSPM)とワークロード保護を一つの管理画面へ統合したサービスです。保護の単位はサーバー・コンテナー・データベース・ストレージなどのリソースで、通信経路上でパケットを検査する製品ではありません。

脅威の検知は、Azureリソースやネットワークのシグナル、接続したパートナー製品からの情報を相関分析する方式です。脅威を識別するとセキュリティアラートが生成され、影響を受けたリソースと対処手順が重要度付きで示されます(ポータル上の表示期間は90日)。サーバー保護のプランはMicrosoft Defender for Endpointと統合され、エンドポイント側の検知や脆弱性評価も加わります。

アラートと修復手順の提示が中心で、通信そのものを止める役割は担いません。パケットを検査して不正通信を遮断する用途では、Azureのネットワーク側の機能と組み合わせる構成になります。運用面では、Microsoftのセキュリティ専門家が監視・脅威ハンティングを担うDefender Expertsをサーバー台数単位で追加でき、導入支援はパートナー経由が一般的です。

資産の可視化にあたるFoundational CSPMは無料で、有料のDefender CSPMや保護プランはリソース単位の従量課金です。ただし公式料金ページに実額の表示がなく、金額はAzure料金計算ツールでの確認が必要です。最初の30日間は無料で、コミットユニットの事前購入により従量課金比で最大22%削減できると公式に案内されています。

OSSタイプ

無償で導入でき、設定によって検知のみと遮断ありを切り替えられる製品群です。運用を自社で担える体制がある環境に向きます。

18. Snort(Cisco Systems, Inc.)

Snortの公式サイト

1998年にネットワークスニファとして公開され、翌年に侵入検知の機能が加わったオープンソースのIDS・IPSです。2013年にSourcefireを買収したCisco Systemsがプロジェクトを保有し、本体の開発とルールの検証は同社の脅威インテリジェンスチームであるCisco Talosが担当しています。

動作モードはスニファ、パケットロガー、NIDS、インラインの4種類です。ミラーポートなどに接続するNIDSモードは検知とアラートの出力にとどまり、通信経路上に設置してインラインモードで動かすと、ルールに従ってパケットのdrop・reset・allowを判断します。同じソフトウェアのまま、設置場所とモードの選択によってIDSとしてもIPSとしても運用できます。

ルールセットはCisco Talosが開発し、登録不要で毎日更新されるCommunity、無料アカウントで利用するRegistered、有償のSubscriberの3層で配信されます。

Registeredに届くのはSubscriberへの配信から30日後のため、公開直後の攻撃に対応するルールを即時に受け取るには、1センサーあたり年額29.99ドル(Personal)または399ドル(Business)の契約が必要です。

無償版に公式の有償サポート窓口は用意されておらず、問い合わせ先はフォーラムやGitHubのIssueなどコミュニティが中心です。インストール、ルールを定期取得する仕組み、誤検知の除外設定、アラートを読むための可視化基盤は、いずれも自社で整えることになります。

19. Suricata(Open Information Security Foundation)

Suricataの公式サイト

ルールに一致した通信への動作として、alert(通知)だけでなくdrop(破棄)やreject(切断)を指定できるネットワーク型の検知エンジンです。開発と所有は非営利団体のOpen Information Security Foundationで、ソースコードはGPLv2で公開されています。

IDS、IPS、NSM(ネットワークセキュリティ監視)の3つのモードで動作します。IDSモードは指定したインターフェースの通信を監視するだけで介入せず、通信経路上に置くIPSモードでは既定で全通信を許可したうえで、dropやrejectのルールに一致した通信だけを遮断します。インラインに組み込む方式は、AF_PACKETやNFQUEUE、DPDK、netmapから選べます。

検知はHTTP、TLS、DNSなどアプリケーション層のプロトコルを解析したうえで行われ、通信を流れるファイルの抽出や、TLS/QUICのクライアントを識別するJA3/JA4フィンガープリントにも対応します。

一方でルールセットは本体に同梱されておらず、suricata-updateなどを使って外部から導入します。無償のET Openと、Proofpointが提供する有償のET Proが選択肢になります。

ET Proの価格は公開されておらず、契約条件は提供元への確認が必要です。OISFはSLAを伴う商用サポート窓口を公式には示しておらず、実運用の相談先はコミュニティフォーラムと公式ドキュメントになります。IPSモードでは、障害発生時に通信を止めるか通すかという例外ポリシーの設計を誤ると通信が全断するため、検証を含めた運用体制が前提です。

IDS・IPSの先にある検知レイヤー|NDR・EDRまでどこから整備するか

ここからは、IDS・IPSだけでは届かない領域と、そこを担う仕組みについて整理します。

暗号化通信の中身・端末上で完結する挙動・Webアプリ層は何が担うか

ネットワークを流れる通信を見る仕組みには、構造上の死角が3つあります。暗号化された通信の中身、端末やサーバーの内部で完結する挙動、そしてWebアプリケーションのやり取りです。

NIST SP 800-94は、ネットワーク型のセンサーが暗号化された通信の中の活動を分析できないのに対し、端末に導入したホスト型のエージェントは暗号化される前の活動を見られると説明しています。そのうえで、多くの環境ではネットワーク型とホスト型を組み合わせることが有効なIDPSの構成に必要だとしています。

IPAは、サーバーおよびPC内の処理や外部との通信の不審な振る舞いを検知して迅速な対応を可能にする仕組みをEDR(Endpoint Detection and Response)、ネットワーク上の通信を監視・分析して不審な通信を検知する仕組みをNDR(Network Detection and Response)と定義しています。

Webアプリケーション層についてはWAFが担います。前述のとおり、IDS・IPSはネットワークレベル、WAFはアプリケーションレベルで監視するという役割分担です。

どの層から整備するか

これらは互いに置き換わる選択肢ではなく、積み上げる層です。優先順位は、自社の構成と、いま何が見えていないかで決まります。

インターネットに公開しているサーバーや拠点が多く、境界の通信が見えていない状態であれば、ネットワークの通信を検査する仕組みから始めるのが素直な順序です。一方、業務端末からの情報漏えいやランサムウェアの実行を止めることが先だと判断するなら、端末側の対策が先になります。

侵入経路の主流がネットワーク境界の機器であり、その多くが暗号化された通信を使うことを踏まえると、境界での検知と端末側の検知は早い段階で両方が必要になります。どちらか一方で完結させようとすると、対処できない領域が残ります。

もう一つの軸が、増えたアラートを誰が見るかです。層を増やせば見えるものは増えますが、確認すべき通知も同じだけ増えます。自社で回すのか、ベンダーの監視サービスに委ねるのか、どちらの体制で進めるかを決めないまま層だけ積み上げると、通知が放置されて検知した意味がなくなります。

整備の順序は、いま見えていない領域と、アラートを見る体制を確保できる範囲の両方から決めてください。1つの層を運用に乗せてから次へ広げる方が、結果的に早く機能します。

端末側のEDRとネットワーク側のNDRについては、それぞれ何を見て何ができるのか、どちらの層から着手すると自社の見えていない領域を早く埋められるのかを、製品一覧と選び方にまとめた記事があります。IDS・IPSの次に厚くする層を決める段階の判断材料としてご覧ください。

出典・参考資料(2件)

まとめ

IDSとIPSの違いは、検知した通信を止めるかどうかにあります。ただし製品の多くは遮断を無効にすればIDSとして運用できるため、実際に決めるべきなのは、通信経路上に機器を入れるかどうかと、どこまで自動で止める設定にするかという設計判断です

誤検知をゼロにできる製品はなく、見逃しを減らせば誤検知の確認工数が増えます。だからこそ、検知のみで試せるモードがあるか、チューニングを自社で回すのか委託するのかが、製品選定の実質的な分かれ目になります。

守りたい対象が社内ネットワーク全体なら専用機か統合機器のIPS機能、業務を止めるリスクを避けたいなら振る舞い検知・接続制御型、システムがクラウド中心ならクラウド環境・ホスト型、運用を自社で担える体制があるならOSSタイプが候補になります。本記事の比較表と診断ツールで自社の条件に合う製品を絞り込み、気になるサービスの資料を取り寄せて検討を進めてください。

よくある質問(FAQ)

Q. IDS・IPSとは何ですか?

A. IDS・IPSとは、ネットワークを流れる通信を監視して不正なアクセスや攻撃の兆候を見つける仕組みで、検知して管理者に通知するのがIDS(Intrusion Detection System/不正侵入検知システム)、検知に加えて通信の自動遮断まで行うのがIPS(Intrusion Prevention System/不正侵入防御システム)です。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、IDSを「ネットワーク通信を監視し、不審な通信が見つかった際に担当者へ通知を行う」仕組み、IPSを「不審な通信が見つかった場合は担当者への通知だけでなく自動でブロックも行う」仕組みと説明しています。ファイアウォールが通信の宛名にあたる情報で許可・拒否を判断するのに対し、IDS・IPSは通過する通信の中身を検査する点が特徴です。

Q. IDSとIPSの違いは何ですか?

A. IDSとIPSの違いは、検知した通信を自動で止めるかどうかと、機器を通信経路上に置くかどうかにあります。IDSは通信のコピーを見て通知するだけなので通信経路の外に設置できますが、IPSは通信を止める必要があるため経路上に設置します。この違いから、誤検知が起きたときにIDSは通知が増えるだけで済み、IPSは正規の通信が遮断されて業務が止まる可能性があります。

ただし、製品カテゴリとして固定された違いではありません。NIST SP 800-94は、管理者がIPS製品の防御機能を無効化してIDSとして動作させられるのが通例だと記しています。決めるべきなのは「IDS製品かIPS製品か」ではなく、どこに機器を置き、どこまで自動で止める設定にするかという設計判断になります。

Q. ファイアウォールを導入していればIDS・IPSは不要ですか?

A. ファイアウォールを導入していても、IDS・IPSが不要になるわけではありません。両者は検査する対象が異なり、重ねて使う関係にあります。ファイアウォールは送信元・送信先のIPアドレスやポート番号といった通信の宛名にあたる情報で許可・拒否を判断するため、許可したポートを通る通信であれば、その中身に攻撃が仕込まれていても通過します。

IDS・IPSは、その通過する通信の中身を検査して、既知の攻撃パターンや通常とは異なる挙動がないかを見ます。入口を絞るのがファイアウォール、通した通信の中身を見るのがIDS・IPSという役割分担であり、どちらか一方で他方を代替できる関係ではありません。

Q. すでにUTM・次世代ファイアウォールがある場合も、IDS・IPSは別に必要ですか?

A. すでにUTMや次世代ファイアウォールを導入している場合は、まず既存機器のIPS機能を有効にできるかを確認するのが先で、専用機の追加検討はその後になります。IPAは、UTMを「IDS や IPS の機能やファイアウォール、アンチウイルス等、他の機能も備えた製品」であり、統合されていることで運用コストや手間の低減が期待できると説明しています。

確認したいのは2点です。1つは契約条件で、IPS機能は追加のライセンスやサブスクリプション契約によって有効になる構成が多く、条件は製品ごとに異なります。もう1つは性能と調整の自由度で、1台で複数の検査を同時に行うため、通信量が多い環境では処理性能の余裕と、検知ルールをどこまで細かく調整できるかを専用機と比べておく必要があります。

Q. IDS・IPSで防げない攻撃は何ですか?

A. IDS・IPSの守備範囲の外にあるとはっきり言えるのは、暗号化された通信の中に含まれる攻撃です。NIST SP 800-94は、ネットワーク型の製品はVPN接続やHTTPS、SSHセッションを含む暗号化された通信の中の攻撃を検知できないと明記しています。

対処法として同文書は、復号された後の通信を監視できる位置にセンサーを置くか、通信の送信元・送信先のホスト上で監視するホスト型を併用する方法を挙げています。

一方、Webアプリケーションを狙う攻撃については「防げない」と単純に言い切れるものではなく、守る層が違うと理解するのが正確です。IPAは、IDS・IPSがネットワークレベルで監視するのに対してWAFはアプリケーションレベルで監視するとし、組み合わせて適用することでより強固な防御が可能になるとしています。端末やサーバーの内部で完結する挙動については、EDRなど端末側の仕組みが担います。

Q. 中小企業でもIDS・IPSは必要ですか?

A. 中小企業でもIDS・IPSは検討する価値があります。攻撃の前段階である探索は、企業の規模や知名度と関係なく、インターネットに接している機器に対して無差別に行われているためです。警察庁の資料によれば、令和7年に同庁のセンサーが検知した脆弱性探索行為等の不審なアクセスは1日・1IPアドレス当たり9,605.7件にのぼり、観測されたアクセスの半数以上が不特定多数の機器を対象としたものでした。

被害の実態も規模を問いません。同資料では、ランサムウェア攻撃の被害企業のうち中小企業が約6割を占めています。IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版も、攻撃等の検知の項目で、ネットワーク上の適切な場所で侵入検知システムなどにより監視を行うことを対策として挙げています。

ただし、専任のセキュリティ担当を置けない組織が機器だけを導入すると、アラートに対応できず放置される状態になりがちです。監視やチューニングまで委託できる提供形態から検討するほうが現実的です。

Q. IPSの誤検知で業務が止まるのを避けるにはどうすればよいですか?

A. IPSの誤検知による業務停止を避ける現実的な方法は、いきなり自動遮断を有効にせず、まず検知のみで運用して自社の通信でどれだけ誤検知が出るかを確かめてから遮断に進むことです。NIST SP 800-94は、防御動作をすべて抑制して「もし遮断していたら」を記録する学習モード・シミュレーションモードを備えたセンサーがあり、これにより無害な通信を誤ってブロックする危険を減らせると記しています。

設置形態でも影響は変わります。通信経路上に置くインライン設置では誤検知がそのまま業務通信の遮断につながりますが、通信のコピーを見るミラーポート設置であれば業務通信は止まりません。

IPAも、IPSはIDSよりリスクの低減はできるものの正規の通信をブロックしてしまうおそれがあり、組織の方針を踏まえた上での選定が必要だとしています。

誤検知をゼロにできる製品は存在しないため、検知のみ運用に切り替えられるか、チューニングをベンダーに依頼できるかを製品選定の段階で確認してください。

Q. 専任のセキュリティ担当がいなくてもIDS・IPSは運用できますか?

A. 専任のセキュリティ担当がいない組織でも、監視とチューニングをベンダー側が担うマネージド型・クラウド提供型の製品を選べば運用できます。この形態では監視センターがアラートを一次判断し、対応が必要なものだけを報告するため、夜間・休日の通知を自社で受け続ける必要がなくなります。

確認しておきたいのは委託の範囲です。ログの分析までなのか、遮断設定の変更やシグネチャの調整まで含むのか、対応時間帯が24時間365日か平日日中かは、製品と契約によって差が大きい部分です。逆に、機器を購入して自社でアラート対応を回す前提の製品は、判断できる担当者がいないと通知が確認されないまま積み上がり、導入しただけの状態になりやすい点に注意してください。

Q. 無料のOSSのIDS・IPSを選んでも問題ありませんか?

A. OSSのIDS・IPSを選ぶかどうかは、費用ではなく検知ルール(シグネチャ)の管理・チューニング・障害対応を自社で担えるかどうかで判断します。ライセンス費用はかかりませんが、ベンダーに任せられない分、これらの作業が担当者の工数として必ず発生するためです。

具体的には、動作モードの選択やインライン構成の設計、誤検知の除外設定を自社で行い、不具合の切り分けとバージョンアップの検証も自前で進めることになります。ルールセットも、無償で入手できるものと有償契約が必要なものがあり、無償版では最新ルールの配信が一定期間遅れる仕組みを採るプロジェクトもあります。

設計と運用を担える人材がいる組織には有力な選択肢ですが、そうでない場合は、必要な工数を金額に換算したうえで商用製品と比較してください。

Q. IDS・IPSの導入にはどれくらいの費用がかかりますか?

A. IDS・IPSの費用は、提供形態によって構造が変わります。クラウド・マネージド提供型は初期費用と月額費用(監視は別料金のオプションが一般的)、アプライアンス型は機器の購入費に加えてシグネチャ更新ライセンスと年間保守、OSSはライセンス費用ゼロで内製工数が費用の中心になります。

アプライアンス型はオープン価格を採用するベンダーが多く、処理性能と拠点規模で機種が分かれるため、自社の通信量を伝えたうえで代理店に見積もりを依頼する流れが一般的です。費用の妥当性を判断する材料としては、警察庁の資料で、ランサムウェア被害の復旧に総額1,000万円以上を要した組織が全体の5割を超え、1か月未満で復旧した組織が5割強にとどまることが参考になります。

Q. クラウド上のシステムを守る場合、IDS・IPSはどう選べばよいですか?

A. クラウド上のシステムを守る場合は、クラウド基盤側が提供する検知サービスと、サーバーにエージェントを導入するホスト型が中心の選択肢になります。自社で機器を設置できない環境のため、拠点にセンサーを置くアプライアンス型はそのままでは適用できません。

クラウド基盤側の検知サービスは、分析するログ量や監視対象リソース数に応じた従量課金が一般的で、保護対象を広げるほど費用が増えます。ホスト型は、暗号化される前・復号された後の活動をサーバー上から見られる点が利点です。社内の拠点とクラウドの両方を守る必要があるなら、それぞれの領域に対応する製品を組み合わせる前提で検討してください。

Q. IDS・IPSは導入してからどれくらいで安定して運用できますか?

A. IDS・IPSは、機器の設置と初期設定が終わった時点では運用が完成せず、誤検知の傾向をつかんで除外設定を積み上げる期間が別に必要です。特に振る舞い検知(アノマリ型)を主軸とする製品では、通常の状態を表すプロファイルの作成に数日から数週間の観測期間を要するとNIST SP 800-94は記しています。

導入計画では、検知のみで運用して自社の通信を把握する期間、誤検知を除外して精度を上げる期間、遮断を有効にする段階、という順序を見込んでおくと、運用開始後に行き詰まる事態を避けられます。インライン設置へ切り替える作業は通信断を伴うため、実施できる時間帯を確保できるかもスケジュールに含めて検討してください。

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監修者

マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト

松嶋真倫

都市銀行にて金融実務を経験後、暗号資産関連スタートアップの創業期に参画し、市場分析・業界調査に従事。2018年にマネックスグループ入社。以降、ビットコインをはじめとするデジタルアセットからマクロ経済環境まで、金融市場を横断した調査・分析および情報発信を担う。FinTech・次世代金融領域のリサーチ統括、各種レポートや書籍の執筆、日本経済新聞など国内主要メディアへのコメント・寄稿、イベント登壇などを行う。2021年3月より現職。
記事内でご紹介している製品・サービスは監修者が選定したものではなく、編集部が独自に選定したものです。
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。

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