未上場のスタートアップ企業に、少額から株主として投資できるのが株式投資型クラウドファンディングです。数万円から出資でき、企業の成長に伴うイグジット時のリターンに加え、エンジェル税制による所得控除や株主優待といった便益も期待できるため、個人投資家の資産運用の選択肢の一つになっています。
一方で、未上場株は上場株と違い原則として途中で売却できず、投資したお金が戻るまでの期間も読みにくい商品です。募集案件の傾向やエンジェル税制への対応、手数料、途中売却の可否はサービスごとに異なるため、どのサービスで口座を開くべきか迷う方も多いのではないでしょうか。
本記事では、日本証券業協会に登録された主要な株式投資型クラウドファンディング5サービスを比較・解説します。募集案件の傾向・最低投資額・株主優待・エンジェル税制対応・手数料・途中売却の可否・過去の実績に加え、2025年2月の制度改正を反映した年間投資上限や課税の仕組みまで整理しました。自分に合うサービスを選ぶための判断材料としてご活用ください。
また、自分の予算や重視する条件に合わせて最適なサービスを最短で見つけられるよう、「30秒で終わる選定診断ツール」をご用意しています。ぜひこちらもご活用ください。
目次
株式投資型クラウドファンディングとは?
株式投資型クラウドファンディングは、未上場企業がインターネットを通じて多くの個人投資家から少額ずつ資金を集め、その対価として自社の株式(新株予約権を含む場合もあります)を割り当てる仕組みです。エクイティ・クラウドファンディング(ECF)とも呼ばれます。
この仕組みを担うのが、金融商品取引法(金商法)に基づく「第一種少額電子募集取扱業者」です。日本証券業協会は第一種少額電子募集取扱業務を「非上場株式の募集又は私募の取扱いにより、インターネットを通じて、多くの人から少額ずつ資金を集める仕組みのこと」と定義しています。
出典・参考資料(1件)
この登録を受けた事業者だけが株式投資型クラウドファンディングを取り扱うことができ、2026年9月時点で該当する事業者は5社です。本記事ではこの5社すべてを比較対象とします。ただし、このうち一部は現在、新規募集を停止または低調な状態にあり、その現況も含めて後述します。
他のクラウドファンディング(融資型・不動産型・ファンド型・購入型)との違い
クラウドファンディングには、寄付型・購入型のほか、金銭的なリターンを伴う投資型があります。投資型はさらに、企業へ融資して利息を受け取る融資型(ソーシャルレンディング)、不動産に出資して賃料・売却益の分配を受ける不動産投資型、ファンドを通じて事業に出資するファンド型、そして企業の株式を取得する株式投資型に分かれます。

株式投資型が他と大きく異なるのは、リターンが利息や分配金ではなく、投資先企業の株式価値の上昇に依存する点です。企業がIPOやM&A(企業買収・合併)でイグジットすれば大きなリターンになり得る一方、成長しなければ株式に価値がつかず、元本を失う可能性もあります。
上場株投資との違い(流動性が低くイグジット依存でリターンが決まる)
上場株式は証券取引所でいつでも売買でき、株価も日々変動します。これに対し株式投資型クラウドファンディングで取得する未上場株式は、取引所に上場しておらず、原則として売買する市場がありません。日本証券業協会は、この換金性の乏しさを次のように説明しています。
株式投資型クラウドファンディング業務により取り扱われる店頭有価証券は、非上場株式であることから、流通場面における投資勧誘は原則禁止されています。このため、発行後において流通場面は基本的に想定されませんので、換金性が著しく乏しいものであることを顧客に十分説明した上で、取得させることが適当と考えられます。
出典:「株式投資型クラウドファンディング業務」に係るQ&A(問15)|日本証券業協会
投資したお金を回収できるのは、投資先企業がIPOやM&Aでイグジットしたときが基本です。リターンの大きさも回収できる時期も投資先の成長次第で、上場株のように自分の判断で売り抜けることは基本的にできません。この非流動性が、上場株投資との最大の違いです。
主要な株式投資型クラウドファンディングを比較
ここからは、日本証券業協会に登録された主要な株式投資型クラウドファンディング5サービスを、募集案件の傾向・最低投資額・株主優待・エンジェル税制対応・手数料・途中売却の可否・過去の実績・現況の各軸で横並びに比較します。
5社は登録事業者の全体像ですが、現在も継続して新規募集を行っているサービスは3社で、残る2社は募集を低調・停止しています(各社の状況は下表の「現況」列で示します)。今から口座を開くなら継続募集中のサービスが実質的な選択肢になる点を先に押さえたうえで、各軸を見比べてください。
| サービス名 | FUNDINNO(ファンディーノ) | イークラウド | CF Angels | ユニコーン(Unicorn) | AngelNavi(エンジェルナビ) |
|---|---|---|---|---|---|
| 運営会社・資本背景 | 株式会社FUNDINNO (東証グロース上場) | イークラウド株式会社 (大和証券グループ系Fintertechが出資) | 株式会社CFスタートアップス (旧CAMPFIRE Angels) | 株式会社ユニコーン (ZUUグループ) | エクイティファンディング株式会社 (前澤ファンド傘下) |
| 現況(募集状況) | 募集中 | 募集中 | 募集中 | 直近募集なし(低調) (最新募集は2022年10月) | 募集停止(休眠) (最新募集は2023年5月) |
| 累計成約実績 | 累計約200億円 (PLUS+含む・2025年5月) | 約40社・累計12億円超 (2024年12月時点) | 公表なし (直近の公式集計なし) | 累計25件・約8.9億円 (2022年10月以降 新規募集なし) | 公表なし (公式掲載は5件・2023年5月以前) |
| 取扱分野の傾向 | DX・AI/ヘルスケア/地方創生など幅広い | 金融・ヘルスケア・宇宙・フードテックなど幅広い | 精密加工・美容/ヘルスケア・ライブコマースなど幅広い | DX・AI/医療・ヘルスケア/製造業など(直近掲載は2022年) | 公表なし (過去はテック系中心) |
| 最低投資額 | 10万円前後 (案件により異なる) | 10万円前後 (本体案件の目安) | 10万円前後 (案件により異なる) | 案件により異なる | 案件により異なる (過去実績5万円〜25万円) |
| 投資家手数料 | 無料 (振込手数料は自己負担) | 無料 (振込手数料は自己負担) | 無料 (振込手数料は自己負担) | 無料 (振込手数料は自己負担) | 無料 (振込手数料は自己負担) |
| 株主優待 | 案件による (自社商品・サービス割引が中心) | 案件による | 案件による | 案件による (過去に優待設定の実績あり) | 案件による (詳細非公開) |
| エンジェル税制対応 | 案件による (対象案件のみ) | 案件による (対象案件のみ) | 案件による (自社で適用確認事務が可能) | 案件による (対象案件のみ) | 要確認 (公式に記載なし) |
| 途中売却 | △FUNDINNO MARKETで一部可(現在8銘柄) | ×原則不可(IPO・M&Aまで保有) | ×セカンダリー市場は公表なし・原則保有 | ×FAQ上「現実的に難しい」 | ×譲渡は取締役会承認要・仲介なし |
| 主なイグジット実績 | 投資回収10件 (1.07〜4.4倍)/IPO・M&A事例あり | M&A1件 (Next Paradigm・2.69倍) | 公表なし (IPO・M&A実績は確認できず) | 公表なし (IPO・M&A実績は確認できず) | 公表なし (IPO・M&A実績は確認できず) |
| 詳細情報 | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
※本表は2026年9月時点で各社公式サイト等で確認できた情報をもとに作成しています。手数料・案件条件・募集状況は変動するため、最新情報は各社公式サイトをご確認ください。
サービス個別紹介
ここからは、各サービスの運営会社・案件の傾向・特徴と、現在の募集状況を個別に見ていきます。
1. FUNDINNO(ファンディーノ)(株式会社FUNDINNO)

国内で最初に第一種少額電子募集取扱業者として登録されたのが、株式会社FUNDINNOが運営する「FUNDINNO(ファンディーノ)」です。2017年4月のサービス開始以来、累計650件以上の資金調達案件を公開し、運営会社自身も東京証券取引所グロース市場に上場しています(証券コード462A)。
累計調達額は約200億円(プロ投資家向けのFUNDINNO PLUS+を含む、2025年5月時点)にのぼります。DX・AIやヘルスケア、地方創生まで取扱分野は幅広く、地方の企業も一定割合を占めます。
累計成約額は、プロ投資家向けの「FUNDINNO PLUS+」と合算で約200億円(2025年5月時点)、登録ユーザー数は約16万人です。投資回収に至った案件は10件(リターン1.07〜4.4倍)あります。
イグジット事例としては、東証グロース市場への上場承認を受けたイノバセルや、東証プライム上場企業の子会社となったInnovation Farm(投資家175名が4.4倍のリターン)など、IPO・M&Aの実績を公表しています。
最低投資額は10万円前後(募集企業により異なります)。株主優待やエンジェル税制の対象は募集企業ごとに決まり、1社あたりの年間投資上限は制度と各社の運用により決まるため、後述の「投資前に押さえる制度・前提」で確認してください。
未上場株のセカンダリー取引「FUNDINNO MARKET」を備え、現在8銘柄について限定的ながら途中売却ができる点が他社との違いです(売却時に売却代金の11.0%(税込)の手数料が発生します)。
2. イークラウド(イークラウド株式会社)

大手証券グループとの資本関係を持つのがイークラウドの特徴です。運営元のイークラウド株式会社は、大和証券グループ本社の100%子会社であるFintertech株式会社から出資を受けています。2020年7月に始まったこのサービスは、シード・アーリー期のスタートアップを中心に、金融・ヘルスケア・宇宙・フードテックなど幅広い分野の案件を扱ってきました。
これまでに約40社の資金調達を支援し、累計調達支援額は12億円を超えています(2024年12月時点)。5号案件の株式会社Next Paradigmは募集から約9か月でM&Aによりイグジットし、投資家に投資額の2.69倍のリターンが生じました。2025年8月には、ミドル・レイター期に特化した会員限定の「イークラウドNEXT」も始めています。
本体案件の最低投資額は1口10万円前後が目安で、投資申込や口座維持の手数料はかからず、負担は振込手数料のみです。エンジェル税制は、対象と認定された案件でのみ利用できます。取得した株式には譲渡制限が付くため、途中売却は原則できず、投資先のIPOまたはM&Aまで保有するのが前提です。
3. CF Angels(株式会社CFスタートアップス)

複数回の改称を経て現在のかたちになったのがCF Angels(シーエフエンジェルス)です。2017年開始の「GoAngel」を前身とし、CAMPFIREグループ入りを経て2020年に「CAMPFIRE Angels」としてリニューアル、2022年7月に運営会社(株式会社CFスタートアップス)・サービス名ともに現在の「CF Angels」へ変更しました。
2026年9月時点でも新規案件の募集が続いており、精密金属加工や美容・ヘルスケア、ライブコマースなど幅広い分野のスタートアップを扱ってきました。直近1年ではおおむね3〜4件のペースで案件が進行しています。最低投資額は約10万円からで、案件ごとに異なります。
同社は経済産業大臣の認定を受けたクラウドファンディング事業者で、エンジェル税制の適用確認事務を自社で完結できます(対象は「適用予定」タグの付いた案件に限られます)。投資申込時の手数料は原則無料で、負担は振込手数料のみです。一方、途中売却のためのセカンダリー市場や、IPO・M&Aによるイグジット実績は、今回の調査では公式サイト上で確認できませんでした。
4. ユニコーン(Unicorn)(株式会社ユニコーン)

ユニコーン(Unicorn)を運営するのは、金融情報メディアを展開するZUUグループの株式会社ユニコーンです。DX・AI関連や医療・ヘルスケア、製造業などのスタートアップを扱い、発行会社に最低3か月に1回の事業報告(IR)を義務付けるなど、中長期で株主が企業を支える仕組みを掲げてきました。
ただし、公式サイトで確認できる最後の新規募集は2022年10月の案件で、以降はトップページに募集中の案件が表示されません。累計実績も「25件・調達総額8億9,889万円」(2025年5月時点の公式告知)から更新が確認できず、新規募集のペースは事実上停止または著しく低調な状態が続いています。口座開設自体は可能ですが、現時点では新規投資の機会に出会える状況ではない点に注意してください。
株式購入自体に手数料はかかりません(振込手数料は投資家負担)。最低投資額は案件ごとに異なります。過去の募集ではAmazonギフト券や自社サービス券など案件ごとに株主優待が設定された実績がありますが、全案件に優待が付くかどうかは公式には確認できません。エンジェル税制は対象案件で適用され、IPO・M&Aによるイグジット実績の公表は確認できませんでした。
5. AngelNavi(エンジェルナビ)(エクイティファンディング株式会社)

現在は新規募集を停止している登録事業者が、エクイティファンディング株式会社の運営するAngelNavi(エンジェルナビ)です。SBIグループが手がけた「GEMSEE Equity」を前身とし、2021年に「AngelNavi」へ改称、2024年5月には事業が株式会社前澤ファンドへ譲渡され、運営会社も現在の商号になりました。
もっとも、現在は新規募集を停止しており、実質的に休眠状態にあります。公式サイトで確認できる最後の募集は2023年5月、最新のお知らせも2024年6月の株式譲渡告知で止まっています。日本証券業協会への登録やサイト自体は継続していますが、いま口座を開設しても、新規に投資できる案件はありません。
投資家の手数料は振込手数料を除き無料で、過去の募集案件の最低投資額は5万円〜25万円でした。株主優待は一部の案件で提供された記載があるものの、対象や内容の一覧は公表されていません。エンジェル税制への対応やイグジット実績は公式サイトに情報がなく、確認できませんでした。登録事業者として紹介していますが、現時点では投資先を検討する対象にはなりにくいサービスです。
自分に合うサービスの選び方
どのサービスも同じ株式投資型クラウドファンディングですが、募集案件の傾向や投資条件、換金の手段、投資外の便益には違いがあります。ここでは、自分に合うサービスを選ぶための5つの視点を整理します。各視点の詳細は、前掲の比較表と照らし合わせてご確認ください。
募集案件数・分野の傾向で選ぶ
投資できる案件は、サービスによって数も分野の傾向も異なります。DX・AI領域のスタートアップが多いサービスもあれば、ヘルスケアや地方創生、ミドル・レイターステージの企業まで幅広く扱うサービスもあります。関心のある分野の案件が定期的に出ているか、募集ペースが維持されているかを確認しましょう。募集が長期間止まっているサービスでは、そもそも投資機会に出会えません。
投資条件(最低投資額・手数料)で選ぶ
少額から試したい場合は、1口あたりの最低投資額が判断材料になります。今から投資できる募集中の主要サービスは、いずれも10万円前後からが目安です。5万円程度の少額案件は、現在は募集を停止・低調にしているサービスに多く見られたため、少額で始めたい場合も実際の最低額は10万円前後になる点に注意してください。
手数料は、投資申込時には無料の事業者がほとんどで、実質的な負担は振込手数料程度に収まります。ただし、次に述べるセカンダリー取引で途中売却する場合は売却手数料がかかることがあるため、あわせて確認しておくと安心です。
途中売却の可否で選ぶ
未上場株は原則としてイグジットまで換金できませんが、一部のサービスは未上場株のセカンダリー(相対取引)の仕組みを用意しており、限定的ながら途中で売却できる場合があります。急な資金化の可能性を残したいなら、こうした仕組みの有無・対象となる銘柄数・売却時の手数料を比較表で確認しましょう。もっとも、対象銘柄や取引成立には条件があり、いつでも確実に売れるわけではない点には注意が必要です。
株主優待で選ぶ
投資先企業が株主優待を実施している場合、自社商品やサービスの割引・提供などを受けられることがあります。ただし、優待はプラットフォーム全体で一律に保証されるものではなく、実施するかどうかは募集企業ごとに決まります。
優待付き案件をどの程度扱っているか、優待の傾向(自社商品・サービスの割引が中心か、ギフト券か)はサービスによって差があるため、各社の個別紹介もあわせて確認するとよいでしょう。エンジェル税制についても、対応可否だけでなく、適用に必要な確認手続きをサービス側でどこまで支援・完結できるかに差があります。優待や税制を重視するなら、内容が自分にとって魅力的かを個別の案件ページで確かめるのが確実です。
過去のイグジット・リターン実績で選ぶ
「本当にリターンが得られるのか」を見極めるには、そのサービスで過去にIPOやM&Aによるイグジットが発生し、投資家がリターンを得た実績があるかが手がかりになります。イグジット事例やリターン倍率を具体的に公表しているサービスもあれば、実績を公表していないサービスもあります。実績の開示状況は、運営の透明性を判断する材料にもなります。
複数の視点を同時に考えると、自分にどのサービスが合うのか判断が難しいこともあります。次の診断では、予算・関心のある案件分野・重視する条件などいくつかの質問に答えるだけで、条件に合うサービスを確認できます。
株式投資型クラウドファンディングのメリット
株式投資型クラウドファンディングには、他の投資にはない特徴的な便益があります。まず、これまでエンジェル投資家やベンチャーキャピタルに限られていた成長初期の企業への出資に、個人が数万円から参加できます。上場前の段階から株主になれる点が大きな特徴です。
投資先がIPOやM&Aに至れば、投資額の数倍のリターンにつながる事例もあります。加えて、対象となる案件に投資すればエンジェル税制による所得控除などの優遇を受けられる場合があり、企業によっては株主優待も設定されています。応援したい企業の株主として関われることも、金銭的リターン以外の動機になります。
デメリット・リスクと注意点
便益がある一方で、株式投資型クラウドファンディングには理解しておくべきリスクがあります。最も重いのは元本割れのリスクです。投資先が成長しなければ株式に価値がつかず、倒産すれば投資額を失います。スタートアップの多くは成功に至らないため、大きなリターンの裏側には相応の失敗確率があります。
前述のとおり、取得した未上場株は原則としてイグジットまで換金できず、資金が長期間拘束されます。一部にセカンダリーの仕組みはあるものの、確実に売れるとは限りません。
イグジットまでの期間は案件により大きく異なり、募集から約9か月でM&Aに至った事例もありますが、一般にIPOやM&Aには数年以上かかることが多く、投資したお金は数年単位で戻らない前提で考える必要があります。IPO・M&Aがいつ実現するか、そもそも実現するかも不確実です。
1社への投資額には制度上の上限があり、詳細は次の制度の項で説明します。こうしたリスクを踏まえると、余裕資金の範囲で複数の案件に分散するのが基本的な考え方になります。
投資前に押さえる制度・前提
株式投資型クラウドファンディングには、投資家を保護するための制度上のルールがあります。ここでは、投資前に押さえておきたい年間投資上限・発行総額・エンジェル税制・課税の4点を整理します。
年間投資上限・募集総額の仕組み(2025年2月改正の現行値)
企業が調達できる金額の上限(発行総額)と、投資家一人あたりの年間投資上限は、2025年2月に施行された金融商品取引法施行令などの改正で見直されました。現行の数値は次のとおりです。
出典:株式投資型クラウドファンディング(制度の概要)|日本証券業協会
- 同一の会社が資金調達を行うことができる金額は、1年間に5億円未満です。
- 同一の会社が発行する株式につき年間200万円を超えない範囲において投資者の財産の状況に応じた額又は50万円のいずれか高い額です。
企業側は、過去1年以内の発行分と合算して5億円未満まで調達できます。かつては1億円未満が上限でしたが、1億円は撤廃されたのではなく、これを超える調達では有価証券届出書・目論見書による情報開示が必要になる分岐点として残っています。
投資家側の上限は、個人の場合、保有資産(純資産)の5%、前年の収入金額の5%、50万円のうち最も高い額で、最大200万円までです。50万円はこの3つのうちの下限にあたり、資産や収入が多い人はより多く投資できます。
ただし、制度上は最大200万円まで投資できても、実際の上限はサービスの運用によって異なります。日本証券業協会も、上限額を一律50万円に限定している事業者があると説明しています。自分が使うサービスで1社あたりいくらまで投資できるかは、比較表や各社の案内で確認してください。
エンジェル税制
エンジェル税制は、一定の要件を満たすスタートアップへの投資について所得税の優遇を受けられる制度で、株式投資型クラウドファンディング経由の投資も対象になり得ます。主な優遇には、投資した年に控除を受けられる優遇措置Aと優遇措置Bがあります。
優遇措置Aは設立5年未満の企業が対象で、投資額から2,000円を引いた額を総所得金額等から控除できます(控除上限は総所得金額等の40%と800万円のいずれか低い方)。優遇措置Bは設立10年未満の企業が対象で、投資額全額をその年の株式譲渡益から控除でき、控除の上限はありません。
出典・参考資料(2件)
2023年度(令和5年度)の税制改正では、より創業初期の企業を対象とするプレシード・シード特例が新設されました。
※プレシード・シード特例の上限20億円とは非課税となる額であり、それを超える投資額分については課税繰延となります。
出典:エンジェル投資に対する措置|経済産業省
注意したいのは、株式投資型クラウドファンディングで投資すれば必ずエンジェル税制が使えるわけではない点です。適用されるのは、各案件の発行企業が企業要件を満たし、必要な確認を受けている場合に限られます。対象かどうかは案件ごとに異なるため、募集ページの表示で確認してください。
課税区分(配当所得・譲渡所得)
株式投資型クラウドファンディングで得た利益には税金がかかり、利益の種類によって課税の扱いが変わります。イグジットなどで未上場株式を売却して得た譲渡益は、一般株式等の譲渡所得として申告分離課税の対象で、税率は20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)です。未上場株式(一般株式等)の譲渡損益は、上場株式等の譲渡損益やNISAとは損益通算できない点に注意が必要です。
出典・参考資料(1件)
一方、投資先企業から配当を受け取った場合、非上場株式の配当は原則として総合課税の対象で、受け取り時に20.42%(所得税・復興特別所得税)が源泉徴収されます。ただし、株式投資型クラウドファンディングの案件は成長途上の企業が中心で配当を出す段階にないことが多く、実際には売却時の譲渡所得が中心になります。
出典・参考資料(1件)
まとめ
株式投資型クラウドファンディングは、未上場のスタートアップに少額から投資し、成長の果実を株主として受け取れる仕組みです。その一方で、原則イグジットまで換金できない非流動性や元本割れのリスクがあり、余裕資金で複数の案件に分散するのが基本になります。
サービス選びでは、関心のある分野の案件が継続的に出ているか、最低投資額や手数料、途中売却の手段、株主優待、過去のイグジット実績を見比べることが大切です。募集を停止・低調にしているサービスもあるため、現況の確認も欠かせません。比較表と診断ツールを使い、自分の予算とリスク許容度に合うサービスを1〜2社に絞り込んでみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 株式投資型クラウドファンディングとは何ですか?
A. 株式投資型クラウドファンディングとは、未上場のスタートアップ企業がインターネットを通じて多くの個人投資家から少額ずつ資金を集め、その対価として自社の株式を割り当てる仕組みです。エクイティ・クラウドファンディング(ECF)とも呼ばれ、金融商品取引法に基づく「第一種少額電子募集取扱業者」だけが取り扱えます。2026年9月時点で登録事業者は5社で、数万円から未上場企業の株主になれる点が特徴です。
Q. 株式投資型クラウドファンディングは本当に儲かるのですか?
A. 株式投資型クラウドファンディングで利益が出るかは投資先がIPOやM&Aでイグジットできるかどうかに左右され、成功すれば投資額の数倍のリターンになる一方、多くのスタートアップは成功に至らず、利益が保証されるものではありません。
たとえば実績を公表しているサービスの例では、これまで数百件の案件が公開される一方、投資回収に至ったのは10件程度にとどまります。多くの案件は現在も保有期間中ですが、投資先が成長できずに株式へ価値がつかない、あるいは倒産して元本を失うこともあり、回収できるのはごく一部です。
過去のイグジット実績を公表しているサービスかを確認し、余裕資金で複数の案件に分散することが大切です。
Q. 株式投資型クラウドファンディングで元本割れすることはありますか?
A. 株式投資型クラウドファンディングには、投資先企業が成長しなければ株式に価値がつかず、倒産すれば投資額を失う元本割れのリスクがあります。加えて、取得した未上場株は原則としてイグジットまで換金できず資金が長期間拘束される点や、投資回収の時期が読めない点もデメリットです。
大きなリターンの可能性の裏側には相応の失敗確率があるため、生活資金ではなく余裕資金の範囲で複数案件に分散するのが基本的な考え方です。
Q. 株式投資型クラウドファンディングで購入した株は途中で売却できますか?
A. 株式投資型クラウドファンディングで取得した未上場株は、原則として途中で売却できず、投資先がIPOやM&Aでイグジットするまで保有するのが前提です。日本証券業協会も、非上場株式は流通場面が基本的に想定されず換金性が著しく乏しいと説明しています。
例外として、一部のサービスは未上場株のセカンダリー取引(相対取引)の仕組みを備え、対象銘柄に限り途中売却できる場合があります。ただし売却時に手数料がかかり、いつでも確実に売れるわけではありません。どのサービスが対応しているかは比較表の「途中売却」欄で確認してください。
出典・参考資料(1件)
Q. 株式投資型クラウドファンディングは最低いくらから投資できますか?
A. 株式投資型クラウドファンディングの最低投資額は、多くのサービスで1口10万円前後、案件によっては5万円程度から投資できます。金額は募集企業ごとに設定され、サービスによっても異なります。少額から試したい場合は、比較表で各社の最低投資額の目安を確認したうえでサービスを選ぶとよいでしょう。
Q. 株式投資型クラウドファンディングは年間いくらまで投資できますか?
A. 個人投資家が同一の発行会社に投資できる金額は、2025年2月の制度改正により、年間200万円を超えない範囲で財産の状況に応じた額(純資産の5%・前年収入の5%・50万円のうち最も高い額)に見直されました。かつての一律50万円という上限はなくなり、50万円は下限にあたります。
ただし、日本証券業協会によれば上限額を一律50万円に限定している事業者もあるため、実際に投資できる上限は利用するサービスの運用によって異なります。詳しくは本文「投資前に押さえる制度・前提」の項もご確認ください。
Q. 株式投資型クラウドファンディングの利益にかかる税金はどうなりますか?
A. 株式投資型クラウドファンディングの利益は、未上場株式を売却して得た譲渡益が申告分離課税(税率20.315%)、配当を受け取った場合は総合課税で受取時に20.42%が源泉徴収されます。未上場株式(一般株式等)の譲渡損益は、上場株式等の譲渡損益やNISAとは損益通算できない点に注意が必要です。
実際の案件は配当を出す段階にない成長途上の企業が中心のため、税金がかかるのは主にイグジット時の譲渡益になります。
Q. 株式投資型クラウドファンディングでエンジェル税制は使えますか?
A. 株式投資型クラウドファンディング経由の投資もエンジェル税制の対象になり得ますが、必ず使えるわけではなく、各案件の発行企業が企業要件を満たし、必要な確認を受けている場合に限られます。経済産業省も、認定を受けた認定少額電子募集取扱業者のクラウドファンディングで株式を取得した場合を対象の投資方法として明記しています。
対象かどうかは案件ごとに異なるため、募集ページの「エンジェル税制対象」といった表示で確認してください。
出典・参考資料(1件)
Q. 株式投資型クラウドファンディングの口座開設には何が必要ですか?
A. 株式投資型クラウドファンディングを始めるには、各サービスで会員登録と投資家口座の開設を行い、本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)の提出と、投資経験・資産状況などの申告が必要です。口座開設・維持の費用は無料の事業者がほとんどで、メールアドレスと入出金用の銀行口座があれば手続きを進められます。
登録には審査があり、完了まで数日程度かかる場合があるため、投資したい案件がある場合は早めに口座を用意しておくと安心です。
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マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 暗号資産アナリスト
松嶋真倫
監修の範囲は記事の一般的な解説部分であり、比較表および各製品・サービスの紹介内容は監修の対象外です。









